イモヌス先生はスイス生まれの神父にして文芸学者。背は高く四角く細長い顔には、細い目に銀縁の眼鏡をかけ、少しとっつきにくい。そのためか、女子学生はちょっと陰険ね、などと時おり囁きあっていたものだ。 確かに、丸顔の骨太でピンク色した艶やかな顔に、やはり銀縁の眼鏡をしていたが、厳格にみえても親しみのある言語教育学者のProf.フェールケン先生と比べればそう云えなくもない。
このイモヌス先生が書かれた数ある論文のひとつに「ドイツ文学における深層心理学的原型」というのがある。他の多くの論文中でとりわけ目に留まり覗いてみると、《アニマ・アニムス》という項目があり、《自分への回帰の道》という語句が目を引いた。
少し読んでいくと、スイスの精神分析学者として有名なユングの学説に基づき、《アニマの原型が男の無意識層に作用する原型理解:》 に基づいて文芸学的に解釈を試みたものと知れた。 これは文学史上に名を留めた多くの作家やその作品に触れ、縦横に論じた70ページほどの論文で、こんなユングから引用された一節がある。:
--《前半生における人間の課題は、外的現実への適応と、確固とした自我の形成にある。それは外へ向かう道である。 》
ところが後半生では、この自我は大きく方向を変え、自我の根源から新たな生命力をくみ取り、今度は自覚的に、この根源に根を下ろさなければならない。 自我は無意識に、いつの間にか遠く離れた所へ来てしまっているから、根無し草にならぬために、もう一度 自分と繋がりをつけ、新たに結ばれなければならない、・・として この人生の転機はたいてい、人生の危機と結びついている、・・ というのである。







