安倍晋三の加計学園監査報酬14万円:勤務実態がなければ、報酬を装った偽装献金とならないか

2017-05-31 08:47:19 | 政治

 安倍晋三が5月30日の参院法務委員会で、「当選した当初の数年間加計学園の監査を務め、年間14万円受け取っていた」ことを明らかにしたと同日付でマスコミが報じていた。質問者は民進党の小川敏夫。

 記事を読んだときの第一印象は監査という役職の報酬はそんなに安くないはずだということと国会議員を務めながら、実際に監査の仕事をしていたのだろうかという疑問であった。

 会計監査にしても業務監査にしても、そんなに簡単な仕事ではないからだ。当然、報酬はそれ相応に高額になるはずだ。

 勤務実態がないままに監査という役職で年間14万円の報酬を得ていたとしたら、つまり勤務実態がないからこそ、14万円程度だと言うことなら、その金額はある意味妥当と言えるが、逆に勤務実態がなければ、勤務させていることを装った政治献金という意味合いを持つはずだ。

 また、実際に14万円ポッキリの報酬だとは限らない。形式的な勤務に見せかけて14万円という金額に妥当性を持たせながら、裏でそれ以上のカネを支払っている場合もあるはずだ。

 ネットで調べたところ、「監査役.com」なるサイトに「監査役の報酬額の目安(年額)」が記載されていた。

  常勤監査役   500万~1500万円程度
 非常勤監査役   100万~500万円程度

 小川敏夫が勤務実態があったのかどうかまでを追及したのかどうかはどの記事を読んでも、何も書いてない。ネットから動画をダウンロードして、関係個所を文字に起こしてみることを思い至った。法務委員会でテロ等準備罪に関する審議がテーマであったが、持ち時間の最後の方で加計学園疑惑に質問を移した。

 小川敏夫「ところで総理、総理はこの加計学園、あるいは加計孝太郎と大変親しい関係だと伺っておりますけども、総理ご自身加計学園の役員を務めたことはございませんか。加計学園の役員をしたことはございませんか」

 安倍晋三「確か当選した当初でありますから、そうとう昔でありますが、ま、数年間ですが、監査、そういったものを務めたことはございます」

 小川敏夫「報酬を受けてますね」

 安倍晋三「これはですね、きちんと、これは報告をしているわけでありますが、1年間に14万円という報酬を受けたことはございます。ま、しかしこれはまさに小川委員の先程の言葉を借りればですね、印象操作であって、これは遙か昔のことでございます。

 そうしてですね、今まるで小川さんはですね、私が友人である加計さんのために便宜を図ったが如くの前提でですね、議論をしておられますが、ええー、これは極めて私はですね、恣意的な議論であろうと私は思います。

 先程申し上げたように私は国家戦略特区全体に於いてですね、岩盤規制を、これはまさに破っていかなければならない。岩盤規制という、今まで改革できなかったところですから・・・・・」

 以下長々と岩盤規制の改革について述べる。

 小川敏夫は報酬を受けていることを尋ねた。一言、「年間14万円受けていました」と答弁すれば、小川敏夫の質問に用を足すことができるのだから、当然、このことを答弁の最初に持ってきてから、「きちんと政治資金収支報告書に報告しています」と続けて、何も問題はないことを示すべきだが、常識的には自然な順序を逆にしている。

 逆にしなければならなかったのはどうしても正当性を最初に持ってきたかったからで、その裏の心理にしても、逆の状況にあるからだろう。逆の状況にあるから、「印象操作だ」、「加計さんのために便宜を図ったが如くの前提で議論をしている」だ、「恣意的議論だ」と余分なことを言い、聞かれもしない、しかも岩盤規制について国会答弁で何度も口にしている同じことを長々と説明しなければならなかった。

 ウソつきがウソでないことの前に言ったことのある同じ弁解を長々と述べるようにである。

 安倍晋三は岩盤規制の説明に続けて、次のようなことを口にしている。  

 安倍晋三「私は私の知り合いだからと言って、私が知り合いだから頼むといったことは一度もないわけでございます。そのことは何回も申し上げているわけであります。

 そうでないと言うのであればですね、小川さんはそれを証明して頂きたいと、こう思うわけであります」

 小川敏夫「総理、私はですね、総理が加計学園に関してですね、何らかの指示をしたと断定しておりません。ただ大きな疑問を抱(いだ)いております。

 ところで総理は私の方で立証しろと仰っている。別にこれ、裁判の場ではありませんから、私が立証する責任はありません」

 小川敏夫は加計学園の質問に入った最初のところで安倍晋三は自民党のトップだから、前川前文科省事務次官の証人喚問の手続きを進めるよう、党に指示する考えはないかといった趣旨の質問をしている。

 この質問に対して安倍晋三は長々と岩盤規制について述べた後の最後の最後に「参考人招致は委員会がお決めになることだ」の一言で逃げている。

 安倍晋三が小川敏夫に対して証明しろと言ったとき、「証明するためにも前川前事務次官の参考人招致は必要だ。参考人招致を我々は疑惑解明の重要な手がかりとしている。立証することを我々に預けながら、参考人招致には応じないということは矛盾していないか」となぜ追及しなかったのだろうか。

 小川敏夫は安倍晋三のかつての報酬年間14万円監査役の勤務実態を最後の最後まで聞きもしなかったし、時間切れが来て質問を終えることになった。結局のところ、森友学園疑惑追及と同じで、これまで繰返してきた質疑応答と本質的には何も変わらなかった。

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安倍首相官邸が絡んだレイブ隠蔽工作だとしたら、森友学園、加計学園に続く第三の安倍スキャンダルとなるが

2017-05-30 12:52:19 | 政治

 最近歳のせいで朝起きるのが遅くなって、ベッドから起き上がることができたのは6時近くになっていた。パソコンをつけて、自身のブログの大したこともないアクセス数を確かめてから、順番になっている「Googleニュース」に立ち寄ったら、ページトップが北朝鮮の弾道ミサイル発射の記事。次に「レイプ被害届出した女性が異例の素顔、実名公表会見」日刊スポーツ/2017年5月30日2時45分)という題名が目に入った。興味が湧いて、クリックしてみた。  

 レイブ実行者は元TBSワシントン支局長で安倍政権について書いた「総理」などの著書があるフリージャーナリスト山口敬之(51)。レイプ被害者は28歳の女性。記事には姓は書いてないが、名前は名が紹介されていて、ネット上には既に姓の方も出回っている。

 山口敬之についてもネットで調べてみると、安倍政権の御用ジャーナリストという役割での露出がかなり多い。だから、「総理」という書物を著作できたのだろうか。

 先ず記事に書いてあるレイプに至る経緯を取り上げてみる。

 2013年秋、ジャーナリストを志していた女性は山口敬之と大学の留学先である米ニューヨークで知り合い、就職相談のため連絡を取り合うようになった。

 2015年4月、山口敬之に誘われて東京・恵比寿の串焼き店、すし店の2軒をハシゴした。2軒合計でビール・コップ2杯、ワイン・グラス1杯、日本酒2合をそれぞれ飲み合ったという。

 異なる種類のアルコールを飲むチャンポンは同じ種類のアルコールを同量飲むよりも酔いが早く回り、時と場合で悪酔いすると言うことは一般的に知られていて、男がレイプ目的で女性を飲食店に誘うとき、チャンポンを勧めることが多い。

 2軒目に入り約1時間後、突然めまいがしてトイレに立ち、記憶が途絶えた。目が覚めたのは翌午前5時頃。ホテルのベッドで裸にされていて、上に山口敬之が跨っていた。

 以上がレイプに至る経緯となっている。

 女性は薬を飲まされたと主張。その理由として、「お酒で記憶がなくなったことはない。強いと周りから言われる」ことを挙げているとのこと。

 記事は、〈その後に調査した結果〉と書いているが、女性自身と女性の弁護士による調査なのか、次の調査結果を挙げている。

 2人を乗せたタクシー運転手は女性は何度も「近くの駅で降ろして」と主張したが、山口敬之が聞き入れず、ホテルに向かうよう指示し、ホテルに到着後は山口敬之が女性を抱えて降車したと証言。

 この女性の記者会見に同席した弁護士はホテルの防犯カメラは山口敬之が女性を肩で抱えている姿が映っていて、女性は自分で立つことができない状態だったと証言。

 次に警察の捜査とその結末の経緯。

 2015年6月8日、被害届を受理した高輪署所属担当警察官が逮捕状を取って成田空港で帰国する山口敬之を逮捕すべく待ち構えていた。だが、逮捕を中止。

 担当警察官「警視庁幹部の指示で逮捕を取りやめた」

 捜査は警視庁に移る。

 山口敬之の弁護人からの申し入れと捜査員からも示談を勧められた。

 女性「警視庁の方と、警視庁の車で、警視庁の方が紹介する弁護士のところでも示談を勧められた」

 記事には書いてないが、示談を断ったのだろう。

 2016年7月、東京地検は山口敬之を嫌疑不十分で不起訴とした。

 示談が成立しなかったから、東京地検は不起訴という手続きまで進むことになった。成立していたなら、一般的には起訴までに告訴の取り下げという手続きを取ることになるから、不起訴という段階にまで進まない。

 以上、記事から、レイプに至る経緯と警察の捜査とその結末の経緯を拾い出してみた。

 これらの経緯を自分なりに読み解いてみることにする。

 女性も逮捕直前の逮捕状執行停止に「私の知り得ない力があったのだと思う」と述べていることを記事は紹介しているが、逮捕状執行停止後に高輪署管内のレイプ事件でありながら、警視庁管轄という経緯を取ったのは““何らかの力””が働かなければ、一般的にはあり得ないはずで、この経緯は裁判所が逮捕状を発行、逮捕直前の逮捕状執行停止に継続させた措置であろう。

 いわば““何らかの力””が逮捕状の執行を停止させ、同じ““何らかの力””が事件の扱いを高輪署から警視庁管轄とした。

 その理由は“何らかの力”にとって高輪署よりも警視庁の方が影響力を行使しやすいということ以外にないはずだ。その影響力の中には秘密を守らせ安いという要素も入っているはずだ。

 また女性に対して山口敬之の弁護人と捜査員が示談を勧めたということは山口敬之自身がレイプを犯した事実を認めていることを前提としていることになる。 

 勿論、レイプは犯していないが、訴えられて裁判沙汰になった場合、世間に知られて恥を曝すことになるから、示談を選んだという理由を口にすることができるが、レイプしていないが、賠償金は支払いますといった示談は存在しない。相手の女性がレイプされたと主張している以上、そのような示談は認めないだろう。

 多くの場合がそうであるように示談によって事を小さくする意図が山口敬之にはあったはずで、事を小さくする意図自体がレイプを前提としていることになる。

 女性が「警視庁の方と、警視庁の車で、警視庁の方が紹介する弁護士のところでも示談を勧められた」と言っていることにも、“何らかの力”が働いていた形跡を見ることができる。

 一般的には弁護士の選任は本人に任せるものだが、任せた場合、“何らかの力”にとって影響力を行使できない恐れが出てくる。下手をすると、「裁判に訴えるべきだ」といった、“何らかの力”にとっては不穏な危険人物以外の何者でもない弁護士を選んでしまう危険性も見越さなければならない。

