《石原知事「前から自民党もダメだった」尖閣対応》(YOMIURI ONLINE/2012年4月19日10時13分)
4月16日午後(日本時間4月17日未明)、ワシントン市内にある保守系のシンクタンク「ヘリテージ財団」で講演、東京都が尖閣諸島のうち、魚釣島、北小島、南小島の3島を購入するため地権者(埼玉県の民間人)と交渉、基本合意に達したことを明らかにした。(日本の論点PLUS/産経新聞4月18日付)
4月17日(日本時間18日)、日本記者団と記者会見。
17日(日本時間18日)の石原・東京都知事と報道陣との一問一答は次の通り。
――買い上げに中国は反発しているが。
石原都知事「何で日本の政府や日本人が反発しないのか」
――官房長官は国が購入してもいいと。
石原都知事「さっさとやれば良かったじゃないか。でも、(島の)持ち主が、国が信用できないから石原さん、東京都ということだったのだが」
――尖閣問題では民主政権の対応のまずさがあるか。
石原都知事「全然違う。もっと前から、自民党もダメだった」
――大阪市の橋下市長は事前に知っていたようだが。
石原都知事「口が堅いから黙っててくれたのだろう」
――尖閣諸島の所有者が都になった場合、中国艦船が来た場合の対応は。
「そりゃあ国家にやってもらうんですな」
――都民の利益は。
石原都知事「東京のためでなし、日本のため全体のためというか、沖縄のためになるのでは。何をやるかも都民で考えたらいい。都民で考えが足りなかったら、国民で考えたらいいのでは」
――都議会には。
石原都知事「専決事項で私が決めたことだが、説明はしますよ」
――首相に尖閣の件は。
石原都知事「聞かれれば答えるけど、都が決めたこと。中国は日本の領有を崩すために思い切った行動をするというのは、半分くらい『宣戦布告』みたいな話。政府はもっとしっかりしてもらわないといかん。朝日新聞だってそう思うでしょう。日本人だもの、みな」
――米国で発表したのは中国にアピールするためか。
石原都知事「それは考えすぎではないか。私は私の判断で、(発表する)場所を選んだということですな」
――日本では騒ぎになっているが。
石原都知事「騒ぎになるのがおかしいんだよ」
中国の反発に対して、石原都知事は「何で日本の政府や日本人が反発しないのか」と批判している。
中国の反発を記事から拾ってみる。
《“尖閣諸島 必要なら国が購入も”》(NHK NEWS WEB/2012年4月17日 18時22分)
中国共産党の機関紙人民日報系ネットサイト「環球網」「中国政府は、これまで何度も中国固有の領土であり、争う余地がないと表明してきた。日本側がどのような措置をとっても非合法かつ無効だ。
中国側は必要な措置をとる」
インターネット1「中国の領土を買うことは絶対にできない
インターネット2「急いで航空母艦を造ったほうがいい」
インターネット1「何もしなければ中国は国際社会の笑い者になる」
《“尖閣購入” 中国政府「無効だ」》(NHK NEWS WEB/2012年4月17日 19時55分)
劉為民中国外務省報道官(4月17日夕方)「中国の固有の領土で争いの余地がない中国の主権だ。日本側のいかなる一方的な措置も違法で無効だ。中国の領土だという事実を変えることはできない」
《中国“日中関係損なう”改めて反発》(NHK NEWS WEB/2012年4月18日 20時35分)
中国外務省談話(4月17日夜)「日本側のいかなる一方的な措置も、違法で無効だ。中国の領土だという事実を変えることはできない」
劉為民中国外務省報道官(4月18日定例会見)「(尖閣諸島に対する中国の主権を重ねて主張したうえで)この問題を巡る日本側の一つ一つの動きを注意深く見ている。政治家がこのような発言をすれば、日中関係の大局を損なうだけでなく、日本の国際的なイメージも損なうことになる」
強圧的・支配的な物言いをしている。いわば尖閣諸島領有権問題で中国を絶対的上に置き、日本を下に置いた、一種の恫喝的な態度を演じている。
このような中国の態度に対する日本政府の対応を見てみる。
