「芸術の前では 皆、平等ですよ、支配人さん・・」 「ジュピターくん、青白い顔で 何を云うのかね。何処から そんな決まり文句を仕入れてきたのかね・・」
「ぼくはシラーやフライタークとは相反する関係にあるのかもしれません。でも、レッシングとは同じと思います・・ レッシングの作劇研究には打ち込めましたから」
「それで、・・」
「ですから、ドイツ演劇を活気づけたいなら、若きシラーや〈ゲッツ・フォン・ベーリッヒンゲン〉を書いた若きゲーテや、レッシングまで遡さかのぼらなければならなりません。・・ そこには芸術や人生の豊饒さが見られますもの」
「ジュピターくん、ゲーテの俳優問答は云わずと知れたわたしの芸術的信条でもあるんだよ・・」
「ですが、ゲーテは彼の俳優規則によって本性を裏切っています。 かれはこう指示しているのです。:--- どんな役を演じても、舞台に立つ者は人食いの表情でなければならぬと。 それによって気高い悲劇が呼び起されると」
「とんでも発憤だな。不愉快だよ、きみ。--きみはチューチュー小賢しい鼠だ。 実に、やっかいなネズミだ. 新しいドイツ帝国の破壊を始める輩となんら変わらぬ。・・それでは芸術の理想を齧り取ってしまいかねぬ.」
Gerhart Hauptmann :Die Ratten 3.Akt
「鼠」 第3幕 より
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*ハウプトマンの戯曲では他に、「日の出前」がある:-- そこではアル中患者が赤裸々に描かれた。
「ビーバーの毛皮」: 社会主義者鎮圧法などを背景に描かれた喜劇。
また、社会の病弊を暴くのではなく、苦悩する人間の内面を描いたものには、「ハンネレの昇天》や「沈鐘」などの戯曲が有名。