 このような意に反する結末を前以って避けて自分たちで選任すれば、影響力を行使できる弁護士を選ぶことができる。だから、「警視庁の方と、警視庁の車で、警視庁の方が紹介する弁護士のところ」へと行かされたと見るべきだろう。

 そうすれば、“何らかの力”が望む、そのことは山口敬之が望む、その望みを受け入れた望みだが、示談の方向に誘導できるという思惑を少なくとも抱いていたはずだ。

 どう読み解いても、山口敬之が女性をレイプしたという事実しか出てこない。そしてそのレイプを“何らかの力”が働いて逮捕を免れさせ、警視庁の取調べでレイプと認定する事実は存在しないとした調書をデッチ上げて、その調書を検察に上げて、検察が不起訴を決定した。
 
 この“何らかの力”についてネット上では週刊新潮がこの女性レイプに関して山口敬之に取材依頼書のメールで送付したところ、山口敬之から次のようなメールが届いたとされている。

 〈北村さま、

 週刊新潮より質問状が来ました。
 ■■の件です。取り急ぎ転送します。〉

 ■■は隠し文字で、実際のメールには女性の本名が記されているそうだ。

 週刊新潮はこの「北村さま」を"官邸のアインヒマン"の異名をもつ安倍首相の片腕、北村滋内閣情報官のことだと指摘しているという。

 内閣情報官とは内閣官房に置かれていて、情報収集活動などを統括する役目を担っているという。内閣官房の長は内閣総理大臣安倍晋三で、ナンバー2が官房長官の菅義偉である。

 そして特定秘密保護法案の作成に関わった人物だとネット上では紹介されている。

 ネットで北村滋の経歴を調べてみた。1956年12月生まれの64歳。東大学法学部卒。1980年警察庁に入る。首相秘書官として第1次安倍内閣時代の安倍晋三を補佐した経験も持つ。

 そして現在は安倍晋三と菅義偉の下で働く内閣情報官。

 警視庁を含めて全国の警察の頂点に位置する警察庁の元警察官僚であり、現在安倍晋三や菅義偉と意思疎通を行い得る人物ということなら、警視庁を動かす程の影響力ある、“何らかの力”を持っている人物と見立てても、何ら不思議はないし“何らかの力”に符合する存在とすることができる。

 問題は北村滋が単独で“何らかの力”を働かせたのか、安倍晋三や菅義偉が関わっていた共同作戦なのかである。

 山口敬之著作の『総理』は安倍晋三を扱った書物で、表紙は安倍晋三が大きなテーブルに尻を預けて電話する写真が載せられていて、その書物を山口敬之自身が紹介するサイトには、「憲法改正等の課題と総理の言動が不可分なうちに国民に伝えることが自分の仕事です」と書いている。

 この言葉は安倍晋三の政治思想に対する山口敬之の親密さを物語っている。この親密さが両者の人間関係にも及んでいたとしたら、その人間関係が内閣情報官の北村滋を忖度させて山口敬之の頼みを聞いたということもあり得るし、安倍晋三自身が山口敬之との人間関係を重んじて北村滋を動かしたということも想像できる。

 勿論、想像の域を出ないが、後者であるなら、森友学園、加計学園に続く第三の安倍スキャンダルとなる。

 この事件にはオマケがある。

 山口敬之が自身のフェイスブックにこのレイプ事件に関わる弁明を投稿したところ、安倍昭恵が「いいね!」のボタンを押したとネット上では流布している。

 安倍昭恵はいわば弁明を評価した。弁明はレイプを犯していないこと、無実であるゆえその後の逮捕状発行に対して逮捕直前の逮捕状執行停止、不起訴処分という流れを当然視する文言で成り立たせていると思うが、安倍昭恵の評価は以上の流れに添い、当然視に味方するものとなる。

 安倍昭恵のこの経緯も、結果的には“何らかの力”によってもたらされた展開に合わせた評価と言うこともできる。

 女性は昨日5月29に東京地検の不起訴処分を不服として検察審査会に審査を申し立てたということだが、もし政権中枢から“何らかの力”を放つことができるようなら、検察審査会の審査とて安心はできない。

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安倍晋三は北朝鮮に「対話の試みは時間稼ぎに利用されてしまった」と言っているが、利用させた筆頭は本人

2017-05-29 12:33:56 | 政治

 2017年5月26日、27日と2日間イタリアのシチリア島はタオルミーナで行われたG7首脳会合ではテロ問題と共に北朝鮮の脅威が最重要課題として取り上げれたようだ。会合終了後の安倍晋三の「内外記者会見」首相官邸サイト)での発言もテロと北朝鮮の脅威に対する言及が多くを占めている。  

 北朝鮮に関してどのようなことを言っているか、見てみる。「自由、民主主義、人権、法の支配。こうした普遍的な価値」を脅かす存在の一つとして北朝鮮を挙げている。
 
 安倍晋三「今そうした価値がかつてない挑戦を受けています。北朝鮮が国際社会の度重なる警告を無視し、核・ミサイルによる挑発的行動をエスカレートさせています。先週発射されたミサイルの軌道は高度2000キロを超え、ユーラシア大陸から太平洋に至る広大な地域を射程にとらえていることが明らかになっています。

 この20年以上私たちは北朝鮮問題の平和的解決を模索してきました。もちろん今もそうであります。しかし、これまでの現実を見れば、対話の試みは時間稼ぎに利用されてしまった。北朝鮮は国際社会による平和的解決への努力をことごとく踏みにじり、ICBM(大陸間弾道ミサイル)、核兵器の開発を続けてきました。

 この1年余りの間に2度の核実験を行い、30発を超えるミサイル発射を強行しました。その全てが国連安保理決議に明白に違反しています。国際的な無法状態が、残念ながら常態化しているのです。

 これは、世界中で息をひそめながら核・ミサイル開発への野心を持つ勢力に誤ったシグナルを送りかねない。この問題をこのまま放置すれば安全保障上の脅威があたかも伝染病のように世界に広がる危険性を帯びています。

 もはやこの問題は東アジアにとどまりません。世界全体の脅威であります。そのことを、今回、G7のリーダーたちと共有しました」

 最後の「もはやこの問題は」以下云々は北朝鮮の軍事状況が東アジアにとどまることなく「世界全体の脅威」となっている、この認識は安倍晋三のリーダーシップによってG7のリーダーたちの間で共有されるに至ったと言うことなのだろう。

 そしてG7が北朝鮮に対して制裁等の圧力の強化で一致したことを指摘している。

 安倍晋三「サミットでも、北朝鮮は即時かつ完全に全ての核・ミサイル計画を放棄しなければならないとG7は明確に合意し、そのためには制裁などの措置を強化する用意があることも完全に一致しました。拉致問題の即時解決に向けた決意も共有しました」

 制裁への言及と併行させてトランプが手を付け、安倍晋三が追随した中国とロシアへの協力の呼びかけにも言及している。

 安倍晋三「今こそ国際社会は団結しなければなりません。とりわけ、北朝鮮と国境を接する中国やロシアとの協力が不可欠です。私はこの機会に改めて中国やロシアを始め国際社会全体に結束と行動を呼び掛けたいと思います。

 そして、この北朝鮮問題を今回のサミットにおいて最優先事項と位置付け、力強いメッセージをまとめてくれた、議長であるジェンティローニ首相のリーダーシップに感謝したいと思います」

 安倍晋三は北朝鮮の脅威を自身のリーダーシップによってG7のリーダーたちの間で共有されるに至ったとし、脅威除去には中国やロシアとの協力が不可欠だと提案しているが、G7で発揮したはずのそのリーダーシップがそれ程のことではないことが冒頭発言後の記者との質疑応答で明らかになる。

 リカルディANSA通信記者「総理は、アジアにおける緊張、特に北朝鮮情勢をめぐる緊張を解決するために中国とロシアの協力が不可欠であると述べ、両国にメッセージを送りました。しかし、G7コミュニケ(声明文)の中で北朝鮮に関する12番には、両国への言及がありません。これに関して、総理は少し失望されていますか。今回のG7でもっと多くを引き出したかったと感じていますか」

 安倍晋三「今回はG7において初めて北朝鮮の問題が主要課題として、最重要優先課題として取り上げられたわけであります。そして私からも時間を掛けて、北朝鮮の脅威、問題点、どのようにG7として対応していくべきかお話しました。各国のリーダーたちからもそれぞれ意見の表明があった。北朝鮮は昨年以降、2回の核実験を強行するとともに、30回を超える弾道ミサイルの発射を強行しました。

 その脅威は、新たな段階に入っています。父親の金正日総書記時代の18年間に発射したミサイルの数は16発でしたが、その倍以上の数を金正恩委員長時代に、この1年余りで発射をしたということになるわけであります。

 北朝鮮が危険な挑発行為を中止し、その全ての核ミサイル計画を破棄するよう、国際社会全体が結束して行動しなければならないわけであります。今回、このG7において結束して、しっかりと北朝鮮に圧力を掛けていくという点において結束できたことは極めて意義があると思っています。そして国連の場においても、G7で協力して厳しい安保理決議の採択に向けて成果を出していきたいと思っています」

 リカルディ記者はG7コミュニケの中には北朝鮮問題の解決に向けた一つの方法として冒頭発言で示した中国とロシアに対する協力の呼びかけに関わる文言が入っていないがと指摘してから、「総理は少し失望されていますか。今回のG7でもっと多くを引き出したかったと感じていますか」との表現で、コミュニケの纏め方に対しての安倍晋三のリーダーシップの過不足についての感想を尋ねた。

 ところが我が安倍晋三は国会答弁で質問には全然答えずにその場を遣り過すよく使う手をここでも遺憾なく発揮して、冒頭発言で述べた北朝鮮の脅威を繰返す誤魔化しの手に出た。流石である。

 外務省のサイトから記者指摘の個所がどのような文言となっているか、「G7 タオルミーナ首脳コュニケ」から調べてみた。   

 〈12.我々は,不拡散及び軍縮に関するコミットメントを改めて表明する。北朝鮮は,国際的な課題における最優先事項であり,度重なる,また,現在進行中の国際法違反を通じて,国際の平和及び安定並びに不拡散体制に対し,なお一層,重大な性質を有する新たな段階の脅威となっている。北朝鮮は,即時かつ完全に全ての関連する国連安全保障理事会決議を遵守するとともに全ての核及び弾道ミサイル計画を,完全な,検証可能な,かつ,不可逆的な方法で放棄しなければならない我々は,北朝鮮による核実験及び弾道ミサイルの発射を最も強い言葉で非難し,これらの目的を造成するための措置を強化する用意があり,国際社会に対し,関連する国連安全保障理事会決議の持続的な,包括的な,かつ,完全な履行を確保するための努力を倍加するよう強く呼びかける。我々は,北朝鮮に対し,拉致問題の即時解決を含め,人道及び人権上の懸念に対処するよう求める。〉

 要するに安倍晋三はコミュニケに北朝鮮問題解決に向けて中国やロシアに対して協力を呼びかける文言を盛り込むことができなかった。自身のリーダーシップの程度を知られることになるから、例の如くに都合の悪いことは答えないという手を使った。

 安倍晋三は北朝鮮に対する「対話の試みは時間稼ぎに利用されてしまった。北朝鮮は国際社会による平和的解決への努力をことごとく踏みにじった」と言っている。

 確かに「北朝鮮は国際社会による平和的解決への努力をことごとく踏みにじった」。だが、「対話の試みは時間稼ぎに利用されてしまった」と言っていることに関しては、“利用する側”の問題だけではなく、“利用されてしまう側”にも問題があるはずだ。

