野田内閣13年度以内大飯原発再稼働は浜岡原発停止と二重基準となる地震・津波を想定外とした判断

2012-04-10 09:57:39 | Weblog

 原子力安全・保安院が関西電力提出の大飯原発3号機・4号機再稼働に向けた安全対策に関する工程表を妥当と判断、4月9日(2012年)開催の関係閣僚会議に報告。

 4月9日夜の4回目の関係閣僚会議は保安院報告の関西電力提出安全対策工程表を政府の新たな安全基準におおむね適合していると安全性を確認。

 安全性確認の次のステップは野田政権による再稼働に向けたゴーサインと思いきや、議論継続の宣言と相なった。

 《安全基準におおむね適合と判断》NHK NEWS WEB/2012年4月9日 22時38分)

 枝野詭弁家「原子力安全・保安院が求めている内容に沿っており、安全対策を時期も併せて具体的に明らかにし、事業者みずから取り組む姿勢が明確になっていると確認した。大飯原発の3号機と4号機については、安全基準に照らしておおむね適合していると判断した。

 ただし、重要なことなので見落としがないかどうか、さらに議論を行う」

 関西電力の姿勢を一方では評価し、その一方で再稼働に慎重な態度を見せている。

 保安院が工程表の妥当性を認め、関係閣僚会議がおおむね適合と安全性を確認する二重のチェックを行いながらである。

 安全性を無視した電力確保のための再稼働ありきの政治判断だとか、安全対策の不足を指摘する声を否定・払拭するカモフラージュとしての慎重姿勢、改めての「納得できるか(どうかの)精査」の疑い、詭弁の可能性は捨て難い。

 このことは記事が伝える次の発言が証明してくれる。

 枝野詭弁家「関西電力では、原発の運転再開がなければ、20%程度の電力不足となる見通しとなっている。さらに発電能力の積み上げができないか、その結果を待って原発の運転再開の必要性を判断したい」

 20%程度の電力不足を十分に補う発電能力の積み上げが解決可能なら、産業界に身を置く経団連会長が再稼働ない場合の電力不足を言い、電力の安定供給を言って原発再稼働を求めたりしないだろう。

 枝野詭弁家が言っていることは名は体を表すの詭弁を言っているに過ぎないということである。

 政府に求められていることは電力不足が生じたとしても、あくまでもそのことを除外した安全性の確認に基本的姿勢を置くことであろう。

 だが、枝野は電力不足をも安全性確認の基準に加えている。

 さらに次の記事を読むと、地震・津波を想定外とした保安院の関西電力提出安全対策工程表の妥当性認知であり、野田政権の安全性確認としか受け取ることができない。

 《関電の工程表 “妥当性”報告へ》NHK NEWS WEB/2012年4月9日 18時57分)

 保安院が関西電力提出の工程表を妥当だと認めたことを伝える記事である。

 森山善範原子力安全・保安院原子力災害対策監(4月9日夕記者会見)「すでに緊急安全対策やストレステストの1次評価で評価を終えている対策を確認する作業には時間はかからず対応できる。

 (事故対応拠点となる免震事務棟の3年後運用等、未整備対策について)より一層の安全を高めることは大切だが、緊急安全対策やストレステストの1次評価を踏まえた対策をしていれば福島第一原発事故のような地震や津波が来ても事故を防ぐ一定の対策ができていると理解している」

 現時点での対策で福島第一原発事故クラスの地震・津波が襲っても大丈夫だと太鼓判を押している。

 記事は次に未整備の対策を取り上げている。安全対策91項目中、37項目は未整備だとしている。

 既に触れた「免震事務棟」について。

 1年前倒しして3年後2015年度運用。

 ▽会議室の人員容量は最大で50人程度。十分なスペースがあるとは言えないとの指摘。
 ▽深刻な事故発生の場合、原子炉に近い場所にあり、放射線の影響を受けずに長期間に及ぶ事故
  対応が可能かどうか疑問視する指摘。

