12月22日「NHKクロ現」出演壇蜜の個別性を無視した個人主義的視点からの「当たり前」という価値観

2017-12-31 10:38:13 | 政治

 「正月3日間は休みます。読者数が少ないから、断る程のこともないのですが」 

 2017年12月22日放送の「NHKクローズアップ現代」をながら見した。「北朝鮮ミサイル開発 急進展の謎」、「銀行が高齢者に金融商品“押し売り!?」、「どうする 行き場のない遺骨」 の3テーマを取り上げていた。    

 「北朝鮮ミサイル開発 急進展の謎」は北朝鮮ミサイルのエンジンが冷戦時代製造のウクライナ製高性能エンジンRD250に酷似していることが判明、番組はウクライナ国営ロケット製造企業、その他の関係者にインタビュー、北朝鮮人スパイが浮上、ウクライナの技術が盗まれ、北朝鮮に渡ったのではないのかといった筋だてとなっている。

 尤もウクライナ側はエンジンそのものはロシア人の設計だから、ロシアから流出したのではないかと推測を立てている。

 「銀行が高齢者に金融商品“押し売り!?」は低金利時代で銀行の収益が圧迫されていることから、最大で14%の金利がつく銀行カードローン業務や金融商品知識に疎い高齢者相手に銀行という名の信用を元手に複雑な仕組みの外貨建て保険や投資信託勧誘の業務に力を入れ始めていて、銀行はその手数料を利益とするのだが、前者は返済能力を超えて貸し付ける“過剰融資”や多重債務、自己破産が続出していて、後者は為替レートなどによっては元本割れするリスクを知らないまま何百万円という金融商品を買い入れていると説明している。

 「どうする 行き場のない遺骨」は家族の中で死者が出た場合、葬式をして、その遺骨を建てた墓に収める従来の方法から海への散骨、墓代わりに樹木を植えて、その根本に遺骨を葬るといった弔いの変化、あるいは遺族が葬式費用の高止まり、墓地費用の高止まりで墓を建てたり葬式を出す費用がなくて自宅の部屋に骨箱のまま遺骨を保存している家庭や無縁墓地に葬る家庭が増えている状況、遺骨を預かる方もその数が多くなって場所がなくなっていく状況や遺骨だけを一定程度の金額で預かる施設などを紹介していた。

 その一方で台湾の台北市では土地が狭く、現在以上に墓地をつくる余地が無いということで合同という形で無料の葬儀と台北市自前の墓地に1年程度で土に還る無料の自然葬を行っていることを紹介している。
 
 ゲストとして芸能人や軍事アナリストが出演していたが、番組の最後で芸能人ゲストに一言ずつコメントを求めた。その中でタレントの壇蜜が「当たり前の世界が変化して、新しい価値観が生まれる過渡期なんだと思う」といった発言に奇異を感じた。

 但し奇異の正体は分からなかった。2、3日して「NHKクローズアップ現代」のサイトにアクセス、記事をダウンロートして正確な発言を確かめ、奇異の正体を突き止めることにした。
 
 壇蜜「平和で当たり前、銀行が信用できて当たり前、お墓があって当たり前っていう世界がどんどん変わってきていて、新しい価値観が生まれる今、過渡期なんだと思うんですね。来年、再来年、毎日日々変わっていくことを、ちゃんと遅れないようにキャッチしていけたらいいなと思います」――

 現在変化している前の世界が「平和」、「銀行の信用」、「墓があること」を「当たり前」の状況とする価値観を前提とした発言となっている。

 「平和」も「銀行の信用」も「墓があること」も、以前から「当たり前の世界」だったろうか。国内的にも世界的にも大多数の人間にとっては「当たり前」という価値観に守られた世界で生活しているのだろうが、守られることのない世界に住む羽目に立たされた人間も多くいるはずで、「当たり前」は全ての人間にとっての価値観ではないはずだ。

 「平和」については、それを戦争や紛争のない状態を言う場合、日本は現在のところ「平和で当たり前」の世界と言うことになるが、人間関係を含めた生活上の心配事や揉め事がない意味を指す場合は生活苦や夫からの暴力を逃れて夫に見つからないように息を潜めて生活する女性、その他は「平和」は「当たり前」の世界であることから縁遠い。

 戦争や紛争のある国の住人から見た場合は「平和」は「当たり前」の世界とは逆の価値観を持つことになる。戦争や国内紛争で普通の一般的な生活を送っていた市民が難民生活を強いられることになったとき、当たり前の世界から当たり前でない世界へと放り出されて、その変化を受け入れざるを得なくなる。

 だが、難民生活が何年も続くと、難民生活が当たり前の世界となってしまうケースもあれば、何年経っても難民生活を当たり前の世界として受け入れることができずにその苦痛から精神を病んで自殺してしまうといったケースもあるはずである。

 「銀行の信用」も常に「当たり前」を保証するわけではない。1980年代以降からバブル崩壊にかけて大企業の銀行融資離れが広がると、各主要銀行は自らが出資して設立した個人向け住宅ローン会社の顧客を銀行から送り込んだ役員を通して手に入れた顧客リストからピックアップするなどの手を使ってより低金利の融資で奪い、自らの利益を獲得する一方、不良債権化する恐れのある客を出資先の住宅ローン会社に紹介したり、銀行自身が住宅ローン会社に対して優越的地位にあることを悪用、暴力団絡みや不良債権化している融資の肩代わり、焦げ付いた融資を引き受けさせるなどしたという。

 そしてバブルが崩壊し地価が下がると、ただでさえ不良債権まみれとなっていた各住宅ローン会社は莫大な損失を抱えることとになり、国は金融システムの破綻回避を目的に農林系の出資会社を除く住宅ローン会社7社を倒産・消滅させている。

 会社経営が順調なときは銀行の方から会社を大きくすべきだといった口実で融資を申し出、経営がおかしくなると、その立て直しのために融資を頼んでも断るだけではなく、銀行の利益だけを考えてそれまでの融資の回収に走り、会社の経営をなお一層窮地に追い込むといったケースはよくテレビドラマに取り上げられる。

 テレビドラマでは何人の経営者が首吊り自殺を図っているだろうか。

 2014年以降、全国の企業倒産件数は1万件を割っているが、それ以前は1万件を超えている。手の平を返すように銀行から融資を受けることができずに倒産したケースも数多くあるはずだ。

 「墓があること」も、以前から「当たり前の世界」であったわけではない。いつの世にも貧乏人が存在するのに応じて自身の墓を持たない上に引き取り手のない死者もいつの世にも存在し、そのような死者については自治体が簡単な葬式を出して遺骨を自前の共同墓地に収めるといったことはよくあることだった。

 「当たり前」という価値観は常に個別性を抱えている。「当たり前」を「当たり前」としない、あるいはしたくてもすることができない、あるいは肯定的な意味の「当たり前」に恵まれない人間はいくらでも存在する。

 壇蜜はこの個別性を無視して、誰もが「当たり前」を前提としていたかのような従来の世界の価値観の変化を論じた。現在が「新しい価値観が生まれる過渡期」であったとしても、個別性はなくならない。

 壇蜜がどのくらい「来年、再来年、毎日日々変わっていくことを、ちゃんと遅れないようにキャッチ」したとしても、個別性を考慮しないザックリとした価値観しかキャッチできないだろう。

 「当たり前」を「当たり前」とすることができない人間、「当たり前」とは逆の負の価値観を「当たり前」とせざるを得ない境遇に閉じ込められて、そこから抜け出すことができない人間、会社や家族や社会といった集団から取り残された、あるいは見捨てられた人間等々が主として負の個別性に囚われの身となる。

 壇蜜の後に続いたコメント。

 デーブ・スペクター「今の完璧でしたね。この3人いらないですね」

 泉ピン子「何言ってるのよ。違う、若いから先のこと語れるの!明日がない、来年のことしかないのよ、私は。何を言っているの。若いから淡々と言えるの。これからは感謝をして生きていきたいと。感謝なんかどうでもいい。自分が元気ならいい」

 山里亮太(番組の無いように対する一言ではなく、泉ピン子発言に対して「切実ですね」

 壇蜜の個別性の無視は泉ピン子と同じく、番組の紹介に応じて社会全体を見る感想ではなく、自分自身の立場からのみ見た個人主義の視点からの感想ということなのかもしれない。

 実は壇蜜のファンである。鼻にほんの少しかかった、間延びしたような声にセクシーさを感じる一人である。
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安倍晋三の経済好循環政権5年確実発生説と賃上げ要請の矛盾 そして「騒がしい1年だった」とする尊大さ

2017-12-30 12:00:54 | 政治

 安倍晋三が12月26日(2017年)経済団体相手にスピーチしている。先ず国内総生産(GDP)が「7四半期連続のプラス成長」だ、「業況判断が政権交代前のマイナスからプラスに転じた」、「バブル景気以来26年ぶりの好景気だ」等々、例の如くにアベノミクスの功績を並べ立る慣例化させたスタートを見せている。

 「7四半期連続のプラス成長」と言っても、個人消費がマイナスに転じて内需は力強さを欠き、外需主導だと言うから、「バブル景気以来26年ぶりの好景気」だろうと何だろうと、特に中低所得層を置き去りにしたアベノミクスの功績に過ぎない。上に厚く、下に薄い格差の構造を見ないわけにはいかない。

 「日本経済団体連合会審議員会」首相官邸/2017年12月26日)   

 安倍晋三「現在の景気回復は、第一次安倍内閣のときと一見同じように見えて、総理大臣が同じでありますから同じようには見えるんですが、実質は大きく異なっています。大企業、製造業だけにとどまらず、景気回復のうねりが、中小企業や非製造業の皆さんにも広がっています。正に、アベノミクスが目指してきた経済の好循環が、この5年間で確実に生まれている。そのことの証左だと思います」

 では、これも慣例化 している例の如くの「賃上げ要請」についての発言を見てみる。

 安倍晋三「賃金についても、連合の調査によれば、4年連続で2%程度の賃上げが実現しました。これも、(第1次安倍政権時の)2006年の頃を上回り、今世紀で最も高い水準の賃上げとなります。
 
 景気回復の結果、意欲ある人は誰でも働くことができる。そして、頑張った人の賃金が上がる。そのことで投資や消費が更に拡大し、中小・小規模事業者やサービス業の皆さんのところにも景気回復の温かい風が届き、次なる経済成長が生まれる。この経済の好循環こそが、アベノミクスによる景気回復の原動力であります。まず、この場をお借りして、5年間の雇用の拡大と賃上げに対する経団連の皆さんへの深甚なる感謝の気持ちを申し上げたいと思います。