 安倍政権は2014年5月、北朝鮮が拉致被害者や拉致の疑いのある特定失踪者を含む域内の日本人の安否について包括的かつ全面的な再調査を約束したことを受けて、北朝鮮側が再調査の特別調査委員会を発足させ、その活動を開始し、そのことを日本側が確認した時点で独自に科してきた人的往来や送金など経済制裁の一部を解除する方針を決め、同年7月4日、確認できたとして制裁解除を決定した。

 ところが制裁解除決定の5日後の7月9日早朝に北朝鮮は複数の弾道ミサイルを日本海に向けて発射、安倍政権は抗議したものの、慎重に状況を見極めるという態度を取り、7月13日に安倍晋三は「先般の合意に従って、北朝鮮に調査を進めていくよう求めていきたい。問題解決に向けた我々の取り組みにミサイル発射が影響を及ぼすことはない」(時事ドットコム)と言明、ミサイル発射に対する抗議を無効化した。

 拉致調査の前にはミサイル発射は問題ありませんよと言ったも同然である。

 北朝鮮側は1回目の調査結果を夏の終わりから秋の初め頃に報告するとしていたが、拉致被害者に関しては拉致されたことの情報がどこでどう漏れるか警戒するために監視下に置いていて常時把握していなければならないはずだから、それ程にも時間がかかることに疑わなければならなかったはずだが、安倍政権は疑わずに相手の言った時期まで報告を待ち続けた。

 ところが秋の初めが過ぎても報告が入らない。2014年9月末に中国で日朝政府間協議の開催を求めて日本側から問い合わせると、北朝鮮は「調査は1年程度を目標としており、現在はまだ初期段階にある」と回答。そして調査の詳細はピョンヤンで特別調査委員会のメンバーから直接聞くよう求めてきた。

 安倍政権は2014年10月末に外務省の幹部を団長とするメンバーをピョンヤンに派遣、北朝鮮側の回答を官房長官の菅義偉が2014年10月31日の午前の記者会見で発表している。

 菅義偉「北朝鮮からは拉致被害者の調査では、『個別の入境の有無や経緯、生活環境などを調査している。被害者が滞在した招待所の跡などの関連場所を改めて調査すると共に新たな証人や物証などを探す作業を並行して進めている』と説明があった。

 日本側からは、どのような方法で調査を進めているのか、さまざまな角度から詳細な質問を行ったが、北朝鮮側からは、『これから調査を深めていく段階で、途中段階で憶測を招くような説明は避ける。現時点で客観的で明白な資料は発見できていない』という説明があった」(NHK NEWS WEB

 北朝鮮側の説明は拉致被害者は監視下に置いてなく、一般の北朝鮮人に混じって生活していることになる。拉致被害者の口から拉致の状況が第三者に漏れて、それが情報となって北朝鮮人の間に広まることを想定も警戒もしていないことになる。国民の福祉よりも国家権力を守ることを第一意義としている独裁権力が自らの存在を危うくする情報管理を怠っていることなど常識的には考えることはできない。

 安倍晋三は10月31日の衆議院特別委員会で次のように答弁している。

 安倍晋三「拉致の実行を行った特殊機関に対しても、しっかりとした徹底的な調査が今度は行われるということだ。北朝鮮側からは、調査の信頼性を確保するための客観的かつ科学的な方法で調査し、過去の調査結果にこだわることなく、調査を深めていくと説明があった。わが方としては、北朝鮮はゼロベースで調査を始めるものと理解している」

 北朝鮮からの第1回目の報告は2014年中なく、北朝鮮との政府間協議再開から1年経過の3月30日になっても梨の礫であった。にも関わらず安倍晋三は2015年3月31日の閣議で北朝鮮に対する日本独自の制裁措置のうち、来月の4月13日に期限が切れる、輸出入の全面禁止と人道目的を除く北朝鮮籍船舶の入港禁止の措置をさらに2年間延長することを決定した。

 この決定をエサに拉致解決という魚を釣りたかったのだろうが、安倍政権は北朝鮮に対してこの当時全ての拉致被害者の即時帰国と真相究明、実行犯の引き渡しを要求していた。

 拉致は金正日が首謀者であることが既に広く知られていた。当然、金正日の命令で行われた拉致であるなら、実行犯は拉致に関わる権力中枢の動静を知り得ている可能性がある。そのような実行犯を金正日にしても金正恩にしても日本側に素直に渡すか疑わなければならなかったはずだ。

 日本側の実行犯の引き渡し要求に対して北朝鮮側が独裁権力維持とその権力正当性の観点から実行犯の引き渡し要求に応じることができなかったなら、実行犯の引き渡し要求を撤回しなければ、拉致問題は前へ進まないことになる。

 2015年7月3日、北朝鮮が拉致被害者らの調査を開始してから7月4日で1年となるのを前に北朝鮮当局が「誠意を持って調査を行っているが、今しばらく時間がかかる」と調査結果の報告の延期を政府に連絡してきた。

 安倍政権は延期を受け入れなければ、北朝鮮は調査を打ち切るかもしれない懸念から延期を受け入れる以外の選択肢はない身動きが取れない状態に置かれた。
 
 2015年9月末になってマスコミは複数の日本政府関係者の話として昨年からの日朝非公式協議で北朝鮮側が「8人は死亡。4人は入国していない」とした当初の調査結果は現段階では覆っていないとしていることを伝えた。

 拉致問題が停滞する中、北朝鮮は2016年1月に入って核実験を行い、2月に長距離弾道ミサイルの発射を強行、安倍晋三も国連決議違反として国際社会と協調して制裁を加えなければならない立場上、一旦は解除した日本独自の制裁を再設定せざるを得なくなり、制裁強化の準備を指示することになった。

 当然、北朝鮮は拉致調査の中止で応じることになり、拉致問題はウヤムヤとなった。

 拉致交渉も一つの対話の試みに入る。だが、そのような対話の試みも「時間稼ぎに利用された」だけで終わった。安倍晋三と言う“利用されてしまう側”にも問題があったということである。

 そもそもからして日本側が拉致解決に前のめりになり、一部制裁を解除したことにアメリカは懸念を示した。

 2014年7月3日。

 ローズ大統領副補佐官「オバマ大統領も日本政府が拉致問題の解決に重点を置いていることはよく理解しているが、北朝鮮の核問題に関して多国間で科している制裁を犠牲にすべきではない。われわれは結束して圧力をかけ続ける必要がある」

 「制裁解除」によって一時的にミサイル開発資金・核開発資金を提供したことになっただろうことも、北朝鮮による拉致交渉の利用に入るはずだ。

 一度「ブログ」(2016年9月10日 )に書いたことだが、安倍晋三は拉致問題解決の有利性を考えて、金正日から金正恩への父子独裁権力の継承を一度は歓迎したのである。   

 2012年8月30日、フジテレビ「知りたがり」

 安倍晋三「ご両親が自身の手でめぐみさんを抱きしめるまで、私達の使命は終わらない。だが、10年経ってしまった。その使命を果たしていないというのは、申し訳ないと思う。

 (拉致解決対策として)金正恩氏にリーダーが代わりましたね。ですから、一つの可能性は生まれてきたと思います」

 伊藤利尋メインキャスター「体制が変わった。やはり圧力というのがキーワードになるでしょうか」

 安倍晋三「金正恩氏はですね、金正日と何が違うか。それは5人生存、8人死亡と、こういう判断ですね、こういう判断をしたのは金正日ですが、金正恩氏の判断ではないですね。

 あれは間違いです、ウソをついていましたと言っても、その判断をしたのは本人ではない。あるいは拉致作戦には金正恩氏は関わっていませんでした。

 しかしそうは言っても、お父さんがやっていたことを否定しなければいけない。普通であればですね、(日朝が)普通に対話していたって、これは(父親の拉致犯罪を間違っていたと)否定しない。

 ですから、今の現状を守ることはできません。こうやって日本が要求している拉致の問題について答を出さなければ、あなたの政権、あなたの国は崩壊しますよ。

 そこで思い切って大きな決断をしようという方向に促していく必要がありますね。そのためにはやっぱり圧力しかないんですね」――

 似たような発言を他でも繰返している。

 要するに日本人拉致犯罪は金正日の首謀事犯(刑罰に処すべき行為)だから、抱えている自身にとっての不都合な部分まで明らかにすることができないために全面的な拉致解決にまで進めることができなかった。

 但し息子の金正恩は金正日の犯罪に関わっていないから、金正恩の政権を維持するためには父親の拉致犯罪を間違っていたと否定し、全て明らかにすることで日本からの経済援助を受けることができる拉致問題の全面解決に努めるべきで、そのように仕向けていくとした。

 つまり日本人拉致の首謀者である金正日体制が続いたなら、自身が犯した国家犯罪だから、全てを明らかにしなければならない全面的解決は望めないが、その息子であっても犯罪に関係してない金正恩なら、全面解決の可能性に賭けることができると、その独裁権力の父子継承を歓迎したのである。

 但し金正恩は父子権力継承の正統性を父親金正日の血に置いている。その血はその父親金日成から引き継いだものだが、当然、その血はありとあらゆる正義を体現しているものと見做さなければ、権力継承の正統性に瑕疵が生じることになる。

 金正日の血は正義であり、正義とは金正日の血を意味し、その存在そのものを正義とすることになる。そうすることによって権力継承そのものを正義と価値づけることができ、そこに正統性が生まれる。

 存在そのものを正義とする以上、金正日が自らの最優先の政治思想として掲げていた、金正恩に対する「遺訓」としている、すべてに於いて軍事を優先させる「先軍政治」も含まれることになる。

 また、権力を父子継承するについては、金正日独裁体制を支えた北朝鮮軍部や朝鮮労働党の側近を継承し、自らの体制としなければならない。父親金正日の正義を支えた体制でもあるからだ。

 かくかように独裁体制下の権力の父子継承とは父親の正義をその子が受け継いで自らの正義とすることを意味することになって、父親の犯罪を暴くことは父親の正義をニセモノとすることであり、結果的に父親から受け継いだ自らの権力の正統性をそこに置いている正義を自ら否定することになる。

 金正恩が決して出来ないことを安倍晋三は期待し、2011年12月17日に北朝鮮の独裁権力の座に就いた金正恩のその権力継承を2012年当時は歓迎していたのである。

 2014年当時まで北朝鮮としては決して飲むことはできない拉致実行犯の引き渡しを求めていたことまで重ね合わせて安倍晋三の外交能力がこの程度でしかなかったことを照らし合わせてみると、ミサイル開発や核開発を含めて何事につけても、金正恩という“利用する側”の問題だけではなく、安倍晋三という“利用されてしまう側”にも問題があったはずで、その筆頭は安倍晋三であるはずだ。

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安倍晋三G7日米会談でTPOを弁えずにトランプに「今回はゴルフができなくて残念」と冗談を言う罰当たり

2017-05-28 11:48:10 | 政治

 2017年5月22日午後10時33分(日本時間23日午前6時33分)夜、イギリスのマンチェスターにあるマンチェスター・アリーナで米国人気女性シンガーソングライター、アリアナ・グランデの公演終了後に観客が帰り始めたエントランス・ロビー付近で自爆テロが発生、警察発表で観客と実行犯1名を含む計23名が死亡、少なくとも120名が負傷した。死亡した犠牲者の中で最も若かったのは8歳の少女だったという。(Wikipedia

