北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【日曜特集】金沢駐屯地創設63周年記念行事(3)観閲行進から訓練展示へ(2013-09-08)

2018-10-21 20:12:40 | 陸上自衛隊 駐屯地祭
■対戦車中隊の観閲行進
 金沢駐屯地創設63周年記念行事は観閲行進から訓練展示へ進みます。

 普通科部隊、小銃や機関銃を駆使し近接戦闘に当たる部隊です。歩兵と旧称された普通科部隊は責任交戦範囲の観点からは500m以内を基本として担当し、特に100m以内に間合いを詰める近接戦闘では戦車や火砲を含めあらゆる戦闘部隊は普通科部隊に敵いません。

 89式小銃、5.56mm機銃MNIMI,対人狙撃銃、M-2重機関銃、110mm個人対戦車弾、01式軽対戦車誘導弾、84mm無反動砲、9mm拳銃、小銃班は多様な装備を有し近接戦闘に当たります、当然ですが一個小銃班が散開、個人用掩体や地形に隠れますとほぼ見えないというのですね。

 90式戦車の乗員の方にその昔、最大の脅威について聞いてみた事がありますが、脅威は意外や意外、最新の10式戦車ではなく110mm個人対戦車弾を抱えて一人待ち伏せる普通科隊員との不期遭遇、という答えでした。70km/hで走っていると気づかずやられるという。

 90式戦車は、しかし500m以上間合いを取っていれば負ける事はありません、100m以上であってもなんとかなるでしょう、しかし、歩兵の間合いに気付かず入ってしまうと、厳しい運命が待っています。だからこそ、基本的に戦車部隊は歩兵部隊と協同する訳ですね。

 近接戦闘部隊として普通科部隊はあらゆる地形と天候を克服し戦闘を継続します。戦車の機動力は凄まじいものがありますが、普通科はロープを用いれば断崖絶壁さえ踏破し追随は出来ません。航空部隊は山脈に海さえ飛び越えますが、悪天候では離陸さえできません。

 攻撃の基本は、突破・包囲・迂回、ですが実施の上で課題となるのは地形の克服です、これが無ければ迂回できない地形というものも多い、気象の克服は攻撃の持続性を左右するものですね。この、全ての地形と天候の克服を両立するのは、普通科部隊だけなのですね。

 射撃競技会や持続走競技会と銃剣道競技会、普通科部隊はこの三要素を中心に様々な協議会を重ね一人ひとりの個人の戦闘能力錬磨を期しています。射撃と銃剣術さえ大成したらば、基本的に戦闘が個人と個人の近接戦闘において負ける事は無い、という発想ですね。

 持続走競技会は、文字通り地形の克服を筆頭に普通科部隊の錯綜地形での機動力構築を期するもの。特に持続走の上に武装競争という完全武装での持久走競技会もあり、あらゆる地形克服には必要な素養を身に着けます。錯綜地形の多いわが国には必要な要素といえる。

 ソフトボール投げなど、競技会以外に自衛官体力検定という制度があります。怠けないように、という部分も大きいのでしょうがこの通り自衛官体力検定には様々な要素がありますが、この一つをとっても、例えば手榴弾投擲を筆頭に必要な素養を定着させるのが狙い。

 銃剣道競技会に加えて格闘競技会もあり、自衛隊ではこの種の訓練を通じて、しかし訓練中の事故を局限化する取り組みと併せ要員を錬成しています。訓練事故、誤った価値観では事故でもなければ軍隊は強くなれない、特に外国軍隊と自衛隊を比較する例もあります。

 訓練事故ですが、しかし、実任務の前に訓練で部隊が摩耗しては、定員割れを増やしたままで実任務に臨む事を強いるものであり、逆に訓練事故の根絶をそのまま訓練水準の低下に繋げない方法があるならば、事故を根絶する姿勢の方が武装集団としては必要でしょう。

 指導者の大量錬成と基礎教育の強化、実は格闘関連の教育での事故は中学校高等学校での体育授業中での事故の方が目立つことがありまして、自衛隊では文字通り必修の素養として訓練しているものですが、事故の回避にはどうすれば良いのかについて聞いてみた事が。

