武本比登志の端布画布(はぎれキャンヴァス)

ポルトガルに住んで感じた事などを文章にしています。

018. 真冬の雨あがり・小さなドライブ・スケッチの旅

2018-10-16 | 旅日記

 

 雨もあがり天気が良くなったので急に思いたってスケッチ旅行に出かけることにした。

 思いたったのがもう昼近くになってからだ。

 とりあえず一泊くらいは出来る様にとパジャマと下着の替え、洗面道具を大急ぎでリュックに詰めた。

 クルマのエンジンをかけていざ出発。

 でも別にどこに行かなければならないというあてはない。

 

 セトゥーバルの町を抜けて国道10号線沿いのガンビアの入り口にある、以前にも入ったことのある食堂で先ずは腹ごしらえ。

 この食堂はいつも地元の人やトラックの運転手たちで満員。

 今日は少し早めなのでまだ席はある。

 

 本日の定食。

 コジード・ア・ポルトゲェーサ(野菜と豚足、サラミなどの煮込み)とフランゴ・アサード(鶏の炭火焼)を注文。

 食事をしながらどこに行くかを考えた結果、昨年にも行ったことのあるポルテル Portel を目指すことにした。

 食事が終る頃には5人ほどが立って席の空くのを待っていた。

 

 アルカサール・ド・サルからアルカソヴァスを抜けポルテルまでずーっと田舎道を走る。

 ところがアルカサール・ド・サルからアルカソヴァスへ抜ける道は先日降り続いた大雨のせいか穴ぼこと水溜りの最悪の悪路。

 ほとんどクルマは通らないがたまにすれ違っても全てトラックかRV車。

 乗用車では無理なのかもしれない。

 ラリーの気分で穴ぼこをよけながら走ったが時々は「ガツン」とやってしまう。

 時速はせいぜい20キロしか出せない。

 ところどころに土が盛られている。

 穴ぼこに埋めるための土が用意されているのだろうが、その盛り土もよけてハンドルを切らなければならない。

 

 小さな野鳥がたくさん道に出てくる。

 コウノトリもところどころに巣をかけている。鷹の様な猛禽類が空を舞っていた。

 道路脇に猟犬の檻を牽引したクルマが駐車してあったから、このあたりで狩猟をしているのだろう。

 ウサギだろうか?イノシシだろうか?鹿かもしれない。

 道路標識に鹿の絵が描かれたものがある。

 けっこう森は深いようだ。

 松とユーカリそれにコルク樫。

 このあたりは夏の山火事にはさいわい遭わなかったようだ。

 

 やはり南国アレンテージョだ。

 真冬だというのに黄色と白の小さな花が沿道を埋めつくしていちめんに咲いている。

 でも春にはこんなどころではない。

 これに赤、青、紫が混色してまるで錦の絨毯を敷きつめた様になる。

 

 かなりの距離を走ってようやく悪路から抜け出した。

 悪路から抜け出すと田舎道とはいえ真っすぐなので90キロくらいは出てしまう。

 スピードは意識して70キロに押えて走行。

 

 アルカソヴァスに到着。でもこの町は今回はノンストップで素通り。

 アルカソヴァスは何度も来てかなりのスケッチをしているし、油彩にもたくさんなっている。

 

 アルカソヴァスからは道も立派でポルテルにあっというまに着いてしまった。

 町の入口からの風景がみごとなのだ。

 ポルテルのお城と街並みそれに手前にオリーヴ畑がある。

 この風景を以前もスケッチして20号の油彩に描いたのだが、一旦は仕上げてもどうも気に入らないまま消してしまった。

 絶好のモティーフなのだが巧くはいかなかったのだ。

 今日は以前とはほんの少しだが角度を変えてスケッチをしてみた。

 何度も挑戦してみる価値はある。

 スケッチが巧くいっても油彩にならない時もあるし、逆にスケッチがもひとつでも油彩にしたら巧くいく場合もある。

 いずれにしろ僕のやりかたは先ずはスケッチをする事が肝腎なのだ。

 

 スケッチブックはいつもクルマのトランクに入れてある。

 鉛筆もベストのポケットに入れてあるのだが今日はカッターナイフを持ってくるのを忘れた。

 最近はテロの関係で飛行機に乗る時はカッターナイフとかハサミとかは厳重で持ち込めなくなった。

 そのせいでベストのポケットやリュックにはカッターナイフを入れなくなったのだがうっかりしていた。

 しかも今日に限って鉛筆は一本しか入っていない。

 芯が折れたら大変だ。力がはいりすぎてよく折ってしまうのだが今日はなんとか折れなくて済んだ。

 次からは鉛筆とカッターナイフもクルマのトランクに入れておく方が良いようだ。

 

 以前来た時は閉まっていた城門は今日は開いていた。

 城壁の上に登ってそこからもスケッチをした。

 手前に赤瓦のドーム屋根の古い建物があって曲がりくねった道沿いに丘の上まで小さな建物が軒を連ねていて重なり具合が面白い。

 これも20号くらいの油彩にできるかもしれない。

 お城は城壁と塔だけであとは空っぽである。

 ポルトガルの城はほとんどがこういったものである。

 彫刻が施された柱の一部などが転がっている。

 当時はさぞや立派なお城だったのだろうと偲ばれる。

 

 今日は悪路をかなり走ったので後になって疲れがどっとでたようだ。

 予定通り一泊することにした。

 クルマもラリーを完走したごとくに泥だらけである。

 明日はどこかで水道場を見つけて洗ってやらなければならない。

VIT

 

(この文は2004年1月号『ポルトガルの画帖』の中の『端布れキャンバスVITの独り言』に載せた文ですが2019年3月末日で、ジオシティーズが閉鎖になり、サイト『ポルトガルの画帖』も見られなくなるとの事ですので、このブログに少しづつ移して行こうと思っています。)

 

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