《【都の尖閣購入計画】玄葉外相、石原都知事批判に反論「何もやっていないということは全くない」》(MSN産経/2012.4.17 11:15)
4月17日の記者会見。
玄葉外相「(石原氏が)何をどう語ったのか詳細を把握していない。尖閣諸島はわが国固有の領土であり、歴史的にも国際法上も疑いのない事実だ。現にわが国は有効に支配している。
(石原都知事が尖閣諸島問題をめぐる外務省の対応を批判したことに)何もやっていないということは全くない」
「尖閣諸島はわが国固有の領土」云々が例え中国の尖閣領有権主張に答える発言であったとしても、中国に直接向けて発したメーッセージではなく、日本政府の尖閣に関わる立場、公式見解を記者団に向けて発言したに過ぎない。
《衆参予算委員会集中審議の要旨》(MSN産経/2012.4.18 22:00)
4月18日の衆参予算委員会集中審議。
野田首相「尖閣諸島が国際法上も歴史的にみても、わが国固有の領土であることは明々白々だ。石原慎太郎都知事の真意や都で考えていることは、これからよく情報を集めて冷静に判断したい。
所有者とは私どももこれまでいろいろとコミュニケーションをとってきた。国との賃貸契約は来年3月末までで、所有者の真意についても改めてよく確認したい。その中であらゆる検討をしたい」
野田首相の「尖閣諸島はわが国固有の領土」云々にしても、日本政府の尖閣に関わる立場、公式見解を述べたものであろう。決して中国側の尖閣領有権主張に対する反論としての日本の領有権主張のメッセージを中国側に直接向けて発した発言ではない。
あくまでも石原都知事の尖閣土地購入方針に関わる、その範囲内の反応で終わっている。
《尖閣、中国に冷静対応促す=玄葉外相》(時事ドットコム/2012/04/18-19:33)
4月18日記者会見。
玄葉外相(中国側の反発について)「安定的な(両国関係の)発展に影響を与えることのないようにしなければいけない。お互いに大局的、冷静に対応していくということだ。
(野田首相が尖閣諸島国有化検討の考えを示したことについて)平穏かつ安定的に維持管理することについて、さまざまな検討を行うのは当然のことだ」
現状維持の両国関係、現状維持の尖閣維持管理を願っているだけで、中国側の領有権主張に対する日本側の、我が方にこそ正当性あるとする領有権主張にまで至っていない。
この現状維持意識からして中国を刺激したくないという気持が働いているのは明らかだが、その平穏無事を願う姿勢が逆に野田首相に対しても玄葉外相に対しても、中国側の領有権主張に対して沈黙を守る態度を自ずと強いているはずだ。
「尖閣諸島が国際法上も歴史的にみても、わが国固有の領土であることは明々白々」だから、反論する必要はないと自分たちの沈黙を正当化するかも知れないが、「わが国固有の領土である」あるならなおさらのこと、中国の反発、中国の領有権主張に対する日本側の領有権正当性のメッセージを直接中国に向けて発すべきだろう。
発しなければ、中国の領有権主張は永遠に続くことになる。
発することも、尖閣諸島を「わが国固有の領土」としていることにふさわしい扱いの一環ともなるはずである。
そういう毅然とした態度を取らずに平穏無事を願うだけの事勿れな態度に終始していたなら、尖閣周辺の海域に埋蔵しているとされる折角の海底資源を宝の持ち腐れとする“現状維持”が永遠に続くことになる。
資源小国から脱する可能性を含んだ折角のチャンスを海底資源と共に眠らせた状態に置くことになる。
消費税増税よりも海底資源を開発して国民生活に寄与することが先決であろう。「尖閣諸島に領土問題は存在しない」の問題回避策を断ち切って、中国のどのような反発にも妨害にも干渉にも立ち向かい、自国領土にふさわしい扱いとしての、あるいは行動としての開発政策を取ることによって停滞状態にある日本経済回復の刺激策ともなり得るはずだ。
東日本大震災被災地の復興にも役立つ資源開発となるだろう。
土地の名義が個人であるか、都であるか、国であるかなど、そのことだけで終わって、日本政府の対中態度が何ら変わらなければ、「固有の領土」にふさわしい扱いにまで進むことは期待不可能となり、名目だけの領土としての実質性しか備えないことになる。