害虫屋の雑記帳(ブログ人の保存版)

ブログ人のサービス停止に伴い、gooに過去記事を保管させてもらうことにした。

偉い人に整理して欲しいSilvanus

2008-02-16 23:20:12 | 自然観察

一般家屋でみられる昆虫を分類しようとしても、微小な種になると分からないものがでてくる。私なんかが文献と格闘しながら同定しても、分類学者には苦笑されるようなケースが多い。
家屋内でみつかるムシのなかで、カビを食べる微小なコウチュウ類は、名前調べがかなり厄介。そんな厄介なムシの一つが、フタトゲホソヒラタムシ属 Silvanus である。なにしろ、世界には20数種もいて、大きさ(2-3mm)も形態もみなよく似ているし、木材の輸出入と共に分布が広がっている種もいるからだ。私も、いろいろな標本をみるたびに、「いったい日本には何種いるのだろう?」と思いながら、かなり適当に種まで決めたり、不明種扱いにしたりしていた。
結局、どの種類にしても、合板などに生じたカビを食べて生活している種なので、業務的には、無理に種まで同定する必要は全くない。でも、やっぱり分類してみたくなる衝動が沸いてくるのはどういうことなのか、自分でもよく分からない。
で、同定の手引きになりそうな文献を入手すると、うれしがって分類を試みたりするわけだ。今回は、イタリア自然史科学博物館Museo di Storia Naturale di Venezia のサイトで公開されている研究紀要のなかに Silvanus の検索を見つけて、「ふおおーっ」と、のだめ状態になりながら手持ちの標本の一部を分類してみた。イタリア語でもweb翻訳でなんとかっ!・・・・・・・・できるのか?

01silvanusbidentatus まずは、図1、フタトゲホソヒラタムシ S. bidentatus と思っている種の確認。これは、間違いなさそう。しかし、従来この種類と同定されている標本の中に、かなり違うものが混じっているようなのだ。それが次の種類。

02silvanusunidentatus 図2は、大阪、京都、兵庫などの新築家屋で、最近みつかっている種類なのだが、よくみると前種とは異なっている。どうやら、S. unidentatus のようだ。この種類は世界中で分布が確認されているので、日本でみつかるのは全然変な話ではない。(その後の調べでunidentatusも一致しない点があるのでsp. のまま保留。2月29日加筆) 某公衆衛生研究所を始めとして、日本のサイトで紹介されている画像(小さいのばっかりでハッキリしないが)のいくつかは、こちらの種の可能性がある。でもこの種類に和名をつけるとすると、どうするんだろう。フトフタトゲホソヒラタムシ?(変!)ハバビロフタトゲホソヒラタムシ?(長っ!)

参考文献)RATTI E., 2007 - I Coleotteri Silvanidi in Italia (Coleoptera Cucujoidea Silvanidae). Boll. Mus. civ. St. Nat. Venezia, 58 2007: 83-137, ill.のPDF