安倍晋三加計学園政治関与疑惑:山本幸三の「平成30年開学」の発言に“加計ありき”を窺うことができる

2017-07-31 13:13:00 | Weblog

 新設される獣医学部の「平成30年4月開学」は2016年11月18日付けの「文部科学省関係国家戦略特別区域法第26条に規定する政令等規制事業に係る告示の特例に関する措置を定める件(平成27年内閣府・文部科学省告示第1号)の一部を改正する件(案)」によって、〈広域的に獣医師を養成する大学の存在しない地域に限り、獣医学部の設置を可能とするための特例を設ける。〉ことと併せて、〈上記趣旨を満たす平成30年度に開設する獣医学部の設置〉に関するパブリックコメント(意見公募手続制度)が2016年11月18日から12月17日の期間で行われ、内閣府と文科省が公募の結果発表の2017年1月4日を以って、上記2条件が正式に公布されることになった。

 但し「平成30年4月開学」を公に打ち出したのはあくまでも2016年11月18日であって、2016年11月18日以前のいつ、どこで、どのような根拠を基準にして「平成30年4月開学」で十分に間に合うと計算したのかは不明である。

 いずれにしても、何よりも問題なのは開学の「平成30年4月」という日付がどのような基準を根拠として開学時期としたのかである。どのような決定も基準に従った合理的な根拠に基づいていなければならない。

 先ず2017年7月10日の参院閉会中審査の質疑応答から「平成30年4月開学」について見てみる。「産経ニュース」  
     
 田村智子参院議員(共産党)「平成30年4月開学は昨年11月18日のパブリックコメントで初めて公になった。今年1月4日の事業者公募でも応募要件となった。獣医医学部新設に具体的な構想をもっていた京都産業大学も平成30年4月という条件を示されたから、もう無理だと諦めた。この条件で応募できたのはなぜか。方針決定の前に今治市でボーリング調査をやっていたのは加計学園だけだ。その意味を前川参考人はどう受け止めているか」

 前川喜平文科省前事務次官「平成30年4月開設という大前提であると、官邸も内閣府も共通のスタンスだったと思いますが、『官邸の最高レベルが言っていること』だとか、『総理のご意向』だと聞いていると、これ以上の説明は聞いていない」

 田村智子「平成30年4月開設は国家戦略特区でも一切議論になっていない。何で平成30年4月じゃなきゃだめだったのか」

 山本幸三「30年開設と記載したのは、いち早く具体的な事業を実施して、効果を検証することが重要だということで、早期開設を制度上担保するためだ。最速で事業が実現するスケジュールの平成30年度開設というものをパブリックコメントのときに示した。時期を示すというのは医学部のときにもやっている。

 ただ、獣医学部の設置という特例措置は、手続き全体からみれば入り口の措置。文科省の共同告示における平成30年4月という時期は、目指すべき時期との性格を持つものと考えている。内閣府としてはあくまで公正中立な意思決定をしたところだ」――

 山本幸三は「平成30年度開設というものをパブリックコメントのときに示した」と言っているが、「平成30年度開設」が何を根拠として決めた基準なのかの説明とはなっていない。

 また、「いち早く具体的な事業を実施して、効果を検証することが重要だ」と言っていることも、「最速で事業が実現するスケジュール」と言っていることも、結構毛だらけ、猫灰だらけだが、両者共に「平成30年4月開学」を基準とすることの根拠とはなり得ない。

 要するにパブリックコメントで示した「平成30年4月開設」という期限の根拠がどのよう基準に当てはめて決められたのかについての何の説明にもなっていない。

 言い替えると、開学の「平成30年4月」という日付がどのような基準を根拠として開学時期としたのかということである。どのような決定も基準に従った合理的な根拠に基づいていなければならない

 期限には起点となる日がある。そして起点となる何年何月から終点の平成30年4月までの期限内に無理のないスケジュールで開学は可能であろうと計算することができた総括した基準が根拠となっていなければならない。

 例えば獣医学部新設の場合は敷地面積のボーリングによる地質調査に始まって募集学生数に応じた規模の建物の建設に要する日数、必要人員の年齢構成のバランスの取れた教員確保の日数、獣医学研究に必要な設備調達と整備に要する日数、カリキュラムの編成に要する日数等々、国による新設認可が降りてから計算した諸々の事柄を総括した所要日数を基準とし、その基準が「平成30年4月開学」の根拠となっていなければならないはずだ。

