読書など徒然に

歴史、宗教、言語などの随筆を読み、そのなかで発見した事を書き留めておく自分流の読書メモ。

カダフィ後のリビア

2011-08-28 08:53:32 | 新聞
wsjから 
カダフィ大佐はリビア・トリポリで包囲されている。反政府軍は先週末、トリポリから約50キロ西に位置するザウィヤを支配下に収めた。同地はトリポリとチュニジアを結ぶ湾岸道路にある要衝だ。15日には、南下するとアルジェリアに続くハイウェイを支配する都市ガリヤンを制圧した。東には、現在やはり反政府勢力の支配下にあるミスラタがあり、その先のベンガジとリビア東部は、2月以来カダフィ大佐の支配を逃れている東部だ。北には海という難攻不落のバリケードがある。

 ほぼどんな基準で測っても、「リビア革命を主導する」カダフィ大佐の日々は長くないように思える。しかし、出口戦略がないため、体制側で今も抵抗している面々は、戦い続ける以外に選択肢はないと考えているのだろう。そして、反体制派のリーダーは、トリポリを力で制圧しようとすれば、大惨事になりかねないとこっそり認めている。幸い、彼らにそのつもりはない。反体制派の戦略は、体制内部からの崩壊を促すこと、あるいは少なくとも、カダフィ大佐の放逐につながる市民の反乱を引き起こすことだ。20日にはさまざまなメディアが、この反乱が始まったと報じていた。

 この戦略は成功する可能性があるだけでなく、おそらく成功するが、反体制派は真の妥協が必要になりそうだ。なおもカダフィ大佐に忠実な勢力に対し、離脱すれば安全だと保証する必要が出てくるだろう。これは、カダフィ失脚をもたらすカギであるだけでなく、その後の平和を確保するカギでもある。英国のミッチェル国際開発相は6月、「トリポリ陥落で最初にやるべきことの1つは、誰かが電話でトリポリの前警察署長に電話し、仕事ができたと伝えることだ。トリポリ市民の安全と治安を確保しなくてはならない、と」

 反体制派には、カダフィ政権が跡形もなく消えて欲しいという向きもあるだろうが、ベンガジの国民評議会のリーダーたちは現実的で、治安の空白を防ぐため既に動いている。彼らの描くカダフィ後のリビアの青写真が今月、英紙タイムズにリークされた。それによると、同評議会は体制側の治安当局者約800人をひそかに採用しており、カダフィ政権が崩壊すれば新政府の治安組織の中枢を固める用意ができている。また、イデオロギー的にカダフィ大佐から遠い警官約5000人を新政府の部隊に異動する計画だ。それ以外の体制派の多くは、疲れ果て、おびえており、権力にしがみつこうとする気さえない。ただ、自分と家族の安全が欲しいだけだ。

 これまでのところ、戦略は奏功しているようだ。19日には、かつてカダフィ大佐の政権掌握を助けたジャルード元首相がイタリアに出国した。先週はまた、長らくカダフィ大佐の盟友だったナスル・アルマブルーク・アブドラ内相や軍の司令官マスード・アブデルハフィド氏がエジプトに逃亡した。その前週には、ミスラタ戦で反政府勢力の捕虜となっていたカダフィ側からウィサム・ミランド大佐がAFP通信に対し、カダフィ大佐は弱体化した軍隊を傭兵と戒厳令でまとめていると語っていた。

 反体制派は目前と思える勝利に明るいムードだ。ただ、この砂漠の戦いにおける西側参加国の多くはそうでもない。タイムズ紙は先週、ベンガジを拠点とする外交筋の言葉として、「壊滅的な成功」は「今や北大西洋条約機構(NATO)で一般的に使われる言葉だ・・・壊滅的ではないとしても、混沌とした成功になるだろう。反体制派の準備が整っておらず、カダフィ体制が崩壊すれば空白が生まれるためだ」と伝えた。

 この暗い見方は早計だ。カダフィ後のリビアは必ずうまくいく。カダフィ後は、過去42年のカダフィ政権よりずっと良くなると信じる正当な理由がある。反体制派が旧体制派とともに計画に従って、既存の治安体制の合法的な部分をカダフィ後も維持すれば権力の空白は避けられなくはない。同様に国際社会は、イラクとアフガニスタンで得た手痛い教訓に基づき、暫定政府を構築し強化するために包括的な支援を提供しなければならない。

 どんな国民もそうだが、リビア人も尊敬できる政府の下で暮らすことを切望している。国民の基本的権利を尊重し、国民に仕えさせるのではなく国民に仕える政府だ。この悲願を現実に変えるチャンスは近く訪れるだろう。その時に備えよう。

(筆者はジョージ・グラント氏、ヘンリー・ジャクソン財団のディレクターで、リビアの騒乱と予想される結果に関する著書、"Towards a Post-Gaddafi Liby"が4月に出版された)