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害虫屋の雑記帳(ブログ人の保存版)

ブログ人のサービス停止に伴い、gooに過去記事を保管させてもらうことにした。

キオビツチバチ

2013-07-09 23:55:23 | 自然観察

その姿で見るものに強い恐怖感を与えるがために、ツチバチ類が生存のチャンスをより多く得ているということは多分事実だろう。
これまではそれでよかっただろう。しかし、もはや人類の実効支配下にあり、環境が急転し続ける地球でも生き延びていこうとするのであれば、スズメバチ科に似るという硬直した姿勢を捨て去るべきなのは明白である。

お客様「ハチがいっぱいおる。駆除して欲しい。」
害虫屋「ツチバチだ。無害。駆除不要。」
お客様「年寄りがビックリしてコケて怪我でもされると面倒。皆殺し希望。」
害虫屋「おカネくれる。なんでもやっつける。」

ツチバチはもっと無害そうで、より可愛い方向を目指すべきだろう。しかし、ティンカーベルとかに擬態したら、それはそれでコケる年寄りが続出しそう。
最低限度、オスが持っているあのニセモノの針だけはなんとかした方がよろしかろう。コワイ!
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身勝手な人間のご都合の犠牲となったハチのご遺体を検分していると、爪間体にヘンなものが生えている個体がいた。
ラボウルベニア目と思う。

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そういえば2年ほど前、某公共施設からキアシハナダカバチモドキの集団営巣地の駆除依頼があった時は、さすがに気が引けて断ったけれど、同業者がムジヒに殲滅させていたのを思い出した。


シラホシハナムグリ

2013-07-04 22:58:58 | 自然観察

ハナムグリ系の幼虫入りのコーヒービンが、職場の作業机の下に置きっぱなしということを急に思い出した。
ドバトの糞溜まりで本年4月に採集された個体だ。寝屋川市で、一般木造住宅の屋根にあるドバトの巣を撤去する業務中、巣に接した雨樋に堆積した糞の下部から数十個体発見されたものの一部。
屋根の上からコガネムシってオモシロイネーなんていってたのに、やっぱり忘れていた。
慌ててビンの中身を確認してみると、シラホシハナムグリの成虫がでてきた。
生きたのが3個体、死骸が3個体。死骸は死んで間もない感じ、6月半ばあたりに土繭から出てきたのに違いない。最初は幼虫を8個体入れていた。
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市街地ではシロテンハナムグリが優占的って話もあるが、東大阪市の町中にあるウチの事務所に飛来するのは、シラホシハナムグリの方が多い。
何年か前にウチの会社の屋上で、ミツバチの巣を野ざらしにしていると、たくさんのハナムグリ類が集まっていたので全部シロテンと思っていたら、8割方シラホシだったことがある。
おかしなことに、近くの公園のアキニレの樹液でみかけるのはシロテンばかりだ。
ドバトの糞でシラホシが増えるのならば、公園にもたくさんいてよさそうだ。実はたくさんいるのに、樹液となると好みが狭いから、あまり見かけないだけかもしれない。
こういった普通種について、ドコソコには多いがドコソコには少ないなんてことを、私は口走りがちだが、ちゃんと調べたらぜんぜん違う結果になりそう。


身近(?)なオオムカデ属の学名

2013-06-29 23:59:20 | 自然観察

■ムカデをじっくり見る人は少ない。靴でしっかり踏みつぶしておいてから、「え?何ムカデって?」ってコチラを振り返るような人が一般的だ。
大阪市内では、トビズムカデよりもノコバゼムカデのほうが優勢になっていると思うけれど、一般の関心を呼ぶほどのことでもなさそうに思う。
私もムカデには、あまり注意を払ったことがなかった。ずっと昔に南の島の森で、いろんなデカイのと出会ったことがある。特に夜に木登りしているときなどには、よく見かけたが、互いの平和のためにソッと避けていたものだ。
 このところ業務上の理由から、オオムカデ属を少しばかり調べ直してみているのだけれど、とても奥が深くてヤバイ魅力を感じた。今まで採集してこなかったことが悔やまれる。

手元のペストコントロール図説第2集(1987)には、日本産オオムカデの基亜種を含めた4亜種のリストがあった。
1.オオムカデ Scolopendra subspinipes subspinipes Leach
2.トビズムカデS. subspinipes mutilans L. Koch
3.アオズムカデS. subspinipes japonica L. Koch
4.アカズムカデS. subspinipes multidens Newport

本州では2、3、4が同所的に採集されるようだ。

日本語の文献では、これらの亜種の中で一番取り扱いが異なっていたのがアカズムカデだ。「新日本動物図鑑<中>(1965)」では、アカズは大きさや体色の違いで区別され、本州や四国に分布するが稀となっている。
「日本産野生生物目録 無脊椎動物編1(1993)」にはアカズが載っていない。イッスンムカデ属なんか10種も載っているリストなのに・・・。
最近の扱いは独立種(Chao & Chan, 2003)で、S. multidens とされる。
台湾のトビズはアカズとソックリなのがいるので、色彩では明確に区別できないけれど、頭部に大きな点刻があって、雄交尾器の第一生殖板に一対の付属器がなければアカズになるとのこと。

