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松本淳一郎「8月会合で現職でない方が再開決めた」と下村博文「7月に松本と安倍会長に電話」は連携プレー

2025-06-09 14:03:14 | 政治
 2025年5月27日の衆議院予算員会で自民党旧安倍派の裏ガネ事件に関わった幹部の一人、文科大臣等を歴任した下村博文に対する参考人質疑が行われた。

 他の派閥も行なっていたが、人数、金額共に大掛かりな点で抜きん出ていた安倍派に関わる裏ガネ事件のこれまで判明している事の次第を先ずは振り返ってみる。

 安倍派清和研政治資金パーティーを舞台にパーティー券売上へのノルマを派閥所属国会議員に課し、ノルマを超えた売上は派閥が自らの預かりとしていながら、それを現金還付して、派閥からの支出と各国会議員政治団体の収入共に収支報告書に長年に亘って不記載とし、裏ガネとしていた悪質な政治資金規正法違反を慣例化させていて、その不記載金額は安倍派全体では収支報告書不記載・虚偽記載罪の時効にかからない2018~22年の5年間で総額5億円規模に上る可能性が指摘されている一大政治スキャンダルの様相を呈することになっていた。

 慣例の開始時期によっては時効外を含めると、十数億が裏ガネ処理されていた可能性も指摘できる。この安倍派政治資金不正処理事件は2022年11月の「しんぶん赤旗」がスクープし、他のマスメデアがあとを追い、広く世に知れ渡って政治不信を招き、真相解明を求める声に押されて、2024年3月以降、衆参政治倫理審査会や衆参予算委員会で関与議員に対する参考人招致が引き続いて開催されたが、不記載処理の現金還付方式をいつ、誰が始めたのかの真相は解明に至らず、証言で判明したことは2022年4月7日の安倍晋三と安倍派幹部西村康稔、塩谷立、下村博文、世耕弘成、安倍派清和研事務局長兼会計責任者松本淳一郎出席の会合で安倍晋三が「現金は不透明で疑念を生じかねない」との理由で現金還付の中止指示を出し、幹部たちが手分けして派閥所属議員に電話で伝えたが、既にノルマ以上のパーティー券を売り上げていた議員から自らの政治資金として還付して欲しいとう声が上がり、2022年7月に銃撃死した安倍晋三を除いて4月の会合と同じメンバーが集まった2022年8月5日の会合で安倍晋三の現金還付中止の指示は維持しつつ、現金還付に代わる政治資金手当の方策を議論したが、結論を出すことができないままでいたところ、誰が指示したのか不明のまま一旦中止したはずの現金還付が再開されていて、マスコミが報じるまで2022年のパーティー分も従来通りに現金還付し、不記載処理していたということが判明している。

 但し今回、2025年5月27日の衆議院予算員会で行われた下村博文に対する参考人質疑は東京地検特捜部の起訴を受けた安倍派会計責任者松本淳一郎被告が2024年6月18日の東京地裁公判で、安倍晋三死去後の2022年7月末頃にある幹部から還流を求める議員がいると知らされ、8月の会合で協議、他の幹部からも還流を求める議員がいると知らされ、「還付やむなし」となったと証言したことと、2025年2月27日に松本純一郎に対して安住予算委員長及び理事らが東京都内のホテルに出向き、非公開で行われた衆議院参考人聴取後の安住予算委員長会見で2022年4月の会合で安倍元首相指示で一旦中止となったことは事実であること、8月の会合で還流の再会を求めたある幹部は現職の議員ではないこと、当該会合でいずれにしても返すのも止む得ないという結論になったこと、さらに下村博文自身が松本淳一郎のこの日の参考人聴取後の取材に対して再開を望む派内の声を松本氏に伝えたと発言したことから当予算員会の参考人聴取要請の議決を経て実現したものだった。

 当然、質問は「安倍晋三の指示で一旦中止した現金還付の再開を指示したのは下村博文なのか」に集中した。2番手の質問者である立憲民主党の渡辺創と下村博文の遣り取りを見てみることにするが、下村博文の2024年3月18日の衆議院政倫審で、「2022年の4月に安倍会長の国会の事務所に私と塩谷さんとそれから当時西村事務総長、それから世耕参議院幹事長が呼ばれました。そのときに安倍会長の方から還付について現金の還付は不透明だからやめようということと、そのものをやめようという話がありましたが、還付が不記載であるとか、あるいは違法であるとかいう話は全く出ませんでした」と述べているが、渡辺創に対しては次の発言、「還付が不記載であるとか、あるいは違法であるとかいう話は全く出ませんでした」を除いて、「その4月に安倍会長がご存命のときに同じメンバーに言われました。そのときにこれから還付は、現金による還付は不透明なので行わないと、ノルマ以上の売り上げがあった者に対してそういう話があり、そして我々4人が手分けして、全ての清和会所属の国会議員に連絡を致しました」とほぼ同じ文言で安倍晋三の現金還付中止の理由を述べていることを前以って伝えておく。

 渡辺創「下村参考人は政倫審での発言がですね、これまでの報道によれば、(8月の会合では)やる・やめる前提で議論をしてきたが、結論出なかったというふうに表現されてきました。今も同じだと思います。松本さんの参考人聴取後の取材には、再会を望む派内の声を松本氏に伝えたと発言しております。

 先程の質問でも伝えたことをお認めになってると思いますが、先ず伝えた時期は先程6月下旬からというふうに言われてましたが、いつ頃ですか。それとも複数回、松本さんにお伝えになってるのか、また、それは先程『事務的に』と仰いましたが、下村参考人が松本事務局長に直接お伝えになってるんですか。それとも間接的に間が入ってるんです。合わせて安倍さんにはどのような形でお伝えになったか」

 下村博文「電話で松本事務局長には6月の下旬に一人の議員から還付を求める声があるということについて、松本事務局長は、4人のそれぞれが手分けして電話かけてましたし、意見集約のお立場でもありましたから、これは安倍会長ご存命のときでありましたから、勿論、安倍会長にそういう話があるってことを、私の方からお伝えしました。ということを申し上げました。

 7月の下旬、安倍会長がお亡くなりになったときですね、このことがあるねということについては電話でですね、あの松本事務局長に連絡いたしましたが、しかし再開を求めるということではなくて、そのあと、8月5日に会合を持ったときですね、再開を求めるということが前提でなくて、現金還付はしないということの中で、しかし何らかの形で資金手当ができる方法はないかということを議論をしたということでありまして、松本事務局長にですね、再開をしろということを私は申し上げたつもりはございません」

 下村博文は松本淳一郎に対して「一人の議員から還付を求める声がある」ことを伝えたが、還付を再開しろと伝えたわけではないと再開指示を否定している。

 政治家個人、あるいは政治団体が行う政治資金に関わるカネの遣り取りは常に政治資金規正法という法律に関係する。現金還付の仕組みが"不透明"ということは政治資金規正法上、透明性を欠いているということであり、最低限、法的意味合いに於いて違法性に一定程度は足を踏み入れていると考えるのが誰にとっても常識となる。

 つまり"不透明"という性格付けから合法そのものと解釈する人間は誰もいないことも常識としなければならない。実際にはその違法性はある程度どころではなかったが、もし安倍晋三がそのような言葉遣いをしたことが事実だとしたら、実態を露骨に曝すわけにはいかず、控えめに表現することになったということであり、4月の会合が安倍派幹部たちが作り上げたストーリーだったとしたら、自分たちの関与を否定するために実態どおりに話すわけにはいかないことから曖昧な表現にしたということであろう。

 どちらであったかは無視したとしても、下村博文は不記載に自身が関わっていなかったことだとしても、"不透明"という言葉から現金還付に少なくとも違法性の影を見て取っていなければならなかったことになる。そうでなければ、"不透明"という表現から言葉通りの印象も受けず、その意味するところを何も思慮することはなかったあり得ない実態を曝すことになる。

 当然、何がしかの違法性を前提としなければならない現金還付である以上、事件が明るみに出てから、安倍派所属議員100人近くのうち、80人近くが収支報告書を「寄付」名目で訂正していると報道されているが、還付を求める議員がたった一人であったとても、あるいは事務的にであったとしても、その存在を安倍晋三や事務局長である松本淳一郎に電話で知らせることは矛盾した行為となる。

 なぜなら、下村自身が違法性の色付けで見なければならない現金還付でありながら、その再開を求めた議員の還付に付き纏うことになる違法性を考慮外に置くことを意味することになるからである。逆に安倍派幹部という立場上、還付を求める議員が出てきたなら、何がしかのその違法性を意に止めて、自分のところで、それはできないということを伝えなければならなかった。

 だが、伝えずに電話で知らせた。たった一人であったとしても、その現金還付方式が抱えていると見て取らなければならない違法性の臭いに蓋をして、還付を求める議員の存在を電話で知らせたことになり、幹部としてあり得ない行動を取ったことになる。その点で、"電話した"が実際にあった話と受け止めることはできない裏付けとすることができる。何らかの目的を持たせた作り話の疑いが限りなく濃い。

 さらに安倍晋三自身が現金還付は「不透明」だとその仕組の何がしかの違法性を指摘して中止させたが厳然たる事実であるなら、中止させたその本人に対して現金還付を求める議員の存在を"電話した"だけであったとしても、その中止の意思を派閥議員に徹底させ得なかった派閥幹部としての下村博文自身の責任欠如そのものを同時に伝えることにもなるのだから、実際にはそのような電話をすることはできないはずで、なおさらのこと、何らかのためにする作り話と見てかからなければならないことになる。

 安倍晋三自身がどう言うかはもはや死人に口無しで確かめようがないが、3番手の質問者である日本維新の会の斉木武志との遣り取りを見てみる。

 斉木武志「6月下旬にですね、松本事務局長に対してキックバックを求める声があると、一名、この声を電話でお伝えしたと。で、このことに関しては安倍会長にもお電話で報告をされたというふうにおっしゃいました。安倍会長はこれに関してどのような指示をされましたか」

 下村博文「5月の17日に清和研のパーティーがございました。元々4月の上旬に『現金が不透明なので、ノルマ以上の売り上げについて還付しない』ということを安倍会長から指示があって、そして4人のそれぞれの議員が手分けして電話を致しました。

 しかしそれが4月ということですね、全員が、私はあの20人近く電話致しましたが、『承知しました』という返事でありましたが、パーティーが終わった後ですね、ノルマ以上の売り上げがある議員がおられて、その議員から何とか還付できないかという話があったということで、そういう声があるということを松本事務局長と、それから安倍会長にご報告致しました。これはご報告ですので、安倍会長はそうですかというお答えでありまして、それ以上特にコメントはございませんでした」

 斉木武志「それは4月に安倍会長が仰っていた、やめるべきだ、還付、キックバックは不透明なのでやめるべきだという安倍会長のお考えとは違う声ですよね。それに対してこういう派内からこういう声があるんだけれどとお伝えをした、下村議員がお伝えをしたのであれば、何らか安倍会長の考えとは真逆の考えですから、声ですから、何らか、じゃあ、派としてこうしなさいであるとか、それでもやはり還流はやめるべきだとか、何か安倍会長から発言があって然るべきだと思うんですが、ちょっとそのときの電話の会話ご紹介頂けますでしょうか」

 下村博文「ご指摘のように4月の会合のときに安倍会長からノルマ以上の売り上げについても現金の還付は不透明だからやめるということを指示されて、徹底して電話したわけでありますから、当然、8月のときもそうだったですけども、それが前提でずっと議論されてますから、それをひっくり返すような話ということは、勿論、ないわけでありまして、ただ一議員がそういう声があるということの情報としてお伝えしたと。だから変えるという話は、勿論、私も申し上げてませんし、安倍会長からもそういう話は全く出ておりません」――

 斉木武志は下村博文のこの答弁に矛盾があることに気づかずに安倍会長の還付中止の決意は相当固かったことに反して還付を求める議員の存在を伝えたなら、何らかのリアクションがあったのではないかとなお食い下がるが、下村から現金還付中止の前提で議論してきたのだから、還付を求める議員の声があることを情報として伝えたのみで、だからと言って還付を再開する話にはならないといった趣旨の答弁で逃げられることになった。

 斉木武志は下村博文が松本淳一郎に還付を求める議員の存在を電話で伝えたこと自体を、「不透明なのでやめるべきだという安倍会長のお考えとは違う声ですよね」と追及するのではなく、
「現金は不透明」と性格付けた安倍晋三の言葉自体を下村博文自身がどのような法的意味合いで受け止めていたのかを問い質すべきだったろう。

 もし下村博文が現金還付を合法的な色合いを持たせて解釈することになっていたのなら、西村康稔が証言したように「不透明で疑念を生じかねない」としている以上、そのような解釈は成り立たないことになるが、還付を求める国会議員の存在を電話で伝えたとしても、その行為を問われることになることはない。

 違法性の色合いを持たせた解釈で受け止めることになっていたからこそ、中止の指示に従い、所属国会議員に還付中止の電話連絡を入れるというプロセスを取ったはずであり、8月の会合では「安倍会長の還付は行わないという方針を維持するという中で」とか、「還付をしないという安倍会長の意向を維持しながら」と間接的な物言いで、「不透明で疑念」の法的意味合いに添う姿勢を示していて、その線で現金還付に代わる合法的となる政治資金を手当する方策を議論することになったはずであり、下村博文自身も渡辺創の問いに、「安倍会長の思いの中で我々も動いているわけでありまして」と同じ姿勢であることを一方では示しているのである。

 当然、たった一人の国会議員の還付再開の要請であったとしても、現金還付という仕組みを違法性のレベルで見なければならないことになっているのだから、そのような議員の存在を"事務的に"であったとしても、報告すること自体が安倍晋三の「不透明で疑念を生じかねない」とした現金還付中止の意図を無視する、常識では考えられない行動となる。

 このような意味で"電話した"は実際の出来事と見ることはできないし、もし要請を受けたが事実であるなら、その要請を受けた時点で、安倍晋三の現金還付中止の意思との関係で「安倍会長の思いに逆らう動きを見せるわけにはいかない」と幹部の立場から相手に説得を試み、安倍晋三の意思通りに中止を徹底させる当たり前の努力を払うべきで、払っていれば、電話をする必要性は生じないし、生じない努力を果たすのが幹部としての当然の役目であるにも関わらず、果たすべきプロセスを省いているのだから、こういった意味からも、"電話した"は何らかの目的を持った作り話と見る他ない。

 では、どのような目的を持たせた作り話なのだろうか。4月の会合で安倍晋三は「現金還付は不透明で疑念が生じやすい」との理由を紹介して現金還付の中止を指示したと安部派幹部の西村康稔と下村博文はそれぞれの政倫審で証言。他の塩谷立と世耕弘成はただ単に「還付中止を指示した」と証言。

 そして8月の会合で、繰り返しになるが、「安倍会長の還付は行わないという方針を維持するという中で」、あるいは「還付をしないという安倍会長の意向を維持しながら」現金還付に代わる政治資金手当の方策を議論したが、塩谷立を除いて結論が出なかったとする幹部3人の証言は安倍晋三の現金還付中止理由との兼ね合いで非常に整合性が取れている。

 だが、4月の会合での安倍晋三の現金還付中止の指示に対して8月の会合で現金還付を求める議員が存在し、「現金還付もやむ無し」との結論に達したとの松本淳一郎と塩谷立の証言は安倍晋三の指示を真っ向から破棄している点に於いて整合性は何ら見い出すことはできない。

 事件のほとぼりが冷めたなら、今後も大臣職を経験することになるだろう西村や世耕に何のメリットもない松本淳一郎と塩谷立の証言となるが、尤も証言の食い違いを問われたとしても、下村博文と同様に"認識の齟齬"でかわすことになるだろうが、松本淳一郎と塩谷立にどのようなメリットがあるのだろうか。

 今後の経済的保障を担保に"毒を喰らわば皿まで"、"一蓮托生"の覚悟がメリットでは我慢ならず、一寸の虫にも五分の魂とばかりに自らの正義を証明することにメリットを賭けたということなのだろか。

 しかし4月の会合と8月の会合が実在しなかった会合で、安倍晋三の名誉を守ることと安倍派幹部たちが収支報告書不記載に気づいていなかった、いわば自らを無罪放免に持って行くためのデッチ上げだと見ると、松本淳一郎の「2022年7月末頃にある幹部から還流を求める議員がいると知らされた」と「8月会合で現職でない方が再開決めた」の証言と下村博文の「7月に松本と安倍会長に電話した」の証言からは別の側面が見えてくる。

 先ず4月と8月の会合をデッチ上げと見る根拠は、4月の会合で現金還付中止を指示したなら、その時点で派閥のボスという立場にある安倍晋三は所属議員のモチベーションを維持する目的と同時に自前で満足に政治資金を手当できない議員に対して現金還付に代わる資金集めの方策を自ら提案するか、幹部たちに構築させるかして、組織の変わらぬ結束を意図する責任を有していたはずだが、安倍派幹部がそのような責任主体として扱わずにただ単に還付中止のみの登場で終わらせている点はあまりにも不自然で、中途半端に過ぎ、現実感を喪失させている。

 安倍晋三のこのような非現実的な存在性からも、4月の会合が事実あったことと認めることはできない。

 さらに幹部の誰もが4月と8月の両会合共に「違法性についての議論は一切行われなかった」といった趣旨の証言を行い、自分たちが不記載に気づいていなかったことの裏付けとしているが、このことは安倍晋三の「現金還付は不透明で、疑念を起こしやすい」の言葉からどのような法的な意味合いも受け取らなかったことを意味させていて、生身の人間としてはあり得ない無感覚な存在として自分たちを描いていることになり、両会合共に実在したという根拠を失わせる。

 では、このように4月と8月の会合をデッチ上げと見ると、松本淳一郎の「8月会合で現職でない方が再開を決めた」の証言と下村博文の「7月に一人の議員から還付を求める声があることを松本と安倍会長に電話した」はどのような目的、メリットがあるのだろうか。

 小説や演劇で登場人物の内面に矛盾した心理を用意し、心理同士を衝突させて、葛藤を生み出し、物語を盛り上げる。あるいは物語の展開の上で人物同士間に矛盾した行動を引き起こして、確執や反目を生み出し、物語を活気づける。このように心理面や行動面での矛盾という要素が読み手や観客の興味を惹きつける。

 8月の会合では現金還付に代わる政治資金手当の方策を議論したが、結論を出すことはできなかったという安倍派幹部の西村康稔と下村博文と世耕弘成の証言に対して8月の会合で現金還付の再開が決まったとする安倍派事務局長松本淳一郎と塩谷立の証言の矛盾を用意することで、4月の会合に対して8月の会合では実際にはどのような話し合いが行われていたのか、追及の焦点を当てさせることになり、結果として4月と8月の会合共に正真正銘、実在した会合であると思わせることに成功している。

 そのように思わせるための松本淳一郎の「8月会合で現職でない方が再開を決めた」の証言と下村博文の「7月に一人の議員から還付を求める声があることを松本と安倍会長に電話した」の連携プレーだということである。

 4月の会合と8月の会合はデッチ上げに過ぎないという観点に立つことによって安倍派幹部たちが収支報告書不記載を承知していて現金還付を受けていたことが証明できる。
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安倍昭恵はそのオタメゴカシに騙されて領土返還何ら進展させずのプーチンと面会、安倍晋三を偲ぶ

2025-06-01 05:18:41 | 政治
 お世辞にも聡明とは言えない安倍昭恵がプーチンの招待を受けたとかで、2025年5月30日にロシアの首都モスクワで大統領プーチンと面会したと各マスコミが取り上げた。

 ロシアは現在、ウクライナに対して武力による現状変更を強行したことを理由に日本政府の制裁下にあり、渡航中止勧告対象となっている。政府関係者の資格ではなく、元首相夫人の立場でのロシア渡航はある意味、ロシアの力による現状変更を問題視していないことを示すことになる。プーチンにとって有り難い象徴となる安倍昭恵のロシア訪問であり、プーチンとの面会であろう。

 2025年5月30日付け「NHK NEWS WEB」記事が面会時のプーチンの発言と面会後の安倍昭恵の動向を伝えている。

 プーチン「安倍元総理大臣がロシアと日本の協力関係の発展に果たした貢献を忘れることはない。彼の夢は、両国間の平和条約の締結であり、彼はこれに真剣に取り組んだ。我々は共に着実に進展を遂げた」

 安倍昭恵はプーチンが発言で見せた巧妙な誤魔化しに気づいただろうか。日本政府は領土問題解決後にロシアとの平和条約締結という方針を堅持している。対してプーチンは安倍昭恵に領土問題抜きの平和条約締結が安倍晋三の夢であるかのように見せかけ、北方四島に関わる自身の主張を暗に正当視させている。

 2016年12月15日、プーチンが訪日し、安倍晋三の故郷山口県長門市で通算16回目となる首脳会談が行われ、翌日東京に移動、そこで17回目の首脳会談。会談後の「日露共同記者会見」でプーチンが述べた発言を要約してみる。

 「日本は1855年の日露和親条約によって『南クリル列島』の諸島を受け取り、ちょうど50年後の1905年の日露戦争ののちにこれらの軍事行動の結果として、更にサハリンの北部を最終的に獲り、更に40年後、1945年の戦争ののちに今度はソ連がサハリンを自国に取り戻しただけではなく、『南クリル列島』の島々をも取り戻した」

 ロシアはそれまで「北方4島は第2次世界大戦の結果、ロシア領となった」と主張していたが、プーチンはここでは元々ロシア領だった北方4島を取り戻したと主張、取り戻した領土だから、返還の必要も義務もないという理屈となる。

 要するにプーチンは返還する意思はサラサラなかった。安倍晋三にしてもまるきりのバカではないから、気づいていたはずだが、サジを投げる訳にはいかないから、安倍晋三が7ヶ月前の2016年5月のロシアのソチ首脳会談で提案した「8項目の経済協力」案に期待したのだろう、その具体化推進で協議を行い、ロシアとの経済協力を着々と進めることになった。

 つまり魚を釣ろうとして、餌を付けた針を垂らしたものの、餌だけ奪られて、魚を逃してしまうことになった。このことがよりはっきりしたのは安倍晋三も出席した、2年後の2018年9月12日ロシア・ウラジオストク開催の東方経済フォーラム2018全体会合での出来事であった

