北大路機関

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【日曜特集】富士学校創設63周年富士駐屯地祭【06】戦車教導隊の観閲行進(2017-07-09)

2018-05-13 20:08:01 | 陸上自衛隊 駐屯地祭
■特科教導隊と戦車教導隊
 富士学校創設63周年富士駐屯地祭、その前の年度、訓練展示模擬戦が無かった年度行事用説明文を転用しましたので、写真と解説が外れている点、どうかご容赦を。

 203mm自走榴弾砲は自衛隊最大の火砲で、大口径の軍団支援火砲でありながら、極めて軽量に収めた点が特色だ。28tなので自衛隊のC-2輸送機でも空輸可能という。軽量だが37口径の長砲身を活かしてRAP弾では射程30kmを誇る、が、軽量化を重視しすぎました。

 軽量化を重視し過ぎた為に操砲には11名が必要なのですが、車体には5名しか乗車できないので残る6名は随伴車輛で移動し射撃時に合流する必要があるのです。また屋根が無いのは軽量化のため、砲弾も車体が小さいので肝心の砲弾が僅か2発しか積めないという。

 威力は凄い、一発90kgもある砲弾を最大毎分2発発射できる。もっとも方針が痛むので緊急時に限られ、持続射撃では2分に1発が投射される。その威力、対コンクリート信管を用いた場合2m近い厚さを貫徹するし、地中に4.5mまで潜りこんで地下壕などを破壊する。

 空中炸裂信管を用いた場合は長径90mという凄まじい広さに砲弾片を散布でき、これぞ軍団砲兵という印象で、師団などが攻撃目標に向かう際、要塞施設や地下施設等の軍団全体で対処する目標に対し投入され、重要橋梁や飛行場施設等の破壊にも用いられる火砲です。

 203mm自走榴弾砲には87式砲側弾薬車が基本的に随伴する。1tクレーンにより砲弾を供給でき、車内には50発の203mm砲弾を搭載している。装甲車両でもあり、火山災害などに際しては不整地突破能力の高さと汎用性を活かして災害派遣に充てられたこともある。

 87式という呼称の通り、自衛隊が203mm自走榴弾砲を装備開始したのは1983年と比較的最近です。ただ、高精度の砲身は製造方法をアメリカが開示できないとして車体自体をライセンス生産しています。エンジンは旧式なのでライセンス生産ではなく直輸入でした。

 C-2輸送機で空輸できる貴重な火砲なのだから、全廃せず多少は残してはどうかとも思う。99式自走榴弾砲は重量が40tもあるのでC-2輸送機には搭載出来ない、軍団火力なのだから威力が大きいのは確かで、島嶼部防衛に必要な装備と思う。それ程砲身も傷んでいない。

 なにより、203mm榴弾砲が掩砲所で待ち構える離島へ上陸してくる可能性は限りなく低くなる、威力そのものよりも象徴的な意味合いで、意味があります。例えば台湾などは240mm榴弾砲を離島に配備していますし、フィンランドの様に沿岸砲を維持している国も、ある。

 特科教導隊第5中隊のMLRS,自走榴弾砲に代わる陸上自衛隊の全般支援火力車両です。1両17億円と非常に高価な装備であったけれども、鋼鉄の豪雨と湾岸戦争でイラク軍機甲部隊に畏れられたこの火力を陸上自衛隊は大いに信頼し、実に99両も揃えているのです。

 水際撃破として自衛隊が内陸誘致戦略から運用を転換した時期に導入されており、導入当時はM-26ロケット弾を投射、一発で100×200mの範囲をクラスター弾が破砕し、一両で12発を連続射撃でき、一個大隊18両が同時射撃したならば広範囲が灰燼に帰すでしょう。

 オスロプロセスクラスター弾全廃条約によりM-26は日本では使えなくなってしまいました。そこで自衛隊はM-31ロケット弾を導入します。血税大金で買ったM-26の廃止は心が痛みますが、M-31ロケット弾は一発で50m四方を吹き飛ばす単弾頭型のロケット弾です。

