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新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『七曲署捜査一係』1997~1999

2019-04-11 00:00:06 | 刑事ドラマ HISTORY









 
『太陽にほえろ!』のスタッフによる正式な続編(と言うよりはリメイク)です。ただし連ドラではなく、日本テレビ系列『金曜ロードショー』の枠で1997年、’98年、’99年に放映された、年1回の2時間スペシャルです。

2001年には、視聴率好調ならば連ドラ化もあり得るって事で、ついに『太陽にほえろ!2001』というタイトルが使われましたが、こちらはボス以外のメンバーが一新されてますので、別物扱いとします。


☆『七曲署捜査一係』(1997.7.18.OA)

新ボス=山岡英介(舘ひろし)、新人刑事ダンク=松井陽平(浜田 学)、紅一点オネエ=島田涼子(多岐川裕美)、カンさん=菅原徹(小西博之)、アオイ=青井宗吉(中村繁之)、デカ長=大高道夫(石橋蓮司)。

以上が七曲署捜査一係の新メンバーです。オリジナルメンバーが1人も残ってないのが残念でなりません。

岡田晋吉プロデューサーによると「この人に声をかけて、この人にはかけないとなると不公平だから、いっそ総入れ替えにした」そうです。ファン心理を無視した言い草で、本当に残念としか言いようありません。

せめてものファンサービスって事で、冒頭に長さん(下川辰平)が「保護司」という肩書きで顔を見せてくれました。で、七曲署の建物を見上げた長さんが「随分と変わってしまったなあ……」って寂しそうに呟くんだけど、まさに我々視聴者がそんな心境でした。実際、建物まで変わってるし。

まぁ、その辺を愚痴っても仕方ありません。とにかく『太陽にほえろ!』が、それもフィルム撮影で復活してくれたんだから、気を取り直して応援しようって思いながら私は観ました。

そう、フィルムで制作してくれたことは本当に嬉しかったです。『Gメン'75』も『西部警察』も『特捜最前線』も、復活版はみんなビデオ撮影に変わってましたから。

フィルムとビデオとでは世界観そのものが違って来るので、ビデオで創るぐらいなら復活なんかしない方が良いです。全く新しい企画でやるべきです。

もう1つ嬉しかったのは、オリジナルの音楽を担当された大野克夫さんが、復活版のサウンドトラックも全て手掛けられたこと。不滅のメインテーマは勿論、マカロニやジーパンのテーマ曲が新アレンジで再録されたCDは、復活版のドラマ本編よりも貴重でしたw

ただ、荒削りな昔のサウンドに比べると、新録音バージョンの方が格段にクオリティーは高いんでしょうけど、そのぶん躍動感に欠けてる気がしました。25年の歳月を感じますね。

さて新メンバーですが、舘ひろしさんが七曲署捜査一係のボス(係長)っていうのは、私は違和感がありました。七曲署のボスは太陽を感じさせる人じゃないと、私はしっくり来ないです。

やっぱり『太陽にほえろ!』って、石原裕次郎さんのイメージ=太陽そのものなんですよね。渡 哲也さんにはまだ共通するものを感じたけど、舘さんは全然違います。どう見ても太陽じゃない。火星とか金星っぽいw

だけど、そこで引っ掛かってたら話になりませんから、受け入れるしかありません。そもそもオリジナルメンバーは誰も残ってないんだし。

その点、多岐川裕美さんは『太陽にほえろ!』と同じキャスト&スタッフで制作された『俺たちは天使だ!』で、スコッチ(沖 雅也)やドック(神田正輝)らとレギュラーで共演されてますから、違和感が無かったです。

そういう意味じゃデカ長(巡査部長)の石橋蓮司さんも、本家『太陽にほえろ!』に何度も出演されてますからね。主に凶悪犯の役でw

このドラマで一番の収穫って、私にとっては石橋さんの渋い刑事っぷりでした。暴力団の事務所に乗り込んでいく場面でも、厳めしいヤクザ俳優が何人出て来ようが、誰よりも石橋さんが怖く見えますからねw

小西博之さんは既に刑事ドラマを何本もこなされてて、バツグンの安定感でした。一目でゴリさん(竜 雷太)の後継者だと判るしw、それに相応しいキャラクター(体格も含めて)だったと思います。

中村繁之さんは殿下(小野寺 昭)のポジションだけど、キャラ的にはドックを継承したような感じでした。意外と……って言ったら失礼だけど、飄々とした良い味を出されてて、特に小西さんとの掛け合いは絶品でした。(テレ朝の『ザ・刑事』で共演済みなんですね)

そして新人刑事=ダンクの浜田 学さん。『太陽』に何度かゲスト出演された浜田光夫さんのご子息で、松田優作、宮内 淳、渡辺 徹、又野誠治に次ぐ文学座からの抜擢デビュー。

それだけに芝居は上手なんだけど、もひとつ華が感じられませんでした。連ドラで続けて行けば、もっと魅力が開花されたかも知れないですが……

だけど一発屋で終わること無く、現在もバイプレーヤーとして活躍されており、色んなドラマでよくお見かけします。息の長い役者さんになられそうですね。

そんなワケで、明らかに『太陽』初期のメンバー構成を再現したキャスティングは、地味ながら適材適所で、なかなか良かったと私は思ってます。

その地味な感じをカバーするには、やっぱり「舘ひろし」の持つ華とネームバリューは必要不可欠だったのでしょう。だから今は納得してます。

肝心のストーリーですが、さすが『太陽』スタッフですからクオリティーは高いんだけど、やはり古臭さを感じずにはいられませんでした。もちろん今風の要素は色々盛り込まれてるんだけど、基本は「熱血」の世界ですから。しかも同じ年に『踊る大捜査線』が登場しちゃってるし。

