野田首相がいくら腹を割ろうと尊敬しようと同じ増税率10%でも政治手法が違えばゴールは違う

2012-04-11 09:20:31 | Weblog

 ――野田首相は腹を割る相手を間違えている――

 自民党が4月9日(2012年)次期衆院選マニフェストを「日本の再起のための政策(原案)」と名づけて公表した。

 2010年参院選マニフェストにも消費税10%への増税を掲げていたが、今回の原案も10%を掲げている。

 〈4. 自助を基本とし、共助・公助が補う安心な社会づくり

 <持続可能な財政の確立>

 ・消費税(当面10%)を含む税制抜本改革と行財政改革の一層の推進による持続可能で安定した財政と社会保障制度の確立〉・・・・・

 してやったりと思ったのかどうか分からないが、民主党がこのことに素早く反応した。《消費税10%明記「高く評価」=自民党公約原案-安住財務相》時事ドットコム/2012/04/10-11:43)

 4月10日閣議後記者会見。

 安住財務相、「(両党間で)コンセンサスを得られるきっかけにできればと思っている。高く評価したい。

 (消費増税へ反対の意向を示している小沢一郎元代表に対して)正規の(党内)手続きを踏んだわけだから、民主党におられる以上、従ってもらわないといけない」

 相手は「正規の手続き」だと認めていない。

 安住財務相は自民党次期衆院選挙マニフェストの消費税10%増税方針を「高く評価したい」と言っているが、勘違いも甚だしいのではないのか。同じ消費税増税率10%でも、政治手法が違えば、ゴールは違ってくるからだ。

 3月31日(2012年)当ブログ記事――《野田消費増税から抜け落ちている2つの視点 - 『ニッポン情報解読』by手代木恕之》に次のように書いた。
 
 〈マスコミの大方がそうだが、自民党は2010年参院選で消費税増税10%の公約を掲げた。与党民主党と同じ10%で、両者の主張に基本的な差はないのだから、自民党が与野党協議に応じないのはおかしいといった論調が罷り通っている。

 民主党も自民党も消費税税収をすべて社会保障政策の財源とすることを約束し、忠実に実行したとしても、医療・年金・介護・子育てに向けた財源の配分の違いによっても、それらの各政策の有効性によっても(矛盾のない政策など存在しない)、さらに財政運営方法の違いから生じるカネ遣いの効率性の違いから言っても、社会保障政策に関わる成果を同じだとすることはできない。

 いわば同じ10%という税率のみで政治的な結果まで同じだと判断するのは早計というものであろう。〉・・・・・

 このブログ記事も同じ趣旨の展開となるが、野田首相までが自民党消費税10%増税方針に大歓迎のようだから、改めて一言言いたくなった。

 《首相 “谷垣氏と腹割って議論”》”(NHK NEWS WEB/2012年4月10日 18時44分)

 4月10日(2012年)内閣記者会のインタビュー。

 野田首相「谷垣総裁は誠実で正直な方で、国家国民のために大局に立って腹を割って議論すれば、お互いに納得できる答えが導き出せると思う。ライバル党の敵だとは思っておらず、先輩政治家としてリスペクト=尊敬の念が持てる方だ。

 (消費税増税)法案を提出した以上は、今の国会の会期の中で成立を期すことが一番最低の条件だと思う」

 「谷垣総裁は誠実で正直な方」だ、「先輩政治家としてリスペクト=尊敬の念が持てる方だ」とは、何と見当違いな、甘い認識の言葉だろうか。

 「国家国民のために大局に立って腹を割って議論すれば、お互いに納得できる答えが導き出せると思う」と言っているが、「お互いに納得できる答」は、それが可能だとしても、10%増税に賛成するところまでで、10%増税がどういう政治結果を生むかまで「お互いに納得できる答えが導き出せる」わけでは決してない。

 年金を例に取ると、次期衆院選自民党マニフェスト「日本の再起のための政策(原案)」は、〈持続可能な現行年金制度の基本の堅持と無年金、低年金対策など必要な見直し〉を範囲とする、現行制度の改善を方針としているのに対して民主党は「最低保障年金」の創設、「所得比例年金」と「最低保障年金」を組み合わせて一つとする公的年金制度の創設等、新しい制度へと姿を変えることを狙っている違いがある。

 当然、同じ消費税増税10%であっても、年金に関わる国民の受益の姿は自ずと異なったゴールを描くことになる。

 また生活保護に関しては民主党は生活保護給付費のカットには一切触れていないが、自民党は、〈年金とのバランスへの配慮などによる、生活保護給付水準の10%引き下げ〉云々と直接的なカットを謳っている違いがある。

 勿論、年金に関しても生活保護に関してもどちらの政策が国民により多くの利益を約束する結果を保証するかは分からないが、増税法案国会成立に民主党と自民党が手を握ったとしても、政権を担当している側の野田首相には納得できる答を導き出せ」るとしても、野党の立場として自分たちの政治を行うことができないゆえに自民党に「納得できる答を導き出せ」るとは限らないことは明らかである。

 要するに野田首相は谷垣総裁のことを「ライバル党の敵だとは思っていない」と言っているのとは正反対にあくまでもライバルであることに変わりはない。

 野田首相はあくまでも自らが政権担当することを前提として、その都合から発言しているに過ぎない。安住財務相の発言にも言えることだが、自分にとってよかれの思いが言わせている発言であろう。

 どこからどこまでも甘ちゃんにできているとしか見えない。

 消費税増税率が同じ10%であっても、政治思想や政治手法が違えば、政治結果にしても、負うべき「政治は結果責任」にしても違ってくるのだから、社会保障政策に限らず、外交・防衛等の主たる政策に関してもどちらの政党の政策が国民により多くの利益を約束するか、選挙を行なって国民の選択にこそ委ねるべきであろう。

 だが、菅前政権にしても、現在の野田政権にしても、民主党政権はマニフェストにない消費税増税を選挙による国民の判断にかけずに自分たちだけで決め、国民の選択の届かない国会でその法律を決めようとしている。

 もし野田首相が不退転を言い、正心誠意を言うなら、自民党共々消費税10%増税と社会保障政策やその他の政策をマニフェストに掲げてお互いに他党の政策に対する自党政策の優越性を訴えた上で選挙で競い、最終判断を投票という形で国民の選択に委ねるべきであろう。

 再度言う。野田首相は腹を割る相手を間違えている。


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