ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『はみだし刑事情熱系』1―#05

2019-04-02 00:00:15 | 刑事ドラマ'90年代









 
☆第5話『狙われた女刑事!』

(1996.11.13.OA/脚本=尾西兼一/監督=村川 透)

覚醒剤の取引現場に踏み込む高見兵吾(柴田恭兵)ら広域特別捜査隊の格闘アクションで幕を開ける冒頭シーンで「掴み」はバッチリ。

何度でも言いますけど、これが本当の意味での「刑事ドラマ」です。ただ突っ立って謎解きするだけなら探偵でも家政婦でも三毛猫でも務まるんだから。全力疾走で悪党を追い、ぶん殴り、時にはショットガンで撃ち殺す。それが許されるのはドラマ世界の刑事さんだけなんだから。

特撮ヒーローでさえ暴力を控えなきゃいけない昨今のテレビ業界は、いびつであり異常であり滑稽です。毒なくして毒を制することは出来ない。何も出来ない我々小市民に替わって悪を成敗する、刑事さんやヒーローたちの暴力は言わば必要悪であり、そういうガス抜きを自主規制するから世の中がどんどんおかしくなっていくワケで、破滅です。

それはともかく、捕まった連中は20代の若者たちで、元は少年課にいた麻生たまき刑事(黒谷友香)は、その中にかつて自分が補導した男子がいることに激しいショックを受けます。彼は重度の覚醒剤中毒でまともに口も聞けないのでした。

「許せない……覚醒剤なんて絶対に許せない!」

あまりに真っ直ぐな、若き黒谷友香さんの熱すぎる演技は正直「くさい」んだけど、その懸命な姿に我々は知らず知らず肩入れしちゃうんですよね。

今回もやっぱり『太陽にほえろ!』を連想せずにいられません。俳優デビューしたばかりだったテキサス=勝野 洋さんやラガー=渡辺 徹さんらの、初期の暑苦しいお芝居とよく似てるんですよねw

ロッキー=木之元 亮さんの証言によると『太陽~』の新人俳優たちは歴代、監督から「小芝居をするな」と、とにかく「真っ直ぐ」演技しろと指導されたんだそうです。おそらく当時の黒谷さんも、同じような演技指導を受けてたんだろうと思います。

で、覚醒剤ルートを根絶させようと動く広域捜査隊は、売人らしき男をマークするんだけど、そいつが覚醒剤を狙う若者グループに拉致された上に殺されちゃう。

男は拉致される寸前にテレクラで知り合った女(未来貴子)と一緒だったことが判り、その女が犯人たちを目撃してる可能性が高いため、兵吾とたまきは聞き込みに行くんだけど、女はその男を知らないと言い、テレクラを利用したことも全面否定します。

人妻である彼女が保身のために嘘をついてるのは明らかで、たまきは必死に食い下がるんだけど、そのせいで彼女の夫婦関係を悪化させてしまう。おまけに犯人グループの中にまたしてもかつて補導した若者を見つけ、そいつにナイフで切りつけられて負傷し、たまきは「いったい私は今まで何をして来たんだろう」と、仕事へのモチベーションを無くしてしまいます。

「またショック受けた? で、どうすんの? ずっとそうやって座ってるつもり?」

刑事部屋の自席から動こうとしないたまきを見かねた課長=玲子(風吹ジュン)がゲキを飛ばします。

「だったら目障りだわ、ここにはそういう人は必要ない。第一あなたが受けたショックなんか、たかが知れてるもの」

「どういう意味ですか?」

「問題はいま街に流れ出ようとしてる覚醒剤なの。それを阻止するのが我々の仕事なの。あなたが刑事として自信を無くしたことなんか、それからでも解決出来るってことなの!」

「そんな言い方……」

「いい? 今こうしてる間にも広域捜査隊全員が走り回ってるの。人間として、刑事として、必死になって覚醒剤を追いかけてる。捜査からはみ出ようが、失敗しようが、とにかく走ってる。それが仕事だから! あなたは何よ? そこでそうやって座ってるだけじゃ何も解決出来ないじゃないの、違う?」

