北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【日曜特集】第2師団創設63周年旭川駐屯地祭【5】北鎮師団の機動打撃力(2013-06-09)

2017-02-12 22:44:00 | 陸上自衛隊 駐屯地祭
■北鎮師団の機動打撃力
 北鎮師団の機動打撃力、この能力が最大限発揮される訓練展示の様子を、前回に続き視てまいりましょう。

 90式戦車が敵戦車部隊へ120mm砲を連続発射する、自動装填装置により空包を行進間射撃を繰り返した。/旭川駐屯地第2師団、師団編成を視てみますと、師団司令部および同付隊、第3普通科連隊、第25普通科連隊、第26普通科連隊、第2戦車連隊、第2偵察隊、第2対舟艇対戦車中隊、第2特科連隊、第2高射特科大隊、戦闘部隊は列記このようになっていまして。

 74式戦車も併せて前進する、この翌年から第2戦車連隊には最新鋭10式戦車が配備開始となった、背後の87式自走高射機関砲と重なりが面白い。/師団隷下部隊は更に第2施設大隊、第2後方支援連隊、第2飛行隊、第2通信大隊、第2化学防護隊、第2音楽隊、となっています。そして師団隷下部隊の駐屯地は、この旭川駐屯地と名寄駐屯地に遠軽駐屯地と留萌駐屯地、更に上富良野駐屯地、と道北地方に広がる。

 仮設敵のT-74戦車周辺へ次々と我が攻撃の爆炎を模した着色煙が盛り上がる。/師団警備隊区は名寄警備隊区第3普通科連隊長、旭川警備隊区第2特科連隊長、遠軽警備隊区第25普通科連隊長、留萌警備隊区第26普通科連隊長、上富良野警備隊区同第4特科群長、となります。なお上富良野警備隊区同第4特科群長は方面直轄部隊となっています。

 第1対戦車ヘリコプター隊のAH-1S対戦車ヘリコプターが帯広より航空支援へ飛来しました。/旭川駐屯地の駐屯部隊は、師団司令部と司令部付隊、師団隷下第2特科連隊、第26普通科連隊第4中隊、第2後方支援連隊、第2高射特科大隊、第2施設大隊、第2通信大隊、第2飛行隊、第2化学防護隊、第2音楽隊です。廃止された第9普通科連隊も旭川駐屯でした。

 96式多目的誘導弾システムもAH-1Sとともに対戦車戦闘を継続的に展開してゆく。/隷下部隊は、名寄市名寄駐屯地に第3普通科連隊と第2偵察隊が駐屯、紋別郡遠軽町遠軽駐屯地に第25普通科連隊がいまして、留萌市留萌駐屯地に第26普通科連隊と、空知郡上富良野町上富良野駐屯地に第2戦車連隊と第2対舟艇対戦車中隊が其々に駐屯しています。

 87式自走高射機関砲が陣地変換、我が方の航空攻撃に対し相手からも航空攻撃が我が方へ仕掛けられることを未然に抑止する。/自衛隊の北海道における役割ですが、人口に占める影響も大きいのです。名寄駐屯地に置かれる名寄市は人口28400名、遠軽駐屯地の置かれる紋別郡遠軽町の人口は20800名、留萌駐屯地の置かれる留萌市は人口22200名、上富良野町の人口は11500名となっています。

 96式装輪装甲車が74式戦車の支援を受け前進する、戦車が切り拓いた第一線を装甲車に乗車する機械化普通科部隊が戦果拡張へ向かう。/名寄市は人口28400名、紋別郡遠軽町の人口は20800名、留萌市は人口22200名、上富良野町の人口は11500名、あまり自衛隊を産業の面で観るべきではないのですが、師団普通科連隊の定員は1200名ですので、駐屯地一つが街の存続を左右しているともいえるもの。

 UH-1J多用途ヘリコプターが近接し、普通科隊員と斥候部隊の空輸や負傷者搬送、弾薬などの空輸を行う。/実はこの地域経済への影響が、前述しました第9普通科連隊の廃止改編に影響しました、第9普通科連隊は旭川駐屯地に駐屯しています、これは師団司令部連隊という位置づけで中部方面隊では第3師団が市内の第36普通科連隊、第10師団の第35普通科連隊と同じ。

