安倍晋三・森まさこの黒川弘務の検事長としての規範意識の欠如に目をつぶった茶番な訓告辞任に見る責任意識の欠如

2020-05-25 12:53:18 | 政治
 「文春オンライン」が2020年5月20日、東京高検の黒川弘務検事長(63)が産経新聞社会部記者2人、朝日新聞社員1人と賭けマージャンをしていたと報じた。

 この黒川弘務の賭けマージャン不祥事で何よりも問題としなければならないのは、新型コロナウイルス禍を受けた緊急事態宣言下での政府要請の外出自粛中の出来事であったこと自体が黒川弘務の検察官としての規範意識に則った行動であったかどうかということでなければならない。しかも検察庁ナンバー2の検事長の任にある。特大の規範意識を体していなければならなかった。

 【規範意識】「道徳、倫理、法律等の社会のルールを守ろうとする意識のこと。遵法精神ともいう」(Weblio辞書)

 道徳、倫理、法律等の社会のルールを守らない、犯罪を取り締まる組織検察庁ナンバー2の検事長なんぞ、逆説も逆説、シャレにもならない。

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 2020年5月22日 衆議院法務委員会

 無所属の山尾志桜里はマスコミ報道で賭けマージャン不祥事が発覚し、検事長を辞任することになった東京高等検察庁検事長黒川弘務の処分が懲戒ではなく、軽い訓告で終わったことの理由、経緯などを法相の森まさこと法務省刑事局長川原隆司に対して追及した。

 政府参考人として呼ばれた法務省刑事局長の川原隆司は2019年1月8日のマスコミ報道で54歳と紹介されていたから、現在、55、6歳か。慶応大学を卒業、東京地検刑事部長や最高検検事を歴任している。だが、経歴に見合った理路整然な答弁を見せることができず、言葉の言い換えや言葉の詰まり、思った言葉を思ったとおりに発することができないときの「あー」とか「うー」とかの連発。その様子だけで黒川弘務の訓告処分が厳正な決定からは程遠い、最初から軽い処分ありきで決定されたことが分かる。

 質疑の途中に青文字で寸評を加えることにした。

 山尾志桜里「新聞の記事によりますと、賭けマージャンのあとのハイヤーの中が主な取材の時間であったような記事が出ておりますし、森大臣、個人的な時間であったと仰るのであれば、この賭けマージャンに於ける前後の時間帯も含めてこういった黒川検事長が検事長という立場で取材に応じるようなことがなかったという事実認定されていいんですか」
 川原隆司「私共の調査結果に於きまして取材に応じていたか、応じていなかったという点について事実は認定しておりません」

 山尾志桜里「事実の認定をしていないんだから、本当の個人的な時間の使い方だったのか、検事長としての取材を受けた、一定程度検事長としての公務の遂行に関わる時間帯だったのか、森大臣、ここは判断できないんじゃないですか。

 判断をされてるんですか、個人的な時間帯だったと。これが森大臣の認識でよろしいんですか」

 森まさこ「私は検察庁に登庁している職務の時間以外の行為であっても、東京高検検事長たる者、公私を問わず、国民から疑問を問われないように自分自身を律して行動していくものと思っておりますので、そういう意味で今回の処分になったものです」  

 森まさこの「東京高検検事長たる者、公私を問わず、国民から疑問を問われないように自分自身を律して行動していくもの」とは、規範意識を常に体した行動への法務大臣としての期待であり、森まさこ自身規範に添うことを信条としていることになる。信条としていなければ、こんなことは言えない。森まさこ自身も常に常に規範意識を体して行動しているはずである。

 当然、「そういう意味で今回の処分になった」と言っていることは、黒川弘務は規範意識を常に体して行動している人物であるから、そういう人物であることを考慮に入れて、懲戒免職ではなく、訓告という軽い処分としたという意味を取る。

 犯罪を取り締まる側の検察官が犯罪となり得る賭けマージャンをしていたとしても、規範意識に則った行動ですとしたら、前代未聞の法意識、人物解釈となる。森まさこが法務大臣に座っていることを考えなければならない。


 山尾志桜里「今回の賭けマージャン、事実認定された中で事実認定された賭けマージャンが行われた時間帯というのはさっきから仰ったように個人的な時間帯だというのが法務大臣の認識ということでよろしいですか」

 森まさこ「職務時間外という意味でございます」

 山尾志桜里は賭博容疑を問われてもいい黒川弘務の賭けマージャンが森まさこの「公私を問わず」の規範意識に反している行動であることに目を向けずにハイヤー内で記者から取材を受けていたとしている報道の方に重点を置いて「公」か「私」かに拘った。賭けマージャン帰りに「公」の立場で取材を受けていたなら、賭けマージャン中も、「公」の立場でしか提供できない検察内部の情報を「私」の立場で漏らしていた可能性が出て、その処分に公私混同の罪を加えなければならず、「訓告」は軽過ぎることが証明できるからなのだろう。

 山尾志桜里「森大臣ね、本当に答弁が、申し訳ないけれど、大事なところで言葉遣いが物凄く軽いので、個人的な時間帯かどうかということは一つの大きなことでしょ。勤務時間以外だと言うなら、勤務時間外だというふうに仰っしゃればいい。

 個人的な時間なのか、取材に応じて検事長としての立場、一定の公務の遂行が行われていたのかと言うことは、これは今回川原刑事局長によると、事実認定していないということでした。

 これ、再調査の必要性は色んな面であるんですけども、これ、再調査して頂けますか」

 川原隆司「再調査につきましては先程大臣が答弁された通りでございますが、今回処分するに必要な調査は行ったものと認定しております」

 法務省刑事局長川原隆司は予定の答弁だったのだろう、ここでは落ち着いて答弁している。

 山尾志桜里「取材が行われていたかどうかは処分を認定するのに不必要だという答弁でありました。大臣、今回訓告されたわけでありますけども、何を以って訓告にしたのかどうかということを聞きたいんですけれども、一つ、賭けマージャン、違法になる賭けマージャンをしたということ。

 二つ目。特定のメディアと不適切な癒着があったのではないかということ。三つ目、自粛中のいわゆる3密をしたということ。

 まあ、そのほかもあるのかもしれないのですけども、何を訓告の対象としたのですか」

 森まさこ「黒川検事長については東京高等検事長という立場でありながら、緊急事態宣言下の令和2年5月1日と5月13日の2回に亘り、報道機関関係者3名とマンションの一室で会合し、金銭を賭けて、麻雀を行っていたことが調査により判明を致しました。これらの事実関係が認められたことから、検事総長から監督上の措置として訓告されたものと承知を致します。

 それ以上の調査については詳細については事務方から説明させます」

 これまでの遣り取りを見ると、法務省内で刑事局長川原隆司が主体となって黒川弘務の聴取に当たっていたと受け取ることができる。聴取によって賭けマージャンの事実認定ができたことから、検察に報告、検事総長が「監督上の措置として訓告」したという経緯を踏んだことになる。

 つまり、検察は聴取にノータッチだった。告発や告訴を受けなくても、犯罪事実や犯罪事実の疑いに基づいて捜査、取り調べはできる。タレントの間で誰それが麻薬を常習しているらしいという噂から開始される捜査、取り調べがいい例となる。黒川弘務の賭けマージャン相手の産経新聞の記者と朝日新聞の社員はそれぞれの社の取り調べで事実を認め、それぞれにその事実についての記事を報道している。つまり、賭けマージャンの事実を3人の記者は認定した。

 当然、賭けマージャンが賭博罪に当たる犯罪であることから、警察自身が動くか、検事長の賭博であることから、検察が警察に指示をして取り調べに当たってもいい事案であるはずだが、法務省内で取り調べを完了させて、その取り調べ内容を検事総長に連絡、当然、法務省の取り調べ内容に基づいてということになって、訓告処分とした。

 こういった一連の流れを見ると、「訓告」が正当な取調べに基づいた正当な処分ではなく、処分を「訓告」に向けるためのヤラセの疑いが出てくるが、この疑いをゲスの勘繰りとする答弁は以後も見えてこない。

 【ヤラセ】「事実関係に作為・捏造をしておきながらそれを隠匿し、作為などを行っていない事実そのままであると(またはあるかのように)見せる・称することを言う」(Wikipedia)

 確実に言えるのは森まさこは黒川弘務が犯罪構成要件となり得る賭けマージャンをしていながら、その規範意識を何ら疑っていないことである。疑っていたなら、処分の重大な一要件としたはずであるし、しなければならなかった。


 山尾志桜里「そうするとですね、賭けマージャンの話、そして3名の記者とのこと、3名の記者との関係の話。ここがやはり焦点になってくるわけですね。
 そうすると、この賭けマージャンの一定程度の常習性の有無。あるいは特定メディアとの癒着の固定化や常態化。この程度の問題が私はやはり大事だと思うので、ここはやはりしっかりと調査をして頂きたいと思うのですけども、調査の手法についてですので、刑事局長でも構いません、お伺いを致します。

 先ず今回の調査の中でですね、今、黒川さんへのヒアリングと各報道局報道陣がいましたけど、黒川さんへのヒアリングはいつ、何回されたのですか」

 川原隆司「今回の調査は今月19日火曜日から開始をしておりまして、昨日(2020年5月21日)、調査結果を取り纏めるまで、何回かに亘りまして、事務次官が必要に応じて複数回に亘り、聴取をしたということで、ところでございます。以上でございます」

 黒川弘務の聴取は川原隆司が主体となって行ったのではなく、事務次官が主体となって行っていたことがここで判明する。但し川原隆司は聴取の回数を「何回かに亘りまして」と最初は言い、次に「複数回に亘り」と、どちらも回数を曖昧にする言い方となっている。

 この曖昧に合わせてしまったのだろう、聴取が終わって、処分が出たのだから、「聴取をしたということでございます」と一定時間が経過した過去完了形とすべきところを、「聴取をしたということで、ところでございます」と、過去完了形と聴取からさして時間が経過していない現在完了形とを混ぜた言い方になってしまった。

 この二つの曖昧さはニつ共に何らかのウソを介在させていることから発している。何もウソがなければ、聴取回収を何回かとはっきりと言うことができるし、しっかりとした聴取ではなかったからこそ、しっかりとした過去完了形で表現できずに聴取を終えたばかりみたいな言い方をしてしまった。

 当然、このウソは検察庁ナンバー2の検事長の賭けマージャン問題なのだから、採るべき聴取記録も採らずに、残してもいないことを証拠立てることになる。


 山尾志桜里「何回聴き取りを行い、何時間なのですか」

 川原隆司「では、あのー、私の方から申し上げる調査は、フク、フク、複数回に亘り聞き取りをしているということでございます」

 抗議、中断。答弁し直し。

 川原隆司「先ず、あのー、今、私の承知している範囲で、お答えできる範囲でお答え申し上げますが、えーと、黒川検事長との聴取につきましては面談、直接なのか、電話なのか、というのがございまして、その全てについてを含めて、何回かということまで私は事実に関する資料ということはございません。

 (終わろうとして、言い足す)ただ必要に応じて、電話や面談という形で聞き取りをしたということでございます」

 抗議、中断。

 法務省刑事局長の川原隆司は東京地検刑事部長や最高検検事を歴任した慶大卒の50代半ばの大の大人でありながら、山尾志桜里から聴き取り回数と聴き取り時間を聞かれただけで、言葉がつっかえ、言い回しも理路整然さを失ってしまう。聴取にウソがなければ、理路整然と答弁できたはずである。

 分かったことは聴取記録を採らなかったこと、聴取は面談と電話を用いたこと。但しそれが事実解明のためにウソのない聴取であったなら、最初から「電話と面談という方法で聴き取りをした」と落ち着いて明確に答弁できたはずだが、ウソがあるから、「面談、直接なのか、電話なのか、というのがございまして」などと、聴取方法の必要のない解釈から始めることになったのだろう。


 山尾志桜里「これはですね、複数回ということが明らかになるということですが、手元にここで産経新聞なんですが(必要箇所のみコピーしたものか、B5程度の用紙を左手に持って)、これも(答弁は)刑事局長で結構です。この産経新聞の件はですね、ちゃんと黒川検事長と、事実なのか、違うなら、どこなのか、ヒヤリングしたのかどうかということを聞きたいんです。

 この(産経新聞の)記者の二人が数年前から賭けマージャンを続けていた。1ヶ月に数回のペースであり、(緊急事態)宣言後も5回程度あり、いずれも金銭の遣り取りがあり、そしてハイヤーを利用して主にその車内で取材を行っていたと。

 こういうことを、事実かどうか分かりませんよ。ただこの新聞社は記者からの聞き取り内容を社内調査の内容ということで(記事に)上げているんですけど、この事実については黒川さんに当てたんですか。
 当てたとしたら、それに対してどういうお答えだったんですか」

 産経新聞は5月22日、東京高検の黒川弘務検事長と同社記者らが賭けマージャンをした問題を巡り、社内調査の結果とおわびを同日付朝刊一面に掲載しているとのこと。

 川原隆司「えーと、こうー、調査、あの、昨日取り纏めたわけでございますが、それまでの時点に於きまして、私、あるいは産経新聞から、それぞれに社に於ける調査の状況であるとか、事案に対してどういうことか、というようなコメントは出ておりますが、それを念頭に置いた聴取は当然、しているところでございます」

 山尾志桜里、席に座ったまま、「何ていう答だったんですか」

 松島みどり委員長「その聴取をして、(黒川弘務から)どのような回答を得られたのか、答えられますか?」

 川原隆司「そのような聴取結果、先ず先程、大臣、対象事実として答弁申し上げましたけれども、今年の5月1日と13日の日を跨いでおりますが、これについては申し上げますが、それぞれ産経新聞の記者と黒川検事長が賭けマージャンを行った事実、それから帰宅の際にハイヤーに同乗した事実等を認められております。

 そのほか黒川検事長にその後も麻雀、ハイヤーの事実ということを、当然、確認したところでございますが、その結果、黒川検事長からは今回の5月1日、あるいは13日のメンバーとされています記者3人と約3年前から月に1、2回程度、同様な賭けマージャンをやっていたということ、あるいは帰宅の際に記者が帰宅するために乗車するハイヤーに同乗したというような聴取の結果を得ているところでございまして、そうした調査結果になってございます」

 「文春オンライン」が黒川弘務の賭けマージャンスキャンダルを伝えたのが2020年5月20日、産経新聞は自社記者からの聴き取りを記事にしたのが2020年5月22日。法務省が調査を開始したのは2020年5月19日。文春側から、これこれを記事にすると前以って黒川弘務に連絡が入り、逃げられないと観念して検察庁と法務省に記事になることを伝えたのだろう。でなければ、法務省は文春報道の5月20日前日の5月19日から調査に入ることはできない。
 
 当然、川原隆司の答弁は文春の報道を黒川弘務に当てた結果出てきた、既に述べている事実であるなのか、産経新聞の調査内容を当てた結果、別の事実が出てきて、それも加えて答弁しているいるのかでなければならないはずだが、既に明らかにしている法務省自身の調査結果をくどくどと繰り返す答弁となっている。

 もし厳格な聴き取りを行っていたなら、その聴き取りに自信を持つことができて、繰り返しの答弁をする必要はない。繰り返しは事実と思わせたいときに特に使う。

 つまり厳格な聴き取りを行わない片手落ちの調査で「訓告」処分とした。


 山尾志桜里「黒川さん自体、数年前から特定の記者と月1、2回程度、賭けマージャンを継続しており、およそハイヤーの接待を受けていたということは認めているという話だったんですけど、森大臣、それなのになぜ、懲戒ではなくて、訓告なんですか」

 森まさこ「事案の内容と諸般の事情を総合的に考慮し、適正な処分を行ったものでございます」

 山尾志桜里「説明する意欲を突然なくした答弁なわけでありますけども、検察の信頼を回復させるために、本当は辞めたいんだけども、残るんでしょ。だったら、ちゃんと答弁してくださいよ。皆さんの資料にあるように人事院の指針は賭博をしただけでも減給、または訓告、常習だったら、停職をちゃんと国公法(国家公務員法)上に位置づけられた、こういった処分が決められているわけですよね。

 ましてや黒川さんは検察官ですよね。検事長ですよね。戦後初めて定年延長されて、『余人を以って代え難い』と評価された検察ですよね。その人がこうやって自ら3年前から、もう賭け賭博を認めている状況が明らかになっていて、どうして国公法にも当たらない訓告で足りると考えたのか、実質的な理由をきちっと国民の前に明らかにしてくださいよ」

 森まさこ「丁寧にご答弁を申し上げてまいります。事案の内容と諸般の事情を総合的に考慮したというふうに申し上げましたけれども、前例で賭けマージャンについてですね、問題になった事案でありますとか、様々な事案を参考に今回の事案を、諸般の事情を考慮し、例えばレートでありますとか、まあ、本人の態度も総合的に考慮し、処分したものでございます」

 「前例で賭けマージャンについてですね、問題になった事案」のうち、検察官が行った前例はあるのか。あるとしたら、どのような「前例」で、どのように参考にしたのか、聞くべきだったし、森まさこ自身も明らかにしなければ、「訓告」が正しい処分なのかどうか、国民も野党も、誰も判断できない。

