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仔羊の回帰線

詩と散文のプロムナード :Promenade

*旅路:ダンテ「神曲」;地獄篇 より;-155--

2025年08月28日 09時17分50秒 | *文学・学問・詩・余滴: Ⅰ-Goo

   世の 旅路のなかば 気づけば 正しき道を見失い  暗い森に迷い込む 噫 その森の凄さ! 荒涼として 語り難く 思い返せば げに恐ろしき/ その苦しさは死にも劣らず佳きことも あり されど なぜに迷い込みしかは分からず ただ眠く /    道を踏み外し谷の行き詰まりで /   丘のふもとに辿り来て空を仰げば /太陽は光り輝き丘を包みし/  --

 だが 見よ!  絶壁の辺りに / 気づけば まだら毛を煌めかす一匹の豹 /  忽然 顕れいで立ちはだかり  思わず後じさり する / だが まさに その折り 陽が昇りきて香しき季節ともなれば /   取越し苦労も束の間・・  そして 次に顕れたるは 一匹の高慢な獅子! /  その迫りくる気配に またもや慄きぬ/ そして 更に顕れしは貪婪どんらんたる痩せた牝狼! / その陰惨たる恐ろしさに心は重く 高きに登る望みも 失せしなり/ ・・))

 嗚呼 されど よろめく目の前を見れば 卒然 人の姿 / 広き荒野で その姿を見て思わず叫び / どなたに おわしますかは 知らねども 憐み賜え! /すると 答えて曰く : わしは嘗て 人でありしも 今は さにあらず / わが父母は北イタリアの出 ともに古都マントアの生まれ / ユリウス・カエサルに遅れること32年 生まれは前70年にして 世はローマ初代皇帝アウグストゥス・オクタヴィアヌスのもと ローマに棲んでおった /そして トロイアが焼け落ちてのち / そこから逃れきてアイネイアスを歌った詩人ぢゃ

* おお ならば あなたは(ローマ最高の詩人)ウエルギリウスさま /

豊かな言の葉を注ぎ賜ふた 偉大なる詩人!!・・/ 

おお 世の誉れ 世の光  尊敬してやまなかった師なるお方 / 

わたしが学びしは 貴方のあの麗しい文体でありました---

 *ダンテ「神曲」地獄編 第一歌 より--  */-44*--63*-/*

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◎* 天を突きさす大樹: リルケ*より:-Nr.-121-

2025年08月22日 09時35分17秒 | *文学・学問・詩・余滴: Ⅰ-Goo

天を突きさす大樹は 純粋への昇華!

オルフォイス(竪琴の名手)が歌えば 辺りは静まり

 そこに芽生える新たな開始と変化!..

 森から姿を現した獣は 怖れも咆哮もなく聴き入る:

      こんな獣にも 魂の在るのかと・・) --

          *リルケ「オルフォイスへのソネット」 第一部 1.より                                       Rilke: Sonette an Orpheus 

 55編からなる この詩集は 夭折した少女への思いから生まれた。          そして根源に近づきえたのは、死者と未来とが分かち合う領域であり人は現在に棲みついているとともに過去とも繋がり、未来とも繋がり存在Da-seinしているのだ。*/-116*--206*-/**

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◎*「ヴェネツィアは消毒され・・何故だ」:T.マンより:-Nr.-123-

2025年08月15日 08時23分45秒 | *文学・学問・詩・余滴: Ⅰ-Goo

     「きみ、どうなんだね」とアッシェンバッハは声を潜めて云った。          「ヴェネツィアは消毒されている。なぜた?..」                                                     道化は嗄れ声で云った。  「当局のお達しで。この暑さで シロッコが吹く時は、決まってこうなるんでさ。シロッコは鬱陶しい。健康には良くありませんから」 

Von wegen der Polizei!   Das ist  Vorschrift, mein Herr,...                               .Bei solcher Hitze und bei Scirocco ,Der Scirocco druckt .

Er ist der Gesundheit nicht zutraglich.

 道化はそんなこと尋ねる人間がいるのは不思議だというように手を広げ、身振りで答えた。 --                           では ヴェネツィアは流行っているのではないな」                                    アッシェンバッハは声を低くして訊ねた。                                            疫病?..いったぃ どんな。シロッコが疫病と仰るんですかい、  おからかひになってはいけません。 予防措置にすぎません。 天候が鬱陶しいですから、当局が早くに手を打ったまででさあ  --                            なら、それでよい。

 Es ist gut !...sagte Aschenbach wiederum kurz und leise und liess rasch  ein ungebuhrlich bedeutendes Geld-Stuck in den Hut fallen , dann winkte er dem Menschen mit den Augen ,zu gehen. 

