石原都知事尖閣土地購入問題、「日本固有の領土」であるなら、日本政府は固有の領土にふさわしい扱いをせよ

2012-04-20 08:36:43 | Weblog



 4月16日午後(日本時間4月17日未明)、ワシントン市内にある保守系のシンクタンク「ヘリテージ財団」で講演、東京都が尖閣諸島のうち、魚釣島、北小島、南小島の3島を購入するため地権者(埼玉県の民間人)と交渉、基本合意に達したことを明らかにした。(日本の論点PLUS/産経新聞4月18日付)

 4月17日(日本時間18日)、日本記者団と記者会見。


 《石原知事「前から自民党もダメだった」尖閣対応》YOMIURI ONLINE/2012年4月19日10時13分)

 17日(日本時間18日)の石原・東京都知事と報道陣との一問一答は次の通り。

 ――買い上げに中国は反発しているが。

 石原都知事「何で日本の政府や日本人が反発しないのか」

 ――官房長官は国が購入してもいいと。

 石原都知事「さっさとやれば良かったじゃないか。でも、(島の)持ち主が、国が信用できないから石原さん、東京都ということだったのだが」

 ――尖閣問題では民主政権の対応のまずさがあるか。

 石原都知事「全然違う。もっと前から、自民党もダメだった」

 ――大阪市の橋下市長は事前に知っていたようだが。

 石原都知事「口が堅いから黙っててくれたのだろう」

 ――尖閣諸島の所有者が都になった場合、中国艦船が来た場合の対応は。

 「そりゃあ国家にやってもらうんですな」

 ――都民の利益は。

 石原都知事「東京のためでなし、日本のため全体のためというか、沖縄のためになるのでは。何をやるかも都民で考えたらいい。都民で考えが足りなかったら、国民で考えたらいいのでは」

 ――都議会には。

 石原都知事「専決事項で私が決めたことだが、説明はしますよ」

 ――首相に尖閣の件は。

 石原都知事「聞かれれば答えるけど、都が決めたこと。中国は日本の領有を崩すために思い切った行動をするというのは、半分くらい『宣戦布告』みたいな話。政府はもっとしっかりしてもらわないといかん。朝日新聞だってそう思うでしょう。日本人だもの、みな」

 ――米国で発表したのは中国にアピールするためか。

 石原都知事「それは考えすぎではないか。私は私の判断で、(発表する)場所を選んだということですな」

 ――日本では騒ぎになっているが。

 石原都知事「騒ぎになるのがおかしいんだよ」

 中国の反発に対して、石原都知事は「何で日本の政府や日本人が反発しないのか」と批判している。

 中国の反発を記事から拾ってみる。

 《“尖閣諸島 必要なら国が購入も”》NHK NEWS WEB/2012年4月17日 18時22分)

 中国共産党の機関紙人民日報系ネットサイト「環球網」「中国政府は、これまで何度も中国固有の領土であり、争う余地がないと表明してきた。日本側がどのような措置をとっても非合法かつ無効だ。

 中国側は必要な措置をとる」

 インターネット1「中国の領土を買うことは絶対にできない

 インターネット2「急いで航空母艦を造ったほうがいい」

 インターネット1「何もしなければ中国は国際社会の笑い者になる」

 《“尖閣購入” 中国政府「無効だ」》NHK NEWS WEB/2012年4月17日 19時55分) 

 劉為民中国外務省報道官(4月17日夕方)「中国の固有の領土で争いの余地がない中国の主権だ。日本側のいかなる一方的な措置も違法で無効だ。中国の領土だという事実を変えることはできない」

 《中国“日中関係損なう”改めて反発》NHK NEWS WEB/2012年4月18日 20時35分)

 中国外務省談話(4月17日夜)「日本側のいかなる一方的な措置も、違法で無効だ。中国の領土だという事実を変えることはできない」

 劉為民中国外務省報道官(4月18日定例会見)「(尖閣諸島に対する中国の主権を重ねて主張したうえで)この問題を巡る日本側の一つ一つの動きを注意深く見ている。政治家がこのような発言をすれば、日中関係の大局を損なうだけでなく、日本の国際的なイメージも損なうことになる」

 強圧的・支配的な物言いをしている。いわば尖閣諸島領有権問題で中国を絶対的上に置き、日本を下に置いた、一種の恫喝的な態度を演じている。

 このような中国の態度に対する日本政府の対応を見てみる。

 《【都の尖閣購入計画】玄葉外相、石原都知事批判に反論「何もやっていないということは全くない」》MSN産経/2012.4.17 11:15)

 4月17日の記者会見。

 玄葉外相「(石原氏が)何をどう語ったのか詳細を把握していない。尖閣諸島はわが国固有の領土であり、歴史的にも国際法上も疑いのない事実だ。現にわが国は有効に支配している。

 (石原都知事が尖閣諸島問題をめぐる外務省の対応を批判したことに)何もやっていないということは全くない」

 「尖閣諸島はわが国固有の領土」云々が例え中国の尖閣領有権主張に答える発言であったとしても、中国に直接向けて発したメーッセージではなく、日本政府の尖閣に関わる立場、公式見解を記者団に向けて発言したに過ぎない。

 《衆参予算委員会集中審議の要旨》MSN産経/2012.4.18 22:00)

 4月18日の衆参予算委員会集中審議。

 野田首相「尖閣諸島が国際法上も歴史的にみても、わが国固有の領土であることは明々白々だ。石原慎太郎都知事の真意や都で考えていることは、これからよく情報を集めて冷静に判断したい。

 所有者とは私どももこれまでいろいろとコミュニケーションをとってきた。国との賃貸契約は来年3月末までで、所有者の真意についても改めてよく確認したい。その中であらゆる検討をしたい」

 野田首相の「尖閣諸島はわが国固有の領土」云々にしても、日本政府の尖閣に関わる立場、公式見解を述べたものであろう。決して中国側の尖閣領有権主張に対する反論としての日本の領有権主張のメッセージを中国側に直接向けて発した発言ではない。

 あくまでも石原都知事の尖閣土地購入方針に関わる、その範囲内の反応で終わっている。

 《尖閣、中国に冷静対応促す=玄葉外相》時事ドットコム/2012/04/18-19:33)

 4月18日記者会見。

 玄葉外相(中国側の反発について)「安定的な(両国関係の)発展に影響を与えることのないようにしなければいけない。お互いに大局的、冷静に対応していくということだ。

 (野田首相が尖閣諸島国有化検討の考えを示したことについて)平穏かつ安定的に維持管理することについて、さまざまな検討を行うのは当然のことだ」

 現状維持の両国関係、現状維持の尖閣維持管理を願っているだけで、中国側の領有権主張に対する日本側の、我が方にこそ正当性あるとする領有権主張にまで至っていない。

 この現状維持意識からして中国を刺激したくないという気持が働いているのは明らかだが、その平穏無事を願う姿勢が逆に野田首相に対しても玄葉外相に対しても、中国側の領有権主張に対して沈黙を守る態度を自ずと強いているはずだ。

 「尖閣諸島が国際法上も歴史的にみても、わが国固有の領土であることは明々白々」だから、反論する必要はないと自分たちの沈黙を正当化するかも知れないが、「わが国固有の領土である」あるならなおさらのこと、中国の反発、中国の領有権主張に対する日本側の領有権正当性のメッセージを直接中国に向けて発すべきだろう。

 発しなければ、中国の領有権主張は永遠に続くことになる。

 発することも、尖閣諸島を「わが国固有の領土」としていることにふさわしい扱いの一環ともなるはずである。

 そういう毅然とした態度を取らずに平穏無事を願うだけの事勿れな態度に終始していたなら、尖閣周辺の海域に埋蔵しているとされる折角の海底資源を宝の持ち腐れとする“現状維持”が永遠に続くことになる。

 資源小国から脱する可能性を含んだ折角のチャンスを海底資源と共に眠らせた状態に置くことになる。

 消費税増税よりも海底資源を開発して国民生活に寄与することが先決であろう。「尖閣諸島に領土問題は存在しない」の問題回避策を断ち切って、中国のどのような反発にも妨害にも干渉にも立ち向かい、自国領土にふさわしい扱いとしての、あるいは行動としての開発政策を取ることによって停滞状態にある日本経済回復の刺激策ともなり得るはずだ。

 東日本大震災被災地の復興にも役立つ資源開発となるだろう。

 土地の名義が個人であるか、都であるか、国であるかなど、そのことだけで終わって、日本政府の対中態度が何ら変わらなければ、「固有の領土」にふさわしい扱いにまで進むことは期待不可能となり、名目だけの領土としての実質性しか備えないことになる。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

民主党の数(=議席)と共に喪失した政策の優越性は選挙のやり直しで回復する以外に道はない

2012-04-19 09:56:29 | Weblog

 4月17日(2012年)の衆院厚生労働委員会。岡田副総理が与野党協議次第では民主党が掲げている最低保障年金制度や年金一元化政策を撤回する用意があると答弁。《社保改革法案、総崩れ》MSN産経/2012.4.18 00:14)

 記事には実際には、〈平成21年衆院選マニフェスト(政権公約)に掲げた来年の関連法案の国会提出を見送る考えを示した。〉と書いてあるが、自民党は元々民主党の最低保障年金制度には真っ向から反対して、消費税率が同じ10%でも、社会保障政策が大きく異なるという立場を採り、その撤回を迫っている関係からすると、新年金制度の柱としている最低保障年金制度法案の国会提出見送りは撤回そのものを意味するはずだ。

 〈後期高齢者医療制度見直し法案に関しても、政府・民主党は今国会への提出を5月中旬以降に先送りする方針だ。〉と記事は紹介している。

 〈消費税増税関連法案の迅速な審議入りを求めて野党に譲歩姿勢を示した結果、民主党の社会保障改革の目玉法案は「総崩れ」の様相を呈している。〉・・・・・

 消費税増税自体がマニフェスト違反だが、消費税増税法案国会成立と引換えに取引する最低保障年金制度撤回も違反の上に違反を重ねるマニフェスト違反であるはずだ。

 公明党の坂口力元厚労相の質問に対して次のように答弁している。

 岡田克也副総理「年金制度について今から各党間で話し合い、大きな方向性で合意できれば、来年の法案提出に必ずしも固執する必要はない。

 新制度であれ既存制度の手直しであれ、話し合いで合意に至るのがより早い道だ」

 記事最後の解説。〈ただ、新年金制度関連法案の来年提出と後期高齢者医療制度廃止はマニフェストに掲げられ、今年2月に閣議決定された一体改革大綱にも明記されたもの。法案提出の先送りは民主党内の反発も予想される。〉・・・・・

 だが、この撤回に関して野田首相は拒否の姿勢を示していた。《新年金制度の撤回拒否 野田首相「一つのゴール」》MSN産経/2012.3.6 16:33)

 3月6日午後の衆院予算委員会。最低保障年金創設を柱とする民主党の新年金制度について――

 野田首相「党内議論の積み重ねの末に描いた一つのゴールだ。基本的に堅持する。

 (自公両党が現行制度の存続を主張していることについて)ゴールを見ながら整合的に現行制度を改善するのが社会保障と税の一体改革だ。議論がかみ合う余地はある」

 自公の現行制度(の改善)存続にしても、民主党の新年金制度にしても現行制度の改善に目的を置いているのが社会保障と税の一体改革なのだから、「議論がかみ合う余地はある」と言っているが、自公の現行制度改善・存続と民主党の新年金制度とは似て非なるもので距離があり過ぎ、答弁に無理がある。

 岡田副総理の撤回意思には伏線がある。《民主年金案、修正の用意=民主・前原氏》時事ドットコム/2012/03/25-19:10)