 安倍晋三は自らのスピーチで、「日ロの間には、戦後70年以上の長きに亘り、平和条約が締結されていない。これは異常な状態です」と前置きしてから、自らが提案した「8項目の経済協力」案の実現を通してロシアと日本が力を合わせれば、ロシア住民の生活の質が向上し、ロシアの人々が健康になる根拠となり、ロシアの都市は快適になって、ロシアの中小企業は格段に効率性を獲得、ロシアの地下資源は日本との協力によってなお一層効率よく世界市場に届くようになり、両国間はヒト、モノ、資金が集まるゲートウェー化し、その結果、中国、韓国、モンゴル、そしてインド・太平洋の国へとつながる、大きくて自由で公正なルールに支配された平和と繁栄、ダイナミズムに満ちた地域が登場することになるといった、いわば日本の国力のバックアップを欠かすことなしにロシアの発展はないかのような一大演説をぶったのである。ある意味、出席している諸外国首脳の前でプーチンに恥をかかせた。

 安倍晋三が描いたそのようなロシアの発展は北方4島返還と平和条約締結を条件としていることは断るまでもない。
 
 プーチンはカチンときたに違いない。既にスピーチを終えていたが、司会者に発言を求められて、「今思いついた。まず平和条約を締結しよう。今すぐにとは言わないが、ことしの年末までに。いかなる前提条件も付けずに。その後、この平和条約をもとに、友人として、すべての係争中の問題について話し合いを続けよう。そうすれば70年間、克服できていない、あらゆる問題の解決がたやすくなるだろう」と発言、平和条約締結を領土返還交渉の前提条件とした。

 だが、長門と東京会談で返還する意思のないことを露わにしたプーチンは平和条約締結を歴史のひと区切りとして食い逃げを図る腹積もりであったことは想像に難くない。

 このことは上に挙げた安倍昭恵と面会した際のプーチンの発言にも現れている再度取り上げる。

 「彼の夢は、両国間の平和条約の締結であり、彼はこれに真剣に取り組んだ」――

 領土の返還は問題外に置いている。新たな領土への執着は単に地図の上で国境線を外に広げる
ことだけを目的としているわけではなく、新たな国土に対して鉱物資源等、様々な資源の埋蔵を見込むことができれば、国に富を約束する一助となり、敵性国家に対して防衛戦や前線基地をより外側に持っていく価値を手中にできる。

 プーチン・ロシアがウクライナの自国領土化を狙って武力侵略を試みたのはウクライナにある豊富な各種資源を自国のものとする狙いだけではなく、ウクライナ国土をNATOに対する前線基地とする目的もあったからだろう。

 こういった意味でのプーチンの領土拡張欲求からすると、様々な資源のそれ相応の埋蔵が推定され、西側諸国に対する防衛線としての価値を付与する意味からも、北方4島を手放しはしないだろう。

 安倍昭恵とプーチンの面会は一部が国営テレビで放映されたそうで、プーチンが安倍昭恵に花束を渡して歓迎。プーチンの言葉を聞きながら涙を流す場面も見られたと「時事ドットコム」記事が伝えていた。要するに北方4島を返還する気がないのだから、プーチンの安倍晋三称賛はただのオタメゴカシに過ぎないのだが、そのことに気づかないままに涙を流すことができたのだから、聡明とは程遠く仕上がっているのだろう。夫婦揃ってプーチンの狡猾さに騙された。
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吉川さおりの他力本願な、タダ飯くらいの対世耕弘成2025年4月参院証人喚問つまみ食い程度の追及

2025-05-26 07:43:00 | 政治
 立憲民主党の吉川さおりが2025年4月21日の参議院予算委員会で世耕弘成参考人招致追及の2番手に立った。と言っても、世耕本人に対する追及を直ちに開始するのではなく、それとは無関係に政府参考人として呼んだ小林史武参議院事務総長に当日の議題や政治倫理審査会の目的、趣旨、その他審査会を行うに当たっての費やした努力、参院政倫審証人喚問出席議員数等々を9分余も掛けて質問し、その答弁を得てから、世耕本人に本格的な追及を開始している。

 これだけの時間や手間が掛かって正常な政治活動への負担やムダが生じていると知らしめたかったのだろうが、これらは前以って参議院側に問い合わせた資料としてパネルで示し、説明すれば、時間の節約となって、その分を追及に回すことができると思うのだが、当方の考えとしたらムダでしかないことに相当程度のウエイトを置いた吉川さおりの質疑となっている。

 では、その遣り取りの箇所を最初に取り上げてみる。

 吉川さおり「立憲民主党の吉川さおりでございます。本日はどうぞよろしくお願い致します。最初に本日の議題について参議院に伺います。

 小林史武参議院事務総長「予算の執行状況に関する調査のうち、政治資金問題等に関する件でございます」

 吉川さおり「本日の予算委員会には事実関係の確認のため、参議院事務総長に出席頂いておりますが、基本的に答弁は世耕参考人のみでございます。本日の議題は今答弁ありましたとおり、政治資金問題等に関する件であり、いわゆる自民党の一部派閥における政治資金規制法の趣旨に反する組織的・集団的・継続的な還付金の不記載等について質疑を行うために開会されています。

 よって、各会派の質疑者を見ても、政治倫理審査会に委員を有する会派からは、私を含めて全員が政治倫理審査会の幹事及び委員となっています。今回の質疑に際し、改めて政治倫理審査会における審査の趣旨や還付金の不記載問題に関して、昨年来開催された本院政倫審の経過を振り返っておきたいと思います。そこで、政治倫理審査会の目的規定である規定の第1条について参議院に伺います」

 小林史武参議院事務総長「政治倫理審査会規定第1条は政治倫理審査会は政治倫理の確立のため、審査会の委員の申し立て、または議員の申し出に基づき、委員が行為規範、その他政治倫理の確立に資するものとして、議長が定める法令の規定に著しく違反し、政治的・道義的に責任があると認められるかどうかについて、これを審査するものとすると定められております」

 吉川さおり「即ち政治倫理審査会は政治的道義的に責任があると認められるかどうかを審査する場でございます。立法府、国会で行うことは刑事責任ではございません。政治的・道義的責任を問うことです。

 本院政治倫理審査会は自民党一部派閥による政治資金収支報告書の不記載等の事案に際し、昨年3月8日、全会一致で審査を行うことを決定しました。審査を伴う政倫審の開会は本院の歴史の中で残念なことですが、初めてのことでした。

 では、最初の弁明者が出席した開会日、直近の弁明者が出席をした政倫審の開会日についてお伺いします」

 小林史武参議院事務総長「ご指摘の最初の弁明が行われた審査会は令和6年3月14日、そして直近の弁明が行われた審査会は令和7年4月18日でございます」

 吉川さおり「ここで世耕参考人にお伺い致します。世耕参考人が出席をされた日付はいつでしょうか」

 世耕弘成「今、小林事務総長がおっしゃった一番最初の会合、3月14日でしょうか?あの、その日一番最初に弁明に立たせて頂いたと認識しております」

 吉川さおり「今、世耕参考人にご自身も仰ってくださいましたが、奇しくも世耕参考人、今回の一連の事案にかかる最初の出席者でございました。では、世耕参考人を含めて、その後本院政倫審に出席した議員の人数について参議院事務総長にお伺いいたします」

 小林史武参議院事務総長「現在、政治倫理審査会で審査中の事案に関し、審査会に出席し、弁明を行った議員は30名でございます」

 吉川さおり「30人の議員が本院政治倫理審査会に出席をして、弁明を行われたということでございますが、では、その30人の弁明質疑を行うために開かれた開会の回数について教えください」

 小林史武参議院事務総長「ご指摘の開会回数は13回でございます」

 吉川さおり「それではま世耕参考人は最初の出席者でございましたが、令和6年3月14日の次の出席及び説明で来られた日はいつか教えてください」

 小林史武参議院事務総長「令和6年12月18日でございます」

 吉川さおり「初会の3月14日から12月18日まで実に約9ヶ月間の空白期間がございました。総選挙後の昨年11月下旬出席する意向が一斉に示されたことを受け、11月29日の日に非公開や公開といった傍聴に関する意向確認の方法など、政倫審の幹事懇談会で協議を致しましたが、その後意向は二転三転し、確定したのは12月20日でした。そこで、11月29日から12月20日までの間に開会された本政治倫理審査会の幹事懇談会の日付と回数についてお伺いします」

 小林史武参議院事務総長「ご指摘の幹事懇談会は令和6年11月29日、12月4日、12月12日、12月16日及び12月20日の5回でございます」

 吉川さおり「実はこれ11月28日に27名の議員が一斉に出席の意向を示されました。よって翌11月29日幹事懇談会を開会して非公開を希望するか、公開を希望するか意向確認文書を配布し、その結果を12月4日の幹事懇談会で共有しました。そのときは公開4名、非公会23名でこのとき公開の意向を示された方に関しては、先行して12月18日に弁明・質疑を行いました。

 しかし、それ以外の23名の方については一人を除き意向変更を繰り返されたため、その度に幹事懇談会を開く必要がありました。しかも22名もの議員が一斉に非公開から(傍聴は)議員のみ、議員のみから公開へと変わっていきましたので、回数を重ねたということでございます。

 ま、結果として世耕参考人を含め、参議院にお出まして頂いたわけですが、それでは世耕参考人が出席をされた後の当院審査会の弁明及び質疑についてはご覧になられているかどうか、世耕参考人、ご覧になったか、なってないかだけて結構です。お願いします」

 世耕弘成「全部完璧に見てるとは限りませんが、あの、時間の許す限りインライン中継等でですね、見させて頂いてますし、その後の報道については全てつぶさに読ませて頂いてるところであります」

 吉川さおり「私も審査の中でこんなことを先輩議員にはお尋ねしたくなかったんですけれども、ご覧になりましたかと2人程お伺いをして、確かにあまりにも人数が多いので分量で相当なものでということで、全てご覧になっていたかどうかと言われれば必ずしもそうではありません。

 しかしながら、私は職責上政治倫理審査会の幹事でございますので、全ての議員の苦しい思い、それから色んなご発言、受けたまってきました。ですので、私は全て拝聴してまいりました。そこで重ねてお伺いいたします。

政治倫理審査会の会議録については閲覧をされましたでしょう。 されたか、されていないかのみをお答えください」

 世耕弘成「閲覧はしておりません」

 吉川さおり「ここでまた参議院事務総長に伺います。本日はこれは予算委員会でございます。予算委員会は政治倫理審査会とは全く異なります。これは何が異なるかというと会議録と公開の扱いについてでございます。そこで政治倫理審査会にかかる会議録の規定の概要についてお尋ねします」

 小林史武参議院事務総長「政治倫理審査会規定第25条第1項において、審査会の会議録はこれを閲覧することができない。ただし、議員その他のものの傍聴を許すものとされた審査会の会議録を除くについては、この限りではないと定められた同上第4項において、会議録の一覧は会長が指定する場所に於いて行わなければならないと定められております」

 吉川さおり「今、参議院事務総長から答弁がございましたとおり、これまで行われてきた政治倫理審査会の弁明、質疑と本日の予算委員会では会議録の公開の点で大きく異なります。会議録を公表する規定とはなっていない政治倫理審査会では行いようのない誰もが閲覧できる状態で記録を残すということに拘って、少しでも構造的な問題や問題の素材が明らかになるような質疑にしたいと思います。

 そこで世耕参考人に伺ってまいります。還付金の仕組みについては知っていたか、ご存知だったか、そうでなかったかのみお伺い致します」

 吉川さおりは「自民党一部派閥による政治資金収支報告書の不記載等」に基づいた政倫審開催の依って来たる様々な重大性を政府参考人の説明を借りて突きつけた上で、今回の参院予算委参考人招致の質疑は記録に残り、誰もが閲覧できるから、記録と閲覧に耐えうる質疑、具体的には「構造的な問題や問題の素材」に、いわば少しでも迫る追及をしたいと約束した。

 この約束は、当然、その履行を自らの責任行為としたことになる。約束の責任を果たさなかった場合はただ単に大見得を切っただけのことで終わる。

 ところが、最初から期待外れな追及でスタートさせている。「そこで世耕参考人に伺ってまいります。還付金の仕組みについては知っていたか、ご存知だったか、そうでなかったかのみお伺い致します」を最初の追及としているが、「ご存知だった」などと答えるはずもない分かりきったことを聞いているのだから、閲覧に耐えうるの大見得は単なる見せかけの腰砕けであることを早くも露呈させている。時間をムダに費やしている点からしたら、当然なことなのかもしれない。

 世耕弘成にしても前回参院政倫審で何回か繰り返し、他の3人の幹部、西村康稔、塩谷立、下村博文も何回か繰り返してきたほぼ同じ答弁を手もなくまた繰り返させているに過ぎない。

 世耕弘成「残念ながらですね、自分の事務所のチェック等も甘かった点もあってですね、還付というものが行われていて、それが収支報告に載らない形で行われた、派閥の収支報告にも、各議員の資金管理団体の収支報告にも載せない形で行われてるというのは本当にこれは恥ずかしながらと申し上げますが、この事態が発覚する前はですね、私自身、承知をしておりませんでした。このことは本当に申し訳ない。幹部の1人として責任を感じてるところであります」

 この答弁から2024年3月14日参院政倫審での世耕の答弁との間に既視感を持たないとしたら、タダ飯食らいのなまくらそのものとなる。

 この証拠となるのが吉川さおりの引き続いての追及である。

 吉川さおり「それでは還付金の存在はご存知でしたでしょうか?ご存知だったか、ご存知でないかお答え頂けますと幸いです」

 世耕弘成「ま、あのたくさん売った人には還付の仕組みはあるらしいというのはですね、これは随分まだ若手議員の頃にですね、聞いたことがあると、そういうレベルでありました。で、私自身はですね、兎も角ノルマ通りに売れるかどうかもヒヤヒヤという状況でした。特に若手の頃は本当に大変でありましたし、私は一つこれ政倫審でも申し上げましたが、拘りとして和歌山の人には売りたくない。地元の選挙区の人には売りたくない。なぜならば東京で開く派閥のパーティーを和歌山の人に押し付けるというのはですね、これは私は良くないと思っていたので、その分まだまだ経済会と人脈の少ない若手議員としては、ともかくノルマを今年も行けたようだという形で事務所の方から報告を受けて、ま良かったねっていうのが最初の頃のことでありました」

 吉川さおり「今は和歌山の方には売りならないということは、これ去年3月14日の政倫審の場で世耕参考人ご自身も発言されておられましたが、この還付金の存在については、実は去年の政倫審の場でも、『私は随分前から、10年以上前だと思いますけれども認識をしておりました。還付金という仕組みがあること、それは知っていました』と繰り返し答弁をされていますが、一方で、『深く考えることがなかった、深く考えることがありませんでした。還付金制度というものを殆ど意識しないで』ということはどこかに意識はあったということではないかと思います。

 で、そこで先程のやり取りありましたが、令和4年4月には安倍元総理のご指示ということでしょうが、ノルマ通りの販売にしようと元総理が提案された際は、先程の遣り取りの中でもご発言ありましたが、清和会のメンバー全員に連絡をされたということでよろしいございますでしょうか」

 2024年3月14日参院政倫審での世耕の答弁を繰り返させるだけの無限ループを自ら招き寄せている。何のために「会議録を公表する規定とはなっていない政治倫理審査会では行いようのない誰もが閲覧できる状態で記録を残すということに拘って、少しでも構造的な問題や問題の素材が明らかになるような質疑にしたいと思います」と見栄を切ったのか、その面目をその場限りに捨て去ってしまったようだ。

 特に気づかなければならない問題点は安倍晋三の現金還付中止及びノルマ通りの販売指示行為と幹部たちの清和会のメンバー全員に対する連絡行為の間にどのような動静も意思表示も現れていないことである。

 前以っての説明もなしに「現金還付は中止し、ノルマ通りの販売にする」といきなり指示したのか、指示を受けて直ちに電話連絡を行うことになったのか、もしそうだとしたら、派閥という組織運営上必然とするそれなりの意見交換を経ることもなく事が決定したことになり、常識的にはあり得ない展開となる。

 常識的にあり得る展開とするためには当然のこととしてそこに原因や理由を問う"なぜ"や"どうして"等々の問いかけを介在させていて然るべきだが、そういったことを一切省き、考慮外に置いて、吉川さおりは無邪気に「清和会のメンバー全員に連絡をされたということでよろしいございますでしょうか」と尋ねている。

 もし考慮内に置いていたなら、西村康稔が2024年3月1日の衆院政倫審で証言した、安倍晋三が2022年4月の会合で「現金は不透明で疑念を生じかねないから、こうした現金の還付はやめる」と指示したとしている発言に対して安倍派4人の幹部は、「なぜ現金還付は不透明で疑念を生じかねないのだろう」と何らかの疑念が生じなかったのか、その疑念に対して「なぜと問い返すようなことはしなかったのか」、あるいは中止指示を受けて、その指示を派閥所属議員に直ちに電話連絡したとしているが、「現金還付中止の理由を安倍晋三が指示した同じ文言で、『現金は不透明で疑念を生じかねないから』と伝えたのか。あるいは他の理由を用いたのか」、さらには、「電話連絡ではなく、なぜ手間のかからないメールの一斉送信で処理しなかったのか」等々の"なぜ"、"どうして"の追及を通して2022年4月会合での遣り取りの実態を炙り出すよう努め、真相解明の手掛りとすべきだが、できたことは2024年3月14日の参院政倫審での答弁と同じ内容を引き出す追及のみだった。

 以後の両者の遣り取りを見てみる。

 世耕弘成「これは安倍会長からのご指示でありますから、伝達漏れがあってはいけないということで、私は常にそういう政治家同士の連絡っていうのは、あのこれ事務所を介さないで極力ご本人の携帯電話に電話をさせていただいて、直接伝えるということを当時モットーとしておりましたので、私は4月7日の安倍会長からの指示を受けて、速やかにメンバー全員に電話をしたというふうに記憶をしております」

 吉川さおり「今答弁なさった通り、昨年3月14日の遣り取りの際もこれはノルマ通りでいいんじゃないかということで、もうそのときは直ちに参議院議員に全員に連絡をさせていただきましたと仰っておられますので、おそらくそうなんだと思います。

 ところが私、さっきも申し上げましたとおり、世耕参考人を筆頭に29名、全員分本当に苦しい時間でしたし、悲しい時間でもありましたけれども、それぞれの弁明・質疑、拝聴をする立場にございました。

 令和4年の4月のノルマどおりの連絡に関する各議員について、これ遣り取りを行われています。この各議員の記憶については今から申し上げるとおりでございました。世耕議員から連絡があったとした議員9名、これ時期不明を含むが、直接世耕議員から連絡があった。誰からもなかった10名で、政治倫理審査会で令和4年のノルマどおりという連絡があったかなかったかというやりとりがなかったのが9名、その他、ある意味メディアから聞いたとおっしゃった方が1人いらして計29名です。審査会で遣りとりがなかった10名を考慮しても誰からもなかったとする議員が9名いらしたんです。

 ですので、世耕参考人としては全員に連絡をしたけれども、受けた側はもしかしたら記憶がどっか行ったのかもしれませんけれど、そこで先ずは齟齬が生じているということがございます。

 そこでもうこの遣り取りをしても仕方ありませんので、世耕参考人にご自身のことについてお伺いしたいと思います。世耕参考人自身に課せられていたノルマの金額ということについてはお分かりでしたら。

 ここがね、自民党の調査対象を平成30年以降5年ですけれども、不記載とか還付金の額を議論するときにこれまた必要な情報だと思うんですけれども、課せられていたノルマの金額のみお答えください」

 世耕弘成の証言「私は4月7日の安倍会長からの指示を受けて、速やかにメンバー全員に電話をしたというふうに記憶をしております」に対して安倍派参議院議員に対して開催された各参院政倫審での各証言から吉川さおりが纏めた連絡の有無は――

世耕議員から連絡があったとした議員9名
誰からもなかった10名
ノルマどおりという連絡があったかなかったかという遣り取りがなかったのが9名
メディアから聞いたが1人――計29名

 計29名中、世耕議員から連絡があったが約3分に1の9名に過ぎないと言うこと、連絡の有無に関わる遣り取りがなかったの9名を合わせると、半分強が連絡の交渉がなかったことになるのだが、世耕自身が「速やかにメンバー全員に電話をしたというふうに記憶をしております」と証言していることとの矛盾を突くことはせず、「もうこの遣り取りをしても仕方ありませんので」と早々に相手を無罪放免してしまう、この手ぬるさは、「会議録を公表する規定とはなっていない政治倫理審査会では行いようのない誰もが閲覧できる状態で記録を残すということに拘って、少しでも構造的な問題や問題の素材が明らかになるような質疑にしたいと思います」と自ら宣言した約束を自ら裏切る態度となるが、最悪なのは裏切っていることを自覚できないままに手ぬるい追及を続けている点である。

 要するに色々と調べてはいるが、調査で浮かび上がった事実と答弁と間の矛盾にそれなりの嗅覚を働かせて食いつくべきところを食いつくことができずに遣り過してしまっている手ぬるさはタダ飯食らいそのものとなる。

 但し議員によって連絡があった、なかったの矛盾は口裏合わせが効く相手かどうかの可能性によって生じたと疑うこともできる。安倍派参議院の親睦団体約40人の「清風会」会長は世耕弘成。安倍晋三に対しては各議員共に忠実度100%であっても、世耕弘成に対しては忠実度にバラツキがあり、世耕弘成の方もそのことを感じ取っていて、自身の依頼に対しては口が硬いと信用できる相手にだけ、「2022年4月7日の日に現金還付中止の電話があったことにしてくれ」と頼んだ結果、上記のような連絡があった、なかったのバラツキが出たと疑うこともできる。

 あるいは還付現金の不記載問題からの政治不信と参考人招致という方法で国会での真相究明の追及がこのようの大事となるとは予想できずに口裏合わせを10人程度で大丈夫だろうと済ませたということもありうる。

 口裏合わせだったかどうかの解明次第で、4月、8月の会合がデッチ上げだったどうかが判明する。しかし吉川さおりの頭にはデッチ上げではの疑いが1ミリもないのだろう、電話連絡があった、なかった程度の分析だけで幕を引いている。

 以下、吉川さおりは相変わらず2024年3月14日の参院政倫審での世耕の証言をほぼ繰り返させる程度の追及に終始する。

世耕弘成「すいませんが、今、数字をパッと用意できてないんですが、恐らく最後の年は500万円がノルマであったというふうに記憶をしております。段々、段々、これ立場が上がっていくと、金額が大きくなるという仕組みでありました。ですから500万円が私の、ま、1つの最後のノルマだったというふうに思っております」