        アッシェンバッハは云うと たくさんの金を帽子の中にいれて、 もう行ってよい、と目配せした。     道化はニヤリと お辞儀をし去っていった。*/202*--145*--/***

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◎*美と芸術:-禁断の欲望:.マン「ヴェニスに死す」:-132--

2025年06月09日 09時00分09秒 | *文学・学問・詩・余滴: Ⅰ-Goo

 「旦那はお残りになるのですね。例の病気は怖がったりは なさらないのですね・・」  アッシェンバッハは理髪師を見つめた。                             リドに滞在して4週間目にグスタフ・フォン・アッシェンバッハは周囲の世界に幾つかの無気味な経験をした。                             第一に、シーズンが真っ盛りだというのに客の数が増えるよりは減っている気がする。 とりわけ、周りからはドイツ語が聞かれなくなって食卓や砂浜では外国語しか耳に入っては来ないのである。  

    「例の病気?..」とアッシェンバッハは聞き返した。お喋りの理髪師はすると、忽ち、口を噤んでしまった。                                                                     5の冒頭より---**

   ・アッシェンバッハは早熟な作家で50歳にして貴族の称号に値するフォンvonという敬称があたえられた。                              作品にはプロイセンのフリードリッヒ大王の生涯を詠った散文叙事詩や、アンチテーゼの雄弁によってシラーの「素朴文学と感傷文学」に比肩するといわれた論文「精神と芸術」などがあった。

           ・彼は新しきものへの憧憬や、自由を渇望する遁走の衝動から旅ごころに誘われヴェネツィアに旅立つ。                            そして そこで彫塑的に美しいタジオ少年に出逢い惚れこむ。                                      だが、そこではまた、疫病が蔓延しはじめ、なにか異変が漂っているのに気づくのである。> ---            ***     ->

*   トーマス・マンの「ヴェニスに死す」は深い情感と美学的探求を巡る物語で、貴族の称号を得た後の人生の危機に瀕した作家アッシェンバッハがヴェニスで自由と芸術的インスピレーションを求める旅に出る様子を描いて彼の内面の葛藤と、美少年タジオへの憧れが強烈な印象を与える。

 マンはアッシェンバッハを通じて、美への追求がもたらす可能性と危険性を探るのだが、ヴェニスの魅力的な景色とそこでの出会いが、アッシェンバッハの内面世界に深い影響を及ぼし、彼の創造性と人生観に変化をもたらしたこの物語は美と欲望、死と永遠のテーマを絡め合わせ多くの思索を促すのである。

「ヴェニスに死す」Der Tod in Venedigはトーマス・マンの代表作の一つで、文学としての美しさとともに人間存在の複雑さを浮き彫りにしている。---    トーマス・マンの「ヴェニスに死す」は美と芸術、そして禁断の欲望を探求する作品で、主人公のアッシェンバッハはヴェネツィアの美しい景色と静寂の中で若きポーランド貴族の息子タジオに心を奪われタジオの美しさに魅了されるのであり、彼の姿を追いかけることに夢中になるが、これは彼の内面の葛藤と欲望の象徴でもあり、少年タジオへの深い憧れはアッシェンバッハの芸術家としての理想と現実の間の狭間を表し、彼の精神的な苦悩を深める要因となる

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◎*ケラーと幻想作家ホフマンと猫:---145--

2024年12月04日 11時39分31秒 | *文学・学問・詩・余滴: Ⅰ-Goo

       :Keller

   19世紀のスイスの作家で1819年チューリッヒに生まれ、短篇集では「ゼルトヴィラの人々」Die Leute von Seldwyla という10篇よりなる作品集がある。 --これはスイスの架空の町を舞台にして書いた物語集で,その中の一つに「村のロメオとユリア」があり、これを聞けば誰しも、シェイクスピアの作品を思い起こすであろう。--二つの家族の対立に阻まれ、それを乗り越えようとする若い恋人同士の物語である。・・