 75式自走榴弾砲の射撃、自走榴弾砲は弾薬輸送トラックよりも迅速に不整地を突破し展開するため、その補給には空中機動による補給も威力を発揮するでしょう。/しかし、第2師団改編では第9普通科連隊、師団司令部所在地連隊ということでこちらは維持される方針であったのですが、他の駐屯地地元と国会議員与党実力者を巻き込んだ連隊維持の政治圧力が大きくなり、消去法で駐屯地維持に響かない連隊が廃止となった、と。

 99式自走榴弾砲、52口径、つまり155mmの後継の52倍という長大な砲身が醸す迫力が凄い。/実際第9普通科連隊は精鋭中の精鋭連隊だったとのことで、難しい話があったのは分かるけれおも、あの9連隊の廃止は痛かったよなあ、と元第2施設大隊で仙台在住の方がしみじみと語っておられました、部隊廃止は師団全体の隊員士気に非常に大きく響くようです。

 5門の榴弾砲が中隊効力射を展開する、一発の砲弾は長径45mの楕円形に有効弾片を散布し面制圧する。/防衛の面から見ますと、第2師団隷下部隊の駐屯地は即実戦体制です、名寄駐屯地等は自衛隊で最も北に位置する普通科連隊、第3普通科連隊が駐屯していますが情報収集に当たる第2偵察隊が駐屯しています、北の脅威が着上陸の際に即座に情報収集へ迎える態勢だ。

 瞬間!閃光!一喝!衝撃!、この四点が一度に叩きつけられるのが線釈放射撃の迫力だ。/名寄駐屯地一つとってもこれだけではなく、北部方面隊直轄の第1高射特科群第4高射特科群のホークミサイル部隊が駐屯していまして、航空攻撃へ防空の傘を付与できますし、第2特科連隊第2大隊が名寄へ分駐、師団砲兵の長槍を普通科連隊へ常駐させたかたち。

 特科部隊の支援を受けつつ、74式戦車が前進する、この74式戦車は陸上自衛隊で最初にこの第2師団へ配備が開始され、全国へ行き渡っている。/上富良野駐屯地も第4特科群が方面隊直轄部隊として配置されていますが、冷戦時代には74式自走榴弾砲を運用する第117特科大隊が配置、200両が生産された75式自走榴弾砲に加え74式は直接戦闘も視野に含めた105mm砲で師団へ戦闘加入を想定していました。

 中隊効力射、実戦ならば即座に陣地変換を行う、さもなくば反撃を受けるためだけれども、訓練展示では用地制約からそこまではしません。/第102装甲輸送隊という、装甲車の専門部隊も上富良野駐屯地に置かれていまして、これにより普通科連隊へ装甲輸送隊を配属すれば即座に機械化普通科連隊を編成できます、自衛隊の装甲車両不足の苦肉の策とも言われますが、整備と管理を一括化したため、とも。

 更なる戦車小隊が増勢へ戦闘加入する、戦車のもつ威力は今なお陸上戦闘を左右する。/ソ連軍着上陸に際しては即座に戦闘となる事を意味していましたから、本土師団の様に有事の際に普通科連隊へ戦車大隊から戦車中隊と特科連隊から特科大隊を配属して連隊戦闘団を編成し、防衛戦闘に当たる、という悠長なことをやっている時間が無かった、という。

 AH-1S対戦車ヘリコプターが再度対戦車攻撃へ、陸上自衛隊最初の対戦車ヘリコプター隊は北部方面隊の帯広から始まった。/仮想敵国ソ連に備える、第2師団長には豪放磊落な師団長が補職される事が多かったようで、こんな発言を新聞記者を集めた師団長就任会見で堂々と示したり、師団長は有事の際に最終確保地域を保持できない場合には責任とって自決する、という発言の方もいました。

 TOWミサイルに20mm機関砲と70mmロケットを駆使し敵戦車を蹂躙し敵車両や敵歩兵を面制圧する。/実のところ、冷戦時代に第一線にいらしたOBの方の話を聞きますと、そしてなによりも、これは昭和の話ではなく平成に入ってからソ連が崩壊している訳ですから、思うほど昔の話ではなく、日本本土にソ連軍の戦車師団や自動車化狙撃師団上陸の可能性があった、と。

 90式戦車、1500馬力のエンジン出力にものを言わせ遮二無二敵陣地を蹂躙へ向かう、状況はいよいよ最終局面が近づく。/第一線部隊の近接戦闘部隊には憲法問題も何もなく、着上陸した敵が正面に来たらば撃破あるのみ、こんな話を聞いたりもしますと、中央と第一線部隊の距離感というもの、これを同時に視る方々の視点、もう少し考えなければならない、とは毎度の事ながら痛感する。

