持続可能な国づくりを考える会

経済・福祉・環境の相互促進関係を!

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ポイント⑥ 「経済と環境のバランスを実現する社会システム」

2010年02月21日 | 理念とビジョン
⑥経済と環境のバランスを実現する社会システム

経済と環境のバランスは不可欠です。
経済活動の拡大に伴う環境問題とは、生態系、人間の生存条件、企業の生産条件の劣化にほかならないからです。




 ●私たちをいつまでもしっかりと支えてくれると思い込んでいた
  「環境」という地盤は、ここで円に描かれているように
  有限であることが今でははっきりしています。
  その地盤は劣化してひびが入って、いよいよ割れて
  取り返しがつかなくなろうとしています。
  私たちが驚き嘆いているだけでなく、その保全・改善に
  いますぐ取り組まなくてはならないのは明らかです。



前回までのビジョンのいわば第1章にあたるところについて、新しい福祉社会モデル「ワークフェア国家」が示されていることをご紹介してきました。
現在までほとんどもっぱらトレード・オフ関係としてとらえられてきた経済と福祉が、実は両立できる、というよりも両立することこそが今後リアルになるという方向性は、たぶんはっきりしていると思われます。
そこに私たちの希望があります。

さて、今回からご紹介するのは第2章にあたる、環境と経済のバランスを論じたくだりの冒頭の箇所です。

ここで要約的に述べられているように、「経済と環境はトレード・オフの関係にある」というとらえ方もまた、私たちが生きている現代日本社会において、ほとんど空気のように自明化された常識になっていると思われます。
それは私たちの内にある「当り前だ」「あえて言うまでもない」「しょうがないでしょ?」というような感覚です。そうではないでしょうか?
そして環境に関するいろいろな議論が結局この常識を前提になされていて、それがためにいつのまにか「腰砕け」に終わっているように見える――といったら言い過ぎになるでしょうか。

しかしこのビジョンでは、福祉の場合と同じく、それは誤解であるとしています。

「経済と環境(と福祉)はバランス」は不可欠でありかつ可能であると考えています。
人間(社会)と自然の持続的な調和なしに「安全・安心で幸福な社会」はありえないからです。
(14~15頁)


後者の「バランスは可能」ということは、これも福祉の場合と同じくその「誤解」を解消するうえでとても重要だと思います。
ビジョンの以降の箇所をお読みいただければご理解いただけると思いますが、これからの時代において、環境とのバランスを実現した経済こそが真に持続可能=リアルだということには、理論と実際に基づくポジティブな説得力があると感じます。

一方、前者の「バランスは不可欠」とは、その「経済と環境はトレード・オフだ」という「誤解」は、そもそも成り立たないはずだということを示しています。
地球環境の危機についてはすでにデータが示されていろいろに語られているようでありながら、一般的には何がそれらの危機の根本・本質であるのか、それが私たちに何をもたらすのかがはっきりとは認識されていないようであり、「不安はいっぱいだが危機感が薄い」という状況に終始しているように見えます。

そのなぜか見えなくなっている本質とは、「環境問題と私たちの経済活動はコインの表裏のように一体の現象だ」という事実です。
ましてその認識が経済界や政治の行動原理には多分まったくなっていないのは、日々の報道を見ている限り間違いないと言わざるを得ないと思われます。


そこでビジョンのこれに続くくだりでは、そこをはっきりさせることによって私たちは正当な危機感を持つ必要があるという意味で、いわゆる「環境問題」が具体的には次の三つの内容をもつものだとしそれぞれの解説を行っています。

 (環境問題とは)
  ①生態系(自然)の劣化
  ②人間の生存条件の劣化
  ③企業の生産条件の劣化

①も②も、「環境問題」によって私たちの「足元」が崩れつつあることを示す恐るべきものですが、さらに③は、そういうこととは関係なくリアルに営まれているかのように見えている企業活動自体がたぶん真っ先に持続不可能になるというだろうという冷厳たる事実を示しており、いずれも必須の現実認識という意味で重要だと思われます。

以降、それらの個所をご紹介していきたいと思います。

(つづく)


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※この環境と経済を取り上げた以降の部分では、環境問題スペシャリスト・小澤徳太郎氏の環境論に依拠するところが多くなっています。
※とくに、上記の「環境と経済は一体だという事実」にもかかわらずそれが「一般にははっきりと認識されていない」ということについては、小澤氏の次のブログ記事それぞれをお読みいただくとご理解いただけると思います。

 ●環境問題とは何か
 ●変わらぬ学生の反応


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