 3月6日の衆院予算委員会で野田首相が民主党案の基本的堅持を言ってから20日あまりして、前原民主党政調会長が新年金制度の修正意思を表明した。3月25日の新潟市内の党の会合。

 前原政調会長「我々の考え方だけを絶対だと言い続けては、前に進まない。国民のために大所高所からしっかり議論することも大切ではないか。

 時の政権が固執しすぎて、国民生活が混乱することは一番避けなければならない。どのような(政権の)枠組みになっても、基本的な部分の信頼関係と方向性を共有しないといけない」

 そして今回の岡田副総理の撤回意思ということなのだろうが、だとしても、前原の言っていることはメチャクチャである。

 「我々の考え方だけを絶対だ」としてマニフェストに掲げた新年金制度政策であったはずだ。マニフェストとは、何度もブログで書いているように、他党の政策に優る自党の優越性ある政策を創造、列挙した上でその優越性を国民の選択に委ねるのがマニフェスト選挙であるはずである。

 いい加減な気持で政策を創造してマニフェストに並べ立て、選挙時、いい加減な気持でその優越性の選択を国民に委ねたわけではあるまい。

 いい加減な気持で優越性の選択を国民に委ねたのではない、マニフェストに目玉として掲げた政策の数々であり、民主党が国民の選択を受け、政権を獲った以上、その優越性を認められたのであり、そう簡単にはその優越性の看板を降ろして言い訳はない。

 大体が一人で政策をつくるわけではない。党内やシンパの党外の何人もの政策通が雁首を揃えて仕上げるのであり、仕上げた上で自らの政策の優越性を訴えたのである。マニフェストに掲げた政策を以って国民の生活向上、幸福を約束したのである。

 降ろした場合、他党に優る優越性あるとした自らの言葉を裏切ることになる。いや、自らが創造した政策に対する裏切りであり、同時に国民に対する裏切りともなる。国民にウソをついたことになる。

 単に撤回だ、与党案の丸呑みだ、修正だでは済ます訳にはいかない一旦は掲げた優越性の看板であるはずだ。 

 ただ悲しいことに優越性は常に数(=議席)と共に存在し、数(=議席)の保証を必要とする。数(=議席)を失ったとき、実質的に政策としての優越性を保持していたとしても、数(=議席)の喪失と同時に政策の優越性をも喪失する。

 なぜなら、優越性が国民の選択を受けたということは、それらの優越性ありとされた政策が法案となって国会を通過し、成立するための数(=議席数)を国民から与えられたということでもあるからだ。

 となると、2010年参院選で数(=議席)を失った時点でマニフェストに掲げた数々の政策の優越性そのものを失ったことを意味することになる。

 時の首相菅前仮免許は参院選民主党大敗を与野党熟議の機会を与える「天の配剤」だと抜かして、狡猾にも自己責任回避を謀ったが、数を失うことが何を意味するのか、どれ程のことか合理的判断能力を元々欠いていたから、気づかなかった。

 数(=議席)を失うことで、政策の優越性そのものを失い、政策の変質を迫られることになった。あるいは撤回を余儀なくされ、野党案の丸呑みで替えるといった事態が生じることになった。

 現在強いられている苦境を乗り切って自らの政策の優越性を守り切るためには再度自らの政策の優越性をマニフェストに掲げて優越性を絶対的に保証する3分の2以上の数(=議席)の獲得を目指す選挙のやり直し以外に道はあるまい。

 その可能性は限りなくゼロに近いかもしれないが、例え可能税ゼロに終わったとしても、そのように目指すことが、政治家として筋を通すことではないだろうか。

 一旦は掲げた政策の優越性である。数(=議席)保証を再度獲ち取って守らなければならないはずだ。

 野田首相が不退転を言うなら、そうすべきだろう。何も進まない政治・何も決めることができない政治に決着をつけるためにも。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

石原都知事の馬鹿げた尖閣諸島土地購入アイデア、必要なのは政府の覚悟

2012-04-18 10:06:36 | Weblog

 石原慎太郎東京都知事がアメリカを訪問、現地時間4月16日(2012年)午後、ワシントン市内で講演し、東京都が尖閣諸島を購入する構想を明らかにした。地権者サイドとも交渉し、合意を得たとしているという。

 尖閣諸島4島のうち、1島は国有地、残る民有地の3島を購入対象としているらしいが、この3島は日本政府が2002年から借り上げ、中国と摩擦を起こしたくない事勿れ主義から上陸を禁じている。

 尤も土地購入は本人の意向だけで実現するわけではない。一定規模以上の土地を購入する場合、都議会の議決が必要ということで、猪瀬副知事は寄付を募って、予算歳出を減らす考えをテレビで示していた。

 石原都知事がアメリカでどう発言したのか、次の記事を参考引用する。

《都の尖閣購入計画】「東京が尖閣を守る」石原知事講演発言要旨》(MSN産経/2012.4.17 22:39)

 石原慎太郎東京都知事の講演の要旨を次の通り
     ◇

 中国は尖閣諸島を日本が実効支配しているのに、ぶっ壊すためにあそこでもっと過激な運動に走り出した。日本の固有の領土ってのは、沖縄を返還するときに、あそこの島は全部帰ってきたんだ。その尖閣に(中国が)「俺たちのもん」だって。とんでもない話だ。東京都はあの尖閣諸島、買います。買うことにしました。私が留守の間に実務者が決めてるでしょう。東京が尖閣諸島を守ります。

 ほんとは国が買い上げたらいいと思う。国が買い上げると支那が怒るからね。なんか外務省がビクビクして。あそこは立派な漁場になりますしね。沖ノ鳥島だって中国や台湾の人が乱獲して、守らせるために国や地方が頑張っている。

 日本人が日本の国土を守るために島を取得するのは、何か文句ありますか。ないでしょう。やることを着実にやらないと政治は信頼を失う。まさか、東京が尖閣諸島を買うってことでアメリカが反対するってことはないでしょう。

 第一印象は馬鹿げたアイデアに過ぎないのではないか、であった。買い上げたことで、中国が領有権主張から手を引くだろうか。

 以下、「ウイキペディ」から引用。

 尖閣諸島を日本領に編入したのは日清戦争中の1895年1月14日。

 1968年になって10月12日から11月29日まで、日本、中華民国、大韓民国の海洋専門家が国連アジア極東経済委員会(ECAFE)の協力の下に海底調査実施。

 調査結果は「東シナ海大陸棚に於ける石油資源埋蔵可能性」の確認。

 〈現在では尖閣諸島周辺にはイラクの原油の推定埋蔵量の1,125億バレルに匹敵する、1,000億バレル以上の埋蔵量があることがほぼ確実とされている。〉との記述がある。

 1971年、中国も台湾も指をくわえて眺めているわけにはいかないと欲を出したのか、両国揃って尖閣諸島の領有権を主張し始めた。

 海底調査以来、43年が経過している。尖閣諸島を巡る領有権問題は外交関係の根底に於いて常に潜在し続けたが、最近では2010年9月7日の尖閣沖中国漁船衝突事件を発端に日中間に荒々しく顕在化することになった。

 日本の菅政府の中国に対する対応は事勿れ主義と従属主義に終始したものだった。このことは周知の事実となっていることだが、公務執行妨害で逮捕した船長を国内法に則って粛々と処分すると言いながら、中国の報復的な圧力に屈して処分保留のまま釈放した処置に事勿れ主義と従属主義が如実なまでに現れている。

 「尖閣諸島は歴史的にも国際法上も日本固有の領土だ」と口では言っても、口で言うとおりの実効性ある証明を中国に対して行わずに逆に「尖閣諸島には領土問題は存在しない」を口実に中国の領有権主張をも抹消可能としようとしたのだから、「領土問題は存在せず」を水戸黄門の印籠にして逃げまわっていたのである。

 現実的にも抹消可能とすることはできなかった「尖閣諸島には領土問題は存在しない」の口実であり続けている。

 大体が「国際法上も歴史的にも日本固有の領土」だと主張しても、その主張が毛程も通じず、中国の領土だと言う相手に東京都が尖閣諸島の私有地を購入して、公有化を以って日本の領土だと証明しようとしたとしても、とてものこと通じる相手ではないことは目に見えている。

 早速中国が反発した。《“尖閣購入” 中国政府「無効だ」》NHK NEWS WEB/2012年4月17日 19時55分)

 劉為民中国外務省報道官談話「中国の固有の領土で争いの余地がない中国の主権だ。

 日本側のいかなる一方的な措置も無効だ。中国の領土だという事実を変えることはできない」

 そう、中国側は尖閣諸島は中国領土だということを自らの「事実」としている。その事実は東京都が土地を購入することを以てしても変えることはできない。当然の成り行きであろう。

 尖閣諸島は中国領土だという中国側の「事実」に対抗するにはその事実以上に尖閣諸島は日本固有の領土であることを「事実」とする方法以外にないはずだ。

 島の地権者の一人は売った土地を自然公園などとして活用することを希望していると「MSN産経」が伝えているが、その程度の「事実」では中国の「事実」に対抗する日本側の「事実」とはなり得まい。

 同じ実効支配強化に努めるにしても、日本は資源小国である。1968年の石油資源埋蔵可能性確認の海底調査以来43年が経過、その間イラク原油の推定埋蔵量の1,125億バレルに匹敵する1,000億バレル以上の埋蔵量がほぼ確実視されていながら、開発して資源小国から脱出、国民の利益とする方策を無策にも何ら採らずにきた。

 中国は日本が排他的経済水域を主張する日中中間線からはわずか4キロメートル中国側に内側の地点で白樺ガス田を開発、2006年には生産を開始している(Wikipedia)ということだが、海底を通じて日本の排他的経済水域を超えて日本の領海内に侵入しているという噂まである。

 法的にも歴史的にも日本固有の領土である尖閣諸島周辺で資源開発・商業生産開始を行なってどこに不都合があるだろうか。

 また中国の「事実」に対抗するこのような資源開発・商業生産開始に優る実効支配の「事実」、尖閣諸島は日本固有の領土であるとする「事実」はないはずだ。

 勿論、中国側は反発して、中国漁船船長逮捕時に優る経済面での、さらに外交面での様々な圧力や妨害に出るのは目に見えている。だが、ある一定限度を超えると、中国の経済や政治にもダメージを与えることになる経済的にも政治的にも相互関係に日中はある。

 中国人船長逮捕時には中国人の日本観光客が姿を消し、日本の観光地が打撃を受けたが、中国向けの日本人観光客も激減して中国観光業に打撃を与えた。

 日中双方とも、ダメージが長期に亘ることは耐えられない。どちらが先に折れるか、我慢のしどころであろう。

 日本に必要なのは尖閣諸島は中国領土だとする中国側の「事実」に対抗する、尖閣諸島は日本固有の領土であるとする「事実」を明確な形で具体化して実効支配の既成事実とする覚悟であり、そのことに対する中国の反発に毅然として耐える覚悟であろう。

 中国人船長逮捕時には経済的・政治的圧力を加えてきた中国に対して菅政権はその覚悟を示すことができなかった。“柳腰外交”と称して事勿れ主義と従属主義に走った。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

すべての原発が停まることはすべての電気が停まることではない/枝野と仙谷の発言を検証

2012-04-17 11:19:38 | Weblog

 先ず仙谷恫喝政治家の発言。《【原発再稼働】仙谷氏「原発止めれば集団自殺」》

 4月16日(2012年)、名古屋市内講演。

 仙谷由人民主党政調会長代行「(原発を)止めた場合、経済と生活がどうなるかを考えておかなければ、日本がある意味で集団自殺をするようなことになってしまうのではないか。

