持続可能な国づくりを考える会

経済・福祉・環境の相互促進関係を!

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環境技術はすでに十分?

2013年02月24日 | エネルギー政策

 運営委員長の岡野です。最近の状況について一言コメントを。

 最近、「アベノミクス」への期待が高まっているようです。 

 確かに円安になり、一部の輸出関連の大企業の業績は回復しつつあり、期待値も含めて株価も上がりつつあり、安倍政権への支持率も高まりつつあるようです。 

 ともかく日々の生活が問題で、一日も早く景気が回復してほしい、雇用が回復してほしい……と私も思うのですが、しかし、それにしても政治やメディアの世界で「環境問題」がほとんど(?)語られなくなったのは問題です。 

 アベノミクスでは、デフレ脱却-景気回復と環境問題の解決がつながっていないように思われて、非常に残念です(ストックホルム学派経済学や神野直彦『人間回復の経済学』〔岩波新書〕のような財政社会学を学んでほしい!)

 昨日は青森県の八甲田山の酢が湯で5メートルを超える「記録的豪雪」というニュースが伝えられていました。 

 近年の「記録的豪雨」「記録的猛暑」など一連の「気候変動」が、この冬もさらに進んでいることの表われだと思われます。 

 そんな中、今朝のNHKテレビで、ガソリンスタンドが激減しつつある問題を取り上げる中で、滋賀県の食用油の廃油からディーゼル燃料を取り出す試みの実用化がかなり進んでいることを紹介していました。 

 この試みについても前から知っていたのですが、改めて「そうか、ここまで実用化が進んでいるのか。やればできるんだ!」とうれしい驚きでした。 

 前回の藻の話もこの話も、バイオ・エネルギーには大きな可能性があることを示していると思われます。 

 もしかすると、太陽光や風力よりも環境への負荷が少ないという意味で可能性が高いのかもしれない、と感じました。

 いずれにせよ、つまり、持続可能な国づくりのために必要な環境技術(4象限理論でいうと右上)はすでに十分といっていいくらい準備状態にあるのではないでしょうか。 

 スウェーデンも、新たに開発したものというよりすでにあった環境技術で「エコロジカルに持続可能な国」に接近しつつあるとのことです(小澤徳太郎『スウェーデンに学ぶ「持続可能な社会」』朝日新聞社)。 

 ですから、後は、私たち日本人総体がここまで準備された環境技術を国全体に活かし切る知恵と実行力(左側象限)を持つことができるかどうかだけのようです(ガンバロー! やればできる!)。

 


藻とエネルギー自給の可能性?

2013年02月19日 | エネルギー政策

 運営委員長の岡野です。

 昨日、テレビで参議院予算委員会での民主党の植松恵美子氏(香川県選挙区)の質問を聞いていて、国家の安全保障には食糧とエネルギーの自給は必須ではないかという主張は私たちと一致するところであり、質問の態度の嫌みのない歯切れのよさ、43歳という若さに、これからのなかなかの人材なのではないか、という期待感を持ちました。 

 加えて、彼女の質問の中で、筑波大で進んでいる藻から燃料を取り出すという研究が実用化まであと一息に迫っていることを知ったのは収穫でした。 

 ニュース等でその研究のことは少し知っていたのですが、実用化まではかなりの時間がかかるのではないかと思っていたのです。 

 日本の原発推進の主な動機の1つは、敗戦を体験した指導者たちの「日本は石油不足で戦争に負けた。なんとしてでもエネルギーの自給ができるようにしなければ」という思いだったようであり(もう1つは将来的な核兵器の保有を可能にしておくこと)、今でも原発に関する議論には必ず、「再生可能エネルギーでは産業に必要な安価で安定的な電力がまかなえない」という話が出てきます。 

 しかし、もし藻から石油に近い液体燃料を安価に取り出せるようになれば、日本の悲願であったエネルギーの自給は可能になり、輸入の石油や天然ガスや原発に依存する必要がなくなるかもしれません。 

 どこまで短期間での実際的な可能性があるのかは、素人なので断定できませんが、可能性があることはまちがいないと思われます。 

 これは、一日も早い脱原発を願っている私たちにとっては、朗報ではないでしょうか? 

 みなさんのご意見やご感想をお聞かせください。

 


日本の戦後と社会民主主義:文献案内

2013年02月01日 | 政治

 運営委員長の岡野です。

 これまで私たちの会では、スウェーデンが、第二次大戦以前から準備し戦後から最近にかけて一貫して、福祉国家さらには緑の福祉国家へと歩んできた歴史を学びながら、それを推進した思想が単なる看板ではなく本気の社会民主主義であることを確認してきました。 

 そして私個人としては、それと並行した日本の歴史を学びながら、日本にそれができなかった大きな理由の1つは――4象限理論からするとあくまで1つですが――戦前から戦後-今日に到るまで、日本では本格的な社会民主主義-社会民主主義政党が形成されなかったことではないか、と考えるようになりました。 

 そして、それが日本の不幸だ、という気がしています。 

 例えば、政権を得てから失うまでの民主党の政策・言動を観察していて、党全体として、ぶれることなく持続可能な国づくりに向かう方向付けとしての社会民主主義的な理念とビジョンが確立-共有されていないんだな、と感じてきました。 

 社民党は今では「社会民主党」と名乗っていますが、発言を聞いていると、スウェーデンさらにはヨーロッパの社会民主主義政党とは視点・路線が違っていて、社会党以来のマルクス主義的な階級対立路線を引きずっているようです。 

 (そういう状況に一石を投じるべく、前回の「政権交代」直後――タイミングが悪かったといえば悪かったのですが――私たちの会の「理念とビジョン」を民主党の衆参国会議員全員、社民党と自民党の「環境派」を名乗っている議員に送りました。結果は、民主党の議員2名から賛同の返事があっただけでした。) 

 そういう日本の近代-戦後史の流れを確認できるのではないかと予想して、正村公宏氏の『戦後史(上)(下)』(ちくま文庫)、『現代史』(筑摩書房)を読んでみました。 

 「なるほど、そういう流れだったんだな、やはりそうだったんだよなあ」と、きわめて本格的な専門家によって自分の考えの裏付けを得たという感じがしています。 

 もちろん事実に裏付けられた詳細な論述があるのですが、以下の文章に要点が語られていると思われます。 

 「『戦後』の初期のアメリカの日本占領政策の目標は日本の民主化と非軍事化であった。男女平等の普通選挙が制度化され、基本的人権の保障と主権在民が宣言された。新しい憲法は、自由民主主義(政治的民主主義)の憲法であると同時に社会民主主義(経済民主主義)の憲法でもあった。しかし『戦後』の日本の歴史の全体を通じて社会民主主義を強力に推進しようとする有力な政治勢力は形成されなかった。」(『現代史』472-3頁) 

 どちらも力作であり大著ですが、本気で持続可能な国づくりを考えたい関係者のみなさんには、時間を使って努力して読むに値する参考文献だと思いますので、お勧めするとともに、ぜひ知識と理解を共有することができればと願っています。(アマゾンへのリンクは私の個人ブログからどうぞ。)