仔羊の回帰線

詩と散文のプロムナード :Promenade

*ダンテ「神曲」:地獄編 より

2023年01月30日 07時42分35秒 | ギャラリー:世界の文学 Ⅰ

 なれば 従うがよかろう 先達となり 地獄へ案内しよう 

そこは 望みなき叫びあり 呵責に亡霊たちは 命絶えしも 

   再び 死にたく願う輩の たむろするところ 

 そこを過ぐれば 猛火の中で 輩が うようよしておる。 

    つまり 煉獄ぢゃ そこでの かれらは  いつの日か

     至福に預かりたく 望みを抱いておる   

  そして やがて 次に 安らぐところ 

  天国へ登りたければ 霊なる ベアトリーチェに ひき合わせよう 

 選ばれて かしこに 棲むものは 幸いなるかな!...

 

  これを聞くや     「詩聖ウエルギリウスどの! 

 この苦しみから 逃るるため いま 語られた所へ お導きを !..

  詩人ウエルギリウスが 頷き 歩みだすや 

       離れまいと 足早に 従いゆく

       ダンテ「神曲」地獄編 第一歌より 

 

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*「月と六ペンス」: モーム Maugham より 

2023年01月24日 09時11分43秒 | *詩と散文のプロムナード:Promenade:

    美と感受性 : Schonheit und Sensibilitat:

 「いいかい、美というものは砂浜の石ころのように、誰にも拾えるようなものではない。美は不思議なものだ。

芸術家が魂の苦しみを通して、ようやく創り出しえるものだ。

だから誰もが知ることができるわけではない。

美を認識するには、芸術家の経験を繰り返してみるよりほかない。

芸術家が奏でるメロディーを耳をすまし聴いてごらん。

それには感受性や想像力、何よりも澄んだ心が必要なのがわかる。

 

    暴露: Entfullung :

           芸術家の作品は人間を暴露する。・

・作品に真の人間が顕れるのはどうしようもない。

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* モーム「お菓子と麦酒」より:一人称小説

2023年01月22日 09時24分36秒 | *Promenade:プロムナード

 

イギリスの小説家イーヴリン・ウォー曰く: 

一人称で小説を書くのは軽蔑すべきだ、と。

にも拘らず、サッカレーやディケンズ、E.ブロンテ、あるいはプルーストなどが、イーヴリン・ウォーが似て非なる方法を用いたかについて、理由が考えられる。:つまり、こうである。

  いったい、歳を取れば人間は複雑、矛盾だらけで、理屈に合わぬものと気づいてくる。

そうであれば、中年なり初老なり、いい歳をして、本来なら  もっと、まじめに事柄に関わっていいのに、虚構の事柄に何故 かかずらうか、言い訳もたつというものである。

   なぜなら、実人生の理屈に合わぬ人間を相手にするよりかは、虚構を取り入れた小説の人物を相手にするほうが、遙かに賢明で分かりやすいからである。

    モーム「お菓子と麦酒」より

 

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* ホフマン より

2023年01月07日 09時25分29秒 | ギャラリー:世界の文学 Ⅱ

    或る書によれば、想像力に恵まれている人は 海の潮のように高まったり引いたりする情感を持ち合わせている。 次第に高くなる上げ潮の時は 夜が始まるとき。そして 目を覚まし一杯の珈琲を飲んでいる朝の時間は 引き潮の時にあたる。  それ故、この時間帯はいちばん頭の冴え、最も重要な要件に利用するがいいというのである。                         *- *-  (((    *

        Hoffmann: Prinzessin Brambilla : ホフマン                            メルヒェン 「ブランビラ姫」第五章 より
 これは17Jh.世紀のローの謝肉祭を背景にした仮面喜劇。

 おお イタリア!.. 太陽の国 !                                
  カーニヴァルの季節ともなれば 羽目外し                    仮装が華やかに跳ね回り  これぞ妖精の世界: 

   そこでは自我より 非自我が産まれ   存在の苦悩が歓喜に変容する:  

この国の  この自我に 明るく澄みわたる空も加わり              一組の若き男女が契れば 真理は彼らを照らす 

    夢の世界 生への覚醒だ!..  そして                    聴くは 巨匠の神秘なる音:   万象も その音に聞き惚れ 沈黙する   すると 天も輝くや 森も泉も ざわめきだす 

 おお 歓びに満てる国よ 

  憧れが おのが姿を 愛の泉に映しだすと                   新しき憧憬が手にいり 水も沸き立てば                     やがて 歓喜も極まり 炎となり戯れるのだ

  おお 汝 歓びに満てる國よ !...

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