 アリアナ・グランデ自身がまだ23歳で、犠牲者は若い年齢層のファンが多かったということだ。

 2日後の5月25日午前10時半近く、安倍晋三はイタリアは南部のシチリア島のタオルミナで開催されるG7首脳会合に向けて羽田空港から出発する際、「記者会見」を開いた。

 「自由、民主主義、人権、法の支配といった普遍的価値で結ばれたG7の強い結束を示していく」

 「北朝鮮の問題についてG7で一致結束して毅然として対応していく。そのための議論をリードしていきたい」

 「如何なるテロもG7の強い結束とそして意思を挫(くじ)くことはできない。先のマンチェスターにおける悲惨なテロを受けて、G7として断固としてテロに立ち向かっていく。その決意を表明したい」

 等々、勇ましい言葉を並べた。

 「G7として断固としてテロに立ち向かっていく」という強い言葉はテロに対する激しい憎しみと同時に犠牲者への深い祈りと誓いでもあったはずだ。

 なぜなら、マンチェスター・アリーナ自爆テロ当日の5月23日午前、首相官邸で行われた自民党サイバーセキュリティ対策推進議員連盟との面会の中で、「お亡くなりになられた方々にお悔やみを、負傷された方々にお見舞いを申し上げたい。テロは断じて許されない。どんな理由があれ、テロを根絶していくために、国際社会としっかり連携していきたい」(産経ニュース)と発言していたからだ。   

 5月26日~27日のG7首脳会合開催中の5月26日午前10時35分頃から約55分間、安倍晋三はトランプと日米首脳会談を開いている。「外務省」のサイトに記者が入ることを許される会談冒頭の発言要旨が記載されている。   

 〈トランプ大統領から,安倍総理は私の友人であり,いい関係を構築することができた,北朝鮮について話すこともあるし,テロの問題について話すこともある,特に北朝鮮の問題は世界的な問題であり,絶対解決しなければならない問題である旨述べた。

 これに対して安倍総理から,再会でき嬉しい,トランプ大統領の中東とNATO訪問の成功に祝意を表する,トランプ大統領が世界の安全保障に力強くコミットしている姿勢を示したことを評価している,国際社会の課題について日米の連携を確認したい旨述べた。〉――  
 
 安倍晋三は「トランプ大統領が世界の安全保障に力強くコミットしている姿勢を示したことを評価している」と述べた。「世界の安全保障」と言うとき、安倍晋三は念頭にテロの問題や北朝鮮の核・ミサイル開発、中国の海洋進出等を置いていたはずだ。これらの問題が深く「世界の安全保障」に関わっているという思いで。

 念頭に置いていなければ、G7首脳会合に向けて羽田空港から出発する際に記者会見で発言した言葉がウソになる。一貫性のない、単なるお題目に過ぎなかったことになる。

 次の2017年5月26日付「産経ニュース」記事によると、外務省の記事には書いてなかったが、安倍晋三は会談冒頭で巧みな冗談を言ってトランプを和ませたようだ。  

 記事題名は、《【日米首脳会談】安倍晋三首相、ジョークでトランプ氏の笑いをとる》となっている。
 
 先ず、〈トランプ氏は会談冒頭で北朝鮮の脅威を取り上げ、「世界的な問題だ」と指摘。核問題の解決に向けた決意を表明し、会談に同席した両政府関係者の表情は一気に厳しくなった。〉と紹介。

 続けて、〈安倍首相の発言の順番となり、首相はあいさつもそこそこに「1つ残念なことは、今回はゴルフができないことです」と切り出した。トランプ氏の真剣な表情は一気に崩れ、米政府関係者に満面の笑顔を向けた。〉

 そしてこの発言がなぜ冗談になるのか記事は次のように解説している。

 〈2人は2月の首脳会談後に行ったゴルフで、緊密な関係を築いた経緯がある。トランプ氏は安倍首相のジョークに気をよくしたのか追加発言を求め、「われわれは友情を築き上げた」と相好を崩した。〉――

 この記事には書いてないが、外務省の記事では上に上げたようにトランプは北朝鮮とテロの問題について取り上げている。勿論、テロの問題については3日前のマンチェスター・アリーナ自爆テロを強く意識していたはずだ。

 中東歴訪中のトランプがこの自爆テロを受けて、「美しく罪のない多くの若者が、生きて自分の生活を楽しんでいたのに、あまりに大勢が、凶悪な人生の負け犬たちに殺されてしまった」(BBC日本ニュース)と非難しているからだ。  

 貧困や差別といった経済発展や社会の矛盾が温床となっているテロでもあるはずだが、「凶悪な人生の負け犬たち」と本人にのみ責任を帰す単細胞はさすがトランプらしいが、いずれにしても安倍晋三に対して「テロ」という言葉を口にしたときマンチェスター・アリーナ自爆テロを念頭に置いていなければ、テロ非難の言葉はお題目化する。

 そして安倍晋三自身もG7首脳会合に向かう羽田空港でマンチェスター・アリーナ自爆テロを念頭に「G7として断固としてテロに立ち向かっていく」とテロに対する憎しみと同時に犠牲者への祈りと誓いを口にしている以上、日米首脳会談冒頭でのでトランプの北朝鮮問題やテロ問題の発言を受けて、これらが世界の安全保障に差し迫った緊急の課題として敏感に反応しなければならなかったはずだ。

 特にマンチェスター・アリーナ自爆テロでは自爆犯1名を除いた犠牲者22名の内、半数を1名超える12名は16歳未満の子どもだったと「Wikipedia」は伝えていて、安倍晋三はその情報をG7首脳会合に向けて羽田空港から出発するまでの間に受けていなければならない。

 だが、安倍晋三はトランプとの首脳会談での冒頭発言で、〈あいさつもそこそこに「1つ残念なことは、今回はゴルフができないことです」と切り出した。〉

 要するにトランプが安倍晋三に対して最初に持ってきた北朝鮮問題やテロ問題の世界の安全保障に差し迫った緊急の課題を差し置いてTPOを弁えずに今年2月の日米首脳会談後に行ったゴルフに引っ掛けて、今回はそれができないのは残念だと、ゴルフを最初の話題に持ってきた。

 安倍晋三は羽田空港で「自由、民主主義、人権、法の支配といった普遍的価値」を口にしている。これらの普遍的価値観の破壊要素としてテロや北朝鮮のミサイル開発・核開発を可能としている独裁政治を置いているはずだ。

 当然、普遍的価値を守り抜かなければならない民主国家の指導者として普遍的価値の破壊に対しては怒りを持ち、普遍的価値の擁護に関しては使命感を持つ、そのような感受性が敏感であるかどうかの程度が「テロに立ち向かう」とか、「北朝鮮のミサイル発射は断じて容認できない」等々と言っていることの実行性・言行一致性に関係してくることになるために例え首脳会談でテロや北朝鮮問題を議論の本題としたとしても、それで許されるわけではない。

 国家指導者に於いて一致していないと、人任せとなる。あるいは国家安全保障政策に於いて優先順位の後位に置かれることになる。

 要するにトランプとの首脳会談の冒頭の場面でトランプが北朝鮮問題やテロの問題を口にしたにも関わらず、安倍晋三にとっては現在普遍的価値観の破壊要素となっていると同時に世界の安全保障上の差し迫った問題となっているテロや北朝鮮問題よりもゴルフの話題がより敏感な問題であった。

 では、マンチェスター・アリーナ自爆テロ2日後5月25日に羽田空港で「普遍的価値」を口にしたこともそうだが、「如何なるテロもG7の強い結束とそして意思を挫(くじ)くことはできない。先のマンチェスターにおける悲惨なテロを受けて、G7として断固としてテロに立ち向かっていく。その決意を表明したい」という発言は何だったのだろう。

 この発言にテロに対する激しい憎しみと同時に犠牲者への深い祈りと誓いを込めていたはずだが、何も込もっていなかったのだろうか。込もっていなかったとしたら、羽田空港での発言はいつも口にする言葉を単に並べ立てただけのお題目となる。

 産経ニュース記事が〈トランプ氏の真剣な表情は一気に崩れ、米政府関係者に満面の笑顔を向けた。〉と書いていることからして冗談は効果を見せた。この冗談によって安倍晋三はトランプをして2月首脳会談時の二人の親密さを思い出させたことになり、同時にトランプと共にその親密さを共有する演出に成功したのだ。

 いわばトランプを笑わせて、改めて気に入られた。TPOを弁えなかったこと自体が既に罰当たりな話だが、弁えなかったのは相手から好意を得ることだけを優先させたからだろうが、そのような冗談は多分に媚びの意識から発するものだと相場が決まっていて、罰当たりに重なる罰当たりとなる。

 安倍晋三はゴルフに関しての罰当たりは今回が初めてではない。2014年8月20早朝の広島豪雨時、土砂災害が発生して死者が出ているにも関わらず夏休みのゴルフを続ける罰当たりを既に演じている。

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菅義偉の「総理のご意向」文書「信憑性なし」は自分たちの一方的な主張、前事務次官の主張と突き合わすべき

2017-05-27 11:49:46 | 政治

 国家戦略特区指定を受けた愛媛県今治市に建設中の学校法人加計学園岡山理科大学の獣医学部新設の特定事業に絡んで安倍晋三の意向が働いた便宜供与を窺わせる文科省作成の文書の存在を朝日新聞が5月17日朝刊で報道した。

 文書は8枚とか9枚あるとかで、その1枚は次のような内容となっているという。【】内は文書題名。

 【大臣ご確認事項に対する内閣府の回答】 

 〇(今治市獣医学部設置する時期)設置の時期については、今治市の区域指定時より「最短距離で規制改革」を前提としたプロセスを踏んでいる状況であり、
  これは総理のご意向だと聞いている。

 〇規制緩和処置と大学設置審査は、独立の手続きであり、内閣規制緩和部分は担当しているが、大学設置審査は文部科学省。設置審査の所で不足の事態(平成30年
  開学が間に合わない場合)はあり得る話。関係者が納得するのであれば内閣府は困らない

 〇「国家戦略特区諮問会議決定」という形にすれば、総理が議長なので総理からの指示に見えるのでは無いか。平成30年4月は11月上中旬には本件を諮問会議に
  かける必要があり、以前に官邸から「内閣」としてやろうとしていることを党の部会で議論するなと怒られたので、内閣府は質疑対応はするが、党内手続きに
  ついては文科省が政調(党政務調査会)と相談してやってほしい

 内閣府の長は内閣総理大臣、現在は安倍晋三であって、ナンバー2は内閣官房長官、現在の菅義偉である。

 広島県と愛媛県今治市が国家戦略特区に指定されたのは2016年1月。

 内閣府の国家戦略特別区域諮問会議(安倍晋三議長)が規制改革分野の一つとして学部新設や定員増の抑制措置が講じられている獣医学部について特区地域に限定して獣医学部の新設を可能とする制度改正の取組みを決定したのは2016年年11月。

