長の日を乾く間もなし誕生仏 一茶
(人気の少ない熊谷桜堤)千田完治
一か月に一度だから、一年に十二のことばを選ぶわけですが、釈尊涅槃の二月とお盆の八月、そして、釈尊降誕の四月は、それぞれにちなんだ言葉にしようと思っています。というわけで、今年の四月は、小林一茶の俳句にしました。
説明する必要のない簡潔な句ですが、どこから、引っぱってきたかというと、まったくの孫引きです。金田一春彦氏の名著『ことばの歳時記』をまるまる下記にご紹介します。まったくもってこれまた簡潔な文章で、降誕会がよくわかる。
実をいうと、月初に書き変えるこの欄をうっかり忘れていたのです。いつもは月末に書きかえて、一日には新しいブログをアップするように予約しておくのですが、なぜか忘れていました。わたくしども禅宗の寺は、毎月一日と十五日に祝聖(しゅくしん)といって、国の安寧を願うお経をあげます。今日の朝もその行事をしたのですが、ブログと掲示板を書きかえるのを忘れていました。書きかえられないブログをみて、もしかして、体調不良か、なんて心配しないでください。元気です。
というわけで、『ことばの歳時記』(新潮文庫)の四月八日の欄をまるまる下記に拝借します。
花まつり
お釈迦さまの誕生日である。この日を記念して寺々では灌仏会(かんぶつえ)を行なう。この日、とくにこしらえた美しい花御堂の中に童形の釈迦像を立て、参詣者が竹びしゃくで甘茶をそそぎかける。現在では「花まつり」の名で親しまれている楽しい行事である。
この「ハナ」は桜を含む春の花を漠然と指したもの。同じ名称だが、年末から正月にかけ愛知県三河地方の山々で盛大に行なっている民俗行事の「花まつり」とは無関係で、そちらの「ハナ」は稲の花のことで、ことしの稲作を祝う行事。この方が「ハナ」の語の古い意味を伝えている。
無憂樹(むゆうじゅ)の下で生まれた釈迦が直ちに七歩あゆみ、上下を指さして「天上天下唯我独尊」と叫んだというのは有名な伝説である。この時八大竜王が天から清い水を吐きそそいで産湯(うぶゆ)をつかわせたという故事に従って、いまも甘茶をかけるのだそうだ。