 吉川さおり「実際、昨年3月14日、世耕参考人ご自身が、『2019年、私は多分この年はノルマが500万円ぐらいだったんじゃないかと思います』と発言なさっておられますし、これも本当に心苦しかったんですけれども、1期目で閣僚をおやりになった、もう今回出席頂いた中のお一人が、もう1期目で閣僚になってしまって、ノルマが一気に上がってとっても辛かったというこういう心情を吐露してくださった方もいらっしゃいましたので、大体500万ぐらいでないかと思いますが、それでは世耕参考人、ご自身のノルマの達成状況、この年は達成したとか、この年は達成しなかったとか、そういうのを把握できたら是非ご教示頂ければと思います」

 世耕は最後の年のノルマは500万円くらいだと記憶していると答え、対して吉川さおりは昨年3月14日の参院政倫審で世耕自身が「500万円ぐらいだったんじゃないかと思います」と発言しているから、それくらいではないかと思いますと応じているが、違う金額を言うかもしれないと期待していて、言った場合はその矛盾を突こうとしていたのだとしたら、甘過ぎる。言ったとしても、記憶違いでしたと訂正できる。

 要するに相手が用意していた答弁で遣り過すことができる、追及という形から程遠い、無難な質問をぶつけたに過ぎない。

 「少しでも構造的な問題や問題の素材が明らかになるような質疑にしたいと思います」との物言いで派閥という構造上の問題だ、問題の要素を、いわば摘出するような質疑にしたいだと大上段に振りかぶったものの、言葉で言うだけで、その言葉を見せかけのものにしている。

 上記質問の最後に、「それでは世耕参考人、ご自身のノルマの達成状況、この年は達成したとか、この年は達成しなかったとか、そういうのを把握できたら是非ご教示頂ければと思います」と求めているが、世耕は2024年3月14日と共通する答弁を繰り返したのみだから、吉川さおりの質問の意味を失う。

 「2012年ぐらいまではノルマ達成はカツカツであった、大分ノルマ上がってるけど大丈夫かという確認を事務所にして、『いや、大丈夫です。何とかなってます』と言って、そこで私はパーティー券のノルマの達成状況のチェックってのは終わってしまっています」

 世耕弘成が一度証言した事実関係を再度提示させたに過ぎない。

 吉川さおり「この間29名の議員の弁明・質疑に臨むに当たってノルマは把握されてる方いらっしゃるんです。ノルマも知らないっていう方いらっしゃったんですけど、ノルマは把握してる、達成しなかった場合は自腹をたくさん切ったと仰るんですが、ノルマを達成したかどうかっていうのは皆さん記憶はないというか、ご存知ないんです。これが不思議な共通点でございまして、なかなかノルマは知っていても達成したかどうかは達成してるもんだと思ってる。

 (ノルマが達成しているかどうか)気にも止めなかった。ここはやっぱり還付金と絡むからではないかと思われますが、どういうことなのか引き続いて伺ってまいりたいと思います。それでは次に世耕議員自身で明らかになっている還付金の額、自民党の去年の調査ですと平成30年から令和4年分までだと思いますが、還付金の額、世耕参考人ご自身の還付金の額についてお伺い致します」

 誰もがノルマを把握していながら、達成してるもんだと思っていた。「不思議な共通点」だと指摘していながら、「ここはやっぱり還付金と絡むからではないかと思われますが」とここでも自分で答を出してしまっている。

 ノルマを達成し、超えた分の現金還付を承知していたとした場合、次にそのカネの会計処理について考えたことがあるのかと問われたとき、考えたことはないと答えて露出される不自然さを避ける意味から、ノルマの把握止まりとし、あとは秘書が何も言ってこないから、多分、ノルマを達成しているだろうと任せきりにしていたとする手を打ったと疑うことができる。

 要するにこのような手続きの裏を返すと、収支報告書不記載を承知していながら現金還付を受けていたと見ることもできる。当然、吉川さおりはこの線から追及しなければならないのだが、何も追及せずに平成30年から令和4年分までの既に明らかになっている還付金の総額1542万円の各年それぞれの金額を、どのような意味からなのか尋ねている。

 世耕弘成は既に明らかにしている5年分の合計金額1542万円のみを伝えると、吉川さおりはなお各年ごとの個別の金額を知らせるよう求め、世耕弘成はそのデータは今日は持ってきていないと一旦は断わるが、机の上の資料をめくりながら、「ありました」と言い、「平成30年102万円。そして令和元年604万円。令和2年360万円。令和3年476万円。令和4年0円」だと答える。

 吉川さおりはこの答弁に対して「世耕参考人自身は不記載を派閥から指示があったとかなかったのか」と尋ねているが、既に2024年3月24日の参院政倫審で世耕自身が証言している総額1542万円に基づくのみでできる追及であり、各年それぞれの還付金額を聞かずとも済むはずだが、自分で回りくどいことをして時間のロスを自分から招いているだけではなく、既にほかの安倍派幹部同様に世耕にしても自身に対する還付現金の不記載を知ったのは2022年11月に入ってからの報道によってだと証言しているのだから、答えるはずもないことを承知せずに問い質すムダな時間を費やしている。

 世耕弘成「私自身にですね、派閥の方から例えば会長とか事務総長とか事務局長から不記載にしなさい、してくれというような指示はありません。ありませんでした」

 吉川さおり「なぜお尋ねしたかと申し上げます。昨年3月14日、世耕参考人には弁明の中でこうおっしゃっています。『多くの後輩議員たちについては、政策集団事務局から昔からこうなっているからと指示されて、その通り処理してきた結果、大きな批判を受けることになっています』

 ご自身についての言及がなかったためですが、例えば衆議院は昨年3月1日及び3月18日に主要な、それこそ4月7日の会合、8月5日の会合に出席をされた方々が全て派閥からの事務的な伝達、誤った伝達、記載不要との協議、記載しなくていいという指導があったことから、その分の記載をしていなかったとそれぞれがおっしゃっていますので、お尋ねをした次第です。

 もうこのことについてもやりとりを重ねるより、事実関係について引き続きお伺いします」

 4月と8月の会合に出席していた世耕を含めた西村、塩谷、下村の派閥4幹部共に不記載は承知していなかった、報道で知ったと証言している以上、「派閥から記載しなくていいという指示を受けた議員が少なくない数で存在する一方で幹部4人が不記載の指示を受けていなかった、その違いはどういうことなのか」と、その矛盾点を突くべきだったろう。

 問わなかったばかりか、「もうこのことについてもやりとりを重ねるより、事実関係について引き続きお伺いします」と言って、早々に引き上げてしまったのでは何のために取り上げたのか意味を失う。

 次いで質問した「事実関係」とは安倍派参議院議員は改選の年のパーティー券売上は全額還付制度となっていたことのいついてである。遣り取りを見てみる。

 吉川さおり「改選期参議院議員の改選期だけノルマなしという話は既に政治倫理審査会の場でも相当やり取りをされ、明らかになっていることでございますが、世耕参考人の改選期は平成10年の初当選の後は平成13年、19年、平成25年、令和元年だったという認識でよろしいでしょうか」

 世耕弘成「そういう認識で結構だと思います」

 吉川さおり「世耕参考人も改選期は結果としてノルマなしということでよろしいございますか」

 世耕弘成「今の改選期、全部ノルマなしだったかどうかは申し訳ありませんが、今のいくら記録をたどっても明言することはできませんが、少なくとも令和元年2019年の私の改選期の際はですね、全額が還付になっていたという結果であります。これもですね。恥ずかしながら私自身分からなかった。事務所もよく認識をしていなくて、最初ノルマオーバー分5年分ということで、チェックをしたら1042万円とうちの事務所からは出てきました。

 で、派閥と合わないで、その合わない分がまさにノルマそのものが返ってきていたという部分でありました。これはもうチェックをしてなかった自分のことをですね、恥じるしかないというふうに思っております」

 吉川さおり「本日の遣り取りの中でも昨年3月14日の政倫審の中でもありましたが、世耕参考人ご自身改選期はノルマなしということを知った時期は今回の事態が報道されるまでご存知なかったということでよろしくございますか。それかどうかのみをお答えください」

 世耕弘成「今回の事態が明らかになるまでは、あの恥ずかしながら、私自身、参議院改選期ノルマなしということは知っておりませんでした」

 吉川さおり「この改選期のノルマなしにつきましては、(2025年)2月27日衆議院予算委員会参考人聴取に於いて当該参考人2月27日(自民党旧安倍派の元会計責任者松本淳一郎のこと)は次のように発言されています。

 『要するにノルマはありません。ノルマはありませんよと言っただけで、それは先生方も知っていたと思います。その代わり売るのは自由ですから、売った分はその先生方に帰属するのだから、私たちの方はどのくらい売ったのかとか、そういうのはちょっと分かりません』。こう発言をされています。

 即ち改選期はパーティー券販売収入について派閥事務局が把握できず、そのまま各議員、もしくは事務所の収入となり、結果的に実際の収入額を知っているのは各議員なり、各議員事務所ということになりやしないかと思うんですが、如何でしょうか」

 世耕弘成「ほかの事務所の対応は分かりませんけれども、あの、私の事務所はですね、きちっとパーティー券を派閥の方から受領をして、そしてその振込みをして、振込んで頂いて、そしてその金額をしっかり派閥に収めてるという形でありますから、派閥が何も知らないで、うちの事務所だけでですね、こう何かお金を扱うというようなことはやっておりません。派閥のパーティ券に関しては」

 吉川さおり「去年の3月14日、世耕参考人はこう仰ってます。『全額キックバックと仰いますけれども、要するにこれはノルマなしということなんですね』

 実はノルマなしという表現の方が不自然さは浮き彫りになると思います。ノルマがなく、売った分は議員に帰属し、派閥事務局は少なくとも知ることができないと事務局長がおっしゃっているんです。即ち今回の事案が発覚しなければ、この件はもしかしたら明るみにならなかったかもしれませんし、政治資金規制法の趣旨に著しく悖る行為であり、政治的同義的責任は免れないのではないでしょうか。

 で、令和4年4月には一旦ノルマ通り売ってねっていうことがあって、還付やめる連絡を申されたということでしたが、8月に再びこの取り扱いについて協議をしています。これが何を決めたというのは私は聞きたいわけではなくて、8月に会合があった。これはどの立場に立とうとも一緒だと思います。

 で、ほかの3人の衆議院議員は当時こう発言しています。『ノルマ以上に売った議員から返して欲しい、8月に売った分を是非お願いしたい。ノルマ以上の売り上げがあるこれは何らかの形で戻してもらえないか、これについて議論をした』ということでよろしいでしょうか。

 あの、戻し方というか、その還付の方法、どうやって担保してあげるか、これについてのみをお伺いします」

 世耕弘成「どうやって戻すかではなくてですね、議論の始まりはそもそも安倍会長のご指示があって、還付はやめろとおっしゃってるんだから、まずやめる。これ、私は冒頭その主張をしました。

 で、しかしそれに対して、とは言っても、もう売ってしまっている人がいる。これに対しては政治活動資金としてですね、もう織り込んでる人がいるので、これに対しては何らかの対応が必要じゃないか。その対応方法として各自のパーティ券のパーティーを派閥が買うという方法があるんじゃないかっていうのが、このときの議論だったというふうに記憶しています」――

 ノルマナシでも、売った分は全額還付されて、使い勝手のいい自らの政治資金となるのだから一般的には知名度の低い議員程、枚数を多く売るべく努力したはずである。しかしこれも秘書が自分の胸一つに収めてしたことなのか、議員も承知をしていて、秘書に売上から還付現金の取扱いまでのまで全ての事務処理を任せていたのか、追及側が証明しないことには真相究明は埒が明かないことになる。

 しかし吉川さおりはこのことを証明する努力はせずに「政治資金規制法の趣旨に著しく悖る行為であり、政治的同義的責任は免れないのではないでしょうか」と批判するのみで幕を閉じてしまっている。どうもこれはと決めたいくつかの重要な点を集中的に追及するのではなく、問題点をつまみ食い程度に取り上げて、尻切れトンボな追及をしては次の問題点に移って、再びつまみ食い程度の追及を開始する、その繰り返しとなっている。

 吉川さおりはこの質疑の最後の場面で令和4年4月の会合でノルマどおりの販売と決め、8月の会合で戻して欲しいという議員の声にどう担保するのかについて行なった議論の内容を聞き質しているが、8月の会合については証言がほぼ出尽くしている。それを覆す材料がなければ、同じ繰り返しを誘うだけである。

 事実、世耕から2024年3月14日参院政倫審での8月の証言と同じ内容の発言を引き出したに過ぎない。

 4月の会合の証言の中からこそ、追及を欠いたままにしているピースがあることに気づかなければならない。2024年3月1日の衆院政倫審で安倍派幹部西村康稔が証言した、安倍晋三が口にしたとしている、「現金は不透明で疑念を生じかねないから、こうして現金の還付はやめる」と指示した言葉は明らかに適法性を示唆した意図を含まず、逆に違法性を臭わせる性格付けとなっている。

 だが、4月と8月の会合に共に出席した安部派幹部の4人共に違法性を臭わせた安倍晋三の言葉を無視し、4月の会合も8月の会合も、違法性に関する議論はなかったとして、現金還付制度の違法性に気づいていなかった理由としている。

 また追及側の野党議員の誰もが安倍晋三の現金還付の性格付けの言葉から幹部4人がどのような感触を持ったのか、どのような印象を受けたのかを問い質すこともなく、安倍晋三の性格付けを何事でもないこととのみ扱って、結果的に幹部4人を違法性とは距離を置いた安全地帯に住まわせている。

 逆に問い質して、幹部4人それぞれの判断から現金還付の違法性を感じ取ることになったのか、感じ取るまでもなく知り得ていたことなのかどうかの追及材料とすべきだが、その方法を誰も思いつくことなく、吉川さおりもその一人となっている。

 結果、ノルマ超えの現金分を議員個人の政治資金パーティーのパーティ券を派閥が購入することで、いわば消化するといった案が議論された等、2024年3月14日参院政倫審と変わり映えのしない答弁を引き出した程度で終えている。

 変わり映えのしない質疑応答を続けても仕方がないから、以下、遣り取りのあらましをピックアップすることにする。吉川さおりは安倍派会計責任者松本淳一郎の「還付再開決定は現職議員ではない」の証言に基づいて残る2人のうち、どちらと思うかと尋ねる。世耕は推理や憶測を披露するわけにはいかないからと、答を控える。

 松本淳一郎が大叔父(祖父の弟)の佐藤栄作の連続在職日数を超えて歴代1位となった安倍晋三に仕え、政治の裏表を知り、企業も政治も奇麗事ばかりではやってはいけないを学んで毒を喰らわば皿までと安倍晋三と、あるいは清和研という一大派閥と運命を共にする一蓮托生を覚悟していたとしたら、安倍晋三の名誉と信頼を守るために派閥幹部とグルになって4月と8月の会合をデッチ上げて、安倍晋三自身は現金還付・収支報告書不記載を派閥の制度として引き継いできたものの、やはりよくないことだと考えを改めて制度を断ち切る、派閥としては一大断行を決したものの、その意志に反して幹部の誰かが現金還付を再開、世間に知れることになって、一大政治スキャンダルとなったというストーリーを作れば、自民党最大派閥の会長としての、あるいは連続在職日数歴代1位の安倍晋三の名誉と信用を少なからず守ることができる。

 現金還付再開の決定者を差し出さなければならない状況に立ち至った場合、当然、用意したストーリーに添う必要性と個々の議員の犠牲の程度を考慮するなら、現役の国会議員としたら、辞職、あるいは罷免という事態も否定できない可能性から犠牲は大きく、解散したとは言え、安倍派という名前に傷がつく恐れもあり、除外対象とせざるを得ず、現職議員ではないということになったのだろう。

 となると、残るは収支報告書不記載が原因となって離党勧告を受けて昨年の衆院選前に政界を引退することになった塩谷立か、不記載で党員資格停止処分を受けて非公認となり無所属で立候補、落選した下村博文のいずれかとなるが、下村博文は現役でない分、犠牲はより少ないものの、議員復活の目が断たれたわけではなく、その点、政界を引退した塩谷立はもはや議員活動そのものに影響はなく、因果を含めて生贄の犠牲を引き受けさせる計画を立てた可能性は否定できないが、あくまでも人身御供として誰かに白羽の矢を立てなければならなくなった最悪の場合であって、両者共に否定し、藪の中に誘い込むことを最終的着地点と狙っている可能性も考えられる。

 吉川さおりは現金還付を誰が再開したか不明な点が「構造的な問題が明らかにならない理由」の大きな一つだと指摘、世耕の令和4年(2022年)の還付金の額を再度聞いて、答えた0円の理由を尋ねる。

 ここは重要だから、世耕の答弁の全文を載せる。

 世耕弘成「これは先程申し上げた事務局長とのメールにも出てきます。『世耕弘成対応不要』と書いています。私は4月7日に尊敬する安倍会長から還付金はなしにすると言われた以上ですね、私もこの年はオーバーあったようですけれども、これは受け取るべきではないと考えたので、事務局長に対して私に関してはパーティー券で買って戻すことも含めて対応は不要だというメッセージを送らして頂いてます。

 そしてその結果令和4年0円となってるわけであります。私は4月7日の安倍会長の指示は絶対守んなきゃいけないという立場でありました」――

 この日の世耕の参考人招致質疑開始前に参議院予算委員長の自民党鶴保庸介が「質疑の重複を避けるため」としていくつかの質問を世耕弘成に対して行った中で、安倍派会計責任者松本淳一郎が自身に対する2025年2月27日の衆院予算委での参考人招致で現金還付再開は8月の会合で決まったと証言していることと世耕が2024年3月14日の参院政倫審で同会合で還流の復活が決まったということは断じてないと答弁していることとの食い違いの説明を求めた際、初めて飛び出した証言で、松本淳一郎と遣り取りしたというメールを示して、いわばノルマを超えた分の現金を返して欲しいという議員のその金額分を議員個人が開く政治資金パーティーのパーティー券を派閥で買い取り、差引きゼロとする方法での処理を、このような直接的な文言ではないが、お願いしたという内容で説明している。

 そしてなぜこのようメールを送ったのかの説明として、「パーティー券をそれぞれの議員のパーティー券を買って返すというコンセンサスができているというふうに思っていたので」と説明している。

 だが、西村も下村も、世耕自身も、8月の会合ではこの方式での還付代替策は議論したが、結論は出なかったとしている証言と、この方式で「コンセンサスができているというふうに思っていた」との証言は明らかに矛盾するし、この代替策が全員のコンセンサスとして実際に実施されていたとすると、現実には現金還付が行われていて、収支報告書不記載も続けられていたのだから、メールを示して困るのは世耕自身であるはずだが、吉川さおりはこの答弁に何ら反応を示していない。

 しかもメールはいくらでも任意の日付けで送信できる。物的証拠とはなり得ないし、マスコミが現金還付と還付現金の政治資金収支報告書不記載を取り上げたのは2022年11月に入ってからであるのに対して令和4年(2022年)分の国会議員関係政治団体の政治資金収支報告書は2022年12月31日現在の日付で作成されて、提出期限は令和5年(2023年)5月31日迄だから、マスコミ報道以後から収支報告提出期限の2023年5月31日迄にいくらでも訂正できるのだから、還付金が令和4年0円も確たる証拠とすることはできない。

 吉川さおりはここで自民党参議員なのだろう、「某議員」という名前で次のような指摘を行なっている。

 吉川さおり「先程、(鶴保参議院議長と世耕との)冒頭の遣り取りの中で8月9日13時3分、15人がノルマをオーバーしてるということで、8月20日某議員、10月19日某議員、私この年の政治金パーティ一覧にしました。8月20日に開かれるという方も、10月19日に開かれている方もいらっしゃいます。お名前はこの場では申し上げませんけれども、1人は訂正しておりませんが、1人はやはり訂正して、そのパーティー券のどうやって、収入の一部を清和会に移す訂正をしてるんです。ですから、これは間違ってない記載であれば訂正の必要なんかないんです。

 ですから、さっきおっしゃった日付でパーティーを開催してる議員、お名前は言いませんが、訂正をされていますので、実は申し上げた次第でございます。結果として議員本人のパーティー収入から収入の一部を清和研に移して訂正している議員は確認できた限りで5人いらっしゃいます。

 不実記載であるからこそ訂正を行っているわけですし、この点についても私は解明が必要だと思っています」――

 果たして不実記載だから、訂正を行なったと断言できるのだろうか。ノルマを超えた金額で派閥が議員個人の政治資金パーティーのパーティ券を購入したなら、議員側事務所はパーティ券売上名目で収入とすれば、何ら問題はない。派閥の政治資金パーティーのパーティー券売上がノルマに達しなかったから、その不足分の金額を自身の政治資金パーティーの売上金額の中から送金、但しノルマ制や収支報告書不記載といった実態を隠蔽するために訂正という形式を取ったと疑うことができる。

 吉川さおりは持ち時間がきて次のように結んでいる。

 吉川さおり「昨年9月30日の東京地裁の判決文にはこうもあります。収支報告書の虚偽記入の前例となるノルマ超過分の処理については会長や幹部の指示に従わざるを得ない立場にありとされています。

 誰かがこの仕組みを作り、それに乗っかった幹部がいて、それを中止しようとしても、結果として再開された。それを決めた人はどこかにいらっしゃるわけです。立場上、幹部に従わざるを得なかった会計責任者1人が責任を負い、決定や継続を行っている誰かは分からないまでも、議員は誰も責任を取らない。また人が思い悩んだとはしながらもこの間29名それぞれの表現ぶりで私、拝聴しても苦しかったんですけれども、『秘書が、秘書に任せていた』、そういう言葉をこの間、回を重ねる政治倫理審査会の場で聞き続けてまいりました。

 私はそういう政治は嫌だと思って、この世界に飛び込みました。今回の件で、現時点に於いて非議員の会計責任者のみが罪に問われるような状況で、構造的な問題は明らかにはなっていません。これから政倫審の幹事会において審査を進めていくことになると思いますが、誰か一人で構いません。本当のことをそれこそ詳らかに語って欲しいと思いますし、それこそが二度と同じ問題を起こさないことに繋がると申し上げて、私の参考人に対する質問を終わらせていただきます」 ――

 「私はそういう政治は嫌だと思って、この世界に飛び込みました」、「誰か一人で構いません。本当のことをそれこそ詳らかに語ってほしいと思いますし、それこそが2度と同じ問題を起こさないことに繋がる」