 専門家への信頼が回復するまで稼働を止める、あるいは止めた原発を一切動かさないことをせよ、という話ならば、その結論に向けてどうするのか。

 日本は電力なしに生活できなくなっているのは明らかだ。一瞬でも切れると電信電話回線が切れる。電気によってデータ管理がされる高度化した社会で、安定した質の良い電力が供給されることが当たり前の社会を作ってしまった現実の中でどう考えるのか」

 関西電力管内の原発に依存しない場合の予想電力不足を次の記事が伝えている。《関電 猛暑で18%余不足に》NHK NEWS WEB/2012年4月13日 18時29分)

●一昨年並みの猛暑の場合――電力不足最大で18.4%(中電からの融通あり)
●電力需要が去年を除く過去5年間の平均的な状況の場合――電力不足16%。
●家庭での節電や企業の土日操業が行われて需要が去年の夏と同程度まで下がった場合――電力不
 足5.5%。

 さらに現在稼働中の北電泊原発3号機が5月5日に稼働停止して定期検査に入る予定であり、泊1号機・2号機の再稼働の目処不明の中で北電の全原発が停止した場合の電力需給を見てみる。

 《全原発停止下における今夏の道内電力需給予測》北海道議会民主党道民連合議員会/2012 年3 月23 日)によると、北海道知事は〈仮にすべての原発が停止した場合、今夏には32万KWの電力不足も考えられるとの見解を示している。〉ということだが、北海道議会民主党道民連合議員会はその事実を否定している。結論だけを引用すると、次のようになる。

 2010 年並みの猛暑を前提とした場合

 政府公表資料によれば、猛暑を予想した場合、最大電力需要は、21 万KW 増えることとなる。この場合でも予備力は、「5万KW + X 万KW」となり、電力不足は生じない。

 課題

 二つの前提が必要となる。

 一つは、3%の道民節電の実現である。
 二つ目は、北電による火力水力発電設備の補修計画公表である。(以上)
 
 「X 万KW」とは、火力水力発電設備の補修調整による電力供給増加量を指し、「検査日程が非公開のため、不明」との記述となっているが、いずれにしても設備の補修調整によって5万KWを上回る電力供給余力が見込まれるということなのだろう。

 〈環境エネルギー政策研究所(ISEP)は、持続可能なエネルギー政策の実現を目的とする、政府や産業界から独立した第三者機関です。地球温暖化対策やエネルギー問題に取り組む環境活動家や専門家によって設立されました。

 自然エネルギーや省エネルギーの推進のための国政への政策提言、地方自治体へのアドバイス、そして国際会議やシンポジウムの主催など、幅広い分野で活動を行っています。また、欧米、アジアの各国とのネットワーキングを活用した、海外情報の紹介、人的交流など、日本の窓口としての役割も果たしています。

 市民ファンドを活用した市民風車、太陽光発電事業なども発案し、関係事業体であるエナジーグリーン株式会社等によって実現しています。〉とプロフィールを語っている「環境エネルギー政策研究所」もPDF記事で「2012年の電力は足りる」と言っている。

 《原発を再稼動しなくても今冬と来夏の電力は足りる》環境エネルギー政策研究所/2011年10月25日)
 
 〈2011年9月末現在、国内54基の原子炉4,896万kWのうち、様々な理由で約8割にあたる約3,350万kWが停止している。3.11以降、定期点検に入った全ての原子力発電所について安全性の確認が困難なことから再稼動が出来ない状況が続いており、このままいけば図1の様にほとんど全ての原子力発電所が来年の春には停止することになる。北海道電力の泊3号は、定期点検後の調整運転が長期間に渡った末、8月に商業運転に移行したが、これは本来、安全性の確認が困難なことから停止をすべきであった。〉と、泊3号機は2011年8月時点の停止でも問題はなかったとしている。

 このことは、北海道議会民主党道民連合議員会の北電管内の全原発が停止しても電力不足は生じないとする結論の傍証足り得る。

 以上、関西電力管内での、家庭での節電や企業の土日操業が行われて需要が去年の夏と同程度まで下がった場合の電力不足5.5%の予測と、北電管内前原発停止の場合の「5万KW + X 万KW」と電力供給余力を併せて取り上げると、電力不足や計画停電が経済を縮小させ、そのことによる生活への影響が生じるとしても、仙谷が言っているように「日本がある意味で集団自殺をするようなことになってしまうのではないか」は大袈裟に過ぎ、何が何でも再稼働に持って行きたいためにする恫喝と言ってもいい表現としか言いようがない。

 また、「専門家への信頼が回復するまで稼働を止める、あるいは止めた原発を一切動かさないことをせよ、という話ならば、その結論に向けてどうするのか」と言っているが、その「結論」を導き出すのは政府の仕事であろう。
 
 《経産相 “原発依存の脱却を”》”(NHK NEWS WEB/2012年4月13日 15時2分)

 4月13日の衆議院経済産業委員会。

 枝野詭弁家「原発依存からの脱却を最大限進めていくことは政府としての明確な方針だ。私自身も、できるだけ早く原発依存から脱却して原発への依存をゼロにしたい」

 原発依存脱却が明確な政府方針であるなら、家庭節電と企業土日操業を組み合わせた、日本経済や国民生活への最小限の悪影響抑制可能な原発依存ゼロに向けたしっかりとした工程表を作成して公表、その工程表に則って安全性確認の上、原発の稼働を原発依存ゼロに向けて行なっていくべきだが、工程表も示さず、稼働しなければ、「集団自殺」だといったような恫喝を行う。最低の政治家ではないか。

 枝野経産相も親分仙谷に劣らない程度の低い政治家像をキャラクターとしている。《経産相 原発運転恐らく一瞬ゼロに》NHK NEWS WEB/2012年4月15日 18時12分)

 4月15日の徳島市での講演。

 枝野詭弁家「経済産業省で原発がないと何が起こるのか検証している。検証すれば、少なくともこの夏原発がなければ、相当いろいろなところに無理がくることはご理解いただける。

 (泊原発5月5日定期検査稼働停止によって)全国で運転する原発が、恐らく一瞬、来月6日からゼロになる」

 前段の発言を記事は関電大飯原発3・4号機再稼働ゴーサインへの政府判断に理解を求めたものだとしているが、同時に安全性を基準とした再稼働判断ではなく、あくまでも電力供給を基準とした判断だったと暴露してもいる。

 であるなら、何度も開催した関係閣僚会議にしても、そこで行われた安全性確認の審査にしても、再稼働を正当化するための形式に過ぎなかったことになる。

 いわば再稼働ありきで安全性を審査していた。あるいは安全性を再稼働に合わせて論じていた。

 「(泊原発5月5日定期検査稼働停止によって)全国で運転する原発が、恐らく一瞬、来月6日からゼロになる」という発言にしても、安全性を基準とするのではなく、電力供給を基準とした再稼働への理解要請発言と言える。

 しかも大飯原発早期再稼働が見込めない困難な状況にあることを示唆して、原発稼働ゼロを電力供給ゼロとまでいかなくても、相当量の電力供給不足が生じると錯覚させようとする一種の恫喝を用いて再稼働を獲得しようとしている。

 「大変なことになるんですよ」とばかりに思わせて、地元の理解、国民の理解に替えようとしたというわけである。

 安全性が基準ではなく、電力供給を基準とした再稼働判断なら、全原発停止によって日本全体でどのくらい電力不足が生じるのか、生じないのか、具体的な数値を用いて再稼働への理解を求めるのが当たり前の姿だが、そうした場合、露骨なまでに再稼働ありきの姿勢、安全性よりも電力供給を基準とした判断であることが露見してしまうために、原発ゼロを以てして婉曲的に電力供給不足を訴え、再稼働への理解としようとしたのだろう。

 野田首相の関係閣僚会議開催時の恒例化した冒頭発言。

 野田首相「安全性についての確認を行うとともに、需給計画やコストの問題を含め、(再稼働の)必要性の検討を行いたい」

 野田首相の「安全性」に触れた言葉が口先だけの形式なのは仙谷や枝野の発言から安全性への意識が影を潜めていることによって明白である。

 原発の安全性よりも電力不足解消を基準にして原発再稼働を目指しているからこそ、電力不足を恫喝の種に用いて、大飯原発再稼働への国民の理解を求めることができる。

コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

民主党は北朝鮮ミサイル発射情報処理疑問解明に政治不信払拭の一助のためにも潔くあるべき

2012-04-16 11:00:35 | Weblog

 ――防衛省の暗記教育の成果としてある北朝鮮ミサイル発射情報管理対応――

 昨日のNHK「日曜討論」(2012年4月15日)は、第1部「民主・自民に問う どう臨む後半国会」、第2部「“ミサイル発射” 北朝鮮とどう向き合うか」の構成で放送。第1部は岸田自民党国会対策委員長と城島民主党国会対策委員長の二人が登場、消費税法案の国会審議について、その他を取り上げて議論を展開したが、司会の島田敏男NHK解説委員が本題とは別に冒頭、北朝鮮ミサイル発射時の政府の情報対応に対する感想を両者に尋ねた。

 二人は4月13日に国対委員長会談を既に開いて、この件に関して議論していて、このことは4月14日当ブログ記事――《野田内閣は大飯原発再稼働と言い、北朝鮮ミサイル発射情報伝達と言い、薄汚いゴマカシで政治を動かしている - 『ニッポン情報解読』by手代木恕之》で既に取り上げているが、WEB記事を通した両者の発言を利用したもので、今回直接の発言を聞くことができたから、その記録の目的も兼ねて改めて記事にすることにした。

 島田NHK解説委員「民主党の城島さん、後半国会の展望の前にですね、先ず、このー、北朝鮮の弾道ミサイル実験、これについてなんですけれども、今回の、おー、北朝鮮の行動、そして政府の対応、どうご覧になってますか」

 城島国対委員長「えー、今回のあの、日本だけじゃなくてですね、えー、それから、各国、ま、中国もそうと思うのですけれども、えー、何としてもミサイル発射、あー、実験をですね、中止するようにということを呼びかけてたと思うんですけども、まあ、その中で強行ということはですね、強い憤りを覚えますし、まあ、国際社会全体を、ある面では敵に回した行動ではないかと、思います。

 ま、従って、今後もですね、このミサイルだけじゃなくて、核、そして拉致問題を解決しなくてはいけない。その解決に向けては、また、あの、各国、世界との協調の中で、進めてなくてはいかんなというふうに強く、思っております」

 月並みな情報解釈。中止を呼びかけたが強行したということは中止の呼びかけが効果がなかったということ。その原因と、北朝鮮に影響力を有する中国を如何に動かすか等、効果ある中止の呼びかけの模索に視点を置くべきだが、発射に至る経緯を表面的に解釈したのみで終わっている。

 島田NHK解説委員「自民党岸田さん、自民党内では今回国民への情報発信に関して政府の対応について相当厳しい声、出ているようですね」 

 岸田国対委員長「ハイ。あのー、今回の事案については、ま、国際的にどう対応するか。ま、こうした大きな課題を突きつけらることになりましたが、併せて、国内的に、我が国、イー、安全保障上の危機管理、として十分に対応できたのかというと、あー、大きな、問題を、我々の前に示したと、いうふうに思っております。

 えー、最初のこのSEW(米国早期警戒衛星情報)の、この情報提供から、政府として発表に至るまでに40分以上の時間を要した。あるいは日米間、えー、の連携として、十分だったか。

 あるいは防衛省と官邸の間、連携が十分だったか。さらには、えー、J-ALERT(防災や国民保護に関する情報を人工衛星を通じて瞬時に自治体に伝達するシステム)を始めとする、国民に対する情報提供として十分だったか、様々な課題を突きつけた、と感じております。