 その上で、そろそろ勘の良い皆さんはお気付きのことと思いますが、いよいよ長年の懸案であるデフレ脱却を実現するためにも、来年、平成30年も、この経済の好循環を更に力強いものとしながら継続していかなければならない。

 そのために一つお願いをさせていただきたいと思います。毎年同じような話で、榊原会長、岩沙議長を始め、御列席の皆様方には、申し訳ない気持ちで一杯でありますが、是非、来春も力強い賃上げ、ずばり3%以上の賃上げをお願いしたいと、こう思う次第でございます。

 しーんとしてしまいましたが、当然、企業の皆さんが賃上げを行うためには、労働生産性を高めることが必要です。そのために政府としても生産性革命という新しい旗を掲げ、税制・予算・規制改革、あらゆる政策を総動員することとしました」

 安倍晋三は最初の発言で「大企業、製造業だけにとどまらず、景気回復のうねりが、中小企業や非製造業の皆さんにも広がっている」とする現状分析のもと、「アベノミクスが目指してきた経済の好循環が、この5年間で確実に生まれている」と自らの経済政策の正当性を誇示している。

 「うねり」なる言葉は大きく起伏する波の力強さについて言う。アベノミクスによってそのような波の力強いエネルギーを得て、大企業のみならず「中小企業や非製造業」にまで景気回復が確実に押し寄せていると現状分析したことになる。

 この現状分析に応じて、「アベノミクスが目指してきた経済の好循環が、この5年間で確実に生まれている」と誇ることができたはずだ。

 だが、経済の停滞から「経済の好循環」に向かう手順は、極く当たり前のことを言うことになるが、企業業績の回復、回復に応じた賃金への分配、分配による所得の余裕に応じた消費の拡大、これを受けた企業業績のさらなる拡大という出発点に戻って、再びそこをスタート地点として滞りのない循環をつくり出して初めて「経済の好循環」と言い得る景気状況が出現する。

 当然、この循環のいずれの段階も何一つ欠かしてはならないし、各段階共に自発性を欠いていたなら、いわばいずれかの段階で他からの強制が働いていたなら、「経済の好循環」とは言えなくなる

 だが、アベノミクス下に於いて日銀の異次元の金融緩和を受けた円安と株高で企業業績を回復させていながら、それが本業の活性化を受けた利益拡大でないために企業側が賃上げという形の分配を満足に行い得ず、安倍晋三からの賃上げの要請を受けて、本来の自発性とは異なる他発性の分配を辛うじて実現させることができた。

 それも大企業中心に偏っていたために高級品・贅沢品の消費は活発だが、中低所得層はより人数が多いために平均が抑えられることになって全体の個人消費が低迷することになった。

 安倍晋三はそれでもなお、アベノミクスによって企業側の自発性に基づいた賃上げを生み出す経済的状況を実現させるのではなく、「是非、来春も力強い賃上げ、ずばり3%以上の賃上げをお願いしたい」と他発性を力とした賃上げ状況を作り出そうとしている。

 企業による賃上げという形の所得の分配の段階で自発性とは言えない他発性を動力機関としたとき、果たして「経済の好循環」と真に言えるだろうか。

 循環構造に他発性が一つでも紛れ込んだとき、「経済の好循環」は自律性を欠くことになる。この自律性欠如が最も顕著に現れている局面が個人消費の低迷であろう。

 このことを裏返すと、個人消費の活発化は自律性をエンジンとした「経済の好循環」でなければならないということになる。

 自律性を欠き、賃上げ要請という他発性に頼っていながら、現実の話としても政府の月例経済報告が「景気は緩やかな回復基調が続いている」との判断据え置きが繰り返されているにも関わらず、「大企業、製造業だけにとどまらず、景気回復のうねりが、中小企業や非製造業の皆さんにも広がっている」と、さもアベノミクスが自律的な力強いエネルギーを持ち得て、景気回復を急速度で実現させているかのように言うことができる。

 この経済の実態を忠実に現状判断できない、現状とは乖離した安倍晋三の自信過剰な過大評価はどこから生じているのだろうか。国政選挙5連勝、しかもその多くがいずれも自民圧勝、あるいは与党圧勝をアベノミクスという経済政策の成果だと評価づけることになったのだろうか。

 選挙は政治の成果に対する審判だけではなく、期待に対する審判も含まれる。アベノミクスによってなかなか景気が実感できない成果を目の前にしていても、他の経済政策を考えることができずに、あるいは選挙のたびに景気を良くするといった巧みな言葉に誘導されてアベノミクスになお期待をかけて1票を投じるという投票行動は極く当たり前に存在する。

 当然、このような選挙の成果をイコールそのまま国民の信任と結びつけて、その信任がイコールそのままアベノミクスの成果に結びつけることはできない。

 だが、安倍晋三は選挙の成果を国民の信任にそっくりと結びつけ、その信任をアベノミクスの成果がつくり上げたと過大評価することになり、あまつさえ自信過剰を生み出すことになったに違いない。

 このことはスピーチ最後の発言が証明している。

 安倍晋三「相場の格言では、申酉(さるとり)騒ぐ戌(いぬ)笑う、と言うそうであります。本年の酉年は、余り多くは語りませんが、私にとっても本当に騒がしい1年でありました。

 来年の戌年は、どうか、日本中で笑いの絶えない1年であってほしい。そう願っています。実際に、来年の年末のこの審議員会が、本当に、笑顔で迎えることができるかどうか。それは、ここからの1年間、政府も、経済界も、どれだけ、果敢に改革に挑戦するかどうかにかかっている。

 私は、そう考えています。どうか、新年も、共に、頑張ってまいりましょう。戌笑う来年が皆様方にとりまして、すばらしい年となることを御祈念いたしまして、御挨拶とさせていただきたいと思います。本日は、御招待賜り、また、御清聴いただきましてありがとうございました」

 「本年の酉年は、余り多くは語りませんが、私にとっても本当に騒がしい1年でありました」 

 「騒がしい1年」とは安倍晋三が森友学園国有地格安売却と加計学園獣医学部新設に不正があり、それに関わったのではないかと疑惑を持たれて国会で野党から集中砲火的に追及を受けたことを指している。

 疑惑がすっかり晴れたわけではない。野党のみならず、国民の多くが世論調査で安倍晋三以下の「政府に説明に納得できない」が過半数を超えている。

 安倍晋三はこのような疑惑未解消な状況を受けて、2017年6月19日の通常国会終了を受けた記者会見では、「信なくば立たずであります。何か指摘があればその都度、真摯に説明責任を果たしていく」と疑惑解消に向けた努力を以後も真摯に果たしていく約束をしている。

 2017年8月3日の記者会見では次のように発言している。

 安倍晋三「先の国会では、森友学園への国有地売却の件、加計学園による獣医学部の新設、防衛省の日報問題など、様々な問題が指摘され、国民の皆様から大きな不信を招く結果となりました。

 そのことについて、冒頭、まず改めて深く反省し、国民の皆様におわび申し上げたいと思います。

  国民の皆様の声に耳を澄ま、国民の皆様とともに、政治を前に進めていく。

 5年前、私たちが政権を奪還した時のあの原点にもう一度立ち返り、謙虚に、丁寧に、国民の負託に応えるために全力を尽くす。一つ一つの政策課題にしっかりと結果を出すことで、国民の皆さんの信頼回復に向けて一歩一歩努力を重ねていく」

 疑惑を受け、疑惑解消の説明に国民が未だ納得がしていないことに対して反省とお詫びの姿勢を示し、謙虚さと丁寧さを持って信頼回復に努めることを約束している。

 それを「私にとっても本当に騒がしい1年でありました」で片付ける。

 野党の国会での追及を「騒がしい奴らだ」とでも思っていたのだろうか。腹の中で「騒げ、騒げ、騒いだってどうにもならない」と高を括っていたのだろうか。

 「騒がしい1年でありました」で片付けることができる以上、口にした真摯さ、あるいは謙虚さと丁寧さは見せ掛けの姿勢であることを露見させることになるばかりか、このような姿勢とは正反対の尊大さが言わせた言葉としか窺うことはできない。

 やはり国政選挙5連勝の成果を国民の信任の直結と解釈、その信任を生み出した原動力をアベノミクスの成果であるが如くに経済の実態と乖離した過大評価が誘引の自信過剰がなければ、このような尊大さは生まれてこない。

 そもそもからして自律性を軽んじて経済団体に賃上げを要請する他発性に陥っているアベノミクス経済を「好循環」と表現すること自体が自己矛盾以外の何ものでもないのに、そのことを無視して「好循環」と言い、その経済状況を「景気回復のうねり」といった言葉を持ち出して強い勢いを持った景気回復であるかのように装う。

 まさに過大評価と自信過剰と尊大さが絡み合うことになったアベノミクスに関わる発言であり、そのような姿勢なくして現れることのない「騒がしい1年でありました」の回顧ということなのだろう。

 安倍晋三の本質的な人間性は尊大さを性格構造としているとしか見ることができない。

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安倍晋三の従軍慰安婦日韓合意の日本軍の責任承認も「政府発見資料に記述なし」も安部流ペテン

2017-12-29 11:39:01 | 政治

 2015年12月28日の日韓政府間従軍慰安婦問題合意を朴槿恵(パク・クネ)政権から変わった文在寅(ムン・ジェイン)政権が合意破棄の世論を受けて検証、2017年12月28日、韓国大統領府の報道官がムン・ジェイン大統領の声明を読み上げた。

 〈文大統領の立場表明全文〉中央日報/2017年12月28日14時13分)
 
◆立場表明の全文。

慰安婦TFの調査結果発表を見ながら、大統領として重い気持ちを禁じ得ません。

2015年の韓日両国政府間の慰安婦交渉は手続き的にも内容的にも重大な欠陥があったことが確認されました。

遺憾ではありますが、避けることはできません。

これは歴史問題の解決において確立された国際社会の普遍的原則に背くだけでなく、何よりも被害の当事者と国民が排除された政治的合意だったという点で極めて遺憾です。

また、現実に確認された非公開合意の存在は国民に大きな失望を与えました。

合意が両国首脳の追認を経た政府間の公式的約束という負担にもかかわらず、私は大統領として国民と共に、この合意では慰安婦問題が解決されないという点を改めてはっきりと明らかにします。

そしてまたも傷を受けた慰安婦被害者の皆さんに心から深い慰労を伝えます。

歴史で最も重要なことは真実です。

真実に背を向けたところで道を付けることはできません。我々には苦痛の過去であるほど向き合う勇気が必要です。苦痛で、避けたい歴史であるほど、正面から直視しなければいけません。