 さらに森まさこは黒川弘務「本人の態度」も訓告という軽い処分にした理由の一つに上げているが、要するに黒川弘務の検事長としての規範意識は問題なしと見ていることになる。山尾志桜里は検事長でありながら、常習的に賭けマージャンをする規範意識とはどのようなものか聞くべきところを、規範意識にまで頭が回らなかったようだ。


 山尾志桜里「じゃあ、レートはどうだったんですか。態度はどう認定されたのですか」

 川原隆司「今、大臣が今回の処分を決めた理由は概略はご答弁しましたが、私ちょっと詳しくご答弁させて頂きたいと思います。

 先ずマージャンの関係でございますが、今回の一連のマージャンの件、即ち、あの、先程申し上げました今年5月1日、13日以来ですね、そういった状況でマージャンを行っていたと言うことは認められるんですが、(今年5月1日、13日以外は)具体的な日付の特定した事実を認定するには至っておりません。

 ただ、こういった状況だったといういうことを認定して、その中でそういったことを考慮して、えー、処分を決めているわけですが、この処分対象事実、そういった中で、処分対象を事実があった。5月1日、13日のマージャンというものにつきましては、これは旧知の間柄の間で、レートはいわゆる点ピン、これは具体的に申し上げますと1000点を100円と換算するものでありまして、これは勿論、賭けマージャンが許されるものではございませんが、社会の実情を見ましたところ、必ずしも高額とは言えないレベルであったということで、いうことを考えて、ですから、許されるものではありませんが、ということで、それで処分をしているものでございますが、処分の量刑に当たっての評価でございます。

 で、さらにハイヤーの問題。仰っておられますが、これにつきましては5月1日、13日に記者の一人の家でマージャンを行ったのちにその家に住んでいない記者が手配したハイヤーに同乗して帰宅しておりまして、その事実は黒川検事長は(代金を)払っていないものでございます。

 が、このハイヤーは黒川検事長個人のために手配したハイヤーを利用したというものではなく、記者が帰宅したハイヤーに同乗したものであることが認められることなどから、社会通念上、相当と認められる程度を超えた財産上の利益の供与があったとまでは認められませんでしたので、こちらの方は処分対象事実とはしておりません。

 その上で黒川検事長のこれまで懲戒処分を受けたことがない、あるいは今般以来のこれまでの先例など、そういったことを総合的に考慮致しまして、今回の訓告という処分にしたものでございます」

 法務省刑事局長川原隆司は賭けマージャンを掴まえて、「許されるものではない」と言いながら、、旧知の間柄の間でしたことであることと掛け金のレートが「必ずしも高額とは言えないレベル」である2点を「処分の量刑に当たっての評価」としているが、森まさこと同様、黒川弘務が検事長として常に体していなかればならない規範意識の欠如を「処分の量刑に当たっての評価」のうちには入れていない。つまり東京高検検事長であったとしても、規範意識の欠如を許していることになるし、黒川弘務にしても許される特別扱いを受けていることになる。安倍晋三のお友達だからなのだろうか。

 規範意識の欠如が許される検事長というのはどのような存在なのだろうか。


 山尾志桜里「中身の調査を尽くさずに出てきた表面上の結果をピックアップをして、そして人事院の基準よりも余程軽い処分で終わらせて、それについて説明もしないという状況で、法務大臣、どうやって森大臣が検察の信頼を回復するつもりなんですか」

 森まさこ「人事院の基準についてはこれに当てはまる過去の先例等を調べた上で、法務省に於いては賭けマージャンについて行った賭博による減給、または戒告に当てはめられたことはないわけですけれども、懲戒処分以外の処分を受けている例等はございますが、そういったものを参考にしつつ、今回の、先程言った例等とありますとか、その他の事情を考慮して、処分を決めたものでございます」

 先ず「人事院の基準についてはこれに当てはまる過去の先例等」を具体的に聞かなければ、量刑の正誤は判断できない。

 「法務省に於いては賭けマージャンについて行った賭博による減給、または戒告に当てはめられた」例はないが、「懲戒処分以外の処分を受けている例等」を参考にして、訓告処分とした。

 つまり最初から「懲戒処分」を視野に入れていなかった。これも検察官の賭けマージャンを規範意識欠如の最たる行為とは見ていないことからの懲戒処分回避なのだろう。

 森まさこが黒川弘務が「検察庁に登庁している職務の時間以外の行為であっても、東京高検検事長たる者、公私を問わず、国民から疑問を問われないように自分自身を律して行動していくものと思っております」と規範意識に則った行動をしているかのように言うことができるのも、「懲戒処分」など、頭の隅にも置いていないからと見なければならない。


 山尾志桜里「法務大臣、確認したいんですけれども、今されている事実認定に於いてこの黒川検事長の賭けマージャンね、罰金50万円の賭博罪とか、あるいは懲役3年もあり得る常習賭博罪、こういった罪で可罰的構成の存在があると考えているのですか。ないと考えているのですか」

 森まさこ「今委員より司法の賭博罪の成否についてのご質問があったと承知しました。刑事処分については捜査機関が法と証拠に基づいて判断するものでございまして、法務省としてはお答えする立場にはございません」

 「捜査機関が法と証拠に基づいて判断する」のは告訴・告発を受けた場合としている。そのうち黒川弘務を賭けマージャンの容疑で告訴するか告発する個人・団体が出てくると思うが、その事実が週刊誌報道と記者の証言、黒川弘務本人の証言によって認定されている以上、告訴・告発がなくても、検察自体が動いてもいいはずだが、「訓告」ありきだから、検察も警察も動かないということなのだろう。

 山尾志桜里「ちょっと一点お願いしたいのは調査結果ということで、1、2、3、4と出ているんですけども、今ここに書かれていない調査結果というものもそれぞれの答弁から出てきているので、ちゃんと調査結果を紙にして提出して頂けませんか」

 松島みどり委員長「後刻理事会で協議して――、ハイ」

 山尾志桜里「最後に森大臣に最後にお尋ねしたいと思います。制度論に入りませんでしたけれも、森大臣、今回責任を痛感していると言っている。私も本当にそう思いますよ。『検察官、逃げた』を始めとする森発言、あるいは森大臣自身の戦後初めての定年延長人事は大失敗に終わっているわけです。

 しかもその失敗を『その当時の判断としては正しかった』というふうに認めていないわけですから、これからも同様の失敗をすると思います。

 そういう意味で森大臣、ご自身の責任のとり方って、大臣を辞めること以外にどういう責任の取り方があり得ると考えているのですか。答えてください、教えて下さい」

 森まさこ「私自身の責任のご質問を頂きましたが、私自身の今般の事柄について大変遺憾であると考えておりまして、責任を痛感しております。安倍総理に対して進退伺を出したところであります。今後も検察の信頼を回復するように、また、後任を速やかに選ぶようにというご指示を受けてございますが、職責に当たることに決めたわけでございますので、信頼を回復するために全力で務めて参りたいと思います」

 山尾志桜里「あのね、自らね、まっとうする自信のない大臣に法務大臣を続けさせる程、日本の社会って、そんなに(ふっとひと笑い。ひと間置いてから続けたから、「甘くはない」と言いたかったところを踏みとどまったのか)待ってられない状態だと思いますので、ぜひ考え直して頂いてご自身で辞任をして頂きたいと強く要求して、終わりたいと思います」

 以上、まともな聴取も行わずに最初から「訓告」ありきの処分を決めたことが、森まさこと法務省刑事局長川原隆司の答弁から如実に浮かんでくる。特に黒川弘務の検事長としての規範意識の欠如に関係なしに訓告と決められたことは留意しなければならない。

 森まさこは法務省が聴き取った事実関係に基づいて「検事総長から監督上の措置として訓告されたものと承知を致します」と答弁している。だが、この衆議院法務委員会があった同じ2020年5月22日の森まさこの朝の「記者会見」では処分の最終決定者は内閣だと明かしている。

 記者「黒川検事長に対する処分は,訓告ということです。黒川検事長は,法務省の聞き取りに対して,賭け麻雀をしたと認めています。一方で,法務省として,賭け麻雀をしたと言われたのに,これは賭博罪に当たるものではないということで,この訓告処分をされたのでしょうか」

 森まさこ「これについては,法務省内,任命権者であります内閣と様々協議を行いました。その過程でいろいろな意見も出ましたが,最終的には任命権者である内閣において,決定がなされたということでございます。

 その際,賭け麻雀における過去の処分の例ですとか,刑法の賭博罪と人事院の規則の賭博についての定義の考え方ですとか,刑法の方は刑事処分が関連してまいりますので,人事院規則の方とは全く同じではないという説明も受けました。その中で刑法の賭博罪についても,立件される程度があるという説明もございました。様々なことを総合考慮した上で,内閣で決定したものを,私が検事総長にこういった処分が相当であるのではないかということを申し上げ,監督者である検事総長から訓告処分にするという知らせを受けたところでございます」

 ① 法務省と内閣が「様々協議」した。
 ② 任命権者である内閣が最終決定。
 ③ 内閣決定を森まさこが検事総長に伝えた。
 ④ 検事総長が森まさこに訓告処分を伝えた。

 問題は③と④である。内閣決定を検事総長が覆すことができるだろうか。覆すとしたら、検事総長は内閣及び法務省と協議しなければならない。その事実は伝えられていないから、検事総長は単に内閣決定を了解し、了解の意を森まさこに伝えたということなのだろう。

 大体が検事長の任命権者は内閣である。任命の責任に対して処分の責任を負うのも内閣でなければならない。この点から言っても、森まさこが「法務省内,任命権者であります内閣と様々協議を行いました」と法務省を内閣より先に持ってきているが、法務省が処分を主導したように見せかけるレトリックでdなければならない。

 内閣は法務省の上に位置する。上に位置する内閣に法務省が訓告相当の処分が適当ではないかと決めた上でそのことを伝えたとしたら任命権者たる内閣に対して僭越行為となる。法務省の聴取で明らかになった事実を先ず内閣に提示してから、処分についての「様々協議」に入る中で法務省の処分についての考えを伝えて、その適否についてさらに「様々協議」するというのが常識的な流れとなる。

 いずれにしても任命権者として内閣が訓告処分を最終決定した。法務省の検事長黒川弘務に対する聴取自体が訓告ありきのいい加減な体裁となっていることが森まさこと法務省刑事局長川原隆司の答弁からアリアリなのだから、任命権者という点からも、「訓告」は内閣発と見なければならない。

 最初から「訓告」ありきの茶番に過ぎなかった。当然、森まさこと法務省刑事局長川原隆司の訓告処分ありきの答弁は内閣の意、実際には安倍晋三の訓告処分で手を打つ意を受けたものだった。

 5月22日の衆院厚生労働委員会で安倍晋三は検事総長が処分の決定を行ったかのように答弁している。

 立憲民主党の小川淳也が安倍晋三の黒川弘務定年延長の閣議決定に対する安倍晋三自身の責任を問い質した。

 安倍晋三「先ず処分に当たってはですね、検事総長が事案の内容を諸般の事情を考慮して適切に決定の処分を行ったものと承知をしております。それを受けて、カズサ(「司」〈ツカサ〉の間違いか)として了承したということでございます。

 黒川氏についてはですね、検察庁の業務上の必要性に基づき、検察庁を所管する・・・・」

 小川淳也「総理の任命責任を聞いています」

 安倍晋三「検察庁を所管する法務省からの閣議請議により閣議決定されるといったプロセスを経て、引き続き勤務させることにしたものであり、この勤務延長自体に問題はなかったものと考えております。黒川氏については法務省に於いて先程答弁させて頂いたように確認した事実に基づき、昨日必要な処分を行うと共に本日辞職を承認する閣議決定を行ったところです。

 法務省、検察庁の(黒川勤務延長の)人事案を最終的に内閣として(小川淳也が何か抗議)、法務省、検察庁の人事案を最終的に内閣として認めたものであり、その責任については私にあるわけでございまして、ご批判は真摯に受け止めたいと思います」

 検事長の任命権者は内閣でありながら、「検事総長が事案の内容を諸般の事情を考慮して適切に決定の処分を行った」としている。そして黒川弘務定年延長の決定も、自身の任命責任を脇に置いて、「法務省、検察庁の人事案を最終的に内閣として認めた」と主導したのは法務省と検察庁としている。

 ここには任命責任者としての確たる責任意識は見えてこないばかりか、黒川弘務の規範意識の程度に向ける意識さえ見えてこない。だから、訓告という処分が可能になった。黒川弘務に対して公正・公平・中立の立場を維持できていたなら、規範意識の欠如に目をつぶった処分などできない。

 眼をつぶることができるのは安倍晋三自身が森まさこ同様に責任意識を欠如させているからだろう。

 安倍内閣の教育再生会議は第1分科会が「学校再生分科会」、第2分科会が「規範意識・家族・地域教育再生分科会」、第3分科会が「教育再生分科会」と分けれていて、第2分科会で規範意識の育みを受け持ち、「世界トップレベルの学力と規範意識を備えた人材を育成していきます」と高らかに謳っている。

 検事長黒川弘務の規範意識を問題にせずに子どもたちの規範意識を育てようとしている。前者を問題にせずに訓告したことにウソがあるだけではなく、教育再生会議で「規範意識」を謳っていることにもウソがあることになる。

コメント
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安倍晋三の検察庁法改正案に賛成しよう! 但し不正疑惑渦中閣僚一人で検察人事関与不可を条件とする

2020-05-18 11:40:20 | Weblog
   検察庁法改正案を一体化させてある国家公務員法等の一部を改正する法律案が2020年3月13日閣議決定され、同日国会に上程された。検察庁法改正に関わるその主な内容と「論点」について2020年5月15日付「NHK NEWS WEB」記事「元検事総長ら 検察庁法改正案に反対の意見書提出 極めて異例」が詳しく解説しているから、それを纏めてみた。このブログ記事の最後にリンク切れに備えて、全文を参考引用しておくことにした。

🔴政治に対する検察の役割=捜査や裁判を用いた権力不正のチェック
🔴検察庁法の改正案は、内閣や法務大臣が認めれば検察幹部らの定年延長を最長3年まで可能。
🔴改正案は検察人事への政治権力介入の正当化をなす。
🔴政権側による人事権掌握、対公訴権行使制約の危険性。検察への政権の意向反映。政権による検察
 の自主・独立の侵害 
🔴定年に関わる改正案
 すべての検察官の定年を段階的に63歳から65歳へ引き上げ。
 検事正や検事長等幹部は原則63歳退官
 対幹部特例規定――内閣・法務大臣が「公務の運営に著しい支障が出る」と認めれば、個別幹部の
 役職定年、定年を最長3年まで延長可能。
 ※結果、内閣の判断で検事総長定年65歳→最長68歳まで。
     検事長役職定年63歳→最長66歳まで。
🔴問題点 内閣の判断で検察官の定年を延長する場合の判断基準が示されていない。
🔴従来からの検察官人事――検察側作成の人事案を内閣や法務大臣追認が慣例。
🔴法務省が昨2019年10月末の時点で検討していた当初の改正案では「公務の運営に著しい支障が生
 じることは考えがたい」等、個別に検察幹部の定年延長を認める規定は必要ないとしていた。20
 20年1月31日、政府は従来の法解釈を変更、東京高等検察庁の黒川検事長の定年延長を閣議決
 定。

 政治に対する検察の役割が捜査や裁判を用いた権力不正のチェックであるなら、検察官は政治的中立性を常に体現していなければならない。時の政権の意向を汲む、あるいは時の政権の鼻息を窺う(=ご機嫌を取る)、今どきの言葉で言うなら、忖度するようであったなら、政治的中立性など、吹き飛んでしまう。

 従来からの検察官人事は検察側作成の人事案を内閣や法務大臣が追認するのが慣例であったということは検察の人事は検察に任せる“検察人事・検察主導論”の体裁を取っていたことになる。つまり内閣、あるいは法務大臣は検察の主体性を重んじて、“検察人事追認機関”に過ぎなかった。

 だが、改正案で“検察人事・検察主導論”から“検察人事・内閣主導論”へと舵を切ることになる。内閣による検察人事への介入の始まりを意味する。しかも内閣が定年延長に関わる検察人事に関与する際の判断基準が用意されていない。

 判断基準がないということは内閣の判断を縛る基準がないということを意味するから、内閣の自由な判断を許すことになる。改正案によって内閣の自由な判断で検察人事に関与可能となる。当然、検察官の政治的中立性に影響を与えないではおかないことになりかねない。

 検察庁法改正案では定年延長に関して、「任命することにより公務の運営に著しい支障が生ずると認められる事由として内閣が定める事由があると認めるときは」云々と続けて、それぞれ限度を設けて定年延長を認めているが、改正案のどこを読んでも、「内閣が定める事由」の説明がどこにも出ていなくて、理解不明であったが、ネットを検索して、「【全文 文字起こし】検察庁法改正 衆議院内閣委員会2020年5月15日」(犬飼淳/Jun Inukai|note)に行き当たることができ、やっと理解できた。文飾当方