 えー、しっかりと、この、国会に於いても、この事態を、えー、質していかなければいけないと思っております」

 島田NHK解説委員「それはー、やはり衆議院予算委員会でも集中審議といったものを求めていくということになるのですか」

 岸田国対委員長「ハイ。もう、既に城島委員長には、あー、予算委員会の集中審議、え、開催をお願いしております。予算委員会、さらには安全保障委員会、え、こうした委員会の場で、しっかりと事実を確認し、政府の対応が十分であったかどうか、えー、今後の教訓とするためにも、しっかりと、この、審議をしなければいけない、と思っております」

 島田NHK解説委員「城島さん。この、自民党側から出ている、この当面、集中審議ですね、北朝鮮のミサイル発射問題で、行おうとしている、この要請、これはどう応えるのですか」

 城島国対委員長「えー、先週、岸田委員長から正式に、申し入れいただきました。まあ、その時にもお答えいたしましたけども、現段階ではですね、えー、予算委員会の、予算委員会に於ける集中審議ってのは、必要ないんじゃないかと思っております。

 但し、外交ですとか、安保委員会でのですね、質疑ってのは、これはやっぱりしていかなきゃ、いうふうに思っております」

 北朝鮮ミサイル発射に関わる情報把握と情報伝達の政府情報対応は外交問題ではない。あくまでも国土保全と国民の生命・財産保全の問題であるから、安保委員会の質疑は分かるが、頻繁にテレビ放送が入る予算委員会は困るということではないだろうか。

 島田NHK解説委員「自民党の岸田さんに一つ伺っておきたいんですけどね、ま、今回の、あのー、政府の、オ、情報収集、そして発信、問題ありということになりますと、これは、やはり基本はですね、第一報はアメリカの、先程SEWとおっしゃった、早期警戒衛星、宇宙空間からの、あー、熱の発生を感知する、これが、日本にはないわけですね。

 でー、アメリカの情報を受け取ってと、そこがスタートになるわけですが、やはり、日本もそういった衛星情報システムをアメリカ軍並みに持つべきだと、こういう議論なんでしょうか」

 岸田国対委員長「あのー、こうした日本の、体制自体に、イー、何か不十分なものがないかどうかも含めてですね、これはしっかりと点検しなければいけない。

 まあ、こうした課題を我々に突きつけたものだと思います。えー、そういった意味でも、国会に於いてしっかりと議論しなければいけない。これが私たちの問題意識です」

 島田NHK解説委員「城島さん。一方で民主党の中にもですね、必ずしも今回の政府のこの対応を、おー、十分ではなかったという声も、あるようですけども、城島さん自身、どう感じております」

 城島国対委員長「えー、十分でなかったという意見というよりは、最初のですね、政府側の発表がですね、あまりにも、まあ、私流に言うと、えー、悪い意味、官僚的なですね、味も素っ気もない、『政府としては確認していない』っていう、ような、その部分、文言、って言いますかね、これは非常に、あのー、如何だったかなあっていうふうに思います。

 島田NHK解説委員「なる程。Em-Net(「エムネット」:緊急事態発生時に国が地方自治体や報道機関等にメールで連絡するシステム)と呼ばれるシステムに通じて流れた――」

 城島国対委員長「流れた、その最初の、オー、報道ですね。

 ただこれがですね、あのー、この間の政府側の対応ってのは、ご承知のように3年前にですね、同様にミサイル実験を北朝鮮がやりました。えー、そのときに、イー、その、誤報をですね、してしまった。

 あの、防衛省が、(誤報をしてしまったと)ということから、この反省をしてですね、きちっとした体制ってことで、何度も何度も協議を重ねてきて、今回の対応に至った。

 それで最初、最終的にはですね、SEW(米国早期警戒衛星情報)の情報、衛星情報と、独自のですね、日本政府っていうか、日本の防衛省、自衛隊の情報とですね、ダブルチェックすると、いうことに拘ったがゆえにですね、こういうことになった部分があると思います。

 だから、そのこと自身には私はダブルチェックはいいと思いますけども、えー、この、報道した、あのー、文言には問題があったというふうに思っております」

 島田NHK解説委員「国民に向けての――」

 城島国対委員長「文言については」

 島田NHK解説委員「その時々の状況の説明の仕方ですね」

 城島国対委員長「(説明の)仕方にあったと思いますが、本質的には問題はなかった思います」

 本題に入っていく。

 果して「説明の仕方」、城島が言っている官僚的な味も素っ気もない文言の情報発信自体が問題だっただろうか。

 《防衛省内 発射情報の評価で混乱》NHK NEWS WEB/2012年4月15日 19時12分)を見ると、防衛省の主体性なき姿のみが浮かんでくる。

 城島が言っている防衛省のダブルチェックとは、3年前の北朝鮮ミサイル発射時の誤情報を教訓にアメリカ側のSEW(米国早期警戒衛星情報)からの情報と自衛隊のレーダーやイージス艦からの情報の二つの情報を用いてその真偽・正確さを判断する二重の確認体制のことを言い、その確認作業を経てから政府や自治体に伝える情報伝達体制を採っていたという。

 4月13日午前7時39分:北朝鮮ミサイル発射。
      午前7時40分:アメリカの早期警戒衛星発射探知。


 直ちに第一報が防衛省地下中央指揮所に情報伝達。だが、ミサイルは発車後2分前後に上空で爆発。

 日本のレーダー網探知可能範囲までの飛来がなかったために防衛省はダブルチェックでの発射確認を取れない状態が生じた。

 日本側のこの発射未確認をアメリカ側の情報は誤情報だと情報解釈するに至った。あるいは情報処理するに至った。

 記事は書いている。発射確認がを取れない〈状況のなかで、中央指揮所の内部では「発射されたのは別の短距離ミサイルではないか」とか、「別の発射実験ではないか」などという臆測が広がったということです。〉・・・・・

 4月13日午前8時過ぎ(第一報から約20分後):「発射情報は誤報の可能性がある」とするメールによる情報が防衛省内の部隊の運用や情報分析に携わる部門に周知されるに至った。

 次の項目(青文字)は上記記事には記載されていない。

 4月13日午前8時3分:首相官邸危機管理センター対策室、「Em-Net」(エムネット)で「わが国としては発射を確認していない」の情報発信。

 第一報から20分以上経過している。

 4月13日午前8時24分:田中防衛大臣「発射されたという情報を得た」と発表。

 記事の締めくくり。〈防衛省内部でのこうした情報の評価を巡る混乱が政府内部の情報伝達や公表時期に影響を与えた可能性もあり、防衛省は当時の状況を詳しく検証しています〉・・・・・

 要するに防衛省内の情報処理部門が臆測で判断した。

 いわば臆測で情報処理した。あるいは臆測で情報解釈した。

 勿論、憶測で情報解釈・情報処理する場合もあるが、ミサイル発射の場合は事実を把握し、把握した事実を事実通りに伝える情報解釈・情報処理に徹底しなければならなかったはずだ。

 では、なぜこのように“臆測”を最新情報兵器とするに至ったかと言うと、日本側からアメリカ側に問い合わせをする姿勢を持たなかったということに尽きるはずだ。

 問い合わせて、日本側の発射未確認情報が正しいのか、アメリカ側の発射確認情報が正しいのかの情報確認作業にまで持っていかなかった。

 一度マニュアルとしたダブルチェック体制に徹頭徹尾追従するマニュアル主義を当然の行動とし、柔軟な発想を置き忘れたままにしていた。

 これも暗記教育の成果であろう。

 日本側はアメリカに対して始めから終わりまで、終始一貫、待ちの姿勢でいた。既に憶測で誤情報だと思い込んでいたから、第一報は誤情報だったとする第二報が入るのをじっと待っていたのかもしれない。

 あるいは日本はアメリカに対して自分たちを下に置く姿勢を慣れ・習性としていたためにアメリカに遠慮が生じて、アメリカ側の情報は誤報ではないかと指摘する勇気も、誤報ではないかと聞く勇気も持たなかったのかもしれない。

 いずれにしてもこの記事からは日本側がアメリカ側に対して主体的に働きかける姿勢を一切窺うことはできない。主体性なきアメリカ頼みの姿しか浮かんでこない。

 城島国体委員長はダブルチェックに拘ったがゆえに政府の情報発信が遅れたが、ダブルチェック自体に間違いはない、「わが国としては発射を確認していない」の発表文言が味も素っ気もない、官僚的だったから、問題だと、この点だけを間違いとする見当違いを犯しているが、バカも休み休み言うべきだろう。

 情報処理は的確性と迅速性の両面を兼ね備えていなければならないことは常識となっているにも関わらず、実際にはダブルチェックによる的確性に拘るあまり、情報処理自体を誤って、的確性ばかりか迅速性さえ失った。

 決して文言が問題ではない。責任逃れのための薄汚い弁解に過ぎない。

 上に上げた当ブログに、〈今回のミサイル発射に対する迅速・的確な情報伝達は万が一の有事に機能させるための訓練という側面も有していた。〉と書いた。

 どのような理由があろうとも、的確性・迅速性共に失っては情報処理の問題を超えて危機管理に満足に対処できないことになる。徹底的に原因追及を行うべきだろう。

 いくら責任逃れのゴマカシを働いても、国民はそのウソに気づく。ウソの罷り通りも政治不信をつくり出す原因の一端となっているはずである。

 いずれの責任問題に関しても疑問が持ち上がることになった以上、政治不信を払拭するためにも、疑問解明にもっと潔くあるべきである。

 疑問解明に潔く応えずに責任逃れのゴマカシや見え透いた釈明に終始すればする程、逆になお一層の政治不信を自ら招き寄せることになるだろう。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

石原知事が言う北朝鮮情報遅れに見る「自民政権時代以来培養の日本の防衛力と情報力貧弱性」は暗記教育成果

2012-04-15 04:17:38 | Weblog

 《【北ミサイル失敗】石原知事「防衛力、情報力の貧弱さ露呈」》MSN産経/2012.4.14 09:05)

 4月13日午後(日本時間14日未明)、石原東京都知事が訪問先の米国務省で、北朝鮮の「人工衛星」と称する長距離弾道ミサイル発射で政府の「発射確認」が手間取り、説明が二転三転したことについての質問を受けて、次のように発言したという。 

 石原都知事「自民党政権時代から培ってきた日本の防衛力の貧弱さ、情報力の貧弱さが明かされたということだ」

 〈石原知事はこの日、カート・キャンベル国務次官補と会談。米軍横田基地の軍民共用化問題や、北朝鮮情勢などについて意見を交わした。〉

 北朝鮮ミサイル発射失敗について。

 石原都知事「あの程度のものという報告でしかなかった」

 しかし、いつまでも「あの程度のもの」でとどまっている保証はない。

 日本政府の対応について。

 石原都知事「隣国の北朝鮮が打ち出したミサイルの情報の確認を、日本が外国に比べて遅れているというのは、今の日本の国家のザマだ」

 日本政府の情報対応能力には失望しているが、自衛隊の実戦能力には期待しているようだ。

 石原都知事「(ミサイルが)もう少し飛んで、日本領空に来たときに撃ち落とせばよかった。それは、日本の防衛力の顕示になった」

 日本政府は情報対応には失態を見せた、ミサイルが日本の上空にまで飛んできたものの、撃ち落としに失敗したでは日本は形無し、踏んだり蹴ったりの赤っ恥を掻くことになる。

 だが、いくら自衛隊の実戦能力が優れていても、防衛力とは兵器の種類や所有量、その近代性、あるいは先端性のみによって決まるわけではなく、部隊を戦闘に対応させながら機動性を持たせて展開させ、有利に戦いを進める能力によって決まる。