そうしてこそ初めて治癒も、和解も、そして未来も始まるでしょう。

私は韓日両国が不幸だった過去の歴史を踏んで、本当の心の友になることを望みます。

そのような姿勢で日本との外交に臨みます。

歴史は歴史として真実と原則を毀損せずに扱っていきます。同時に私は歴史問題の解決とは別に、韓日間の未来志向的な協力のために正常な外交関係を回復していきます。

政府は被害者中心の解決、国民と共にする外交という原則の下、早期に後続措置を用意することを望みます。

 「慰安婦交渉は手続き的にも内容的にも重大な欠陥があった」
 「歴史問題の解決において確立された国際社会の普遍的原則に背く」
 「この合意では慰安婦問題が解決されない」
 「歴史は歴史として真実と原則を毀損せずに扱っていきます」

 日韓合意の見直しと新たな交渉による解決を目指す意思がありありと滲み出ている。

 ムン・ジェイン大統領が「現実に確認された非公開合意の存在は国民に大きな失望を与えました」と言っている「非公開合意」の内容はここでは触れていないが、2017年12月28日付「毎日新聞」記事が紹介している。その一部をここに抜粋する。    

 〈「最終的かつ不可逆的解決」という文言は、安倍晋三首相の公式謝罪を担保する閣議決定を要求する文脈で韓国側が要求したが、閣議決定は実現せず、「韓国側の当初の意図とは違い、『解決』の不可逆性を意味する脈略に変わった」などと経緯を指摘した。 〉――

 安倍晋三が従軍慰安婦に対する謝罪を閣議決定すれば、日本政府の公式謝罪となって、その謝罪は再び元の状態に戻すことができない「最終的かつ不可逆的解決」の確固とした“担保”とし得る。韓国側はそのような意図で要求したが、安倍晋三は謝罪の閣議決定は行わず日本側は公式謝罪抜きで合意を以って「最終的かつ不可逆的解決」としたということになる。

 但し韓国側が「閣議決定を要求する文脈で」云々したが事実とすると、明示的、あるいは直接的な言葉での要求でなかったことになって、安倍晋三がペテンを働かせたのかどうかは微妙となる。

 上記文在寅大統領の声明に対して日本政府は勿論のこと一斉に反発した。その一人外相河野太郎の関係箇所の発言を取り上げてみる。

 「外務省」(於:オマーン・マスカット/2017年12月27日)    

 冒頭発言

 河野太郎「今日韓国外交部の長官直属のタスクフォースから,一昨年の日韓合意についての検討結果なる報告書が発表されました。この報告書は合意に至るまでの韓国国内における交渉の体制ですとか,あるいは合意の内容について,批判をするものであって,すでに両国政府が最終的かつ不可逆的に合意をしているものについて,やや疑義を表すようなことが韓国政府に対して示されました。

 日韓合意は申し上げたように両国政府の合意でありますし,国際社会からも高く評価されているものです。この報告書は,韓国政府が日韓合意について採るべき立場については触れておりませんが,最終的かつ不可逆的な合意として両国政府が合意をしたものですから,万が一にもこれが,合意が変更されるようなことがあれば,日韓関係は極めて管理不能な状態になるということは私(大臣)から康京和(カン・ギョンファ)長官にもすでに申し上げているとおりでございます。

 そうしたことはないという風に信じておりますし,仮にあるとしても受け入れることは出来ないというのが我々の立場でございます。日本政府として,この日韓合意が韓国政府によって着実に実施されるという風に思っておりますし,そう求めるものであります。政府の立場は外務大臣談話としてすでに発出しているところであります。それについては,韓国側に談話については伝えているという風に認識しています。私(大臣)からは以上です」

 質疑応答

 記者「日韓合意の件ですけれども,今日談話でですね,日韓関係がマネージ不能という,ちょっと強い言葉で談話を出されていると思うんですけれども,改めてどういうお気持ちでこの談話,この言葉を使われているのか教えてください」

 河野太郎「この日韓合意は,前の岸田大臣の時に両国の外務大臣同士で合意をして,最終的かつ不可逆的な合意だということを申し上げ,国際社会からもこれは非常に高い評価を得ていた,これを基にして日韓関係を前に進めようという時にですね,政権が変わったから前の政権がやったことは知りませんということでは,これから先,日韓が合意をするのが何事においても難しくなりますし,国民の支持という話もございましたが,それじゃあ韓国と取り決めをやる時には,毎回国民投票をやってもらわなきゃいかんということになるのでは何事も前に進みませんので,これを不可逆的かつ最終的と言ったものが変更されるようなことがあれば,なかなか日韓がこれから何をやるにも極めてマネージメント不能の状況になります,ということは,先般外務大臣にも直接申し上げましたので,そういうことがよもやないという風に思っております」 

 冒頭発言で日韓従軍慰安婦合意は「最終的かつ不可逆的な合意」を約束しているのだから、その約束を破るようなら、「日韓関係は極めて管理不能な状態になる」と強く警告している。

 これは国としての経済的な立場の上位性、あるいは国力の上位性を利用した、それゆえに一種の恫喝となる発言に値する。アメリカや中国に対しては「管理不能な」関係性を言い立てることはできないだろう。言い立てた場合のダメージはアメリカや中国よりも日本の方が大きくなるからだ。

 質疑応答で「政権が変わったから前の政権がやったことは知りませんということでは,これから先,日韓が合意をするのが何事においても難しくなります」と言っているが、オバマ前米大統領が気候変動抑制に関する多国間の国際的な協定(パリ協定)の2015年12月12日採択に関わり、2016年9月3日に中国の習近平国家主席と共にパリ協定の批准を宣言している。

 だが、次の米大統領トランプは2017年6月1日、米国のパリ協定からの離脱を表明している。

 2017年11日10日にベトナムのダナンで行われた環太平洋パートナーシップ(TPP)閣僚会合に於いて11カ国によるTPP交渉の大筋合意が確認され、各国とも議会承認を残すだけとなったが、就任前のトランプが選挙戦中の公約通りにTPPからの離脱方針を示したことを受けて、オバマは2016年11月22日、任期中の議会承認を断念する考えを正式に表明した。

 パリ協定にしてもTPPにしても、従軍慰安婦日韓合意とは異なって複数という形を取るが、基本的には同じ国家間の合意である。「政権が変わったから前の政権がやったことは知りませんということでは何事においても合意は難しくなります」とトランプに主張するか、アメリカを突き放すような態度を取るべきだろう。

 それができないのは日本が韓国に対するのとは逆に経済的な立場の上位性、あるいは国力の上位性が日本側にではなく、アメリカ側にあるからだろう。

 あまり偉そうな口を叩くことはできない河野太郎の恫喝に過ぎない。

 あれ程歴史認識に拘っていた朴政権が従軍慰安婦問題で日本と合意したのは韓国経済が低迷していたために歴史問題でギクシャクした関係にあった日本と良好な関係を取り戻して、経済取引きでも改善方向に持っていきたい背に腹は変えられない状況にあったからだろう。

 韓国が急激な経済発展を遂げて一挙に先進国の仲間入りを果たした漢江の奇跡(1961年~1997年)後の1997年のGDP成長率は11.3%もあったが、年々下降して朴政権(2013年2月25日~ 2017年3月10日)就任の年は2.9%、翌年の2014年は3.3%、日韓合意の2015年は3.3%と、かつての勢いを完全になくしていた。

 韓国がこのような経済状況下にあり、日韓合意前年の2014年4月16日には300人もの死者を出すセウォル号沈没事故があり、その杜撰な対応などで不人気を曝け出すことになって朴大統領の支持率が低迷、日本は強い立場で交渉に臨むことができた。
 
 いわば韓国経済回復と大統領の支持率回復のキッカケとしたい日韓合意であったはずで、少しのことには目をつぶる意思があったのかもしれない。

 だから、検証結果が「慰安婦交渉は手続き的にも内容的にも重大な欠陥があった」と指摘されることになった。

 韓国側の従軍慰安婦に関わる元々の歴史認識は植民地下の韓国人女性が日本軍兵士に拉致同然に強制連行されて日本軍の慰安所で慰安婦とされ、強制売春に従事させられたとする日本軍関与説であるのに対して安倍晋三の同歴史認識は日本軍関与説を否定するものであった。

 ところが、2015年12月28日、日本の外相岸田文雄とユン韓国外相が韓国ソウルで会談、両国間に横たわっていた従軍慰安婦問題で合意を見た。共同記者発表から日本軍関与について触れている箇所のみを抜粋してみる。

 「日韓共同記者発表」外務省2015年12月28日)   

〈1 岸田外務大臣

 日韓間の慰安婦問題については、これまで、両国局長協議等において、集中的に協議を行ってきた。その結果に基づき、日本政府として、以下を申し述べる。

(1)慰安婦問題は,当時の軍の関与の下に,多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題であり,かかる観点から,日本政府は責任を痛感している。

安倍内閣総理大臣は,日本国の内閣総理大臣として改めて,慰安婦として数多の苦痛を経験され,心身にわたり癒しがたい傷を負われた全ての方々に対し,心からおわびと反省の気持ちを表明する。〉(以下略)――

 「慰安婦問題は,当時の軍の関与の下に,多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題」との文言は韓国側の歴史認識に於ける日本軍関与説の全面的承認に見えるが、ところがそうではなかった。

 全面的承認であるなら、承認した国の首相として公式謝罪の閣議決定はあって然るべきだが、閣議決定がなかったことが全面的承認ではないことを証拠立てる。

 全面的どころか、韓国側の歴史認識とは無縁の文言に過ぎなかった。当時「日本のこころ」代表の右翼中山恭子がこの日韓合意に於ける日本軍の関与を認めた文言を事実と捉えて批判したのに対して安倍晋三は次のように答弁している。

 安倍晋三「海外のプレスを含め正しくない事実による誹謗中傷があるのは事実でございます。性奴隷 あるいは 20万人といった事実ではないこの批判を浴びせているのは事実でありまして、それに対しましては政府としては、それは事実ではないということはしっかりと示していきたいと思いますが、政府としてはこれまでに政府が発見した資料の中には、軍や官憲による所謂強制連行を直接示すような記述は見当たらなかったという立場を辻本清美議員の質問主意書に対する答弁書として平成19年、これは第一次安倍内閣の時でありましたが、閣議決定をしておりまして、その立場には全く変わりがないということでございまして、改めて申し上げておきたいと思います。

 また 『当時の軍の関与の下に』というのは、慰安所は当時の軍当局の要請により設営されたものであること、慰安婦所の設置、管理及び慰安婦の移送について旧日本軍が直接あるいは間接にこれに関与したこと、慰安婦の募集については軍の要請を受けた業者が主にこれにあたったこと、であると従来から述べてきている通りであります。

