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五地方隊にも旗艦を 護衛艦隊再編後の地方隊

2009-01-13 19:18:41 | 防衛・安全保障

■地方隊にも旗艦が必要だ

 海上自衛隊は、機動運用に充てる護衛艦隊とは別に、沿岸警備にあてる部隊として、横須賀、佐世保、舞鶴、呉、大湊の各基地に地方隊を置いている。地方隊は基地機能の維持や曹士人事、教育訓練なども行っている。

Img_1365  その地方隊が沿岸警備を行う際に主たる部隊として扱われるのが、掃海隊である。掃海隊には掃海艇三隻が配備されており、ミサイル艇2隻から成るミサイル艇隊が配備されている舞鶴、佐世保、大湊(3隻、ただし将来的に2隻)を除けば、実際には基地を機能させる船を除き、掃海艇が重要な部隊となる。将来的には30㍉機関砲を搭載した新型掃海艇を導入し、沿岸警備能力を充実させる構想ではあるが、それにしても少ない。

Img_3910  もともと、地方隊には二個護衛隊、もしくは魚雷艇隊や駆潜艇隊を有しており、護衛隊の所属護衛艦は小型護衛艦(DE)が配備され、護衛艦隊と比べれば見劣りするものではあったが、数はあった。しかし、95年防衛大綱改訂に伴い、護衛艦定数の削減が決定し、護衛艦隊は減らせない、ということから、地方隊の護衛隊が削減、1個護衛隊体制となった、魚雷艇、駆潜艇は老朽化により区分そのものが消滅した。その後、2008年の部隊改編により、地方隊隷下の護衛隊が護衛艦隊に編入され、今日に至る。

Img_9750  現在、地方隊において、最も大きな自衛艦は、ひうち型多用途訓練支援艦である(除籍された砕氷艦しらせ、は横須賀地方隊直轄であったが)。各地方隊に直轄艦として配備、満載排水量は1400㌧、武装はなく速力は15ノット。艦艇の水上射撃や航空機の魚雷投下訓練、潜水艦の訓練支援などにあてるもので、後部には広い作業甲板が配置、水上標的を運用するが、必要に応じて中型トラックを4台程度搭載し、クレーンを用いて揚陸作業にあてることもできるので、災害派遣にも対応している。

Img_8039  地方総監といえば、海将。しかも、陸上要員を中心に2000名前後を指揮する立場なのだが、どうしても護衛隊群司令と比べれば、という気がしないでもない。地方隊の展示訓練を想像してみると良い、多用途訓練支援艦は、重要な自衛艦であるが、イージス艦やヘリコプター搭載護衛艦と比較すると、どうであろうか。また、災害派遣に対しても、この規模で果たして大丈夫なのか、という疑問がわいて来ないでもない。やはり、地方隊といえば、というような艦が必要なのではないか、と考える次第。

Img_6221  写真は1号型輸送艇。地方隊には、概ね直轄艦として710㌧の輸送艦か540㌧輸送艇が配備されており、災害派遣や軽輸送任務にあてているが、それにしても輸送能力では小さい、と言わざるを得ない。ここで、地方隊旗艦に、両用戦に対応する水上艦を導入しては、と考える次第。水上戦闘艦と輸送艦を折半したような艦艇としてはデンマーク海軍が建造したもので面白い一隻がある。アプサロン級といい、2004年から2隻が就役した。速力は23ノットと水上戦闘艦と比較すれば遅いものの、ヘリコプター2機を搭載し、5インチ砲、ハープーンSSMや対空用のESSM用VLSを搭載した満載排水量6300㌧の“輸送艦”だ。

Img_6329  基本的には、うらが型掃海母艦に車両甲板を取り付け、たかなみ型護衛艦と足して二で割ったような艦である。デンマーク海軍は、多目的支援艦と表現しているがNATOは揚陸艦に区分しているもので、900平方㍍の車両甲板には、主力戦車からコンテナ(最大34)まで搭載することが可能だ。三次元レーダーSMART-Sを搭載しており、戦闘能力は新世代フリゲイトと比較しても遜色なく、旗艦任務から輸送艦、掃海母艦、病院船などにも対応できるものである。地方隊の任務対応能力充実と、地方総監の位置づけの再認識の為にも、旗艦のような艦は必要なのではないか、と考える次第。

HARUNA

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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2 コメント

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初めて、書き込みさせていただきます。 (J-CON)
2009-01-18 09:42:19
初めて、書き込みさせていただきます。

>地方隊旗艦・・・・・

結論からもうさせて頂ければ、不要です。

それは、H20年度海上自衛隊が実施した大規模な組織改編の趣旨を、ご理解頂ければ・・・

まあ最近流行の言葉の、「フォースユーザー」「フォースプロバイダー」思想に沿ってこの改編が実施されています。

確かに地方隊所属護衛艦は「護衛艦隊」に編成替えされました。
しかしここで理解していないといけないのは、護衛艦隊および、それを指揮する護衛艦隊司令官は練度管理等を行う「フォースプロバイダー」なのです。

そして実際部隊指揮運用する「フォースユーザー」が護衛艦隊直上の自衛艦隊司令官であり、そして各地方総監なのです。

地方総監が指揮統括すべき、任務(沿岸防衛・災害派遣)が生起した場合、地方総監の指揮下には、護衛艦その他の艦艇、航空機が提供されることになっております。

故に地方隊に所属する部隊はほとんどいないのです。
返信する
J-CON 様 はじめまして (はるな)
2009-01-18 11:49:22
J-CON 様 はじめまして

コメントどうもです 今後ともよろしくお願いいたします。

当方の地方隊に関する視点の背景には、地方隊は、基地機能維持、艦船補給、隊員教育という任務に加えて、“旧海軍の連合艦隊(常備艦隊)と鎮守府(警備艦隊)のような関係”という位置づけか、地方隊は沿岸警備を主体として、例えば“スウェーデン沿岸砲兵モデル”のような、強襲艇、対潜哨戒艇、ミサイル艇などを組み合わせた編成に、というものがあります。陸自には、旧軍の船舶工兵にあたる部隊がありませんし、後者の任務は、ある程度必要なのかな、と考えます。

さて。
幾つか、これは論点となるように思うのですが。

本論は、自衛艦隊に地方隊の護衛隊が移管したことは問題としていません、理由は、次期護衛艦の価格高騰が予測される中で、はつゆき型護衛艦の後継は十分整備できるとは、考えられないからです。したがって、これら護衛隊は、最終的には純減になるのでは、と予測しています。

それを踏まえた上で、護衛艦隊隷下の護衛隊では対応できないような任務に充当する多用途支援艦が必要ではないか、という議論です(個人的には、地方隊HPのトップを飾るような立派な艦があった方が、指揮官の格が、というのもないではないですが)。

もうひとつ、災害派遣に即応でき、島嶼部防衛に部隊を迅速に海から輸送できる艦船が、そもそも無いこと。
http://harunakurama.blog10.fc2.com/blog-entry-222.html
にも記しましたが、地方隊が行う訓練の中には、災害派遣も含まれます。当然、それに備えた訓練も必要になるのですが、こうした訓練を護衛艦隊隷下の訓練運用体系で、充分盛り込むことが可能か、という点があります。

ただし、地方隊の護衛隊を護衛艦隊に移管したことについて、疑問がないかと問われれば、そうでもありません。
地方隊の沿岸警備運用と、護衛艦隊の機動運用ではそもそも目的とする訓練想定が異なるのではないか、ということです。
地方隊が実施していた護衛艦の訓練を護衛艦隊司令官が一括して行えば、例えば数が必要な、つまり1~2隻ではできないような訓練を実施することはできるのですが、それは、例えば沿岸警備に関係する訓練を、5地方隊持ち回りで年度ことに計画し、地方隊演習、というようなかたちで実施すれば問題ないのでは、と考えます。
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