 今回のように単にどの方向に発射すると分かっているミサイルを待ち構えていて撃ち落とす、機動性を必要としない実戦能力とは異なる。

 そして部隊の機動性は敵の動き、敵の兵力、敵の戦闘能力等に対する迅速・的確な情報把握と把握した情報から敵の戦術を読み取って、それを撹乱する味方の戦術の臨機応変、且つ創造的な情報処理にかかっている。

 いわば臨機応変性を持たせた情報把握能力と把握した情報を如何に臨機応変・創造的に、且つ迅速・的確に処理するかの、その場・その状況にふさわしい情報処理能力が部隊の機動性を決定することになるはずだ。

 このことは軍の機動性(=防衛能力)のみならず、政治の機動性についても同じことが言えるし、企業経営の機動性についても言えるはずである。

 石原東京都知事は日本政府の北朝鮮ミサイル発射に対する情報把握能力とその情報処理能力を以って、「自民党政権時代から培ってきた日本の防衛力の貧弱さ、情報力の貧弱さが明かされたということだ」と批判した。

 ここで言っている「日本の防衛力」とは自衛隊の防衛力のことではなく、日本政府の対自衛隊指揮・命令能力を言っているはずだ。でなければ、最後の「(ミサイルが)もう少し飛んで、日本領空に来たときに撃ち落とせばよかった。それは、日本の防衛力の顕示になった」という発言と矛盾することになる。

 但し、自衛隊の実戦の際の防衛能力(=軍の機動性)は日本政府の情報把握能力と情報処理能力が諸に影響する対自衛隊指揮・命令能力に対応し、その支配を受けることになる。

 いずれにしても日本政府の情報把握能力と情報処理能力は臨機応変性と創造性を欠いていて、日本の防衛能力に悪影響が生じているということであり、それは自民党政権時代から培ってきた成果だと言うことであろう。

 当然、日本の防衛能力の向上、日本政府の情報把握能力と情報処理能力の向上は臨機応変性と創造性の獲得が鍵となる。

 だが、臨機応変性にしても創造性にしても、創造的に考える力が与え得る能力であって、日本の教育が伝統的に暗記教育であることによって考える力を育まない教育となっている。

 いわば石原都知事のいう「日本の防衛力の貧弱さ、情報力の貧弱さ」は日本の暗記教育の成果でもあるということである。

 また、日本の暗記教育は封建時代以来の伝統としてある教育形態であるから、「日本の防衛力の貧弱さ、情報力の貧弱さ」は「自民党政権時代から培ってきた」能力ではなく、それ以前からの伝統としてある能力でなければならない。

 このことはかつての日本の戦争の敗戦が「神風が吹く」や「生きて虜囚の辱を受けず」等に代表される軍の過剰な精神主義、作戦に於ける机上の空論、敵能力の軽視にあるとされていることが証明している。

 いずれも合理的精神を欠いていることによって成り立たせ可能となる資質である。

 合理的精神は考える力を身につけることによって養い得る。だが、暗記教育は教師や教科書が与える知識・情報をなぞって暗記する情報把握と情報処理に主眼を置き、そこに自身の考えを介在させて自らの知識・情報とする情報把握と情報処理のプロセスを持たない。

 このことゆえの臨機応変性を持たせた情報把握能力と把握した情報を如何に臨機応変・創造的に、且つ迅速・的確に処理するかの、その場・その状況にふさわしい情報処理能力の欠如ということであり、それが石原都知事が言っている「日本の防衛力の貧弱さ、情報力の貧弱さ」となって現れているということであろう。 

 規則をなぞって行動するマニュアル主義、あるいは前例に従うのみの前例主義、周囲の行動に合わせる横並び症候群、すべて他者や周囲の考えに合わせて、自らの考えを持たない、合理的精神とは無縁の行動性にしてもすべて暗記教育が逆説的に育んできた臨機応変性と創造性の欠如が基本となっているはずである。

 と言うことなら、日本が暗記教育から脱しない限り、、「日本の防衛力の貧弱さ、情報力の貧弱さ」は延々として続くことになる。

 小沢一郎元民主党代表が4月12日に国会内で開いたグループ会合で次のように発言していることも、以上見てきた暗記教育の成果としてある一つの能力であろう。

 小沢元代表「国際政治の中では、日本の影響力は西側の同盟国からほとんど評価されていない」(MSN産経

 満足な情報把握能力も情報処理能力も発揮し得ていないということである。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

野田内閣は大飯原発再稼働と言い、北朝鮮ミサイル発射情報伝達と言い、薄汚いゴマカシで政治を動かしている

2012-04-14 11:16:52 | Weblog

 4月9日(2012年)夜の4回目の関係閣僚会議は関西電力大飯原発3号機・4号機再稼働の安全性確認の審査を行い、政府の新たな安全基準におおむね適合していると安全性を確認した。

 枝野詭弁家「原子力安全・保安院が求めている内容に沿っており、安全対策を時期も併せて具体的に明らかにし、事業者みずから取り組む姿勢が明確になっていると確認した。大飯原発の3号機と4号機については、安全基準に照らしておおむね適合していると判断した。

 ただし、重要なことなので見落としがないかどうか、さらに議論を行う」(NHK NEWS WEB

 念には念を入れてということだが、何に念を入れるのかというと――

 枝野詭弁家「関西電力では、原発の運転再開がなければ、20%程度の電力不足となる見通しとなっている。さらに発電能力の積み上げができないか、その結果を待って原発の運転再開の必要性を判断したい」

 以上の枝野発言は前にブログで一度引用した《安全基準におおむね適合と判断》NHK NEWS WEB/2012年4月9日 22時38分)から。

 原子炉の安全性は概ね確認できた。だが、電力の需給状況を再度調査をして、再稼働にゴーサインを出すかどうか判断したいと言っている。

 いわば安全性よりも電力需給を再稼働条件の上に置いている。原発を稼働しなくても、電力が不足しなければ、稼働を認めないとする意思表示となっている。

 この態度はごく当然の判断に見えるが、実際はそうではない。

 野田内閣関係閣僚会議が大飯原発3・4号機を再稼働した場合の安全性は政府の新たな安全基準におおむね適合していると評価を下したことに福島原発事故の検証が終了していない等の理由を挙げて拙速だ、再稼働ありきの決定だといった批判が起きた。

 4月13日(2012年)、枝野詭弁家は衆議院経済産業委員会で、〈中長期的に原子力発電への依存度を減らすことは政府の明確な方針であるとして、原発に依存しない社会の構築を目指したいという考えを改めて示し〉たという。

 《経産相 “原発依存の脱却を”》”(NHK NEWS WEB/2012年4月13日 15時2分)

 枝野詭弁家の以上の言動を見ると、一見、電力不足回避を条件に原発再稼働反対に軸足を置いているように見える。
 
 枝野詭弁家「原発依存からの脱却を最大限進めていくことは政府としての明確な方針だ。私自身も、できるだけ早く原発依存から脱却して原発への依存をゼロにしたい」

 この発言はあくまでも中長期的な方針であって、大飯原発再稼働とは別扱いのスケジュールであろう。

 記事は、〈原発事故を受けて新たなエネルギー基本計画の策定を目指している経済産業省の総合資源エネルギー調査会は、2030年の時点で全電力に占める原発の比率を0%から35%までとする5つの選択肢を示してい〉と解説している。

 大飯原発再稼働については次のように発言している。

 枝野詭弁家「私が独りで精査しているときも、この閣僚会議でも、一生懸命、再稼働しない理由を見つける努力をしている」

 記事はこの発言を大飯原発再稼働に関して、〈運転再開という結論ありきで議論しているわけではないという考えを強調〉したものだとしている。

 いわば批判に対する自己正当化の趣旨を持たせている。

 「見つける努力をしている」という「再稼働しない理由」とは大飯原発を稼働せず、停止したままでも電力不足を回避できる方策ということでなければならない。

 とすると、節電等の方法も加えて、電力需給で供給が上回る場合は再稼働を認めないということなら、原発自体の安全性よりも最初に需給状況の精査・検証を持ってこなければならなかったはずだ。

 なぜなら、電力供給過剰の状態を数年維持できるなら、その間に自然エネルギーを増やしていけば、原発自体が不必要となり、廃炉まで停止状態にしておけば、何も安全性確保に一定程度以上のカネを掛ける必要はなくなるからだ。

 だが、安全性向上と確保に一定のカネをかけさせ、その結果として政府の新たな安全基準におおむね適合していると安全性にお墨付きを与えてから、「さらに発電能力の積み上げができないか」とか、「一生懸命、再稼働しない理由を見つける努力をしている」などと言っている。

 これでは明らかに順序が逆である。

 要するに大飯原発の安全対策が全て完了しているわけではなく、何項目かが取組み過程にあるにも関わらず、安全性を先取りする形で安全基準におおむね合格としたために先に持って来るべき電力需給を後付けで再稼働条件に付け加えて、おおむね合格に正当性を纏わせるゴマカシを働かざるを得なかったということであろう。

 でなければ、順序が逆になることはない。

 大体が福島原発事故を教訓とするなら、電力供給過剰は原発停止の条件とはなり得ても、電力供給不足は原発稼働の条件足り得ないはずだ。原発再稼働は安全性を唯一絶対の条件としなければならない。

 例え原発停止が節電で間に合わず、大袈裟な譬えを用いると、国民をしてロウソクの生活を強いる電力不足が生じたとしても、またこのことによって日本の経済が縮小したとしても、国民の生命や健康に著しく関わってくる安全性に優る条件はないはずだが、野田政権、枝野詭弁家はこの条件づけを破って、再稼働の条件に電力の供給不足を加えた。

 これをゴマカシと言わずに、何と言ったらいいのだろうか。再稼働容認は拙速だ、再稼働ありきだという批判をかわして、再稼働を正当化するために後付けで持ち出した発電能力云々であり、「一生懸命、再稼働しない理由を見つける努力をしている」の体裁づけのゴマカシであろう。

 13日に「一生懸命、再稼働しない理由を見つける努力をしている」と言っていながら、同じ日の夜に開いた6回目の関係閣僚会議で大飯原発再稼働にゴーサインを出している。

 地元がどう反応するか予測はつかないが、少なくとも政府の態度は“再稼働ありき”の態度だったと断言できる。

 日本政府は北朝鮮のミサイル発射の迅速・的確な情報伝達に遅滞と混乱を生じせしめた。政府のこの危機管理の不手際・失態を追及すべく、岸田自民党国会対策委員長が城島民主党国会対策委員長と会談、衆議院予算委員会での集中審議を行うよう求めた。

 《自民 北朝鮮発射で集中審議を》NHK NEWS WEB/2012年4月13日 19時35分)

 岸田国対委員長「北朝鮮による今回の発射を受けた政府の対応には不透明な部分が多い。中でも、政府の発表の遅れは理解できない点があり、国民の前で事実関係を明らかにすべきだ」

 城島国対委員長「前回、平成21年に北朝鮮がミサイルを発射したときは、日本の上空を飛んだにもかかわらず、予算委員会の集中審議は行っていない。今回は、日本の領土・領海への影響はなく、集中審議の必要はない」

 平成21年の北朝鮮ミサイル発射の際の麻生内閣の誤発表については、驚いたことにそれを伝える3年前の「YOMIURI ONLINE」記事――《「発射誤発表」、確認怠り次々伝言》(2009年4月5日00時40分)がインターネット上に残っている。 

 北朝鮮がミサイルを発射する2009年4月5日11時30分前に政府が発表した「北朝鮮から飛翔体が発射された模様」との情報は防衛省の警戒管制レーダーがミサイルとは別の航跡を探知し、その情報を確認しないまま流してしまったことが原因の誤情報だったと記事は書いている。