また、「仔猫シュピーゲル」Spiegel,das Kätzchenというのもあり、これは賢い仔猫の冒険と生長の物語でユーモアと風刺が効いている。-- 因みに、猫を主人公にした作品には後期ロマン派の作家ホフマンの「雄猫カーター・ムルの人生観」Lebens-Ansichten des Katers Murrが有名で、幻想的で風刺的な要素が強い作品。---これはユニークな構成でできており二つの異なる物語が交互に進んでゆく。つまり、一つは知識豊富で自己中心的なムルが自身の人生観を綴った回想録であり、他は架空の音楽家クライスラーの伝記という想定で、偶然手に入れたクライスラーの原稿を勝手に引用しては自分の回想録に混ぜ込んでいってしまうのである。>>

ホフマンは因みに、音楽家としても作曲家並びに、音楽評論でも活躍した才能と経験の持ち主で、法律学にも長けていた反面、生活は自由奔放、しばしば飲酒に耽り、それで健康を害したが、その自由奔放さが創作活動に影響し、あの「黄金の壺」Der goldene Topf (緑の蛇=実は、若い乙女の化身:に詩人志望の大学生がひょんなことから恋をする-)のような幻想的で独特の作品をも生み出しているのである。>>  ホフマンはまた、小柄で風貌もあまりよくなく、晩年には健康問題に悩まされたというが、にも拘らず創造力に長け、多くの傑作を産み出していった。      */-108*---*73-/* + *

・因みに、漱石も「吾輩は猫である」の中で、ムルを同類として意識して書いている箇所もあるが、これには漱石山房の高弟としてドイツ文学者の小宮豊隆がおり、彼からヒントを得ていたらしく、また、豊隆は地方から上京して帝大生となり学生生活を送る初心な「三四郎」のモデルともいわれている。-->>

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*ゲーテとメンデルスゾーン:-150--

2024年05月10日 08時42分53秒 | *文学・学問・詩・余滴: Ⅰ-Goo

     今はあまり知られていない作曲家ツェルターは、ゲーテの晩年に10年ほど親交のあった友人である。    そして彼との書簡によく出てくるフェリックスというのは、メンデルスゾーンのこと。

 彼が若干21歳、ゲーテは晩年の80歳のころの親しき交流で、フェリックスはイタリアのローマから手紙を送る。

 メンデルスゾーンの作曲に「イタリア」があるが、イタリアはゲーテに多大な影響を及ぼした国である。                            というのも、ゲーテは37歳の時、秘かにヴァイマールから脱出してローマに辿り着くと、古典主義の大作 「イフィゲーニエ」 Iphigenie auf Taurie や  「トルクワード・タッソー」 を書き上げている。

    太陽の燦燦と降り注ぐ南の明るい国イタリア。: それに比して、暗い北国のドイツ。・・・  イタリアは当時、ゲーテ憧れの地であり、いかに素晴らしき国におもえたことかは、彼の個々の詩や詩集「ローマ悲歌」 Rom-ische Elegienなど見ても分る。

 ところで、ゲーテが今,どの程度、浸透しているかは問うまい。        当時も、大衆作家で人気のあったイフラントやコッツェブーと比べれば遠く及ばなかったという事実もある。                          だが、今なお読み継がれ、ゲーテ全集が年を追って幾度も編纂、出版され、深く研究されてきたことを見れば、ゲーテは偉大なる詩人であることは疑いもない事実なのである。

     

 

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*「ヴェニスに死す」:トーマス・マンより:-154--

2024年03月03日 09時53分56秒 | *文学・学問・詩・余滴: Ⅰ-Goo
 「ヴェニスに死す」という映画でも知られているトーマス・マンの短編に、同名Der Tod in Venedig がある。
これは中年の避暑にきた作家が、若くて美しい青年にプラトニック愛を抱くテーマを扱ったものだ。:
 リドに滞在して4週間目、グスタフ・フォン・アッシェンバッハは周囲の世界に、幾つかの不気味な経験をした。
シーズンが頂点に近づいているのに海水浴場に臨むホテルの客は減ってくるばかり。 周りで話されているドイツ語が少なくなり、竟には一言も聞かなくなっていた。
食事の際も浜辺でも、耳に入ってくるのは外国語ばかり。
或る日のこと、理髪師のところで話していると、妙な一言を聞いた:---     理髪師は旅立っていったドイツ人家族を話題に、云った。
「旦那はまだ、お残りで?.. 例の疫病のこと、気になさらない?..」
 すると、アッシェンバッハは見返し、
 「えっ?...何のことかね?...」
理髪師は途端、口を噤(つぐ)み、聞こえぬふりをした。 だが、・・
    *- *-  (((   *
Sie haben ,mein Herr, Sie haben keine Furcht vor dem Ubel  ?
Dem Ubel?.. Aschenbach sah ihn an und sogleich wiederholte er .
Der Schwatzer verstummte doch,und tat beschaftigt.
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*憧れと美徳: ソクラテスと美少年:マン「ヴェニスに死す」より:-157-- より