 吉川さおりの本質がこの言葉に現れている。秘書に罪を着せて議員本人は保身を図る政治家は決してゼロにはならない。そのような罪逃れの構造を疑いうる事案が発生するたびにその構造を暴くことができれば、その事案に限って政治家本人を罰することができるが、この一事を以って、政治家の犯罪そのものを根絶やしにできるわけではない。

 そういった構図を取らざるを得ない道理を冷静に理解し、受け止めて、「嫌だ」とする政治を自ら阻止する気概を持つならまだしも、疑惑を持つ政治家自らに「詳らかに語ってほしい」と願うのは他力本願そのもので、この他力本願は政治家の犯罪を自らの才覚で暴く力を欠いていることの裏返しであろう。

 大体が政府参考人小林史武参議院事務総長を委員会に呼び出して、吉川さおりの質疑の冒頭部分で、「(委員会)議長が定める法令の規定に著しく違反し、政治的・道義的に責任があると認められるかどうかについて、これを審査するものとすると定められております」と言わしめていることからしても、審査する側が明らかにすべき政治的・道義的に責任であることを自覚しなければならないのだが、その自覚を持てない一連の追及で終わっている。

 この点に気づかない以上、タダ飯食らいは終わりを告げることはない。
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高市早苗は愚かだ 夫婦別姓法制化が少子化対策ともなりうる可能性に気づいていない

2025-05-19 04:18:49 | 政治

 ――高市早苗は戦前大日本帝国を偉大なる国家と信じ込み、男尊女卑の時代に培い、今も引き継ぐ家族制度を日本の伝統と崇め奉っているから、真の男女平等を阻害する抵抗勢力と化している――

 国立社会保障・人口問題研究所の「第7回全国家庭動向調査結果の概要」(令和5(2023) 年8月22日公表)から

妻の従業上の地位別にみた平日における1日の平均家事時間は――
「正規」186分
「非正規」237分
「自営」246分
「仕事なし」344分(大部分が専業主婦)

妻の従業上の地位別にみた平日における夫の1日の平均家事時間は――
妻が「正規」65分
妻が「自営」44分
妻が「非正規」39分
妻が「仕事なし」38分

 特に妻が「非正規」、「仕事なし」は妊娠・出産、育児のために「正規」の地位を捨て、「非正規」、あるいは「仕事なし」を止む得ず選択したケースも多々あるに違いない。

 妻、夫の育児時間を見てみる。

妻の従業上の地位別にみた平日における1日の平均育児時間は――
「正規」400分
「非正規」494分
「自営」474分
「仕事なし」701分

妻の従業上の地位別にみた休日における1日の平均育児時間は――
「正規」683分
「非正規」494分
「自営」790分
「仕事なし」701分

妻の従業上の地位別に平日における夫の1日の平均育児時間は――
妻が「正規」136分
妻が「自営」122分
妻が「非正規」119分
妻が「仕事なし」89分

妻の従業上の地位別に休日における夫の1日の平均育児時間は――
妻が「正規」457分
妻が「自営」431分
妻が「非正規」418分
妻が「仕事なし」366分

 夫の1日の平均育児時間は平日であっても、休日であっても、妻に時間の余裕が持てる従業上の地位に応じて短くなり、妻任せの姿勢が露わとなる。このことを可能としている要因は夫が妻に対して支配的地位に位置しているからだろう。

 日本国憲法が1947年5月3日に施行され、憲法上は日本が男女平等の世界となって78年、80年近くにもなるのに男女平等は掛け声が先行、実質が追いつかない状況は依然として続き、男性が女性に対して支配的地位を維持し、被支配的地位にある妻の家事・育児を難儀な営みにさせている。

 そのことへの思いが「産むのは一人で十分だ」といった境地に誘い込み、このような女性を身近にした周りの女性に、「結婚しない手もアリかな」とか、「結婚しても、産まない手もアリかな」と思わせるケースも無きにもあらずで、こういった傾向への到達は男性の女性に対する支配的地位が大きな要因をなしているはずで、タテマエは男女平等の日本社会に於けるこの男性の女性に対する支配的地位は日本の封建時代からの男尊女卑の思想が戦後も遺物として引き継いでいる男性上位・女性下位の関係力学であって、当然、日本の伝統的家族制度も大きく関与して形作ってきた男女差別構造ということになる。

 高市早苗のように現在の日本の家族形態を、中身の実質性を問題とせずに伝統的家族制度の産物だと価値づけ、有難っている場合ではない。

 事実婚の夫婦が婚姻届の不受理に対して不服申立てを最高裁判所に行った特別抗告に対して最高裁判所が夫婦同姓を強制する民法750条と戸籍法74条1号は憲法24条に違反しないと判断した、「夫婦同姓合憲2021年6月23日最高裁大法廷判決」には、裁判官宮崎裕子と宇賀克也の反対意見が紹介されている。


イ 夫婦同氏を婚姻成立の要件とすることは、婚姻後、夫婦が同等の権利を享有できず、一方のみが負担を負い続ける状況を作出させること

本件では、抗告人らは、夫婦同氏制の下では、一方の当事者が生来の氏名に関する人格権の侵害を受け入れ、アイデンティティの喪失を受け入れなければ婚姻をすることができないのに対して、他方の当事者は生来の氏名に関する人格権を全く制約されることなく享受できるという点を捉えて、夫と妻とがそれぞれの人格権を同等に享有できないことも夫婦同氏制の問題として指摘している。

平成27年第法定判決にはこの問題について言及する判示は見当たらないが、確かに、婚姻届への単一の氏の記載という要件を婚姻の成立要件として課すことは、婚姻により当事者の一方のみが生来の氏名に関する人格的利益を享受し続けるのに対し、他方は自分自身についてのかかる人格的利益を享受できず、かつ、かかる人格的利益の喪失による負担を負い続ける状況になることを意味し、婚姻が継続する限りその一方的な不平等状態は変わらないし変えられないことは自明である。言い換えると、夫婦同氏を婚姻成立の要件とすることによって、婚姻により氏を変更することとなる当事者は、婚姻が継続する限り、かかる人格的利益を他方当事者と同等に享有することを期待することすらできないという状況、すなわち、夫婦同氏制のゆえに、婚姻によって夫となり妻となったがゆえにかかる人格的利益を同等に共有することができない状況が必ず作出されることになる。.....

 要するに一方の姓に統一することは、生来の氏名に基づいて表される人格権(人であることによって当然に享有する権利の総称で、生命、身体、名誉、プライバシーなどを保護する権利)とアイデンティティ(姓名をバックボーンとして自分は自分であるとする個性面・人格面での独自性、生き方の独自性)の点で姓を放棄した側が社会的、あるいは精神的な差別を受けることになるから、夫婦同氏を強制するのは憲法違反であると反対意見を述べたことになる。

 と言うことは、抗告人男女は相互の人格権とアイデンティティの維持・尊重を目的に結婚後も生まれたときからの氏と名前を名乗る夫婦別姓を個人としての当然の権利であるとして求めた。

 もし夫婦別姓が法制化できたなら、別姓家族では男女相互の人格権とアイデンティティの維持・尊重の姿勢が家事労働や育児時間の相互負担に自ずと向かわせるだろうから、そのことによって手にする女性側の負担軽減が2子、3子を望む時間的・精神的余裕を生む可能性は否定できず、その可能性は少子化防止の一助ともなりうることが予想される。

 勿論、事実婚であっても、その家庭内では同じような状況に向かうだろうが、法律婚が受けることのできる国の保障のないことが妊娠・出産・育児に与えるマナスの影響は少なくないだろうし、何よりも社会的認知を受けるのと受けないとでは社会全般に与える影響の度合いに大きな違いが生じて、家事労働や育児時間の男女格差の是正への同調性は期待しにくくなる。

 もし夫婦別姓法制化が認められない状況が続いた場合、認められたなら改善に向かわせる契機となりうるかもしれない戦前型の男尊女卑の敗戦後も引き継ぐ戦後型男性上位・女性下位の差別観の蔓延り、その成果でもある家事労働時間と育児時間の女性側の負担偏重の傾向はさして変わらないままに推移することになって、このことが人口を維持可能とする合計特殊出生率2.07を遥かに下回る2023年合計特殊出生率1.20といった状況も変わらずに続いて、少子化現象の歯止めのない様相が放置される可能性は否定できない。

 戦前の日本の家族制度は封建時代以来の男尊女卑の血を受け継いで、その血を凝り固めるのに役立ち、さらに戦後の男性上位・女性下位の上下・差別関係に引き継がれていることを考えると、高市早苗がその家族制度を明治以来の日本伝統と価値づけるのは真の男女平等を阻害する抵抗勢力と看做されても仕方がないだろう。

 この男性上位・女性下位の上下・差別関係が少子化の原因ともなっている家事・育児の女性負担の偏重を作り出す大きな要因となっていることに対してその要因を夫婦別姓法制化が取り除くキッカケとなる可能性が考えられる以上、高市早苗が夫婦別姓法制化を旧氏の通称使用の広範囲化で阻止すべく画策している手段は姑息に過ぎ、愚かしい限りということになる。

 要するに高市早苗は夫婦別姓法制化の価値がどこにあるか気づいていないその程度の政治家に過ぎない。
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日本の政治の希望の星国民民主党玉木雄一郎の「働きがい改革」発言と対する連合会長苦言共に抜けている点

2025-05-16 06:20:37 | 政治

 ――玉木雄一郎は少子化主要原因の長時間労働のススメを問いている――

 日本の政治の希望の星、日本の多くの女性を惹きつけやまない国民民主党玉木雄一郎が2025年4月29日のネット配信番組で給料を上げる方法を問われて答えた発言内容を2025年5月15日付「毎日新聞」が、《連合・芳野氏 国民・玉木氏の「徹夜してもいい」発言に苦言》なる題名で伝えていた。

 記事題名からして連合会長の苦言に焦点を置いていることになるが、苦言よりも玉木雄一郎の発言自体にさすがに東京大学法学部卒業、ハーバード大学ケネディスクール修了の肩書を有しているだけのことはあるなと感心した。

 先ず記事が伝えている玉木雄一郎本人の発言と発言に対する記事解説を本人の発言の体裁を持たせて紹介してみる。

 玉木雄一郎「残業時間を減らしましょうみたいな話ばかりだけど、満足感を持って働く人を増やした方がいい。もっと働きたいという人もいる。『働きがい改革』が必要だ。

 残業規制と言うけど、自分自身そうだったけど20代のころ、徹夜しろとは言わないけど、徹夜してもいいと思っているんですよね。20代の人と50代の人の残業規制は、健康度合いも違うから違ってもいいかなと思っている。

 つまり働きたい人は働けるようにしていくことで、生産性も上がるし会社ももうかる。働き方改革で働く時間の規制ばかりやってきたことから、働きがい改革ということに少し局面を変えた方がいい」

 連合会長芳野友子「労働環境整備や生産性向上など総合的な取り組みが求められるという意図ではないか。

 (使用者側から時間外規制の上限緩和を求める声が出ていることに言及)思いを共有している政党の代表として、誤解を招かないような丁寧な発言をお願いしたい。長時間労働に依存した企業文化を見直し、過労死ゼロの社会作りを、労使が不退転の決意として掲げて取り組んできた(働き方改革に)逆行してはいけない」

 先ず玉木雄一郎は「働きたい人は働けるようにしていくことで、生産性も上がるし会社ももうかる」と言っているが、残業規制の緩和が会社により多い利益をもたらすことはあっても、必ずしも生産性向上の要因となるわけではないことに気づいていない。さっすが東大出である。

 「労働生産性の国際比較2024 概要」(日本生産性本部)によると、2023年の日本の「時間当たり労働生産性」は1位のアイルランド154.9購買力平価換算USドルに対して約3分の1近くの世界29位、56.8購買力平価換算USドルである。

 2023年の名目GDPで日本の4兆2309億ドルを抜いて4兆4298億ドルに達したドイツは96.5購買力平価換算USドルであり、その差、397億購買力平価換算USドルとなっている。

 ドイツを例に出したのは労働時間にも差があるからである。

 「データブック国際労働比較2024」(労働政策研究研修機構)から、「一人当たり平均年間総実労働時間(就業者)」を見ると、2022年の日本は1,607時間に対してドイツは1,341時間、その差は266時間。1日8時間労働とすると、約33日の差。しかも2022年の日本の年間休日数137.6日に対してドイツは142日。

 要するに労働時間が長いからと言って、生産性の向上に貢献するわけではない。いたずらに労働時間だけを増やして、生産性は上がらないこともある。逆に今の時代に求められていることはIT化やDX化(=デジタルトランスフォーメーションとは、企業がデータやデジタル技術を活用して、業務プロセス、ビジネスモデル、組織文化などを変革し、競争優位性を確立する取り組みを指す。単なるIT化やデジタル化とは異なり、組織全体の変革を目標とする)〈知らない言葉だから、調べてみた。〉を用いて、労働時間を如何に減らして、労働生産性を上げるかであろう。

 それを日本の政治の希望の星、日本の多くの女性を惹きつけやまない国民民主党玉木雄一郎は「働きがい改革」と言って、労働時間の長期化を求めるのは相当にズレている。

 特に「20代の人と50代の人の残業規制は、健康度合いも違うから違ってもいいかなと思っている」と20代の労働時間の延長化を望んでいるが、日本の男性の世界に比較した長時間労働が少子化の原因と指摘を受けていることを我が玉木雄一郎は失念している。

 恋愛・結婚・出産という機会に臨む、あるいは進む可能性ある若い世代にこそ、短い労働時間で人生に余裕を持たせ、なおかつ生産性を上げる、少子化阻止の役にも立つ「働きがい改革」が必要であるという視点を欠かして、「国政政党の代表でございます」のツラを下げて、長時間労働化のみに目を奪われて政策を語る。

 一つのことを考えたとしても、密接に絡み合うほかの問題点をも視野に入れて、総合的に捉え、全体的な解決策を模索していくという創造性がないから、一つの考えだけに囚われることになる。さすが東大出である。

 連合会長芳野友子にしても、玉木雄一郎の発言から長時間労働と少子化の因果関係に問題点を絡めていくべきだが、長時間労働是非云々のみに目を奪われるのは総合的思考力の点で玉木雄一郎同様にどこか抜けているからだろう。
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佐藤正久のタダ飯食らいのなまくら追及が映す4月・8月会合のデッチ上げ 対参院参考人招致世耕弘成

2025-05-11 08:26:36 | 政治

 自民党佐藤正久の自民党安倍派裏ガネ疑惑の渦中の人、元参議院議員、現衆議院議員無所属の世耕弘成に対する2025年4月21日の参議院予算委員会参考人招致の質疑の中から、今回は次の追及と答弁のみを取り上げる。

 佐藤正久「政治不信の一番の根幹がここなんですよ。なぜ安倍元会長がやめろと言ったのに、それが再開したのかっていう部分が、もう3人の方で政倫審こうやってきましたけど、そこが解明されてない。

 で、そこが解明されないという部分が国民の政治不信にやっぱ繋がってると、非常にこの8月5日の会合の実態っていうのが極めて大きくて、松本事務局長はここで大きな方向性が、継続っていう方向性が決まって、その参加した4人からも概ねそういう方向であったというふうに松本事務局長はそういう認識をしてるというふうなとこなんで、ここはやっぱ非常に今回の参考人招致のやっぱ肝が8月5日だと思います。

 加えてあの違法性の認識について伺います。あの松本元事務局長はこの還付金問題について違法行為をやっている認識はあったと明言されています。還付継続が決まったとされる8月の会合のこの還付金の以外の方法が検討されたと最近メディアで発言ありましたけども、その中でも、世耕議員も政倫審の方でもノルマ超過している方の合法的方法も議論されたと発言してます。

 合法的方法も議論されたと発言しておりますけれども、世耕議員は違法性を認識していたから、この安倍元総理は中止を決定されたというふうに認識されたのか、加えて、やはり松本事務局長も違法行為をやっていたと認識をされていたというふうに言ってますけども、その8月の会合でもノルマ超過してる方の合法的方法も議論というふうに発言されたことは違法性を認識して言ったのか、別な意味で言ったのか、これについてご答弁願いたいとおもいます」

 世耕弘成「これはですね、当然、政治資金の処理っていうのは合法的にやるのは当たり前だと思ってました。だからその確認ということで私は申し上げました。4月7日の安倍会長がいらっしゃった幹部の会合でも、あるいは8月5日の安倍会長が亡くなった後の会合でもですね、少なくとも私は違法性の認識は持っていなかった。そこはチェックは甘かったと思ってます。

 4月7日、安倍総理がオーバー分はもう還付しないと言ったときに、現金による還付はやめるんだとおっしゃったときに、私はああオーバーしてる人もいるんだ。で、そのオーバーした分、現金で受け取ってるんだ。で、その後、もう当然、収支報告に載ってるんだろうと私は思ってしまった。

 そこの詰めが甘かったというふうに。あのときですね、いや、その還付、どうやってるんですかと、そのあと収支報告の扱いどうなってるんですかっていうようなことを私がもっと前向きに関心を持ってやってればですね、こういう事態を起こすことは防げたんではないかというふうに思っております。

 で、先程、その松本さんが4月7日に今議員じゃない方が(還付再開を)求めてる議員がいるよということ言った。4月7日と限定されてないんじゃないでしょうか? じゃちょっと私そこはすいません、今あれですけど。

 ですから、私は4月7日にそういう発言があったかどうかも含めて、ちょっと今私の立場で確認はできないということは、ちょっと念のため申し上げておきたいなと」


 世耕がここで「先程、その松本さんが4月7日に今議員じゃない方が(還付再開を)求めてる議員がいるよということ言った。4月7日と限定されてないんじゃないでしょうか?」と発言していることは、安倍派事務局長松本淳一郎が2025年2月27日の衆議院予算委員会参考人招致で「今議員でない方が現金還付再開を決めた」との趣旨の証言を行なったことを指していて、その会合とは8月の会合のことで、佐藤正久は少し前の質問で8月と4月を混同して質問していることに対しての答弁である。

 但し世耕のこの答弁に重大なカギが潜んでいるのだが、勿論、タダ飯食らいの佐藤正久は気づかない。

 世耕弘成が4月7日の会合の経緯について答弁したことを再度順番を追って振り返ってみる。4月7日、安倍晋三がオーバー分はもう還付しないと言った。世耕弘成はオーバーしてる人もいて、そのオーバーした分は現金で受け取っていると気づくことになった。当然、収支報告に載ってるんだろうと当然視した。

 何の矛盾もない、ごくごく当たり前の妥当性を備えた心理経過に見える。但し西村康稔が2024年3月1日の衆院政倫審で安倍晋三は現金還付の中止の理由を「現金還付は不透明で疑念を生じかねない」と述べたと証言している以上、世耕弘成も耳にしていたはずで、この必ずしも合法性を示唆しているとは限らない現金還付方式の性格付けを前にした場合、収支報告記載を即当然視するのは奇妙な対応となる。

「政治資金の処理っていうのは合法的にやるのは当たり前だと思って」いたなら、当然視するのではなく、「現金還付は不透明で疑念を生じかねない」の性格付けに対して逆に「どういうことですか」と聞き返すのが自然な心理であろう。

 いわば幹部4人は常に「不透明で疑念を生じかねない」を前提とした現金還付と見ていなければならない。

 だが、聞き返しもせず、前提ともせず、収支報告記載を即当然視した。4月の会合が実際に存在した会合なら、あり得ない展開となる。そのあり得なさを証拠立てるために安倍晋三の発言とその発言を受けた世耕弘成の感情の変化を寸劇風に纏めてみる。

 安倍晋三「ノルマを超えた分の現金還付は不透明で疑念を生じかねないから、今後中止することにする」
 世耕弘成「(ああオーバーしてる人もいるんだ。オーバーした分、現金で受け取ってるんだ。当然、収支報告に載ってるんだろうな)」

 安倍晋三の現金還付制度に関わる"不透明"、"疑念"のキーワードに繋がりが何もない意思反応ということだけではなく、前者のそれとない違法性の臭わせに対して後者の頭から信じ込んだ合法性への確信というになり、その正反対の見解は成り立たせ不可能であるが、世耕弘成は成り立たせ可能としている点、4月の会合の実在性の根拠を失う。

 4月の会合の実在を疑わせる現象はほかにもある。安倍晋三の「現金還付は不透明で疑念を生じかねない」の言葉を紹介したのは西村康稔と下村博文のみで、同じ場所に居合わせたにも関わらず、他の2人の幹部は誰も安倍晋三の言葉には触れていない。当然、"不透明"と"疑念"のキーワードを前提としない還付の説明となっているばかりか、安倍晋三の現金還付方式の性格付けを紹介した西村康稔と下村博文も、紹介とは離れた場面での還付についての説明はその性格を関連付けない表現となっていることは特定の意図を感じさせる。

 「還付はやめるという意向を示された」、「還付金はやめるというご指示が出た」、「還付金をやめるということを言われた」等々、安倍晋三の現金還付方式の性格付けを纏わせない形で中止を取り扱っているが、世耕にしても他の3人の幹部にしても、4月の会合でも、8月の会合でも、「違法性についての議論は一切行われなかった」と同一歩調を取っている以上、当然のことだとしても、やはり安倍晋三の「現金還付は不透明で疑念を生じかねない」の意味合いの範囲内で取り扱わない状況は両会合の現実性を失わせる。

 もし幹部4人共に還付現金の収支報告書不記載の事実を知らなかった、不記載に関与していなかったが彼らの証言どおりに事実と仮定すると、安倍晋三の「現金還付は不透明で疑念を生じかねない」の中止の理由の紹介は諸刃の剣となる危険性を抱える。既に触れたように必ずしも合法性を示唆しているとは言えない言葉であって、何らかの違法性を嗅ぎ取らなかったのかと追及される恐れが生じるからだ。

 但し安倍晋三の現金還付方式のこの性格付けを真正面から取り上げて、追及する議員は一人としていなかった。

 ここで問題となるのは既に触れたように安倍晋三の中止理由に触れたのは4人の幹部のうち、西村康稔ただ一人だけという事実である。諸刃の剣となる危険性を最小限に押さえるために西村康稔のみが触れたと推測すると納得がいくが、あくまでも推測であって、追及する側の与野党の議員が西村を除く3人の幹部に対して追及しなければならなかったのだが、現金還付の再開を指示したのは誰か、そのことを解き明かそうとして8月の会合に質問を集中したために、結果、誰一人問うことをしていない。