 果して城島国対委員長が言うように政府の情報検証は「予算委員会の集中審議は行っていない」前例を基準にしていいものだろうか。前例を基準にするということは朝鮮半島情勢をも前例時と同じに見なければならない。

 果たして朝鮮半島情勢は3年前と変わらないと解釈して、許されるのだろうか。

 特に独裁国家に於いては権力移行期に権力闘争が起きない可能性は否定できないはずだ。権力闘争の末に国家体制が不安定化した場合、国民の目を外に向けさせるために自ら何らかの有事をつくり出さない保証はない。

 また金正恩体制の今回のミサイル発射は権力継承正統性の意義づけと権力掌握証明の意味づけを持たせた自己偉大化の象徴的出来事としていたはずで、だからこそ、前以て予想しなければならない2月の米朝合意に基づく対北朝鮮食糧支援の停止というリスクまで犯すことができた。

 だが、このことはあくまでも発射成功を前提とした目論見であって、発射失敗が食糧支援喪失の失態という批判を権力内部に招かない保証もないし、このことと共に権力継承正統性と権力掌握証明に対して逆のベクトルとして働かない保証もない。

 明らかに朝鮮半島情勢は3年前と同じではなく、悪化方向へ流動化しかねない事態を予測し、その備えを危機管理としなければならないはずだ。
 
 さらに言うと、今回のミサイル発射に対する迅速・的確な情報把握と情報伝達は万が一の有事に機能させるための訓練という側面も有していた。

 いわば万が一の有事に際して情報把握と情報伝達が迅速・的確に機能するかどうかを唯一の基準としなければならないし、そうであるなら、当然、万が一の有事に機能させるためにも今回の不手際・失態の検証は必要不可欠であって、決して前例を基準としていいはずはない。

 それを前回は「予算委員会の集中審議は行っていない」からと前例を基準とするのは危機感もない、薄汚いゴマカシ以外の何ものでもあるまい。

 藤村官房長官の情報伝達の遅れに対する釈明も薄汚いゴマカシ以外の何ものでもなく、薄汚いゴマカシで政治を動かしている証明となる。

 《官房長官“発表内容を検証”》NHK NEWS WEB/2012年4月13日 18時22分)

 北朝鮮の4月13日午前7時39分ミサイル発射に対して日本政府は午前7時40分頃アメリカ側から「飛翔体が発射された」という情報を入手。

 これに対して政府は「発射したとの一部報道があるが、わが国としては発射を確認していません」と発表。

 13日午後の記者会見。

 藤村官房長官「海外で発射が報道され、混乱があってはいけないということで、危機管理室で判断して出した。短い内容だが不親切な部分があるかもしれない。

 (J-ALERT=全国瞬時警報システムを使用しなかったことについて)J-ALERTは、万が一、何らかの物体が落下する可能性がある場合に情報を出すと、自治体には通知されている。何かが発射されただけで警告することはお騒がせすることだ」

 これも薄汚いゴマカシそのものである。

 落下は発射の次の段階に可能性として存在する。いわば発射があって、可能性として落下がある。当たり前のことだが、発射がなければ、落下は存在しない。

 だが、次の段階がどの時点か、どの距離でか、その予測は困難であろうし、予測不可能のケースも生じるはずだ。

 当然、落下に対する備えは発射以後の全段階に向けた警戒措置となる。この基準に従ってイージス艦や地上配備型の迎撃ミサイル「PAC3」の配備にしても行われたはずだ。

 と言うことなら、発射の事実を知った上で発射以後の全段階に向けた警戒措置こそがより有効・より的確に作用するはずである。

 それを「何かが発射されただけで警告することはお騒がせすることだ」と言っているが、その「何かが」が「何」であるかの情報をいち早く把握して、危険性ある発射であるなら、迅速・的確に情報伝達し、と同時にその備えをするのが国の務めであろう。

 どのような場合でも、発射物を「何か」で済ますことはできないということである。

 しかも北朝鮮は人工衛星打ち上げと称したロケット発射を予告していたのである。

 藤村官房長官が言っていることは情報伝達の遅れとその責任回避のゴマカシ以外の何ものでもあるまい。

 薄汚いゴマカシがこうまでも渦巻き、このような薄汚いゴマカシで政治を動かしている。

 責任回避意識ばかりが見えて、安全保障に関わる危機感をどこにも感じることができない。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

鳩山元首相をして党外交担当最高顧問就任がその気にさせた(?)イラン訪問と野田首相擁護の矛盾

2012-04-13 10:43:01 | Weblog

 人間は他の誰よりも自分自身を最も信頼する。その典型例の最たる一人が鳩山元首相であり、最も“トラスト・ミー”に仕上がっている人間ではないだろうか。

 首相退陣後、一旦は衆院任期終了後の引退を表明していながら、自分自身の言葉を裏切って引退を撤回できたのは何よりも自身の能力に対して“トラスト・ミー”の盲目的な自信過剰があったからだろう。

 その“トラスト・ミー”な鳩山元首相が政府から要請を受けたのでもない個人的な立場でイランを訪問したことが批判を浴びた。

 但しその訪問を批判する閣僚がある中、唯一、野田首相が党首討論でその“トラスト・ミー”なイラン単独・独善的訪問を擁護した。

 この批判と擁護の相反する態度は内閣不一致の様相を示していないだろうか。

 経緯を見てみる。

 4月7日(2012年)、イランの首都テヘランを訪問、サレヒ外相と会談。《鳩山元総理 イランを訪れ外相と会談》NHK NEWS WEB/2012年4月8日 2時26分)

 口を開くたびに枕詞として、「トラスト・ミー」を連発したかどうかまでは記事は紹介していない。連発しなかったから紹介しなかったのか、連発したけど、信用できない“トラスト・ミー”だから、紹介しなかったのか。

 鳩山元首相「日本は戦争と原発の事故と、2回、核の被害を受けた国であり、核の被害の悲惨さを経験している。イランには、核兵器の開発は行わないでいただきたい」

 サレヒ外相「そもそもイランには核兵器の開発を行なう意図はない。信頼してほしい」

 鳩山元首相の発言は少なくともイランに核兵器開発の意図ありを前提としている。その意図がないと見ている国に、「開発は行わないでいただきたい」とは言えない。

 だが、言っていること自体は日本の政治家なら誰でも言えること、誰もが言うことを型どおりに口にしたに過ぎない。

 問題はその意図が現在のところ意図で終わっているのか、あるいは意図から一歩踏み出して、どれ程具体化させているか、イランが国際決議に反して濃縮ウランの生産に向けた取り組みを一層強化していると見ている西欧諸国はその点を重視し、明らかにすべき交渉を様々に働きかけ、査察も行なっている。

 対してサレヒ外相はあっさりとその意図を否定した。当然、意図の具体化は一切存在しないことになる。

 具体化が存在しないなら、核関連施設への立入検査を全面的且つ無条件に認めて、意図の具体化が存在しないことを証明してもよさそうなものだが、国際原子力機関(IAEA)の1月末(2012年)の調査団派遣でも、2月末(2012年)の派遣でも、要請していた軍事施設への立ち入りに関してイラン側の協力は得られず、何ら成果を上げることができなかった。

 鳩山元首相はこの矛盾を突いたのだろうか。

 サレヒ外相が「そもそもイランには核兵器の開発を行なう意図はない。信頼してほしい(トラスト・ミー?)」と発言したのに対して、ハイ、そうですかと子供の使いをしたわけではないことは1年3か月ぶりに来週再開のイランと欧米等関係6か国との交渉について行った鳩山元首相の発言が幸いにも証明してくれる。

 鳩山元首相「対話を通じて問題を解決することが重要であり、イランは交渉では柔軟な対応をお願いしたい」

 少なくとも問題の所在を前提としているが、この発言にしても日本の政治家なら誰でも言えること、誰もが言うことを型どおりに口にしたに過ぎない。

 サレヒ外相「イランも来週の交渉は、大変重要な意義があると思っている」

 鳩山元首相の型どおりの発言に対する型どおりのお返しとなっている。“公式的発言”と形容できる見解を述べたに過ぎない。

 以上を見る限り、イランを動かすことができたようには見えない。動かすことができなければ、訪問の意味を失う。

 そして4月8日のアフマディネジャド大統領との会談。《鳩山元首相 イラン大統領と会談》NHK NEWS WEB/2012年4月9日 5時3分)

 会談後の記者会見。大統領に伝えた発言。

 鳩山元首相「日本は核兵器の開発について技術的な能力はあるが、核兵器を持たない国だという国際社会の信頼を50年かけて勝ち得てきた。イランも疑惑を払拭するため対話で問題を解決する努力を続け、武力の行使が起きないようにしてもらいたい」

 対話は後付けの具体的な行動があって初めて問題解決を可能とする。求めるべきは具体的な行動としてのIAEAの核関連施設への無条件の立入検査であろう。

 やはり日本の政治家なら誰でも言えること、誰もが言うことを型どおりになぞったに過ぎない。

 〈調整が続いていた欧米側との交渉を行う開催地について、トルコのイスタンブールに決まったと伝えられ〉たと語ったという。

 鳩山元首相(イラン訪問は議員としての個人的な活動だとしたうえで)「総理大臣を経験したときに培った人脈を大事にして、国益に資することは何かと考えて行動したつもりだ。政府の立場と異なるメッセージを出したわけではなく、ご理解を願いたい」

 日本にとっての国益とはイランの核開発疑惑の完全払拭と払拭に対応した西欧諸国の経済制裁解除、イラン原油の全量輸入再開であろう。

 だとしたら、やはりIAEAの核関連施設への無条件の立入検査以外にないはずだが、型どおりの発言以外にそのことを求めたとする発言を見つけることができない。

 ここまでは何のためにイランを訪問したのか、特段の理由があったとは思えない意味不明な、形式的な会談模様を呈しているに過ぎないが、イラン大統領府の会談についての公式発表が物議を引き起こすこととなった。

 《鳩山氏“イランの発表はねつ造”》NHK NEWS WEB/2012年4月9日 23時35分)

 大統領府(会談の内容について)「鳩山氏は、『IAEAは、イランなどに二重基準を適用しており、公正ではない』と述べた」

 対して鳩山元首相は4月9日、イラン帰国後の国会内記者会見で、「トラスト・ミー」を発言した。

 鳩山元首相「完全に作られたねつ造で、遺憾に思っている。私が大統領に伝えたのは『核保有国を対象にせず、非保有国の平和利用に対して査察を行うというのは、公平ではないことは承知している。ただ、日本も長年、国際社会の疑念を払う努力を進めてきたので、イランも疑念を晴らす努力をしてもらいたい』ということだ」

 鳩山・サレヒ会談での発言と矛盾している。サレヒ会談では「イランには、核兵器の開発は行わないでいただきたい」と、少なくとも核兵器開発の意図ありを前提としていた。

 そのことに矛盾させて、IAEAが未だ疑惑を払拭できない核兵器開発問題をここでは何ら疑惑もなしに核非保有国の平和利用だと断定している。「イランも疑念を晴らす努力をしてもらいたい」と言っている言葉は平和利用だとする断定に対応させた言葉であろう。

 いわば核兵器開発の疑念を晴らして、平和利用であることを証明して貰いたいとする、あくまでも平和利用を絶対前提とした発言趣旨となる。

 鳩山元首相はどこでどういう方法で核非保有国の平和利用だと見做すことができたのだろうか。
 
 イランは真に平和利用のみなら、無条件の査察受入れに何ら障害はないはずだ。「トラスト・ミー」の言葉に有言実行、裏切らないゆえに外交の達人と称されることとなった鳩山元首相の訪問をわざわざ煩わすこともなかったはずだ。

