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玄武2010演習発動! 北部方面隊隷下師団・旅団より1万5000名が参加

2010-08-23 23:37:45 | 防衛・安全保障

◆北方からの脅威再興に備える大規模演習

 北部方面隊が大規模演習を行うという記事は北海道新聞の引用で紹介しましたが、産経新聞に北部方面隊演習の開始を報じる記事が掲載されていました。

Img_2946 「最大限の能力を発揮」 陸自北部方面隊の総合戦闘力演習がスタート・・・ 陸上自衛隊で最大の方面隊である北部方面隊(北海道)の総合戦闘力演習が23日、北海道千歳市の北海道大演習場などで始まった。午前10時半からは、東千歳駐屯地の第2滑走路で訓練開始式が行われ、千葉徳次郎・北部方面総監は「相好戦闘能力をいかに最大限発揮するかが重要」と演習の意義を強調した。

Img_2906 この演習は、北部方面隊が平成18年度から5カ年計画で行っているもので、今年度が最終年の総仕上げとなる。演習名は「玄武2010」と命名され、陣地などを構築する「防衛作戦準備」と、防勢によって敵を阻止した体制から攻勢作戦に転移する「攻勢作戦」の2つの場面で実施する。北部方面隊の第2師団、第7師団、第11旅団など約1万5千人の隊員、約120両の戦車、約40門の野戦砲、約50機の航空機が参加。

Img_2784  北海道大演習場のほか、別海町の矢臼別演習場、上富良野町の上富良野演習場などで繰り広げられる。 演習に先立って行われた訓練開始式には、北海道大演習場に約4千人、矢臼別厰(しょう)舎(しゃ)ヘリポートに約2千人の隊員が出席。千葉総監の「やるべきことをやる、という一言に尽きる」との激励に、真剣な表情で聞き入っていた。

Img_2899 演習は9月5日まで「防衛作戦準備」、同11日から14日まで「攻勢作戦」が実施される。引用は以上です。師団や旅団の訓練検閲を統合した方面隊規模の訓練、という位置づけですね。2010.8.2311:53http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100823/plc1008231157007-n1.htm

Img_2963 大規模演習、というと最初に行われたのは1955年の“北部方面隊秋季演習”にまでさかのぼる事が出来ます。創立間もない陸上自衛隊にあって、最初の大規模演習となったこの演習では、島松演習場・千歳演習場において第2管区隊・第5管区隊の対抗形式で行われ、人員20000名、車両2500両が参加しました。

Img_2940  続いて1956年にはこの演習の延長上として第7混成団と第1空挺団の参加を以て対空挺演習が実施、保安隊時代から自衛隊時代に移行するとともに構築が急がれた北方重視姿勢の完成を見る事となりました。今回の玄武2010演習も、冷戦時代の4個師団体制を基幹としていた北部方面隊から、現在の2個師団2個旅団体制に改編された北部方面隊の能力を北方からの脅威に対して提示する、という事が大きな目的となるのでしょうね。

Img_2917_1 ロシアが実施したボストーク2010演習を筆頭に、近年、極東ロシア軍の能力強化が顕著です。朝鮮半島や北方領土問題、中ロ関係を睨みロシア軍は冷戦時代の規模を彷彿とさせる水陸両用部隊の再建を実施しており、航空戦力や陸上戦力の再建も冷戦後としては異例の規模で進められており、この時期に日本側としても姿勢を見せておくことは重要です。

Img_2940_1  姿勢を見せつけた演習、というと1983年の“北斗演習”があります。北部方面隊が創設30周年に併せて初めて実施した1982年の“北部方面隊火力戦闘演習”、その翌年に行われた“北斗演習”では、北部方面隊とともに米陸軍緊急展開部隊である第9軍団が日米合同で北海道地域における防衛演習を実施しています。

Img_2928  北斗演習はソ連の脅威に対しての日本の姿勢を明確に示した演習、というもので当時としては空前の規模の日米合同演習でした。第一段階として日米間の連携を図るヤマサクラ3演習が1982年に行われています。ヤマサクラは日米指揮所演習で陸士出身(陸士60期)の渡辺敬太郎総監が米陸軍第9軍団長ワインアンド中将とともに統裁官を務め実施されたもので、続いて渡辺総監は陸幕長、ワインアンド中将は在日米軍司令官に昇進した上で実施されたのが北斗演習でした。