 森まさこ(法相)「えー、現行国家公務員法上の勤務延長の要件は改正法によっても緩められておりません。また役職定年制の特例の要件も勤務延長と同様の要件が定められております。

 これらの具体的な要件は人事院規則において適切に定められるものと承知してます。改正法上の検察官の勤務延長を・・、や役割特例が認められる要件についても職務遂行上の特別の事情を勘案して当該職員の退職により公務の運営に著しい支障が生じると認められる事由として、内閣が定める事由などと規定しておりまして、改正国家公務員法と比較しても緩められておりません。

 かつ、これらの要件をより具体的に定める、内閣が定める事由等についてでございますが、これは新たに定められる人事院規則の規定に準じて定めます。

 このように改正法に検察官の勤務延長や役割特例が認められる要件を定めた上で新たな人事院規則に準じて内閣が定める事由でより具体的に定めることとしておりますが、現時点で人事院規則が定められておりませんので、えー、その内容を具体的に、いー、すべて示すことは困難であります」――
 
 「内閣が定める事由」は「人事院規則の規定に準じて定める」が、「現時点で人事院規則が定められておりません」

 検察庁法改正箇所をいくら読んでも、「内閣が定める事由」に行き当たらないことが分かったが、法律として未だ確定していない箇所がありながら、その不完全な法案を通そうとしている。

 日本の刑事訴訟法248条は、検察官は、〈犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができる。〉とある。いわば、起訴便宜主義を採用している。

 さらに検察庁法第4条は、〈検察官は、刑事(「刑法の適用を受け、それによって処理される事柄」のこと)について、公訴を行い、裁判所に法の正当な適用を請求し、且つ、裁判の執行を監督し、又、裁判所の権限に属するその他の事項についても職務上必要と認めるときは、裁判所に、通知を求め、又は意見を述べ、又、公益(「社会一般の利益。公共の利益」のこと)の代表者として他の法令がその権限に属させた事務を行う。〉とある。

 「法の正当な適用」、「公益の代表者」、この言葉自体が既に検察官の全てに亘っての中立性を規定している。

 検察官が時の政権から何らかの力を受けて、あるいは何らかの影響を受けて政治的中立性を失い、政権の犯罪に対して起訴便宜主義に走らないよう、検察官は時の政権と政治的心情に於いて共通点があろうとも、相手の政治的立場に対して常に、常に距離を置いていなければならない。

 それが政治的中立性ということであり、それを失ったなら、検察の役割である政治権力不正のチェックができなくなる。

 当然、政権側も検察及び検察官が自らの政治的中立性を守ることができるように法律で担保しなければならないことなる。その法律がかつては検察庁法であった。上記NHK NEWS WEB記事を見る限り、検察庁法改正案を一体化させている国家公務員法等の一部を改正する法律案が検察及び検察官の政治的中立性を担保することになる法律案には見えない。

 では、安倍晋三の検察庁法改正部分に関する国会答弁や記者会見発言等見てみる。

 2020年5月12日 衆議院本会議

 中島克仁(国民民主党)「最後に検察庁法改正案についてお尋ねします。現在内閣委員会では検察官の定年引き上げを含む国家公務員法等改正案が審議されていますが、国民が強い疑念を抱いている中、ましてや新型コロナウイルス感染症で国民が不自由な生活を強いられている中で強行的に審議を進めるということは絶対あってはならないことであります。

 総理にお尋ね致しますが、今回の法改正の動機としてこれまでの『森・加計・桜』など、自らの疑惑を検察に追及されたくないという気持があるのではないのですか。総理には今回の法案から検察官の定年延長及び役職定年の特例を削除することを強く求めます。総理の見解をお尋ねして私の質問は終わります」
 安倍晋三「検察官の定年引き上げを含む国家公務員法等改正案についてお尋ねがありました。なお大前提として検察官も一般職の国家公務員であり、検察庁法を所管する法務省に於いて一般法たる国家公務員法の勤務延長に関する規定は検察官にも適用されると解釈されるところでであります。
 その上で、今般の国家公務員法等の改正案の趣旨・目的は高齢期の職員の豊富な知識・経験等を最大限に活用する点などにあるところ、検察庁法案の改正部分の趣旨・目的もこれと同じであり、一つの法案として束ねた上でご審議頂くことが適切であると承知をしております。

 今般の法改正に於いては検察官の勤務延長に当たっての要件となる事由を事前に明確化することとしており、自らの疑惑隠しのために改正を行おうとしているといったご指摘は全く当たりません。

 なお、法案審議のスケジュール等については国会でお決め頂くことであり、政府としてコメントすることは差し控えたいと思います」

 そもそもからして「検察官も一般職の国家公務員」であり、「一般法たる国家公務員法の勤務延長に関する規定は検察官にも適用されると解釈される」との文言で検察官と一般職の国家公務員を同列に置くこと自体がトンデモない心得違いをしていることになる。
 一般職の国家公務員も政治的中立性を求められているが、検察官が裁判を通して政治権力不正チェックの任を与っている点、一般職国家公務員の政治的中立性の比ではない。元々、性格が異なる政治的中立性への要求と見なければならない。

 だからこそ、検察官を一般職の国家公務員と同列に置かずに国家公務員法と検察庁法を別建てとした。それを安倍晋三は「一つの法案として束ねた上でご審議頂く」と同列に置いて、かつてので“検察人事・検察主導論”から“検察人事・内閣主導論”へと持っていこうとしている。トンデモない心得違いを侵そうとしている。  

 このことは検察の政治的中立性を一般職の国家公務員の政治的中立性に近づけることになりかねない。

 「改正案の趣旨・目的」を「高齢期の職員の豊富な知識・経験等を最大限に活用する点などにある」と聞こえはいいが、内閣が検察の人事を握ることで検察官の政治的中立性を損なうか、少なくとも影響を受けて、「公益の代表者」たる資格を些かなりともか、大分か、あるいは完全に失うマイナスと比較した場合、「豊富な知識・経験等の最大限の活用」は意味を失う。

 つまり、「豊富な知識・経験等の最大限の活用」よりも、検察官の政治的中立性を重要視しなければならない。重要視するためには内閣が検察官人事に関与しないことが何よりの早道となる。

 だが、安倍晋三が検察官の政治的中立性よりも検察官の「豊富な知識・経験等の最大限の活用」を重要視していることは検察庁法改正案は検察庁法とは逆の方向を目指していることになる。

 「今般の法改正に於いては検察官の勤務延長に当たっての要件となる事由を事前に明確化することとしており、自らの疑惑隠しのために改正を行おうとしているといったご指摘は全く当たりません」
 
「事由」は改正案そのものには「明確化」されていない。そしていくら後付で明確化しようとも、内閣が検察の人事を握る“検察人事・内閣主導”の体制に持っていく以上、検察官の政治的中立性に影響を与えない保証はない。

 安倍晋三は「自らの疑惑隠しのために改正を行おうとしているといったご指摘は全く当たりません」と言っているが、「森友・加計・桜を見る会に関わる不正疑惑の指摘は全く当たりません」とは言っていない。

 つまり疑惑を事実と見て、それを隠すための法改正ではないと断わっている。でなければ、「私に掛けられている疑惑は全て事実無根で、それを隠すための法改正など必要のないことで、改正はあくまでも高齢期の検察職員の豊富な知識・経験等を最大限に活用する点などにあります」と答弁するはずである。

 「asahi.com」記事に誘導されて知ることになったのだが、森友学園の安倍晋三に掛けられた忖度疑惑が事実なのは、「森友学園案件に係る不動産鑑定等に関する調査報告書(概要版)」(大阪府不動産鑑定士協会/2020年5月14日)の次のような記事内容が証明することになる。

 〈本件の各鑑定評価書等に共通するのは、 何れも意図的とは断定できないが、依頼者側の意向に沿うかたちで鑑定評価書等が作成され、結果として各成果品が依頼者に都合良く利用され、あるいは利用される恐れがあったという現実である。

 それは、とりもなおさず、国有財産の賃貸、処分の場面においては国民の利益に反し、大阪府私立学校審議会への提出の場面においては、私立学校の経営に必要な財産の価格の把握を誤らせることになり、不動産鑑定評価制度に対する国民・府民からの信頼を毀損する結果に繋がるものと言わざるを得ない。不動産鑑定士が作成する鑑定評価書等は、眼前の依頼者や利用者を満足させるだけではなく、社会からも合理的であるとの評価を受けるものでなければならない。

 当然のことながら、不動産鑑定士が意図的に依頼者に迎合し、不当な鑑定評価等を行うことは論外である。しかし、本件では、不動産鑑定士に悪意がないとしても、悪意ある依頼者又は不動産鑑定制度の趣旨や価格等調査業務を正確に理解せず、あるいは十分に理解しない依頼者が不動産鑑定士の作成した成果品の都合のよい部分のみを利用しようとすることに対し、不動産鑑定士があまりにも無防備または慎重さを欠いていることが明らかになった。

 今回の国有地売却を巡って表面化した不動産鑑定上の問題に関しては、個々の不動産鑑定士の問題あるいは近畿財務局や森友学園という依頼者側の特異性に起因すると捉えるのではなく、不動産鑑定士が社会から求められている専門性や責務について改めて問い直し、鑑定評価制度の土台となる社会的信頼を維持・ 向上させる契機として活かしていくべきと考える。そのような観点から、今般の調査において、当委員会が検討した今後の方策または検討課題を次のとおり提言する。〉――

 〈会計検査院報告書81ページによれば、B不動産鑑定士は、依頼者が提示した地下埋設物撤去・処分概算額には依頼者側の推測に基づくものが含まれ、調査方法が不動産鑑定評価においては不適当であったことなどから、「他の専門家が行った調査結果等」としては活用できなかったという。つまり、不動産鑑定士から見て上記概算額は信用性に欠けるということである。

 そうであったなら、依頼者の要望により意見価額を記載するとしても、専門家である不動産鑑定士が作成する鑑定評価書の信頼性を確保するため、地下埋設物撤去・処分概算額は依頼者が提示したものであるとするだけではなく、不動産鑑定士として認識した内容(信用性に欠ける部分がある旨)も明記すべきであったと考えられる。〉――

 森友学園理事長籠池泰典は国有地を格安で財務省から買い受けるために安倍昭恵の総理大臣夫人の肩書を利用し、財務省は安倍昭恵の背後にいる首相たる安倍晋三を忖度して、不動産鑑定評価額9億3200万円の国有地を鑑定依頼者たる財務省が提示した「推測に基づく」地下埋設物撤去・処分概算額約8億1900万円を差し引いて、約1億3400万円で売却を受けることになった。

 安倍晋三が「30年来の腹心の友」と言って憚らない加計学園理事長加計孝太郎と安倍晋三が首相官邸で2015年2月25日に15分程度の面談を行い、獣医学部新設について話し合ったことが愛媛県文書の1枚に書いてある事実を安倍晋三はマスコミが伝えている「首相動静」を用いて、「どこにも記載されていない。面談の事実はない」と否定、加計学園獣医学部認可自体への自身の政治的便宜付与の疑惑そのものを否定しているが、首相官邸正面エントランスホールで待ち構えている記者の前を通り抜けずに首相執務室に行く通路があって、そこを通った場合はマスコミの「首相動静」に記載されないということを幾つかのマスコミが伝えている。

 それを知らないはずのない安倍晋三が全ての面会者を把握できるわけではない「首相動静」に加計孝太郎との面会の記載がないことを利用して加計学園獣医学部認可自体への自身の政治的便宜付与の疑惑を否定することは疑惑の事実を自らが証明していることになる。

 このように首相である安倍晋三自身が不正疑惑の渦中にある。もし改正案が国会を通過すれば、検察官の人事を内閣が主導することになり、安倍晋三が在任中は数々の不正疑惑の渦中にあるにも関わらず、必要に応じて検察官人事に手を付けることも可能となる。

 その必要に応じてが「疑惑隠し」どころではなく、検察官の政治的中立性を蔑ろにする「疑惑潰し」に利用されない保証はない。

 検察庁法改正を含めた国家公務員法等改正案に賛成するなら、閣僚が一人でも不正疑惑の渦中にある場合は、ましてや閣僚のトップたる首相がそのような状況に置かれているとしたら、なおさらのこと、検察の人事に関与することを不可とする条件を付けなければならない。

 安倍晋三は5月15日夜、ジャーナリストの桜井よしこのインターネット番組に出演、東京高検検事長の黒川弘務の定年延長を閣議決定したのは、黒川弘務が安倍政権に近いからだとの見方を否定して、「私自身、黒川氏と2人で会ったことはないし、個人的な話をしたことも全くない。大変驚いている」と話したと2020年5月15日付「東京新聞」が伝えているが、例え会ったことがなくても、個人的な話をしたことがなくても、第三者を通した忠誠心の間接的確立は不可能ではない。その第一歩が黒川弘務の定年延長の閣議決定ということもあり得る。

 閣議決定に対して大いに感激して涙あられ、安倍晋三センセイの方に足を向けて寝ることはできない、命に代えてでもお守りするといった決意はマンガの世界だけのことではないはずだ。

 検察官の政治的中立性を第一義としなければならない。第一義とするためには検察官人事から閣僚や国会議員を距離を置くように仕向けなければならない。検察官が従来どおりに定年を迎えることになったとしても、その「豊富な知識・経験」は後に続く検察官が前々から引き継ぎ、少しずつ積み重ねていき、超えていかなければならない「知識・経験」であって、後輩検察官が少なくとも遜色のない「知識・経験」にまで到達できなかったなら、先輩検察官は後輩を育てなかったという謗りを受ける。後輩を満足に育てることができなかった「豊富な知識・経験」は定年延長で居残ったとしても、大した財産とはならない。

 要するに検察人事における第一要件はあくまでも検察官の政治的中立性であって、「高齢期の職員の豊富な知識・経験等の最大限の活用」ではないということである。

 新型コロナウイルス緊急事態宣言39県解除の「記者会見」でも、「検察庁法の改正法案は、高齢期の職員の豊富な知識や経験等を最大限に活用する観点から、一般職の国家公務員の定年を引き上げること等に合わせて、検察官についても同様の制度を導入するものであります。

 そして、そもそも検察官は行政官であります。行政官でございますから、三権分立ということにおいては正に行政、言わば強い独立性を持っておりますが、行政官であることは間違いないのだろうと思います」と発言しているが、その発言全てが以上当記事に書いてきたように心得違いから発している。

 この心得違いは疑惑の渦中にあることから、検察官の政治的中立性どころではない「疑惑潰し」が頭にあって、その中立性を忘却していることから発している産物なのだろう。でなければ、検察官の政治的中立性を第一要件としない検察庁法の改正案など発想するはずはない。

 ◇元検事総長ら 検察庁法改正案に反対の意見書提出 極めて異例(NHK NEWS WEB/020年5月15日 19時31分)

検察官の定年延長を可能にする検察庁法の改正案について、ロッキード事件の捜査を担当した松尾邦弘元検事総長ら、検察OBの有志14人が「検察の人事に政治権力が介入することを正当化するものだ」として、反対する意見書を15日、法務省に提出しました。検察トップの検事総長経験者が、法務省が提出する法案を公の場で批判するのは極めて異例です。
検察庁法の改正案に反対する意見書を提出したのは、松尾邦弘元検事総長など、ロッキード事件などの捜査を担当した検察OBの有志14人です。

検察庁法の改正案は、内閣や法務大臣が認めれば検察幹部らの定年延長を最長3年まで可能にするもので、意見書では「改正案は、検察の人事に政治権力が介入することを正当化するもので、政権側に人事権を握られ、公訴権の行使まで制約を受けるようになれば、検察は国民の信託に応えられない」としています。

 (「公訴権」公訴を提起し裁判を求める検察官の権能。「公訴」刑事事件について、検察官が裁判所に起訴状を提出して裁判を求めること)

そのうえで「田中角栄元総理大臣らを逮捕したロッキード世代として、検察を、時の政権の意のままに動く組織に改変させようとする動きは看過できず、定年延長を認める規定の撤回を期待する」と訴えています。

松尾氏は会見で「定年延長は、今までの人事の流れを大きく変化させる懸念がある。検察官にいちばん大事なのは自主・独立だ」と述べました。

松尾氏は平成16年から2年間、検察トップの検事総長を務め、ライブドア事件や日本歯科医師会をめぐる1億円不正献金事件などの捜査を指揮しました。

検事総長経験者が、法務省が提出する法案について公の場で反対意見を表明するのは極めて異例です。

検察庁法の改正案とは
改正案は、すべての検察官の定年を段階的に63歳から65歳に引き上げるとともに、「役職定年制」と同様の趣旨の制度を導入し、検事正や検事長などの幹部は原則63歳で、そのポストから退くことが定められています。

しかし特例規定として内閣や法務大臣が「公務の運営に著しい支障が出る」と認めれば、個別の幹部の役職定年や定年を最長3年まで延長できるとしています。

このため内閣の判断で定年が65歳の検事総長は最長で68歳まで、役職定年が63歳の検事長は最長で66歳までそのポストにとどまることができるのです。
論点1「政権の人事介入への懸念」
論点の1つは、検察人事への政治介入の懸念です。

