エレクトラ: そんなに見つめないで、オレスト、 わたしは もはや、貴方の姉の亡骸にすぎないわ。 きっと わたしを見て身震いすることでしょう。でも これでも 王の娘だったのよ。美しく、鏡の前に立って明かりを消せば、闇をぬって わたしのからだは神々しいほど輝き、汚れなく、白い肌の上に おぼろ月が照りわたると、水浴びしているように 映ったものよ。・・ それが今は、このありさま、もつれ、汚れ、いやらしい身になって、 それでも、オレスト、貴方だけは、分かってくれるわね。 たとえ わたしが甘美な戦慄で歓びに浸り、この身を アガメンノン王に捧げたとしても。・・・
*ソフォクレスのギリシア悲劇「エレクトラ」の翻案劇。ホフマンスタールより
*アガメンノンはトロイ戦役の凱旋将軍。だが、帰還すると殺害される。これを知った子のオレストは復讐するが、母親ゆえに狂気に陥ったりもする。