 「緊急時に格納容器の圧力を下げるベント設備」について。の未設置

 ▽外部への放射性物質放出抑制フィルター装着のベント設備は3年後の20105年度設置。

 「防波堤」について。

 ▽かさ上げは来年度末(2013年度末)までに完了。

 完了54項目の主なところ。

 ▽外部電源を維持するための送電線鉄塔の耐震性向上。
 ▽原子炉を冷やす冷却水の供給ラインに速やかに海水を注入するための専用の接続口設置。
 ▽非常時の通信手段として衛星電話等の配備。

 記事解説。〈しかし、今の時点で実施されていない対策の中には、深刻な事故が起きた場合に被害の拡大を食い止めるための重要な対策が多く含まれていて、こうした対策が行われていない中で原発の運転を再開する安全性を確保したと言えるのか、政府や電力会社には合理的な説明が求められています。〉――

 勝田忠広明大准教授「事故のときに指令を出す一番重要な免震棟が先延ばしにされているうえ、フィルターが付いたベントの設備も、福島第一原発の事故で教訓になったが先延ばしされている。本当に事故が起きたときに、福島の事故から学んだ対策が取れるのか疑問を覚える。

 免震棟などの設備を最低限確保し、その技術を使いこなせる訓練を終えて、そのうえで防災対策をどうするかを決めてから『大丈夫』となったら運転再開を判断で、政府が指示を出してから関西電力が工程表を出すまであまりにも短すぎて不安だ。政治家が集まって急に短期間で判断した印象で、論理的に不透明な状態で判断を下すのはよくない」

 要するに防波堤の嵩上げが完了する2013年度末以内に地震が発生し、津波が襲来した場合、福島第1原発事故の二の舞の危険性は否定できないということである。

 このことを裏返すと、嵩上げ完了以前の再稼働ゴーサインは地震・津波を想定外とした判断ということになる。

 大飯原発のある若狭湾には歴史的に大きな津波被害はないが定説となっていたが、次の記事がその定説を覆す内容となっている。

 《“原発銀座”若狭湾に大津波の恐れ、関大教授が指摘》YOMIURI ONLINE/2011年7月27日)

 2011年7月26日開催の内閣府原子力委員会の会合での河田恵昭・関西大教授の指摘。

 ▽1586年の天正大地震で若狭湾沿岸が津波に襲われ多数の死者が出た。
 ▽100~150年周期で発生する南海地震では、津波が山口県の日本海沿岸に到達することがある。

 河田恵昭・関西大教授、「最悪のシナリオを考え津波対策に万全を期す必要がある」

 地震・津波を想定外とすることによって、「免震事務棟」2015年度運用を待たずに再稼働を許可することができるということであり、また同じく外部への放射性物質放出抑制フィルター装着ベント設備の20105年度設置を待たずに許可できるということであり、このことは防波堤嵩上げについても言うことができるということである。

 だが、以上の安全対策未整備のままの再稼働許可は仮免許のまま終わった菅仮免許首相の浜岡原発停止要請と二重基準をなすことになる。

 2011年5月6日の記者会見で次のように発言した。

 菅仮免許首相「文部科学省の地震調査研究推進本部の評価によれば、これから30年以内にマグニチュード8程度の想定東海地震が発生する可能性は87%と極めて切迫をしております。こうした浜岡原子力発電所の置かれた特別な状況を考慮するならば、想定される東海地震に十分耐えられるよう、防潮堤の設置など、中長期の対策を確実に実施することが必要です。国民の安全と安心を守るためには、こうした中長期対策が完成するまでの間、現在、定期検査中で停止中の3号機のみならず、運転中のものも含めて、すべての原子炉の運転を停止すべきと私は判断をいたしました。」

 30年以内の87%地震・津波発生の想定に対して直ちに発生する想定の危機管理のもと、即座に原発停止を要請した。いつ起こるか分からないとう危機感からの一大決意に基づいた措置であろう

 当然、大飯原発に対しても1586年の天正大地震クラスの地震・津波がいつ発生するかわからないという同じ基準の危機管理で臨まなければ、ダブルスタンダードを侵すことになる。

 侵した場合、安全性よりも電力確保のための再稼働ありきの政治判断だと見做されても否定はできまい。

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