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武本比登志の端布画布(はぎれキャンヴァス)

ポルトガルに住んで感じた事などを文章にしています。

009. ムズ と ビット

2018-10-10 | 独言(ひとりごと)

 日本人が「R」と「L」の発音が苦手な様に、ポルトガル人には「H」の発音があまり出来ない。
 ポルトガル人に限らずラテン系の人たちは皆その様だが…。

 「HONDA」は「オンダ」「YAMAHA」は「ヤマア」「HITACHI」なら「イタチ」になってしまう。
 テレビのニュースキャスターでさえそう発音する。
 『「オンダ」と「ヤマア」がトップ争いをしています。あっ、「ヤマア」がカーブで抜け出した。』
 『あっ、「ヤマア」転倒。「オンダ」引っ掛けた。両者共転倒。「ススキ」抜け出した~っ。』と言った具合。観ている方もずっこけてしまう。

 僕の名前「HITOSHI」は「イトシ」。なんだか漫才師のイメージが強い。

 もちろん「H」の発音が出来る人もいて、それが自慢なのか、「ヒトーッチッ」などと呼ばれたりもする。
 画廊のペドロはいつもそうだ。

 まあどう呼ばれようと良い様なものだがこの際だから、「ヒ」に濁点を付けて「ビ」つまり「ビトシ」としてみたらどうか?と考えたのである。
 さらに「シ」も「チッ」などとなる恐れもあるので、外してしまって、簡潔に「ビット」「VIT」とした。

 ポルトガルには「VITOR](ビットール)という名前の人がいる。
 セトゥーバルのクラブサッカーチームの名前が「VITORIA」(ビットリア)という。
 「勝利」と言う意味あいがある。
 ポルトガルの一部リーグで今、12~3位のところをうろうろしている。

 イタリアには「ビットリオ・デ・シーカ」が居た。
 あの「靴みがき」(1946)や「自転車泥棒」(1948)の監督である。
 「自転車泥棒」は名画中の名画であるし、テレビでも何度もやっているので
殆どの人は観ていると思う。
 僕も何度観ただろうか?
 『主人公は自転車を盗られてしまう。
 看板貼りにとって自転車がなければ仕事にはありつけない。
 思い余って他人の自転車を盗ろうとする。
 あの、子供を先に帰して自転車を泥棒するシーン。
 子供は帰らないで建物の陰から隠れて見ているその前で、皆から寄ってたかって捕まってしまう。あのシーン。』
 あまりにも悲しくて、あまりにも残酷で…涙無くしてはとても観ていられない。
 「あんな時代に生まれてこなくて良かった。」と以前は思ったものだが、今世界中どんどん失業者が増え。
 あんな時代に戻りつつある…。様に思う。

 藤田嗣治は洗礼名をレオナルドとした。
 レオナルド・フジタである。

 クルマでもポルトガルに来れば名前が替わる、
 「日産マーチ」は「ミクラ」という。「トヨタビッツ」は「ヤリス」である。
 「スズキジムニー」は「サムライ」となる。

 そんな訳で
 「VIT」ならすぐに憶えてもらえるだろうし、呼びやすいだろう。
 と思ったのだが、実際には誰もそうは呼んでくれない。
 
 「MUTSUKO」にも同じような問題がある。
 「HITOSHI」よりも更に憶えにくい名前らしく、ようやく憶えても「ムチュコ」などと発音している。
 「MITSUBISHI」は「ミチュビチ」になる。
 ポルトガルで「ミチュビチ」の RV 車は人気が高い。
 ぬかるみではまってしまいそうな名前である。
 いっぽう「MATSUDA」は始めから「MAZDA」としてほぼ正しく呼ばれている。
 「ムツコ」も濁点を付ければ「ムヅコ」「MUZKO」略して「MUZ」とした。
 が実際にはまだまだ浸透はしていなくて、相変わらず「ムチュコ」であるが…。

 「MUTSUKO」や「HITOSHI」よりも、むしろ「TAKEMOTO」の方がポルトガル人にとっては憶え易い様だ。
 もっともポルトガルには「K」の文字はないから、「TAQUEMOTO」などと書いたりはするが…。
 ちなみに「TOKYO」は「TOQUIO」と書く。

 ポルトガル人に「TAKEMOTO」と書いた名刺を差し出したとしたら「HONDA」「YAMAHA」「SUZUKI」「KAWASAKI」の代理店の人と思うかも知れない。

 セトゥーバルのバイク屋さんに「TODIMOTO」と言う店がある。
 ルイサ・トディ大通りに面しているからTODI、
 「MOTO」には「モーター」とか「動く」といった意味がある。
 「地震」のことを「TERRAMOTO」と言う。
 大地が動く。のである。
 もし「寺本」さんがポルトガルに来たならば、すぐに憶えてもらえる?名前である。 VIT

 

 

(この文は2003年4月号『ポルトガルの画帖』の中の『端布れキャンバスVITの独り言』に載せた文ですが2019年3月末日で、ジオシティーズが閉鎖になり、サイト『ポルトガルの画帖』も見られなくなるとの事ですので、このブログに少しづつ移して行こうと思っています。)

 

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