 いずれにいたしましても重要なことは今回の合意が、今までの慰安婦問題についての取り組みと決定的に異なっておりまして、史上初めて日韓両政府が一緒になって慰安婦問題が最終的且つ不可逆的に解決されたことを確認した点にあるわけでありまして、私は私たちの子や孫そしてその先の世代の子供たちに謝罪し続ける宿命を背負わせるわけにはいかないと考えておりまして、今回の合意はその決意を実行に移すために決断したものであります」――

 日本側が認めた「当時の軍の関与」とは慰安所の設営、あるいは設置、その管理、そして慰安婦の移送等を指しているのであって、韓国側が唱えている日本軍関与説は「政府が発見した資料」には記述がないことから事実に反すると斥けている。

 「政府が発見した資料」の中に記述がなくても、韓国人の元従軍慰安婦のみならず、台湾、フィリピン、インドネシアの元従軍慰安婦の女性たちが軍トラックに乗ってやってきた数人ずつの日本軍兵士によって大人の体格に物を言わせて強引に連れ去られて慰安所に閉じ込められ、強制的に日本人兵士を取らされたことを数多く証言している。

 特に周知の事実となっているのはインドネシアの旧宗主国であったオランダ軍が日本軍に負けて収容所に収容されることになったオランダ人の若い女性を強制的に慰安所に閉じ込めて日本軍兵士の慰安婦とした事件で、敗戦後オランダの現地裁判にかけられて、死刑まで出している。

 要するに「政府が発見した資料」の中にはその事実の記述がないというだけのことに過ぎない。「資料」の外の現実の世界には夥しい数でその事実が存在した。

 安倍晋三は政府発見資料には日本軍関与の記述がないとすることで上記元慰安婦の数多くの証言が示し、韓国側の歴史認識となっている現実世界での日本軍関与の事実を抹消し、その抹消を日韓合意に於ける「当時の軍の関与の下に」なる文言に巧みに潜り込ませるペテンを働かせたのである。謝罪の閣議決定など、する気はサラサラなかった。

 当然、日韓共同記者発表で記している「安倍内閣総理大臣は,日本国の内閣総理大臣として改めて,慰安婦として数多の苦痛を経験され,心身にわたり癒しがたい傷を負われた全ての方々に対し,心からおわびと反省の気持ちを表明する」は口先だけの文言に過ぎない、これもペテンということになる。

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河野太郎のトランプのエルサレム首都移転に触れないイスラエルとパレスチナの2国家解決支持のマヤカシ

2017-12-28 11:52:21 | 政治

 巧みな言葉遣いてたぶらかす点で安倍晋三と人間性がたいして変わらない日本の外相河野太郎が12月24日から12月29日に中東を訪問、25日夜(日本時間26日未明)、イスラエルのネタニヤフ首相兼外相、パレスチナ自治政府のアッバス議長と相次いで会談した。

 イスラエルで25日夜、記者会見を開いた。

 「イスラエル記者会見」外務省/2017年12月25日(月曜日)21時50分)     

 冒頭発言

 河野太郎「外務大臣就任後,初めてのイスラエル,パレスチナ訪問となりました。
 先般,アメリカのエルサレムに関する発表後,主要国の外務大臣としては初の訪問となったという風に理解をしております。イスラエルではリブリン大統領,ネタニヤフ首相兼外相,それからハネグビ地域協力相,これはJAIPの担当大臣です。パレスチナでは,アッバース大統領とマーリキー外務長官,会談した後,夕食会をやりました。

 エルサレムを巡る情勢が緊迫化している中での訪問でありましたが,中東和平に関して,かなり率直に両サイドからの話を聞くことが出来ましたし,意見交換がかなりフランクに出来たと思います。

 日本が果たすべき役割,果たせる役割,まだまだあるなという風に実感しました。イスラエル,パレスチナの当事者に対して,二国家による解決を改めて強く訴え,当事者間の交渉によって,エルサレムの最終的地位を始め,様々な諸問題を解決すべきとの日本の立場を明確に伝えました。

 両当事者が和平に向けて積極的に関与していくこと,それからアメリカが果たすべき役割,アメリカの関与というのが引き続き重要になるのではないかという私の思いを申し上げました。

 また,長年取り組んで来て,今年満10周年を迎えました平和と繁栄の回廊構想,特にJAIPが現在の難しい状況の中でも非常に上手くいっているものとして,また重要性が高まっているという風に感じました。こういう地域の実際の取組が信頼醸成に繋がっていき,和平の土台を作る手助けとなるのではないかと期待をしているところです。

 明日,実際にJAIPを訪問して,フェーズ2のキックオフをやりたいと思いますが,具体的な取組についてはそこで申し上げたいと思います。また,イスラエルではヘブライ大学で最先端の技術を視察いたしましたが,日本だけでなく,様々な国から,イスラエルのこの技術に対する期待,投資というのが大きくなっている,なるほどなというのを実感することが出来ました。私からは以上です」

 質疑応答

 記者「大臣,今も仰られたように主要国としては,初めて閣僚として訪れることになりました。トランプ大統領の表明以降ですね,非常に強いメッセージであったと思いますけれども,改めて,この主要国として初めて来たことの意義を」

 河野太郎「日本はなんと言ってもイスラエルとも,パレスチナとも良好な関係にありますので,こうう状況ではありますが,政府の首脳と率直な意見交換をすることが出来ました。両方の当事者,かなり落ち着いた対応をしてきているという印象ですし,これで和平交渉が壊れるというのではなく,当事者とも交渉をするのはやぶさかではないという感じでしたので,日本としても様々な場面で両当事者が話が出来るような場を設定していきたいと思います」

【記者】具体的にですね,この問題は70年近く解決を見ない問題ですけども,トランプ大統領の発言で更に混乱しているように見受けられますけれども,日本として具体的にどういうことをやっていくのか,どういう貢献が出来ると思っていらっしゃるか。

 河野太郎「トランプ大統領の発言によって,今まではどちらかというとシリア,イラクの問題ですとかイエメンの問題の方が中東で大きくクローズアップされていたのが,やはり中東のこの問題の根幹がパレスチナ問題だということが再度クローズアップされたのではないかという風に思っております。

 また,域内のパワーバランスが少し変わりつつある中でイスラエルもアラブ諸国との関係を強化していくことに,たぶん興味があるというか,関与していきたいということだと思いますので,その様々なパワーバランスが変わる中でイスラエルにとっても,パレスチナにとっても,ここでもう一度和平に向けて踏み出すインセンティブがあるんだと思います。日本としては両方の背中を押すと同時に両者がこう席について,席に座って話し合いが出来るような,そういう環境作り,それから率直な意見交換が出来るような信頼醸成といったものに努めていきたいと考えます」

 記者「先ほど,対話についてやぶさかではないという印象を受けたという発言がありましたが,先方から日本にこういうことをやってほしいとか要望みたいなのはあったんでしょうか」

 河野太郎「一つは,JAIPのフェーズ2を始めるにあたって,様々,解決しなければいけない問題がありますけれども,今日かなりそうした問題に目処がついたという風に思っております。そういう問題をこう日本が仲立ちをして,WIN-WINになるような方向で解決をすることが出来つつあるというのは両方の対話を促していることにもなると思いますし,信頼醸成にも繋がっているんではないかなという風に思いますので,少しそうした間で積極的に日本が両者の間を行ったり来たりして,話し合いをする環境を作っていきたいと思います。パレスチナ側からは,久しぶりに良いニュースだという話もありましたので,そういう意味で小さいながら,この両方から信頼をされていて良好な関係にあるという日本の立場を積極的に使っていきたいと思います」

 記者「アッバース大統領にですね,アメリカが公平な仲介者ではない,ロシアやフランスに対してですね,仲介者になってくれと働きかけをしているようですけれども,アメリカと親密な関係な日本として,やっぱりアメリカはこの仲介者なんだというような働きかけ,呼びかけとかされたんでしょうか」

 河野太郎「アメリカの関与の重要性というところは申し上げましたし,パレスチナ側もそれは十分理解をしているんではないかという風に思います。この問題がクローズアップされたことによって,もう一度このパレスチナの和平に光が当たってきていますので,それを利用してパレスチナの和平問題に多くの国がコミットしてくれるのは良いことだろうという風にパレスチナも思っているんだろうと思います。今までどちらかというとイエメンとかシリアとかリビアとかというところにこう焦点が当たっていたのが,もう一度こうパレスチナの問題に光が当たってくるようになったというのは怪我の功名と言って良いのかもしれません」

【記者】大臣,JAIPに関しては四者協議を日本が主導して続けてこられてるかと思うんですが,今後それをどういう形で展開,活用していきたいとお考えでしょうか。

 河野太郎「このJAIPは日本の他にイスラエル,ヨルダン,そしてパレスチナの四者が協力し合って,ここまで10年やってきて,成果が出ていますし,フェーズ2はもっとこのイスラエルとパレスチナ,そしてヨルダンが前に出てきてもらわないと出来ない問題というのもあります。少し具体的な問題の解決に今日,目処が立ちましたのでそういう意味では,このフェーズ2が始まるとさらに当事者関係,それぞれ関係を強めてプロジェクトを前に進めてもらわないといけない訳ですから,様々な分野での対話もそこで始まるんではないかと期待をしたいと思います」

 記者「大臣,その四か国の枠組みでの閣僚,外相級の協議など開くお考えはありますでしょうか」

 河野太郎「とりあえず,私が行ったり来たり,来たりはなかったかな。やりましたので,必要な仲立ちはしっかりやっていきたいと思います。あんまり形にこだわる必要はないかなと思います。

 記者「今までですね,日本の中東外交,どっちかと言うと資源外交というんでしょうか,エネルギーの安定供給,安定確保というのが最大の課題で,今もそれは変わらないと思うんですが,一方でこの安全保障や政治図だと思うんですけど,こうゆう中東の複雑な情勢に関わっていくことの,改めてなんですけど意義と逆にリスクみたいなものは考えてらっしゃるんでしょうか」

 河野太郎「資源外交というのは,これからもたぶん続いていくんだろうと思います。そういう中にあって,やはり今まで日本がやってきたことによって,この日本に対する信頼というのはやっぱり相当厚いものがあると思いますので,中東の平和と安定というのはこれは日本の平和あるいは経済の繁栄に直接関わってきますが,むしろ日本が得ている信頼を使って,この中東に平和と安定をもたらす活動をしない方がリスクだと私は思っております。大きな力ではないかもしれませんけど,確実に日本でなければ出来ないことというのはあるという風に思います。それは日本がそこで力を発揮することによって中東に安定をもたらして,それがひいては日本の役に立っているということなんだろうと思いますので,むしろやらないリスクというのが大きいと思います」