 では、西村康稔は諸刃の剣となる危険性が高いにも関わらず、安倍晋三が現金還付を中止する理由とした、「現金還付は不透明で疑念を生じかねない」をなぜ敢えて持ち出したのだろうか。

 安倍晋三が現金還付中止を指示し、一旦は中止したものの、8月の会合以後、幹部たちが関与しないところで現金還付が再開されていたという経緯を取らせている以上、安倍晋三自身が現金還付を中止したという事実を打ち立てる必要性から、一定程度不法性を臭わせなければ、中止の理由とすることができなかなかったからと推測できる。

 例えば、「還付した現金は収支報告書に適切に記載し、処理しているが、中止することにする」と理由付けた場合は法的に問題がないにも関わらず、派閥の資金集めと、資金集めに関わる各議員の派閥に対する貢献と現金還付による各議員に対する政治活動費支援等のメリットを奪うことになって、奇妙な理屈を抱えた中止となる。

 そこで敢えて諸刃の剣となる危険性を冒してまでして不法性を臭わせる中止理由を持ち出さざるを得ず、持ち出したが、その事実を伝える役目は西村康稔一人のみとした。他の3人の幹部が共に同じ中止理由を口にした場合、違法性が際立つことにならないとも限らないからだろう。

 際立った場合、それが違法かどうかを安倍晋三や派閥事務局長の松本淳一郎に確認しない法意識の感度の低さが逆に非難されることになる。 

 違法性を極力目立たなくさせるために西村康稔は安倍晋三の現金還付方式の性格付けの言葉を最小限に抑えて、自身も含めて幹部4人共に安倍晋三の現金還付中止の指示を、「還付はやめるという意向を示された」、「還付金はやめるというご指示が出た」、「還付金をやめるということを言われた」等々、いわば中立的な性格に色づけて説明することにしたのだろう。

 また、安倍晋三の指示による中止の事実を敢えて持ち出しながら、幹部4人共に還付現金の収支報告書不記載は承知していなかった、関与していなかったという、いわば自分たちを"無罪"としている経緯からすると、"無罪"とするためには敢えて危険まで冒して中止の事実が必要だったことになる。中止したが、自分たちには関係ない知らないところで再開されたとすることで、不記載から距離を置くことができる。

 でなければ、「現金還付は不透明で疑念を生じかねない」などと現金還付方式の違法性を問題視させかねない諸刃の剣となる危険性を冒すことはできない。

 いずれにしても、4月の会合で安倍晋三が現金還付の中止を指示したとする証言は事実と認められ、大手を振って罷り通ることになり、不記載に関与していなかった、承知していなかったは限りなく疑わしいと見られているが、関与していた、承知していたとする明白な根拠を与えずに済んでいる。

 結果、今以って「真相解明に一歩でも近づけたい」とか、「真相解明は国会の使命」などと言わざるを得ない状況にとどまっている。

 そこで4月と8月の会合が実在した会合なのかどうか、占うことのできるより確かな材料がここで取り上げた世耕の最後の発言である。先ずキッカケとなった佐藤正久の発言を取り上げる。

 佐藤正久「安倍元会長から還付金中止指示が出された2022年の4月の会合について伺います。松本事務局長は安倍元会長からの指示で一旦中止になったことが事実としながらも、この会合でノルマ超過分を返還して欲しいという意見も出席者から出されている。その発言者は現在議員ではない方との趣旨の証言もしております。もう4月のこの会合で、このノルマ超過分の返還の意見があったのか、それに対してどのような意見交換が行われたのか、これもう一度、この4月の会合を振り返って誰が出席し、どういう話があったのか、誰からというところも思い出せれば、それを含めて話をして頂きたいと思います。簡潔にお願いします」

 安倍派事務局長松本淳一郎が2025年2月27日の衆議院予算委員会参考人招致で行なった「今議員でない方が現金還付再開を決めた」といった趣旨の証言を行なった対象は8月の会合で、4月の会合ではない。

 世耕は佐藤正久が4月の会合と8月の会合を混同していることに気づかず、4月の会合の出席者を伝え、西村康稔が伝えた安倍晋三の現金還付方式の性格付けは付け加えずに、「現金による還付はやめろという指示が出て、結論が出たというふうに思い、受け止めるしかないと思った」と答えて、松本淳一郎の8月の会合についての証言については何も触れていない。

 そして2回の遣り取りのあとに世耕は佐藤正久の混同に気づいたものの、訂正するのではなく、記憶が曖昧なこととして片付けている。改めて取り上げてみる。

 世耕弘成「で、先程、その松本さんが4月7日に今議員じゃない方が(還付再開を)求めてる議員がいるよということ言った。4月7日と限定されてないんじゃないでしょうか? じゃちょっと私そこはすいません、今あれですけど。

 ですから、私は4月7日にそういう発言があったかどうかも含めて、ちょっと今私の立場で確認はできないということは、ちょっと念のため申し上げておきたいなと」

 収支報告書不記載という政治資金規制法違反を受けて、国会議員の政治的・道義的責任の審査と追及を受ける政治倫理審査会という場に立たされた以上、1年やそこら前のことを思い出す限り思い出して、審査・追及に備えたはずである。

 そして4月7日の会合は安倍晋三の指示で現金還付の中止が決定した場であって、8月5日の会合はノルマ超過分の現金を返して欲しいと要望する議員がいて、どうするか議論したが、結論は出なかった会合であると塩谷立以外の幹部3人共にほぼ同じ証言を行なっている。

 もし4月の会合、8月の会合共に現実に存在した会合なら、自分が行う各証言に従った各場面の自分自身を含めた各登場人物のそれぞれの発言、挙動等の記憶の相当程度は思い返しながら、証言に応じたはずで、より確かな記憶の呼び戻しという心理作用がなければ、過去の出来事の証言はできない。

 何度も記憶を呼び戻して、4月と8月の各場面が、勿論、あとで少しは手を加えるということもあるだろうが、それが現実に存在した会合であるなら、相当程度の完成した記憶の呼び戻しとしていなければならない。

 ところが、世耕は佐藤正久が安倍派事務局長松本淳一郎の8月の会合について証言した内容を4月の出来事と混同すると、4月の会合、8月の会合についての記憶を証言という形であれ程饒舌に提示していながら、その混同に限って訂正できず、混同を保留する形でしか答弁することができなかった

 満足のいく完成した記憶の呼び戻しという形にして証言することはできなかった。

 つまり証言するために用意していた一連の記憶に予定外の一石を投じられた結果、その記憶に変調を来してしまった。

 実在した会合なら、作った記憶ではなく、実際に経験した記憶となるから、記憶にない予定外の一石を投じられたとしても、変調を来すことはなく、柔軟に対応できたろう。

 以上を改めて纏めてみる。

 安倍晋三が指示したとする現金還付中止の、必ずしも合法性を示唆しているとは限らない「現金還付は不透明で疑念を生じかねない」の性格付けを証言したのは西村康稔一人であること、他の3幹部は誰も耳にしなかったかのように振る舞っていること、その性格付けを前提としないままに安倍晋三から還付中止を伝えられたかのように証言していること、そして極めつけは世耕自身が記憶として相当程度完成させていてもいいはずの4月と8月の会合を混同した佐藤正久の質問に対してそのような記憶の完成を裏切り、混同していることを指摘できなかったこと、こういったことを総合しただけでも、両会合が実在したという実態を失わせる何よりの根拠となるはずである。

 大臣を経験している程の実力を有した政治家が政治資金規正法上の収支報告書不記載という重大事態を背負ったのである。実在した両会合であるなら、記憶の呼び戻しはより完成させていたはずだが、混同という予期しない成り行きに出食わして、記憶のもととなる経験や出来事に関わる実体のなさを露呈させてしまった。
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2025年4月21日世耕弘成参院予算委参考人招致:タダ飯食らいの与野党議員のなまくら追及

2025-04-30 07:30:54 | 政治

 旧安倍派が自らの政治資金集めパーティの開催に当たってパーティー券売上に派閥所属議員にノルマを課し、ノルマ超えの売上は現金還付し、派閥と議員個人の両収支報告書に不記載処理して裏ガネ化としていた問題ではこの制度をいつ、誰が始めたのか、不記載処理は秘書が行っていて、議員本人は知らされていてなったこととしているのは事実か、衆参で政治倫理審査会の開催に漕ぎ着け、与野党議員が真相解明追及の質疑を行ったものの、彼らが望んだ成果を手にすることができなかったことは、却って謎が深まったとする質疑後の感想が証明することになる。

 2025年7月予定の参院選の与野党の議席獲得の思惑も絡んで3月28日、参議院予算委員会は
真相を知るキーマンの一人と見て世耕弘成前参議院幹事長の参考人招致を全会一致で議決した。

 招致を受ける受けないは任意だが、そこは世耕弘成、潔白を訴えた手前、怯むわけにはいかなかったのだろう、承諾し、2025年4月21日の参議院予算委員会での参考人招致が決まった。

 各党議員の質問に入る前に参議院予算委委員長の自民党鶴保庸介が「質疑の重複を避けるため」としていくつかの質問を世耕弘成に対して行った。その全文を動画から文字起こして提示し
てみる。その必要性は鶴保庸介の質問に答えた答弁の中で世耕弘成は既に偽証と偽証の可能性のある発言を行っているからであり、にも関わらず、以後質問に立った全ての議員がその発言に触れずじまいにして遣り過してしまっているからである。

 タダ飯食らいのなまくら追及とする理由の一つとすることができるが、このことの評価は読者委ねられる。

 鶴保庸介(自民)「先ず私の方から参考人に対する質疑の重複を避けるために質問させて頂きます。なお、質問内容は各会派のご了承を、ご了解を得た上でのものであることをご理解を頂きたく存じます。先ず一つ目でございますが、政治とカネの問題、解決に向けた参考人の認識についてでございます政治とカネの問題はこれからの政治の在り様に関し全議員が考えていかなければならない重要な論点だと考えます。

 参考人は総理を目指すと公言しておられますが、参考人なら今般の政治とカネの問題をどのように解決させるのが適当だと考えておられますでしょうか。現在も企業団体の献金について全面禁止という立場から禁止より公開というものまで様々な考え方がございます。

 参考人がこの点について、どのような政治のあるべき姿を描いておられるか、まずお聞きしたいと思います」

 世耕弘成「久しぶりに参議院に来させて頂きました。先ずですね、冒頭鶴保委員長からご質問があった、今回のこの私の所属をしていたですね、政策集団の還付金の問題で大きな政治不信をですね、起こしてしまったということに関してはですね、元幹部であった1人として大変な責任を感じております。大きな後悔もしています。自分の資金管理団体の会計も含めですね、元幹部としての自覚を持ってきちっとした処理をされてるのかどうかということをですね、 しっかりチェックをしていれば、もっと早い段階で見つけることができた、そのことを大変反省をしているわけであります。

 その上でですね、今後は政治資金の透明化にですね、やはりこれだけ大きな問題を起こした政策集団の幹部だった者としてですね、先頭に立っていかなければいけないというふうに考えております。

 現に私の事務所の会計のあり方についてもですね、抜本的な見直しを行いました。毎月使途ののチェック、あるいは帳簿上の残高と預金・現金の残高が1円と問わず合ってるかどうか、こういったことをチェックをしますし、それぞれの支出がですね、政治資金の支出としてふさわしいのかどうか、こういうことも議論するなど、まず隗より始めよの精神で私の事務所自身もですね、今抜本的に改善をして、こういうこと二度と起こさないようにさせて頂いているところであります。

 また鶴保委員長からご質問があった企業献金の問題についてこれは各党・各会派で、今真剣な議論が行われてるということだと思いますが、私は今、無所属という立場でありますので、政党とは関係なく、私個人の考え方を申し上げさせて頂くと、私自身はですね、実はそもそも政治資金規制法のですね、趣旨はですね、やはり企業献金はダメだという姿勢・スタンスだと思っています。政党支部を経由した場合に例外として認められている。ですから、私、実は若い頃からですね、基本的に企業献金を貰わないようにしておりました。どうしても団体として献金をしたい、団体としてしかできないという一部のかなり公益性の高い団体からは頂いております。ま、三つぐらいだと思いますけれども、それ以外は私の事務所っていうのは献金に関しては全て個人献金で運営をさせて頂きました。

 もちろん、セミナーという形でですね、事業収入もありますけれども、収入のかなりの部分は個人献金でやらせて頂いてるところであります。これはあのしっかり努力をして、お願いをしていけばですね。本当に1口、年に5000円という方も含めてですね、広く薄く個人献金を、それなりに手間がかかりますが、地元の秘書も大変だと思いますけれど、 やはりそういう方向へ私は持っていくのが今回の事態を受けての方向性ではないかなと思ってます。

 これはもう無所属の一人の議員の立場の意見として申し上げさせて頂きたい。今回の反省に立って私はもう個人献金でしっかり頑張っていくという姿勢をこれからも貫いていきたいというふうに思います。以上です」

 鶴保庸介委員長「二つ目に令和4年8月の安倍派幹部会合に関する証言の食い違いにつきましてであります。派閥のカネについて伺います。パーティー券収入の還流につきましては令和4年4月に当時安倍派会長であった安倍晋三元総理の指示で一旦は中止されたものの、同年7月の安倍元総理逝去の後、再開されたという事実が明らかになっております。この点、本年2月27日に衆議院予算委員会が当時の安倍派会計責任者松本淳一郎氏に聴取を行ったところ、松本氏は再開が決まったのは令和4年8月の安倍派幹部による会合であったと証言されました。

 一方、この証言にある8月の幹部会合に出席していた世耕参考人は昨年3月14日の参議院政治倫理審査会に於いて同会合で還流の復活が決まったということでは断じてないと答弁されておられますが、松本氏との明らかに食い違いが生じてしまっております。なぜ松本氏と参考人との間にこの証言に食い違いが生じているのか説明を求めます」

 世耕弘成「2月27日の衆議院の予算委員会の参考人としてですね、清和政策研究会の元事務局長が8月5日、これは塩谷先生、下村先生、西村先生と私と松本事務局長が揃った集会、会合で還付が決まったという旨の証言をされました。

 私の認識は違っておりましてですね、このときの議論はもう4月に安倍先生からノルマ通りに売れと、還付はやめるという指示が出ていたので、そこは守らなければいけない。だから、いわゆる今までのような還付はダメ、現金による還付はあり得ないというのがこの場の私はコンセンサスだったと思ってます。

 だけど一方で5月のパーティーを4月にノルマ通り売れっていう指示が出たものですから、実はもうその前に売ってしまった人がたくさんいる。 そのことが8月5日に報告をされました。 で、私はそのときはですね、いや、だけど、安倍先生の指示はノルマ通りに売れという指示だったんで、これはもう何も返す必要もないし、派閥の方で使えばいいじゃないかという主張をさせて頂きました。

 しかし一方で別の議員からはですね、いや、これを毎年のことで政治活動の資金としてですね、もう既に収入として見込んでいる人たちがいるんで、政治活動に支障になってはいけないので、何らかの資金的対応はいるんじゃないか。

 でも、現金による還付はダメだよね。では、どういう返し方があるかというのでパーティー券をですね、各議員が、議員個人が開くパーティー券を派閥が買うという形でオーバー分を返していけばいいんではないかという案が出まして、私 それだったら異論はありませんよという形でその会合は終わっております。

 で、なぜ松本局長が8月5日に現金による還付が決まったと思ってるのか、ここはよく分かりませんが、逆にそうではないという少しエビデンスをお話しさせて頂きます。

 ちょっとここ重要なところなんでお話しさせて頂きたいと思いますが、8月5日の4日(よっか)後頃ですね、8月9日に私と松本局長の間でメッセージアプリで遣り取りをさせて頂いてます。8月9日の13時3分の私からメッセージを送りました。

 それはですね、そのときノルマをオーバーしてますよと聞かされた15名の議員、これは私は8月5日、恐らくメモを取って帰ったか何かだと思いますが、それぞれのパーティーの日取りを確認して、それを一覧表にして、事務局長に8月9日13時3分に送っております。

 ちょっと、全部読むと長くなります。冒頭は私で、世耕弘成で対応する。続いてB議員、A議員小規模のセミナーを新規に実施するので対応を。C議員、いや、B議員対応不要、 C議員次回括弧8月20日セミナーで対応を。

 B議員、次回10月19日セミナーで対応という形で15人分を書かせて頂いております。私はこの時点ではパーティー券をそれぞれの議員のパーティー券を買って返すというコンセンサスができているというふうに思っていたので、こういうメールを送りました。結構8月9日というのは忙しい日でしたけども送りました。それに対して松本事務局長からは18時13分にですね、『世耕さま、了解です。色々とありがとうございます』という返信が来ています。さらに私はもう一つ、ある一人の議員はもうパーティーの日取りが8月下旬に迫っていましたので、『議員はパーティーの日にちも迫っていますので宜しくお願いします』と送信をさせて頂いてます。

 もし8月5日の日にですね、現金による還付が決まったんであれば、この私と事務局長の間の8月9日の遣り取りというのは発生しないわけでありました。ですから、私は決まったという認識はない。しかし、私の反省点はですね、一つは8月の5日の会議でもっとしっかり決めておけば、よかったと思ってます。何となくっていう感じで、尻切れトンボで終わっていた。だからそこに認識のズレが出てきたと。

 もう一つの反省点は8月9日、この『世耕様、了解です』という事務局長からのメッセージに私は安心してしまった。これでパーティ券を購入して、ということは即ち派閥の収支に出る形で還付が行われるんだということで安心をしてしまって、そのあと何のチェックもしなかった。

 この後ですね、数日後に事務局長に連絡を取って、あれどうなったと言って、やっぱり『現金還付ってことになってますよ』と言ったら、それは違うでしょっていうことを言えたんです。そのことを私はもっと幹部としての責任感を持って、もっと一人称でしっかりこの問題に向き合っていればですね、こんにち皆さんに大変な疑念を持たれてるような、この8月5日に還付が決まったんじゃないかっていうようなことが発生しなかった。

 この年、現金による還付なんていうことはですね、行われることはなかったんじゃないかということで、これはもう深く悔いて、反省をしている、そういう部分であります」

 鶴保庸介委員長「三つ目の質問です。還流への関与に関わる事実関係でございます。世耕参考人は昨年3月14日の参議院政治倫理審査会に於いてパーティー券販売のノルマ販売枚数、還付金額、ノルマ超過分の還付方法については関与したこともない旨と弁明されました。

 一方、その後同審査会では複数の安倍派議員が令和4年4月の還流中止に関し、参考人から指示や連絡があったと証言をされておられます。

 参考人が当時安倍会長の意向を受け、還流中止に関する指示や連絡を行ったことが事実であるとすれば、参考人はなぜその時点で還流の実態や還付方法について確認をされなかったのでしょうか。還付中止の連絡に関わる事実関係と当時の参考人の認識を伺います」

 世耕弘成「私がですね、派閥の資金の運営について何らかの相談を受けたというのは、実は今委員長がおっしゃった2022年4月の安倍会長が収集された会合が初めてでした。で、そのときにですね、もうこれからはノルマ通りだと、還付というものはやめる。現金による還付はやめるっていうことを言われましたので、私は参議院側の安倍派の議員全員に電話をして、今年はノルマどおりってことになったようだからという連絡をさせて頂きました。

 今、委員長が仰るようにですね、そのとき私は気づくチャンスの一つだったと思っています。但しそこは私もあんまり認識が甘くてですね、自分のところは還付はないと思ってた。自分のところはノルマ精一杯。秘書が『ちゃんと売れてます』という返事を事務所の方から貰っていたので、自分のところはオーバーがないから、まあ、関係ないというような感覚でですね、非常にそこは発見する。これはこういうことが行われているのかっていうのを自分で掌握する大きなチャンスをですね、少し認識が甘くて逃してしまったというふうに思っております。あの深くそこも反省しているところでございます」(頭を下げる)

 鶴保庸介委員長「はい、ありがとうございました。時間が迫っておりますのでまとめます。

 政治資金収支報告書の不記名問題、世耕参考人ご自身の政治資金報告書に不記載があるというご指摘もあります。 また、国民への説明責任、国会審議影響を及ぼしたことについての責任をですね、どう感じるかという質問もあります。これらにつきましては各委員の質問に委ねたいと思います。時間が来ておりますので、委員長の質問を終わります。ありがとうございました。
 
 それでは世耕参考人に対し、質疑のある方に順次発言をいただきたいというふうに思います」(以上)

 鶴保委員長の「二つ目の疑問点」は、2022年4月の安倍晋三出席のもと、安倍派幹部の西村康稔、塩谷立、下村博文、世耕弘成の4人と安倍派事務局長松本淳一郎参加の場で安倍晋三指示により現金還付中止が決まったものの、安倍晋三同年7月死後の同年8月の安倍晋三を除いた同メンバー集合の会合で現金還付の再開が決定されたのではないかとの疑惑が生じていることに関して幹部全員は決定していないと否定しているが、2025年2月27日の衆議院予算委員会で参考人招致を受けた8月当時の安倍派会計責任者松本淳一郎が「再開が決まったのは令和4年8月の安倍派幹部による会合であった」と証言、幹部4人の証言と食い違いを見せるている点であり、そのことについての説明を世耕弘成に求めた。

 但し松本淳一郎は還流の再開を求めた幹部を、「現職の議員ではありません」と証言している。該当する議員は裏ガネ疑惑に関連して自民党から離党勧告を受け、離党届を出して政界引退を表明した塩谷立と、同じく裏ガネ疑惑から党員資格停止処分を受けて2024年10月の衆院選に無所属で立候補したものの落選した下村博文の2人となるが、下村博文は国会に戻って来る可能性はなきにしもあらずだが、引退した塩谷立はその可能性はほぼゼロと見て、生贄の羊とした疑いは捨てきれない。

 世耕弘成は2022年4月の会合について、安倍晋三から「もうこれからはノルマ通りだと、還付というものはやめる。現金による還付はやめるっていうことを言われました」と説明しているが、単に「やめる」とだけ言ったわけではなく、2024年3月1日の衆院政倫審で安倍派としてはトップバッターに立って証言することになった幹部西村康稔は自民党の武藤容治に対して、「兎に角、現金は不透明で疑念を生じかねないから、こうして現金の還付はやめると、まあ、還付そのものをやめるということで、我々方針を決めて対応したわけであります」と答弁している。