「…………」

「甘ったれんのもいい加減になさい! ここは学校じゃないのよ、仕事場なの。それが分からないのなら、今すぐお辞めなさい!」

「……辞めません。絶対辞めません!」

こういうシーンにはやはり『太陽にほえろ!』、引いては青春ドラマのスピリットを強く感じます。玲子の台詞をもっと荒っぽくすればボス(石原裕次郎)やゴリさん(竜 雷太)そのまんまだし、それで奮起して走り出すマカロニ(萩原健一)やジーパン(松田優作)の姿も目に浮かんで来ます。

『太陽~』の平成復活版『七曲署捜査一係』が制作されるのは、この翌年のこと。もしかすると岡田晋吉プロデューサーはこの『はみデカ』に触発されてやる気になられたのかも?(だけど同じ年に『太陽~』と真逆の方法論で創られた『踊る大捜査線』が登場し、大ヒットしちゃうんですよね)

さて、玲子のゲキにより奮起したたまきは、犯人グループに命を狙われるテレクラ人妻を守り抜き、ついに彼女から有力な証言を得ます。

かつて更正させてもらった恩など「関係ねえ!」と吐き捨て、たまきを殺そうとする犯人一派のクソガキを、駆けつけた兵吾がフルボッコにしながら、こう言います。

「関係ねえか? 知ったこっちゃねえか? 覚醒剤の為だったら人を殺そうが他人がどんなに苦しもうが関係ねえんだな? だけどな、それじゃ人間じゃねえんだよ!」

兵吾はさらに、泣きわめくクソガキの腕をへし折る寸前まで締め上げます。

「人間のフリすんじゃねえ、おら! いいか、いつか必ず覚醒剤忘れさせてやるよ。とことん付き合って、少しは人間らしくしてやるよ。5年かかろうが10年かかろうが、こちとら商売だからしつこいぞ? 覚悟しとけ!」

何度でも書きます。日本よ、これが「刑事ドラマ」だ。

突っ立って微笑みながら「おやおや、いけませんねえ」なんて言いながら謎解きする刑事さんも、それはそれでカッコいいけど、私は魅力を感じません。悪党を片っ端からぶん殴り、マグナムでぶっ殺さなきゃ刑事じゃない。男じゃない。オトコ女のトミコ!トミコ!トミコーっ!

'70年代は当たり前だったそういう光景も、'90年代まで来ると「時代遅れ」みたいに言われ、今となっては有り得ないものになっちゃいました。ほんとに『はみデカ』が最後だったかも知れません。

ストーリーには意外性がなく、予定調和と言えば確かにそうです。けど、あっと驚くどんでん返しだけが見所の謎解きドラマと、果たしてどっちが我々のハートに響いて来るか? どっちが心地好い余韻を残してくれるか? 言わずもがなです。

もういい加減、充分でしょう謎解きは? 世間の皆さん、どうして飽きないの? そろそろ悪党をぶん殴る熱い刑事さんのドラマ、真の刑事ドラマをまた見せて下さい。お願いしますよホントに。

麻生たまき刑事を2年に渡って演じられた黒谷友香さんは、当時20歳。ファッションモデル出身で、TVドラマ初レギュラーが'95年の『沙粧妙子/最後の事件』(主人公の妹役)、そして『はみデカ』以降も『特命!刑事どん亀』や『ハンチョウ/神南署安積班』シリーズ等で刑事を演じ、2時間ドラマ『トカゲの女/警視庁特殊犯罪バイク班』シリーズでは主役を張るなど、刑事ドラマに縁の深い女優さん。

勿論それ以外の役柄も幅広くこなし、主演映画『TANNKA/短歌』ではヌード&濡れ場も披露されてます。Gacktさんと共演のビューティークリニックCMにおけるセミヌードも話題になりましたね。
 
コメント (2)
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