検察庁は法務省に属する行政機関で、検察官の人事権は内閣や法務大臣にあります。

一方、検察は捜査や裁判で権力の不正をチェックする役割も担い、政治からの中立性や独立性が求められるため、実際には検察側が作成した人事案を内閣や大臣が追認することが「慣例」となってきました。

日弁連=日本弁護士連合会などは、内閣や大臣の判断で個別の検察幹部の定年延長が可能になれば、検察官の政治的中立性を脅かし、捜査を萎縮させるおそれが強いなどと指摘しています。

論点2「“個別の定年延長制度” 導入の経緯」
個別の検察幹部らの定年延長を可能にする特例規定が改正案に盛り込まれた経緯も論点です。

法務省が去年10月末の時点で検討していた当初の改正案では「公務の運営に著しい支障が生じることは考えがたい」などとして、個別に検察幹部の定年延長を認める規定は必要ないとしていました。

しかし、ことし1月、政府が従来の法解釈を変更し、東京高等検察庁の黒川検事長の定年延長を閣議決定しました。

個別の検察幹部の定年延長の特例規定は、ことしになって改正案に盛り込まれていて、有志の弁護士の団体などは「法解釈の変更による黒川検事長の違法・不当な定年延長を法改正によって後付けで正当化するものだ」としています。
論点3「定年延長を判断する基準」

また、内閣の判断で検察官の定年を延長する場合の判断基準が示されていないことも論点になっています。

元検察幹部は「恣意的(しいてき)な人事の運用ができないよう基準をできるかぎり細かく、具体的に定めることが必要だ」と指摘しています。

現職の検察幹部 さまざまな意見

検察官の定年延長を可能にする検察庁法の改正案について、現職の検察幹部からは、さまざまな意見が出ています。

NHKの取材に対し、現職の検察幹部の1人は「検察幹部が定年を超えても政府の判断で、そのポストにとどまることができるようになれば、政権の検察への介入を許すのではないかという批判は受け止めるべきだ。検察は巨大な権力を持つ組織で個別の定年延長を認めないことが、検事総長や検事長への過度な権力集中を防ぐ抑止効果にもなっていたと思う。新型コロナウイルスの影響が広がる中、急いで審議を進める話ではないのではないか」と話しています。

また、個別の検察官の定年延長を可能にする特例規定が、去年10月末の時点で法務省が検討していた当初の改正案に盛り込まれていなかったことについて、別の幹部の1人は「昨年の秋に法務省が必要ないとしていた規定を、なぜ黒川検事長の定年を延長した後に加えたのか説明すべきだ」と指摘しています。

一方、別の現職の幹部の1人は「今回の法改正で、政権が人事を通じて検察に介入しやくなるという危惧はよく分かるが、検察は常に正義とは限らず、暴走するおそれもある。検察をどのように民主的にコントロールしていくかという視点も必要だ」と話していました。

また検察幹部の1人は「検察の独立性という問題があることは理解できるが、定年延長を使って事件に介入しようとする政治家が、本当に出てくるとはあまり思えない」と話していました。

元東京地検特捜部検事「国民の信頼を揺るがすおそれ」

元東京地検特捜部検事でリクルート事件などを担当した高井康行弁護士は、今回の検察庁法改正案について「政治と検察の制度的なバランスを変える意味があり、国民の検察の独立性への信頼を揺るがすおそれがある」と指摘しています。

高井弁護士は、これまでの検察官の人事は、検察庁法に規定されている懲戒などを除いて罷免されないという「身分保障」と、定年が来れば一律に必ず退官するという「定年制」が政権の介入を防ぎ、2つの制度は検察の独立性を守る「防波堤」の役割を果たしていたと指摘しています。

このため、内閣や大臣の判断で個別の検察幹部の定年延長が可能になる今回の改正案については「一律の定年制という独立性を担保する制度の1つがなくなることになる。政治と検察の制度的なバランスを変える意味があり、検察の独立性についての国民の信頼を揺るがすおそれがある」と話しています。

また、内閣が個別の検察幹部の定年を延長する場合の判断基準が、現時点で示されていないことについては「恣意的な運用ができないような制度的な歯止めが必要で、基準をできるかぎり細かく具体的に定めることが必要だ」と指摘しています。

コメント
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安倍晋三の検察庁法改正案に賛成しよう! 但し不正疑惑渦中閣僚一人で検察人事関与不可を条件とする

2020-05-18 11:40:20 | Weblog
   検察庁法改正案を一体化させてある国家公務員法等の一部を改正する法律案が2020年3月13日閣議決定され、同日国会に上程された。検察庁法改正に関わるその主な内容と「論点」について2020年5月15日付「NHK NEWS WEB」記事「元検事総長ら 検察庁法改正案に反対の意見書提出 極めて異例」が詳しく解説しているから、それを纏めてみた。このブログ記事の最後にリンク切れに備えて、全文を参考引用しておくことにした。

🔴政治に対する検察の役割=捜査や裁判を用いた権力不正のチェック
🔴検察庁法の改正案は、内閣や法務大臣が認めれば検察幹部らの定年延長を最長3年まで可能。
🔴改正案は検察人事への政治権力介入の正当化をなす。
🔴政権側による人事権掌握、対公訴権行使制約の危険性。検察への政権の意向反映。政権による検察
 の自主・独立の侵害 
🔴定年に関わる改正案
 すべての検察官の定年を段階的に63歳から65歳へ引き上げ。
 検事正や検事長等幹部は原則63歳退官
 対幹部特例規定――内閣・法務大臣が「公務の運営に著しい支障が出る」と認めれば、個別幹部の
 役職定年、定年を最長3年まで延長可能。
 ※結果、内閣の判断で検事総長定年65歳→最長68歳まで。
     検事長役職定年63歳→最長66歳まで。
🔴問題点 内閣の判断で検察官の定年を延長する場合の判断基準が示されていない。
🔴従来からの検察官人事――検察側作成の人事案を内閣や法務大臣追認が慣例。
🔴法務省が昨2019年10月末の時点で検討していた当初の改正案では「公務の運営に著しい支障が生
じることは考えがたい」等、個別に検察幹部の定年延長を認める規定は必要ないとしていた。2020年1月31日、政府は従来の法解釈を変更、東京高等検察庁の黒川検事長の定年延長を閣議決定。

 政治に対する検察の役割が捜査や裁判を用いた権力不正のチェックであるなら、検察官は政治的中立性を常に体現していなければならない。時の政権の意向を汲む、あるいは時の政権の鼻息を窺う(=ご機嫌を取る)、今どきの言葉で言うなら、忖度するようであったなら、政治的中立性など、吹き飛んでしまう。

 従来からの検察官人事は検察側作成の人事案を内閣や法務大臣が追認するのが慣例であったということは検察の人事は検察に任せる“検察人事・検察主導論”の体裁を取っていたことになる。つまり内閣、あるいは法務大臣は検察の主体性を重んじて、“検察人事追認機関”に過ぎなかった。

 だが、改正案で“検察人事・検察主導論”から“検察人事・内閣主導論”へと舵を切ることになる。内閣による検察人事への介入の始まりを意味する。しかも内閣が定年延長に関わる検察人事に関与する際の判断基準が用意されていない。

 判断基準がないということは内閣の判断を縛る基準がないということを意味するから、内閣の自由な判断を許すことになる。改正案によって内閣の自由な判断で検察人事に関与可能となる。当然、検察官の政治的中立性に影響を与えないではおかないことになりかねない。

 検察庁法改正案では定年延長に関して、「任命することにより公務の運営に著しい支障が生ずると認められる事由として内閣が定める事由があると認めるときは」云々と続けて、それぞれ限度を設けて定年延長を認めているが、改正案のどこを読んでも、「内閣が定める事由」の説明がどこにも出ていなくて、理解不明であったが、ネットを検索して、「【全文 文字起こし】検察庁法改正 衆議院内閣委員会2020年5月15日」(犬飼淳/Jun Inukai|note)に行き当たることができ、やっと理解できた。文飾当方

 森まさこ(法相)「えー、現行国家公務員法上の勤務延長の要件は改正法によっても緩められておりません。また役職定年制の特例の要件も勤務延長と同様の要件が定められております。

 これらの具体的な要件は人事院規則において適切に定められるものと承知してます。改正法上の検察官の勤務延長を・・、や役割特例が認められる要件についても職務遂行上の特別の事情を勘案して当該職員の退職により公務の運営に著しい支障が生じると認められる事由として、内閣が定める事由などと規定しておりまして、改正国家公務員法と比較しても緩められておりません。

 かつ、これらの要件をより具体的に定める、内閣が定める事由等についてでございますが、これは新たに定められる人事院規則の規定に準じて定めます。

 このように改正法に検察官の勤務延長や役割特例が認められる要件を定めた上で新たな人事院規則に準じて内閣が定める事由でより具体的に定めることとしておりますが、現時点で人事院規則が定められておりませんので、えー、その内容を具体的に、いー、すべて示すことは困難であります」――
 
 「内閣が定める事由」は「人事院規則の規定に準じて定める」が、「現時点で人事院規則が定められておりません」

 検察庁法改正箇所をいくら読んでも、「内閣が定める事由」に行き当たらないことが分かったが、法律として未だ確定していない箇所がありながら、その不完全な法案を通そうとしている。
 日本の刑事訴訟法248条は、検察官は、〈犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができる。〉とある。いわば、起訴便宜主義を採用している。

 さらに検察庁法第4条は、〈検察官は、刑事(「刑法の適用を受け、それによって処理される事柄」のこと)について、公訴を行い、裁判所に法の正当な適用を請求し、且つ、裁判の執行を監督し、又、裁判所の権限に属するその他の事項についても職務上必要と認めるときは、裁判所に、通知を求め、又は意見を述べ、又、公益(「社会一般の利益。公共の利益」のこと)の代表者として他の法令がその権限に属させた事務を行う。〉とある。

 「法の正当な適用」、「公益の代表者」、この言葉自体が既に検察官の全てに亘っての中立性を規定している。

 検察官が時の政権から何らかの力を受けて、あるいは何らかの影響を受けて政治的中立性を失い、政権の犯罪に対して起訴便宜主義に走らないよう、検察官は時の政権と政治的心情に於いて共通点があろうとも、相手の政治的立場に対して常に、常に距離を置いていなければならない。

 それが政治的中立性ということであり、それを失ったなら、検察の役割である政治権力不正のチェックができなくなる。

 当然、政権側も検察及び検察官が自らの政治的中立性を守ることができるように法律で担保しなければならないことなる。その法律がかつては検察庁法であった。上記NHK NEWS WEB記事を見る限り、検察庁法改正案を一体化させている国家公務員法等の一部を改正する法律案が検察及び検察官の政治的中立性を担保することになる法律案には見えない。

 では、安倍晋三の検察庁法改正部分に関する国会答弁や記者会見発言等見てみる。

 2020年5月12日 衆議院本会議

 中島克仁(国民民主党)「最後に検察庁法改正案についてお尋ねします。現在内閣委員会では検察官の定年引き上げを含む国家公務員法等改正案が審議されていますが、国民が強い疑念を抱いている中、ましてや新型コロナウイルス感染症で国民が不自由な生活を強いられている中で強行的に審議を進めるということは絶対あってはならないことであります。

 総理にお尋ね致しますが、今回の法改正の動機としてこれまでの『森・加計・桜』など、自らの疑惑を検察に追及されたくないという気持があるのではないのですか。総理には今回の法案から検察官の定年延長及び役職定年の特例を削除することを強く求めます。総理の見解をお尋ねして私の質問は終わります」
 安倍晋三「検察官の定年引き上げを含む国家公務員法等改正案についてお尋ねがありました。なお大前提として検察官も一般職の国家公務員であり、検察庁法を所管する法務省に於いて一般法たる国家公務員法の勤務延長に関する規定は検察官にも適用されると解釈されるところでであります。
 その上で、今般の国家公務員法等の改正案の趣旨・目的は高齢期の職員の豊富な知識・経験等を最大限に活用する点などにあるところ、検察庁法案の改正部分の趣旨・目的もこれと同じであり、一つの法案として束ねた上でご審議頂くことが適切であると承知をしております。

 今般の法改正に於いては検察官の勤務延長に当たっての要件となる事由を事前に明確化することとしており、自らの疑惑隠しのために改正を行おうとしているといったご指摘は全く当たりません。

 なお、法案審議のスケジュール等については国会でお決め頂くことであり、政府としてコメントすることは差し控えたいと思います」

 そもそもからして「
検察官も一般職の国家公務員」であり、「一般法たる国家公務員法の勤務延長に関する規定は検察官にも適用されると解釈される」との文言で検察官と一般職の国家公務員を同列に置くこと自体がトンデモない心得違いをしていることになる。
 一般職の国家公務員も政治的中立性を求められているが、検察官が裁判を通して政治権力不正チェックの任を与っている点、一般職国家公務員の政治的中立性の比ではない。元々、性格が異なる政治的中立性への要求と見なければならない。

 だからこそ、検察官を一般職の国家公務員と同列に置かずに国家公務員法と検察庁法を別建てとした。それを安倍晋三は「一つの法案として束ねた上でご審議頂く」と同列に置いて、かつてので“検察人事・検察主導論”から“検察人事・内閣主導論”へと持っていこうとしている。トンデモない心得違いを侵そうとしている。  

 このことは検察の政治的中立性を一般職の国家公務員の政治的中立性に近づけることになりかねない。

 「改正案の趣旨・目的」を「高齢期の職員の豊富な知識・経験等を最大限に活用する点などにある」と聞こえはいいが、内閣が検察の人事を握ることで検察官の政治的中立性を損なうか、少なくとも影響を受けて、「公益の代表者」たる資格を些かなりともか、大分か、あるいは完全に失うマイナスと比較した場合、「豊富な知識・経験等の最大限の活用」は意味を失う。

 つまり、「豊富な知識・経験等の最大限の活用」よりも、検察官の政治的中立性を重要視しなければならない。重要視するためには内閣が検察官人事に関与しないことが何よりの早道となる。

 だが、安倍晋三が検察官の政治的中立性よりも検察官の「豊富な知識・経験等の最大限の活用」を重要視していることは検察庁法改正案は検察庁法とは逆の方向を目指していることになる。

 「今般の法改正に於いては検察官の勤務延長に当たっての要件となる事由を事前に明確化することとしており、自らの疑惑隠しのために改正を行おうとしているといったご指摘は全く当たりません」
 「事由」は改正案そのものには「明確化」されていない。そしていくら後付で明確化しようとも、内閣が検察の人事を握る“検察人事・内閣主導”の体制に持っていく以上、検察官の政治的中立性に影響を与えない保証はない。

 安倍晋三は「自らの疑惑隠しのために改正を行おうとしているといったご指摘は全く当たりません」と言っているが、「森友・加計・桜を見る会に関わる不正疑惑の指摘は全く当たりません」とは言っていない。

 つまり疑惑を事実と見て、それを隠すための法改正ではないと断わっている。でなければ、「私に掛けられている疑惑は全て事実無根で、それを隠すための法改正など必要のないことで、改正はあくまでも高齢期の検察職員の豊富な知識・経験等を最大限に活用する点などにあります」と答弁するはずである。
 「asahi.com」記事に誘導されて知ることになったのだが、森友学園の安倍晋三に掛けられた忖度疑惑が事実なのは、「森友学園案件に係る不動産鑑定等に関する調査報告書(概要版)」(大阪府不動産鑑定士協会/2020年5月14日)の次のような記事内容が証明することになる。

 〈本件の各鑑定評価書等に共通するのは、 何れも意図的とは断定できないが、依頼者側の意向に沿うかたちで鑑定評価書等が作成され、結果として各成果品が依頼者に都合良く利用され、あるいは利用される恐れがあったという現実である。

 それは、とりもなおさず、国有財産の賃貸、処分の場面においては国民の利益に反し、大阪府私立学校審議会への提出の場面においては、私立学校の経営に必要な財産の価格の把握を誤らせることになり、不動産鑑定評価制度に対する国民・府民からの信頼を毀損する結果に繋がるものと言わざるを得ない。不動産鑑定士が作成する鑑定評価書等は、眼前の依頼者や利用者を満足させるだけではなく、社会からも合理的であるとの評価を受けるものでなければならない。
 当然のことながら、不動産鑑定士が意図的に依頼者に迎合し、不当な鑑定評価等を行うことは論外である。しかし、本件では、不動産鑑定士に悪意がないとしても、悪意ある依頼者又は不動産鑑定制度の趣旨や価格等調査業務を正確に理解せず、あるいは十分に理解しない依頼者が不動産鑑定士の作成した成果品の都合のよい部分のみを利用しようとすることに対し、不動産鑑定士があまりにも無防備または慎重さを欠いていることが明らかになった。