 いわば安倍晋三はノルマを超えた分の現金還付制度の性格に触れた上で中止を指示したのであって、その場に同じく出席をしていた世耕弘成、下村博文、塩谷立も、その性格を耳にしていて、耳にした性格に基づいて中止という事態に何らかの思いを持つか、あるいは解釈を施したはずである。

 当然、幹部それぞれが還付現金の収支報告書不記載処理を承知していたことなのか、承知していなかったことなのかによってそれぞれの思いや解釈は異なってくるから、逆に承知していたか、承知していなかったかを究明するにはそれぞれの思いや解釈の徹底的な追及の上、証言の食い違いを誘い出して真相究明へと持っていくよう図らなければならない。

 だが、これまで与野党議員の誰もがこの追及方法を採っていない。
世耕弘成は4月に安倍晋三から現金還付中止の指示が出たことを受けて、8月の会合は、「現金による還付はあり得ないというのがこの場の私はコンセンサスだった」、いわば幹部4人と事務局長の松本淳一郎併せて5人の意見の一致だったとする一方で還付現金を政治資金として織り込み済みの議員には何らかの資金手当てが必要と考え、「各議員が、議員個人が開くパーティー券を派閥が買うという形でオーバー分を返していけばいいんではないかという案が出まして、私 それだったら異論はありませんよという形でその会合は終わっております」との説明で松本淳一郎の8月の会合で現金還付再開が決まったとする証言を否定している。

 否定の証拠として、「それぞれの議員のパーティー券を買って返すというコンセンサスができているというふうに思っていた」ことを根拠にした8月5日の会合4日(よっか)後の8月9日に松本淳一郎と遣り取りしたメールのコピーを提示、議員個人の政治資金集めパーティーのパーティー券を派閥側がノルマ超えの還付現金額に相当する分を買い取る手配を依頼した内容であることを明かした上で松本淳一郎側から、「世耕さま、了解です。色々とありがとうございます」と返信されたメールを示している。

 世耕弘成のこの証言を疑い、追及した議員は今回、誰一人存在しない。

 このような内容でメールするについては少なくとも4月と8月の会合に出席した幹部4人の間でこの手の資金手当についての是非を議論し、事務局長の松本淳一郎の納得を得ながら合意を見てから、松本淳一郎に派閥として今後はこの方式でいくことを委託していなければならないし、派閥所属議員に対しても、新しい資金手当の方法として、周知徹底しなければならない。

 だが、そのように図ったとする説明は見当たらない。

 大体が世耕弘成は2024年3月14日の参院政倫審では8月の会合でどういった資金手当にするかについては、「このとき何か確定的なことは決まっていません」と証言していて、明らかに矛盾が生じることになる。

 西村康稔も上に挙げた衆院政倫審で、「結局結論は出ずにですね、私は8月10日に経済産業大臣になりましたので、事務総長を離れることにもなります」と、結論は出なかったことを証言しているし、塩谷立も、「中には今年に限っては数字は継続するのはしょうがないかなというような話合いがされたわけでございまして。具体的にその先程のパーティ券を個人のパーティーにどうする、こうするなんていう具体的な話はあまり詰めた話はなかったわけで、その中で継続して還付されたというふうに理解しております」と、同じく結論を出して決定に至ったわけではないことを証言しているし、下村博文も、「8月には復活をしないという前提で議論をしていって、ただ結論が出なかった」と証言している。

 要するに世耕弘成は2024年3月14日の参院政倫審で8月の会合について、「このとき何か確定的なことは決まっていません」、いわば結論は出なかったとしながら、全員一致の結論を得た資金手当の方式であるかのように見立てて、その権限もないのに松本淳一郎とメールの遣り取りをしたことになる。

 この明らかに虚偽答弁と取れる矛盾を解くとしたら、幹部の誰かが、あるいは世耕自身が現金還付再開を決めたわけではないことの明らかな物的証拠としてメールを持ち出したのは明瞭だから、このことの裏をそのまま返すと、最低限、幹部の誰かが、あるいは世耕自身が現金還付再開決定の標的とされることを避ける証拠物件として提出したということであろう。

 このような推測の障害は物的証拠過ぎる物的証拠であるメールの存在となるが、捏造であることを疑って、「日付を変更してメールを送信する方法」はないか、Googleで検索を掛けたところ、その方法が紹介されていて、簡略化すると、次のようになる。

 「コントロールパネル」Click→「時計と地域」Click→「日付と時刻」Click→「日付と時刻」画面の「日付と時刻の変更(D)」Click→「カレンダー」の表示→カレンダーの日付を遡って、任意の年の任意の月日をClick→「OK」→「日付と時刻」画面、「OK」

 そのままメールを送れば、任意の年日付と時刻が反映される。試してみたら、そのとおりとなった。

 因みにスマホでも過去・未来、好きな日時設定を可能とする方法が紹介されている。

 大体が世耕が提示したメールで明らかなように派閥が議員個人の政治資金集めパーティーのパーティー券を購入してノルマ超えの金額を消化する方法が松本淳一郎も承知することになった方法であるとするなら、それが現実には採用されることなく、4月の会合で安倍晋三の指示で現金還付の中止が決定し、8月の会合以後に再開されたことになっている証言との矛盾を世耕弘成はどう説明するつもりなのだろうか。

 4月の会合も8月の会合も作り話で、現金還付は中止されることなく継続していたとする見方からすると、単なる虚偽答弁を超えて、大仕掛けなペテンに類することになる。尤も実際にはしなかったこと、できていなかったことに対して事務所の会計全般を、「しっかりチェックをしていれば、(収支報告書不記載を)もっと早い段階で見つけることができた」と不可能を可能であったかのような言いくるめを得意とする世耕弘成の性格面からすると、メールを利用して自身が現金還付再開者ではないことを装うことぐらい朝メシ前なのだろう

 「結構8月9日というのは忙しい日でしたけども(メールを)送りました」とか「『(何々)議員はパーティーの日にちも迫っていますので宜しくお願いします』と送信をさせて頂いてます。
」等、ウソも手が込んでいる。

 もしこの両者間のメールの遣り取りを事実とするなら、世耕弘成は2024年3月14日の政倫審での、他の3人の幹部にしても、各政倫審での8月の会合に関わる証言を雁首を揃える形で打ち消し、メールの内容どおりの現金還付に代わる方式に全員一致で結論を得たこととしなければ整合性は取れないことになるが、1年以上も経過してからの証言の変更自体がセンセーショナルな事態を引き起こすことになるが、そこは世耕弘成、ちゃんと着地点を用意している。

 その着地点に触れる前にさらなる問題点を指摘しなければならない。それも決して見逃すことはできないより大きな問題点であって、「もう一つの反省点は8月9日、この『世耕様、了解です』という事務局長からのメッセージに私は安心してしまった。これでパーティ券を購入して、ということは即ち派閥の収支に出る形で還付が行われるんだということで安心をしてしまって、そのあと何のチェックもしなかった」としている証言発言である。

 8月5日会合4日(よっか)後の8月9日の時点で、「派閥の収支に出る形で還付が行われる」と推測できる認識は派閥の収支に出ない形で還付が行われていた事実の把握を前提としていなければ成り立たない認識となる。

 要するに世耕弘成は還付現金の収支報告書不記載を2022年暮れの報道で知ったと政倫審で証言しているが、上の証言では元々から還付現金の不記載処理を知っていたことになり、それが自身が現金還付再開の決定者ではないことを装う虚偽のストーリー作りに気を取られて思わず口を突いてしまった可能性は否定できない。

 自身を含めた各幹部の政倫審での8月の会合に関わる証言を変更しないで済む着地点の役割を、自分からメール自体を否定する文言となるが、次の発言が果たしている。

「この後ですね、数日後に事務局長に連絡を取って、あれどうなったと言って、やっぱり『現金還付ってことになってますよ』と言ったら、それは違うでしょっていうことを言えたんです。そのことを私はもっと幹部としての責任感を持って、もっと一人称でしっかりこの問題に向き合っていればですね、こんにち皆さんに大変な疑念を持たれてるような、この8月5日に還付が決まったんじゃないかっていうようなことが発生しなかった。

 この年、現金による還付なんていうことはですね、行われることはなかったんじゃないかということで、これはもう深く悔いて、反省をしている、そういう部分であります」――

 安倍派清和政策研究会という一大派閥の会計責任者兼事務局長たる人物がメールで、「世耕様、了解です」と請け合っておきながら、一転して「現金還付ってことになってますよ」では会計責任者兼事務局長としての責任感の点であり得ない整合性の不一致となるばかりか、あり得ない背信となるが、無理やりに自己正当性を打ち立てようとすると、自分から墓穴を掘ることになる。

 鶴保庸介委員長は「三つ目の質問」として安倍晋三の現金還付中止の指示を受けて参議院自民党議員にその旨を連絡する際、安倍晋三にということなのだろう、「還流の実態や還付方法について確認」しなかったのかと問い質した。

 要するに安倍晋三の指示と連絡の間に人間の自然な感覚としての中止に対する、あるいは現金を用いた還付に対して、"なぜ"という思いを内心に発して、その"なぜ"を解くために直接言葉にして安倍晋三に問い質さなかったのかを尋ねた。

 特に安倍晋三は「現金は不透明で疑念を生じかねない」とその制度の性格に触れている以上、
その性格に対応した"なぜ"でなければならない。

 「(4月の会合は)私の目からするとこれは話し合ったというよりは安倍会長の決定を伝達された。私はそれを参議院側に伝えて欲しいということで呼ばれたというふうに認識をしています」――

 以上の文言から世耕弘成は還付中止決定の伝達を受けて、安倍晋三が触れた「現金は不透明で疑念を生じかねない」としたその性格を前提に中止の理由を安倍晋三に尋ねなかったことは明らかであるから、何も考えずに、何も思わずにその伝達を参議院の安倍派所属各議員に中止の事実だけを機械的に連絡したことになる。

 そのような連絡に関連付けられる形で、伝えられた議員側から発せられるべき中止の理由に対する「なぜですか」と問う、当たり前の感覚の持主なら口にする姿も、世耕の証言からは見えてこないのは当然の姿となる。

 この不自然過ぎる展開を読み解くとしたら、世耕弘成は還付現金の収支報告書不記載を承知していたとする答しか出てこないが、だからこそ、その違法性に如何なる感覚を働かせた様子を見せずに単に連絡したと表面的な事実を伝えるだけにとどまらざるを得なかったのだろう

 だが、いずれの感情も窺わせることがないだけではなく、それよりも何よりも人間としての自然な感覚を働かせることもなく、大の男でありながら、あるいは安部派幹部でありながら、自身を伝達ロボットのように扱っている血の通いを感じさせない無機質さは4月の会合自体の存在を疑わしくさせる。

 鶴保庸介委員長の疑問に答えた世耕の発言は2024年3月14日の参議院政倫審での答弁と変わらない。先ず鶴保庸介委員長に対する答弁を前半と後半に分けてみる。先ず前半。

 「私がですね、派閥の資金の運営について何らかの相談を受けたというのは、実は今委員長がおっしゃった2022年4月の安倍会長が収集された会合が初めてでした。で、そのときにですね、もうこれからはノルマ通りだと、還付というものはやめる。現金による還付はやめるっていうことを言われましたので、私は参議院側の安倍派の議員全員に電話をして、今年はノルマどおりってことにえなったようだからという連絡をさせて頂きました」――

 この答弁に対応する3月14日参院政倫審での前半の答弁。

「ノルマ通りの販売にする。即ち還付金はやめると、安倍総理が宣言をされたとき、その時点では私は還付金を自分が貰ってる認識がありませんでしたので、どういう形態でやり取りされてるか、あるいは収支報告上、どういう扱いになってるかということをですね、私自身思いを致したことがありませんでした」――

 両答弁共に中止に対して発せられて然るべき"なぜ"という思いも、「何かあったのですか」と
自然な感情として問うこともない不自然さは際立っている。特に参院政倫審でのこの答弁は自分一人の問題ではないにも関わらず、「私は還付金を自分が貰ってる認識がありませんでしたので」と自分一人の問題に納めることができる態度は安部派幹部の体裁を成していないことになって、この点からも4月、8月の会合が実在した会合なのか疑わしくさせる。

 ところが一転して8月の会合ではノルマを超えて売り上げた若手議員や中堅議員に対する何らかの資金的対応が必要だと派閥の全体的問題とする矛盾を平気で曝している。

 この4月の会合での自分一人の問題に納めている点は鶴保庸介委員長に対する答弁でも同様に見せている。

 「今、委員長が仰るようにですね、そのとき私は(不記載に)気づくチャンスの一つだったと思っています。但しそこは私もあんまり認識が甘くてですね、自分のところは還付はないと思ってた。自分のところはノルマ精一杯。秘書が『ちゃんと売れてます』という返事を事務所の方から貰っていたので、自分のところはオーバーがないから、まあ、関係ないというような感覚でですね、非常にそこは発見する、これはこういうことが行われているのかっていうのを自分で掌握する大きなチャンスをですね、少し認識が甘くて逃してしまったというふうに思っております。あの深くそこも反省しているところでございます」

 「自分のところはオーバーがないから、まあ、関係ないというような感覚」だと、自分一人の問題に納めている以上、一方で不記載を発見する、あるいは掌握する大きなチャンスを少し認識が甘くて逃してしまったと見せている反省点を心の底からの感情と見ることはできない。一大派閥安倍派幹部としての責任感も義務意識も窺うことはできない。実際に存在した会合なら、こういった感情の欠落を見せる不自然な事態は曝すこともなく、安倍派全体の大きな問題だと受け止めていたはずだ。

 この見せ掛けの反省に対応する3月14日の参院政倫審での同種の反省が、「今から思えばそのときチェックをする一つのチャンスだったなというふうに思って。ただ、ここはもう話し合いとか違法性を議論する場ではなくて、ノルマ通りの販売とするという指示が伝達された。そういう場だったというふうに思っています」

 指示の伝達に対してどのような感情の働きも、疑問の思いも起こさず、指示されたとおりに機械的に動いた。つまり幹部たちは一個一個の当たり前の人間としてその場に存在していなかった。実際にあった会合なら、考えられない非現実的な状況に自分たちを置いていた。

 だが、真相究明の与野党の追及者たる議員たちは追及を受ける側の奏でる言葉が織りなす表面的事実だけを掬い取って追及するから、巧みな言葉の操りを受けてかわされ、埒のあかない堂々巡りが展開されることになる。

 結果、タダ飯食らいのなまくら追及といった様相を呈することになる。
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高市早苗の夫婦別姓をパスポートの旧氏併記要件大幅緩和等通称使用機会確保で解決可とするお花畑なノー天気

2025-04-09 05:02:11 | 政治

 自己同一性(アイデンティティ)とは、自分は自分であるという個性面・人格面での独自性、生き方の独自性を指す。

 物心つくと、生まれたときからの名字と名前に基づいて自分は自分であるということを意識ながら行動し、生きていくことになるから、ほかの誰でもない、自分は自分であるという独自性を意識したり、確認したりする際には名字と名前を拠り所とすることになり、名字と名前が自分は自分であることとイコールを成すことになる。

 結果、自分は自分であるという個性面・人格面での独自性、生き方の独自性を示す自己同一性(アイデンティティ)は名字と名前と一体となって付いて回ることになり、それ程にも名字と名前と自己同一性(アイデンティティ)は密接な関係を持つことになる。

 自分の生き方を大切にして自らの個性面・人格面での独自性を培いつつ自らの足跡を築いてきた女性、もしくは男性それぞれの自己同一性はその人の生き方の核心的な本質部分を占めることになるが、名字と名前によって切っても切れない一体性を取っているにも関わらず、結婚後にその主たる一部である名字を手放し、別の名字を名乗ることはそれまでの名字と名前を背景として築いてきた自己同一性との一体性を断絶させることを意味し、この断絶は従来の名字と名前に紐付けて培ってきた生き方の独自性としての自己同一性であるがゆえに新しい名字で紐付け直すことは生き方の歴史を塗り替えるに等しく極めて困難で、それ程にも存在の本質部分に食い込んでいる一体性と見なければならない。

 当然、結婚後、名字を変えたとしても、旧姓を通称使用することで何ら心理的な抵抗もなく夫婦別姓の代替策としうると考え、夫婦別姓に強硬に反対する集団は生まれたときからの名字と名前を維持することでしか守ることができないことの、その一体性としてある本質的な存在性、本人独自の自己同一性(アイデンティティ)を理解する頭を持っていないことになる。

 その集団の代表格が自由民主党高市早苗で、2025年4月号「月刊正論」に寄稿の『夫婦別姓不要論 通称使用でなぜいけない』から、その無理解の程度を見てみる。

 先ず、〈自民党は、戸籍のファミリー・ネームは守った上で、婚姻により戸籍氏が変更になった場合にも社会生活において不便を感じないよう、旧氏を通称使用できる機会を拡大するため、長年にわたって努力を続けてきました。〉と主張、夫婦同姓の統一された名字のみを「ファミリー・ネーム」と決めつけ、夫婦別姓の異なる名字を「ファミリー・ネーム」から除外している。

 例え名字を異にしても、夫婦別姓の当事者からしたら、それぞれの名字が「ファミリー・ネーム」であり、「ファミリー・ネーム」とすることになる事実に理解が追いついていない。

 さらに2015年の最高裁判決の趣旨に基づいて夫婦同氏制度を定める民法750条の規定を「合憲」と判断した2021年6月23日の最高裁判断を持ち出して同姓制度の正当性を、いわば別姓制度の不当性を主張しているが、高市早苗は自身のサイトの「Column」で、〈夫婦同氏制度は、旧民法の施行された明治31年に我が国の法制度として採用され、我が国の社会に定着してきたもの――〉、いわばその歴史的伝統とそれを背景とした社会への定着に価値観を置き、家族の呼称としての一つの氏に意義を与えているが、その意義は戦後民主化された日本国憲法第24条の、「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない」の規定を背景とした戦後民法750条「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する」とした同姓制度とは全く違い、明治31年(1898)旧民法第750条の規定、「家族カ婚姻又ハ養子縁組ヲ為スニハ戸主ノ同意ヲ得ルコトヲ要ス」とした封建的家父長制に基づいた746条「戸主及ヒ家族ハ其家ノ氏ヲ称ス」の規定、同姓制度であって、同じ同姓制度であっても、個人の人権とは無縁の封建色で成り立たせた後者を歴史的伝統と社会への定着を要件とした同姓制度として絶対視し、別姓制度を排除しようとするのは戦後の男女を問わない時代的な基本的人権の保障や女性の権利向上の一般化を一切歯牙に掛けない論法であって、高市早苗の同姓制度論とそれに対応させた通称使用機会拡大策は時代錯誤に過ぎないことを露わにすることになる。

 最高裁の民法750条の規定に対する合憲判断は基本的には現憲法の第24条の「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立する」とした規定と、現民法の750条「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する」とした規定を規定通りに忠実に解釈すると、合憲となると言うことであって、昨今の女性の個の独自性を求める生き方の少なくない多数者の存在を考慮した場合、日本国憲法第13条「すべて国民は、個人として尊重される」対象とされるべき権利を有している関係からして、夫婦別姓の合憲化は時代の趨勢と見なければならないだろう。

 だが、高市早苗は個人の権利よりも封建的な家父長制を骨格とした明治以来の伝統に拘り、氏の統一の死守に執念を燃やす復古主義に陥っていることに気づかない。復古主義を満足させる主たる方法の一つが通称使用の法的認可の広範囲化なのは周知の事実となっている。

 要するに高市早苗は時代の趨勢から取り残された存在だが、保守主義の政治的権力によってのさばりを辛うじて得ている。

 以下、高市早苗の「夫婦別姓不要論…」から通称使用機会の拡大策を見てみる。

 〈2019年11月5日には、「住民基本台帳法施行令」の改正(政令改正)の施行により、「住民票」と「マイナンバーカード」に戸籍氏と旧氏が併記できるようになりました。〉――

 〈その後、「旧氏記載が可能であることが明示されていない法令等」のうち「総務省が単独で措置きるもの」については、全てを旧氏の単記(331件)か併記(811件)で対応できるようにしました。2020年6月までに「新たに旧氏記載可能とする」旨を通知・周知したものは、合計1142件でした。〉――

 〈仮に全府省庁が総務省と同じ取組みを実施して下さったなら、少なくとも国の法令等に基づく氏名記載については、全て旧氏記載が可能になるはずです。〉――

 以上、総務省の所管か、関わりがある関係から、高市早苗自身の通称使用機会拡大の執念からの職権を利用した、と言って悪ければ、活用した、夫婦別姓の阻止を狙いとした旧氏記載の自由選択に向けた画策の様々となっている。

 そのほかに、〈2021年4月から、外務省が「旅券(パスポート)」の旧氏併記要件の大幅緩和を行うとともに、旧氏を渡航先当局に対してわかりやすく示すため、旧氏に「Former surname」(旧姓)との説明書きを追記しました。〉、〈既に、本人証明や各種手続に必要な「住民票」「マイナンバーカード」「パスポート」「運転免許証」「印鑑登録証明書」では、旧氏併記が可能になっています。〉、あるいは、〈2024年5月31日時点で、320の「国家資格免許等」の全てで旧氏使用が可能となっています。「資格取得時から旧氏使用ができるもの」が317件、「資格取得後に改氏した場合は、旧氏使用ができるもの」が3件ですから、旧氏が使用できないものはゼロ件です。〉等々、旧氏使用の縛りの少なさを盛んに主張しているが、名字と名前と一体とさせて本人それぞれに確立することになったそれぞれに独自な自己同一性がそれぞれの本質的な存在性と結びつくことになっていることに目を向けることができないままの、単なる便宜性の提供で終わっていることにすら気づかない高市早苗の旧姓使用の執着となっている。

 高市早苗が思想的に自らも封建的体質を抱えているのは目に見えていて、戦前の封建時代の日本の家族制度を伝統とすることから抜けきれずにその伝統を戦後の民主化され、基本的人権が普遍的な価値とされるに至った社会に持ち込もうとしている、その時代錯誤は救い難い。

 多分、高市早苗の頭の中は明治から敗戦までの一世紀弱の間に伝統とするに至った、封建主義に色づいた様々な制度が彩りも鮮やかなお花畑となって咲き誇っているのかもしれない。

