仔羊の回帰線

詩と散文のプロムナード :Promenade

*閨秀詩人 L.の異世界 より

2022年05月30日 09時04分40秒 | 文学・学問・詩・余滴: Ⅰ

・真昼の閃光に 幻惑されたか 

     蜥蜴(トカゲ)が 忽然 立ち去りゆく /  

・実の熟れた 花梨幹には 

        亀裂が走り 刀傷のように / 

・薔薇園の魔王 侏儒ラウリンの 

      裂け傷からは 血が滲む                               

・そして プシュケーの背中を  柳は  エロスの愛のごとく 

  やさしく 鞭打っている

・ 森から 響き渡る叫び声 !  おお それは 

     魔法使いメ ルリーンの叫び ! /

・ 庭師のパイプから 漂ひくる 芳香と まじわり 

   エーリアルが 風のように 舞っている / 

・ そして 樹木の精 ドリュアデスも 浮遊し

    おお 魔界に満てる 森よ !!...                        

  E. Langgasser:  Licht im Februar                                                        Aus; Der Laubmann und die Rose   

     ランゲッサーの「二月の光」 より

 

 

 

 

 

 

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* ローマの護民官リエンツォー :⑺ 

2022年05月26日 09時29分57秒 | *現代ドイツ短篇選


   ガブリーニは気分が爽快だったその日、椋鳥のベッピーノがこれまで羽が抜け代わるたびに、〈おはようございます、もう一杯いかが!..〉と叫んでいたのだが、次のように教え込もうと考えた。:
「コーラ・ディ・リエンツォー万歳!..」
というのも、、最上のもてなしをしてくれるコーラに心から感謝を表したかったからである。
    ガブリーニはまた、辺りをよく散歩して歩き回った。草原へ行ったり、宮殿の裏庭を歩いたりしてはベッピーノのためにバッタやカブトムシを捉えていた。また、チベル河の水車小屋の近くにある居酒屋へも足を延ばしたことがあった。


この以前コーラの父親が持っていた居酒屋へ行くと、ガブリーニは着ているものが素晴らしいといって褒められた。また、ローマの護民官コーラの評判についても聞かされたりした。中でも、以前から知り合いの年配の
馬具師はこんなことを云った。〈彼の母じゃが昔のう、わしらのために よく洗濯をしてくれたものぢゃよ》
   
  W. Bergengruen : Das Vogel-Schalchen
    ベルゲングリューン「鳥の小皿」より

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*コーラ・ディ・リエンツォー: ⑹

2022年05月22日 09時32分55秒 | *現代ドイツ短篇選


       ガブリーニは一族と食事を一緒にしなく、別の食卓で取りはじめた。召使用の食卓であったが、食事が劣っていたわけではなく、アナーニの村では代官でさえ、このような上等な器で食べたことはないほどのものだった。
   ガブリーニは、やがて召使から告示板を通して、いろいろ知らされた。:コーラが教皇や皇帝らと司っている政情は、どんなか、また、
国の無秩序に終止符を打ち、平和を取り戻すため選帝侯を近々ローマに召喚させるのも間違いないなどと。こうして、かなりのことが明らかになってきたが、  こんなことも知らされた。:

  コーラがローマ教皇の礼拝堂の立派な洗礼盤で洗礼を受けたことや、(そこはコンスタンティヌス大帝もローマ教皇の聖シルヴェスターから洗礼を授かっていたのだ・・) コーラが騎士の称号を授かった際に大祝典で、七つの葉模様の飾りある月桂冠と銀の王冠を頂き、帝位についたことなど・・・。
   
W.Bergengruen :Das Vogel-Schalchen
ベルゲングリューン 「鳥の小皿」より

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*コーラ・ディ・リエンツォー: ⑸

2022年05月19日 08時25分04秒 | *現代ドイツ短篇選


   コーラの一族は、今や称号や官職を与えられ、世界貿易のことや都市交易など喋り合っていたが、ガブリーニのことも気にかけていた。 あるとき食事の際、食堂に鳥籠を携えてきてはならぬ、まして、食卓に置くことなど罷りならぬといわれた。衣服についてもことあるごとに、なんだかんだと云ってはガブリーニのことを当て擦り、口やかましかった。