 今回の国有地売却を巡って表面化した不動産鑑定上の問題に関しては、個々の不動産鑑定士の問題あるいは近畿財務局や森友学園という依頼者側の特異性に起因すると捉えるのではなく、不動産鑑定士が社会から求められている専門性や責務について改めて問い直し、鑑定評価制度の土台となる社会的信頼を維持・ 向上させる契機として活かしていくべきと考える。そのような観点から、今般の調査において、当委員会が検討した今後の方策または検討課題を次のとおり提言する。〉――
 〈会計検査院報告書81ページによれば、B不動産鑑定士は、依頼者が提示した地下埋設物撤去・処分概算額には依頼者側の推測に基づくものが含まれ、調査方法が不動産鑑定評価においては不適当であったことなどから、「他の専門家が行った調査結果等」としては活用できなかったという。つまり、不動産鑑定士から見て上記概算額は信用性に欠けるということである。

 そうであったなら、依頼者の要望により意見価額を記載するとしても、専門家である不動産鑑定士が作成する鑑定評価書の信頼性を確保するため、地下埋設物撤去・処分概算額は依頼者が提示したものであるとするだけではなく、不動産鑑定士として認識した内容(信用性に欠ける部分がある旨)も明記すべきであったと考えられる。〉――

 森友学園理事長籠池泰典は国有地を格安で財務省から買い受けるために安倍昭恵の総理大臣夫人の肩書を利用し、財務省は安倍昭恵の背後にいる首相たる安倍晋三を忖度して、不動産鑑定評価額9億3200万円の国有地を鑑定依頼者たる財務省が提示した「推測に基づく」地下埋設物撤去・処分概算額約8億1900万円を差し引いて、約1億3400万円で売却を受けることになった。

 安倍晋三が「30年来の腹心の友」と言って憚らない加計学園理事長加計孝太郎と安倍晋三が首相官邸で2015年2月25日に15分程度の面談を行い、獣医学部新設について話し合ったことが愛媛県文書の1枚に書いてある事実を安倍晋三はマスコミが伝えている「首相動静」を用いて、「どこにも記載されていない。面談の事実はない」と否定、加計学園獣医学部認可自体への自身の政治的便宜付与の疑惑そのものを否定しているが、首相官邸正面エントランスホールで待ち構えている記者の前を通り抜けずに首相執務室に行く通路があって、そこを通った場合はマスコミの「首相動静」に記載されないということを幾つかのマスコミが伝えている。
 それを知らないはずのない安倍晋三が全ての面会者を把握できるわけではない「首相動静」に加計孝太郎との面会の記載がないことを利用して加計学園獣医学部認可自体への自身の政治的便宜付与の疑惑を否定することは疑惑の事実を自らが証明していることになる。

 このように首相である安倍晋三自身が不正疑惑の渦中にある。もし改正案が国会を通過すれば、検察官の人事を内閣が主導することになり、安倍晋三が在任中は数々の不正疑惑の渦中にあるにも関わらず、必要に応じて検察官人事に手を付けることも可能となる。

 その必要に応じてが「疑惑隠し」どころではなく、検察官の政治的中立性を蔑ろにする「疑惑潰し」に利用されない保証はない。

 検察庁法改正を含めた国家公務員法等改正案に賛成するなら、閣僚が一人でも不正疑惑の渦中にある場合は、ましてや閣僚のトップたる首相がそのような状況に置かれているとしたら、なおさらのこと、検察の人事に関与することを不可とする条件を付けなければならない。

 安倍晋三は5月15日夜、ジャーナリストの桜井よしこのインターネット番組に出演、東京高検検事長の黒川弘務の定年延長を閣議決定したのは、黒川弘務が安倍政権に近いからだとの見方を否定して、「私自身、黒川氏と2人で会ったことはないし、個人的な話をしたことも全くない。大変驚いている」と話したと2020年5月15日付「東京新聞」が伝えているが、例え会ったことがなくても、個人的な話をしたことがなくても、第三者を通した忠誠心の間接的確立は不可能ではない。その第一歩が黒川弘務の定年延長の閣議決定ということもあり得る。

 閣議決定に対して大いに感激して涙あられ、安倍晋三センセイの方に足を向けて寝ることはできない、命に代えてでもお守りするといった決意はマンガの世界だけのことではないはずだ。
 検察官の政治的中立性を第一義としなければならない。第一義とするためには検察官人事から閣僚や国会議員を距離を置くように仕向けなければならない。検察官が従来どおりに定年を迎えることになったとしても、その「豊富な知識・経験」は後に続く検察官が前々から引き継ぎ、少しずつ積み重ねていき、超えていかなければならない「知識・経験」であって、後輩検察官が少なくとも遜色のない「知識・経験」にまで到達できなかったなら、先輩検察官は後輩を育てなかったという謗りを受ける。後輩を満足に育てることができなかった「豊富な知識・経験」は定年延長で居残ったとしても、大した財産とはならない。

 要するに検察人事における第一要件はあくまでも検察官の政治的中立性であって、「高齢期の職員の豊富な知識・経験等の最大限の活用」ではないということである。

 新型コロナウイルス緊急事態宣言39県解除の「除記者会見」でも、「検察庁法の改正法案は、高齢期の職員の豊富な知識や経験等を最大限に活用する観点から、一般職の国家公務員の定年を引き上げること等に合わせて、検察官についても同様の制度を導入するものであります。
 そして、そもそも検察官は行政官であります。行政官でございますから、三権分立ということにおいては正に行政、言わば強い独立性を持っておりますが、行政官であることは間違いないのだろうと思います」と発言しているが、その発言全てが以上当記事に書いてきたように心得違いから発している。

 この心得違いは疑惑の渦中にあることから、検察官の政治的中立性どころではない「疑惑潰し」が頭にあって、その中立性を忘却していることから発している産物なのだろう。でなければ、検察官の政治的中立性を第一要件としない検察庁法の改正案など発想するはずはない。

 ◇元検事総長ら 検察庁法改正案に反対の意見書提出 極めて異例(NHK NEWS WEB/020年5月15日 19時31分)
検察官の定年延長を可能にする検察庁法の改正案について、ロッキード事件の捜査を担当した松尾邦弘元検事総長ら、検察OBの有志14人が「検察の人事に政治権力が介入することを正当化するものだ」として、反対する意見書を15日、法務省に提出しました。検察トップの検事総長経験者が、法務省が提出する法案を公の場で批判するのは極めて異例です。
検察庁法の改正案に反対する意見書を提出したのは、松尾邦弘元検事総長など、ロッキード事件などの捜査を担当した検察OBの有志14人です。

検察庁法の改正案は、内閣や法務大臣が認めれば検察幹部らの定年延長を最長3年まで可能にするもので、意見書では「改正案は、検察の人事に政治権力が介入することを正当化するもので、政権側に人事権を握られ、公訴権の行使まで制約を受けるようになれば、検察は国民の信託に応えられない」としています。

 (「公訴権」公訴を提起し裁判を求める検察官の権能。「公訴」刑事事件について、検察官が裁判所に起訴状を提出して裁判を求めること)

そのうえで「田中角栄元総理大臣らを逮捕したロッキード世代として、検察を、時の政権の意のままに動く組織に改変させようとする動きは看過できず、定年延長を認める規定の撤回を期待する」と訴えています。

松尾氏は会見で「定年延長は、今までの人事の流れを大きく変化させる懸念がある。検察官にいちばん大事なのは自主・独立だ」と述べました。

松尾氏は平成16年から2年間、検察トップの検事総長を務め、ライブドア事件や日本歯科医師会をめぐる1億円不正献金事件などの捜査を指揮しました。

検事総長経験者が、法務省が提出する法案について公の場で反対意見を表明するのは極めて異例です。
検察庁法の改正案とは
改正案は、すべての検察官の定年を段階的に63歳から65歳に引き上げるとともに、「役職定年制」と同様の趣旨の制度を導入し、検事正や検事長などの幹部は原則63歳で、そのポストから退くことが定められています。

しかし特例規定として内閣や法務大臣が「公務の運営に著しい支障が出る」と認めれば、個別の幹部の役職定年や定年を最長3年まで延長できるとしています。

このため内閣の判断で定年が65歳の検事総長は最長で68歳まで、役職定年が63歳の検事長は最長で66歳までそのポストにとどまることができるのです。
論点1「政権の人事介入への懸念」
論点の1つは、検察人事への政治介入の懸念です。

検察庁は法務省に属する行政機関で、検察官の人事権は内閣や法務大臣にあります。

一方、検察は捜査や裁判で権力の不正をチェックする役割も担い、政治からの中立性や独立性が求められるため、実際には検察側が作成した人事案を内閣や大臣が追認することが「慣例」となってきました。

 (検察の人事は検察に任せる。“検察人事主体論”)

日弁連=日本弁護士連合会などは、内閣や大臣の判断で個別の検察幹部の定年延長が可能になれば、検察官の政治的中立性を脅かし、捜査を萎縮させるおそれが強いなどと指摘しています。
論点2「“個別の定年延長制度” 導入の経緯」
個別の検察幹部らの定年延長を可能にする特例規定が改正案に盛り込まれた経緯も論点です。

法務省が去年10月末の時点で検討していた当初の改正案では「公務の運営に著しい支障が生じることは考えがたい」などとして、個別に検察幹部の定年延長を認める規定は必要ないとしていました。

しかし、ことし1月、政府が従来の法解釈を変更し、東京高等検察庁の黒川検事長の定年延長を閣議決定しました。

個別の検察幹部の定年延長の特例規定は、ことしになって改正案に盛り込まれていて、有志の弁護士の団体などは「法解釈の変更による黒川検事長の違法・不当な定年延長を法改正によって後付けで正当化するものだ」としています。
論点3「定年延長を判断する基準」
また、内閣の判断で検察官の定年を延長する場合の判断基準が示されていないことも論点になっています。

元検察幹部は「恣意的(しいてき)な人事の運用ができないよう基準をできるかぎり細かく、具体的に定めることが必要だ」と指摘しています。
現職の検察幹部 さまざまな意見
検察官の定年延長を可能にする検察庁法の改正案について、現職の検察幹部からは、さまざまな意見が出ています。

NHKの取材に対し、現職の検察幹部の1人は「検察幹部が定年を超えても政府の判断で、そのポストにとどまることができるようになれば、政権の検察への介入を許すのではないかという批判は受け止めるべきだ。検察は巨大な権力を持つ組織で個別の定年延長を認めないことが、検事総長や検事長への過度な権力集中を防ぐ抑止効果にもなっていたと思う。新型コロナウイルスの影響が広がる中、急いで審議を進める話ではないのではないか」と話しています。

また、個別の検察官の定年延長を可能にする特例規定が、去年10月末の時点で法務省が検討していた当初の改正案に盛り込まれていなかったことについて、別の幹部の1人は「昨年の秋に法務省が必要ないとしていた規定を、なぜ黒川検事長の定年を延長した後に加えたのか説明すべきだ」と指摘しています。

一方、別の現職の幹部の1人は「今回の法改正で、政権が人事を通じて検察に介入しやくなるという危惧はよく分かるが、検察は常に正義とは限らず、暴走するおそれもある。検察をどのように民主的にコントロールしていくかという視点も必要だ」と話していました。

また検察幹部の1人は「検察の独立性という問題があることは理解できるが、定年延長を使って事件に介入しようとする政治家が、本当に出てくるとはあまり思えない」と話していました。
元東京地検特捜部検事「国民の信頼を揺るがすおそれ」
元東京地検特捜部検事でリクルート事件などを担当した高井康行弁護士は、今回の検察庁法改正案について「政治と検察の制度的なバランスを変える意味があり、国民の検察の独立性への信頼を揺るがすおそれがある」と指摘しています。

高井弁護士は、これまでの検察官の人事は、検察庁法に規定されている懲戒などを除いて罷免されないという「身分保障」と、定年が来れば一律に必ず退官するという「定年制」が政権の介入を防ぎ、2つの制度は検察の独立性を守る「防波堤」の役割を果たしていたと指摘しています。

このため、内閣や大臣の判断で個別の検察幹部の定年延長が可能になる今回の改正案については「一律の定年制という独立性を担保する制度の1つがなくなることになる。政治と検察の制度的なバランスを変える意味があり、検察の独立性についての国民の信頼を揺るがすおそれがある」と話しています。

また、内閣が個別の検察幹部の定年を延長する場合の判断基準が、現時点で示されていないことについては「恣意的な運用ができないような制度的な歯止めが必要で、基準をできるかぎり細かく具体的に定めることが必要だ」と指摘しています。

コメント
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安倍晋三の法を以って決めたことは法を以って変更すべきを法に拠らずに私利を以って決めた陰謀もどきの黒川検事長定年延長閣議決定

2020-05-11 12:36:18 | 政治
 安倍内閣は、と言うよりは、その身内贔屓の性向から言って、安倍晋三自身の何らかの私利を目的とした意向に基づいてのことに違いない、2020年2月7日退官予定だった、首相官邸に近いとされる検察ナンバー2の東京高等検察庁検事長黒川弘務(63歳)の定年を半年伸ばす閣議決定を2020年1月31日に行った。

 1947年施行の検察庁法22条「検事総長は、年齢が65年に達した時に、その他の検察官は年齢が63年に達した時に退官する」

 法を以って決めたことは法を以って変更すべきを法に拠らずに内閣の長である安倍晋三の意向で左右することも可能な閣議で決めた。マスコミは検事総長に就任させる布石とも見られていると報じているが、無理はない。黒川弘務が検事総長に就任したなら、森友・加計疑惑、「桜を見る会」の公職選挙法及び政治資金規正法違反疑惑等々で訴えられたとしても、安倍晋三の私利を受けた黒川弘務の私利を以って裁判に応えることも不可能ではない。

 この2020年1月31日閣議決定に対して当時立憲民主党所属の山尾志桜里が2020年2月10日の衆議院予算委員会で早速取り上げた。

 山尾志桜里「私の手元にありますけれども、昭和56年4月18日、衆議院内閣委員会、これは当時民社党の神田厚さんという議員がこういうふうに聞いています。『定年制の導入は当然指定職にある職員にも適用されることになるのかどうか。たとえば一般職にありましては検事総長その他の検察官』、『これらについてはどういうふうにお考えになりますか』と聞いています。それに対して、斧政府委員、これは人事院の事務総局の方です。『検察官と大学教官につきましては、現在すでに定年が定められております』、『今回の定年制は適用されないことになっております』。こういうふうにもう答弁していますよ、定年制は適用されないと、この国家公務員法の。

 適用できないんじゃありませんか」

 対して法相の森まさこは次のように答弁している。

 森まさこ「ですから、先程から答弁しておりますとおり、定年制の特例が年齢と退職時期の二点、これについて特例を定めたものと理解しております」

 「先程から答弁しております」と言っていることは少し前に「昭和56年の国家公務員の(勤務延長の特例を含む定年制を導入した)法改正が60年に施行されておりますので、そのときに、(勤務延長の)制度が入ったときに勤務延長の制度が検察官にも適用されるようになったと理解しております」と答弁したことを指す。

 国家公務員法第81条の3「任命権者は、定年に達した職員が前条第一項の規定により退職すべきこととなる場合において、その職員の職務の特殊性又はその職員の職務の遂行上の特別の事情からみてその退職により公務の運営に著しい支障が生ずると認められる十分な理由があるときは、同項の規定にかかわらず、その職員に係る定年退職日の翌日から起算して一年を超えない範囲内で期限を定め、その職員を当該職務に従事させるため引き続いて勤務させることができる。
 2 任命権者は、前項の期限又はこの項の規定により延長された期限が到来する場合において、前項の事由が引き続き存すると認められる十分な理由があるときは、人事院の承認を得て、1年を超えない範囲内で期限を延長することができる。ただし、その期限は、その職員に係る定年退職日の翌日から起算して3年を超えることができない」等々定年延長を特例として定めていて、その上、定年退職者の再任用をも認める別の条項を設けている。

 但し森まさこが昭和60年生率の国家公務員法の改正による勤務延長の特例を含む定年制導入と同時に「勤務延長の制度が検察官にも適用されるようになった」と言っていることが正しいとすると、国家公務員法と検察庁法は連動した法律ということになる。

 だから、検察庁法で勤務延長についての法改正の手続きを踏まなくても、国家公務員法でその手続を取りさえすれば、事足りたということにすることができる。

 山尾志桜里が昭和56年4月18日の衆議院内閣委員会での斧政府委員の答弁を紹介しているが、当該委員会では内閣提出の国家公務員法の一部を改正する法律案の審議を行っていた。その答弁箇所の全文を「国会会議録」から引用して載せておく。

 斧誠之助(人事院事務総局任用局長)「検察官と大学教官につきましては、現在既に定年が定められております。今回の法案では、別に法律で定められておる者を除き、こういうことになっておりますので、今回の定年制は適用されないことになっております」

 改正国家公務員法では「別に法律で定められておる者を除いている」、つまり国家公務員法と検察庁法は別建ての法律として扱っている。だが、森まさこは国家公務員法の改正当時から国家公務員法と検察庁法を連動した法律として扱っている。

