「ヴェニスに死す」という映画でも知られているトーマス・マンの短編に、同名Der Tod in Venedig がある。
これは中年の避暑にきた作家が、若くて美しい青年にプラトニック愛を抱くテーマを扱ったものだ。:
リドに滞在して4週間目、グスタフ・フォン・アッシェンバッハは、周囲の世界に、幾つかの不気味な経験をした。
シーズンが頂点に近づいているのに 海水浴場に臨むホテルの客は減ってくるばかり。 周りで話されているドイツ語が少なくなり、竟には、一言も聞かなくなっていた。
食事の際も浜辺でも、耳に入ってくるのは外国語ばかり。
或る日のこと、理髪師のところで話していると、妙な一言を聞いた。:--- 理髪師は旅立っていったドイツ人家族を話題に、云った。
「旦那はまだ、お残りで?.. 例の疫病のこと、気になさらない?..」
すると、アッシェンバッハは見返し、
「えっ?...何のことかね?...」
理髪師は途端、口を噤(つぐ)み、聞こえぬふりをした。 だが、・・
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Sie haben ,mein Herr, Sie haben keine Furcht vor dem Ubel ?
Dem Ubel?.. Aschenbach sah ihn an und sogleich wiederholte er .
Der Schwatzer verstummte doch,und tat beschaftigt.