2024年02月05日 08時50分40秒 | *文学・学問・詩・余滴: Ⅰ-Goo

   芸術は より高められた生活である。:--- 醜い老賢者ソクラテスが美少年パイドロスに延々と、憧れと美徳について教えを垂れていた: -".   なぜなら パイドロスよ、ただ 美だけが 愛するに値すると同時に眼に見えるものだからだ。 美こそが 感覚的に受け入れ 耐えることのできる 精神的な ただ 一つの形式だからだ。   --- もし そうでなくて理性や美徳や真理が、それ以外の姿で 顕れたとしたら、われわれは どうなってしまうであろう。 :   --昔、セメレーが ゼウスの前で 身を焼き尽くしたように、我らも 愛のために 身を焼き尽くすのでは なかろうか。  したがって、美は 感じやすい人間が 精神に至る 道なのだ。道であり 手段にすぎない。      ---                                           パイドロスよ、 それから このソクラテスは 最も 微妙なことを口にした。:よく 聴くがいい。愛する者は 愛される者より  神に近い  なぜなら 愛する者には 神が宿っているが、愛される者には  そうではないからだ。>   ---

   蓋し芸術は人生より深い幸福を 感じさせるが、また、より疲れさせる。                            

 トーマス・マン「ヴェニスに死す」より                                              T. Mann: Der Tod in Veneig

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*フランチェスカとパオロ:道ならぬ恋:-159-- 

2023年12月22日 10時23分47秒 | *文学・学問・詩・余滴: Ⅰ-Goo

フランチェスカは北イタリアのラヴェンナ城主の娘。--  1275年に隣国の城主と政略結婚をさせられた。--が 彼は醜い男で狂暴極まりない

その彼には弟パオロがおり、こちらは眉目秀麗。-- 彼には9歳の娘と二人の息子がいた。--にもかかわらず、城主の不在の折りのある日、密会。--ところが、不意に帰宅した彼に見つけられ、二人は殺害されてしまう。--   *- *- (((   

 ・ 以下、ダンテの「神曲」 より:

 それから私はこう語りかけた。--「フランチェスカよ、苦悩は悲しみと憐みゆえ。-甘美なため息のおりふし、どんなきっかけで胸の思いが恋と知れしか」

  フランチェスカは云う。--「惨めな境遇にあって 幸せの時を思い起こすより悲しいことはありません。--ある日私たちは イギリスのアーサー王伝説の円卓騎士  ランスロットが  恋のとりこになった物語を読んだのでございます。--  ほかに誰もおりませんでしたので、憚ることなく二人の眼は合い顔が色を変えてきますと、あの人は察したように 私を抱きしめられたのでございます。・・」   ダンテ「神曲」地獄篇より

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*「ブリキの太鼓」:グラース より:-163-- 

2023年04月09日 09時11分15秒 | *文学・学問・詩・余滴: Ⅰ-Goo

      オスカルくん、きみがゲーテ時代に太鼓を叩いていたなら 不自然極まりないな、きみはあの分厚い「色彩論」で殴りつけられていただろう。 

Vgl. 「色彩論」Farben-Lehreは ゲーテの浩瀚な科学的論文。

   「ブリキの太鼓」の主人公オスカルは 事故により 三歳児のまま生長がとまった少年。         * -  (((  *

  或る時、本棚から一冊貸してほしいと頼んだことがあった。

すると「貸しと借り」Soll und Haben と ゲーテの「親和力」

Die Wahlverwandtschaftenが目に飛び込んできた。・・ *-*

  「貸しと借り」はドイツ19世紀作家フライタークFreytag の社会小説。 市民生活を讃歌してベストセラーになった長編小説。

 ・またゲーテの長編「親和力」は科学用語で、一組の夫婦と その友人と 姪の4人の男女が、やがて結びつく といった一種の不倫小説。

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