 大体が国家公務員法の改正による勤務延長の特例を含む定年制導入と同時に「勤務延長の制度が検察官にも適用されるようになった」と国家公務員法と検察庁法を連動させて、検察庁法に勤務延長の特例に関わる条文を書き込む法改正を行わなくても、勤務延長の特例に関しては国家公務員法を規準にすれば事足りるとすること自体に無理がある。

 国家公務員法と検察庁法はあくまでも別建ての法律である。だが、安倍晋三以下、安倍内閣の面々は検察官と言えども一般職の国家公務員であるからと、国家公務員法の適用範囲内の扱いとして、検察官の定年延長を押し通そうとしている。

 それが同2020年2月10日衆議院予算委員会での森まさこの対山尾志桜里答弁となって現れている。

 森まさこ「検察庁法22条には、定年制を定める旨、そして定年の年齢と退職時期の二点について特例として定めたと理解をしております。

 そして、32条の2だったと思いますが、ちょっと条文の数字が間違っていたら申しわけございませんが、そちらの方に国家公務員法と検察庁法の関係が書いてあるんですけれども、もし(検察庁法に)勤務延長を規定しないということであるならば、そちらの方(検察庁法)に記載がされるべきだと思いますが、記載をされていないこと、そして、検察官が一般職の国家公務員であることから、特例が定められている以外については国家公務員法が適用されると理解しております」

 検察庁法の第22条を改めて記載する。「検事総長は、年齢が65年に達した時に、その他の検察官は年齢が63に達した時に退官する」

 但し検察庁法に勤務延長の規定がないということなら、検察庁法に記載がされるべきだが、検察庁法の32条の2によって検察庁法で「検事総長は、年齢が65年に達した時」に退官と「その他の検察官は年齢が63に達した時」に退官の「特例が定められている以外については国家公務員法が適用されると理解している」と、検察庁法の32条の2を根拠にあくまでも別建てであるはずの国家公務員法と検察庁法を連動させて、国家公務員法で検察官の勤務延長を図るべきだとしている。

 つまり国家公務員法の力で検察庁法第22条の「検事総長は、年齢が65年に達した時に、その他の検察官は年齢が63に達した時に退官する」の「特例」の時と場合の無効を認めていることになる。「特例が定められている以外については」の「以外」とは65歳と63歳の定年以外の勤務延長や再任用の規定についてはという意味となるから、検察庁法第22条のなし崩しの規定以外の何ものでもない。

 一つの法律の条文を別の法律の条文で操作する。この無理筋は安倍晋三及び安倍内閣にとっては無理筋でも何でもない、常識とすることのできる流儀を持ち前としているらしい。

 では、森まさこが検察官の定年延長の正当性根拠として掲げた検察庁法の32条の2を見てみる。
 検察庁法32条の2「この法律第15条、第18条乃至第20条及び第22条乃至第25条の規定は、国家公務員法(昭和22年法律第120号)附則第13条の規定により、検察官の職務と責任の特殊性に基いて、同法(注・国家公務員法のこと)の特例を定めたものとする」・・・・・

 要するに検察庁法第15条、第18条乃至第20条及び第22条乃至第25条は「検察官の職務と責任の特殊性に基いて」国家公務員法の「特例を定めたものとする」

 検察庁法第15条は検察官の任免について、第18条は二級検察官の任命及び叙級等について、第20条は任命不可対象者について、第22条は例の「検事総長は、年齢が65年に達した時に、その他の検察官は年齢が63年に達した時に退官する」の検察官の定年について、第25条は「第15条」と「第18条乃至第20条」と「第22条乃至第25条」の「前3条の場合を除いては、その意思に反して、その官を失い、職務を停止され、又は俸給を減額されることはない。但し、懲戒処分による場合は、この限りでない」と検察官の身分保障を謳っている。

 これらのことが「国家公務員法附則第13条の規定」によって一般法である国家公務員法の「特例を定めたもの」としている。つまり別建てとしている。

 国家公務員法附則第13條「一般職に属する職員に関し、その職務と責任の特殊性に基いて、この法律の特例を要する場合においては、別に法律又は人事院規則(人事院の所掌する事項以外の事項については、政令)を以て、これを規定することができる。但し、その特例は、この法律第一条の精神に反するものであつてはならない」・・・・

 「その職務と責任の特殊性に基いて、この法律の特例を要する場合においては、別に法律又は人事院規則(人事院の所掌する事項以外の事項については、政令)を以て、これを規定することができる」云々と「別に規定することができる」「法律」とは検察官の規定に関しては検察庁法を指しているのであって、検察庁法が国家公務員法とは“別に規定”した「法律」である以上、国家公務員法の適用範囲外であることと同時に両法律が別建てであることの証明そのものとなっている。

 この日の衆議院予算委員会に人事院給与局長である松尾恵美子は政府参考人として出席していなかったが、2日後の2020年2月12日の衆議院予算委員会に出席、2月10日の衆議院予算委員会で森まさこが山尾志桜里に「検察官が一般職の国家公務員であることから、特例が定められている以外については国家公務員法が適用されると理解しております」と答弁したことについて松尾恵美子に尋ねている。

 松尾恵美子「お答え申し上げます。

 人事院といたしましては、国家公務員法に定年制を導入した際は、議員御指摘の昭和56年4月28日の答弁のとおり、検察官については、国家公務員法の勤務延長を含む定年制は検察庁法により適用除外されていると理解していたものと認識をしております」

 要するに昭和56年に当時人事院事務総局任用局長であった斧誠之助と同じ趣旨の答弁をしている。

 後藤祐一は「やはり山尾(志桜里)さんの言っていることの方が正しいことが明確になりました」と喜んでいるが、2013年作成の「任用実務のてびき」なるものを持ち出して、「検察官については、国公法の定める定年制度の適用が除外されていると書いてある」、「それでよろしいか」などとさらに松尾恵美子に質問すると、喜んだことがいっときの糠喜びとなる。

 松尾恵美子「お答え申し上げます。

 先ほど御答弁したとおり、制定当時に際してはそういう解釈でございまして、現在までも、特にそれについて議論はございませんでしたので、同じ解釈を引き継いでいるところでございますが、他方、検察官も一般職の国家公務員でございますので、検察庁法に定められている特例以外については一般法たる国家公務員法が適用されるという関係にございます。

 従いまして、国家公務員法と検察庁法の適用関係は、検察庁法に定められている特例の解釈にかかわることでございまして、法務省において適切に整理されるべきものというふうに考えております」

 松尾恵美子が、「検察官も一般職の国家公務員だから、検察庁法に定められている特例以外については一般法たる国家公務員法が適用されるという関係にございます」と言っていることは、検察官に関しては国家公務員法の定年制は適用されないとする規定は当時のまま同じ解釈を引き継いでいるが、「検察官も一般職の国家公務員だから、検察庁法に定められている」、「検事総長65歳、他の他の検察官は63歳」の定年退官等の「特例以外」の勤務延長とか、再任用とかの規定は「一般法たる国家公務員法が適用されるという関係にある」と、連携プレーなのだろう、森まさこが山尾志桜里にしたのとそっくり同じ趣旨の答弁を返している。

 当然、「検察官も一般職の国家公務員だから」との根拠を基に国家公務員法の勤務延長とか、再任用とかの規定を検察庁法に適用した場合、「検事総長65歳、他の他の検察官は63歳」の定年退官等の特例規定は、安倍晋三が定年延長に持ち込みたい検事に限って言うと、有名無実化、無いに等しくすることができる。

 安倍晋三はこのことを狙っていた?

 安倍晋三の狙い通りにしないためには、「検察官も一般職の国家公務員だから、検察庁法に定められている特例以外については一般法たる国家公務員法が適用されるという関係にある」とする、事実を言葉の使いようで誤魔化す陰謀もどきの論理を、誰もが納得できる言葉で論破して、その非正当性を暴かなければならない。

 安倍晋三は2020年2月13日の衆院本会議で立憲民主党議員高井崇志の質問に答えて、同じ論理を披露している。

 安倍晋三「黒川東京高検検事長の任務延長等についてお尋ねがありました。先ず幹部公務員の人事については内閣府人事局による一元管理のもと、常に適材適所で行っており、内閣人事局制度を悪用し、恣意的人事を行ってきたとのご指摘は、全く当たりません(質問者の方を向いて、「全く当たりません」と言葉を強め、ゆっくりと言う)。

 検察官については昭和56年当時、国家公務員の定年制は検察庁法により適用除外されていると理解していたものと承知を致しております。他方、検察官の一般職も国家公務員であるため、今般、検察庁法に定められている特例以外については一般法たる国家の公務員法が、国家公務員法が適用されるという関係にあり、検察官の勤務延長については国家公務員法の規定が適用されると解釈されるとしたところです。

 ご指摘の黒川高等検事長の勤務延長については検察庁の業務遂行上の必要性につき、検察庁を所管する法務大臣からの閣議請議により閣議決定されたものであり、何ら問題はないものと考えております」

 だが、既に触れたように検察庁法第32条の2は「この法律第15条、第18条乃至第20条及び第22条乃至第25条の規定は、国家公務員法(昭和22年法律第120号)附則第13条の規定により、検察官の職務と責任の特殊性に基いて、同法(注・国家公務員法のこと)の特例を定めたものとする」との条文によって検察庁法と国家公務員法とは別建ての関係にあることを示している。別建てとはそれぞれの法律は独立した関係にあるということである。

 但し「検察官も一般職の国家公務員」という立場上、検察官の任用に関して「特例を要する場合」はあくまでも国家公務員法とは「別に法律又は人事院規則(人事院の所掌する事項以外の事項については、政令)を以て、これを規定」しなければならないと、國家公務員法附則第13条は國家公務員法とは別建てであることを求めている。

 当然、黒川高等検事長の勤務延長は、検察庁の業務遂行上の必要性がどれ程に切迫していたとしても、検察庁法を改正するか、人事院規則を改正するかして、それが強行採決であったとしても一応の正当性を持たせて決めなければならないところを、安倍晋三が言っているように「検察庁を所管する法務大臣からの閣議請議により閣議決定された」とすることは法律というものの建て方から言っても、隠れてするような姑息な、陰謀もどきの非合法な定年延長そのものであろう。

 ところが、2020年2月7日に定年を迎える黒川弘務東京高検検事長を定年となる2月7日から7日を遡る2020年1月31日に滑り込みセーフの形で閣議決定という非合法な方法で、その定年延長を今年8月7日までと決めた。

 安倍政権が国家公務員の定年を段階的に65歳へ引き上げる国家公務員法や検察庁法などの改正案を閣議決定したのは2020年3月13日。これらの改正案の委員会審議が与党が強行する形で開始されたのは2020年5月8日。前以っての閣議決定は法律が成立するまでの繋ぎだったのだろう。

 但し安倍自民党一強体制から言ったら、黒川弘務が定年となる63歳を迎える前に強行採決という手を用いさえすれば、法律を成立させる力を十分に持っていたにも関わらず、そうはせずに閣議決定というワンステップを間に置いたのは、、63歳を迎えたあとに法律に取り掛かかることにした方が問題が大きくせずに済み、騒がれることも少ないと見たからかもしれない。

 この見方がゲスの勘ぐりだとしても、閣議決定が陰謀もどきの非合法な定年延長であることに変わりはない。

 検察官は公益の代表者であって、安倍晋三や安倍内閣の利益代表者ではない。だが、安倍晋三が黒川弘務定年延長に何らかの私利を見ていなければ、非合法な閣議決定で定年延長を認めるような強引なことはしない。

 マスコミが報じているように検事総長に就任させる布石であり、森友・加計疑惑、「桜を見る会」の公職選挙法及び政治資金規正法違反疑惑等々で訴えられた場合でも、安倍晋三の私利を受けて就任することになった検事総長黒川弘務が自らの私利を以って裁判に手心を加える計算からの一連の非合法な陰謀もどきの手続きであることの可能性は否定できない。
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安倍晋三の一世帯2枚布マスク配布の不透明な業者選定は政治的利益供与か 家庭の自助努力で解決可能を考えない壮大なムダ遣い

2020-05-04 12:32:55 | Weblog
 《新型コロナウイルス感染症対策本部(第25回)》(首相官邸サイト/2020年4月1日)

 安倍晋三センセイがこの会議の感染症専門家の議論を踏まえて、不足しているマスクに関して次のように述べたことが記述されている。
  
 安倍晋三「マスクについては、政府として生産設備への投資を支援するなど取組を進めてきた結果、電機メーカーのシャープがマスク生産を開始するなど、先月は通常の需要を上回る月6億枚を超える供給を行ったところです。更なる増産を支援し、月7億枚を超える供給を確保する見込みです。

 他方、新型コロナウイルス感染症に伴う急激な需要の増加によって、依然として店頭では品薄の状態が続いており、国民の皆様には大変御不便をお掛けしております。全国の医療機関に対しては、先月中に1,500万枚のサージカルマスクを配布いたしました。さらに、来週には追加で1,500万枚を配布する予定です。加えて、高齢者施設、障害者施設、全国の小学校・中学校向けには布マスクを確保し、順次必要な枚数を配布してまいります。

 本日は私も着けておりますが、この布マスクは使い捨てではなく、洗剤を使って洗うことで再利用可能であることから、急激に拡大しているマスク需要に対応する上で極めて有効であると考えております。

 そして来月にかけて、更に1億枚を確保するめどが立ったことから、来週決定する緊急経済対策に、この布マスクの買上げを盛り込むこととし、全国で5,000万余りの世帯全てを対象に、日本郵政の全住所配布のシステムを活用し、一住所あたり2枚ずつ配布することといたします。

 補正予算成立前にあっても、予備費の活用などにより、再来週以降、感染者数が多い都道府県から、順次、配布を開始する予定です。

 世帯においては必ずしも十分な量ではなく、また、洗濯などの御不便をお掛けしますが、店頭でのマスク品薄が続く現状を踏まえ、国民の皆様の不安解消に少しでも資するよう、速やかに取り組んでまいりたいと考えております。

 政府においては、国民の皆様の命と健康を守るため、引き続き、各種対策に全力で取り組んでまいりますので、国民の皆様におかれましても、御協力を何とぞよろしくお願いいたします」

 全国の医療機関に対して3000万枚のサージカルマスクを配布した上で高齢者施設、障害者施設、全国の小学校・中学校に必要枚数を順次配布、さらに「全国で5,000万余りの世帯全てを対象に、日本郵政の全住所配布のシステムを活用し、一住所あたり2枚ずつ配布する」

 そして、「この布マスクは使い捨てではなく、洗剤を使って洗うことで再利用可能であることから、急激に拡大しているマスク需要に対応する上で極めて有効であると考えております」とその有効性を請けあっている。

 2020年4月7日、政府は2020年度補正予算案を閣議決定。全世帯布マスク2枚配布に233億円計上。2020年度当初予算の予備費からも233億円を充当させることも決定。合計466億円の経費とした。

 社民党・福島瑞穂が2020年4月10日、厚生労働省マスク班に発注先と契約内容を質問、4月21日に同省よりFAXで回答があった。このことを伝えている2020年4月21日付 「日刊ゲンダイ」記事から見てみる。

 企業名と契約金額
 興和株式会社 約54.8億円
 伊藤忠商事 約28.5億円
 株式会社マツオカコーポレーション 約7.6億円

 合計90.9億円。

 予算466億円に対する90.9億円の契約金額。差額375.1億円。

 厚生労働省マスク班から次のような回答が添えてあったという。

 〈マスク枚数を開示した場合、契約金額との関係で、マスクの単価を計算できることとなり、今後の布マスクの調達や企業活動への影響(他の取引先との関係)を及ぼすおそれがあるため、回答は差し控えさせていただきます。〉

 〈ご回答が遅れましたこと、深くお詫び申し上げます〉

 記事。〈厚労省マスク班の回答に対し福島議員は、「466億円との差がありすぎます。いったいどういうことなのか。4社といっていたのに3社しか出てきておらず、大きな部分がわかりません。公共調達ルールで93日以内に明らかにしなければならないのだから早く言ってくれればいいのに。差額分は追及していく」と話した。〉・・・・・・

 各世帯、高齢施設等への各施設への配達を請け負う日本郵政の受注額は26億円だそうで、契約金額90.9億円+26億円=116.9億円。予算466億円との差額が349.1億円。

 この差額の不可解さだけではなく、福島瑞穂の4月10日の質問に対する厚生労働省マスク班の4月21日のFAX回答が10日も要していることと、「4社といっていたのに3社しか出てき」いない事実も不可解の一語に尽きる。ごく短時間の単なる事務処理で済ますことができたはずだし、国会議員に対して平身低頭の役人にしては日数がかかりすぎている。

 野党議員に対しては面従腹背の平身低頭であることを考慮したとしても、回答日数の不可解さは消えないし、受注企業が4社なのか、3社なのか、事実不明な点も疑惑を掻き立てる。

 4月17日から全戸配布が始まり、配布済みの妊婦向けの布マスクから虫や髪の毛の混入、カビの付着や縫製ミス等がある欠陥品が見つかっただけではなく、そのお粗末さを受けてのことだろう、余程単価を抑えたのか、全世帯用の配布前の確認作業でも欠陥品確認されたと言う。
 
