仔羊の回帰線

詩と散文のプロムナード :Promenade

*ローレ・ライ: ハイネより

2024年05月02日 09時42分17秒 | ドイツ抒情詩選

  悲しきわけの わからぬままに

いにしえの 伝え語りし物語 浮かび来る

大気は涼しく黄昏て ラインは凪て流れつつ

峰に映ゑるは 眩しき残照 ))  *

うつくしき乙女は 山の高みに座りいて

金の髪 梳(す)くも眩しく 乙女は歌ぞ口ずさむ

嗚呼 そのうつくしき響き: そこに こもれる歌の力

おりしも 川をすすみゆく舟人 魅惑され

 暗礁 気づかず 魅入るばかり

されど ついに 波に呑まれし舟人かなし 

くすしき唄に 魔力こもれる  ローレ・ライ !!...

Heinrich Heine : Die Lore- ley                          Aus: Dt. Lyrik vom Barock bis zur Gegenwart                    dtv.  ebd. S.161..  Ubrtsetzung von : Ma. Natsume. 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

*森の中で: ヴェルフェル より

2024年04月15日 09時23分21秒 | ドイツ抒情詩選

 蒼い空のもと 緑の樹々に そよ風が吹き 

 樹木の下の茨を 搔き分けゆけば 

気怠い腐敗が鼻をつき  蟻や毛虫も 

目の上に這いつき  瞬きもできず --

だが わき道からは 賑やかな婦人たちの声

 無辜の子らの声と混じり 愉し気に

時折り 小枝が顔に落ちれば

蟻も蝶も 口元に集まってくる・・ --

 これらに いつしか魂が共感すれば 

 おお なんという リゴレットの歌か! 

 調べも高らかに 昂揚ありて

 おお wunderbar !  ・・))

F. Werfel;  Im Walde    Aus: Der Welt-Freund 

ヴェルフェル 「世界の友」より

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

*一個のペルソナ ;ヴェルフェル より

2024年03月29日 09時04分40秒 | ドイツ抒情詩選

 早くも 時の迫りきて 躰 震え 生まれくる 天使よ! 

 この世の受胎の 甘美な慄き!  変化は重苦しくとも 幸あるとき!

  沈黙せよ! 時は 差し迫り  開かれんとする扉 ・・・

  すでに早 悟性はほどけ 感覚となる・・

 塔の上なる 雲雀の囀り 禿鷹も舞い 峰の上に旋回する

 ヒマラヤの峰のうえにも 憩いあり そは 天使にも似た 安らぎ

 世界は 今 浄められんとして

 昼も夜も 愛しあえば心は 澄みわたり  ...)))*

 感ずるは おお Dasein!  : その実在!

  そして おお 更なる Wesen ! : 存在する ことの その歓び!..  

      Werfel: Ode    ヴェルフェル「世界の友」 より

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

*リルケ「ドゥイノの悲歌」より

2024年03月24日 08時28分14秒 | ドイツ抒情詩選

あらゆる存在は一度だけ:  地上の存在は一度だけ  とはいえ

この存在を成就することには 意義がある

 それゆえ 満ち溢れる眼差しで  心のうちに しっかりと 捉えよう  >>

だが 存在の後に 携えていけるは何か と問えば

習得したことは 携えてゆけず

ゆけるのは 苦痛 悲しみ 重い体験: 言葉に言えぬものばかり

けれども 恋する者が  この大地で 情感に漲り 

歓喜に躍動し 思いを言葉に発すれば 

それが 秘かな 大地の企(たくら)みなのだ *- *-  (((    *

 R.M. Rilke: Die Duineser Elegien , Die 9. Elegie 

   ドゥイノの悲歌 より

  * この10編からなる長編詩は、完成するのに10年。  意とするところは、人間の存在は有限無常、悲歌的であろうとも、これを貫き肯定すること。                             詩人はこれに努めたのである。

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

◎ 青春の歌: ギュンター より

2024年03月18日 08時56分25秒 | ドイツ抒情詩選

   さあ 陽気にやろう 芽吹きの時だ                                 陽が日増しに 暖かくなってくる
  薔薇を手折れ 王冠を手にせよ 
                                  人生の逃走は速いぞ                                    手綱を引き締めるなんて 無用なこと                               運命は嫉妬深いぞ  だが                                  弛まず 翼を差し伸べてくれることには 感謝だ

   聞こえるかい?... 若きときに 楽しんでいた者も                       今は 黄泉で眠りについている・・
         皆 誰しも これは避けられぬ                                    新たに 時がきて 朝鐘が鳴り渡れば                         
黄泉に棲みつくのが 運命なのだ                              だから  陽気に楽しもう
      運は天に委ね 陽気に飲もうではないか
         去っていった者にも 幸いあれ  !...                                                     われらが青春にも 歓びあれ!...                             

