GOODLUCK'S WORLD

<共感>を大切に、一人の男のスタンスをニュース・映画・本・音楽を通して綴っていきたい

「椿三十郎」

2007年12月07日 | Weblog
黒沢明監督の名作時代劇「椿三十郎」を見てきました。シナリオは完成度100%なので製作総指揮の角川春樹氏はあえて手をつけなかったようだ。私のような黒沢映画オタクにとって彼のとった判断は結果としてどうなるか? それが目的というオタク的観賞意欲が高まった作品だ。

 オリジナルは何度も見ており、各シーンのセリフまで随所に覚えている。骨太の三船の役を織田裕二がどう演じるのか?カミソリのような仲代の役を豊悦がどうこなすのか?私的結論をいいましょう。

「名作の完全リメイクはホントに難しい!」

 オリジナル映画公開当時、三船は42歳、仲代は30歳。前年の「用心棒」では仲代はチンピラ役だったが、「椿三十郎」では大スター三船に敵対する共演の役を貰い、必死の憤りが感じられる熱演を見せた。30歳の仲代の名演が三船の骨太でしかもユーモアの含んだ言動が輝いてくる所以だ。これは「ラスト・サムライ」での渡辺謙と真田広之の関係と類似している。翌年仲代は「天国と地獄」で犯人を追う冷静沈着な刑事をまた見事に演じ切っている。

 今年で織田は40歳、豊川は45歳。三船とは2歳しか変わらないが、残念ながら骨太の椿三十郎は演じ切れていない。元々童顔の彼には無理がある。その為に見るに見かねて若者を指導していく三十郎役はとても無理という他ない。渡辺謙なら間違いなくうまく演じただろう。そうすればもっと豊悦も必死に演じたはずだ。彼のニヒルさを期待したのだが、五つも年下の織田を相手に最初からニヤつく場面が多すぎて室戸半兵衛の必死さが伝わってこなかった。よって二人の最後の決闘シーンがオリジナルほど印象的なシーンとして残ってこない。織田のミスキャストという他ない。
  
「椿三十郎」を初めてみる人にとって面白い映画となりうるか? オリジナル映画が染みついている私には判断出来かねるが、昔の名作をリメイクというのは如何にもハリウッド的で安易で安全としか私には思えない。映画製作を目指している若者にもっとチャンスを広げて欲しいと角川氏に期待したい。