 記者「関連してですが,今回の対話を踏まえて,今後米国に対して何かしらの働きかけですとか,メッセージを伝えるというのはお考えでしょうか」

 河野太郎「そこは今回,いろんな国を回ってみて,アメリカとも少し意見交換をしていきたいと思っています」

 記者「今回の中東訪問で本音を引き出せたという手応えはいかがですか」

 河野太郎「そういう部分はあったかなあという風に思います。上手くいけばイスラエルとパレスチナが少しこう,様々なことで話し合いをする土台というのは出来たんじゃないか,特にJAIPのようにみんなが成功を望んでいるものを更に大きく成功させるためにどうしたら良いか,みんな努力することを惜しまず,いろんなことを考えてくれています。これは,しっかりパレスチナ,イスラエル両者話し合いが出来るんじゃないかなと,道筋をしっかりつけられたんじゃないかと思います」

 記者「年開けて9月にですね,自民党の総裁選がありますけれども,対応について現時点で大臣のお考えを伺えませんか」

 河野太郎「鬼が笑っています」

 記者「将来的な出馬についてはいかがですか」

 河野太郎「それは昔からやりますと言っていますから,変わりはありませんけれども,来年あるかどうかは,鬼に聞いてください」

 河野太郎が冒頭発言で、「先般,アメリカのエルサレムに関する発表後,主要国の外務大臣としては初の訪問となったという風に理解をしております」と言っていることの経緯を振返ってみる。

 現在軍事的占領を経て西エルサレム・東エルサレム共にイスラエル領となっているが、イスラエルが統合エルサレム全体を自国首都と定めているのに対してアラブ諸国は全占領地からのイスラエル軍の撤退要求と東エルサレムを首都とするパレスチナ国家の樹立を要求、イスラエルとパレスチナを平和共存させる「2国家共存」政策が世界の主要国家を中心に国連の場、その他で決着を見ないままに提案されている状態となっている。

 ここに来て人種差別主義者である点、罰当たりなアメリカ大統領トランプが12月6日(2017年)、ホワイトハウスで演説を行い、従来のアメリカ政府の立場を覆して中東のエルサレムをイスラエルの首都と認めると宣言、現在テルアビブにある米国大使館をエルサレムに移転する方針を表明。

 この「2国家共存」を打ち砕くようなトランプのイスラエルのエルサレム首都認定関与にパレスチナ自治政府はもとより、中東各国のみならず、世界の多くの国が批判・反対し、エジプトがエルサレムの地位の変更は無効であり、エルサレム「首都」撤回を求める国連決議案を安全保障理事会に提出、12月18日、採決にかけられたが、常任理事国である米国が拒否権を行使し、否決された。

 但し安保理理事国15カ国のうち14カ国が賛成、その中に日本が含まれている。

 国連総会は加盟国に対する勧告のみで強制力のない、いわば賛成・反対それぞれ象徴的な意味合いしか持たない緊急特別会合を12月21日に開催、エルサレムをイスラエルの首都と認定するアメリカ決定の撤回を求める決議案を賛成多数で採択した。

 日本は安全保障理事会と同様に認定撤回に賛成票を投じて、日本政府の立場を世界に示した。

 当然、「イスラエル,パレスチナの当事者に対して,二国家による解決を改めて強く訴え,当事者間の交渉によって,エルサレムの最終的地位を始め,様々な諸問題を解決すべきとの日本の立場を明確に伝えました」云々の文言で、「2国家共存」の形態に関わる決定権限を日本政府を代表して従来どおりにパレスチナとイスラエルの当事者のみにあるとしている以上、アメリカにはその権限はないことにしていることになって、権限のないアメリカがエルサレムをイスラエルの首都と認定したことを無効な関与だとする意思表示を国連総会で示したようにパレスチナとイスラエル双方に表明しなければならなかったはずだ。

 「アメリカにはイスラエルの首都をどこにするか、決める権限はありません。決める権限はパレスチナとイスラエルの当事国のみにあり、双方の話し合いにかかっています」と。

 と言うことは、トランプのエルサレムをイスラエルの首都と認める関与を前提とせずに話し合う姿勢を特にイスラエルに要請しなければ、その認定を国連総会で無効な関与だとした意思表示と整合性が取れなくなる。

 ところが、そういった要請のプロセスは発言のどこからも見えてこない。いわばトランプの関与を無効とする意思表示を示さないだけではなく、その関与が当事国間の話し合いの新たな極度の阻害要件となっている現状を無視して、言い替えると、その無効な関与を生かしたまま、「アメリカが果たすべき役割,アメリカの関与というのが引き続き重要になるのではないかという私の思いを申し上げました」とアメリカの関与の重要性を言うことができる矛盾。

 あるいはトランプの首都認定の関与を無効だとする意思表示を示さないまま、「日本としては両方の背中を押すと同時に両者がこう席について,席に座って話し合いが出来るような,そういう環境作り,それから率直な意見交換が出来るような信頼醸成といったものに努めていきたいと考えます」と言うことができる矛盾。

 これらの矛盾が示すこの恥知らずな図々しさの構図は見事である。

 そして日本、イスラエル、パレスチナ、ヨルダンの4者が協力してパレスチナの経済的自立を促進することを目的とする「平和と繁栄の回廊」の中核事業であるイスラエル占領下のヨルダン川西岸所在のJAIP(エリコ農産加工団地)が「非常に上手くいっている」ことを以って善しとする問題のすり替え、マヤカシにしても見事である。

 JAIP(エリコ農産加工団地)を視察したときの地元関係者を前にした発言を12月26日付「NHK NEWS WEB」が伝えている。  

 河野太郎「パレスチナでの取り組みは、私の中東外交の最前線だ。中東和平の実現が容易ではない状況だからこそ、パレスチナの友人として、日本らしいやり方で持てる力を尽くして、和平の実現に一層貢献していく」

 日本政府が国連総会で無効としたトランプのエルサレムをイスラエルの首都と認める関与が「中東和平の実現が容易ではない状況」を更に複雑・混沌化させることを、トランプの認定以降の現状を見ても容易に予想可能な中、現実問題としてその関与をトランプに撤回させることこそが肝心な外交的配慮であるにも関わらず、その意思表示も努力も示さずに「パレスチナの友人」を名乗り、「日本らしいやり方で持てる力を尽くして、和平の実現に一層貢献していく」と日本政府の力が「和平の実現」に役立つかのように言っている

 その「日本らしいやり方」とは、記事が〈工団地の整備と合わせて、今後、4000万ドル(日本円でおよそ45億円)を投じ、IT分野の起業を支援する人材育成センターを新設するほか、加工団地で生産された製品を輸出しやすくするため道路整備を進め、物流の円滑化などに取り組む考えを明らかにし〉たと伝えているようにカネを出すことなのだろう。

 だが、イスラエル占領下の加工団地やその他の分野にいくらカネを出したとしても、「和平の実現」の契機となる領土問題解決の保証がどこにあるというのだろうか。

 全てがマヤカシの河野太郎の中東訪問となっている。

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安倍晋三のトランプとの握手写真へのサインの象徴:2人の存在性と相互の政治性への全面的承認行為

2017-12-26 09:13:59 | 政治

 安倍晋三が12月24日(2017年)、東京都中央区の日本橋三越本店で開かれている「2017年報道写真展」を訪れて2017年2月に行われたトランプとの首脳会談で握手を交わした自身の写真、その他の写真にサインしたとマスコミが伝えていた。

 自身の偉大な成果の一つとして満面の笑みを浮かべて得意げにマジックペンを走らせたに違いない。

 やんわりと断りもせずにトランプとの写真にサインしたということは安倍晋三自身とトランプの双方の存在性と相互の政治性を全面的に承認したことを象徴する。

 トランプの存在性と政治性を見てみる。白人優越主義者であることの反動としての黒人差別、ラテン系差別等の人種差別主義者、女性を女性と扱わずにセクハラの対象と見る女性差別主義者、自身の不適切な発言をフェイクニュース扱いして記事にした者をして虚偽者に仕立て上げるペテン師的、あるいは偽善者的性格、強硬な銃規制反対・銃社会擁護に見る社会的弱者軽視等々。

 トランプ政権発足以降、その白人優越主義が同じ血を持った白人を勢いづかせ、特に白人警察官が黒人に対して単なる疑いだけで法の裁きを経ずに自身で銃で始末をつけてしまうような射殺事件が発生、そのような社会的断罪の傾向の増加に応じた人種差別と社会的弱者軽視が逆に自分で自分を守る自衛手段として銃を買い求める黒人やラテン系の客が増え、結果的に銃社会を加速させている皮肉な現象の発生はトランプの白人優越主義がその大きな発端の一つとなっているはずだ。

 そしてトランプのこのような存在性が政治性にまで反映されて、アメリカ一国主義の政治性、白人優先の政治性をもたらしている。

 例え安倍晋三がトランプのこのような存在性や政治性を自覚できるだけの向ける目を持たなくても、持たないとしたら、持たないその感性自体が問題だが、トランプと握手し、握手した写真にサインしたということは一般的・第三者的には否応もなしにトランプの存在性と政治性を全面的に承認したことになる。
 
 トランプの白人優越主義に対応するのが安倍晋三の天皇主義に表れている日本人優越主義である。天皇を世界に例を見ない優れた存在と見ることによって、そのような優れた存在を頭に戴く日本民族を優れた民族としている。

 天皇だけが優れた存在で、日本民族は優れていないとした場合、自己矛盾そのものとなる。相互対応の優越性と見ることによって整合性を獲得し得る。

 人種に優劣をつける価値観は他の人為に関しても優劣の価値観で判断する。学歴、業態、収入、地位、家柄、貧富等々、全てを優劣で価値づける。アベノミクスが格差拡大の政策となっているにも関わらず安倍晋三が国家の経済規模拡大をより優先させているのは格差拡大の悪影響下にある低所得層を本質的には無視できているからだろう。

 上がより富むことによって国家の経済規模は拡大可能となる。安倍晋三にしても経済規模を拡大させた国の首相として名前を上げることができる。

 安倍晋三のアベノミクスが上がより富む格差の構造となっているから、大企業と中小企業の業績格差に大きな違いが生じることになる。三菱UFJリサーチ&コンサルティングの調査によると、第2次安倍政権発足前の2012年の大企業と中小企業の業績格差10兆円に対して2015年19兆円と拡大、過去最大になったとしている。

