さて、いよいよジーパン(松田優作)&シンコ(関根恵子=高橋惠子)の最終章です。前回レビューした第101話『愛が終わった朝』と第104話『葬送曲』、そして今回の『走れ!猟犬』に続く第111話『ジーパン・シンコ その愛と死』(殉職編)は、公式に「ジーパン・シンコ その愛」4部作と云われてます。
今回、既にジーパンの衣裳が「白装束をイメージした」と思われる純白の上下、つまり殉職時の衣裳に変わってます。(途中でワケあって着替えますが)
『太陽』では非常に珍しい(他にはロッキー&マミーしか例が無い)警察官どうしのストレートなメロドラマだけど、あまりウェットにはならず、そこは『太陽』らしくユーモアも交えた娯楽アクション活劇に仕上がってます。
☆第110話『走れ!猟犬』(1974.8.23.OA/脚本=長野 洋/監督=山本迪夫)
覆面車で移動中に銀行強盗に出くわし、追跡するジーパン&シンコ。しかしその時、犯人の車が子供を跳ね飛ばしたことに、ジーパンは気づいていなかった。
子供は亡くなり、ジーパンが人命より犯人逮捕を優先した、と誤解したシンコは、彼を責めます。
決して追跡を優先したワケじゃないけれど、それに気を取られて重大な見落としを冒してしまったのは事実。言い訳もせず、自暴自棄になったジーパンは、ヤケ酒をあおります。
そんなジーパンをわざわざ自宅の浴室に連れ込みw、冷水を浴びせるボス(石原裕次郎)。
「お前が飲んだくれてる間に、先輩たちは何をしていると思う? 血眼になって、それこそ猟犬のように逃げたホシを追ってるんだぞ!」
松田優作にこんなスパルタな説教をかませられるのは、広い芸能界でも石原裕次郎しかいなかった事でしょう。ボスに借りたYシャツを羽織り、まるで事を終えた愛人のようにウットリとw、耳を傾けるジーパン。
「猟犬になれ、ジーパン。今は振り向いてる時じゃない」
覚醒したジーパンは、逃げ延びた主犯格の加治田(今井健二)が以前、中央公園にタムロするフーテン連中から手下をスカウトしてた事実を突き止め、拳銃と警察手帳をボスに預けます。
また銀行を狙うであろう加治田には、新たな手下が必要になる。そう睨んだジーパンは、フーテンを装って自ら囮捜査に臨んだワケです。普段着に着替えるだけで(何なら着替えなくても)フーテンに見えちゃう人ですから、手間が掛かりませんw
で、ジーパンは一計を案じます。殿下(小野寺 昭)とシンコにカップルを装わせ、イチャモンをつけて殿下をぶん殴ることで、その腕っぷしを周囲にアピールしようという魂胆。
簡単に事が進むかと思いきや、そこにゴリさん(竜 雷太)が乱入して来ちゃう。
ゴ リ「おいっ、ボクの友人の島くんに何をするんだ!?」
ジーパン「ええっ? 話が違うじゃないかよ!」
殿 下「タダで殴られんのヤだからね」
三者三様のクサい小芝居から、ゴリvsジーパンという二大猛者の殴り合いへとなだれ込む、コミカルかつダイナミックな展開がサイコーに楽しい、これはジーパン編屈指の珍場面かと思います。
そんな三文芝居にまんまと引っ掛かった加治田の相棒(スカウトマン)は、アジトにジーパンを連れて行くんだけど、加治田は強盗&逃走の際にジーパンの顔を見てますから、正体はすぐにバレてしまう。
尾行して来たシンコは、フルボッコの刑に遭うジーパンを放っておけず、拳銃をある場所に隠してアジトに飛び込みます。
お互い、我が身を犠牲にして相手を救おうとする、ジーパンとシンコの愛。
それにしても、スカウトされてから以降の作戦が全く練られてない、ジーパンらしいと言えばらしい、あまりにグダグダな潜入捜査ですw
クライマックス、暴走する車から2人で飛び降りたジーパンとシンコですが、その後の作戦も全く練られてない為w、すぐに追い詰められます。
「柴田くん、逃げて!」
「お前、言ったよな? 死ぬときは一緒だって」
「純……」
この時、初めてジーパンを下の名前で呼んだシンコは、そっと彼の手を取り、なんと自分の下半身、それもダイレクトにパンティーの中へと導くんですよね!
ふだん嘘ばっかり書いてるから信じてもらえないかも知れないけどw、今回ばかりはマジです。極限状態の中でシンコは、つい欲情してしまったのか?
それもあったかも知れないけど、ジーパンはシンコのパンティーの中からナマ温かい拳銃を取り出し、加治田を撃って一発逆転に成功するのでした。
そう、シンコは大切な拳銃を、女の子の一番大切な部分に隠してた。それを手にすることが出来るのは、身も心も捧げられる相手、つまりジーパンしかいないってワケです。
こうして、2人の愛はいよいよ開花し、次回、ジーパンはシンコにプロポーズします。七曲署の刑事が婚約することは、すなわち(ごく一部の例外を除いて)殉職を意味します。
「なんじゃあ、こりゃあぁぁぁーっ!?」
日本のTVドラマ史上、最も有名な台詞と言っても過言じゃない、あの断末魔の叫び。ジーパンとシンコの愛はあっけなく、一瞬にして燃え尽きるのでした。