 選択的夫婦別姓反対派が最大の反対理由としている「子の氏の安定性」を高市早苗も勿論、取り上げている。

 〈私が選択的であったとしても「夫婦別氏制度」の導入に慎重な姿勢を続けてきた最大の理由は、「子の氏の安定性」が損なわれる可能性があると思うからです。〉――

 「慎重な姿勢」とは白々しい。

 出生直後の子の氏を争うとか、争った結果、〈「戸籍法」が規定する「出生の届出は十四日以内」には間に合わない可能性〉をあげつらい、〈長期にわたって「無戸籍児」になる〉可能性を指摘したり、〈「夫婦の氏が違うことによる子への影響」に関して、69%の方が悪影響を懸念しておられることも内閣府の世論調査から読み取れます。〉等々、夫婦別姓の最悪面を並べ立てている。

 夫婦別姓反対派が騒ぎ立てる程に子の氏の一方の親との違いは家庭の秩序を乱す要素を孕む問題点としなければならないのだろうか。当方は父親と母親が子に対して父親の姓を継がせるのか、母親の姓を継がせるのかは些かも重要な事柄だとは捉えていない。

 なぜなら、子は父親の姓を継ごうが、母親の姓を継ごうが、与えられた姓と名前を自分自身の姓と名前として当初は意識しないままに自我を形成していき、自己同一性(アイデンティティ)の確立に向かうのだから、子どもにとって基本的にはどちらの名字であっても構わないからである。

 もし物心ついてから、「お父さんとお母さんはなぜ名字が違うの。僕の(あるいは私の)名字はお父さんと一緒だけど、お母さんと違うのはなぜ?」、あるいは、「お母さんと一緒だけど、お父さんと違うのはなぜ?」と聞いてきたら、「お父さんとお母さんは生まれたときから付いていた名字をそのまま使う結婚生活を選んだの。その場合は生まれた子どもはお父さんの名字かお母さんの名字か、どちらかの名字にしなければならないから、お父さんの名字に(あるいはお母さんの名字に)した。あなたにはタケシという名前をつけたから、お父さんの名字と(あるいはお母さんの名字と)タケシという名前があなた自身ということになるの。

 名前をタケシと付けたけど、ヒロシと付けたとしても、お父さんかお母さんのどちらかの名字とヒロシという名前があなた自身をということになるのだから、どのような名字と名前が付けられとしても、付けられた名字と名前があなた自身となることに変わりはない。お母さんと(あるいはお父さんと)名字が違っても、あなたはあなたの名字と名前で自分として生活していくことになると言うことが一番大切なことなの」

 即座に全てを理解できないことは分かっているが、自分から問いかけた"なぜ"であるなら、その"なぜ"は解けなければ解けないままに母親の(あるいは父親の)言葉としてぼんやりとではあっても、頭に記憶の形で残ることになり、世の中のことを学んでいくうちにその"なぜ"を解いていくことになるだろうし、自らに与えられた名字と名前を持った自分という人間の生き方が大切なことは学ばなければならないだろうし、特に学校の先生が教えて、子どもたちに身に付けさせなければならない知識としなければならないだろう。

 学び、知識とするより良い方法は、例えば山田太郎が本人の名字と名前であるなら、「あなたは山田太郎という一人の人間なの」とか、「あなたは山田太郎という名字と名前を持った一人の人間として生活し、生きているの」等々、何々という名字と名前をつけた一人の人間であることを幼い頃から自覚するよう仕向けることだろう。

 このような自覚への仕向けが与えられた自分の名字と名前を一体とさせた一人の人間として、あるいは一個の存在、一個の人格として行動するよう促され、このことが自律心(あるいは自立心)を育むキッカケとなるばかりか、自分は自分であるという自らの自己同一性(アイデンティティ)を確立していく基礎となるはずである。

 要するに誰の名字を与えられたとしても、与えられた名字と名前が自分は自分であることのベースとなり、与えられた名字と名前をベースとした自分は自分であるという思い・意識が自我確立のエネルギーとなって、自己同一性(アイデンティティ)の確立を促す力となる。

 生きていく過程で誰かの名字と自分の名前が自分自身に付いて回るのではなく、与えられた自分の名字と名前がついて回るのだから、元は母親の名字であっても、父親の名字であっても構わないわけで、誰の名字であっても、それを如何に自分の名字とし、自分の名前と一体化させて、
自分は自分であることのベースとしうるかを肝心なこととしなければならない。

 以上の考えからすると、高市早苗が言う、出生直後の子の氏を争うだ、14日以内に出生届ができなければ、長期に亘って無戸籍になる等々、無意味そのものとなる。

 高市早苗は「いろいろな考え方がありますが」と断りながら、〈平成8年の法制審議会の答申では、結婚の際に、あらかじめ子どもが名乗るべき氏を決めておくという考え方が採用されており、子どもが複数いるときは、子どもは全員同じ氏を名乗ることとされています。〉と述べているが、あくまでも答申であって、法制化されたわけではない。

 複数の子どもに対しては父親の名字、母親の名字、それぞれに選択は自由とすれば、別姓夫婦で第一子は男親の姓を、あるいは女親の姓にすると決めておいて、第二子を設けた場合は最初が男親の姓なら、第2子は女親の姓、最初が女親の姓なら、第2子は男親の姓と平等を旨に決めておけば、名字の継続を平等にしたい思いから第2子まで出産する事例が出てくることは否定できず、少子化の僅かな解消に役立つ可能性に向かう。

 高市早苗はまた、平成8年の法制審議会の答申では別姓夫婦の未成年の子どもが与えられたどちらかの親の名字を変えたくなった場合は、「特別の事情の存在と家庭裁判所の許可が必要とされる」として、子の姓の付け方には難しい点があることを、殊更なのか、書き連ねているが、与えられた名字と名前で如何に自分が自分であろうとすることができるかが本質的な問題であって、このことは同姓夫婦の子どもであっても変わらない問題であり、高市早苗の"通称使用論"は最初から最後まで本質的な問題点から大きくズレた、それゆえに些末な主張で成り立たせた、通称使用で代替させることを狙った「夫婦別姓不要論」に過ぎない。

 女性の地位の向上を言うなら、全ての人間が生まれながらに持っている、人間らしく生きるために必要な権利の保障を言うなら、選択夫婦別姓制度は法制化される時代に入っていなければならない。高市早苗はカビ臭い旧時代の空気を吸って息をしている人間に過ぎない。
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世耕弘成の政倫審虚偽証言と弁明に於ける現金還付違法性を知っていたのに知らなかったことと強調の逆説手法

2025-04-01 07:23:07 | 政治

 2025年3月28日付「NHK NEWS WEB」記事が、同3月28日に自民と立憲の幹部が政治とカネの問題を巡って自民党旧安倍派幹部の世耕弘成前参議院幹事長の参考人招致を行う必要があるとの認識で一致、それを受けて参議院予算委員会が世耕弘成の参考人招致を全会一致で議決したと伝えていた。

 本来なら、参議院自公与党反対多数で否決されるのだが、昨2024年10月の衆議院選での与党過半数割れが安倍派政治資金パーティーの裏ガネ疑惑が主として招いた結末であり、今年2025年3月からの衆参政倫審で安倍派疑惑幹部が真相追及を受ける証言に立ったものの、真相解明には程遠く、却って疑惑を深めることになり、今夏の参議院選挙で衆院選の二の舞いとなって降りかかる逆風を恐れ、それを避けるために止むを得ず疑惑解明の積極的な姿勢を見せる必要性からの自公与党も賛成の全会一致ということなのは誰の目にも明らかであろう。

 いわば自公与党側にしたら、議席を守りたいがための背に腹は変えられない全会一致といったところなのだろう。

 世耕弘成の参考人出席は任意だが、世耕弘成には断る理由はない。政倫審の弁明で、「公式機関である東京地検特徴部が多大な人員と時間を割いて、多数の関係者から事情聴取を行い、関係先を捜索するなどして徹底調査された結果、法と証拠に基づいて私については不起訴嫌疑なしと判断をされたわけであります」と、内心、胸を張ってだろう、自らの潔白を宣言し、自民党佐藤正久の生ぬるい追及に対しては、「これは刑事的には私は不起訴、嫌疑なしですから、真っ白なわけでありますけれども」と主張、この「真っ白」の心境を言い換えると、恐いものなしということになるはずだから、何度参考人招致を要請されても、要請されるたびに正々堂々とした態度で身の潔白を訴えるはずだ。

 安倍派幹部西村康稔、塩谷立、下村博文、世耕弘成の4人が出席した2022年4月の安倍晋三出席の会合で安倍晋三が申し渡した、安倍派政治資金パーティーでの派閥所属議員に課したノルマを超えた売り上げ分の現金還付中止について2024年3月1日政倫審で自民党の武藤容治に対する答弁の中で西村康稔は次のように証言している
 
 「(安倍会長から)現金は不透明で疑念を生じかねないから、こうして現金の還付はやめると、まあ、還付そのものをやめるということで、我々方針を決めて対応したわけであります」――

 要するに安倍晋三はノルマを超えた分の現金還付は、「不透明で疑念を生じかねない」性格のものだという理由付けで中止を指示した。透明そのもので、疑念を受けるような筋合いのものではないなら、中止する必要性は生じない。

 例え世耕弘成の収支報告書不記載が嫌疑なしの真っ白だったとしても、現金還付を真っ白とすることはできないことを意味させていることになる。つまり還付現金の収支報告書不記載を未知の事実、全く知らなかったことだとしていたとしても、少なくとも真っ白とは言えない違法性を臭わしたと受け止めなければならない。

 このことは4月の会合に出席していた西村康稔のみならず、その場に居合わせた塩谷立も、下村博文も、世耕弘成も、その時点で現金還付の違法性を既知の事実としていなかったとしても、現金還付そのものは真っ白ではないと違法性を暗示されたことをほぼ同じように共通認識としていなければならないことを示すことになる。でなければ、安倍晋三が「現金は不透明で疑念を生じかねないから、こうして現金の還付はやめる」と指示したとする事実を消し飛ばしてしまうことになる。

 要するに安倍派幹部の4人が4人共に現金還付の違法性を既知の事実としていなかったとしたら、安倍晋三が自ら発した"不透明"、"疑念"のキーワードから現金還付はどう真っ白ではないのだろう、どのような違法性の指摘なのだろうかと少なくとも不審の念に駆られることになったはずだ。

 そしてこのことは各幹部のそれぞれの政倫審での証言の中に見えてこなければ、現金還付が真っ白でないこと、違法性が関係していることを既知の事実としていて、それを隠すためにそれぞれが虚偽の証言をしていたということになる。

 念には念を入れる意味で改めて断りを入れる。安倍晋三の現金還付中止指示、「不透明で疑念を生じかねない」は現金還付を真っ白とは扱っていない示唆そのもの――違法性の指摘そのものと受け止めなければならない。

 では、2024年3月14日午前中の参議院政倫審から世耕弘成の2022年4月の会合に関わる証言が現金還付を一切の違法性抜きに真っ白なのものと扱っていたのか、違法性を疑い、真っ白とは扱っていなかったのかを見てみる。前者なら、虚偽の証言を混じえていたことになる。

 日本維新の会の音喜多駿は参院政倫審で世耕弘成に対して「令和4年4月に安倍元首相はキックバックをやめると言ったとき、安倍元首相は違法性の認識を持っていたかどうかお分かりでしょうか」と質問しているが、安倍晋三自身が口にしたとしている"不透明"、"疑念"のキーワードから現金還付を真っ白とは扱っていなかった、違法性を臭わせたと読み解くことができなかったようだ。

 対して4月の会合の場に居合わせていた世耕弘成の答弁。

 世耕弘成「そのミーティングではですね、違法性についての議論は一切行われなかったと思います。先程申し上げましたけれども、安倍会長からですねえ、ノルマ通りの販売にするからというご指示が出た場だというふうに思っています。私はそこで意見を述べるというよりは、参議院側にそのことをしっかり伝達をする役割として呼ばれてるというふうに認識をしておりました」

 「違法性についての議論は一切行われなかったと思います」と言うことは、その場では現金還付は違法でも何でもなく、真っ白だと見ていた。安倍晋三の"不透明"、"疑念"のキーワードから現金還付は決して真っ白ではないことの心証を持つことすらなかった。ただ単に中止指示が出た場に過ぎなかったとしている。

 安倍晋三の"不透明"、"疑念"のキーワードが持つ現金還付制度の性格と世耕弘成自身が受けた心証との矛盾を解くとしたら、世耕弘成の答弁自体を偽証そのものとしなければ整合性は取れないが、ごく自然な当たり前の心証を機能させるべきを機能させることができなかった理由は4月の会合自体が実際には存在しなかった作り事と見るほかない。

 実際に存在した会合なら、安倍晋三が口にした現金還付中止のキーワードから真っ白とは言えない違法性を考慮して、その違法性に終止符を打つべく、現金還付を違法とはならない方法に変えて、若手や中堅議員の政治資金の手当てに役立てると同時に従来の現金還付は4月の会合後に直ちに廃止に(中止ではなく、廃止にである)持っていくべく実行に移していたはずだ。

 ところが安倍派幹部の誰もが一旦は中止したが、誰が決めたのか、従来どおりの違法性を持たせた現金還付が再開されていたなどと無責任丸出しなことを決め込んでいる。4月の会合での安倍晋三の"不透明"、"疑念"の言葉が示した真っ白とは言えない違法性を厳格に考慮すべきを、そうしなかったことになるのだから、この一事を以ってしても、実在した4月の会合とは言えない。

 世耕弘成の還付金の仕組みについての答弁に関しても偽証かどうかを窺ってみる。自民党佐藤正久の質問に答えた世耕弘成の証言。

 「この還付金の仕組みがですね、いつ始まったかこれ本当に分かりません。あの何年前と言えればいいんですけれども、少なくとも10数年前には始まっていたというふうに思います。

 ただ私はですね、若い頃はノルは達成が精一杯だったというふうに思ってますので、その還付金制度っていうものを殆ど意識しないでですね、パーティー権の販売をしてきてました」

 竹谷とし子議員(公明党)「世耕議員が以前はノルマ以上に売れなかったけれども、最近は売れるようになってきたということで、ノルマ以上に自分ご自身が売っている。そして還付金の制度があるということを知っているということは、自分にも還付があったというふうに思うのが、感じるのが普通じゃないでしょうか」

 世耕弘成「いやいや、ですから、還付金があったということ自身はですね、(2022年)11月の報道で明らかになったあと、私は知ったわけであります。還付金はですから、若い頃はそもそも完付金が貰えるような立場になかったので、先程もご説明したように2012年からは私自身、自分で自分の事務所の会計を日々細かくチェックすることができなくなったので、その頃にはもう相当ノルマが上がってきてますから。私は逆にノルマ売れてるのか心配で、一度にはノルマ行けてるかって言ったら大丈夫ですと言われて、それ以降報告がないので、私は自分のとこはノルマ通りに売ってるもんだというふうに、これは結果としては誤った認識ですけれど、認識をしていたわけであります」

 共産党山下芳生に対する答弁。

 世耕弘成「そういう還付金という仕組み、ノルマをオーバーすれば、そのオーバー分を返してもらうという仕組みが、清和会にはあるということは、私は随分前から、ま、10年以上前だと思いますけれども、認識をしておりました。

 でも、それを自分が受け取ってるということはですね、全く思っていなかった。若い頃はノルマ通り売るのが精一杯でしたし、段々勤続年数が長くなった、ポストが上がっていくとノルマもすごく高くなっていく中で事務所の方からノルマ、オーバーしましたという報告がない限りは、ノルマ通り精一杯売ってるんだろうというふうに思っていました。ですから、還付金という仕組みはあること。それを知ってましたが、まさか自分が受け取ってるとは思っていなかった。そして受け取ってると思っていなかったので、その還付金が政治資金収支報告上、どういう処理をされてるかということについては、私自身深く考えることがなかったということであります」

 ノルマを超えた分の現金還付の制度があることは10年以上前から認識していた。但し若い頃はノルマ通り売るのが精一杯だったし、勤続年数の長期化とポスト上昇に応じてノルマとしての売り上げ金額が高くなって、いわばノルマに応じるのが一杯一杯で、還付金をまさか自分が受け取ってるとは思っていなかった。

 この答弁にウソ=偽証を紛れ込ませているかどうか見てみる。

 勤続年数の長期化とポスト上昇に応じてノルマ金額が上がっていったということはノルマを超える売上を長期に亘り十分な実績としていて、その実績がポスト獲得へと貢献する形にもなったことの結果であって、実績としていなければ、ノルマ金額を上げても、それだけが上がって、実績は変わらないというムダな現象を招くだけのことだから、世耕弘成自身のノルマが上がったということは、当然、売り上げ実績に対応した応分の要求であって、「ノルマに応じるのが一杯一杯」は虚偽証言以外の何ものでもないと指摘できる。

 また、売り上げ実績がないままに勤続年数だけが長期に亘ったとしても、派閥に対する貢献度は低く評価されて、人材として特に優秀な部類に入らなければ、派閥を後ろ盾としたポストの獲得は容易ではないだろう。

 さらに言うと、世耕弘成の上記発言は安倍晋三が「現金は不透明で疑念を生じかねないから」とした現金還付の、いわば真っ白ではないという違法性を取り去った扱いをしているのと同じく、ノルマを課す意味をも取り去っている。

 ノルマを課す意味は派閥が所属各議員に勤続年数や役職経験等に応じて要求する貢献の基準と看做していることにあるはずである。各議員側にしても、売り上げの額そのものが派閥に対する貢献の度合いを示すことになる。上昇志向の強い野心ある議員にとってノルマ超えの売り上げに奮闘し、しかもノルマ超えは現金で還付されるから、派閥に対して自分がどれ程に貢献したかが数字で示すことになる上に還付現金を表に出ないカネとして政治活動にも自由に使えることから、一石二鳥としての有り難い価値を持っていただろうし、否応もなしにノルマを大きく超える売り上げに励み、反対給付としての役職の提供を望つつノルマの効用に応える努力を果たしたはずである。

 また、世耕弘成がノルマどおりに売っているに違いないなどと悠長に構えていることができる程度におとなしい上昇志向の持ち主だったなら、安倍派参議院の約40人もいる清風会の会長を2016年から裏ガネ疑惑を受けて2024年2月に解散するまで約7年間も務めてはいないだろうし、2024年の総選挙で参議院からポスト獲得の機会がより多い衆議院に転身して、当選を果たすこともしなかったろう。

 この上昇志向は世耕弘成の2018年から2022年の時効分5年間の収支報告書不記載金額合計1542万円が示すノルマ超えの売上にも現われている。

 いわば世耕弘成はノルマを超える売上げに頑張ってきたのであり、その頑張りは上昇志向の程度そのものの現われでなくてはならないし、上昇志向の数値化がノルマを超えた1542万円という金額そのものとなる。しかも時効分の2018年までの金額だから、それ以前を含めると、相当な金額となり、「段々勤続年数が長くなり、・・・事務所の方からノルマ、オーバーしましたという報告がない限りは、ノルマ通り精一杯売ってるんだろうというふうに思っていました」は明らかに偽証そのものと言える。

 「若い頃はノルマ通り売るのが精一杯だった」としていることも、世耕弘成の家系を見ると、正反対の答しか導き出すことができない。世耕弘成の祖父の世耕弘一が近畿大学創設者であると同時に大臣も務めたことのある衆議院議員であったこと。近畿大学の総長であった伯父の世耕政隆が衆議院議員時代に自治大臣兼国家公安委員会委員長として入閣したこともある政治家であり、世耕弘成自身が世耕政隆の死去に伴う1998年11月の参議院和歌山県選挙区の補欠選挙に自由民主党公認で出馬し、初当選したこと。さらに父親の死去に伴い、2011年9月から就任した近畿大学理事長職が現在まで10年以上に亘っていること等々をベースとした様々な自他の関係性や縁故関係が自ずと築き上げることになったであろう幅広い人脈を考えると、若い頃であっても、パーティ券を売るツテに不自由することは先ず考えにくく、「若い頃はノルマ通り売るのが精一杯だった」は限りなく偽証の疑いが出てくる。

 以上、世耕弘成が政倫審証言で偽証していることとこれらの偽証との関係で4月の会合がデッチ上げとしか見えない様子は質疑に入る前の弁明発言に別の意味解釈を与えることになる。

 その発言をいくつか挙げてみる。

 「私自身は派閥で不記載が行われていることを一切知りませんでした。とは言え、今回の事態が明らかになるまで事務的に続けられてきた誤った慣習を早期に発見・是正できなかったことについては幹部であった一人として責任を痛感しております」

 「今回の事態が明らかになるまで、自分の団体が還付金を受け取っているという意識がなかったため、還付金について深く考えることはありませんでした。

 もっと早く問題意識を持って還付金についてチェックをし、派閥の支出どころか収入としても記載されていないこと、自身の資金管理団体でも収入に計上されていないことに気づいていれば、歴代会長に是正を進言できたはずとの思いであります」

 「私が積極的に還付金問題について調査をし、事務局の誤った処理の是正を進言しておれば、こんなことにはならなかったのにと痛恨の思いであります」

 自身に対する現金還付も還付現金の収支報告書不記載も2022年11月の報道で知ったとしている関係からしたら、前以ってできるはずもないことを、「早期に発見・是正できなかったことについては幹部であった一人として責任を痛感しております」だ、「問題意識を持って還付金についてチェックをしていれば」だ、「収入に計上されていないことに気づいていれば」だ等々、不可能をさも可能であるかのように仮定して、「歴代会長に是正を進言できたはずとの思いであります」と言い切るこのマヤカシは底が知れない。

 特にこの「歴代会長に是正を進言」は4月の会合で安倍晋三が口にしたとしている「現金は不透明で疑念を生じかねない」と中止を指示した現金還付そのものに対して真っ白とは言えない違法性を嗅ぎ取る対応すらしなかったことになるのだから、ヌケヌケとした見せ掛けに過ぎない偽証そのものと断定できる。

 嗅ぎ取るのが人間のごく当たり前の認識であることからすると、嗅ぎ取らなかったこと自体が4月の会合の存在自体の否定材料となる。4月の会合が存在しなかったからこそ、「当たり前の認識が機能するシーンを想定することができなかったということである。

 世耕弘成の弁明でのできないことをできるかのように、あるいはするつもりもないことをしていたかのように仮定するこの物言いは典型的なウソつきがよく使う手で、世耕弘成をウソつきの部類に入れることができるが、これまでに指摘した偽証と4月の会合をデッチ上げと見ると、これらの弁明発言に別の意味解釈を与えなければならないことになる。

