「持続可能な国づくりの会・理念とビジョン」
ダイジェスト版
全 文
運営委員長の岡野です。続けて、運営委員長としての〔しかし個人的〕見解を述べていきます。
みなさん、ぜひ建設的コメントをください。
原発の事故がいつ収束するのかわからない不安な状況の中で、報道によって次第に明らかになりつつあることがあると思われます。
それは、政府、財界、電力会社が一貫してエネルギー需要の増大を前提とした「経済成長」を目指してきたこと、原発はひたすら増大するエネルギー需要をまかなうために危険を最小限に見積もって「安全」と言い募りながら推進されてきたことです。
その際、危険はある程度までしか「想定」されず、確率的にまれ(?)だと思われる危険については経費節減という発想から安全対策は省略―節約されたようです。
しかし、津波一つを例にしても、すでに書いたとおり、明治以来の津波のデータからすれば、1896年、明治三陸地震の38.2メートル、1993年、北海道南西沖地震―奥尻島津波の30メートルは「想定」されなければならなかったのではないか、と素人には思えます。
私の住む湘南から遠くない静岡・浜岡原発について、中部電力は「緊急用の発電車両を2台、25メートルの高台に置く」ことにしたようですが(3月24日朝日オピニオン欄の静岡県知事川勝平太氏へのインタビュー記事によれば)、38.2メートルや30メートルの津波なら25メートルの高台をも呑み込んでしまことをなぜ「想定」しないのでしょうか。
今回の津波の最高は23メートル強だったそうですから、そのくらいならぎりぎりセーフかもしれませんが。
原発事故の背後には、「経済成長」という意味でも「経費節減」という意味でも、国民・住民の安全対策よりも当面の経済性が優先されるという体質がはっきりと読み取れます。
しかし、当面の経済のために安全対策を節約して進められた結果、「想定外」の原発事故が起こり、極限的な経済的不利益を国民・住民にもたらしているだけではなく、企業にも政府にも大変な損失をもたらしました。
そこには、短期の経済性―利益の追求が中長期の大きな不利益をもたらしている、というパターンが見られるようです(政府や財界、電力会社の体質が変わらないかぎり、同じパターンのことが起こるとシミュレーションできます)。
私たちは、今、できるだけ早くエネルギー増大―原発依存の産業構造を転換して、エネルギー消費を漸減させながら、再生可能なエネルギー体系に切り替えつつ、しかもゆるやかな経済成長を可能にするという知識産業を中心とした新しい産業構造へ向かうほかないのではないか、と考えています(エネルギー政策について、私たちの仲間小澤徳太郎氏のブログに今、非常に示唆深い記事が連載されています。ブックマークから入ってお読みください)。
産業構造を転換せず、エネルギー増大の方向を変えず、しかも原発の危険を根本的になくすというシナリオはありえない、と私には思えます。
東北の復興もまた、そうした方向でなければ、多くの危険や限界(エコロジカルな持続不可能性)を含んだままの「元に戻る」ということになるのではないか、と危惧しています。
そういう意味では、東北は「復興」というより、エコロジカルに持続可能な知識産業社会へと、全面的に「新興」してほしいと願っています。
*「エコロジカルに持続可能な知識産業社会」の構想については、当会の「理念とビジョン」をご参照ください。