世の 旅路のなかば 気づけば 正しき道を見失い 暗い森に迷い込む 噫 その森の凄さ! 荒涼として 語り難く 思い返せば げに恐ろしき/ その苦しさは死にも劣らず佳きことも あり されど なぜに迷い込みしかは分からず ただ眠く / 道を踏み外し谷の行き詰まりで / 丘のふもとに辿り来て空を仰げば /太陽は光り輝き丘を包みし/ --
だが 見よ! 絶壁の辺りに / 気づけば まだら毛を煌めかす一匹の豹 / 忽然 顕れいで立ちはだかり 思わず後じさり する / だが まさに その折り 陽が昇りきて香しき季節ともなれば / 取越し苦労も束の間・・ そして 次に顕れたるは 一匹の高慢な獅子! / その迫りくる気配に またもや慄きぬ/ そして 更に顕れしは貪婪どんらんたる痩せた牝狼! / その陰惨たる恐ろしさに心は重く 高きに登る望みも 失せしなり/ ・・))
嗚呼 されど よろめく目の前を見れば 卒然 人の姿 / 広き荒野で その姿を見て思わず叫び / どなたに おわしますかは 知らねども 憐み賜え! /すると 答えて曰く : わしは嘗て 人でありしも 今は さにあらず / わが父母は北イタリアの出 ともに古都マントアの生まれ / ユリウス・カエサルに遅れること32年 生まれは前70年にして 世はローマ初代皇帝アウグストゥス・オクタヴィアヌスのもと ローマに棲んでおった /そして トロイアが焼け落ちてのち / そこから逃れきてアイネイアスを歌った詩人ぢゃ
* おお ならば あなたは(ローマ最高の詩人)ウエルギリウスさま /
豊かな言の葉を注ぎ賜ふた 偉大なる詩人!!・・/
おお 世の誉れ 世の光 尊敬してやまなかった師なるお方 /
わたしが学びしは 貴方のあの麗しい文体でありました---
*ダンテ「神曲」地獄編 第一歌 より-- */-44*--63*-/*