 また、或る祝いの際に、宮殿前のローマ教皇の銅像の馬の鼻腔から赤と白のワインが流され、自由に飲めるよう趣向が凝らされたことがあった。ガブリーニももちろん、皆に混じってお相伴した。が、一族の者は彼を叱責していうのだった。:そんなに酔い痴れて、少しはわきまえなくてはいけないと。

馬の鼻腔から流されたワインは最高級なものとは言えなかったが、お喋りしともに飲むことは楽しかったし、羽目を外し鱈腹飲んだことも事実だが、彼はこんなことも言われた。:     おまえさんときたら、挨拶もなっていないし、品もないんだね。・・これを聞くと、ガブリーニは流石に腹が立ち、一族の者とは相交えず避けるようになった。宮殿内は広く、それも叶ったのだ。
   
    ベルゲングリューン作「鳥の小皿」より・
    W.Bergengruen : Das Vogel-Schalchen

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*コーラ・ディ・リエンツォー: ⑷ 

2022年05月15日 09時02分30秒 | *現代ドイツ短篇選

  宮殿内では築城されたり増築がつづき槌の音の絶えることがなかった。ガブリーニは飽きずに眺め人夫らとお喋りした。宮殿内にいる多くの縁者らはそれを好ましく思っていなかった。
 一度、何かの折りガブリーニは一人の横っ面を叩いたことがあった。すぐに泣き上げた少年は縁者の者で、彼のそんな振る舞いを声高に非難したが、コーラは意に介さず、みずからの若き頃の愚行を思い浮かべているに過ぎなかった。 

   宮殿内では大きな歓迎行事のあと、ガブリーニも同席しなければならなく、それが苦痛のタネだった。テーブルに座っていること自体、好きになれず、レセプションの席では豪華な料理で、多くの騎士や連隊長や大使といった列席者の下で荘重になされた。 こうしてみると、コーラの交際範囲は驚くばかりであるとガブリーニは思い知った。 

  
Werner Bergengruen: Das Vogel-Schalchen
     「鳥の小皿」より

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*コーラ・ディ・リエンツォー :③

2022年05月13日 08時06分10秒 | *現代ドイツ短篇選


  騎兵はガブリーに、ローマに来られるときは礼儀をわきまえ、ふさわしい身繕いで来るよう金を手渡し、あれこれ報告し命令を伝えると立ち去っていった。
   ガブリーニは手にした大金の一部は手元に残し、他のすべては裏庭の大きな桜の木の下に隠すと、ローマへ旅立った。
  騎兵はガブリーニに所持品は一切、携えてきてはならぬと伝えていた。だが、薔薇椋鳥からは離れがたく、鳥籠を携えていくことにした。
  こうして、馬方とともにローマに辿りつき宮殿に着くと、衛兵らが引き止め鳥籠を見て笑いこけた。だが、書状を見せつけると衛兵はペコペコお辞儀をし、中にいれ身分の高い男に通した。この男もまた、丁寧に回廊へと引き連れていき、ガブリーニはコーラと出会ったのである。


 コーラの眼は相変わらず火のように輝き、体からは活力をみなぎらせ、まとっていた衣装は豪華なものであった。
    ガブリーニはコーラと抱き合うと、甥の耳朶をつまんで云った。

 大した人物になったものだのう、・・わしのところにおったことを覚えておるかの。亡くなった家内はいつも、云っておったものぢゃよ。少しもじっとしておれぬ男じゃと。
   と、このとき、ベッピーノは間髪をいれず叫んだ。
おっ早うございます、もう一杯、如何❢...

 コーラは、やあ、なかなかよい鳥じゃ。よい鳥を引き連れてきた。こう言い残すと、急ぎ議会へ行ってしまった。執事が近寄ってくると、ガブリーニを部屋へと案内した。
  ベルゲングリューン短篇より

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