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【防衛情報】IDEX-21アブダビ国際兵器展,ロシア次世代戦車T-14アルマータとF-35の影

2021-03-02 20:20:05 | 先端軍事テクノロジー
■特報:世界の防衛,最新論点
 IDEX-21アブダビ国際兵器展の速報、ロシアが開発するアルマータ戦車は自衛隊の戦車でいかに対抗しるのかという視点で興味深い存在ですが、アブダビで動きが。

 IDEX-21アブダビ国際兵器見本市においてロシアは最新鋭戦車T-14アルマータの改良型を展示しました。これは二月中旬にロシアが発表したもので、T-14の将来発展型についても詳細を発表しています。これによればアルアータ戦車は現在125mm戦車砲を搭載していますが将来的には極めて強力な新型の152mm戦車砲への転換を計画しているとのこと。

 T-14アルマータ戦車の将来型は、TASS通信の関連報道において152mm砲から戦車砲弾やミサイルを発射するとともに偵察用無人機をも152mm砲から投射するものとしており、更に電子装備を強化する事で1km以内の戦車接近を自動感知し追尾する複合光学システム、ミサイル誘導を自動検知し電子的に無力化する電子戦システムなどの搭載を構想している。

 将来戦車として開発されたアルマータは、改良型の前に現行生産されていません、電子装備の強化により火器管制装置は6km以遠の目標を識別させる車長用外部視察システム等も構想しているようですが、同時に2015年に対独戦勝70周年観閲式にて行進し新世代を印象つけさせたアルマータ戦車は2021年においても事実上未完成である事を示唆しています。

 IDEX-21アブダビ国際兵器見本市に展示されるロシアの次世代戦車T-14アルマータは、将来的に24時間にわたる無補給での戦闘を想定した人間工学上の配慮と居住性が付与されるとの方針が示されました。これは世界の戦車を見ても24時間連続稼働する戦車は数多ありますが、食事や手洗い等で乗員は幾度か下車せねばなりません、しかしアルマータは。

 24時間戦闘能力は乗員が一度も下車する事無く戦闘を展開する事を目指しており、人間工学上の配慮とは喫食は勿論、仮眠や手洗い施設などの設備追加を意味しているのでしょう。アルマータ戦車は戦車砲を152mmとする方針で、冷戦時代にガンランチャーとして搭載したアメリカM-551等を除けば世界最大です。しかし連続乗車は更に新しい次元の概念です。

 ロシアのロステック社はIDEX-21アブダビ国際兵器見本市においてブーメラン装甲車を展示しブーメラン装甲車には各国製武器システム等のモジュールを搭載する事が可能であると発表しました。ブーメラン装甲車はロシア軍がBTR-80装輪装甲車の後継とするべく開発した装甲車ですが、ロシア財政難により調達配備は伸び悩み量産が進んでいません。

 VPK7829共通車体として開発されたブーメランは25t型のK-17装甲戦闘車両と22t型の水陸両用装甲車が開発されており、BTR-80は車両側面の小型扉から乗降しますがブーメラン装甲車は後部兵員室から乗降する合理的な設計となっています。ロシア軍では共通車体に各種モジュールを搭載する事で装甲車両体系を構築するものですが、予算が足りません。

 ブーメラン装甲車を輸出する事で、取り敢えずの量産体制を確立させたい、という事でしょう。各国製武器システム等のモジュールを搭載する事が可能、これは砲塔ビジネスと称されるような販売手法があり、各国では完成車体を開発するのではなく、既存装甲車に搭載可能な砲塔システムを単体で販売するもので、装甲車の能力向上に用いられる方式です。

 IDEX-21アブダビ国際兵器見本市、2月21日から25日に行われた世界最大規模の兵器見本市においてスロバキアのCSM社はTATRA815-UDS工兵掘削車を展示すると共にアラブ首長国連邦のIGG社との間で企業間提携を締約したと発表しました。TATRA815-UDSは建設工兵用の器材であり、タトラ製六輪型大型トラックに工兵器材を搭載したものです。

 TATRA815-UDSは、大型バケットを基本としてアタッチメント方式にて作業装置一式をトラック荷台に搭載しています、タトラはチェコスロバキア時代からの欧州を代表するトラックメーカであり、各種軍用トラックは勿論、装輪装甲車や装輪自走榴弾砲なども冷戦時代から優れた製品を製造しています。輸出に際し現地へ合弁企業は近年の新しい潮流です。

 IDEX-21アブダビ国際兵器見本市においてロシア当局者はロシアが開発する第五世代戦闘機Su-57に関連する展示を行いましたが、当局者の話として中東諸国ではSu-57E戦闘機に関心を示した国は無かった、22日付TASS通信が報道しました。ただ、同じ当局者の話として中東諸国以外の国であればSu-57Eについて、関心を示す事例はあったとのこと。

 中東諸国ではSu-57Eに関心を示さなかった分、イスラエルに続きアラブ首長国連邦が導入するアメリカ製F-35戦闘機についての関心は深く、サウジアラビアもF-35戦闘機の導入を希望しているとのこと。またアラブ首長国連邦はF-35に続いてMQ-9無人偵察機の導入を行う希望を示しており、第五世代戦闘機と無人機の分野で米ロの技術差が垣間見えます。

 アラブ首長国連邦は2月22日、スウェーデンのサーブ社からグローバルアイ早期警戒機三号機を導入したと発表しました。グローバルアイ早期警戒機はボンバルディア製ビジネスジェットのグローバル6000にサーブ社が新しく開発したエリアイエクステンデッド長距離レーダーを搭載したもので、アラブ首長国連邦は2020年4月と9月に納入されている。

 グローバルアイ早期警戒機はアラブ首長国連邦空軍へ5機が納入される事となっており、これは広範囲の航空機を長距離で探知し追尾する能力とともに近年特に脅威度を増している簡易無人機による長距離攻撃に対しても探知能力を発揮します。丁度IDEX-21アブダビ国際兵器見本市が開催されている最中に納入を合せた点は商業的な視点もあるでしょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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