 イランにしても過酷な経済制裁を受けて、国内経済を悪化させ、国民生活を困窮・圧迫させることもなかったはずだ。

 大統領府の発表に怒り心頭に達した・・・・のかどうか分からないが、鳩山元首相は在日イラン大使館に「事実と違う」と抗議した。抗議に対してイラン側は訂正に応じた。

 但しである。《イラン側、鳩山氏発言を削除 ただ「発言は事実」》asahi.com/2012年4月10日22時59分)

 〈在日イラン大使館が10日、鳩山氏に謝罪した。英語版とペルシャ語版のウェブサイトから発言も削除した。〉――

 大統領府担当者(朝日新聞の取材に)「発言は事実だが、日本との間で緊張を引き起こしたため」

 鳩山元首相が「核保有国を対象にせず、非保有国の平和利用に対して査察を行うというのは、公平ではないことは承知している」と言って、核兵器開発疑惑のない「平和利用」だと断定している以上、記事は、〈10日の自民党外交部会で外務省側は「(鳩山氏の発言は)違う文脈で使われたのかもしれない」と説明した。〉と書いているが、「IAEAは、イランなどに二重基準を適用しており、公正ではない」と発言したと受け取られたとしても、さして違いはあるまい。
 
 元々イラン訪問に不快感や不賛成を示していた閣僚の間から、イラン大統領府のこのような発表に対して苦言とも言うべき発言が飛び出した。

 《「こんな時期に行くなと言い続けた」 イラン訪問の鳩山氏に官房長官不快感》MSN産経/2012.4.9 12:56)

 4月9日の記者会見。

 藤村官房長官「例え個人の立場でも、こういう時期に訪問しない方がいいとずっと言い続けた。

 (イラン大統領府の発表に対して)政府としてコメントしない。わが国は核問題解決に向けたIAEAの役割を重視しており、イランにIAEAと完全な協力を行うよう求めている」

 苦々しさが伝わってくる発言となっている。

 《外相 鳩山氏にイラン訪問で苦言》NHK NEWS WEB/2012年4月10日 13時7分)

 4月10日閣議後の記者会見。

 玄葉外相(鳩山元総理大臣から帰国後に電話があったと明らかにしたうえで)「鳩山氏には、『イラン側の発言についてはよく分析するが、イラン側が何をどう言ったかを外に向かって言うべきではない。IAEAに関する報道には真意を含め、しっかりメディアに説明したほうがいい』と申し上げた。

 あくまで個人の立場で、本当に政府と関係がない。党も要請していないし、外交顧問という立場もなかったと、私は理解している。『さはさりながら、外からは元総理大臣とみられるので、よく思いを致してほしい』と鳩山氏に言った」

 何とまあ、突き放した発言となっていることか。

 「外交顧問という立場もなかったと、私は理解している」と言っているが、民主党最高顧問の鳩山元首相に対して外交担当の役目をわざわざ仰せつかったことが従来からの“トラスト・ミー”な気分の彼をしてなおのこと“トラスト・ミー”の気にさせたことは疑えないはずだ。
 
 オレの外交能力を認めたかとばかりに。

 ついでに記事が伝えている石原自民党幹事長の批判。

 石原幹事長「鳩山元総理大臣を外交問題を担当する党の最高顧問に任命し、イラン訪問を止められなかった野田総理大臣の責任は非常に重い。鳩山氏には、アメリカ軍普天間基地の移設問題を迷走させた過去があり、まさに日本にとっては『要らん』外交だ。言ったか言わないかは分からないが、イランの大統領に『言った』と言われることが懸念されていた。国益を著しく損ねている」

 野田首相は民主党代表でもあるから、外交担当を任じたこと自体、任命責任に相当する。

 その任命責任逃れかどうか分からないが、4月11日の谷垣自民党総裁との党首討論で鳩山イラン訪問を擁護している。

 谷垣自民党総裁「今日は実は、外交についてもいろいろ議論をしたかった。ちょうど、今日は韓国の総選挙でもありますね。まあ、2つだけ申します。要するに、鳩山さんがイランに行かれた。これは、アメリカも反対したけれども、イランには早速利用されていますね。二元外交というそしりもあります。鳩山さんは、これは普天間で日本外交を大きく傷つけた。今回もまた日本外交の信頼性を傷つけたと思います。御党の外交の最高顧問です。これからも最高顧問として活動を続けていただくという態度を総理はおとりになるのですか」

 「それからもう一つ、ミサイルの問題。これは、米中韓と協力して、何としても留めなければなりません。総理もこれは頑張っていただきたいと私は思います。ただ、田中防衛大臣、今まで国会の議論を聞いておりましても、私はきちっとこの問題に対応することができるとは思いません。一体どうなさるおつもりですか」

 野田首相「まず、鳩山元総理でございますが、今回のイラン訪問は、政府の要請、党の要請で行かれたわけではなくて、個人の判断としていかれました。そのことによって何が起こったかということでございますけれども、私は、基本的には国際社会の取り組み。あるいは政府の基本姿勢をふまえて、対応されたというふうに思っています。ご指摘を頂いたことは、IAEAはダブルスタンダードというお話が報道ではでました。イラン大統領府のホームページにも出ましたけれども、それは明確に鳩山元総理は否定をされましたし、そのことに在京のイラン大使館からはおわびがございましたし、イラン大統領府のホームページもペルシャ語も英語も削除をされたということでございますので、基本的には、基本ラインをふまえて対応していただいたというふうに考えております」(以上MSN産経記事から)

 他の閣僚が鳩山元首相のイラン訪問は間違っていたと言っているのに対して野田首相は間違っていないと擁護している。このことは同じ内閣に於ける意見の不一致を示すものであろう。

 であるばかりか、「基本的には国際社会の取り組み。あるいは政府の基本姿勢をふまえて、対応された」とする擁護は鳩山元首相のイランの核開発は平和利用だとした断定とも同時に対応した擁護となる。

 いわば基本的には国際社会はイランの核開発は平和利用だとして取組み、日本政府の基本姿勢も平和利用だとしていることになる。

 勿論、ここに矛盾が生じる。

 野田首相はこの矛盾に答える説明責任を負ったことになる。

 閣僚の不快感も批判もなんのその、鳩山首相の“トラスト・ミー”は萎えることを知らない。《鳩山氏「非常に行ってよかった」 イラン訪問批判に反論》MSN産経/2012.4.10 14:42)

 4月10日の自らが主催する議員グループ会合。

 鳩山元首相「結果を一言で言うと、非常に行ってよかった。

 核兵器のない世界をつくりたいと強く申し上げ、イランのアフマディネジャド大統領はじっくり耳を傾けた。言葉は通じた。先方からも機微なよい話をしてもらった。

 イランに赴き、日本の立場を真剣に訴えることが政治家、首相を経験した人間としての使命かと思った」

 自画自賛の“トラスト・ミー”は素晴らしい。

 北朝鮮を訪問し、金正恩に対して、「核兵器のない世界をつくりたい」と強く申し上げ、言葉を通じさせることができるだろうか。

 北朝鮮とイランとは事情も条件も違うと言うことはできない。核兵器のない世界をつくるということはイラン一国の非核化だけではなく、北朝鮮にしても非核化でなければ、核兵器のない世界を成り立たせることはできない。

 国際政治の現実は甘くはない。経済制裁を以てしても、イランにしても北朝鮮にしても核兵器保有の衝動を抑え切れないでいる。既に保有して、効果的な運搬手段の開発に進んでいる可能性も疑うことができる。

 自民党は鳩山元首相を参考人招致し、国会で追及する方針でいる。野次馬根性からすると、ますます面白くなりそうだ。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

野田首相の党首討論、マニフェストの実行性及び実効性を「言い合っても政治は前進しません」は事実か

2012-04-12 09:44:45 | Weblog

 昨4月11日(2012年)午後3時から参院第1委員会室で党首討論が行われた。谷垣自民党総裁が民主党はマニフェス通りの政治が進んでいない、マニフェストのケジメをつけるべきだといった趣旨の追及に対して野田首相が自民党も政権を担当していた当時、マニフェスト通りには実現できなかった政策もあった、できないこと・できなかったこと、「そんなことをお互いに言い合っても政治は前進しませんよ」と答えているのを聞いて、その逆ではないか、お互いに言い合うことによってこそ、政治を前進させることができるのではないかと奇異に感じ、このマニフェストに関する遣り取りのみを取り上げて見ることにした。

 両者の議論は「MSN産経」記事――《【党首討論詳報】》を参考にした。(2012.4.11) 

 議論のつながりを理解するためにこの遣り取りの前段にちょっと触れてみる。

 谷垣自民党総裁が「税と社会保障の一体改革とおっしゃるけれども、ちっとも姿が見えてこない」、いわば一体改革の体を成していないのではないのかと批判したのに対して野田首相は詭弁(=ゴマカシ)を以て答えている。

 野田首相「社会保障の全体像と工程表についても閣議決定をしています。従ってその方針に基づいて着実に社会保障は実施をしていくということは、全体像でありますので、これは大綱のころから変わっておりません。

 その上で私どもは新しい年金制度については来年法案を提出する。後期高齢者医療制度廃止については今国会中に法案を提出する」

 「社会保障の全体像と工程表についても閣議決定をしています」と言ってはいるが、自分たちが全体像として閣議決定したというだけのことで、その全体像が一体性を確保しているなら、同時進行でなければならないはずであるにも関わらず、「新しい年金制度については来年法案を提出する。後期高齢者医療制度廃止については今国会中に法案を提出する」と、消費増税法案国会提出との同時進行を離れて、後追いの進行となっている。

 いわば一体性を欠いているばかりか、「新しい年金制度」だと言っている国民1人当たり7万円支給の最低保障年金にしても支給対象所得の金額等、内容が固まっているわけではない。

 また、大綱に「基づいて着実に社会保障は実施をしていくということは、全体像でありますので、これは大綱のころから変わっておりません」と言っていることは法案成立後の社会保障制度の着実な実施に向けたスケジュールの全体像を指してのことで、その中に同時進行ではない後追いの進行が混じっている以上、そのことを以て「社会保障と税の一体改革」の全体像だとするのは詭弁(=ゴマカシ)以外の何ものでもないはずだ。

 谷垣自民総裁「いろいろおっしゃいましたけれどね、(社会保障の)工程表とおっしゃるのは、これはマニフェストにも付いておりました。マニフェストにも付いているということは、もうマニフェストの主要部分がガタガタになっているわけでしょう。工程表があるというだけでは私はね、ああそうかと、そこまで考えておられるのかとは、到底言えないんです。

 結局ですね、いま総理がおっしゃっていることは詰めていきますと、マニフェストの問題点にぶち当たるんですよ。マニフェストの壁にぶち当たるんです。つまり、マニフェストをできもしないけど守ろうという方たちと、それから臆面もなくマニフェストと違うことをやろうという方がぶつかり合っているから、いつまでたっても方向性が出ないというのが、今の政権の問題じゃないかと。私は失礼ながらそれを憂えているんです。

 今、結局決まらない政治だとか、いろんなことが言われますけれども、その根源になっているのはマニフェストの精算(「成算」の誤字?)がないからだと思いますが、私はやっぱりマニフェストのけじめをつけていくということでないと、それは物事が進まないんじゃないかと思っております。

 いま総理の足元でいろんな液状化が起こっているのはすべてそれに起因すると私は思います。せめてマニフェストの問題点をしっかり反省し、撤回して、けじめをつけていく。それでなければ私は嘘の片棒をかついで増税に賛成するわけにはいかないということは明確に申し上げておきます」

