ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『太陽にほえろ!』#101

2019-04-12 00:00:17 | 刑事ドラマ'70年代









 
酒井和歌子さん(当時25歳)。日テレの青春シリーズで頭角を表し、初主演映画『めぐりあい』のヒットでブレイクされた、昭和の清純派を代表する女優さんの1人です。

本作の脚本を手掛けられた鎌田敏夫さんは、酒井さんが1年間マドンナ役を務めた『飛び出せ!青春』のメインライターでした。

間違いなく酒井さんが演じることを前提に書かれた脚本であり、清純派女優が残酷大将の毒牙にかかると、一体どんな結果になるかw、かつて酒井さんに萌えた方は必見のエピソードです。

もちろん今回も、犠牲になるのは我らがイジメられっ子=殿下(小野寺 昭)です。


☆第101話『愛の殺意』

(1974.6.21.OA/脚本=鎌田敏夫/監督=竹林 進)

出逢いだけは爽やかでした。買い物袋を抱えた清楚な美女=典子(酒井さん)が街角で殿下とぶつかり、果物をぶちまけるという定番シチュエーション。

「すみません」を連呼しながら果物を拾い集め、典子の住むマンションまで運んで行く殿下の、まあ嬉しそうな顔ったら!w あんなに緩みきった殿下の顔は滅多に見られるもんじゃなく、典子がかなり好みのタイプであることが一目で判ります。

そんな殿下が、彼女の部屋の玄関で、浴室から聞こえる水音に気づきます。

「水、流しっ放しじゃない?」

殿下に促され、典子が浴室の水道を止めに行きます。その浴槽には、若い女の溺死体が浮かんでいる!

それが視界に入っても、典子は顔色一つ変えずにタオルを手に取り、浴槽の水に浸けて黙々と絞ります。そして玄関に戻り、穏やかに微笑みながら、そのタオルを殿下に差し出すんですよね!

「手が汚れたでしょ?」

女の屍臭が染み付いたタオルを受け取って、殿下は満面の笑顔で手を拭き拭きするのでした。

さすがは残酷大将! こんな描写、ふつう思いつかないですよ! 本当はそのタオルで、殿下に顔を拭かせたかったに違いありませんw

で、どうやら典子には、悪意が無いんですよね。そういうモラルと言うか、人間として大事な何かが欠落してる女性であることが、このさりげなくもえげつない場面で示唆されるワケです。

その夜、典子は多摩川堤の水門に死体を棄てに行きます。大雨の中、淡々と『赤い靴』の歌を唄いながら……あの酒井和歌子さんが!

さらに! 典子は実の兄=誠行(村井国夫)のマンションに立ち寄り、死体の髪の毛を浴室の排水口に、こっそり仕込んでおく。

翌日、水門で死体が発見されます。殺されたのは誠行の恋人で、あっという間に状況証拠が揃い、誠行は七曲署へと連行され、それを聞いた典子は「兄は人殺しなんかしない!」と言って、殿下の前で泣いて見せる。

なぜ、典子は兄の恋人を殺し、その容疑が兄に掛かるよう仕向けたのか? 真相を先に書けば、要するに兄を独り占めしたかったから。

典子と誠行は一家心中の生き残りで、幼い頃から兄妹2人だけで世間の荒波を乗り越えて来た。そんな特別な絆があり、心中とは言え実の親に殺されかけたトラウマがある。

それ以上の説明は何も無いんだけど、典子がとんでもないモンスターに育ってしまった経緯は、何となく想像出来ます。

典子が犯人であることに気づいた誠行は、自分が恋人を殺したと嘘の自白をします。あまりにあっけない自白に違和感を覚えた山さん(露口 茂)も、さすがに今回は真犯人の存在を見抜けません。

ただ1人、お茶汲みの久美ちゃん(青木英美)だけが、典子の異常性に気づくんですよね。清楚で几帳面そうに見える典子なのに、ハンドバッグの中身がグチャグチャだったわって。

ちなみに酒井和歌子さんがマドンナ先生を演じた『飛び出せ!青春』で、青木英美さんは生徒役でしたw その辺りもきっと、残酷大将は意識されてた事でしょう。

さて。まんまと目的を果たした典子ですが、なんと近所の覗き魔に死体遺棄の現場を見られていた! 以前から典子に惚れてた覗き魔は、それをネタに交際を迫って来ます。

すると典子は、覗き魔に甘い言葉を囁き、殿下の目の前で自分を拉致する芝居をさせます。正当防衛を装って覗き魔を殺し、殿下をその証人にしようと企んだワケです。しつこいようだけど、あの酒井和歌子さんがです!w

だけど、殿下は気づいてしまう。典子の部屋にお邪魔したあの時、殺された女が履いてた「赤い靴」が、玄関にあったことに……

典子は、覗き魔を殺したのと同じスパナで、か弱い殿下をフルボッコにします。さらに、たまたま通りかかってその光景を目撃しちゃった小学生を追いかけ、血まみれのスパナを振り上げた!

薄れゆく意識の中で、殿下は典子に拳銃を向け、引き金を引くのでした。

そしてラストシーン。例によって七曲署の屋上で感傷に浸る殿下に、ボス(石原裕次郎)が声を掛けます。

「殿下。死んだよ、彼女」

「…………」

「死んだ方が幸せだったんだ」

「幸せなんかじゃない!……幸せなんかじゃないですよ、ボス」

「…………」

これでジ・エンド。後味が悪いなんてもんじゃないですぜ、残酷大将!w これが確か、殿下初の犯人射殺エピソードだった筈です。

それより一番可哀想なのは、恋人と妹を同時に失った村井国夫さんですよね。そもそもが一家心中の生き残りで、いくらなんでも不幸過ぎます。

どうですか、この残酷大将の恐怖アブノーマル劇場は? そして、酒井和歌子さん。あの酒井さんが!って連呼しましたけど、そういう先入観を持たずに観たら、違和感なく悪女……っていうか狂女に見える筈です。それだけ確かな演技力を持った女優さんである事が、このエピソードを観るとよく判ります。だからファンは必見!

現在の清純派女優さん達にも、是非こういう役を演らせてあげて欲しいです。多部未華子さんが演じたら死ぬほど怖いですよ、きっとw
 
コメント (8)
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