 空中機動部隊と合わせ空地一体の戦闘を展開する、自衛隊は対機甲戦闘とともに空中機動力を草創期から錬成し続けてきました。/日本を守っているのは自衛隊、と自信を持って言えるのは、アメリカが日本を守っているという傲慢な発言の主がアメリカの大統領選で飛び出したりもしましたが、在日米軍の駆け付けられる地上戦闘部隊は第三海兵師団のみ、重装備では第2師団よりも規模は小さい。

 槍衾という表現が一致する特科部隊の射撃陣地を造園の戦車小隊が超越する、砲塔を油断なく方針を相手に指向する様子が勇ましい。/実際問題、西ドイツのようなアメリカ陸軍機甲師団は日本本土に駐屯していませんでしたし、韓国のソウル北方議政府に駐屯する在韓米軍第2歩兵師団の様に第一線に駐屯していた訳ではありません、最前線の北海道から一番離れた沖縄に駐屯していた訳ですから、ね。

 74式戦車を超越して90式戦車が前進する、北海道最後の74式戦車部隊となった第2戦車連隊ならではの情景だ。/他方、日本を守っていたのはアメリカ軍、という誤認はアメリカ国内に多くあるようですが、そもそも日本国内にも大きく幅を利かせているのではないか、第一線部隊や識者等は別ですが、米軍は日本が憲法上出来ない周辺地域への圧力に加え日本の防衛も担うという。

 遠距離打撃力に対空火力と対戦車火力が一体化し状況に当たる。/自衛隊では広報を平時の実戦という位置づけの下で、積極的に部隊行事等を一般に開放していますが、もう少し、市街パレード等を積極的に行い防衛力について広く誇示し、他国軍事圧力に対して日本の主権と平和主義を守り得る事を示す必要もあるのかもしれません。

 99式自走榴弾砲、砲身は長いが75式自走榴弾砲のような空包射撃に伴う大きな発砲焔は出ないのが少し残念でもあるもの。/90式戦車や96式装輪装甲車に99式自走榴弾砲は確かに強力な装備ですが、国民の理解と心の支援があってこそ、初めてこれらの装備品を部隊として維持することができる、ふとそんなことを思います。装備だけでは部隊は出来ませんし部隊だけでは国土戦を戦えない。

 戦車連隊と特科連隊、敵機甲部隊の反撃を富士その防衛線を瓦解させたうえで戦果拡張へと部隊が集中してゆく。/もっとも、現在、防衛の第一線は南西諸島に焦点が定まり、続々と飛来する中国からの国籍不明機に毎日幾度も緊急発進し、抑止力を支えています。緊張が沖縄に移っただけの実情でして、日本は戦争を放棄しましたが、中国は日本への戦争の圧力を放棄していません。

北大路機関:はるな くらま
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 【くらま】日本DDH物語 《第... | トップ | 美食不孤単:蒼き鋼のアルペ... »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (ハリー)
2017-02-13 22:39:27
こんばんは
そうですね、西独と違い米軍師団は北海道にいませんでしたしね…。
それにしても9普連は残念でした。50番台のナンバー連隊を創設するくらいなら、9普連を再編して欲しいところです。
日本本土防衛と陸上自衛隊 (はるな)
2017-02-16 01:11:00
ハリー 様 こんばんは

仮に冷戦時代、第1騎兵師団か第24機械化歩兵師団でも恵庭あたりに駐屯していたらば、日本本土防衛に関する米軍のポテンシャルは大きく違っていたと思うのですが、ね

実質的に在日米軍は現代でいうところの周辺事態が日本本土へ影響しないよう、抑止力を行使する事が求められていた訳で、例えば冷戦時代に道北や信越地方等へ進攻された場合でも、米陸軍の機械化師団が日本で戦闘するというのは考えられないのですよね

特にM-60戦車までは米海兵隊が富士地区で射撃訓練を行っていましたし、オリエントシールド演習へも参加したようですが、M-1戦車は日本本土へ入った事は、事前集積船に積載されて佐世保や横浜へ入港した、というものを例外とすれば、ありません、故に日米の戦車部隊の共同訓練も第6戦車大隊が米本土で2013年に訓練を実施するまで行われていないのが実情でした

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

陸上自衛隊 駐屯地祭」カテゴリの最新記事