 野田首相「嘘の片棒を担いで税の話は賛成できないという。それはおかしいんじゃありませんか。私どものマニフェストで実現したものと、まだ実現できていないものはあります。これは事実であります。従って総選挙のあかつきには、お約束したことは何だったのか、できなかったことは何なのか、それはなぜだったのか。あるいは記入しなかったけれども、言ったこと、やったことは何なのかを含めて、これは選挙というのは1つは業績投票という側面がありますから、それは率直に総括しながら選挙のあかつきにはそれは打ち出していきたいと思います。

 思いますけれども、民主党の約束がうんぬん、どうのじゃなくて、ほんとに国家国民のために、私どもが言ったことは責任をもって総括をして、選挙の前には打ち出すと申し上げたじゃないですか。だとするならば、そういう問題は御党だってあったはずじゃないですか。郵政民営化でバラ色になるといってそうなったんでしょうか。郵政、いま改革がまた違う方向で進んでいるじゃないですか。

 幼児教育の無償化、2005年に書いて、4年間やらなかったじゃないですか。またマニフェストに出てきたじゃないですか。そんなことをお互いに言い合っても政治は前進しませんよ。私は社会保障と税の一体改革はまさに避けて通れないテーマだと、待ったなしだということを言いました。ここはぜひ問題意識は共有していただきたいんです。ぜひその議論を進めさせていただきたいというふうに思います」(以上)

 「私どものマニフェストで実現したものと、まだ実現できていないものはあります。これは事実であります。従って総選挙のあかつきには、お約束したことは何だったのか、できなかったことは何なのか、それはなぜだったのか。あるいは記入しなかったけれども、言ったこと、やったことは何なのかを含めて、これは選挙というのは1つは業績投票という側面がありますから、それは率直に総括しながら選挙のあかつきにはそれは打ち出していきたいと思います」と結果責任に言及しながら、マニフェストでできなかったことなどを「お互いに言い合っても政治は前進しませんよ」と矛盾したことを平気で言っている。

 ごく当たり前の常識となっていることだが、マニフェストとは自分たちが政権を担った場合、こういった政策を行います、その政策は国民にこういった生活の利益をもたらしますと国民に約束する政策を掲げた政策集であって、それゆえにマニフェストを以って国民との契約と言われる所以であろう。

 また、マニフェストに掲げる政策は他党の政策との競い合いを性格とする以上、他党の政策と比較した自党の政策の優越性及び他党の政策の自党の政策と比較した劣等性の説明責任を負う。

 そのようにして選挙戦を戦い、最終判断を投票という形で国民の審判に委ねる。

 だが、マニフェストに掲げた自党の政策の他党の政策と比較した優越性を訴えて国民の承認を受け政権を担当しながら、それらの政策を実行に移すことができなかったり、最初に訴えた優越性が見掛け倒しで約束した国民の生活利益を実現できなかったりした場合、口先だけ、政治的な実行力がないということで次の選挙で国民の審判をそれなりに受けることになる。

 いわばかつての政権党自民党は「幼児教育の無償化、2005年に書いて、4年間やらなかった」有言不実行やその他の政策の不作為、あるいは優越性の口程ではなかった見掛け倒し等によって、2009年選挙で政権党から外される審判を国民から受けたのである。

 その審判たるや、国民は政治を前進させる、あるいは政治及び国民生活の閉塞状況を打破させることを目的としていたはずである。

 つまり国民はマニフェストに掲げた各政策の優劣、実行・不実行の言い合い(批判のし合い)の中から正否の実態を見極め、政治を前進させようとした。国民生活の閉塞状況の打破を願った。

 野田首相が言うように「そんなことをお互いに言い合っても政治は前進しませんよ」ということでは決してない。一面的にはマニフェストの政策を言い合わなければならないお粗末な状況が招いている政治の停滞なのであって、その言い合いが逆に政策の実態を映し出して、新たな前進を国民に選択させるということであろう。

 「そんなことをお互いに言い合っても政治は前進しませんよ」などと言うのは合理的認識性を欠いたトンチンカンな発言としか言いようがない。

 その証拠に現在広く国民の間に政治不信や既成政党不信が渦巻き、その反動としての期待から地方政党等の第三極の勃興を招いている政治状況は民主党が2009年マニフェストに掲げた他の政党と比較して優越性あるとした政策の多くが財源不捻出による縮小や変質、あるいは不実行のお粗末な状況に陥って逆に政治が動かなくなり、満足に決めることも進めることもできなくなっていることの反映としてある、国民から見たなら、そこに政治の前進を期待している現象だと言うことができる。

 決して衆参ねじれ現象がすべての原因となって招いている政治停滞ではないはずだ。

 各政党共、マニフェストに自党の他党の政策と比較して優越性を訴えた政策を掲げて政権選択の審判を国民から受ける以上、各政策の評価を言い合う政策の競争原理以外に政治前進の材料はあると言うのだろうか。

 だが、現在、その政治前進の材料を失っている。野田政権は政治前進の材料として「社会保障と税の一体改革」を掲げているが、自らが掲げた社会保障政策にしても税(=消費税)にしても国民から理解を得るところまでにいっていない。政策自体にも指導力自体にも問題があるからだろう。

 参考までに。

 2011年3月31日記事――《大連立は政策競い合いの競争原理を失い、馴れ合いが生じる - 『ニッポン情報解読』by手代木恕之》

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

野田首相がいくら腹を割ろうと尊敬しようと同じ増税率10%でも政治手法が違えばゴールは違う

2012-04-11 09:20:31 | Weblog

 ――野田首相は腹を割る相手を間違えている――

 自民党が4月9日(2012年)次期衆院選マニフェストを「日本の再起のための政策(原案)」と名づけて公表した。

 2010年参院選マニフェストにも消費税10%への増税を掲げていたが、今回の原案も10%を掲げている。

 〈4. 自助を基本とし、共助・公助が補う安心な社会づくり

 <持続可能な財政の確立>

 ・消費税(当面10%)を含む税制抜本改革と行財政改革の一層の推進による持続可能で安定した財政と社会保障制度の確立〉・・・・・

 してやったりと思ったのかどうか分からないが、民主党がこのことに素早く反応した。《消費税10%明記「高く評価」=自民党公約原案-安住財務相》時事ドットコム/2012/04/10-11:43)

 4月10日閣議後記者会見。

 安住財務相、「(両党間で)コンセンサスを得られるきっかけにできればと思っている。高く評価したい。

 (消費増税へ反対の意向を示している小沢一郎元代表に対して)正規の(党内)手続きを踏んだわけだから、民主党におられる以上、従ってもらわないといけない」

 相手は「正規の手続き」だと認めていない。

 安住財務相は自民党次期衆院選挙マニフェストの消費税10%増税方針を「高く評価したい」と言っているが、勘違いも甚だしいのではないのか。同じ消費税増税率10%でも、政治手法が違えば、ゴールは違ってくるからだ。

 3月31日(2012年)当ブログ記事――《野田消費増税から抜け落ちている2つの視点 - 『ニッポン情報解読』by手代木恕之》に次のように書いた。
 
 〈マスコミの大方がそうだが、自民党は2010年参院選で消費税増税10%の公約を掲げた。与党民主党と同じ10%で、両者の主張に基本的な差はないのだから、自民党が与野党協議に応じないのはおかしいといった論調が罷り通っている。

 民主党も自民党も消費税税収をすべて社会保障政策の財源とすることを約束し、忠実に実行したとしても、医療・年金・介護・子育てに向けた財源の配分の違いによっても、それらの各政策の有効性によっても(矛盾のない政策など存在しない)、さらに財政運営方法の違いから生じるカネ遣いの効率性の違いから言っても、社会保障政策に関わる成果を同じだとすることはできない。

 いわば同じ10%という税率のみで政治的な結果まで同じだと判断するのは早計というものであろう。〉・・・・・

 このブログ記事も同じ趣旨の展開となるが、野田首相までが自民党消費税10%増税方針に大歓迎のようだから、改めて一言言いたくなった。

 《首相 “谷垣氏と腹割って議論”》”(NHK NEWS WEB/2012年4月10日 18時44分)

 4月10日(2012年)内閣記者会のインタビュー。

 野田首相「谷垣総裁は誠実で正直な方で、国家国民のために大局に立って腹を割って議論すれば、お互いに納得できる答えが導き出せると思う。ライバル党の敵だとは思っておらず、先輩政治家としてリスペクト=尊敬の念が持てる方だ。

 (消費税増税)法案を提出した以上は、今の国会の会期の中で成立を期すことが一番最低の条件だと思う」

 「谷垣総裁は誠実で正直な方」だ、「先輩政治家としてリスペクト=尊敬の念が持てる方だ」とは、何と見当違いな、甘い認識の言葉だろうか。

 「国家国民のために大局に立って腹を割って議論すれば、お互いに納得できる答えが導き出せると思う」と言っているが、「お互いに納得できる答」は、それが可能だとしても、10%増税に賛成するところまでで、10%増税がどういう政治結果を生むかまで「お互いに納得できる答えが導き出せる」わけでは決してない。

 年金を例に取ると、次期衆院選自民党マニフェスト「日本の再起のための政策(原案)」は、〈持続可能な現行年金制度の基本の堅持と無年金、低年金対策など必要な見直し〉を範囲とする、現行制度の改善を方針としているのに対して民主党は「最低保障年金」の創設、「所得比例年金」と「最低保障年金」を組み合わせて一つとする公的年金制度の創設等、新しい制度へと姿を変えることを狙っている違いがある。

 当然、同じ消費税増税10%であっても、年金に関わる国民の受益の姿は自ずと異なったゴールを描くことになる。

 また生活保護に関しては民主党は生活保護給付費のカットには一切触れていないが、自民党は、〈年金とのバランスへの配慮などによる、生活保護給付水準の10%引き下げ〉云々と直接的なカットを謳っている違いがある。

 勿論、年金に関しても生活保護に関してもどちらの政策が国民により多くの利益を約束する結果を保証するかは分からないが、増税法案国会成立に民主党と自民党が手を握ったとしても、政権を担当している側の野田首相には納得できる答を導き出せ」るとしても、野党の立場として自分たちの政治を行うことができないゆえに自民党に「納得できる答を導き出せ」るとは限らないことは明らかである。

 要するに野田首相は谷垣総裁のことを「ライバル党の敵だとは思っていない」と言っているのとは正反対にあくまでもライバルであることに変わりはない。

 野田首相はあくまでも自らが政権担当することを前提として、その都合から発言しているに過ぎない。安住財務相の発言にも言えることだが、自分にとってよかれの思いが言わせている発言であろう。

 どこからどこまでも甘ちゃんにできているとしか見えない。

 消費税増税率が同じ10%であっても、政治思想や政治手法が違えば、政治結果にしても、負うべき「政治は結果責任」にしても違ってくるのだから、社会保障政策に限らず、外交・防衛等の主たる政策に関してもどちらの政党の政策が国民により多くの利益を約束するか、選挙を行なって国民の選択にこそ委ねるべきであろう。

 だが、菅前政権にしても、現在の野田政権にしても、民主党政権はマニフェストにない消費税増税を選挙による国民の判断にかけずに自分たちだけで決め、国民の選択の届かない国会でその法律を決めようとしている。

 もし野田首相が不退転を言い、正心誠意を言うなら、自民党共々消費税10%増税と社会保障政策やその他の政策をマニフェストに掲げてお互いに他党の政策に対する自党政策の優越性を訴えた上で選挙で競い、最終判断を投票という形で国民の選択に委ねるべきであろう。

 再度言う。野田首相は腹を割る相手を間違えている。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする