仔羊の回帰線

詩と散文のプロムナード :Promenade

*愛は航海に似て・・:ローエンシュタイン より

2022年06月29日 08時48分45秒 | ドイツ抒情詩選

 愛は航海に似ている

海は生命とすれば 愛の波が 激しく揺れ動けば 不安となり

航海中 指針となる星が 煌めく くちびるの輝きとすれば

港湾は うつくしき女性の胸郭にして

寄港は口づけだ そして 目的地に辿り着けば 

甘美な歓びとなる けれども 

 理性の太陽が ひとたび 黒煙を上げ

にわかに曇りくれば 船が難破するように

 魂もまた 黒い情欲の虜になれば 

  破滅が 口を開けて待っている

 

     *- ・))) *-*-  ・ )))

Von Lohenstein ; Aus der Venus 

Deutsche Barock Lyrik   Reclam ebd. S. 71f...

 

 

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*モーム「月と六ペンス」より

2022年06月10日 09時31分41秒 | *Promenade:プロムナード

 

  「月と六ペンス」はモーム45歳の時の作品だが、これは仕事を捨て、妻子を捨て、40歳にして絵を描くことを思い立ち、パリに出て食うや食わずの放浪をし、そのうち人のいい友人の細君を魅了して これを犠牲にし、やがてタヒチに辿り着き、その才能を見事に開花させたゴーギャンの物語である。:

 

  《情熱》: Passion :   

       夢に生きるのだ。現実には何の意味もない。キャンパスに激しい個性を叩きつけるのだ。心根に映るものを捉えよ。

だが、情熱を吐き出してしまうと、もう全く忘れている。出来上がった仕事に満足することは決してない。心に掴んでいる幻に比べれば、もはや、何の意味もないのだ。

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*ディ・リエンツォー: ⑼

2022年06月07日 09時22分55秒 | *現代ドイツ短篇選

中には、馬に乗り走り回る騎兵も混じっていた。
ガブリーニは素早く服を着ると、ドアから外の様子を窺った。
 廊下を逃げてゆく女官や召使や親族の者たち。: 誰もが小荷物を持ち貴重品を携えていた。
 宮殿内には見知らぬ者が数多く屯し、警鐘は鳴りやまず、混じって叫び声が耳に入ってきた。
           塩の値上げをする者は殺っつけろ!..
                   ワイン税を下げろ!..
                         奴らは皆、打ち殺せ!..
             コロナ家、万歳!..
       外には一人も出してはならぬ!..
               すべては民衆の所有物じゃ!..
 火だ!.. 燃え上がっているぞ !..
  
W.Bergengruen: Das Vogel-Schalchen
     ベルゲングリューン作「鳥の小皿」より ⑼

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*コーラ・ディ・リエンツォー: ⑻

2022年06月02日 08時48分21秒 | *現代ドイツ短篇選

また別の民は、こんなことも言った。:
   コーラが要人を数名、処刑したのはまずかったのう。彼らは多くの民の生活を支えていたのぢゃから。処刑はすべきではなかったのぢゃ。
    それにぢゃ、塩の値まで上げるのもよくないぞよ。また、戦には金がかかるといって、ワインにまで税をかけるのもよくないのう。

 ガブリーニはその言葉に耳を傾けたのち云った。
    然し、ここではワインは無料ではなかったのかね。なのに、なぜ税を怖がる。それに塩のことも・・
  ガブリーニは世の中で起こっていることも 少しは知っていると云いたかったのだ。  
  
    それから間もなくして、ガブリーニは朝早くに、騒々しい物音と叫び声で目が覚めた。宮殿内では警鐘が鳴り渡り、窓辺に駆け寄ると四方八方から、武器を抱えた兵士らが走り回っていた。    
. W. Bergengruen : Das Vogel-Schalchen
ベルゲングリューン作「鳥の小皿」より ⑻

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