 結局、防具の正しい着用により順次挌闘に関しては基礎教育を積み重ね、修練度合いを客観的に判断した上で訓練度合いを高めて行く、この為には必要な指導者の数があり、これを揃える必要がある。つまり事故の確率を局限化する取り組みが反映されている訳ですね。

 徒歩機動40km、陸上自衛隊普通科部隊では火砲の射程の延伸等戦闘様相の変容に反映し、40kmを踏破し迂回攻撃や包囲機動を行う徒歩機動訓練を実施しています。勿論、装甲車や車両は装備されているのですが、基本的に車両のみで踏破できる地形だけではありません。

 完全装備の接敵行軍、相手との遭遇戦を想定しつつ徒歩機動での攻撃訓練を実施する、40kmの徒歩機動はその気になればそれほど困難ではなさそうに見えますが、完全装備で、しかも必要に応じ不整地や山間部を踏破し、しかも接敵行軍となると難易度は低くない。

 体力錬成と教育、自衛隊で特筆すべきは米軍などでは体力ピークが二十代前半として若さで支える、という認識なのですが、自衛隊では三十代半ばの陸曹が体力錬成と戦闘技術の到達点として考えている、というお話を聞いたことがありまして、この認識に現れている。

 遮二無二体力の伸びしろを若さに見出すのではなく、重いものをいかに効率的に梱包し、そして接敵行軍筆頭に戦闘に対応する感覚、各種技術と戦闘技術への応用等を実現するには、やはり若さだけで一朝一夕に行えず、錬成と教育が重要だ、という認識なのでしょう。

 教育というもの、錬成というものは重要ですが、しかしまれに現代戦、ミサイルやレーザーが飛び交う時代、そうは言いつつレーザーが飛び交うのは測距用や照準用なのですが閑話休題、しかし体力、銃剣術や小銃射撃がミサイルやレーザーの時代に対応するのか、と。

 ミサイルやレーザーの時代、ではあるのですが、しかし戦闘は基本的に人と人の闘争の拡大と集団化ですので、我の意志が彼の意志を屈曲させなければ成り立ちません、そして第一線という表現が、その一線に人間が立って成り立たせているものという視点が重要です。

 第一線が維持できるか瓦解するかは、やはり収斂するのは個々人の技量となるものです。この部分で部隊を構成する個々人の素養を教育し錬成しているかが、一例として近接戦闘、市街地での一対一の状況や小部隊戦闘において具現化し、冷厳な損耗率に反映するという。

 その上で、現代戦はミサイルやレーザーがすべてではないのですが、個人携帯対戦車弾や車両操縦と車両整備、測距や標定と計算術や通信機器の操作と、個々人が生き残ったうえで必要とされる能力や技術が多様化しており、一朝一夕に養成できるものではありません。

 多種多様な技術を有していても、また、ミサイルがどのように長射程化しようとも、レーザー照準や測距といった技術が発展しようとも、最後の決着をつける部分は人が担うものである訳ですから、この部分が瓦解しないよう、個々人の戦闘技術が影響する訳ですね。

 ここに積み重ねの教育の重要さが有る。その上で、例えば徒歩機動一つとっても、ヘリコプターを多数保有していても堅固な防御陣地正面に攻勢を期して着陸したらば忽ちのうちに砲迫で制圧されますので一定の徒歩機動が必要、装甲車もどこでも走れるわけではない。

 この連隊は精強です、という紹介をOBの方から受ける事がありますが、根拠なしの自負ではなく、教育訓練と戦術に各種相違への挑戦と研究、個々人の要員錬成と競技会、この部分まで踏まえて、自衛隊は強い、と自負できる背景があるのだろうなあ、と考えます。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 【くらま】日本DDH物語 《第... | トップ | 新防衛大綱とF-35B&EA-18G【2... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

陸上自衛隊 駐屯地祭」カテゴリの最新記事