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【防衛情報】フランス原子力空母シャルルドゴール後継は75000t大型艦で2038年竣工計画

2020-12-22 20:00:12 | 先端軍事テクノロジー
■特報:世界の防衛,最新論点
 我が国が護衛艦かが、その次を建造する場合に一つの視点と成り得るかもしれないフランスの次期空母計画の話題です。

 フランスのマクロン大統領は12月8日、ルクルーゾにあるフラマトームでの海軍シンポジウムに際し、フランス海軍の次世代航空母艦は原子力推進を採用し満載排水量は75000tへ大型化させる方針を発表しました。これによりフランス海軍が現在唯一運用する原子力空母シャルルドゴールの満載排水量42000tを大幅に上回る巨大空母が建造される方針に。

 フランス海軍の次期航空母艦は全長300m、全幅80m、原子力推進により最高速力は27ノットを想定しており、今後開発する方針の電磁カタパルトを搭載、艦載機として30機の将来戦闘機搭載を見込むとのこと。新しい空母の推進方式について、原子力を採用した背景を大統領は将来にわたるフランス防衛原子力産業の維持と継承に在る、と説明しました。

 建造計画では先ず2025年までに設計を行い、その後は建造に着手、2038年までに竣工させる構想で、設計と建造にほぼ18年間を要する長大な計画です。新しい空母は現在のシャルルドゴールと比較し、原子炉の点検期間を現在の7年間隔から10年間隔と新型原子炉により稼働期間を長くする方針とされ、また一時的にフランスは空母二隻体制に戻ります。

 シャルルドゴールは2038年に現役を引退する計画で、フランス海軍は新空母を2036年までに公試に漕ぎ着け、2038年までに竣工させると同時に作戦運用体制構築へ持って行きたい計画です。ただ、言い換えれば18年という長期的な建造計画では、同時に一年の遅れも許されない事を示しています。こういうのもシャルルドゴールは建造の遅れの連続でした。

 建造の遅延としては、シャルルドゴールは潜水艦原子炉を空母に転用するという全く必要な出力や運用特性の異なる領域での運用にて建造中に原子炉からの放射能漏れ事故が発生し、また、公試開始の際には海軍が新たに導入したE-2C早期警戒機に対して、飛行甲板の長さが足りず、急遽飛行甲板を延伸するという一幕が竣工を更に遅らせた事も記憶される。

 フランス政府は2038年までに建造する次期航空母艦について現在独仏共同開発が進むFCAS将来戦闘機を搭載する方針を明らかにしました。次期航空母艦は30機の艦載機を搭載する計画です。FCAS戦闘機は第六世代戦闘機を期し、現在必要な構成要素について研究を進めているもので、全備重量や離着陸距離は勿論、搭載エンジンも未定となっている。

 フランス海軍では空母の全長を330mとしており、大統領の発言した300mよりも一割大きなものとしています、一方でFCASについてはフランスのラファール戦闘機とドイツのユーロファイター戦闘機の後継となるものの、アメリカのF-35Bのような垂直離着陸型の開発は予定されておらず、陸上戦闘機を基本型とした上で艦上型を開発する事となります。

 ラファールにおいて艦載機と戦闘機型を同時に開発したフランス航空産業ですが、今回難しいのは、ラファール開発当時にはフランス海軍は、クレマンソーとフォッシュの空母二隻体制であり、空母艦載機についても予備機を含め100機程度の需要が見込まれ、またシャルルドゴールも二番艦が建造され、PA-2計画として空母二隻体制が見込まれていました。

 クレマンソー級空母建造の時代にも空母艦載機として艦載攻撃機のシュペルエタンダール、エタンダールと艦載機の開発経験がありましたが、しかし、艦載戦闘機としてはとうとう、当初計画されていたジャギュア/ジャガー艦上型が実現せず、アメリカからF-8クルセイダーを導入し2000年代まで運用し、ラファールへ引き継いだ経験があります、しかし今は。

 FCASはどの程度の飛行甲板長を必要とするかは不明ですし、艦載機用の強力な衝撃に耐える降着装置と設計が適合するかは不明です、一方で今回は空母が一隻なのですから、艦載機30機、予備機を見込んでも40機程度しか需要は無く、専用機を開発する訳にはいきません。すると、ジャガーのように陸上機の艦載機転用の難しさに再度挑まねばなりません。

 FCASについて、フランスは過去、欧州共同戦闘機開発に小型のクレマンソー級空母へ搭載する必要から小型化を主張しすぎ、結果的に開発から離脱し独自にラファールを開発する事となり、今日に至るまで格安の中古機を除き海外販売に難渋する事となりました、今回は空母に艦載機を合せるのではなく艦載機に空母を併せ空母を大型化する方針のようです。

 75000t級空母というものは文字通りフランス海軍史上空前の大型艦ですが、無理にFCASを導入するのではなくASMP核ミサイル運用用にラファールを維持し、艦載機だけはF-8クルセイダーのようにアメリカからF-35B戦闘機を輸入する45000t級空母を2隻建造した方が、稼働率は良くなるのではないか、とも考えるのですが政治的に難しいのでしょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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2 コメント

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Unknown (ミナミ)
2020-12-22 22:52:16
>75000t級空母というものは文字通りフランス海軍史上空前の大型艦ですが、無理にFCASを導入するのではなくASMP核ミサイル運用用にラファールを維持し、艦載機だけはF-8クルセイダーのようにアメリカからF-35B戦闘機を輸入する45000t級空母を2隻建造した方が、稼働率は良くなるのではないか、とも考えるのですが政治的に難しいのでしょう。

眼前に現実的な脅威の無い国の道楽という感が否めません。
純軍事的というよりは政治的な目標
駆逐艦や潜水艦等の実質的な、ある意味地味な戦力を整備しないといけない日本とは、状況や意識がだいぶ違いますね
あと、竣工予定が2038年って、巨大プロジェクトとはいえ、遅すぎませんか?
最初の予定がそれなら、遅れれば2040年代、20年以上先の気の長い話ですね
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Unknown (成層圏)
2020-12-23 20:27:00
イギリスやフランスは他国へのプレゼンスのために空母を建造してると思います。ローテーションが組めず現実的運用ができてないので。
本邦でも空母は欲しいですが、高度な訓練など固定費が高くつくので、軽空母・ヘリ空母・輸送艦を兼ねた満水3万トンくらいの多目的艦が現実的ですね。早く配備して欲しいですね。
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