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2019年4月現在公開中の日本映画です。83歳の大ベテラン・中島貞夫監督が20年振りにメガホンを執られた本格時代劇、というより本格チャンバラ映画です。
実は多部未華子さんがヒロインを演じられた映画がもう1本、先月公開されてたんだけど、そっちは大まかな内容を聞き、主演俳優の顔(どういう方なのかは存じません。とにかく顔)を見ただけで入場料+交通費を費やしてまで観に行く気になれませんでしたm(__)m つまり、テレビかDVD観賞で充分だろうと。
対して、こちらの『多十郎殉愛記』は絶対に劇場で観ておきたいと思ったし、実際、観に行って本当に良かったです。やっぱり、映画はかくあるべしと思いました。
ストーリーは至ってシンプル。幕末、世の中に絶望し、行きる目的を見失った脱藩浪人=多十郎(高良健吾)が見廻り組に命を狙われ、愛する女=おとよ(多部未華子)を逃がすために囮となり、百人を超えてそうな追っ手たちと30分にも渡る大立ち回りを繰り広げる。ただそれだけ。
タイトルを見れば結末も明らかだし、小賢しい「ひねり」など欠片もない映画です。チャンバラを見せるための映画なんだから、それで良いのだと思います。
若い観客……に限らず、まずは「筋」ありきで「どんでん返し」を楽しむために映画やドラマを観る昨今のマジョリティーたちには、恐らく本作はウケないだろうと思います。
見せ場のチャンバラにしても、CGを駆使して腕や首の切断をリアルに(?)見せる近年の時代劇映画を観慣れた世代には、本作のチャンバラは物足りなく感じるだろうと思います。
なにしろ多十郎は、百人を相手に戦ってもほんの数人しか斬らないんです。だって彼の目的はあくまで、おとよを逃がすための時間稼ぎだから。
確かに、百人全員を片っ端から斬り倒すファンタジックな立ち回りも、それはそれで痛快で私は好きです。でも、本作はそういう映画じゃない。刀のひと振りひと振りにドラマがある。どうせネット民たちはその「違い」を理解しようともせずバッシングする事でしょう。
あるいは、多十郎やおとよが結局どうなったのか、はっきり見せない終わり方にも不満を垂れる光景が眼に浮かびます。筋が無いから。どんでん返しが無いから。
大衆をそんな風にしちゃったのは創り手たちの罪だけど、そんな時代にこんなド直球のチャンバラ映画を、83歳の監督さんに撮らせる心意気が日本映画界に残ってた事実に、私はなんだか胸が熱くなりました。おまけに「これが最後の作品になるだろう」と仰ってた筈の中島監督が、今はもう次回作のことを考えておられるという話にも。
この映画が語るのは、筋じゃない。大義どころか生きてる意味すら見失った男が、多部ちゃんの為に刀を抜く、その心意気を見せる映画なんだと思います。だから、最後に彼が生き残るか否かは問題じゃない。そりゃ気にはなるけど、この映画でそれを語る必要はない。
多十郎が最後にどうなろうが、磨き抜いた剣の腕を存分に活かせる機会を、そうすることの意味をついに見つけた男の、至福の瞬間を描いた映画なんだから。
ラブストーリーとして考えると描写不足は否めないかもだけど、いいんです。これはチャンバラ映画なんだから。
ただしタベリストの立場から見ると、これは多部ちゃん史上初の純然たるラブストーリーじゃないか?と私は思いました。
『君に届け』の本質は青春ドラマだし、『ピース オブ ケイク』は今どきの恋愛事情を描いた映画であってラブストーリーとはちょっと違う。あえて言えばテレビ時代劇『大奥/誕生』があるけど、あれも愛より使命を選ぶ役どころでした。
理屈抜きで、好きになっちゃった男のために全てを捨て、命を懸ける女の情念を演じた多部ちゃん。芯の強い女であるのはいつも通りだけど、ここまで愛に突き動かされる役は初めてなんじゃないでしょうか?
そんな多部ちゃんが、とにかくセクシーでたまりません。ラブシーンは抱擁と接吻止まりなのに、セミヌードや濡れ場を披露した『ピース オブ ケイク』よりも色っぽい!
だから本作は、時代劇としてもラブストーリーとしても、現時点における多部ちゃんの代表作になるだろうと私は思います。だからファンは必見!
今回、多部ちゃんの台詞は「京言葉」なんだけど、そう言えば京言葉だったよなって、観終わった後に気づくほど自然だったのも流石です。
そして『二つの祖国』でも多部ちゃんと共演したばかりの高良健吾くん、その宿敵を演じられた寺島 進さんもまた素晴らしかったです。
タベリストのみならず、映画がお好きな方は是非、これは観ておくべき作品じゃないかと私は思います。