持続可能な国づくりを考える会

経済・福祉・環境の相互促進関係を!

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人間の作り出したものが人間の生命を脅かすという矛盾

2011年06月20日 | 環境

 運営委員長の岡野です。以下、個人のブログの記事ですが、本会のテーマと全面的に重なっていますので、転載します。


 
 市川定夫氏のことは、放射能がムラサキツユクサに及ぼす影響を明らかにした実験のことで少しだけ知っていましたが、著書をちゃんと読んだことがありませんでした。

 今回の一連の学びの中で、5月29日のブログ記事に掲載させていただいた「自然放射能と人工放射能のちがい」についてのコメントが非常に示唆的だったので、もっと知りたいと思い、『新・環境学 現代の科学技術批判――生物の進化と適応の過程を忘れた科学技術 Ⅰ』藤原書店、2008年』を読んでみました。

 感想を一言で言うと、この巻だけでも、環境問題のもっとも基本的なポイントについてきわめて明快に気づかせていただいた、という思いです(Ⅱ、Ⅲも続けて読むつもりです)。

 そのもっとも基本的なポイントとは、以下のようなところでした(強調の赤字は筆者)。


「……この地球上には、ウイルスからヒトまで、実に多様な生物が生息しており、これら生物では、分子レベルから、生態系レベルまで、さまざまな生命現象が見られる。そうした生命現象の主役を担っているのは、たんぱく質と核酸であり、たんぱく質が生命現象の現場での担い手として、核酸のうち、DNA(RNAウイルスを除く)がそのたんぱく質を合成する設計図(遺伝情報)として、RNAがその設計図に基づくたんぱく質分子合成役として、それぞれ重要な働きをしている。」(26頁)

 「そして、こうしたさまざまなたんぱく質のすべてが、DNAの遺伝情報に従って合成されるのであるから、生命現象は、遺伝子の働きの綜合結果といえるのである。」(58頁)

 「このように、生物は、実にさまざまな自己防御機能をもっている。これらはすべて、進化の途上で環境との長い接触を通じて築き上げてきたものである。したがって、自然界に存在した、生物が遭遇することができた要因に対してのみ、このような多様な防御機能が築き上げられたのであり、そうした防御機能を獲得した生物種のみが適応種として繁栄してきたのである。最も重要なのは、自然界にはまったく存在しなかった人工的なものに対しては、生物の長い進化と適応の過程で、どの生物もかつて遭遇する機会がまたくなかったのであるから、そうした防御機能をまったくもっていないということである。」(71~71頁)

 「経済性または経済効率を最優先してきた現代社会は、科学技術の適用もその範疇で取捨選択してきたし、多くの場合、個々の時点での経済性や経済効率を最優先してきた。どちらがより経済的かという科学技術の適用こそが、現在の環境問題をもたらしたのである。同じことは、消費者としての一般市民にもあてはまる。何があるいはどちらがより安価に入手でき、より利便性に優れ、より快適なのかが、すべての尺度であった。
 しかし、そうした経済優先主義や利便追求思考は、最も重要な視点を忘れ去っていた。それは、近代科学技術の適用が、恵まれた地球の自然環境の中での、ヒトを含むあらゆる生物の進化と適応の過程をすっかり忘れたものであったという視点である。……
 本巻の第二章で簡潔に述べ、第二巻、第三巻で詳述するさまざまな問題点は、いずれも人工的なもの、つまり生物が長い進化と適応の過程でかつて遭遇したことのないものに対して、遭遇したことがないゆえに適応を知らず、それゆえまったく適応できなかったり、進化の過程で獲得してきた自然環境に存在したものに対する優れた適応がかえって悲しい宿命となったり、誤った反応をしてしまったりして、生態系が破壊され続けてきたことを明示している。
 自然環境中に存在しなかった人工化合物が生体内で分解も排出もされずに蓄積したり、人工化合物を生体内で有害なものに変えてしまったり、これまで安全であった元素につくり出された人工放射性核種が生体内で著しく濃縮されたり、さまざまな人工条件が生態系を破壊する例は、いずれも、私たちの科学技術というものが、生物の進化と適応の過程を忘れたものであったことを訴えている。
 最新のバイオテクノロジーもまた、生物の進化と適応の過程を忘れたまま、人為的な手を加えた生物を次々と産み出しつつある。
 このように、人工化合物、人工放射性核種、人工的条件、人工生物など、さまざまな人工的なものが、細胞内で遺伝子DNAを破壊し、個体に性の撹乱と免疫毒性をもたらし、生態系を破壊し、さらに地球規模でも環境を破壊しているのである。私たちは、生物がその進化と適応の過程でかつて遭遇したことがまったくなかったこうした人工的なものがもつ意味を、緊急かつ真摯に問い直す必要がある。」(98~100頁)


 そうした、人間が作り出したものが人間の生命を脅かすという根本的な矛盾を乗り越えることによってのみ、国も世界も持続可能になる、そこを乗り越えられなければ持続可能な国も世界もありえない、ということだと、改めて根本的な問題点についてはっきりと了解したという気がしています。




新・環境学 1―現代の科学技術批判
市川 定夫
藤原書店



なぜ、持続可能な国づくりなのか。6月11日撮影

2011年06月12日 | エネルギー政策
運営委員長の岡野守也氏が、しばしば出される質問・疑問「なぜ、持続可能な社会づくりでなく、国づくりなのか。」について、東日本大震災からちょうど3カ月、6月11日の今の思いを語ります。ぜひ、ご覧ください。


なぜ、持続可能な国づくりなのか。1/2


なぜ、持続可能な国づくりなのか。2/2 改訂版


動画を最後まで御覧になってくださった方、有り難うございます。
編集の不手際で、最後の部分が切れていましたので、「改訂版」に差し替えました。
 
                  (2011年6月15日 事務局)

新刊『日本再生の指針』 紹介動画

2011年06月12日 | エネルギー政策

『「日本再生」の指針――『十七条憲法』と「緑の福祉国家」』(ザ・ブック刊、太陽出版発売)が6月下旬に刊行される予定です。

刊行に先駆けて、著者の岡野守也氏より、その要点をご紹介いただきました。ご興味がある方は、ぜひ予約・購入し、お広めください。

日本再生の指針

チェルノブイリ「フクシマ」への教訓〈1〉"終わりなき事故の後始末"

2011年06月07日 | エネルギー政策
当会の会員でジャーナリストである高世仁氏が、「チェルノブイリの今」を取材し、ユーチューブに公開されました。

チェルノブイリ「フクシマ」への教訓〈1〉"終わりなき事故の後始末"


氏からのメッセージです。

●ジン・ネットは、4月上旬に「チェルノブイリの今」を取材しました。
4月17日にフジTV特番で一部が使用されましたが、その後、地上派テレビで紹介するチャンスがありませんでした。
規模や程度の違いはあれ、チェルノブイリの今はフクシマの明日です。
成功、失敗さまざまな教訓を学べるのではないかと思い、無料でネットに公開することにしました。
ぜひご覧になって、この映像を広めてください。
また、ご意見をお寄せください。
よろしくお願いします!