 2日前のブログに大和総研のチーフエコノミスト熊谷亮丸(くまがい・みつまる)がアベノミクスが始まって1年辺り円安に乗って大企業が2兆円の企業収益、中小企業が1兆円企業収益を得ているとしたNHK「日曜討論」での発言を取り上げたが、大企業約1.2万社0.3%に対して中小企業約32.6万社99.7%の割合での2兆円対1兆円なのだから、その格差は大きく、上記大企業対中企業の2012年業績格差10兆円対2015年19兆円にしても、それぞれ1社平均とすると、相当な格差が生じていることになる。

 大企業対中小企業の収益格差はそれぞれに勤務する従業員の収入格差となって反映されることになる。 

 大企業対中小企業がなぜこうも格差が拡大するのだろうか。2017年5月24日付「公正取引委員会」サイトによると、大企業による自らの優越的立場を利用した下請けの中小企業に対する不当な要求、いわゆる“下請けイジメ”に対して公正取引委員会が是正指導を出した件数が、画像にして載せておいたが、安倍政権になって年々増加し、2016年度(平成28年度)は6302件記録していて、そのことに象徴される大企業と中小企業の上下関係が収益にまで影響することになっている格差ということであろう。  

 安倍晋三は中小企業の生産性拡大を支援することで中小企業活性化の方針でいるが、生産性が拡大したとしても、そのことによって得た収益に関しても上下関係を是正しないことには大企業の影響下で抑制されかねない現状に変わりはないことになりかねない。

 かくも安倍晋三とトランプは優劣主義の各種点で似ている。報道写真展に出かけて、首脳会談でトランプと握手している写真にサインしたということはお互いの存在性と政治性に対する相互承認の象徴的儀式そのものである。
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安倍晋三は天皇が国民の暮らしを案じて安心できるなら、政治は要らないことの感度が余りにも低い

2017-12-25 08:56:05 | 政治

 天皇が84歳を迎えた2017年12月23日、皇居・宮殿の東庭に集まった参賀者に次の言葉を発したと「朝日デジタル」(2017年12月23日18時04分)記事が伝えている。    

 「晴れ渡った空のもと、誕生日に当たり、みなさんの祝意に深く感謝いたします。この1年もさまざまな出来事がありました。寒さにむかう今日(こんにち)、台風や豪雨により被害を受けた地域の人々、また、東日本大震災など過去の災害により、いまだ不自由な生活を送っている人々のことを、深く案じています。今年もあとわずかとなりました。来たる年が国民みなにとり、少しでも穏やかな年となるよう願っています」

 天皇がその存在が象徴であるように天皇が案じる願いも実質の伴わない象徴としての願いに過ぎない。

 政治こそが国民の暮らしの安心を生み出す意思決定機関であって、天皇は政治のようには国民の暮らしの安心を生む実質的作用は持たない。

 にも関わらず、天皇が国民の暮らしを案じなければならないのは政治が満足に安心を与えることができていないからだろう。いわば天皇の言葉は政治が国民の暮らしの安心を生む実質的作用を機能し得ていないことの裏返しということになる。

 尤も天皇がそこまで気づいて国民の暮らしを案じたのかどうかは本人のみぞ知るである。単に象徴の身として言葉でしか発することができない国民の身を案じる心痛をせめての思いで口にしただけなのかもしれない。

 いずれにしても、政治が国民の暮らしの安心を満足に生み出していないからこそ、天皇は国民の暮らしを案じることができる。生み出していたら、天皇自身が案じる余地を持ち得ないし、案じるどのような言葉も口にする余地はない。

 皇居にまでわざわざ出かけて天皇の言葉を聞きに集まる参賀者は生活に余裕があって暮らしを案じることから程遠いために天皇の言葉を聞いて天皇の役目と政治の役目に思い至ることは先ずないのだろう。

 生活に余裕のない者は自分の身だけを案じなければならないから、参賀に出かける余裕もないはずだ。但し天皇の国民の暮らしを案じる言葉が国民の暮らしの安心を生み出す実質的作用を持ち得ていたなら、生活に余裕のない者こそが参賀に集まるはずだ。天皇の言葉を聞いて、有り難や、有り難やとその場で踊り出すかもしれない。

 生活に余裕のない者は天皇の言葉が生活に何の役にも立たないことを少なくとも肌で知っているはずだ。あるいはハッキリと意識している者もいるに違いない。

 目下のところ高度成長期の「いざなぎ景気」を超す息の長い景気回復が続いているとは言え、政治が国民の暮らしの安心を満足に生み出していないために自然災害に見舞われたうちの少なくない被災者のみならず、多くの国民が暮らしの安心を得ることができずにいる。

 当然、政治家は、その中でも特に一国の政治を統率する首相たる者は天皇が国民の暮らしを案じる言葉を発したとき、国民の暮らしの実質的な安心を生み出さなければならない意思決定機関としての政治の至らなさに思いを馳せなければならない。

 日テレ放送「たかじんのそこまで言って委員会」(2012年5月20日放送)

 安倍晋三「そもそも田島(陽子)さんもですね、編集長(加藤清隆時事通信社解説委員長のこと)も、いわば天皇という仕組み、天皇、皇室、当然、認めていないんだと思いますね」

田嶋陽子「そう」

安倍晋三「経緯もね。そうでしょ?そういう人がですね、どうあるべきかっていう議論をするのはあまり・・・・」

田嶋陽子「そんなことはない」

安倍晋三「(手を振って)いや、いや、いや。最後まで聞いてください。これは理性万能でもないし、合理でもないんですよ。・・・・(聞き取れない)でもないんですよ。

これは私達は軽薄だと思ってるんですよ、そういう考えっていうのは。

ですから、むしろ皇室の存在は日本の伝統と文化、そのものなんですよ。まあ、これは壮大な、ま、つづれ織、タペストリーだとするとですね、真ん中の糸は皇室だと思うんですね。

この糸が抜かれてしまったら、日本という国はバラバラになるのであって、天皇・皇后が何回も被災地に足を運ばれ、瓦礫の山に向かって腰を折られて、深く頭を下げられた。あの姿をみて、多くの被災地の方々は癒された思いだと語っておられたでしょ。あれを総理大臣とかね、私たちがやったって、それは真似はできないんですよ。2000年以上に亘って、ひたすら国民の幸せと安寧を祈ってきた、皇室の圧倒的な伝統の力なんですよ

 文飾当方。

 天皇家は「2000年以上経って、ひたすら国民の幸せと安寧を祈ってきた」

 例えそれが戦前であろうと戦後であろうと、“祈り”は祈りでしかない。その“祈り”は「国民の幸せと安寧」を実質的に生み出す力とはなり得ない。実質的に生み出し得る力となり得るのは政治であって、そのことへの思いもなく、「私たちがやったって、それは真似はできないんですよ」と天皇の“祈り”とのみ受け止め、その“祈り”を自らの政治で具体的且つ実質的な形で実現する意欲を言葉に表すことすらしない。

 勿論、安倍晋三とて国民生活の向上に向けた「幸せと安寧」実現の政策を様々に打っている。だが、天皇の祈りや言葉を最大限価値づけるのみで、その祈りや言葉に政治の役目こそ重要であること、大切であることを一言も付け加えないのは国民の暮らしの安心に向けた感度が余りにも低い。

 感度が低いということは安倍晋三が心の底から国民の生活に向き合っていないことを証明する。向き合っていたなら、天皇の祈りや言葉を有り難ってばかりはいられないだろう。

 有り難がっているところを見ると、余りにも格差が拡大し過ぎたことと支持率が下がることから向き合わざるを得なくなったといった程度の真剣さなのだろう。

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アベノミクスが格差拡大によりよく機能する景気回復エンジンだと理解できる子育て支援経済界3000億円拠出

2017-12-23 11:53:11 | 政治
 
 中小の商工業者の利益代弁者である日本商工会議所の三村明夫会頭は安倍晋三が子育て支援一部財源として経済界に求めた300億円の拠出負担に当初反対した。

 その理由の一つとして子育て支援は安定的な財源確保の必要上、税による恒久財源で賄うべきであるということをを挙げた。

 二つ目の理由として労使折半負担の厚生年金保険料の使用者側(企業側)負担分納入の際にこの保険料とは別立てで全額企業側負担を義務付けられている子ども・子育て拠出金が2017年度4000億円のうち大企業よりも多い約6割弱を中小企業が負担しているという不公平さを挙げた。

 中小企業の数の方が圧倒的に多いから大企業よりも中小企業の方が負担額が多くなるのだが、要するに大企業の方が資金が豊富なのだから、資金力で負担割合を決めるべきだとの主張なのだろう。

 多分、この主張が政府に認められて、何らかの配慮を約束されたのだろう。日本商工会議所会頭三村明夫は12月21日の記者会見で待機児童対策や幼児教育の無償化などを盛り込んだ2兆円規模の政府の政策パッケージに関して安倍晋三が子育て支援等の財源として経済界に要請していた3000億円の拠出金の負担を容認する考えを示した。

 この記者会見よりも前のことだと思うが、あるいは後かもしれないが、三村明夫会頭と経済再生担当大臣茂木敏充との会談を12月21日付「NHK NEWS WEB」記事が伝えている。   

 但しは会談日が12月20日なのか12月21日なのか、いつものことで触れていないが、この点NHKは情報伝達能力に優れていると言うことなのだろう。

 三村明夫会頭「中小企業の景況感は1年前から着実に改善しているが、人手不足が深刻化するなど、大企業と中小企業の間には依然として大きな格差があり、楽観できない」

 この発言は中小企業への支援の充実を求めたものだと記事は解説している。但し「中小企業の景況感は1年前から着実に改善しているが」、「大企業と中小企業の間には依然として大きな格差がある」と指摘している。

 要するに口に出しては言わないが、アベノミクスは大企業と中小企業の間の格差の是正に大した役に立っていないと言っていることになる。役に立っていないばかりか、大企業の続く最高益獲得の状況を見ると、格差は拡大していると見なければならない。

 茂木敏充「日本企業の99%を占め、雇用の7割を支える中小企業は、まさに日本経済、地域経済の屋台骨だ。中小企業の攻めの投資を力強く応援することで、生産性革命と経済の再生を地域の隅々までお届けしていきたい」

 記事はこの発言を、〈今月閣議決定した政策パッケージの施策を通じて、中小企業の生産性向上への支援を強化していく考えを強調し〉たものだとしている。

 中小企業が日本企業の99%を占め、日本経済、地域経済を支える屋台骨でありながら、屋台骨ではない大企業との格差拡大が生じている。茂木敏充は安倍内閣の一員だから、この矛盾については触れない。勿論、アベノミクスが格差ミクスであることを認めることになるからだ。