 実際には還付現金の収支報告書不記載を前々から知っていたことだが、そのことを隠すために、「気がついていれば」とか、「問題意識を持って還付金についてチェックをしていれば」等々、実際にはできもしなかったし、するつもりもなかったことをできたかのように、していたかのように装う逆説手法の言い回しを用いることで事実知らなかったことだと強調できる利点を持ち、そのことを表面的には成功させている。

 いわば誤魔化しの誤魔化しによって身の潔白の、現金還付も収支報告書に不記載処理されていたことも知らなかったことだとする証明としている。

 誤魔化しの誤魔化しをさらに裏返すと、ノルマ超えの現金が還付されていたことも、その現金が収支報告書上不記載処理されていたことも知っていて、自由に使える裏ガネとして利用していたということになるはずである。
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安倍派幹部は死人に口なしの安倍晋三を利用、4・8月の会合をデッチ上げ、不記載の事実を知らぬこととした

2025-03-13 07:13:16 | 政治


Kindle出版電子書籍「イジメ未然防止の抽象論ではない具体策4題」(手代木恕之著/2024年5月18日発行:500円)

 今までの記事では安倍晋三が現金還付を中止したという事実を打つ立てることで、いわば、それを一つの功績として、安倍晋三自身の裏ガネ関与の罪薄めを図るために4月・8月の会合をデッチ上げたと見る内容で書いてきたが、安倍派幹部4人の政倫審証言を読み直して、異なる視点を取り入れ、改めて一つの記事に纏めてみた。

 4月・8月の会合が実際には存在しなかった会合、デッチ上げと見る点は変わりはない。

 4月の会合の出席者は派閥会長の安倍晋三、派閥幹部の衆議院議員西村康稔、同塩谷立、同下村博文、そして参議院議員の世耕弘成、派閥事務局長兼会計責任者の松本淳一郎で、8月の会合の出席者は7月に銃撃死した安倍晋三を除いたそれ以下の同じ5名ということになっている。

 この両会合に出席していた西村康稔は2024年3月1日政倫審で安倍晋三の4月の会合での現金還付中止について自民党の武藤容治に対して次のように答弁している。

 西村康稔「ただ、今思えばですね、事務総長として特に安倍会長がですね、令和4年、22年の4月に現金での還付を行ってる。これをやめるということを言われまして、私もこれはやめようということで、幹部でその方針を決めまして、そして若手議員何人かをリストアップして、電話も致しました。私自身も若手議員にかけ、電話もしてやめるという方針を伝えたところ、伝えたわけであります。

 従って、会長はその時点で何らかのことを知っておられたんだろうというふうに思います。全体のこと、どこまでご理解、把握しておられたのか分かりません。けれども、兎に角、現金は不透明で疑念を生じかねないから、こうして現金の還付はやめると、まあ、還付そのものをやめるということで、我々方針を決めて対応したわけであります」――

 立憲民主党の枝野幸男には次のように答弁している。

 西村康稔「えーと、私の理解、私の認識はですね、安倍元会長は現金で戻す。これは疑義を生じかねない、不透明だと、還付そのものをやめるというふうに意向を示されて、そして先程申し上げたように4月の段階では幹部が手分けをして、所属議員に連絡をいたしました」――

 公明党の輿水恵一には次の答弁。

 西村康稔「安倍総理が、元総理会長がですね、還付を行わないという方針が示されましたので、これを少なくとも令和4年は徹底すればよかった。こうしたことは今となってもう反省することばかりでありますけれども、二度とこうした事態を招かないようにですね、これまで以上に厳格に政治資金の管理、自分自身も行ってまいりたいと思いますし、より透明でクリーンな政治に向けてですね、今回のことを教訓として、是非これまで以上にして参りたいというふうに考えております」

 共産党の塩川鉄也に対して。

 西村康稔「まさに現金での還付は不透明、そして様々な疑念を生じかねないということで、還付そのものをやめるということが安倍会長の意向として示されたわけであります。そのときに何か収支収告書の話をしたわけでもありません。還付そのものが適法なのか違法なのか、そういった議論もしたことはありません」

 西村康稔の4月の会合での安倍晋三の現金還付中止の説明描写は主としてこの程度である。次に4月の会合に出席していた塩谷立の安倍晋三の現金還付中止についての描写を同じ2024年3月1日の日本維新の会の岩谷良平に対する政倫審答弁から見てみる。

 塩谷立「先程も申し上げましたが、あのいわゆる資金の流れというか、透明性をということで、現金はやめようというようなことだったと思います。正確にちょっと私記憶してませんが、そういったことで兎に角還付はやめようということだと思います」

 同じく岩谷良平へのほぼ同じ繰り返しの答弁。

 塩谷立「確かに今申し上げましたように現金あるいは不透明な点だからやめようということで、それ以上の具体的な話は我々した記憶がございません。そういうことで、一応安倍さんの判断で、あの、還付をやめたということでございます」

 塩谷立と共産党の塩川哲也との4月の会合に関する遣り取り。

 塩川哲也「そこで令和4年の会長が出席をしたあの会合についてお尋ねをいたします。4月の会議、8月の会議、それぞれ主な議員の出席をされておられたということで、この4月において会長から還付をやめるという話があったと。

 で、現金の取り引きをやめた方がいい、透明性を高めるために現金をやめた方がいいという話だったということですけれども、一方でお話されておりましたが、若手の資金集めを派閥パーティーで支援をするということは重要だったと。そうであれば、その現金支給をやめても、他の方法で還付する方法を取るっていうことは検討されたのか。例えば口座取引きにするとか、そういうことにはならなかったんですか」

 塩谷立「安倍総理の考え方はやはり還付はやめた方がいいというのが一番のテーマだと思いますんで、あの先ずは他の方法でということはその点では考えませんでした」

 塩川哲也「そうしますと、そもそもその若手に対しての支援というシステムを行われてたとおっしゃっておられるので、そういう意味ではまるっきり還付するものをやめるっていうのは矛盾する話になります。そのものをやめるっていう判断っていうのが安倍会長の元でどういう理由だったのか、 改めてお聞きしたいと思いますか」

 塩谷立「あの、何回も申し上げますが。透明性、あるいは現金でということが問題ではないかということで、還付はやめようということになったわけでございます」

 次は世耕弘成の2024年3月14日午前中に行われた参議院政倫審だが、4月の会合での安倍晋三の現金還付中止の指示に関わる自民党佐藤正久への答弁。

 世耕弘成「安倍会長からは5月に、2022年の5月のパーティーでしたけども、4月上旬に幹部が集められて、ノルマどおりの販売にしたいってことは即ち還付金はやめるというご指示が出ました」

 では最後に下村博文の2024年3月18日に行われた政倫審での4月の会合での安倍晋三の現金還付中止についての日本維新の会岩谷良平に対する答弁。

 下村博文「2022年の4月に安倍会長の国会の事務所に私と塩谷さんとそれから当時西村事務総長、それから世耕参議院幹事長が呼ばれました。そのときに安倍会長の方から還付について現金の還付は不透明だからやめようということと、そのものをやめようという話がありましたが、還付が不記載であるとか、あるいは違法であるとかいう話は全く出ませんでした」

 以上で4月の会合での安倍晋三の現金還付中止の指示に関する安部派幹部の言及は大体、この程度である。

 西村等ほかの幹部が「現金還付中止」とのみ説明していることに対して世耕弘成だけが安倍会長からの指示の形として、「ノルマどおりの販売」だと説明している。要するに今後も従来通りにノルマをつけた売り上げを指示した。

 但し現金還付中止・ノルマどおりの販売は安倍派清和政策研究会という政治団体側の「今後どうするか」の対応であって、所属議員に対する「今後どうするか」の対応に関しては安倍晋三は派閥会長でありながら、何ら触れていないことになるし、会合そのものから抜け落ちていることになる。

 既に上で取り上げているが、共産党の塩川哲也が塩谷立に対して現金還付中止は若手の資金集めを支援するという派閥パーティーの趣旨に、いわば添わないことになるが、口座取引き等の他の方法で還付する方法は検討されたのかと質問したことに対して塩谷立は「安倍総理の考え方は現金還付中止が一番のテーマで、他の方法は考えませんでした」と答弁する形で所属議員に対する「今後どうするか」の対応はなかったと証言していることになる。

 そんな会合が果たして存在するだろうか。自分達の都合だけを伝えて、相手の都合は考えない。トランプならやりかねないが、一般的には想定不能で、4月の会合の存在自体を怪しくさせる。

 西村康稔も弁明で、「(現金還付は)自前で政治資金を調達することが困難な若手議員や中堅議員の政治活動を支援する趣旨から始まったのではないかとされていますが、いつから行われたのかについては承知をしておりません」と述べているし、塩谷立も弁明で、「還付が行われたのは個人でのパーティー開催など、政治資金を自前で調達することが大変な若手や中堅の政治活動を派閥のパーティーを通じて支援するとの趣旨であったように理解しております」と同じことを述べている。

 4月の会合が現金還付の本来の趣旨であるところの若手議員や中堅議員の政治活動支援を置き去りにした安倍晋三の現金還付中止指示と安部派幹部の中止指示の受諾となっていて、派閥会長と派閥幹部がわざわざ顔を揃えて現金還付について話し合う会合にしては常識では考えられない片手落ちのものとなっている。

 安倍晋三の中止理由、"現金還付は不透明で疑義を生じかねない"をクリアして、なおかつ若手議員や中堅議員の政治活動を今後共に派閥の政治資金パーティーを通した支援を継続するとしたら、ノルマ超えの売り上げを例え現金で還付したとしても、寄付や政治活動費名目で収支報告書への記載を指示すれば、それだけでこちらもクリアできるはずだが、そのような手も打たず、現金還付は一旦中止したが、誰の指示か不明で再開されることになったという、4月の会合が事実存在するものなら、その会合を無意味とする無責任な事態を引き起こしたことになるが、幹部としての責任を一切無にしていることになり、このあり得なさから言っても、4月の会合が存在したとすることはできない。

 このことのタネ明かしは現金還付して、還付した現金を収支報告書に何らかの費目を用いて記入するというごくごく常識的な手を打つことになったという筋書きとした場合、安倍晋三の現金還付中止以後、安部派幹部の関与外で現金還付・不記載がいつの間にか再開されていたという、4月と8月の会合を使ったストーリーは成り立たなくなるだけではなく、このストーリーの不成立は現実には現金還付と不記載が延々と続けられていて、途中一旦停止も、一旦停止に伴う再開というプロセスも存在しなかったこと、当然、4月と8月の会合も存在しなかったことを逆に証明することになるからとしか、答は出てこない。

 当然、安倍派幹部たちの政倫審証言のみで成り立たせている、4月の会合を利用した「不記載の話はなかった」としている自分たちの不記載無関与説にしても成り立たなくなり、結局は安倍晋三の死人に口なしを利用したことが露見することになる。

 そもそもからして自前での政治資金調達困難な若手議員や中堅議員が安倍派清和会政治資金パーティーの売り上げに自らの政治資金調達を頼る理由は清和政策研究会の名前は、特に安倍派清和政策研究会の名前は日本では一大ブランドとなっているからだろう。若手議員や中堅議員にとっては議員個人の政治資金集めパーティーでは売り上げに苦労しても、派閥の政治資金パーティーではそのブランド力ゆえに購入する企業が多くて、結果、ノルマ超えの売り上げが比較的容易で、その分、自らの政治資金にプラスされることになる。

 当然、現金還付の中止に伴って、若手議員や中堅議員の政治資金集め支援を今後どうするかの議論は是非とも欠かすことができない4月の会合となるが、現金還付と不記載がいつの間にか再開されたというストーリー仕立てを優先させる必要上、今後どうするかのルールを厳格に決めたというストーリーにすることはできなかった。

 つまり4月の会合も8月の会合も拵え事に過ぎないことを露見することになる

 次の点、8月の会合で「ノルマを超えて売り上げた若手議員等から返して欲しいという声が挙がった」理由を4月の会合の現金還付中止指示の前に、いわば還付中止指示を知らずに売り出していたからだと、幹部の全員がほぼ同じことを答弁しているが、ここからも矛盾を見い出すことができる。

 先ず最も理解できる答弁として立憲蓮舫に対する世耕弘成と塩谷立の日本維新の会岩谷良平に対する二例を挙げてみる。

 世耕弘成「5月のパーティーを、ま、4月にノルマ通りという指示が出ていますから、売ってしまった人もいるので、そういう人はやっぱり政治活動の資金として当てにしている面もあるんで、何らかの形で返すべきではないかという意見も出ました」

 塩谷立「パーティーは1月から2月頃から売り始めていますので、多くの人がもう売ってしまったという状況の中で、8月に売った分を是非お願いしたいという声が出てきたというふうに私は理解をしております」

 ここで問題となるのは売りに出した時期ではなく、派閥事務局への入金時期であろう。4月と8月の会合に共に出席していなかった同じ安部派幹部の高木毅は2024年3月1日の衆院政倫審の弁明の中で、「私の事務所では、清和研のパーティー券代金専用の銀行口座を開設し、基本的に購入者の方にはその口座に振り込み入金して頂くという形で売上金を管理しており、パーティーが終わった段階で口座から引き出した現金を清和研事務局に持参して全額を収めるという運用をしていました」と述べていて、派閥への入金はパーティー終了後となっているが、手違いとか、失念していたとかの理由でパーティー前日、あるいはパーティー当日ギリギリに入金される例もあるだろうし、あるいは売り手側の人情としては開催日寸前になっても売れることを期待して、その日まで待つこともあるはずで、派閥への入金はパーティー終了後が一般的であることは予想がつく。

 だが、幹部の誰もが返して欲しいと申し出た議員は4月の現金還付中止の指示前にパーティ券を売りに出して、ノルマ以上に売ってしまった結果のこととしているが、派閥事務局への入金時期には誰一人触れていない。

 入金時期が現金還付中止の指示を出した4月の会合以前ということはあり得ないことで、5月のパーティー開催日前後と考えると、4月の現金還付中止の指示が出たが事実と仮定したとしても、4月の会合後となるはずで、それでもノルマを超えた分の売り上げを返して欲しいという声が挙がるのは従来のままノルマ付けの販売を求め、ノルマを超えたとしても、これまでは行なってきた超過分の現金還付方式はやめ、いわば安倍晋三の指示通りに現金還付を中止し、ノルマ超えだろうと何だろうと全額入金を求める、いわば、"やらずボッタクリ"式の"ノルマどおり"だったことになる。

 それを受け入れるかどうかは議員の立場に応じて違いが出るはずである。人事や待遇で見返りを求めているなら、そのための投資と考えて、"やらずボッタクリ"に仕方なく応じるだろうし、派閥議員としての役目として義務的に行なっているだけのことだったなら、中抜きするなりして、自ら"やらずボッタクリ"を免れる手を打つ議員も存在するはずである。

 ところが、ノルマを超えた売った若手や中堅の全てが返して欲しいと声を挙げたかのような印象操作を行なっている。8月の会合を事実あったこととするためのストーリー作りでなければ、このような印象操作はできない

 この事実を裏返しすると、8月の会合など、存在しなかったということである。

 根拠はほかにもある。安倍晋三は4月の会合で、"現金還付は不透明で疑義を生じかねない"を中止の理由としていた。だが、幹部の誰一人、この言葉から、現金還付の違法性も合法性も一切嗅ぎ取ることをしていない。人間としての当たり前の感覚を麻痺状態にして出席していたと見るほかない。

 西村康稔の立憲枝野幸男に対する答弁。文飾は当方。
 
 西村康稔「(現金還付中止の)方針をずっと継続をして、5月のパーティーを開くわけですが、7月で安倍さんが撃たれて亡くなられた後、返して欲しいという声が出始めて、8月の上旬に集まったと。その段階で、繰り返しなる部分もありますが、還付は行わないと。

 しかし返してほしいという声にどう対応するかということで、色んな意見がなされたわけであります。で、その時点でこの還付が適法であるとか、違法であるとか、この法的な性格について何か議論したことはありませんし、収支報告書についても話はしておりません

 西村康稔の共産党塩川鉄也に対する答弁。

 西村康稔「まさに現金での還付は不透明、そして様々な疑念を生じかねないということで、還付そのものをやめるということが安倍会長の意向として示されたわけであります。そのときに何か収支収告書の話をしたわけでもありません。還付そのものが適法なのか違法なのか、そういった議論もしたことはありません

 塩谷立の立憲寺田学に対する答弁。

 塩谷立「私も真実を申し上げてますが、その(不記載の)話は出ませんでした。今までもその不記載のことが話題になったこともありません

 同じく立憲寺田学に対する答弁。

 塩谷立「その時点で多分、法令違反とかそういうことですから、我々はそのことは話はしなくて、ただ還付をやめようということで、それを行ったわけでして、その点では我々は別に嘘ついてるわけではなく、事実も今私してるところであります。だから会長は直そうとしたんでしょ」

 日本維新の会岩谷良平に対する答弁。

 塩谷立「確かに今申し上げましたように現金あるいは不透明な点だからやめようということで、それ以上の具体的な話は我々した記憶がございません。そういうことで、一応安倍さんの判断で、あの還付をやめたということでございます」

 塩谷立の公明党中川康洋に対する答弁。

 塩谷立「あの先程来申し上げておりますが、不記載についての話は一切出ておりません。そして、私もあの不記載についてもそれまで、今日今回この問題は起きるまで全く知りませんでしたので、その点で仮に不記載の話が出ればですね、当然、そのことを議論して何らかの対応していたと思っております

 2024年3月14日参院政倫審世耕弘成の立憲蓮舫に対する答弁。

 世耕弘成「(8月の会合で出たとしている、ノルマ超え分を議員個人のパーティーに上乗せして還付するという案について)誰が言ったか記憶ありません。で、違法性の認識は全くありません。私は上乗せなんていう案は出てないと思っています」

 世耕弘成の日本維新の会音喜多駿に対する答弁。

 世耕弘成「(4月の)そのミーティングではですね、違法性についての議論は一切行われなかったと思います。先程申し上げましたけれども、安倍会長からですねえ、ノルマ通りの販売にするからというご指示が出た場だというふうに思っています。私はそこで意見を述べるというよりは、参議院側にそのことをしっかり伝達をする役割として呼ばれてるというふうに認識をしておりました」

 世耕弘成の同じく日本維新の会音喜多駿に対する答弁。

 世耕弘成「(4月の会合は)ただ、ここはもう話し合いとか違法性を議論する場ではなくて、ノルマ通りの販売とするという指示が伝達された。そういう場だったというふうに思っています」
 
 既に取り上げているが、2024年3月18日衆院政倫審下村博文の日本維新の会岩谷良平に対する答弁。

 下村博文「2022年の4月に安倍会長の国会の事務所に私と塩谷さんとそれから当時西村事務総長、それから世耕参議院幹事長が呼ばれました。そのときに安倍会長の方から還付について現金の還付は不透明だからやめようということと、そのものをやめようという話がありましたが、還付が不記載であるとか、あるいは違法であるとかいう話は全く出ませんでした

 下村博文の同じく日本維新の会岩谷良平に対する答弁。

 下村博文「私自身も同時にそのときに地元でも、あるいは選挙区以外でも、個人の資金集めパーティーをしておりましたから、安倍会長からそのとき(現金還付中止の話が)あったときに、それは私自身は当然だろうというふうに思っておりましたので、還付そのものが不記載であるとか、違法であるとかいう話も出てませんし、私もそういうふうに認識したわけではありません

 要するに4月の会合で安倍晋三から現金還付中止の指示があった際、不記載とか、違法性とかの話が直接出なかったから、安部派幹部の誰もが不記載であったことや、その違法性を全く知らずにいた。

 と言うことは、安倍晋三の"現金還付は不透明で疑義を生じかねない"の文言から、どのような意味・解釈を付け加えることも、如何なる認識を働かせることもなく、どういったことなのか、尋ね返す気持ちも起きず、その文言を文言のままに、いわば無色透明な状態で受け取ったことになる。世間の善悪をまだ弁えない幼い子どもが大人の言うことを理解もできずにただ「ウン、ウン」と頷くに似た様子を幹部4人は安倍晋三に見せたことになる。

 だが、各幹部共に議員歴が長く、政治の世界の裏も表も知り尽くしているだろうし、海千山千の性格部分も抱えているはずだから、安倍晋三の"現金還付は不透明で疑義を生じかねない"の言葉が持つ意味内容を無色透明にしてしまうことなどできようはずはなく、できないことを平気でしているのだから、4月の会合を存在したこととすることはできない。

 例え不記載であることを承知していなかったとしても、あれ、これはどういうことなのだろうと疑問に思う気持ちが起きていいはずで、そこから合法性・違法性、いずれなのかを見極めようとする判断が働いていくものだが、それさえもなく、いわば意味のない言葉としてのみ虚心坦懐に耳に受け止めたように見える。

 世耕弘成は「ノルマ通りの販売とするという指示が伝達された。そういう場だった」と言っているが、現金還付中止の指示に対して当たり前の常識や感覚の持主なら自然と働かせることになる、"なぜ"という思いも働かなかったようで、人間存在として極めて不自然なこの形式いは4月の会合を現実には存在しなかった作り事としない限り、釣り合いは取れない。

 カラクリはこういうことでなければならない。現金還付を中止する理由を拵えるためにはある程度違法性を装わせなければならない。装わせたとしても、即政治生命に関わることだから、その違法性に対して自分達の関与を認めることはできない。この矛盾を解消するために常識ある人間なら持ち合わせているはずの善悪の判断力を鈍らせた状態に持っていき、現金還付が正しい行為なら使われるはずもない、"不透明"、"疑義"なる単語を敢えて無色透明な響きに変えることになった。結果、自分達を常識的な認知機能さえ持ち合わせていないリアリティを備えていない人間に見せることになった。

 人間として非現実的なこのような存在形式に関わる設定は安倍晋三から現金還付中止の指示が出た、我々はそれを受けて、各議員に連絡した、その際、違法性について議論もされなかったし、不記載の話も出なかった、それゆえに我々は現金還付の違法性も、不記載処理されていることも知らずにいたことにしようと幹部間で申し合わせた作り話――デッチ上げであることを否応もなしに逆証明することになる。

 全員が重度の認知症を患った人間にしか見えない。「不記載であるとか、違法であるとかいう話は出なかった」といくら言おうと、安倍晋三の死人に口なしをいくら利用しようと、4月と8月の会合を事実存在した会合とすることができない以上、不記載を知っていたことの証明としかならない。
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