 加計学園が国家戦略特区指定を受けた愛媛県今治市に獣医学部新設の特定事業に応募し、認定されたのは2017年年1月。

 松野博一は2016年8月3日から文科相に就任しているから、「大臣ご確認事項」の大臣とは松野博一を指すはずだ。

 要するに松野博一が文科省として国家戦略特区に指定された今治市に加計学園獣医学部新設認定に向けでどう進めたらいいか内閣府に問い合わせ、その問い合わせに対する内閣府からの回答となっている。

 内閣府は、〈今治市の区域指定時より「最短距離で規制改革」を前提としたプロセスを踏んでいる状況であり、これは総理のご意向だと聞いている。〉と、先ず「総理のご意向」を振りかざしておいて、〈大学設置審査は文部科学省。設置審査の所で不足の事態(平成30年開学が間に合わない場合)はあり得る話。〉と、大学設置の許認可権限のある文科省に対して加計学園獣医学部が学部新設や定員増の抑制措置が講じられきた経緯から設置審査で不認可や認可遅れといった不測の事態が起こり得ても、〈関係者が納得するのであれば内閣府は困らない〉と、一見仕方のないこととしながら、その実、主たる関係者は「総理のご意向だ」とした安倍晋三なのだから、納得するはずはないにも関わらず、〈内閣府は困らない〉、困るのは文科大臣だと暗に威している。

 ご存知のように朝日新聞報道の文書に対して政府は「怪文書」だとか、「信憑性がない」などと否定に躍起となった。

 ところが5月25日発売の週刊文春が「文書は本物」だとする前川喜平文科省前事務次官の証言を載せていることが判明、前川喜平事務次官自身が5月25日に東京都内で記者会見を開き、「文書は本物で、文科省専門教育課で作成され、幹部で共有された」と証言。

 前川喜平事務次官は文科省ぐるみの天下り問題に中心的に関わり、2017年1月にその責任を取って辞任、2017年5月22日付けの読売新聞が在職中に売春や援助交際の交渉の場になっている東京都新宿区歌舞伎町の出会い系バーに頻繁に出入りしていたと報道、この情報は官邸がリークしたと噂された。

 5月25日の前川喜平事務次官の記者会見でも出会い系バーについて記者から質問を受けている。その質問個所を「産経ニュース」から見てみる。  

 記者「読売新聞に前川喜平氏が出会い系バーに行っていたという記事が出ていた。権力の脅しではないかと思うが、こういう記事についてどう思うか。今回、自ら記者会見することに影響したのか」
 前川喜平「出会い系バーというものがありまして、読売新聞で報じられたが、そういったバーに私が行ったことは事実です。

 経緯を申し上げれば、テレビの報道番組で、ドキュメント番組で、いつどの局だったかは覚えていないが、女性の貧困について扱った番組の中で、こういったバーでデートの相手を見つけたり、場合によっては援助交際の相手を見つけたりしてお金をもらうという女性がいるんだという、そういう女性の姿を紹介する番組だった。

 普通の役人なら実際に見に行こうとは思わないかもしれないが、その実態を、実際に会って話を聞いてみたいと思って、そういう関心からそういうお店を探し当て、行ってみた。

 その場で話をし、食事したり、食事に伴ってお小遣いをあげたりしながら話を聞いたことはある。

 その話を聞きながら、子供の貧困と女性の貧困はつながっているなと感じていたし、そこで話を聞いた女性の中には子供2人を抱えながら、水商売で暮らしている、生活保護はもらっていないけれど、生活は苦しい。就学援助でなんとか子供が学校に行っているとか、高校を中退してそれ以来ちゃんとした仕事に就けていないとか。あるいは通信制高校にいっているけどその実態が非常にいい加減なことも分かった。

 いろいろなことが実地の中から学べた。その中から、多くの人たちが親の離婚を経験しているなとか、中学・高校で中退や不登校を経験しているという共通点を見いだした。

 ある意味、実地の視察調査という意味合いがあったわけですけれど、そこから私自身が文部科学行政、教育行政をやる上での課題を見いだせた。ああいうところに出入りしたことは役に立った。意義があったと思っている。

 あと、読売新聞がこの問題をどうして報じたのか。私の極めて個人的な行動ですから。それをどうして読売新聞があの時点で報じたのかは私には分からない」

 記者「権力の脅しかということはどうか」

 前川喜平「私はそんな国だとは思いたくない」

 代理人弁護士「その点は明らかな証拠はないですから、何とも答えようがない」(以上)

 前川喜平事務次官の記者会見発言に関して官房長官の菅義偉が5月26日午前の記者会見で発言している。産経新聞の記事を伝えている2017年5月26日付「BIGLOBEニュース」から見てみる。  

 菅義偉「8つの文書は出所不明のものであり、信憑性も欠ける。その点は変わらない。また、内閣府に聞いたところ、文書にあるような『官邸の最高レベルが言っている』とか『総理のご意向』とか、こういうことを言った事実はない。安倍晋三首相からそうした指示をされたことはなかった。その中に私の部分、私の補佐官についての部分も言及されているが、全く事実と異なっている」

 要するに菅義偉は前川喜平事務次官の記者会見での文書に関わる発言に関してはこれまで通りに全面的に否定している。尤も全面否定でなければ、自ら矛盾を演じることになるから、初めから分かり切った反応ということになる。

 では、前川喜平事務次官が出会い系バーに通っていたことに対する菅義偉の反応を見てみる。

 記者「前川氏は会見で出会い系バー通いを認めた上で、杉田和博副長官から注意を受けたことを明らかにした。杉田氏から報告を受けたか」

 菅義偉「昨日の前川さんの会見を踏まえて、杉田副長官に確認したところ、前川氏がそういう場所に出入りしている情報を耳にし、(次官時代の)本人に確認したところ、事実であったということで、厳しく注意したということであります。杉田副長官から報告を受けた。

 また、昨日の前川氏の会見では、女性の貧困問題の調査のために、いわゆる出会い系バーに出入りし、かつ女性に小遣いを渡したということでありますけど(ふっと嘲笑めいた笑いをこぼす)、ここはさすがに強い違和感を覚えました。多くの方もそうだったのではないか。常識的にいって、教育行政の最高の責任者がそうした店に出入りして、小遣いを渡すようなことは、到底考えられない」

 双方の記者会見の双方の発言から、前事務次官が出会い系バーに通っていたことは事実であり、そのことについて前事務官が杉田内閣官房副長官から注意を受けたことも事実であることが分かる。

 だが、前事務次官が述べている出会い系バーに通っていた目的に関しては菅義偉がそれを述べているとおりの事実ではないと否定していないものの、「強い違和感を覚えた」、「到底考えられない」という表現で事実として疑わしいとしていることは、その事実が前事務次官の一方的な主張に過ぎないと見ているからだからだろう。

 だが、この一方的な主張という点では文書に「総理のご意向」関係者として実名か役職名で載っている安倍晋三を筆頭に菅義偉や文科相の松野博一、文科副相の義家弘介、官房副長官の萩生田光一等々が国会や記者会見で、「(内閣府や文科省に)働きかけていたのなら、私、責任取りますよ」(安倍晋三)、「信憑性がない」、あるいは「怪文書みたいな文書」(菅義偉)、「文書の信憑性について疑問を持っている」(萩生田光一)、「そもそもこの文書が事実の文書であるかどうか、分からない」(義家弘介)と言っていることに関しても本人たちがそう言っているだけの一方的な主張の可能性は否定できない。

 いわば安倍晋三以下、菅義偉たちがそのようにつくり上げている事実に過ぎないということもあり得る。

 勿論、前事務次官の「文書は事実だ」という発言も本人がそう言っているだけの一方的な主張だと切って捨てることはできるし、そうしたい側が見れば、そうだとすることができる。

 だが、その理由として前事務次官が実際には不届きな目的で出会い系バーに通っていたとしても、その不届きさを以って記者会見での「文書」に関する発言の全てまでを一方的な主張だとする根拠とすることはできない。

 当事者からすれば、自己保身や自己正当化のためにどちらが事実に反する自分たちに都合がいいだけの一方的な主張を口にしているのかは重々承知しているものの、それを隠している以上、お互いが相手に対して一方的な主張に過ぎないと見做す平行線がいつまでも続くことになる。

 平行線を断ち切る方法として、完全な方法とは言えないが、双方の主張を突き合わせることができる前事務次官の国会への参考人招致以外にない。

 完全な方法ではないのは国会という場でもどちらか一方が自分たちがそう言っているだけの一方的な主張を繰り広げて、相手の主張を事実に反するとか、一方的な主張に過ぎないと言い募って、決着がつかないままに質疑応答をおしまいにすることができるからだ。

 だが、少なくともどちらがナチスのゲッベルスもどきに「ウソを100回言えば事実となる」の巧妙な策略を用いたのか、参考人招致を聞く者をして印象づけることができるはずだ。

 このような印象づけを回避するために自民党は前事務次官の国会への参考人招致に反対しているのだろう。

 このように思われないためにも、自民党は参考人招致に応じるべきだ。

 
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文科相松野博一の5/25参院文教科学委答弁は同日文科省前事務官記者会見発言を全て事実とすることになる

2017-05-26 11:49:51 | 政治

 ――文科省松野博一の5月25日参院文教科学委での「既に辞任された方なのでコメントする立場にはない」の答弁は「総理のご意向」文書の事実を証明――

 学校法人加計学園岡山理科大学が国家戦略特区指定を受けた愛媛県今治市に獣医学部新設の特定事業に応募し、認定された経緯を巡って安倍晋三が加計学園理事長加計孝太郎と30年来の腹心の友人であったこと、文科省と農水省が獣医学部新設の抑制政策を取っていたことに反する急ピッチな認定であったことなどから安倍晋三の意向が働いた便宜供与ではないかと疑う国会追及が続いていたが、朝日新聞が「総理のご意向」だとする1枚を含む文科省作成の複数枚の文書を2017年5月17日の朝刊で報じたことから、安倍晋三の意向が働いた便宜供与が俄然信憑性を持ち出した。

 勿論、政府側は全面的に否定した。文科省は5月19日の午前、その文書の存在の調査に取り掛かったと公表し、文科相の松野博一が5月19日の夕方の記者会見でその存在は確認できなかったと明らかにした。
 
 要するに文書に書いてある便宜供与を疑わせる経緯の全てを事実無根とした。

 そのような中で5月24日になって各マスコミが翌5月25日発売の週刊文春が「文書は間違いなく本物だ。大臣や自分への説明用として担当の高等教育局専門教育課が作成した」(産経ニュース)とする文科省前事務官の前川喜平の証言記事を載せると報じた。

 「総理のご意向」文書の政府側の否定に対する認定当時の文科省の事務次官の肯定に野党が飛びついたのだろう、5月25日の午前中に開催された参議院文教科学委員会でこの証言を取り上げ、追及したことを2017年5月25日付「NHK NEWS WEB」が伝えている。「YouTub」の動画から採録した質疑応答の発言と共に伝えることにする。      

 斎藤嘉隆民進党議員「(週刊文春に)部下から受け取った説明用の資料で間違いないという前川氏自身の証言が掲載されている。動かしようのない事実だと思うが、大臣の認識を伺いたい」

 松野博一「ご指摘のあった文書については文部科学省が該当する文書の存在が確認できなかったとの調査結果を公表しています。今ご指摘のあった一部週刊誌の内容に関して、本日発売のものでございますので、読み込んで精査しているわけではございませんが、既に辞職された方の発言なので、文部科学省としてコメントする立場にはございません」(YouTub

