もと連隊兵のR.という男。 彼はどうしようもない大酒豪、それが元で或る時こっぴどい殴打の刑に処せられる。以来、品行方正、火酒からは足を洗った。が、それは三日坊主、四日目には早くも泥酔する有様。すると、逮捕され尋問を受けた。 >>
「なにゆえ、また大酒の悪習におちいったのか」と。すると返答はこんなだった。 --- 「へい、悪いのは自分ではありません。自分は 遊園地の近くを通りかかったのであります。すると折から、ドームの鐘が鳴り渡ったのであります。-ポンメラン・ポンメラン!..」-と。 ううむ・・鐘のやつめ、鳴りおるわ・・くそう!喉が鳴ってくる! 自分は 刹那、そう口にしたものの思いとどまり、約束を思い起こし一滴も飲まずにいたのであります。ところが、ケーニッヒ通りに来ますと、ほんの一瞬、市庁舎の前で一休み。すると頭の上からまたもや鐘が鳴り渡ったのであります。--キュンメラン、キュンメラン、キュンメラン--と。自分はすると、塔に向かい叫んだのであります。-- 塔の鐘よ、雲を引きちぎるほど鳴り響くがよいわ。けれども、わが魂よ、忘れてはならぬぞ、約束を・。喉がなって仕方なかったのでありますが、決して一滴も飲んではならぬと誓ったのであります。>>
然し、帰路、養老院広場のほうへと回り道。すると、そこに一軒の居酒屋。30人余りの客でごった返していたのでありますが、折りしも また、連隊長殿、養老院の塔の鐘が鳴り響いたのであります。--アニゼッティ、アニゼッティ-と。すると とたん、もはや堪忍袋の緒が切れ、矢庭に一杯頼むぞ、いくらかねと聞いたのであります。-亭主は すると、6ペニッヒでやすといいますと、即座に差し出されたコップ酒をぐいと飲み干したのであります。が、以後はどうなったのか、一向に覚えてはおらぬのであります。>
H. von Kleist: Der Brannt-Wein-Saufer und Berliner Glocken .Samtliche Werke . Hanser Vlg. ebd. S. 267f..
Erste Ubersetzung; 1987. 8.21.. 夏目 政廣訳 ハンザー版 クライスト全集より