 認めないばかりか、「格差を是正します」等々、「格差」という言葉を使った議論はしない。これも安倍内閣の一員としては触れてはならない禁句となっているからだ。

 12月10日(2017年)放送のNHK「日曜討論」は各種教育無償化を柱とした人づくり革命、企業の収益性向上や投資促進を柱とした生産性革命を目標とした安倍政権の「新政策パッケージ」を取り上げていた。そこで大和総研のチーフエコノミスト熊谷亮丸(くまがい・みつまる)が大企業と中小企業の格差について触れている。

 熊谷亮丸は名は体を表すということなのか、丸々太った亮丸体型となっている。

 熊谷亮丸「アベノミクスが始まって1年辺り円安に乗って企業収益がどのくらい改善したか調べてみると、私供の計算では全企業・全産業で3兆円改善した。

 その中で大企業が2兆円、中小企業が1兆円改善。

 ここから言えることは全体が改善する中で格差が拡大している状況にある。景気は全体は良くなっているので、格差の部分に手を打たなければならない。

 何をやるかというと、固定資産税を軽くするということは中小企業にストレートに効いていく。もしくは事業継承税制、企業が跡継ぎをしやすいような色んな仕組みを整えることで、徐々に中小企業を後押しすることがポイント」

 アベノミクスが始まって1年辺りで円安貢献を受けて全産業で3兆円業収益が改善したが、その割合は大企業2に対して中小企業が1。但し茂木敏充が言っているように中小企業は「日本企業の99%」を占めている。

 実際には2006年の中小企業庁の統計で中小企業は約32.6万社99.7%に対して大企業は約1.2万社0.3%しか占めていない。
 
 約1.2万社0.3%の大企業がアベノミクスが始まって1年辺りで2兆円も企業収益が改善し、約32.6万社99.7%の中小企業が1兆円しか改善しない。それぞれの企業数で平均した場合、大企業1社平均で約1億7千万円の企業収益改善に対して中小企業1社平均で約312万5000円の企業収益改善。

 勿論アベノミクス前から大企業と中小企業間の格差は存在していただろうが、アベノミクス開始1年間の企業収益に限って言うと、大企業と中小企業の格差が約1億7千万円対約312.5万円もあることになる。

 この大企業対中小企業の無視できない大きな格差は、当然、高所得層と中低所得層の格差にそっくりそのまま無視できない大きな懸隔で、あるいはそれ以上の隔たりで反映していることになる。

 と言うことは、安倍晋三のアベノミクスは格差拡大によりよく機能する景気回復エンジンだとの指摘は可能となる。全体を見ると景気は回復しているように見えるが、それが上だけの回復で、下への恩恵がゼロに近い歪な形を取っているから、真の景気回復とその回復を受けた税収の増加は望みようがなく、相撲取りが他人のフンドシで相撲を取るように賃上げも政策の財源も企業に頼らざるを得ない状況を抱えることになる。

 アベノミクスの特徴的属性が格差拡大にあるなら、アベノミクスの全面的軌道修正を行わない限り、あるいは日銀が現在の金融緩和策を取る限り、格差拡大のどのような是正策を打っても、これまで見てきたように少なくとも格差の方向に進路を取ることになる。
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横審委員長北村正任の白鵬取り口苦言 他の処分に便乗した正当性あるが如くの批判は卑怯者のすること

2017-12-22 10:11:01 | 事件

 日本相撲協会理事長(八角親方)の諮問機関である横綱審議委員会の臨時会議が12月20日(2017年)開催されて暴力事件を起こした日馬富士に対して引退勧告、その場に居合わせながら暴力を停めることができなかったとして横綱白鵬と鶴竜に対してはそれぞれ減給の懲戒処分を下した。

 このことは横綱日馬富士と白鵬と鶴竜それぞれの立場上の責任不履行と彼らの責任不履行に対する横綱審議委員会の処分に関わる判断の提示という経緯を取っていて、処分の提示によって一つの決着を成立させていることになる。

 つまり日本相撲協会及び横綱審議委員会側からすると、一部世間も加わって問題としたのは暴力事件に関わる横綱日馬富士と白鵬と鶴竜それぞれの態度であり、どう処分するかの処分内容であった。

 当然、横綱審議委員会の処分内容の妥当性が日本相撲協会にとっても世間にとっても問題となる。

 それ以外を問題としたわけでもないし、問題となったわけでもない。そしてこの問題は処分発表で一つの決着を見た。

 ところが、処分発表の記者会見の中で横綱審議委員会委員長の北村正任(東大法学部卒・新聞記者出身76歳)が白鵬の取り口に苦言を呈したとマスコミが伝えていた。

 会見からその発言を抜粋してみる。「横審会見全文」日刊スポーツ/2017年12月20日12時39分)   

 北村正任「(貴乃花親方の暴力事件以後の言動に一言物申してから)「それから、もう1つは、この間(かん)に委員会宛てに、あるいは私個人宛てに、相当の量の投書があります。

 その投書の大部分は、白鵬の取り口についての批判でありました。張り手、かち上げ…これが15日間のうちの10日以上もあるというような、このような取り口は横綱のものとは到底、言えないだろう、美しくない、見たくないという意見でした。

 このことは横審のメンバーがいろいろな会合などで相撲の話をするときに、ほとんどの人がそう言っているということでありました。白鵬自身の自覚をうながすか…こういうことであろうと思いますが、そのことに向けて協会としても、工夫、努力してほしいと。こういう話がありました」

 白鵬の取り口は暴力事件及びその処分とは全く関係のない別個の問題であって、そうである以上、張り手その他が「横綱のものとは到底、言えない」と言うことなら、別の機会に横綱審議委員会で議論し、横綱らしくないで纏まった場合、横綱審議委員会の正式な意見として日本相撲協会理事長に提出、日本相撲協会が横綱審議委員会からこのような意見の提出があり、日本相撲協会にしても同意見で賛成多数になったからと白鵬に自覚なりを促すべきだろう。

 あるいは今後のことまで考えて白鵬個人の問題とせずに横綱になった場合は張り手等の横綱らしくない手は禁止すると取り決める、あるいは横綱になる前に癖がついてしまうと横綱になってから注意していてもつい使ってしまうということがあるから、相撲の手から外す等の正式の取り決めを行ってから、いずれかの方法を発表すべき問題であろう。

 正式な決定にまで持っていかずに単に「相当の量の投書」があった、横審のメンバーの「ほとんどの人がそう言っている」からと、「横綱のものとは到底、言えない」を正式に決められた意見であるかのように持ち出して暴力事件とは無関係・別個の問題を暴力事件処分の記者会見で公表する形で批判する。

 この筋違いは甚だしい。

 大体が記者会見の場で一つの決着が付いた自分たちが正当とした処分のその正当性に便乗して処分とは関係のない事柄までさも正当性あるかのようにここぞとばかりに批判するのは卑怯者のすることである。

 別個の問題は別個として区別するだけの合理的な目を持ち合わせていないから、暴力事件をあってはならない事態だ、暴力の根絶だと表面的な指摘に終わるのみで、暴力の根がどこにあるのか見通すことができない。

 学校の部活動同様に大相撲でも力士の先輩・後輩の上下関係が上を絶対とし、下を上の絶対に対する従属を絶対と位置づけている権威主義にこそ目をつけて、それを正していかなければ暴力の根絶は難しいのだが、その構図に目を向けることさえできない。

 先輩後輩の関係は別にして、後輩が先輩に対してざっくばらんに自分の考えを言い、先輩がそれに応えてざっくばらんに自分の考えを言う権威主義とは正反対の対等な双方向の関係を築くことができれば、双方がそれぞれの態度・考えが正しいか間違っているか議論することになって、先輩の後輩に対する“指導”という一方的な形を取らずに済むばかりか、議論の習慣が双方の判断能力の向上と常識の発達を促していくことになって、そのことが人間としての成長を双方共に自ずともたらしていくことになる。

 だが、先輩は後輩に対して絶対者として君臨しているから、先輩を不愉快にする後輩のちょっとした態度や言葉遣いに侮辱されたと受け止めて腹を立て、後輩に対して先輩が許されている“指導”という形で手を出して、受けた不愉快を晴らそうとすることになる。

 後輩の先輩に対する敬意は必要だが、敬意が絶対と従属の上下関係と表裏の構図を取ることは許されない。

 先輩と後輩の間でこのような関係を築くことができていない大相撲界は時代遅れの世界にとどまっていると言わざるを得ないばかりか、現在もこのような世界を放置している親方衆や横綱審議委員会の怠慢は大きなものがある。

 北村正任は白鵬の張り手、かち上げの取り口を「横綱のものとは到底、言えない」と批判しているが、白鵬は言ってみれば、強い外国人横綱として日本人力士全員を敵に回して戦い、強さの点で彼らの上に君臨している。

 だが、敵に回されている日本人力士全員のうち誰一人として白鵬の強さを凌ぐ者が出てこない。日本人力士が寄ってたかって戦いを挑みながら、君臨を打ち破ることができない。

 その原因を白鵬の張り手やかち上げに置くとしたら、格闘技の一種であることに変わりはない大相撲の正当性を見い出すことができるだろうか。

 横綱らしくない取り口だと言う前に白鵬の張り手やかち上げを勝負に効果のない取り口とすることが先決ではないのか。効果がなければ、白鵬は自ずと使わないようになる。

 それができないのは日本人力士が不甲斐ないからではないのか。当然、日本人力士の不甲斐なさを批判せずに白鵬の取り口のみを批判するのは不公平ということになる。

 問題点を問題としない横綱暴力事件の処分、暴力事件とは別の問題である上に問題点に目を向けない白鵬の取り口だけを批判する横綱審議委員会委員やそれらを黙って受容する日本相撲協会の親方衆の意識の変革が先決問題ということになる。
 
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河野太郎に外相専用機は不要 何様だと思っているのか、日本の外相は首相のメッセンジャボーイに過ぎない

2017-12-21 09:07:18 | 政治

 「来年はぜひ外相専用機を」河野太郎外相、自民党部会で「おねだり」候補に米「650ER」産経ニュース/2017.12.18 18:07)

 「来年の話をすると鬼が笑うかもしれないが、来年はぜひ外相の専用機を1機…」

 河野太郎外相は18日の自民党外交部会で、平成31年度予算での外相専用機の導入に意欲を示した。候補機種に米ガルフストリーム社の「650ER」の名前を挙げ「20人乗りだが、(米国の)東海岸まで給油なしで行ける」と“おねだり”した。