 NHK記事は松野博一の次の発言を解説する形で伝えているが、会話体に直してみる。

 松野博一「前川氏が在職していた時に、文書の存在については直接的にも間接的にも報告は無かった」

 民進党議員斎藤嘉隆は理事会で、「文科省前事務官前川喜平氏の参考人招致を求めたが、与党の理事に応じて貰えなかった。疚しいところがなければ、国民の疑念を晴らすためにも参考人招致に応じるべきだ」と言い、改めて参考人招致を求めたいと委員長に伝え、委員長は理事会に諮ってみると応じている。

 以上NHK記事とYouTub動画から紹介した松野博一自身の発言自体が安倍政権側が文書は事実無根だとしていることは事実無根であることを証明している。

 松野博一は言っている。「既に辞職された方の発言なので、文部科学省としてコメントする立場にはございません」

 文書が事実であるかどうかが争われている以上、「辞職された」されないは事実か否かには一切関係しない。書いてある事実が前事務官の辞職によって事実でなくなるという類いの文書ではない。文書を事実無根だとしているなら、「我々は調査したが、文書の存在は確認できなかったのだから、前事務次官が週刊誌に何をどう喋ろうと、全て事実無根だ」と、週刊誌を読まずとも記事自体を頭から全面否定しなければならないはずだ。

 なぜなら、文書を事実無根としている以上、週刊誌報道を頭から全面否定しないのは一貫性を欠くことになるからだ。文書も事実無根、前事務次官の証言もイコール事実無根として初めて一貫性を見せることができる。

 誰にでも一貫性を印象づけることができるそういった文脈での答弁ではなく、文科省の人間ではなくなったからコメントできないという、一貫性を与えることができない文脈の答弁で求められている全面否定を回避している。

 この頭から全面否定できない一貫性欠如の理由は文書に書いてあることが事実だからだろう。このことは次の発言からも証明できる。

 「前川氏が在職していた時に、文書の存在については直接的にも間接的にも報告は無かった」

 「報告は無かった」、だから文書は存在しないという理由付けの発言となっている。5月25日発売の週刊文春が記事にしているの前川喜平文科省前事務官の「文書は間違いなく本物だ。大臣や自分への説明用として担当の高等教育局専門教育課が作成した」としている証言からすると、高等教育局専門教育課から松野と前川喜平前事務官にそれぞれ別々に説明、もしくは報告を届ける形を取っているから、前川喜平前事務官から「報告は無かった」、だから文書は存在しないという理由付けとはならない。

 大体からして文書にしても上の部署に段階的に回して決裁や承認の判を得て、最終的にトップの決済、あるいは承認を得ていく経路を取る場合もあれば、一部部署が作成し、その部署が共有する必要がある幾つかの部署にそれぞれに配布して説明や報告をすることで用を足していく経路を取る場合もあるはずだから、「報告は無かった」ことを以って文書の存在を否定すること自体に無理がある。

 だが、理由にならない理由で文書の存在、そこに書いてある事実を否定しなければならない。逆の言い方をすると、理由になる理由で文書の存在、そこに書いてある事実を否定する発言となっていない。

 やはりこの経緯は文書の存在にしても、そこに書いてある事実にしても実際にあった出来事であることの証明としかならない。

 この参議院文教科学委員会の開催は午前中の約1時間47分のみで、午後に前川喜平氏自身が記者会見を開いて文書が事実であることを証言した。

 当然、その証言は全て事実として受け止めなければ、松野博一の5月25日参議院文教科学委員会での答弁同様、一貫性を欠くことになる。

 2017年5月25日付「NHK NEWS WEB」から記者会見の発言を纏めてみる。        

 前川喜平前事務次官「私が在職中に専門教育課で作成されて受け取り、共有していた文書であり、確実に存在していたものだ。私が発言をすることで文部科学省に混乱が生じることは大変申し訳ないが、あったものをなかったことにはできない。

 官邸、内閣官房、内閣府という政権中枢からの要請に逆らえない状況があると思う。実際にあった文書をなかったことにする、黒を白にしろと言われるようなことがずっと続いていて、職員は本当に気の毒だ。

 (特区制度のもとで今治市と加計学園が選考されたイキサツについて)結局押し切られ、事務次官だった私自身が負わねばならない責任は大きい。極めて薄弱な根拠で規制緩和が行われた。公平、公正であるべき行政の在り方が歪められたと思っている」

 そして証人喚問が決まった場合、「証人喚問があれば参ります」と述べたという。

 だが、自民党は証人喚問に反対している。このことも文書の存在が事実であり、そこに書いてある事実が実際の出来事であることの証明となる。正真正銘の事実でないなら、証人喚問の障害は何もない。却って事実無根の証明を果たすことができる。

 その証明が安倍晋三に対する便宜供与、あるいは政治的関与の疑惑を断ち切る絶好の機会ともなる。にも関わらず、証人喚問に応じない。一気に片付けようとはせずに、これまで同様にその場その場の否定で凌ごうとしている。
 
 いわば森友学園疑惑で同じ手を使っているように時間稼ぎで野党や世間の関心が薄れてウヤムヤになるのを待っている。文書が事実だからだ。

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自衛隊トップ河野統幕長:職務上の見解は法律に触れるが、個人としての見解は触れないとしたことの非合理性

2017-05-25 11:09:27 | 政治

 自衛隊の制服組トップの河野克俊統合幕僚長が2017年5月23日に日本外国特派員協会で記者会見した発言が自衛隊法61条の「政治的行為の制限」に触れるのか触れないのか話題となっている。

 2017年5月23日付「産経ニュース」《会見要旨》からその発言箇所を引用してみる。文飾は当方。     

 記者「安倍晋三首相が最近憲法を変えたいと発言している。今の日本国憲法、法律の中で、自衛隊に関して「今は制限されてできないが、今後していく必要がある、できるようにすべきだ」と考えることはあるか。「自衛隊の存在そのものが憲法違反だ」という考えの専門家もいるが、それについての考えは」
 
 河野統幕長「自衛隊の役割をこれから拡大するかどうかということだが、これはもう、いつに政治の決定によるものであり、私からお答えすることは適当ではないと思う。安倍首相が言われた憲法を変えるということについてだが、憲法という非常に高度な政治問題なので、統幕長という立場から申し上げるのは適当ではないと思う。ただし、一自衛官として申し上げるならば、自衛隊というものの根拠規定が憲法に明記されるということであれば、されることになれば、非常にありがたいなあとは思う

 官房長官菅義偉の翌日の5月24日記者会見で自衛隊員の政治的行為を制限した自衛隊法との関係を問われて次のように発言をしていることを5月24日付「ロイター」が「共同通信」電として伝えている。

 菅義偉「高度に政治的な件について、統幕長として答えることは適当ではないと明確にした上で、個人の見解という形で述べた。全く問題ない」

 要するに菅義偉は河野克俊が統合幕僚長としての見解を述べたたわけではなく、「個人の見解」としての発言だから、「全く問題ない」とした。

 だが、河野克俊は「憲法という非常に高度な政治問題なので、統幕長という立場から申し上げるのは適当ではないと思う」との文言で統合幕僚長としての見解ではないとしたが、「一自衛官として申し上げるならば」と断って、菅義偉が言う「高度に政治的」な憲法について一国の首相としての政治的な立場にある安倍晋三が望む改憲の考えに添う講釈を垂れたのである。

 この「一自衛官」としての見解を菅義偉は「個人の見解」だと巧妙にすり替えている。

 自衛隊法第61条は、「政令で定める政治的行為をしてはならない」と禁止規定を設けている。そして自衛隊法施行令第86条で、「法第61条第1項に規定する政令で定める政治的目的は、次に掲げるものとする」として、「特定の政党その他の政治的団体を支持し、又はこれに反対すること」、「特定の内閣を支持し、又はこれに反対すること」、「政治の方向に影響を与える意図で特定の政策を主張し、又はこれに反対すること」等を定めている。

 自衛隊トップの統合幕僚長は将たる自衛官であって、自衛官であることに変わりはないから、上記禁止規定は上は統合幕僚長から下は一般の一自衛隊員までが法の適用を受ける。
 
 河野克俊が、それが「一自衛官」の立場からの見解であったとしても、「自衛隊というものの根拠規定が憲法に明記されるということであれば、されることになれば、非常にありがたいなあとは思う」との発言は、自衛隊法施行令が第86条で禁止する“特定の内閣の支持”に抵触しないはずはないし、“政治の方向に影響を与える意図の特定の政策の主張”に抵触しないはずはない。

 百歩譲って「一自衛官」としての見解を菅義偉がゴマカシたように「個人の見解」であると認めたとしても、記者会見の場で自衛隊制服組トップの河野克俊が統合幕僚長として記者会見に応じて口にした自衛隊の根拠に関わる発言のその個所のみを「個人の見解」だとすることは許されるだろうか。

 もし許されるとしたら、その「個人の見解」と自衛隊制服組トップの統合幕僚長としての見解は異ならなければならない。ウソ偽りなく異なって初めて合理性を手にすることができる。

 だが、異なるとしたら、余りにも非合理的で、奇妙なことになる。

 実際には「一自衛官」の体裁を取りながら、自衛隊制服組トップ統合幕僚長である河野克俊の見解を希望する形で口にしていたに過ぎない。

 役目としての見解の場合は法律に抵触するからと、抵触しない方便として役目を離れた一自衛官の見解だ、一個人の見解だと発言することが許されるなら、法律の機能を奪う反社会的行為となるばかりか、法律を侮辱する卑劣な行為となる。

 安倍晋三が自民党総裁としての憲法改正の考え方と首相としての憲法改正の考え方は同じでありながら、自民党総裁として発信した憲法改正論だからと国会で首相としては説明を拒否した卑劣さと本質的には同レベルにある。

 菅義偉がどう擁護しようと、統合幕僚長河野克俊の見解は自衛隊法及び自衛隊法施行令に対する重大な違反に相当する。菅義偉の擁護自体が薄汚いゴマカシに過ぎない。

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安倍晋三が「朝日新聞は言論テロ」Facebook投稿に「いいね」と共鳴、内心の独裁性を曝す

2017-05-24 07:30:14 | 政治

 ――安倍晋三は朝日新聞をテロ等準備罪の監視対象にしたい衝動を疼かせているに違いない――

 安倍晋三が劇作家・今井一隆の朝日新聞は〈言論テロといっていいんじゃないか。およそ「報道」ではないし、狂ってる。〉の5月19日のFacebook投稿に「いいね」のボタンを押したと現在ネット上を騒がしている。

 要するに今井一隆の「朝日新聞は言論テロ」なる主張に共鳴した。他者の考えに共鳴する行為というのは自身が同じ考えを持っていて、自身と他者の考えが反応し合って、自身の考えがより確かさを増すか、少なくとも他者の考えに近い思いを持っていて、その思いが他者の考えに触発されて、より確かな考えの形を取るという経緯を形作る。

 2017年5月22日付「LITERA」《安倍首相が加計学園報道で「朝日新聞は言論テロ」に「いいね!」やっぱりこいつは共謀罪で言論を取締るつもりだ》が、安倍晋三が「いいね」ボタンに至った経緯を詳しく述べている。  