アオズムカデもいつの間にか独立種 S. japonica になっていた。
本州で同所的に3亜種がいるっていう妙な状況は、分類学者が粛々と解消していたわけだ。知らんかった。というわけで手元の資料のリストは、以下のように書き直しておくことにする。
1.オオムカデ Scolopendra subspinipes subspinipes Leach, 1815
2.トビズムカデS. subspinipes mutilans L. Koch, 1878
3.アオズムカデS. japonica L. Koch, 1878
4.アカズムカデS. multidens Newport, 1844

Scolopendra_s_mutilans

S_s_mutilans_tarsus

S_japonica_tarsus

Scolopendra_s_mutilans_male_genital

害虫駆除的に関わるコトがあるとは思えないが、日本のオオムカデ属は他にもまだいる。
5.S. dehaani Brandt, 1840 (アオズと一緒に独立種に昇格。東南アジアに広く分布。日本では沖縄本島で記録されている。超デカイらしい。和名わからん。)   
6.タイワンオオムカデ S. morsitans Linnaeus, 1758

*アカズムカデの参考文献
CHAO, J.-L. & CHAN, H.-W. 2003, The scolopendromorph centipedes (Chilopoda) of Taiwan. African Invertebrates, 4: 1-11.

*アオズムカデの参考文献
Kronmuller, C. 2012. Review of the subspecies of Scolopendra subspinipes Leach,1815 with the new description of the South Chinese member of the genus Scolopendra Linnaeus, 1758 named Scolopendra hainanum spec. nov. (Myriapoda, Chilopoda, Scolopendridae). Spixiana 35 (1): 19-27.


実際安い

2013-06-12 23:57:23 | 自然観察

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●二酸化炭素ミニボンベ用の専用バルブを新調した。
20年前に買ったときには1万円くらい払った記憶があるのだが、先日ネットで調べると送料込みで2000円以下で出品されててヨロコビいさんでポチッた。
水草とかロードバイク方面で安定需要があるためだろうか、ミニボンベもずいぶん安い。

炭酸ガスは様々なムシを一時的に眠らせる作用がある。眠っているムシには、アレコレひどいことができる。
体の一部を傷つけたり、落書き(まあきんぐ)したり、薬品を滴下したり・・・。
超チョッピリとバルブをゆるめて、ゆっくり炭酸ガスを流すコトで吸血性の双翅目を集めることもできるが、この目的ならドライアイスの2kgブロックとか砂糖水+酵母セットのほうが捕獲効率が良いだろう。
動きが活発な昆虫の写真を撮りやすくするのに使えないかと考えたこともあったが、自然な姿勢でジッとさせるのに成功した例しがない。というわけで、いろいろなことに使えたり使えなかったりするので、ある分野の昆虫を扱うのに関してのみ、炭酸ガスは必需品といえる。

●昔から付き合っている理科器具屋さんで濾紙を注文しようとしたら、ムンクテルの製品しか扱ってなかった。しょうがないので購入したら、偉そうな感じのオジサンの絵が付いた箱が届いた。
ムンクテルのHPによるとトレードマークのオジサンは、ろ紙の生みの親とか、元素記号を何やらしたベルセリウスという有名な化学者だそうだ。まったく知らんけど。

ムンクテル製品の使用は初めてで、アドバンテック№2に相当するらしいM1を使用してみたが、ダニ類をあつかうのには紙質が薄すぎて脆い印象で、柄付き針で微小なダニや昆虫をつついているときに妙にろ紙の繊維が緩んでくるように思われた。アドバンテックを使っているときはこんなことはなかった。
でも、定性ろ紙の本来の使用方法と大きくかけ離れたところで文句をいってもしょうがない。なくなるまでシブシブ使用するつもり。
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進撃のノコバゼムカデ

2013-06-07 23:59:00 | 自然観察

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昨夜は大騒ぎだった。コトもあろうに、わが家の押し入れからムカデが出没したのだ。
和泉市でノコバゼムカデOtostigmus scaber Porat, 1876を採集したのは初めて。
見つけたのはウチの娘だが、最初はビビッていたのに、ポリ袋に入れられたあとは「なかなかキレイなヤッチャなー。」などと余裕で鑑賞していた。
ヨメは「もうアカン。1匹おるということはもう1匹おるわ。ゼッタイつがいでウロツイとるからな!」と田舎のオバアみたいなことをいいながら、自分の対ムシ結界にホコロビがあったことに相当凹んでいた。

*Lewis J.G.E. (2001) "The scolopendrid centipedes in the collections of the National Museum of Natural History in Sofia (Chilopoda: Scolopendromorpha: Scolopendridae)" Historia Naturalis Bulgarica 13: 5-51.
26ページにノコバゼの図がある。産地によって形態差があるらしい。この論文はBioStorでダウンロードできる。