Img_2873_1  北斗演習の期間は10日間で、北部方面隊からは第11師団を訓練担当部隊として第10普通科連隊を基幹に1500名が、第9軍団からは第2-2歩兵大隊を基幹に950名が参加、人員の規模だけで見た場合は数千名が参加する北方機動演習の方が大きいですが、北部方面隊火力戦闘演習、ヤマサクラ3、北斗演習、という演習が連動されて実施されたという点を考えれば意味合いは大きく、何よりも日米の一体化という事をソ連に誇示出来ましたので、1979年のソ連軍アフガニスタン侵攻以来、新冷戦という局面を迎えていた冷戦構造に際して、少なくとも極東地域では楔を打ち込む事が出来たのだろう、と言えます。

Img_2946_1  北部方面隊は重装備重視という装備体系を採っており、北方からの大規模着上陸を含めた脅威に抑止力を発揮していますが、一方で西方からの脅威に対しても戦略予備部隊という位置づけで高い能力を保持する、という事は大きな意味があります。冷戦終結から二十年以上が経ちましたが、極東地域は朝鮮半島と台湾海峡という問題があり、緊張は比較的高いまま推移しました。ここに北方脅威の再燃と中国の軍拡、北朝鮮の核武装という状況が重なっている訳ですので、日本としても姿勢を見せる必要は大きい訳です。

HARUNA

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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はるな様 こんばんは。 (ボンバル)
2010-08-24 01:42:43
はるな様 こんばんは。
今回も興味深い記事を拝見させて頂き、ありがとうございます。
南西方面と半島有事に気を取られがちでしたが、北方の脅威も依然として、存在しているのですよね。日本防衛の固い意思を示すためにも、離島奪還演習等も含めて、このような演習は極めて重要かと感じます。しかしながら、三方面の脅威に備えるのも本当に大変だと思います。
新しい大綱は、まだ発表されてませんが、陸自で考えても、戦車600両ですが、戦車の耐用年数、不勉強で何年か分からないのですが、仮に長く見て30年?としても、単純に計算して、最低でも、毎年20両を調達しないと現大綱の数を維持出来ないと思いますが、22年予算で13両、21年予算で、8両か9両だった様に思いますが、戦車だけを見ても、仮にも現状の調達ペースが続いた場合、大綱の数を維持出来ないように思えてしまいます。
同じことは、火砲にも言えるような気がしますし、他の装備品についても同様に思えてなりません。
水上艦艇も、ある艦艇の雑誌の予測では、現状の予算が続くと15年位先には、40隻前後になるのでは?という記事でした。
仮に、そこまで減ってしまうと相当な支障が出るような気がいたしますが、現状では、DDクラスの水上艦艇を2隻予算化すると、潜水艦をあきらめるような状況に見えますし、P-1やSH-60Kの調達ペースも極めて少ないように感じます。
空自にしても、ミサイル防衛に予算が割かれた事情はあるにしても、更にF-X選定の度重なる遅れ?もあり、ここ数年、全く戦闘機の予算計上がありませんし、昨年は輸送ヘリが1機と戦闘機の近代化改修などがごく僅かだったように、記憶しております。(この中にはF-2のJDAM機能の付与とE767とE-2Cの改修等は大変勝手ながら含んでおりません。)
個人的な妄想で恐縮ながら、装備品の調達に関して長々と書いてしまいが、長期的に考えて、我が国の防衛体制は一体どうなって行くのか、懸念されます。
もちろん、装備品だけが防衛体制の全てではなくて、国防の任務に就かれている、自衛官の皆様の大変な、ご苦労があってこそ、我が国の安全が保たれていることを忘れないようにしております。
財政再建も、大変重要な課題だとは思いますが、マニフェストなるものを実施することを考えると、防衛体制の充実の方が遥かに少ない予算で実現出来るのではと妄想してしまいます。
長々と失礼いたしました。
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ボンバル 様 こんばんは (はるな)
2010-08-25 23:22:10
ボンバル 様 こんばんは

新防衛大綱で戦車が日本防衛にどの程度必要と考えられるかは未知数ですが、しかし、米海兵隊もM-1A1戦車を300両以上保有している訳で、島嶼部と山間部、市街地を中心に成り立つわが国土において不整地突破能力が高く、防御力や火力がともに大きい戦車の重要性は大きいと言えるのですけれども、ね。

調達数ですが、除籍される戦車と防衛大綱水準への縮減とで併せて行っているので、このあたり単純に数量だけで断定することは出来ないのかな、と。

水上戦闘艦ですが、定数は47隻、護衛艦はるな、で36年頑張れましたので、艦齢延長などを行えば、中期防あたり6~7隻の建造で対応できるとも思うのですが・・・。

F-Xに関しては完全な遅れですね。しかし、本当にF-35を考えているのか、と。
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