日本人が「R」と「L」の発音が苦手な様に、ポルトガル人には「H」の発音があまり出来ない。
ポルトガル人に限らずラテン系の人たちは皆その様だが…。
「HONDA」は「オンダ」「YAMAHA」は「ヤマア」「HITACHI」なら「イタチ」になってしまう。
テレビのニュースキャスターでさえそう発音する。
『「オンダ」と「ヤマア」がトップ争いをしています。あっ、「ヤマア」がカーブで抜け出した。』
『あっ、「ヤマア」転倒。「オンダ」引っ掛けた。両者共転倒。「ススキ」抜け出した~っ。』と言った具合。観ている方もずっこけてしまう。
僕の名前「HITOSHI」は「イトシ」。なんだか漫才師のイメージが強い。
もちろん「H」の発音が出来る人もいて、それが自慢なのか、「ヒトーッチッ」などと呼ばれたりもする。
画廊のペドロはいつもそうだ。
まあどう呼ばれようと良い様なものだがこの際だから、「ヒ」に濁点を付けて「ビ」つまり「ビトシ」としてみたらどうか?と考えたのである。
さらに「シ」も「チッ」などとなる恐れもあるので、外してしまって、簡潔に「ビット」「VIT」とした。
ポルトガルには「VITOR](ビットール)という名前の人がいる。
セトゥーバルのクラブサッカーチームの名前が「VITORIA」(ビットリア)という。
「勝利」と言う意味あいがある。
ポルトガルの一部リーグで今、12~3位のところをうろうろしている。
イタリアには「ビットリオ・デ・シーカ」が居た。
あの「靴みがき」(1946)や「自転車泥棒」(1948)の監督である。
「自転車泥棒」は名画中の名画であるし、テレビでも何度もやっているので
殆どの人は観ていると思う。
僕も何度観ただろうか?
『主人公は自転車を盗られてしまう。
看板貼りにとって自転車がなければ仕事にはありつけない。
思い余って他人の自転車を盗ろうとする。
あの、子供を先に帰して自転車を泥棒するシーン。
子供は帰らないで建物の陰から隠れて見ているその前で、皆から寄ってたかって捕まってしまう。あのシーン。』
あまりにも悲しくて、あまりにも残酷で…涙無くしてはとても観ていられない。
「あんな時代に生まれてこなくて良かった。」と以前は思ったものだが、今世界中どんどん失業者が増え。
あんな時代に戻りつつある…。様に思う。
藤田嗣治は洗礼名をレオナルドとした。
レオナルド・フジタである。
クルマでもポルトガルに来れば名前が替わる、
「日産マーチ」は「ミクラ」という。「トヨタビッツ」は「ヤリス」である。
「スズキジムニー」は「サムライ」となる。
そんな訳で
「VIT」ならすぐに憶えてもらえるだろうし、呼びやすいだろう。
と思ったのだが、実際には誰もそうは呼んでくれない。
「MUTSUKO」にも同じような問題がある。
「HITOSHI」よりも更に憶えにくい名前らしく、ようやく憶えても「ムチュコ」などと発音している。
「MITSUBISHI」は「ミチュビチ」になる。
ポルトガルで「ミチュビチ」の RV 車は人気が高い。
ぬかるみではまってしまいそうな名前である。
いっぽう「MATSUDA」は始めから「MAZDA」としてほぼ正しく呼ばれている。
「ムツコ」も濁点を付ければ「ムヅコ」「MUZKO」略して「MUZ」とした。
が実際にはまだまだ浸透はしていなくて、相変わらず「ムチュコ」であるが…。
「MUTSUKO」や「HITOSHI」よりも、むしろ「TAKEMOTO」の方がポルトガル人にとっては憶え易い様だ。
もっともポルトガルには「K」の文字はないから、「TAQUEMOTO」などと書いたりはするが…。
ちなみに「TOKYO」は「TOQUIO」と書く。
ポルトガル人に「TAKEMOTO」と書いた名刺を差し出したとしたら「HONDA」「YAMAHA」「SUZUKI」「KAWASAKI」の代理店の人と思うかも知れない。
セトゥーバルのバイク屋さんに「TODIMOTO」と言う店がある。
ルイサ・トディ大通りに面しているからTODI、
「MOTO」には「モーター」とか「動く」といった意味がある。
「地震」のことを「TERRAMOTO」と言う。
大地が動く。のである。
もし「寺本」さんがポルトガルに来たならば、すぐに憶えてもらえる?名前である。 VIT
(この文は2003年4月号『ポルトガルの画帖』の中の『端布れキャンバスVITの独り言』に載せた文ですが2019年3月末日で、ジオシティーズが閉鎖になり、サイト『ポルトガルの画帖』も見られなくなるとの事ですので、このブログに少しづつ移して行こうと思っています。)
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