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仔羊の回帰線

詩と散文のプロムナード :Promenade

*夜の闖入者:

2024年02月26日 17時53分33秒 | *ドイツ詩人と作家のことなど:-Goo

  夜、暗闇に不意に、何者かが侵入してきたとなると心穏やかではない。不安と恐怖と。・・ ところが、異常ともいえる変ったことが起こらないとなれば、また別の話。それは あるいは微笑ましいエピソードにならないとも限らない。・・そんなことを思わせる話が二つ。---- ひとつは「ライオン」の闖入という非日常だが、日常とは何ら異なることの起こらない話で、他の一つは、熟年の独り身の婦人の宅に,暗闇に紛れ込んだ若くてイケメンの青年との話である。>>>

ところで、この熟年の婦人は青年が何も起こらないまま去った後に、みるみる追憶の中で期待と希望のうちに若さと元気と歓びを取り戻していったとしたら。・・・ >>>                                        メッケルの「ライオン」と、カーチャ・ベーレンスの「愛」とは、そんな非日常を描く現代ドイツ文学の短編である。
    Meckel:Der Lowe
   K.Behrens:  Liebe    Aus :Reclam

 

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◎*ノサックの「死者とのインタビュー」:

2024年02月25日 10時45分26秒 | *現代ドイツ作家の群像;人と作品:1945年以降:-Goo

        ノサックの第一のテーマは時代における人間の生死の意味への問いかけであった。それを再三、報国調に、探究・調査風に、あるいは寓話風に追求した。

  この「死者とのインタビュー」は連作短編集で、その特色をよく表している。: そこには鮮明で飾り気なく、屡々、モノローク風な語り口で追跡した作品が収められた。:
 例えば、「ドロテーア」であり、神話風な「カサンドラ」であり、メルヒェン風な「海から来た男」であり、シュールなモテイーフの「アパッショナータ」や「死神とのインタビュー」であった。そして実存的な越境界が描かれたのだが、ノサック自身の体験を踏まえながらヤーンやカミユの読書を通じて、奈落における境界状況の視点から批評的に書いているのである。     H.E. Nossack:1901- 77.

 ところで、48年に発表された自叙伝的な報告「滅亡」は、1943年に始まり、その後10日間に及ぶ空襲によるハンブルク破壊の報告であるが、ノサックはその破壊的な経過を次のように書いた。:
  ちょっと想像してごらん、一瞬、目を閉じたとしよう。そして、再び開けたとする。すると、今まであったもの全てが、もう何もなくなっているのだからね・・・」

   ノサックにとって、大戦中という時代における人間の生死への問いかけは、第一のテーマであったのである。
Aus: K.Rothmann : Dt. sprachige Schriftsteller seit 1945 ..
Reclam ebd. S. 298ff... Interview mit dem Tode. 48.

K.ロートマン著: 現代ドイツ作家の群像 より      ***   )))   *

 

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*道ならぬ恋: トリスタンと王妃イゾルデ

2024年02月22日 11時59分00秒 | *Deutsche Lyrik :--Goo

     道ならぬ恋の物語といえば、トリスタンと王妃イゾルデやフランチェスカとパオロの物語がよく知られている。

前者は中世ケルト説話に出てくる主人公トリスタンであり、彼は伯父マルクの妃となるべくアイルランドの王妃イゾルデを迎えに行った帰途、知らずに媚薬を飲んでしまい離れられない間柄になって密会をかさねる。そして それがマルクの知るに及んでトリスタンは追放され、二人は悲劇の死へと巻き込まれていく。

この物語からヒントを得て、ドイツの詩人プラーテンはガゼル詩の形式美を駆使して新たな地平を切り開いた。:

 美しき極みと魅力に とりつかれし者は

もはや 遁れるすべもなく やがて 放蕩の身となり 

死と向きあい慄くとも 悲しむこともなし・・)))  *

愛の苦しみ厭わずに  汝れは 突きすすむ・

されど 嗚呼 望みし願いの 叶えらるることなく

やがては 虚しき生に 苦しみ果てん

叶わぬ願いの侘しさよ   泉のごとく涸れたくと 

息するごとに毒仰ぎ 花の香に 死の匂いぞ嗅ぐばかり

美しき きわみと魅力に 憑りつかれし者は

 泉のごとく 涸れたくと・・

August Graf von Platen ; Tristan und Isolde

Aus; Dt. Lyrik vom Barock bis zur Gegenwart    dtv. S.162.

   ***   )))   *

トリスタンとイゾルデの恋の物語は、中世ヨーロッパの伝説。                               トリスタンは、コーンウォール王マルクの甥であり、イゾルデはアイルランド王女。 トリスタンは、王のためにイゾルデを妻として連れてくる任務を受けたが、途中で 二人は魔法の飲み物を飲むに及んで恋に落ちる。 こうして 二人は王に隠れ密会を重ね、やがて発覚 追われる身となるや、トリスタンはイゾルデと別れブルターニュに逃げ、そこで結婚したものの、本当の愛は忘れられない。 やがて トリスタンは戦闘にでると重傷を負い、死ぬ間際にイゾルデを呼び寄せる。イゾルデはトリスタンのもとに駆けつけたが、彼はすでに息絶えるや、イゾルデもまた 悲しみのあまり死んでしまう。               こうして 二人の遺体は一緒に埋葬されるや、墓から 二本の木が生えて絡み合ったと伝えられているのである。