 もし単価を極端に抑えた結果の欠陥品の出現だとしたら、予算との差額も頷くことができることになるが、では、差額はどこに行ってしまったのかの疑惑を付け加えなければならないし、疑惑が一つや二つでないことも、森友・加計、桜を見る会等で安倍晋三が関わった政治上の利益供与疑惑に続く利益供与を連想させることになる。

 この利益供与疑惑を連想してのことだろう、マスコミは安倍晋三が配布を言い出したマスクを「アベノマスク」と言い回すようになった。
 
 2020年4月27日午前の官房長官菅義偉の記者会見。「毎日新聞」(2020年4月27日 16時13分)

 記者「政府が配布する布マスクについて妊婦用も含めて4社が製造に携わっており、政府はこれまで3社の社名は公表しているが、1社を公表していないのはなぜか」

 菅義偉「現在まで介護施設など向けに2000万枚の布製マスクを納入した事業者は興和、伊藤忠商事、マツオカコーポレーション、ユースビオ、横井定の5社であります。そして妊婦用マスクについては、この介護施設など向けのマスクの一部50万枚を配布したものであります」

 最初は4社と言っていて、3社のみを公表して、1社は非公表としていた。ところが、菅義偉は4社ではなく、公表の3社に加えて、2社を公表、合計5社とした。では、最初は4社としていた姿勢はどのような必要からなのだろうか。4社と言っていながら、3社のみを公表して、1社は非公表とする必要があった。

 ところが野党の追及で、その必要性を引っ込めざるを得なくなって、追いつめられた必要性として4社+1社、合計5社を公表するに至った。最初に公にした4社にとどめておいて、5社目がどこからか漏れた場合、安倍政権自体が持たなくなる恐れがあることから、最初の4社でとどめて置くことができずに全部曝け出す具合に5社目まで公表するに至ったといったところか。

 離婚した女性と付き合うことになった。子どもが一人いるということを聞いていて、最初のデートにその子どもと一緒にやってきた。次のデートで子どもが二人になった。三度目のデートで子どもが三人、四度目のデートで子どもが四人、五度目のデートで五人、「これで最後」と言われたみたいだ。交際する女性がなかなか見つからないような男なら、何もかも認めざるを得なくなる。

 2020年4月28日の衆議院予算委員会で立憲民主党の大串博志がこの「アベノマスク」を取り上げた。大串博志は具体的な言い回しを使ってではなかったが、業者選定の具体的な基準を質した。対して厚労相の加藤勝信も、安倍晋三も、具体的な基準については何ら触れていない。答えることができていたなら、答えていたはずである。答えることができないのは予算と契約金額の差額からも判断できる。

 要するに差額がゼロなら、正々堂々と答えることができる。差額が大き過ぎるから、そこに何らかの秘密があって、答えることができない。何の秘密もなければ、差額は生じない。非常に単純なことである。

 2020年4月28日の衆議院予算委員会

 大串博志「先ず布マスクの問題でございます。今日、私、安倍総理からご提言して全戸配布されている布マスク、着けさせて頂きました。(床に置いた袋からマスクを取り出して)これはあのー、私の事務所にも、私の宿舎にも届きました。2つ来ました。あれっと思いましたけども、この辺もどうかなと思うんですけども、着けさせて頂いて、ちょっとまあ、やっぱしさすがに小さいなっていう感じもしますし、ちょっと横がやっぱりあくなーっていう感じもします。

 それはさておきながらですね、このマスク、先ずは妊婦さん用に配られましたですね。妊婦さん用に配られマスクのうち、約8000枚近くが、不良品、髪の毛が入ったり、ゴミが入ってたり、あるいは黒ずんでいたりということがあったということでございました。

 それは解消されてるってことでございますけど、これに関してちょっとやや経緯が分からないことがありまして、布のマスクを発注して、配布していた業者さんですね、今まで政府の方からは、伊藤忠さん、興和さん、マツオカコーポレーションさん、3社プラス一社だというふうに聞いていました。言ってきました。

 しかしプラス一社が先週からなかなか出てこない。プラス一社、もう一社はどこだったのか、なかなか言えないということでした、それが昨日やっと明らかになっては、福島県にあるユースビオという会社さんだということであります。このユースビオさんという会社は、私の事務所で写真を撮ってきましたけど、福島市、これ昨日の写真です。町の一角のまあちょっとこう横つながりの事業所見たいなところの一部屋ですね、一部屋です。

 白マスク(画像処理)してるところは、あの公明党さんのポスターが貼られてたんですけど、ちょっと出せないってことなんで、消させて頂きました。そういうことで、こういう会社なんですね。非常に不思議に思ったのは、伊藤忠さん、興和さん、マツオカコーポレーションさん、マツオカコーポレーションさんというのはアパレルの大手ですね、どれも極めて大きな規模の大きな会社さんでいらっしゃいます。

 この4社目として福島のユースビオさん。この会社の方とですね、いわゆる随意契約という形で、この妊婦用のマスク、布マスクの発注を受けられたということでいらっしゃいますけども、このユースビオという会社はどういう会社ですか」

 加藤勝信「福島県福島市に本社を持って、輸出入業務を行っている企業であるというふうに承知をしております」

 大串博志「ユースビオさんに発注した布マスクは枚数とか単価は契約の関係で言えないということでしたけども、昨日、事務方の方にお尋ねしたところ、3月24日に契約を結んで、3月中には納入してもらって、契約金額としては5.2兆円であったと、5.2億円であったということで間違いないですか」。

 加藤勝信「このユースビオの関係でですね、この会社とあと輸入の関係の会社と一緒くたの契約になってるそうでありますが、5.2億円ということです」

 大串博志「(契約)時期に関してもご答弁お願いします」

 加藤勝信「3月16日に令和元年度の予備費で契約をした緊急随契ということです」

 大串博志「3月16日に緊急随契で契約したってことですね。あの、これ、どういう会社がというふうにお尋ねしましたところ、今福島県福島市の会社で輸出入業務を行っている会社だと仰っていました。本当ですか。本当ですか」

 加藤勝信「木質ペレット(破砕木材を圧縮成型した固形燃料)の関係の輸出入業を行っていたと聞いております」

 大串博志「この会社がどういう会社でいらっしゃるか、私ももよく分かりません。ですから、きちんと調べさせて頂きました。法務局に行きまして、法人登記見させて頂きました。この会社ユースビオは福島県福島市にあります。会社の定款にある目的、これに関しては再生可能エネルギー生産システムの研究開発及び販売、バイオガス発酵システム研究開発及び販売。ここですね、先程仰ったのは。

 発電・売電に関する事業、ユーグレナ(ミドリムシ)の微細藻類の生産加工及び販売、オリゴ糖の糖質の生産加工及び販売、その他附帯関連する一切の事業。

 これがこの会社の3月に於ける定款の事業なんです。マスクを作る、マスクを輸出入する。定款上、一切ありません。それどころかこの会社は4月に入って、定款変更の届け出をしています。

 4月1日に変更の申出があって、4月10日に登記がなされていますが、追加された内容のところに、4月に入ってからですよ。4月に入ってから追加された内容に不動産の売買賃貸管理と共にですね、貿易及び輸出入代行業並びにそれらの仲介及びコンサルティングっていうのが4月に入ってから定款に入ってるんです。

 つまり3月中はこの会社の目的として輸出入の代行とか、輸出入を行う定款にはなっていなかったんです。そういう会社だということ、つまり知らないで契約したということですか」

 加藤勝信「先程ですね。5.2億円のときに申し上げたんですが、輸出入するもう一つの会社と一緒になって契約額が5.2億円と申し上げた。従って輸出についてはその会社が担っているというふうに聞いております」

 大串博志「もう一つの会社のお名前は何ていう会社でですか。初めて聞きました」

 委員長「そちらの方は質問通告は?」

 加藤勝信「要するにシマトレーディングという会社でありまして、このユースビオはマスクに於ける布の調達、あるいは納品時期等の調整、そして今申し上げたシマトレーディングは、生産・輸出入の担当されていたというふうに承知をしております」

 大串博志「そうすると、四社目がユースビオであったという官房長官の答弁されて、初めて明らかになったことなんですけども、それは正確ではなかった、そういうことですか」

 加藤勝信「ですから、ユースビオが主として納品時期等の調整等を担当しておりまして、ユースビオが、要するにユースビオとグループでありますから、代表的にユースビオということで申し上げているということであります」

 大串博志「今になって新しいことを色々と言われて、極めて不透明な感じがするんですけども、先程ユースビオは布の調達及びその調製に関する業務みたいなことをやっていたというふうに仰いました。よって契約の対象なんだみたいなことを仰いましたけども、それにしてもですね、それにしても、3月にユースビオが定款に会社の目的として書いていた中には布の調達とか、そういったもののコーディネーションではないんですよ。

 そういった会社になぜ布マスクの調達の業務が、しかも随意契約です。随意契約というのはこの会社にやってくれっていうふうに政府の方からお願いして、『急ぐから、あなたしかいないんだ』ということなんです。そのほかの会社は伊藤忠さん、興和さん、そしてマツオカコーポレーションさん。大きな会社です。代表的な会社です。

 だから、政府がそこに目をつけて、お願いっていうのは分かります。実際、伊藤忠さんはプレスリリースの中でしっかり、そこの点は言われていて、政府が調達できなかったから、自分たちはこれは何とかしなきゃいかんと思って、協力したっていうことは書かれていらっしゃいます。

 この伊藤忠さんや興和さんと比べて、ちょっと社の規模としてはこれは資本金1千万だということなんでは、かなり違うここがどういう経緯で、大臣、マスクを政府側から随契で早く納めてくれんと言うふうな対象にどういう経緯で行ったんですか」

 加藤勝信「ユースビオは他の布製のマスクの供給をされてる方含めてですね、これ、政府に於いて広く声がけをして頂きました。これは私どもと経産省が主体になって、これは他もこういうことやっています。(声が小さくなる)それに応えて頂いた事業の、事業社一社ということであります。

 マスクの品質及び価格、企業の供給能力及び迅速な対応が可能であるかという観点から選定を行い、速やかにマスクを配布する必要があるということで随意契約を行ったということでございます。具体的にはユースビオ社から供給可能枚数などの納入計画の内容についてご提案を頂き、当該ご提案に基づき、供給能力や納期についてヒアリングを行い、マスクのサンプルの提出を依頼をし、提出されたサンプルを確認することで品質に支障がないことを確認した上で契約を締結したということでございます」

 大串博志「この会社の名誉のために言っておきますけども、この会社が提供したマスクにに関しては不良品はなかったっていうことは私も知っております。今仰った、他の布製マスクと同時に政府として広く、経産省を主体としてですか、急いで調達できる先を声がけしたその中で上がってきたということなんですか。

 でも、全国このような、いわゆるスタイルの会社であったら、たくさんあると思うんですよ。たくさんある中で伊藤忠さん、興和さん、マツオカコーポレーションさんじゃなくて、なぜここだったのかというところがどうもはっきりしないんですよ。もうちょっと(聞き取れない。「詳しく説明」か)頂きますか。

 こういうルートから、こういう人から、ここがあるよという話だったんで、そこに話を持ってったんだと、これはもう少しはっきり説明して頂かないと、なんせ5億円を超える契約ですから、どういうルートだったんだと、みんな思いますよ。如何ですか」

 加藤勝信「ちょっと委員の質問の趣旨が受け取れているかどうか。いや、ということでありまして、先程申し上げように広く経産省の方から声をかけて頂く中から、じゃあ自分の所がということで声を上げて頂いたっていうことであります。

 いや、まさに私共、早くにマスク、色んなものを調達しなければなりません。従って積極的に手を挙げて頂けるとこがあればですね、そこと先程申し上げた、勿論、品質とか納期とか、色んなものはチェックさせて頂きますけれども、最大限、今確保しなければならない、特に国際的にですね、国際的な中で他国と競争しあっているわけでありますから、そういった中で今申し上げた緊急の必要性があるということで契約を結ばせていただいた。

 そして納品を頂き、そして先程委員のご指摘がありました、妊婦の件については色々指摘ありますけれども、当会社については少なくとも今の段階でですね、不良品等々のご指摘は受けていないということでございます」

 大串博志「すみません、この、あの、総理に配っていただいたマスク、空気が吸いにくいと思ったので代えさせて頂きましが(国配布のマスクから自前のマスクに交換)、あの、私はね、これは実は地元の縫製工場が作ってくださったマスクなんです。私の地元には縫製工場がたくさんありまして、マスクを何かつくり出していらっしゃいます。非常に、私、よくできて、皆さん努力をされてると思います。

 ところが、私の地元の縫製工場で、先程広く経産省を中心に声かけた中で反応して頂いたというふうに言われましたけども、私の所、縫製工場多いんですけれども、声かかった何ていう話、一度も聞いたことありません。余程、恐らく、ここと定めをつけてやられないと、全国でこの、しかも縫製工場持ってらっしゃる雰囲気でもない。余程のルートがないと、こういうところに行き着かないと思うんです。

 だから、普通はね、こういう場合にナーンカ人的な関係?誰かの友達であったとか、何がしかの構造、人的関係があって、こうなったんだなと思いますよ。そこをはっきりさせないと、随意契約ですからね、競争契約じゃないわけですから、ここだと決めて、政府の方が入札をかけないでお願いするわけですから、5億円を。

 やはり相当な説明責任を求められると思いますが、どうですか。妊婦さんが使うマスクでしょ。それに説明責任を果たしていると思われますか」

 加藤勝信「ですから、先程申し上げた質などのサンプルを取り寄せて、チェックをさせて頂いております。結果に於いても先程委員がご指摘を頂いたように当会社の納入したものについては少なくとも現時点でとしか言いようがありませんけれども、特段の問題を指摘をされておりません。それから委員ご指摘のようにですね、徹底的に調べる、あるいは当該、この納入してた実績だけある社、を対象にしていたんでは原価でですね、マスク始め、様々な物、入手できないんですね。

 で、今、異業種にも色々お願いしております。幅広くお願いしています。そして早くできるところを積極的に取りに行く。これが今の我々の姿勢であります。従って今、何か、ちょっと、ちょっと、おかしなちょっと、感じるようなご指摘はありましたけれども、むしろそうではなくて、積極的に手を挙げて頂いてるところ、これに対してはですね、今申し上げた納品の質とか能力とか、時期をしっかり守って頂けるものであれば、積極的に対応していく。これが現下の姿勢であります」

 大串博志「積極的に手を上げられたんであれば、この会社が積極的に手を挙げて、政府内のどこに手を挙げていたんですか」

 加藤勝信「先程申し上げた経産省が経産局を通じてお声かけて頂いた、その中からこの一社、ここまですね、手を挙げて頂いたということであります」

 大串博志「これは申し上げたくないことでありますけど、この会社のこの社長さんは少し前に脱税の容疑で告発されていらっしゃったりされますね。それが品質がどうのってことは言いません。しかしながら、随契で5億円ですよ。契約するためには余程の説明責任を政府は負うと思います。しかも妊婦さんが使われるマスク。やはり皆さんが気持ちよく使って頂くためには、説明責任をきちんと果たさなければならない。

 しかも今回、説明誤魔化してるじゃないですか。先週の段階で三社に加えてあと一社あると、厚労省、ずっと言ったんでしょ。あると言ってた。ところが、昨日の説明なんですか。このユースビオが妊婦さんにも納めてたことがやっと分かったから、これが4社目だと特定できたというふうに言ってた。先週の時点で4社があると言ってたんじゃないですか。

 それを昨日になってやっとユースビオさんが収めていたことが分かったっていうのも、論理的には極めて変な説明。そういうふうなこの説明のおかしさ。これがね、マスクに通底する、布マスクに通底する何となくモヤモヤ感が拭えないんですよ。

 国民一般に対するこのマスクもそうです。安倍総理にお尋ね致します。4月1日に安倍総理、このマスクを国民に一世帯辺り2枚、配布しようというふうに突然言われ出しました。これはどういう背景で、言われ出したんですか。マスコミ報道によると、総理官邸の経産省、官邸官僚からこのマスクを配れば、国民の皆さんの不安をパット解消しますよって言われて、そうだということで決断をされたというようなことが書かれていました。どうやってこれは決断されたんですか」

 安倍晋三「最初はこの布マスクして頂いたんですが、途中から息苦しいっていうことで外されましたが、私とずっとしてるんですが、全然息苦しくはございません。あの、意図的にですね、そういった貶めるような発言はですね、やめて頂きたいと本当に思います。

 そこでですね、マスクについてはですね、2月以降、設備投資補助などにより大幅増産に取り組んできましたが、機械設備の輸入や原料加工など制約もあり、急激な需要の拡大に追いついておらず、残念ながら店頭での品薄状況が長引いているのが現状でもあろうと思います。こうした中でマスクが手に入らず、不安に感じておられる皆さんもおられると認識を致しまして、これまで医療機関へのサージカルマスクの優先的な配布に加えまして、介護施設や小中学校などに、先程は妊婦さんにということでございましたが、実態としてはですね、介護施設、小中学校などに感染防止、拡大防止の観点から布マスクの配布を行ってきました。