 100×200mのM-26と比較したならば50m四方の制圧力というものはそれ程大きくは無い、が、射程はM-26の30kmからM-31では70kmまで伸びた、それだけではない、M-31はGPS誘導ロケット弾で命中精度が極めて高く、これは戦術ミサイルといえるでしょう。

 MLRSはM-31ロケット弾の導入で、面制圧火力から精密誘導火力へ転換したことになる。日本は専守防衛なので、住民が残る可能性と住宅街が広がる国土で面制圧火力を投射したならば付随被害が大きすぎる、ならばGPS誘導で精密誘導し命中精度を確保した方が良い。

 もちろん、GPS誘導方式ではない従来型の無誘導射撃も可能です、GPSの軍用回線は妨害を受けにくいが、座標入力の時間が無い場合に標定さえ出来れば即座に射撃できる利点は忘れてはならない利点でしょう。こうした意味でミサイルではなくロケット砲なのですね。

 専守防衛というものは実に面倒なのです。実際にオスロプロセスクラスター弾全廃条約でも、日本側が提唱する自国領土内での防衛を例外とする保持論は各国を悩ませたという、日本の専守防衛政策は世界の外交関係者の間で名高いし説得力もある、どうするべきか。

 しかし、アメリカやロシアも自国防衛用に残す、と日本の主張を支持した場合は本当にアメリカ本土決戦にのみ使用し中東や東欧では使用しないのか疑問となる。しかし、専守防衛用に例外措置を執ればアメリカとロシアがクラスター弾全廃部分同意の可能性があった。

 結局、日本は折れる形で専守防衛用も含めクラスター弾全廃に同意した、しかし、アメリカやロシアと中国やイスラエルはクラスター弾全廃条約に批准しなかった、結局クラスター弾を運用する主要国が参加しないまま全廃条約だけが独り歩きしまして成立したのです。

 世界規模で削減されたクラスター弾は少ない、NATOではイギリスやフランスとドイツが削減しているが元々冷戦後の軍縮の一環として元々縮小予定であった、これを成果とするのか、考えさせられるものが多い中、自衛隊は1999年までMLRSを調達し続けています。

 特科教導隊第6中隊は12式地対艦誘導ミサイルシステムを運用している中隊です。冷戦時代末期に開発された88式地対艦誘導弾の後継装備で、射程180kmの地対艦ミサイル、資料によっては250kmの射程を持つとも言われる、自衛隊の着上陸阻止への切り札のもの。

 250kmの射程を持つとも言われる背景ですが、このミサイルは地形追随飛行を行うため、直線であれば250km飛翔できるという意味だろうか、と考えた事もありました。この場合、沿岸から射撃は有り得ず、250kmの射程を持つとも言われても余り意味は無いでしょう。

 ミサイルは捜索標定レーダ装置を眼として運用します。捜索標定レーダ装置、一個連隊に12両が装備される虎の子で50kmの索敵能力がある。射程よりも捜索能力が短いのが気になるが、これは元々ミサイルを内陸部に展開させレーダーだけを沿岸部に展開させるため。

 ただ、多少使いにくいのでレーダーに加えて12式地対艦誘導ミサイルシステムからはP-3C哨戒機やP-1哨戒機、護衛艦などの目標情報と連携を重視しているほか、電子隊による電子標定により海上の水平線の向こう側にある目標情報を共有する運用も重視しています。

 12式地対艦誘導ミサイルシステムは配備開始間もない装備であるので詳細は未知数です。先代の88式地対艦誘導弾は6連装発射機16両で連隊を編成、段列地区に更に2斉射分を弾薬輸送車に積載し待機していた。一回の斉射で96発、292発のミサイルを携行していた。

 この装備の完成でロシア軍の北海道侵攻は極めて難易度が増している、といえるでしょう。北海道だけで3個連隊が配備され、有事の際に仮に大雪山付近に展開したならば北海道周辺全域にミサイルを投射可能となります。実際開発の射程要求はこうして出されました。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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