 マンガ家の須賀原洋行が加計学園の獣医学部新設に絡んだ「総理のご意向」文書問題で自民党議員であり、日本獣医師会顧問である北村直人(69)が「文書に書かれていることは事実だ」と認めた朝日新聞の記事を〈朝日新聞の姿勢は気味が悪いの一言に尽きる〉とTwitterで批判。この批判に劇作家の今井一隆が共鳴し、自身のFacebookに〈言論テロといっていいんじゃないか。およそ「報道」ではないし、狂ってる。〉と投稿した。

 そして安倍晋三が今井一隆のこのFacebookの共鳴文にさらに共鳴して、「いいね」ボタンを押して共鳴の意思を表した。共鳴したのだから、内心「確かにその通りだ、朝日新聞は言論テロだ」と思ったはずだ。

 安倍晋三のこの共鳴行為を記事は次のように批判している。〈許認可に絡む権力の不正をチェックするジャーナリズムの最も重要な報道を「テロ」扱いするのは、まさに反民主主義、北朝鮮並みの発想だが、これに安倍首相が「いいね!」と賛同したのである。〉

 LITERAのこの記事の題名後半は、《やっぱりこいつは共謀罪で言論を取締るつもりだ》となっている。その理由を次のように挙げている。
 
 〈自身を窮地に立たせる報道は「テロ」認定。──つまり、「テロ」か否かの判断は、こうして「自分の一存」で決められるということだ。〉

 要するに首相という立場にある者の“一存”が全体の考えとして強制されていく独裁のプロセスを取りかねない危険性とこのプロセスが気に入らない報道に対して適用されて、「テロ等準備罪」の対象犯罪とされる危険性を指摘している。

 そしてこの危険性の指摘は安倍晋三が内心に抱え、血や肉としている独裁性に対応している。抱えていなければ、「いいね」と共鳴することないし、上記危険性を指摘することもない。

 いわば安倍晋三が「朝日新聞は言論テロ」のFacebook投稿に「いいね」と共鳴ボタンを押した行為そのものが既に安倍晋三自身が独裁性を内心に抱え、血や肉としていることの証明であり、独裁性を露出させた記念すべき瞬間なのである。

 当然、朝日新聞をテロ等準備罪の監視対象にしたい動を疼かせているはずだ。

 安倍晋三は元々は国家主義者である。「国家主義者」とは、「国家をすべてに優先する至高の存在、あるいは目標と考え、個人の権利・自由をこれに従属させる思想」(『大辞林』三省堂)の持ち主を言う。

 安倍晋三は2015年5月20日に当時民主党代表だった岡田克也と党首討論を行い、新3要件に基づいた新安保法制について議論を戦わせている。岡田代表が、「米国と戦っている相手国に対して新3要件が満たされている、その場合に日本の自衛隊が、その国の領土、領海、領空で武力行使をする、集団的自衛権を行使するということは、それはないんですね」と尋ねた。(文飾は当方)

 安倍晋三「我々が提出する法律についての説明は、全く正しいと思いますよ。私は総理大臣なんですから」(鼻先でフッと笑って言う。)

 「我々が提出する法律についての説明」をすべて正しいとしていることは、安倍政権が提出する法律自体を全て正しいとしていることになる。

 なぜなら、法律のどこがが間違っていたなら、その説明がいくら正しくても、正しいと言えなくなるからだ。法律も全面的に正しい、説明も全面的に正しいとした。

 法律は政治的・社会的・文化的主義主張が反映される。それらの主義主張の違いによって、その反映を受けた如何なる規範も相対主義を取るということに何一つ配慮していない。

 相対主義を取るために賛成多数という正義しか獲ち取ることができない。だが、安倍晋三は安倍内閣が提出する法律もその説明も絶対正義とし、その理由を自身の総理大臣という地位に置いた。

 ここに安倍晋三が内心に抱え、血や肉としている独裁性の露出を見ることができる。
 
 何度もブログに書いてきたが、2009年2月11日の明治神宮会館で開催の建国記念の日奉祝中央式典では皇室に関して次のようにスピーチしている。
  
 安倍晋三「よく『国柄、国柄』と、こういうことを議論することがあるんですが、私たちの国柄は何かと言えば、これはもう、古来からの長い長い歴史の中において、日本人の営みの積み重ねの中に自然に出来上がってきたものが、私は、『日本の国柄』ではないかなと思うところでございます。
  
 日本の歴史というのは、言ってみれば、いわば、つづら織りのようなものでありまして、タペストリーですね。

 この長い歴史をそれぞれの人々が個々の歴史を積み重ねる中で、全体のつづら織ができあがってきたわけでありますが、やはり、真ん中の中心線というのは、わたくしはそれはご皇室であろうと、このように思うわけであります。(大きな拍手)
  
 そしてそれはまさに、一本の線で、ずーーっと古来から今日までつながっている。 ここが諸外国とは大きく違う点であろうと、わたくしは思います。

 日本と外国との違い、たくさんあります。また、外国の王室との違いも私はある、と思います」――

 日本の歴史をタペストリーに譬え、その中心線に長き歴史に亘る皇室を置くこの発言と同様なことは安倍晋三著「美しい国へ」でも述べている。

 安倍晋三のこの手の発言から汲み取ることができる思想は日本の歴史の中心線は皇室であり、それが「古来から今日までつながってい」て、その繋がり・継続性を日本の「国柄」だとしていることは日本国の歴史の主人公を歴代天皇に置いて、皇室を日本の歴史の主宰者と見做す国家観であって、そうである以上、天皇を特別な存在とする国家観となる。

 この国家観は「大日本帝国ハ万世一系ノ天皇之ヲ統治ス」、さらには「天皇ハ神聖ニシテ侵スヘカラス」とした大日本帝国憲法の天皇中心の国家観と合致し、現行憲法の「天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く」としている、天皇の上に主権者である国民を置いた国家観とは相容れない。

 安倍晋三の独裁制を担った戦前の天皇への親近性は自身が内心に独裁性を抱えていることの、その響き合いから生じている。安倍晋三が真正な民主主義者なら、響き合うことはない。

 劇作家がFacebookに投稿した「朝日新聞は言論テロ」なる投稿に「いいね」ボタンを押して共鳴を誘った内心の独裁性をこそ、最も警戒しなければならない危険性であって、そのような危険性を抱えている政治家が首相であることを相対主義によって許している勢力が一方にある。

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地方創生担当相山本幸三の「獣医学部新設計画は自らが決断」は「総理の意向」文書を事実と見做す墓穴発言

2017-05-23 11:14:51 | 政治

 昨夜のNHKの7時からのニュースで国家戦略特区を担当する地方創生担当相の山本幸三が愛媛県今治市に加計学園獣医学部新設を認めたのは「安倍晋三の指示ではなく、担当大臣として私が指示、指揮し」たのだと国会で答弁したニュースを伝えていた。

 既に記事になっているかなと思ってNHKのサイトにアクセスしてみると、《地方創生相 獣医学部新設計画はみずからが決断》という題名の記事になっていた。  

 記事から昨日2017年5月22日の参議院決算委員会での共産党小池晃に対する山本幸三の答弁を取り上げてみる。

 山本幸三「感染症に対する水際対策を担う獣医師の確保が困難な地域もある一方、獣医師会などからの慎重論があることも踏まえ、まずは地域を限ったものだ。今治市や加計学園ありきで制度を変えてきたわけではない。

 安倍総理大臣からの指示は全くない。担当大臣として私が指示、指揮しており、特区ワーキンググループでの議論などから総合的に判断して、私が決断した」

 朝日新聞が公表した文科省が作成したとする文書の一枚には加計学園獣医学部新設は「総理の意向」と書いてある。山本幸三がそれを否定した発言に見えるが、実際には否定しながら「総理の意向」を認めた発言となっていることに気づいた。

 YouTubから遣り取りの動画をダウンロードして発言個所を文字に起こしてみた。小池晃は報道機関からではなく政府関係者から入手したとする新資料に基づいて追及した。

 文飾は当方。

 小池晃「結果としてまさに総理の意向を錦の御旗として内閣府は来年の4月に開校だと推し進めたわけですね。もう一点、重大な問題が国家戦略特区諮問会議の決定であります。

 11月9日に安倍首相を議長とする国家戦略特区特別区域諮問会議が開かれ、今日配布資料の3枚目にありますように『現在広域的に獣医系養成大学等の存在しない地域に限り、獣医学部の新設を可能にする』ことが決まります。そう書いてあります。

 我々はこの原案を入手しました。内閣府が示した原案であります。この原案には『広域的に』という言葉と、『限り』という言葉はないんです。原案にそれがなかったことは認めますか」

 山本幸三先ず初めに総理の指示とか何とか、全くありません。私が決めているわけでございます。あのー、あのー、内閣府特命担当大臣として自主的に私が責任を負っています。私が指示して、指揮してやっているわけであります。

 昨年11月の諮問会議取り纏めの原案に至る経緯、原案から示された経緯でございますけれども、昨年10月の下旬頃、特区ワーキンググループでの文科省と農水省との議論が獣医師会などから提出された慎重意見などから、総合的に判断して、先ずは地域を限定することで意見を十分に配慮することが適当であると私が判断、決断致しました。その上で、内閣府の事務方にそれまでの原案の作成を指示致しました。

 昨年の12月28日、内閣府の事務方が文科省の高校教育局、12月31日に農水省の消費安全局に原案を提示致しました。農水省からは原案についてのコメントはございませんでした。

 文科省からは昨年10月31日に内閣府に対し、意見の訂正がございました。翌11月1日に内閣府から文科省に最終提案を提出致しました。翌11月2日に文科省から意見なしの回答があり、特区ワーキンググループとして関係省庁間での事務局の調査を終えたわけであります。

 最終的に私共が確認をして事務局の間の諮問会議の取り纏めに至ったというわけであります」

 小池晃「私が聞いたことに一切答えていないんですが、最初の原案が内閣府が作られたことは認められました。その原案には『広域的に』という言葉、『限り』という言葉はありませんでしたね」
 
 山本幸三「各省の案は色々ございます。しかしその途中の段階にですね、そのことをお出しすることは将来の色々な決定事項に影響しますので、そういうことは途中段階のものは協議は差し控えたいと思います」

 小池晃「否定出来ないわけですよ。私共が入手したのには『広域的に』と『限り』という言葉はないわけですよ」(以上)

 山本幸三は「各省の案は色々ございます。しかしその途中の段階にですね、そのことをお出しすることは将来の色々な決定事項に影響しますので、そういうことは途中段階のものは協議は差し控えたいと思います」と言っているが、決定に至る各過程での議論に不当な取引や誰かの意見で妥当性が曲げられるといった事実はなく、公平且つ公明正大に推移したな議論であるなら、何も隠す必要はない。

 各省庁間の取り決めは各省庁共に自らの縄張りや省益・庁益の利害優先から入り、そこに駆引きや取引が生じることが往々にしてある。当然、それらを国民の目から隠すために議論の途中段階は明らかにできない、結論のみ明らかにできるということはあり得るが、獣医学部新設に安倍晋三の政治的関与があったのでなないのか、加計学園の利害を代弁しているのではないのかとの疑惑が持たれている以上、前者の理由からではなく、後者の理由から途中段階の議論は公にできないのだとの勘ぐりを否応もなしに誘い出して、却って安倍晋三の疑惑を膨らませかねない。