 その上でマスクが手に入らず、困っておられる方々がいらっしゃるとの認識のもとですね、国民の皆様に幅広く布マスクの配布をしたところでございます。先程申し上げましたように小中学校、あるいは介護施設等々に送らせて頂きましたが、息苦しいとか、そういう苦情は今まで聞いてはいないということは申し上げおきたいと思います。

 そのマスクはですね、布マスクはですね、咳などによる飛沫の飛散、(大串、席から抗議)いや、いや、これは大切なところですから、飛沫の飛散を防ぐ効果などなど、感染拡大防止に、(抗議)これも経緯の一つでありますから、聞いて頂きたいと思いますが、感染拡大防止に一定の効果があると考えておりまして、米国のCDC(アメリカ疾病予防管理センター)もですね、使用を推奨する旨の発表を行ったほかですね、シンガポール、フランスのパリ、タイ、バンコクなどで市民に配布する動きが広がっていると承知をしております。

 また、洗濯することでですね、繰り返し利用できるため、皆様に選択のご負担をおかけするが、急増しているマスク需要の抑制の観点からも有効と、ちょっと、答弁中でございますから、もう暫くの辛抱を・・・、

 急増しているマスク需要の抑制の観点からも有効と考えているわけでございまして、先日、マスク増産に取り組んでおられるユニチャームの高原社長からもですね、今般配布される布マスクの定着が進むことで全体として現在のマスク需要の拡大状況を凌げるのではないかという話もあったところでございます。

 こうした経緯からですね、今お話をさせて頂いた中に於いて、すみません、ちょっと私が答弁している最中でございますから、そこでですね、今は・・・・

 これは経緯ということを仰っているわけですから、どうしてそういう判断をしたかってっていうことであればですね、どういう需給の状況だったかということについて、あるいはその有効性について説明するのは、これは当然ことではないでしょうか。

 当然のことをご説明しているという中に於いてですね、質問者の方からですね、断たれて、その答弁を遮られては、これは遣り取りにならないのではないのかということは申し上げておきたいと思います。

 今申し上げたようにそういう需給状況があるという中に於いて有効であろうと考えたわけでございます」

 大串博志「時間稼ぎはやめてください。私は4月1日のときになぜ、この1億枚のマスクを配ろうと思ったのか、そんときの判断の経緯を聞いたんです。それを延々ね、全然関係のないこと言われて、いつものことですけど、これはね、総理、今普通のときじゃないんですよ。国難の時期だから、国民の皆さんははっぱりリーダーとして安倍総理は何をどうしてくれるのかって真剣に見ているんですよ。466億円のマスクを使って、本当にそれがお金を使って、マスクを配ることが本当にいいのかと。466億円のお金があれば、私たちの学費や生活費の支援をして欲しいと思っている子どもたちがいるから言っているんですよ。

 なぜそういう判断ができないかと言うことを聞きたいから、私は聞いているんです。経緯も含めて。是非真摯に答弁をしてほしいと思います。

 総理にお尋ねしますけど、このマスク、いつまでに配布を行えるんでしょうか。昨日の段階で郵便局、増田さんや、日本郵政社長の話では、まだ4%しか配ってないということでありました。いつまでに、これ、配布は行えるんでしょうか」

 安倍晋三「大串委員、だから、私は先程説明したじゃないですか。そういう予算をかけるんですから、どういう事情があるのかということを真剣に私は真剣に答弁させて頂いたつもりですよ。その最中に立ち上がったですね、答弁を邪魔されたんではですね。冷静な遣り取りにはならないじゃないですか。

 その中に於いて、では他国はどうであったかという例も引用させて頂きました。当然ではないですか。そういう状況をしっかりと真面目に私は答弁をさせて頂いてるんですよ。それを余りにもですね、私が例えば時間稼ぎする必要なんかないんじゃないですか。ちゃんとですね、ちゃんと説明をさせて頂きたいと、このように思います。

 ですから、先程、需要に於いても海外でどういう評価、いわば(ヤジ)評価するような話をするとですね、ヤジで遮られたり、邪魔をされるわけでございますが、それも含めてですね、どういう評価を得ているかということについて話をすると、直ちに妨害をされるというのは、まことに遺憾であると、こう思うわけでございます。

 そこですね、前回残念ながら黄ばみがあるものが出たということでございまして、返品を今、しっかりとさせているところでございます。どこから出荷したかということも含めて、それをもう一度ですね、検品等の見直しを行っているわけでございまして、そういうものを行った上に於いてですね、できるだけ早くお届けを国民にしたいと考えているところででございます。今、検品等をしっかりやっている最中でございまして、今、直ちにですね、いつまでにお配りができるかということについてはですね、あのー、えー、これを今ですね、ここで答をするには至っていないところでございますが、できるだけ早くですね、検品を強化をし、そして提供をしたいとこのように考えているところでございます」

 大串博志「総理は4月1日にこれを発表されたときに1億枚のマスクの、布マスクの目処はついたというふうに仰っていらっしゃいました。本部にて。

 本当にそうですか。ちょっと確認ですけども、本当は1億枚の目処はついてなかったんじゃないですか。4月に入って慌てて駆け込むように各地に発注をしている、とか、そういうことはないですか。慌てて発注してるがゆえに一次下請け、二次下請け、三次下請け、こういうふうに注文が発注が流れていって、結果としてどこ
製造者の方々が、一生懸命やってくださってると思いますよ、一生懸命やってくださってると思うけども、でも、一次下請け、二次下請け、三次下請けと落ち、流れていくうちに誰が本当に責任を持ってこのマスクを作ってるのかっていうのが分からないような状況になってはいないでしょうか。

 本当に4月1日に1億枚のマスクの目処がついていたんでしょうか」

 加藤勝信「あの、今日は予算措置と関係がありますから、当初予備費で使わせて頂きました。それの意味については先程申し上げたようにその契約をしたり、それから現地で工場の生産をお願いしたり、そういった目処をしっかり確認、目処を、そういった状況を確認しながら、作業を進めているというところでございます」

 大串博志「と言うことは一応、この辺の目処は4月1日の時点ではついていなかったということですか。今、どこかやってくれる人がいないかということは発注してるという、そういうことですか」

 加藤勝信「その段階では当然、この1億万枚ですね、1億枚については、あの、目処がついていたと。ここでお願いするという段取りをして折り、それから逐次、そのあと何回も、これ一回限りではありませんから、その後の納入も、必要ですから、それにあたっての対応も、当然しているということだよ。大串博志の1億枚の目処がついて、たっていうことですけども、それ本当でしょうか。後ほどまた、検証させていただきたいと思います」

 (中略)

 大串博志は安倍晋三に最後に提案をする。

 大串博志「総理に提案があります。全国4%の配布の状況です。これから検品されているという状況ですけども、466億円の予算を見直して、執行を止めて、この予算、やめたらどうか。今どうやって命をつなぐか、生活をつなぐか、明日が分からないという方々が今多く日に日に増加していらっしゃる。そういう状況にあります。そういう中に於いて全国の皆さんは理解してくださると思います。安倍総理が仮に466億円のマスクの配布予算案を止めて、例えば私の提案ですけども、学生さんたち、バイトが止まって、学生団体の調べでは13人に一人の学生がもう退学しなければならないじゃないかと、こういうことを考えている状況にあります。

 この学生さんたちに提供できるようにこの466億円、変えたらどうでしょうか。(学生の生活窮状を訴える。一食50円のうどんをゆがいで生卵を乗せて・・・・。)お腹が空くと御飯食べなければならないから、寝て誤魔化す。ということを言っていて、私、身につまされましたよ。もうそういう状況に、総理が言った4月1日から比べると、なってるんじゃないですか。ここはあのときはそうだったけど、今は確かに違う。総理のそれこそ政治決断を以って、466億円、まだ4%しか出ていないから、これをやめると、国民の皆さんには申し訳ない、マスクは届かないけど、でも、これは学生の皆さんたちの生活面に回す。そういった、生活が明日は苦しいという方々に回してください。何万人学生が救えますから。そういうふうに今、政治決断で舵切る。それが総理としての、あるべき姿ではないでしょうか。どうでしょうか」

 安倍晋三「学生の皆さん。アルバイトで学費を稼いでいる皆さんについてどう対応していくかということはもう午前中に議論させて頂きました。アルバイトの方々に対しても補償金の対象とさせて頂いているところでありますし、と同時にですね、高等教育の無償化の対応についてもですね、今回の事態に対しても今回対応させて頂くということをさせて頂いております。

 また、給付型の奨学金につきましても、これは給付型ですけが、これは生活費、学費だけではなく、生活費のあるものでございます。今回の事態に対する給付の対象ともしているわけでございますから、そういうものも是非活用して頂きたい。このように思うところでございます。

 他方、このマスクにつきましては先程来、このマスクは全く使えないかの如きのご質問を頂いておりますが、介護施設、あるいは学校等にはもう既に相当量を配布をさせて頂いている。それなりの評価を頂いているところでございます。

 大串委員は確かにご地元のですね、布マスクを手に入れられるということでございますが、多くお方々はなかなかマスクは手に入らないという悩みを持っておられるのは事実でございます。そういう中に於いて、まさに十分ではないかもしれませんが、また、毎日洗って頂かなければならないということでご不便はおかけすると思いますが、先ずは2枚贈りさせて頂きまして、それを手元に置くことでご安心を頂ける。

 また、今マスク市場に対してもそれなりのインパクトはあったのは事実でございまして、業者の中に於いてはですね、ある種の値崩れを起こす効果になっているということを評価する人もいるわけでございまして、先程申し上げました増産等をお願いをさせて頂いているユニ・チャームの高原社長からもですね、今般配布された布マスクとの併用が進むことで、全体として現在のマスク需要の拡大状況を凌げるのではないのかとのお話も頂いているところでございまして、こうした形の効果が出てくることを待ちたいと、このように考えているところでございます」

 大串博志(しんみりした口調で)「一カ月の給料なり、一カ月のバイト代が入らなくて、どうしようかという生活を総理、送られたことがありますか。私浪人と言いますか、役所を辞めて政治活動に入るとき、そういう状況だったので、(周りの議員を示して)多くの皆さんもそういう経験をされたと思いますけども、まあ、世の中の多くの皆さんも、一カ月給料なくなる、バイト代なくなる、大変なことなんですよ。 

 明日どうしようかっていうそういう話なんですよ。だから、恐らく国民の皆さんはこのマスクは届かなくても、それが学生の皆さんの学業を続けると言うためになるんだったら、喜んでと仰ると私は思いますよ。それは私は国のリーダーとしてあるべき姿だと思いますよ。

 今の答弁、極めて残念です」

 大串博志は資本金1千万のユースビオが伊藤忠(資本金2534億円)や興和株式会社(資本金38億円)、マツオカコーポレーション(資本金5.29億円)といった大手企業と並んで5.2億円もの緊急随契ができた理由を尋ねた。

 もっと単当直入に「業者選定の具体的な基準は何か」と聞くべきだったが、「この伊藤忠さんや興和さんと比べて、ちょっと社の規模としてはこれは資本金1千万だということなんでは、かなり違うここがどういう経緯で、大臣、マスクを政府側から随契で早く納めてくれんと言うふうな対象にどういう経緯で行ったんですか」と、「経緯」という形で業者選定の基準を尋ねた。

 対して厚労相の加藤勝信は、「政府に於いて広く声がけをして頂きました。これは私どもと経産省が主体になって、これは他もこういうことやっています。(声が小さくなる)それに応えて頂いた事業の、事業社一社ということであります」、「広く経産省の方から声をかけて頂く中から、じゃあ自分の所がということで声を上げて頂いた」、「先程申し上げた経産省が経産局を通じてお声かけて頂いた、その中からこの一社、ここまですね、手を挙げて頂いたということであります」と答弁している。

 加藤勝信は「私ども(厚労省)と経産省が主体になって」「声がけ」したが、「これは他もこういうことやっています」と言うとき、声が小さくなった。自身がしていることを他者を引き合いに出して正当化するとき、自身が正しいことをしていることなら、声を小さくする必要性も、誰もがやっていることだとか、ほかでもやっていることだと引き合いに出す必要性も生じない。業者選定に何らかの如何わしさも抱えているからこその表面に現れた様子なのだろう。、

 「広く声がけをした」、「広く経産省の方から声をかけた」、「経産省が経産局を通じてお声かけて頂いた」ということなら、大串博志はいずれかの答弁後に「広く」とはどの程度の範囲なのか、どういう「声がけ」だったのか、具体的に聞くべきだった。

 前者の「広く」に対して全国を対象にしてなのか、全国を幾つかの地域に分けてなのか、後者に対しては何社に対しての「声がけ」だったのか、どのような文言を用いたのか、連絡は電話を使ったのか、FAXなのか、ウエブメールで行ったのかを問い質すべきだった。

 不透明な選定基準でなかったなら、答えることができるし、何らかの記録も残っていなければならないし、何らかのコネで選定したことなら、答えることはできないし、記録も残していないことになる。安倍政権の記録は残さない、あっても、廃棄処分にしてしまう手を何度も見てきているはずである。

 人は何らかの選択をするとき、選択の種類や内容に適した何らかの基準を設ける。当然、「広く声がけをした」、「広く経産省の方から声をかけた」は設けた基準に応じた地域と社数でなければならない。ところが声がけの基準とした地域も社数も言わずに、「広く」とだけ言う。誰にでも公表できる正当な基準であったなら、「広く」といった抽象的な言葉で事足りる説明とすることはできない。

 大串博志は布マスク配布に何百億というカネをかけるよりも、困っている学生の支援に回すべきではないかと提案した。安倍晋三は「マスクの店頭での品薄状況が長引いてる」、「マスクが手に入らず、不安に感じておられる皆さんもおられる」、安倍政権のマスク配布によって供給不足に対する需要過多からの値上がりしていたマスクの「値崩れを起こす効果になっている」等の理由を挙げてマスク配布を正当化し、大串博志の提案を断っている。

 政府はコロナウイルスの感染拡大に応じてマスク着用と手洗いの励行と外出自粛をうるさく言ってきた。国民の多くはそれなりに守っている。もし安倍晋三が言うように「マスクの店頭での品薄状況が長引いてる」が事実で、その事実によって国民の多くにマスクが行き渡っていない状況にあったなら、生活必需品の買い物に外出する際のコロナウイルスに対しての身を守る術を持たないことになり、大騒ぎになる。その他の外出もビクビクしながらでないと、できないことになる。

 だが、大騒ぎにはなっていない。テレビのニュースで見る限り、見かける外出者の殆どがマスクを着用している。国民が冷静でいるこの状況は「マスクの店頭での品薄状況」が事実だとすると、何らかの方法でマスクを調達していることになる。ネットではマスクの型紙から手作りの方法まで数多く紹介されている。100円ショップで売っている60枚入りのコーヒーフィルターの4枚を使って、ホッチキスで止めるだけのマスクを手作りするページもある。慣れれば、作るのに5分もかからないし、15枚分のマスクが手作りできる。

 要するに政府がマスクを配布しなくても、手作りによってて供給不足に対する需要過多からの値上がりに対する値崩れを引き出すことができる。介護施設や小中学校等への配布にしても、介護施設では認知症防止の観点から入所高齢者にパッチワークやその他の手芸に取り組ませているところもあるし、中学生は「技術・家庭科」の授業で裁縫に取り組んでいると言う。

 自分たちの手作りで既に用意している学校もあるだろうが、介護施設では介護士の指導の元、中学校では教師の指導の元、手作りで十分に間に合わせることができる。小学生に対しても教師の指導で手作りできないわけではないし、できなければ、中学生が余分に手作りして、小学生に配布するという手もあし、中学生に対して協調精神を育むことができる。

 一般家庭でも、本格的な布マスクの手作りが不可能というわけではない。ミシンがなくて、手縫いでも、さして時間がかかるわけではない。要するに家庭の自助努力で解決可能なマスク問題に過ぎない。にも関わらず、政府は466億円という大金をかけて国民にマスクを配る壮大なムダ遣いを実行しつつある。

 しかもマスク配布業者の選定基準にしても、マスク配布の予算に対する契約金額の目に余る差額に関しても明瞭・明快から程遠い不可解・不透明のまま推移している。

 自然災害が起きて、大きな被害が出ると、政府はボランティアをお願いする。466億円も使わずにボランティアをお願いする例に習って、マスク問題が起きた当初から家庭や介護施設、学校でのマスクの手作りをなぜお願いしなかったのだろうか。

 政治的利益供与を作り出す必要性からの、政府予算を466億円も使うことになったマスク配布なのだろうか。だとしたら、家庭や介護施設、学校へのマスク配布は政治的利益供与を作り出すために利用されていることになる。

 まあ、森友・加計、桜を見る会等で腕を上げてきた安倍晋三の政治的利益供与である。新たに一つ加わえたとしても、安倍晋三にしたら屁を一つ落とす程度のどうってことはない政治活動なのかもしれない。

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