    ***   )))   *

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*「特性のない男」:ムジールより

2024年02月18日 09時20分39秒 | *ドイツ詩人と作家のことなど:-Goo

 長いこと、水は空気と親類であると信じられていた。ギリシア人は世界と生命は水から生まれたと考えた。:                       後世になると、ニクセ(水の精)や ウンディーネ(伝説的水の処女・仏語読みではオンディーヌ)、そして ニンフ(水辺や木立に棲む半女神)が発明されてゆく。  ** *))  )    

          *ムジールは20世紀ドイツの作家で、長編「特性のない男」Der Mann ohne Eigenschaften で知られている。

     因みに、特性のないとは、いろいろな可能性を秘め、一つことに定着しなかった才能の謂いなのでもある。>>>

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*自分の時間: ムジール「特性のない男」より

2024年02月17日 10時01分57秒 | *ドイツ詩人と作家のことなど:-Goo

     ・・・処で、他の男なら すでに、お前の歳なら 人生に確固たる地位を築き上げている。だが、今となっては 結局、自力で社会的地位を得ずばなるまい。--学位を得ても、手前味噌に買いかぶっているばかりだ、・・・。                                              いいかね、先にも述べた通り、わしは著書の新版のために全時間と労働をこの齢になってもなお、捧げているのだ。                                                 人間は自分の時間を大切にして、よりよく利用することだ。 何故なら芸術は長くとも、人生は短いのだから。・分かるね、おまえの歳なら

   Musil: Der Mnn ohne Eigenschaften より

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*薔薇の部屋: ビールバウム より

2024年02月14日 12時57分55秒 | *ドイツ抒情詩・バロック詩選:夏目政廣訳 --Goo

 机上には グラスに真紅の薔薇と 大理石のゲーテ像: 

折りしも 〈フィガロ〉が聞こえてくる :

 苦悶していたのか それとも 惑わされて・・ 

 あれは夢?!・・ :ゲーテ像が見つめるなか   

スザンヌとシェルバンが 歌唱していた のだ )))  --

 掠めていく 惑いと不安 ・・

グラスの真紅の薔薇と 微笑むゲーテ像 そこに

 聞こえてくる モーツァルトの歌劇・・)) )

嗚呼 咎は誰に?.. 幸せを望み 

 先を見据えていた きみと僕なのに )) ) * *

   

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*考える葦: パスカル 「パンセ」より

2024年02月10日 11時40分00秒 | *文学・学問・詩:余滴 Ⅱ-Goo

人間は、ひと茎の葦にすぎない。                                                               自然の中で、もっとも弱いものである。                                                        だが、それは考える葦である。                                                            思うに、尊厳のすべては考えることにある。>  **
  
パスカル「パンセ」 第六章 哲学者 347.より

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*憧れと美徳: ソクラテスと美少年:マン「ヴェニスに死す」より より

2024年02月05日 08時50分40秒 | *文学・学問・詩・余滴: Ⅰ-Goo

   芸術は より高められた生活である。:--- 醜い老賢者ソクラテスが美少年パイドロスに延々と、憧れと美徳について教えを垂れていた: ---"... なぜなら パイドロスよ、ただ 美だけが 愛するに値すると同時に眼に見えるものだからだ。 美こそが 感覚的に受け入れ 耐えることのできる 精神的な ただ 一つの形式だからだ。   --- もし そうでなくて理性や美徳や真理が、それ以外の姿で 顕れたとしたら、われわれは どうなってしまうであろう。 :   ---  昔、セメレーが ゼウスの前で 身を焼き尽くしたように、我らも 愛のために 身を焼き尽くすのでは なかろうか。  したがって、美は 感じやすい人間が 精神に至る 道なのだ。道であり 手段にすぎない。      ---                                       パイドロスよ、 それから このソクラテスは 最も 微妙なことを口にした。:よく 聴くがいい。愛する者は 愛される者より  神に近い。  なぜなら 愛する者には 神が宿っているが、愛される者には  そうではないからだ。>>>   ---

   蓋し芸術は人生より深い幸福を 感じさせるが、また、より疲れさせる。                            

 トーマス・マン「ヴェニスに死す」より                                              T. Mann: Der Tod in Veneig

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◎「ライオン」:メッケル より 

2024年02月04日 08時50分05秒 | *現代ドイツ短篇選:夏目政廣訳:--Goo

 或る時、ウンビルシュは都合で 家を長いこと開けなければならない時があった。だが、家は閉じていってはいけない。留守の間も、ずっと安心していられる気がしたからだ。
 九月も下旬の ある雨の日。戻ってみると、棲みついていたライオンは目を見開き ドアの後ろで横たわっていた。が、気づくと玄関先に姿を見せた。家の中は 出ていったときと変わったところはなかった。留守番の礼として、大きな肉を与えてやった。

 それからというもの、河で釣りをしていると、ライオンもついてきた。そして 魚を釣り上げると 途端、鼻を ぴくつかせ、すり寄ってきた。   >>                   ライオンとはまた、よく森に入った。そして夜には一緒に寝た。             が、しばらくすると、ライオンは ふいと離れていった。 初雪の舞う明け方のことだった。言葉をかけ 親しんできたつもりなのにと 淋しくなった。けれども、別れの時はくるのだ。仕方ない。                         雨の中 川に向かっていく姿を追っていると、ライオンは河を泳ぎ切り、向こう岸にたどり着き 姿は小さく消えていった。>>

 こうして、冬が去り、寒さも去ると 河の向こうは 煙りつつ青々としてきた。空は澄みわたり 気持ちも晴れ晴れとなった。 冬の間は とじこもったまま、近辺の隣人を訪ねたこともなかったが、訪ねていき ライオンを話のタネに、酒でも酌み交わしてこよう。。。 
 C.Meckel : Lowe  大人のファンタズィー より

 

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