 当然、山本幸三の立場からしたら、途中段階の議論を明らかにして、併せて安倍晋三の疑惑を晴らさなければならないはずだが、隠して安倍晋三の疑惑を膨らませる逆効果を選んだことになる。

 その必要性は議論の途中段階で安倍晋三の政治的関与や利害代弁が介在していなかったなら、多少の不都合が持ち上がったとしても、それらの議論を明らかにできない理由はないはずだから、前者を明らかにした場合、後者の疑惑を事実として明らかにすることになる以外の理由を見つけることはできない。

 このことは加計学園獣医学部新設決定はいわば、「総理の指示ではない、私の指示・指揮だ」と答弁していることからも説明できる。

 朝日新聞が安倍晋三の意向で首相官邸が主導した獣医学部の新設だとする趣旨の文科省が作成したとする内容の文書を入手、朝刊で報じたのは2017年5月17日である。

 もしその文書に書いてあることが事実だとしたら、安倍晋三の名誉に関わる。首相というその地位も失いかねない。安倍晋三に地方創生と規制改革担当の内閣府特命担当大臣に任命され、そして内閣府特命担当大臣としての責任に於いて加計学園獣医学部新設決定に自主的に指示・指揮してきたのであって、「総理の指示ではない」ということが事実なら、朝日新聞が報道したその当日に「総理の指示ではない」ということを当事者が最も知り得ている事実として、その事実を明らかにするためにだけでも記者会見を開いて証言しなければならなかったはずだ。

 だが、そういった記者会見すらしなかった。朝日新聞報道の5月17日から当日を含めて6日も経過した5月22日に国会で「総理の指示ではない、私の指示・指揮だ」と証言する。

 当事者が最も知り得ている事実でありながら、5月17日から5月2日の参議院決算委員会開催時間前までに証言しなかった余りにも遅きに逸している理由は「総理の意向」こそが当事者が最も知り得ている事実であることを物語ることになって、5月22日の国会で「総理の指示ではない、私の指示・指揮だ」と証言したこと自体が自ら墓穴を掘る発言となる。

 朝日新聞報道が文科省作成だとする「総理の意向」文書を報道したのは2017年5月17日。

 文科省がその文書の存在の調査に取り掛かったと明らかにしたのは5月19日の午前。

 文科相の松野博一がその存在は確認できなかったと明らかにしたのは2017年5月19日の夕方の記者会見。

 余りにも早過ぎる調査終了も疑惑を浮き立たせることになるが、内閣府特命担当大臣の山本幸三が「総理の指示ではない、私の指示・指揮だ」と当事者が最も知り得ている事実として国会で証言したのは2017年5月22日。

 文科省が文書の存在の調査を開始して、そのような文書は確認できなかったとした。いわば怪文書に過ぎないと認定したことになり、「総理の意向」も含めて文書に書いてある事実をすべて否定したことになる。

 このような否定を前提にして初めて山本幸三は「総理の指示ではない、私の指示・指揮だ」と当事者が最も知り得ている事実として証言できる。

 文科省の調査の結果、文書が存在していたなら、そのことを前提に「総理の指示ではない、私の指示・指揮だ」などとは口が裂けても言うことはできない。

 いわば文科省の調査結果を待ち、調査結果が引き起こすかもしれない結果に反する事態の発生の有無を様子見してから、何事も起こらないようだからという経緯を取った証言であるはずはずだ。

 繰返しになるが、「総理の指示ではない、私の指示・指揮だ」が当事者が最も知り得ている真正な事実であったなら、山本構造を大臣に任命した安倍晋三の名誉を守るために朝日新聞が報道した当日の内に「総理の意向」を全否定していただろうし、全否定しなければならなかった。

 全否定することに胸を張ることさえできはずだ。

 だが、当日の内にそういったことは一切できずに日を置かなければならなかった。このような関係性によって口にした事実が現実の事実に反する虚偽に過ぎないことを浮かび上がらせることになった。

 まさに自分から墓穴を掘ることになった発言そのものとなっている。

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安倍晋三の改憲構想の着地点と着地点に向けて着々と消化している改憲のロードマップ

2017-05-22 12:05:09 | Weblog

 安倍晋三は憲法記念日の2017年5月3日都内開催の「公開憲法フォーラム」に憲法9条の1項と2項は手を付けずに合憲性を示すために自衛隊を明文化し、東京オリンピック・パラリンピック開催の2020年を改正憲法施行の目標年とする内容のビデオメッセージを送り、同日付読売新聞朝刊での安倍晋三のインタビュー記事では9条1項、2項の後に9条の2を設けて、そこに自衛隊の存在を明記する、いわば自身の改憲構想を述べた。

 その安倍晋三が今度は2017年5月21日夕方のニッポン放送の番組収録では改憲構想の実現化に向けた発言があったようだ。

 安倍晋三「自民党の憲法改正に向けての責任者である保岡本部長は『年内にはまとめたい』という意欲を示しており、この機運が盛り上がっていけばと思う。まずは党内でしっかりと議論して、年内に案をお示しできればと思う。

 大災害があったり、万が一、海外からの侵略にあった時、命をかけて国民を守るのは自衛隊の諸君だが、自衛隊の存在について、いまだに違憲かどうかという議論がある。これに終止符を打つのは、やはり私たちの世代の責任ではないか」(NHK NEWS WEB/2017年5月21日 22時00分)   

 後段の発言はビデオメセージとほぼ同じ内容となっている。

 前段の発言は安倍晋三が2017年5月12日午後、党憲法改正推進本部の本部長保岡興治と党本部で会談した際の保岡興治の対応と自身の改正案の取り纏め時期に関する希望となっている。

 5月12日午後に安倍晋三と会談した保岡興治は次のように発言している。

 保岡興治「党総裁から方向性が示されたことでやるべきことが明確になった。最大限努力する」(日経電子版/2017/5/13 0:03)    

 自民党は谷垣総裁の野党時代の2012年4月27日に「自民党憲法改正草案」を決定している。当然、「やるべき」方向性とは憲法9条1項の戦争放棄(「国権の発動としての戦争を放棄し、武力による威嚇及び武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては用いない」)は現憲法のままとし、現憲法2項の戦力不保持と交戦権の否認は削除して、自衛権の発動を認め、9条の2を付け足して、国防軍の創設を謳っている自民党憲法改正草案が示す改憲の方向であるはずだが、党総裁が示した方向性によって「やるべきことが明確になった」と言っている。

 いわば保岡興治は安倍晋三の改憲構想に則って憲法審査会に提出する自民党改憲案を纏めるとしている。

 萩生田光一と同じく安倍晋三の腰巾着下村博文は安倍晋三が保岡興治と会談した同じ日の夜にBSフジに出演、改正案は「自民党内で年内にコンセンサスをつくり、来年の通常国会に発議案を出せたらベストだ」(時事ドットコム)と発言している。   

 下村博文が安倍晋三の腰巾着である以上、安倍晋三と意を通じていないはずはないから、自民党改正案年内コンセンサスは安倍晋三の意思だと見て然るべきである。
 
 と言うことは、党憲法改正推進本部の本部長保岡興治は安倍晋三の改憲構想に従った自民党改憲案の取り纏めを行い、その時期も「年内にはまとめたい」と、安倍晋三が望む年内とすることを宣言したことになる。

 安倍晋三がニッポン放送の番組収録で「年内に案をお示しできればと思う」と述べているスケジュールはほぼ確定的という思いが篭っているはずだ。

 このような先々までのスケジュールを頭に描いた安倍晋三の「公開憲法フォーラム」に送りつけたビデオメッセージであり、読売新聞のインタビューだったのだろう。そして安倍晋三が思い描いているとおりに自身の改憲構想を自民党の改憲草案とする策略が着々と進んでいるということなのだろう。

 なかなかの策略である。

 安倍晋三が自身の改憲構想が自民党の改憲草案に盛り込まれることをほぼ狂いのない予定表に入れているはずだが、それが現実に確定しさえすれば、あとはこっちのものだと思っているに違いない。

 憲法審査会で各党の改憲案との議論にそれなりに時間をかけ、憲法改正反対の野党がどう強硬に反対しようと一定時間の議論後に公明党や維新などの議員を加えた数の力を頼んで強行採決に持ち込んで賛成多数で可決すれば、本会議に持ち込むことができて、本会議でも同じ強行採決を使って、公明党や維新などの議員を加えた3分の2以上の賛成多数で自民党憲法改正案を国民投票に付すことができる正々堂々の憲法改正案とすることができる。

 勿論、次に控えている有効投票数の過半数の賛成という国民投票はハードルが高いが、安倍晋三のビデオメッセージでの「今日、災害救助を含め、命懸けで24時間、365日、領土、領海、領空、日本人の命を守り抜く、その任務を果たしている自衛隊の姿に対して、国民の信頼は9割を超えています。しかし、多くの憲法学者や政党の中には、自衛隊を違憲とする議論が、今なお存在しています。『自衛隊は違憲かもしれないけれども、何かあれば、命を張って守ってくれ』というのは、あまりにも無責任です」の発言、そしてニッポン放送の番組収録での「大災害があったり、万が一、海外からの侵略にあった時、命をかけて国民を守るのは自衛隊の諸君だが、自衛隊の存在について、いまだに違憲かどうかという議論がある。これに終止符を打つのは、やはり私たちの世代の責任ではないか」の発言が自衛隊の災害救助に重点を置いた文脈となっていることからも分かるように国民投票に於ける憲法改正の争点から戦争する自衛隊は可能な限り薄めて、災害救助活動に汗水垂らすの自衛隊の真摯な姿を争点の前面に押し立てて3匹目のドジョウを狙うに違いない。

 1匹目は2014年年12月2日公示・12月14日投開票の衆議院選挙。安倍晋三は解散自体を「アベノミクス解散」だと銘打ち、選挙ではアベノミクスの是非を争点の前面に押し立て、憲法解釈変更による集団的自衛権の行使容認や自衛隊海外派兵を含めた安全保障政策は争点の背後に置いて大勝するに至った。

 2匹目は2016年7月の参院選挙。改憲を可能とする3分の2を自民党のみでか、あるいは改憲勢力を合わせて獲得できるかが話題となったが、安倍晋三は「最大の争点は経済政策だ」と言って、衆院選と同じようにアベノミクスの是非を争点の前面に押し立て、改憲については争点化を避け、その争点隠しのもと、憲法改正に前向きなおおさか維新の会等を加えて3分の2を超える改憲勢力を築くことに成功した。

 安倍晋三のよく使う手となっている。

 2017年5月16日の当「ブログ」に書いたが、安倍晋三の改憲構想――9条1項、2項は手を付けずに9条の2を設けて、そこに自衛隊の存在を明記する改憲の目的がどこにあるか肝に銘じなければならない。   

 〈9条1項と2項に手を付けなくても、9条の2を設けて自衛隊を明文化することに成功すれば、自衛隊が憲法違反だと誰もが言うことができない状態にすることができて、憲法に例え国防軍の創設を謳わずとも、新安保法制で如何ようにも自衛隊を駆使できる。〉

 ここに安倍晋三の改憲構想の着地点があり、その着地点に向けたロードマップがビデオメッセージや新聞インタビューでの発言であり、憲法改正推進本部の本部長保岡興治との会談に於ける根回しであり、ニッポン放送の番組収録での発言ということであって、着地点に向けたロードマップを着々と消化している。

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