 皇族や首相の外遊には政府専用機が使用されるが、外相は民間機が使われている。河野氏は海外で会談相手から食事に誘われても、飛行機の搭乗時間を理由に断っているエピソードを紹介し「小さくて良いし、中古でもかまわない」と切実に訴えた。

 出席者から三菱重工業が開発している国産ジェット旅客機「MRJ」はどうかと問われると「足が短くてだめなんです」と航続距離を理由に難色を示した。

 河野太郎はこの記事の〈“おねだり”〉に激怒した。2017年12月19日付の同じ「産経ニュース記事が伝えている。    

 河野太郎「『おねだり』などという、ふざけた言葉をメディアが報道に使うのは、私にはちょっと信じられない。

 経費を削減しながら訪問国や(海外要人との)会談の数を1つでも増やそうと、外務省一丸となって努力している。理解をして(記事を)書いているなら倫理にもとるし、理解しないで書いているなら能力に問題があるといわざるを得ない。

 (平成25年1月から現在までの約5年間で)日本は前任の岸田(文雄)自民党政調会長と私で延べ97カ国なのに対し、中国の王毅外相は延べ262カ国だ。日本の外務大臣は国会対応があるが、中国の外務大臣は国会対応がないというスタート時点で大きな差がある。

 日本の政府開発援助(ODA)が抜群に多いわけではなく、アフリカをはじめ、さまざまなところで中国の投資や援助が日本を遙かに上回る中でこの差をどう埋めるか。外務大臣やそのスタッフの移動にすべて民間の商用機を使わないといけないのは、日本の国益を考えるとかなりハンディキャップが大きい」

 外交能力、あるいは外交成果の多くは訪問国数や会談数で決まるわけではない。相手国の国益に対応可能な国の資金力(それが例え借金したカネであっても、借金できる余裕が資金という形に変えていくことができる)を裏づけとして生み出す国の力=国の影響力にかかってくる。

 当然、「日本の外務大臣は国会対応があるが、中国の外務大臣は国会対応がない」といった問題ではなく、中国と日本という国の対外影響力を考えた場合、河野太郎が日本の外相と中国の外相を比較すること自体が間違っている。

 例えば中国と日本はフィリピンを間に挟んで綱引きし合う形の援助合戦を演じているが、2016年10月22日の習近平とフィリピン大統領ドゥテルテの首脳会談では鉄道等フィリピンでのインフラ開発、経済貿易、麻薬犯罪対策、テロ対策など13分野の協力文書に署名、製鉄所の建設や鉄道・港湾の整備、麻薬中毒者の更生事業等々、支援総額は2兆5000億円に上る計算だという。

 一方日本の安倍晋三は2017年10月30日に訪日中のドゥテルテと首脳会談を行い、今後5年間の1兆円規模の官民による貢献策の実施、マニラ首都圏の交通渋滞の抜本的な解決ための事業総額約8000億円の地下鉄事業に対して実際の資金需要に応じて約6000億円の円借款供与の検討(あくまでも検討であって、決定ではない)を表明している。

 この差は歴然たるものがある。中国にはこの上、フィリッピンとは地続きであるゆえの現代版シルクロード「一帯一路」(2014年提唱)の経済圏構想なる強いカードを持っている。日本は最近になって一帯一路に乗り遅れまいとする動きを見せ始めた。

 河野太郎が日本の国としての影響力を考えずに王毅との外国訪問回数の違いだけで政府専用機を求めるのは正当な要求とはいえない。にも関わらず要求するのは自分を何様と思っているのか、見当違いも甚だしい“おねだり”の部類に入る。

 また、「中国の投資や援助が日本を遙かに上回る中でこの差をどう埋めるか」と言っているが、この差を埋めるのも、その多くが国の力=国の影響力であって河野太郎が政府専用機で外国を訪問する体裁や時間的利便性ではない。

 当然のこと、外交成果・外交能力は「民間の商用機」を使うかどうかで決まるわけではないし、政府専用機を使うか使わないかで決まるわけではない。

 大体が日本の外相は首相の外交姿勢の範囲内での活動を強いられている。外相が独自の外交方針を抱えていて、それが首相の外交姿勢に影響を与えて、それを変えさせしめたといった例があっただろうか。

 外相の役割の多くが前者に限られているために結果的に首相のメッセンジャーボーイの範囲を出ないことになる。例えば北朝鮮問題での中国向けの発言は中国に北朝鮮に対する圧力強化に建設的な役割を果たすよう求める、あるいは各国向けには北朝鮮に対する圧力政策での連携を求めて一致させる、あるいは厳格な制裁決議の履行求める。これは安倍晋三の対北姿勢であって、その姿勢を代弁しているに過ぎない。

 こういったことを外国を訪問したり、外国首脳と会談して繰返している。メッセンジャーボーイでなくて何であろうか。

 河野太郎は2017年11月21日、神奈川県での講演で「一帯一路がオープンに誰でも使える形でやれば、世界経済に非常にメリットがある」と発言している。

 これは安倍晋三の意向を受けてメッセンジャーボーイとして発信した中国向け発言であろう。安倍晋三が反対していた場合、内閣の一員に過ぎない外相がそのメリットを云々することはできない。安倍晋三自身が「一帯一路」が乗り遅れることができないバスになってきたために河野太郎に先ず観測気球を上げさせたといったところなのだろう。

 中国は直ちに河野太郎の発言を歓迎した。日本からの投資を考えてのことだから、当然である。

 要するに河野太郎は北朝鮮のミサイル発射や核実験、そのことに対応した国連安保理の追加制裁決議だ、緊急会合だといった動きを受けて一見、派手に活動しているように見えるが、殆どがメッセンジャーボーイの域を出ていない。

 河野太郎の安倍晋三のメッセンジャーボーイであることを示す一例がある。2017年11月24日付「産経ニュース」記事。  

 河野太郎「河野談話」(父・河野洋平氏が官房長官当時に出した慰安婦に関する談話)への評価ですか? それは安倍首相が平成27年8月に発表した『戦後70年談話』と、慰安婦に関する一昨年の日韓合意に尽きます。それ以上でもそれ以下のこともない。

 『河野談話』の河野さんって俺じゃないですから。別の河野さんだ。『河野談話』への評価は『本人に聞けよ』という話じゃないですか?

 インターネット上で「お前が出した河野談話」と書かれましたが、私は湘南ベルマーレ(サッカーJ2)が圧勝したときしか談話は出しません。こういう質問にうんざりしてるかって? いや、もうジョークのネタになって楽しいよ」

 自身独自の歴史認識を持たず、あるいは隠して安倍晋三の歴史認識を自身の歴史認識とする。まさに歴史認識に関してもメッセンジャーボーイであって、自身の立場を弁えもせずに政府専用機を“おねだり”する。

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沖縄小学校校庭米軍ヘリ窓落下事故:人為的ミスは場所を選ばないと見る危機意識が皆無のヘリ運行再開

2017-12-20 08:57:37 | 政治

 12月13日(2017年)午前、沖縄宜野湾市米軍普天間基地離陸の大型ヘリコプターCH53Eが普天間第二小学校の校庭に窓を落下させ、落下の衝撃で飛んだ破片で10メートル程離れた場所で体育の授業を受けていた4年生約30人のうちの児童一人が怪我をした。

 米軍は直ちにCH53Eと同型機の運用を停止。米軍による事故検査の結果、「機体の構造上の問題は確認されず、パイロットが決められた手順を守らなかったことによる人為的なミスが原因。乗員や整備員らに対して教育を行うなど再発防止策が取られた」として12月19日午後、運用を再開した。

 その間、6日。

 対して防衛省は基地を離着陸するすべての航空機は周辺にある学校の上空の飛行を「最大限可能な限り避ける」ことで合意したとして「飛行を再開するための措置が取られたと判断できる」と飛行再開に理解を示し、防衛相の小野寺五典は「(学校の上空を)基本的には飛ばないということだ。仮に飛行した場合は直ちに米側に申し入れる」(NHK NEWS WEB)との条件を提示することで運行再開を問題なしとした。

 要するに窓落下は機体構造上の欠陥ではなく、パイロットの人為的ミスであることと、学校上空の飛行を「最大限可能な限り避ける」ことを運行再開の正当理由とした。

 そして人為的ミスの再発防止策対として乗員や整備員らに対して教育を行った。

 だが、この二つの理由にこそ、重大な問題が潜んでいる。学校上空の飛行を「最大限可能な限り避け」たとしても、人為的ミスが場所を選んでくれたならそれで済むが、場所を選ぶわけではないから、子どもを含めた男女住民は学校以外の至る場所で活動し、存在する以上、“限定回避”は何の意味も持たない。

 当然、乗員や整備員らに対する人為的ミスの再発防止教育と彼らによるその的確な実践にかかってくることになる。

 だが、機体構造上の欠陥ではなく、パイロットの人為的ミスだから、再発防止教育を施しさえすれば運行再開は許されるとした場合、機体構造上の欠陥と同じく人為的ミスを重大視しなければならないことに反して人為的ミスを機体構造上の欠陥よりも重大視していないことになって、その危機意識の不足が再発防止教育に対する熱意を阻害しない保証はない。

 危機意識の不足は人為的ミスが場所を選ぶわけでもないのにさも選ぶかのように、“学校上空の飛行最大限可能回避”とする意識にも現れている。

 人為ミスによる部品落下事故や操縦ミスによる飛行物体そのものの墜落によって住民に怪我を与えたり、最悪死に至らしめるのも、場所を選ばない偶然の出来事であって、人身事故に至らずに済むのも同じく場所を選ばない偶然の出来事に過ぎない。

 そうである以上、住民が被害を受ける受けないは自らコントロールできないし、どうにか操縦可能な場合の無人の場所への不時着以外はヘリを操縦するパイロットや乗員にしても被害を与える与えないはコントロールできない。

 当然、人為的ミスであったとしても、機体構造上の欠陥と同様にこの上なく危険と見なければならない強い危機意識を持たなければならないはずだ。

 だが、機体構造上の欠陥ではなく、人為的ミスだからとたった6日間だけ自粛して運行を再開した経緯には前者よりも後者の方が許される、あるいは罪が軽いと見る意識があったからこそであろう。

 そういった意識がなければ、人為的ミスが場所を選ぶわけではないにも関わらず、学校上空の飛行回避だけで、それも絶対ではなく、「最大限」との条件付きで早々に運行を再開することはなかったろう。

 このような危機意識しか持てないとしたら、沖縄米兵が飲酒事故や飲酒事件起こした際、飲酒を禁止して程なく飲酒解禁という例の如くのサイクルを人為的ミスでも同様に繰返す喉元通れば忘れる危機意識で終わらせる確率は高い。
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