特に「ダンク」っていう新人刑事のネーミングには、正直「マイコン」を超えるダサさを感じてしまいましたw 刑事にニックネームをつけること自体、もはやパロディやコントのネタにしかならない時代です。

そのせいか、次作から登場する刑事達にはニックネームがありません。ニックネームが恥ずかしいなら『太陽』の続編なんかやめちまえ!って、私は言いたくなるんだけど……

まぁ、難しいですよね。難しくて当たり前なんだろうと思います。


☆『七曲署捜査一係’98』(1998.10.30.OA)

第2弾では残念ながら、石橋蓮司さんがメンバーから抜けちゃいました。でも代わりに新加入する香川刑事(吉田栄作)は、なかなか魅力的でした。

元SATの狙撃手で、犯人を射殺したトラウマで引き金が引けなくなり、クビになりそうな所を舘ボスに拾われたという、とても『太陽』らしさ溢れる設定で登場しました。

スコッチ路線の一匹狼キャラながら、肩肘張らない自然体な佇まいはむしろジプシー(三田村邦彦)を彷彿させ、更に吉田栄作ならではの男臭さも加わって、もしシリーズが続いたならイチオシの刑事になっただろうと思います。それくらい格好良かったです。

その香川刑事がボスの荒療治によって、トラウマを克服していく成長ドラマを軸にしつつ、敏腕弁護士(天海祐希)とボスの対立、そしてほのかなロマンスも描かれました。

香川とダンクが並んで疾走する場面は往年の『太陽』を彷彿させてくれたし、サウンドトラックにも若手ミュージシャンが加わって、前作以上にアクティブな仕上がりになってました。

ゆえに概ね満足出来たんだけど、1つだけ残念だったのは、七曲署一係に滝澤(斉藤晴彦)っていう内勤員が加わったこと。主に経理担当で、余計な出費をしないよう小言を言ったりするオジサンなんだけど、そういうのって全然『太陽』らしくないんですよね。どうせならマスコットガール(庶務係)を復活させて欲しかった。

そうやって『太陽』の基本スタイルを変えたいのなら、最初から違う番組にすりゃええやん!って、私は思いました。『太陽』を復活させるなら、とことん『太陽』らしさを貫いてくれよ!って。


☆『七曲署捜査一係’99』(1999.11.26.OA)

そして、極めつけはこれです。七曲署に「黒歴史」ってヤツがあるとすれば、まさにこれでしょう。

この回、岩井 薫という名の新人刑事が登場します。演じたのが、あの押尾 学なんですよね。数限りなくある芸能スキャンダルの中でも、押尾ほど卑劣なイメージを残した輩はなかなかいないだろうと思います。

今思えば、私はラッキーでした。実はこの回が放映された時期、我が家のビデオデッキが故障中で、録画予約が出来ない状態だったんですね。

で、放映日は仕事で帰りが遅くなり、テレビをつけた時には番組も中盤を過ぎようとしてました。まぁ、それでも今度の新人刑事はどんなだろう?と思って、しばらく観てました。

そしたら、茶髪で目つきの悪いチャラ男が派手なアロハシャツを着て、耳にピアスまでしてるじゃありませんか! ま、まさか、こいつが?って、私は自分の眼を疑いました。けれど残念ながら、間違いなくその男=押尾学が、七曲署の新たなホープだったんです。

「迷走してるな……」って思いました。何か大事なものを、そして今やるべきことを、創り手が完全に見失ってるように私は感じました。

恐らく、そうやって全く刑事らしくないキャラクターを登場させる事で、創り手は原点回帰を図ったんだろうと思います。長髪のマカロニ(萩原健一)や、ジーパン(松田優作)みたいに。

だけど’70年代の「反体制」と、’00年代の「チャラ男」とでは全然違いますよね? 同じ「刑事らしくない風貌」でも、その中身は全く正反対じゃないでしょうか?

私は、そこでテレビの電源を切りました。もはやこれは『太陽にほえろ!』じゃない。だったらもう観なくていいやって。

そしたら数年後に、あのスキャンダルですよ。私は神様に感謝しました。あの番組を観ないように導いて下さり、本当にありがとうございました!って。

もしちゃんと観てたら、私は押尾に好感を持ってしまったかも知れません。七曲署のメンバーには、自然と愛情を抱いてしまう癖がついちゃってますからねw 好感を持った上であのスキャンダルを知ったら、どれほどのショックを受けたか分かりません。だから、私は観なくて助かったワケです。

いずれにせよ、2作目でオジサン内勤員が登場した辺りから、この『七曲署捜査一係』シリーズは本来の『太陽にほえろ!』とは違う方向に行ってしまった。私はそう思います。オリジナルメンバーが出ない「復活」なんてそもそも意味が無いと思うんだけど、そうは言っても最初の2作には少なからず見所がありました。

フィルムで制作してくれた英断への敬意もこめて、最初の2作だけは「素晴らしい」作品としてここに記しておきます(3作目は無かった事にしますw)
 
コメント (4)
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