   
Gunther : Studenten-Lied    Aus : Trinklied
 ギュンターは1695年生まれ。28歳で夭折。時代は17世紀バロックだが、若きゲーテに バトンタッチをすべく内面告白・心情吐露する詩を書きその意味で先駆的ドイツ詩人となった。  

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

*クロップシュトック: エリシウムの苑

2024年03月10日 09時14分14秒 | ドイツ抒情詩選

   春の木陰に 微睡まどろむ乙女;

 見つけた若者は 薔薇の花綵(はなづな)で飾ってやる 

だが 気づかぬ乙女  それでも なお みつめ  囁き  

薔薇の花綵で 愛撫している と  

 目を覚まし 乙女は見つめ返す :

こうして 命と命が結ばれるや 忽ち 

辺りは エリシウム(楽園)の苑となり・・ )))

 Friedrich Gottlieb Klopstock: 1724-1803.          

  Das Rosen-Band : Reclam  Dt. Liebes-Gedichte

  この詩はクロップシュトックが1751年に知り合い、結婚したメタに送った詩で、18世紀ロココ文学の傑作。

 当時よく用いられたモティーフが、気の利いた言葉の遊びを脱し、魂の結びつきへと昇華した。 この詩は74年にヴァイスWeiss により作曲され、シューベルトSchubertによる曲もある。

ゲーテの若きときの小説でナポレオンも愛読したという「若きウエルテルの悩み」 Die Leiden des jungen Werthers の中にも、ロッテがクロップシュトックとひとり呟く場面があり よく知られている。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

*恋問答: メーリケ

2024年03月06日 11時38分29秒 | ドイツ抒情詩選

胸が詰まる この切なさを  どうしたわけと きみは問う

どうして 痛々しい その棘を

いつまで 取らないかと きみは云う >> --

では 訊くが 風は どうして

精霊の早業で 駆け抜けるのか

泉は どこから 甘い清水を引いてくるかと >>.*

それでは 風を 直ちに 留めてみせるがいい

泉を呪縛し 直ちに 堰き止めてみせるがいい>> --

  *- *-  ( ((   *

 Morike (1804- 75 ): Gedichte    Reclam ebd. S. 32.      

Erste  Ubersetzung : 2003.7.21  ( Nr. 108.)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

*夜のデュエット:メーリケ より

2024年03月01日 08時57分48秒 | ドイツ抒情詩選

 夜風が甘く掠めゆく かすかな音色 響かせて

 地底にひしめく囁き声も やさしき歌声となり 

 昼間の気配 漂わす そして ともに 重なり合えば 

  大気も共鳴し 澄み渡る     *- * - )))

それにしても 聞こえくる 不可思議な 声

生ぬるき風に 光も掠めゆき 淫らに 通りゆく    *- * - )))

すると 大気も動き出し 明るく吹き昇れば

妖精も 思わず声をあげ 天の高みに向かい

   甘き歌声 響かせる   *- * - )))

夜よ 昼間は 緑なす草原も 夜には 黒いビロードに変わり

その上を 静かに すすみゆく夜よ

汝れは たえまなき楽の音で いつしか

空気のように歩みゆく

されど 悲しみを携えゆくは 何ゆゑに

夜よ 汝れの魂も 創造主の懐に抱かれてあるものを!!.

   Morike :  Gesang zu Zweien in der Nacht 

    Aus;    Gedichte,  Eine Auswahl      Reclam ebd. S.58..

 

 

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

*色彩の記憶:オーピッツ より

2024年02月16日 08時29分43秒 | ドイツ抒情詩選

わが色彩の記憶には 多々 あれど

純潔は白にして 淡い悲しみはピンクなり

別離の記憶にあるのは 海の碧にして

愁いは 黒洞々の黒なり そして 情熱は赤なれば

澄みわたる空の碧は 感性に通じ

希望の記憶は緑に通ず そして 

かくなる緑に こころ寄せ 愛着する色なれば

そは 夢多ま 精神の旅立ちの色なり・・ !!...

   *- )))  **

 17世紀はドイツバロック詩の時代で、特徴はオーピッツやグリューフィウスをはじめとしてマニエリスムの傾向が目立った。                       すなわち、技巧と誇張が主流。                           だが、末期になるとギュンターのように内面の心情の吐露、告白がうたわれるようになる。

 とは これすなわち 若きゲーテなどの詩にみられるように、青春期の心情の純粋な告白の先駆となり得たのである。                          Opitz:   Bedeutung der Farben     Das Ich              Deutsche Barock Lyrik   Reclam  ebd .S. 95f...

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

*薔薇の部屋: ビールバウム より

2024年02月14日 12時57分55秒 | ドイツ抒情詩選

 机上には グラスに真紅の薔薇と 大理石のゲーテ像: 

折りしも 〈フィガロ〉が聞こえてくる :

 苦悶していたのか それとも 惑わされて・・ 

 あれは夢?!・・ :ゲーテ像が見つめるなか   

スザンヌとシェルバンが 歌唱していた のだ )))  --

 掠めていく 惑いと不安 ・・

グラスの真紅の薔薇と 微笑むゲーテ像 そこに

 聞こえてくる モーツァルトの歌劇・・)) )

嗚呼 咎は誰に?.. 幸せを望み 

 先を見据えていた きみと僕なのに )) ) * *

   

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする