■50周年の大久保駐屯地祭2007
大久保駐屯地祭2007詳報、第三回目は訓練展示編である。今回は50周年ということで、趣向を凝らした式典となった。例えば観閲行進ではダンプ中隊が横断幕を展示したように、である。
保安中隊のライフルドリル。さて、大久保駐屯地祭詳報の第一回目には、四回で全て掲載したいと記載したが、なるほど、よくよく写真を選定すると、どうしても枚数が多くなる。このため、訓練展示編をライフルドリル、アーチェリー、銃剣格闘、車輌紹介で前半とし、模擬戦を後編として二回に分けて掲載したい。
74式戦車の上空を行くヘリコプターの編隊。観閲行進は、戦車の殿とヘリコプターによる祝賀飛行により終了し、いよいよ訓練展示である。
訓練展示として、まず並べられたのは風船が置かれた台。まさかこれを戦車の空包至近距離で吹き飛ばす?などと想像を巡らせるが、なにぶん、吹き飛ばすだけならポールと風船だけで事足りる、火炎放射機の標的にしても妙である。いったい何に用いる為の標的なのだろうか。
なんと、アーチェリーの訓練展示を行うのだ。
風船に矢が命中すると、破裂することで紐に重石の重量がかかり、的から字が書かれた板がせりあがって来る仕組み。名手というだけあって、必中である。
しかし、射手は二人、看板は三枚、最後の一つはどうするのだろうか。
そこに歩み出たるは、大久保駐屯地司令、小川祥一陸将補その人だ!。なんと駐屯地司令自ら、最後の射を行うという。会場アナウンスによれば、小川司令はアーチェリーの名手というわけではなく、この50周年の式典のために密かに練習を積んだのだという。
指揮官先頭、精神集中と研ぎ澄まされた感覚、射る事、的へ一寸のくるいもなし!命中である。大・久・保、見事に描かれる的の標語。
そんな中、訓練展示模擬戦に備え待機する仮設敵の皆さん。これから敵役で小銃を以て戦車や大砲に立ち向かう役目の方々。
第304保安中隊のライフルドリルが、アーチェリーに続いて行われる。
第304保安中隊は中部方面隊直轄の警務隊で、儀仗部隊として、また有事の際には司令部警備や捕虜取り扱い、交通整理などを行う部隊である。
ライフルドリルとは、規則正しい行進とともに複雑な妙技を展示する手法である。ただし、このライフルドリルは、警務隊の陸海空統合や情報保全任務対処強化などの改編を受ける為、訓練時間などの関係もあり、保安中隊によるライフルドリルの演技展示は、今年度で廃止されるとのこと。
保安中隊、米軍編成をみると、軍団直轄で憲兵旅団があったりする。さすがに方面隊に警務旅団は人員編成上編成は難しいかもしれないが、駐屯地警備や弾薬庫警備など、警務隊の保安中隊は各方面隊にもうすこしあってもいいのでは、と思ったりする。また、師団、旅団にも有事の際には交通統制、捕虜管理など人員が不足するということで音楽隊の支援をうけるのだとか。警務隊の陸海空統合とともに、抜本的な人員見直しも必要なのではないかな、と。
こちらは、民間大学のチアリーディング。パンサーズというチーム名。本論の主旨とはやや外れるが、伊丹駐屯地祭などでも実施されることで有名、これ目当ての人いるらしい。
訓練展示模擬戦に備え、待機する74式戦車。観衆もこの時間帯になるとかなりの人数だ。式典は1000時からであるが、模擬戦をみるために来場する人も少なくないようだ。この日は快晴に恵まれ、日傘などもちらほら。ちなみにこの会場、売店のある地区とは車輌用通路で隔てられており、観閲行進や訓練展示の時間帯は往来できない。そういった理由から、ジュースやペット緑茶などの購入はお早めに。
銃剣格闘展示が続いて行われる。鞘に収められた64式銃剣が物々しい。64式銃剣は、ゴボウのように長いことからゴボウ剣と呼ばれた旧軍の30年式銃剣と短いM-1カービン用の銃剣の中間の長さを考えて開発されたため、長さは41㌢もある。着剣した64式小銃の迫力はかなりのものである。
銃剣格闘は、火力が発達した今日の先頭においては無用のものではないか、との議論も一部であるようだが、陣地占領や掃討戦などの近接戦闘では重要性は変わりなく、特にイラク治安作戦における米軍の報告書にも、近接戦闘や非正規戦では全ての戦闘要員や後方要員の個々人の戦闘技量をいかに高めるかが重要という報告が出されている。一つの武道として体系化された陸上自衛隊の銃剣道や銃剣格闘術は、今後も連綿と極みに向け進んでゆくことと思う。
ずらりと整列する、第4施設団、第3師団の各種車輌装備や火砲。銃剣格闘の展示が終了すると、いよいよ模擬戦である。大久保駐屯地の模擬戦では、参加する各種装備が、まずその広いグラウンドに整列し、どういった用途に用いられるのかを説明する。
自衛隊装備というのは、どれも同じに見えることがあるそうだ。一般の人への広報が目的のこうした行事では、戦車や火砲とともに装備されている装甲ドーザー、地雷原処理車、架橋装置なども解説することで、より一層の理解が得られることとなる。アナウンスが順番に車輌や火砲を解説し、解説を受けている装備は旗を高らかに揚げて、装備を示している。
その解説を行っている背後では、これから始まる模擬戦にそなえて、仮設敵が戦車の大敵、模擬地雷を敷設中である。この大きさだと対戦車地雷であろう。早くしないと模擬戦が始まってしまうので、模擬地雷を設置したら仮設敵は速やかに撤収する。
そして仮設敵はライナープレート(地下陣地などを構築する際に天井などが崩落しないように設置する装備、太平洋戦争で敵の火力に散々な目にあわされた日本では、高度な陣地の地下化や野戦築城技術を受け継いでいる)に潜み、状況開始を待つ。
その訓練展示模擬戦は、次回の詳報にて掲載したい。お楽しみに!。
HARUNA
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