 そして何よりもその基準をハードルとして、どこが獣医学部新設の手を上げても、そのハードルをクリアできる最短の日時が「平成30年4月開学」ということでなければならない。

 具体的には加計学園でなくても、例えば京都産業大学が獣医学部新設を認められた場合は「平成30年4月開学」が可能でなけれれば、一般的な基準とはなり得ない。基準は誰に対しても平等でなければならない。

 逆に加計学園しかクリアできない「平成30年4月開学」ということなら、“加計ありき”と見做されても仕方がない。特定の大学しかクリアできない基準と言うのは一般化から外れて、基準とは言えなくなる。

 ところが現実には田村智子が言っているように加計学園のみが「平成30年4月開学」をクリアできて、獣医学部新設を望んでいた京都産業大学はクリアできずに開学を断念した。

 京都産業大学の2017年7月14日の記者会見。

 記者「獣医学部断念の理由は」

 黒坂光副学長「獣医学部は京都府が申請主体だったが、国家戦略特区の実施主体として私どもは申請した。構想はいい準備ができたが、今年(2017年)1月4日の告示で『平成30年4月の設置』になり、それに向けては準備期間が足りなかった。

 その後、(学校法人)加計学園が申請することとなり、(京都産業大獣医学部も含めて)も2校目、3校目となると、獣医学部を持っている大学は少なく、教員も限られているので、国際水準の獣医学教育に足る十分な経験、質の高い教員を必要な人数確保するのは困難と判断した」――

 要するに2017年1月4日の前日までは獣医学部新設を計画していたが、「平成30年4月開学」では「質の高い教員を必要な人数確保」には準備期間が不足することになって申請は困難と判断、断念することにした。

 だが、この「困難」は京都産業大学のみならず加計学園も同等の「困難」でなければ、「平成30年4月開学」は一般的な基準とは言えなくなって、どのような根拠を用いて「平成30年4月開学」を基準としたのかが問題となってくる。

 「平成30年4月開学」が果たして平等な基準だったのか、その謎を解く鍵として2017年6月5日の衆議院決算行政監視委員会での宮本徹共産党議員と山本幸三の質疑応答を見てみる。

 山本幸三「30年4月開校というのはパブリックコメントに出るわけでありますが、これは、最大限早い時期で開校できる時期ということで私どもが決めたわけであります。
 しかし、その事前に今治市に対しても京都府に対しても一切そういうことは申し上げておりません」

 宮本徹「なぜ、伝えていないのに。ここに持ってきていますけれども、これは今治市の資料ですが、開学までのスケジュール、平成30年4月、なぜ今治市だけがこんな資料をつくれるんですか。

 私たちのしんぶん赤旗も、今治市に直接聞いて取材しましたよ。昨年9月から10月にかけて国家戦略特区の会議を内閣府とともに開催する中で、内閣府も2018年4月開学の思いを共有していると判断していたと。思いをずっとあらかじめ共有してきたということを今治市の側が言っているじゃないですか。

 極めてアンフェアなやり方で、今治市の側には2018年4月だから早く準備しなさいとこういう情報を提供して、もう一方、京都産業大学の側には、11月18日、公になるところまで一切伝えなかった、こういうことじゃないですか。極めてアンフェアだと総理は思われませんか。

 山本幸三「時期をいつにするとかいうような話は一切伝えておりません。したがって、その中で、今治市が獣医学部の校舎建設等なんかについて少し準備をやられていることは、大学側がオウンリスクで行っているものと考えております。

 これは、今治市がボーリング調査なんかをやるときにも、今治市議会においても今治市が説明しておりますが、希望者には全部それを認めるというようなことをやっておりまして、私どもは30年4月開校というのはまさにパブリックコメントの段階で初めて示したわけでありまして、それ以前に今治市に対しても京都府にも一切そういう時期については言っておりません。

 あとはそれぞれの地元がオウンリスクでやることでありまして、ただ、このことは最終的に認められるかどうかわかりませんから、そこはまさにリスクがあるわけでありまして、ほかの医学部等の場合でもそういうことは行われているというふうに承知しております」――

 国家戦略特区の今治市に獣医学部新設が認められたのは2016年11月9日の第25回国家戦略特区諮問会議。

 要するに加計学園側の「オウンリスク」(自己責任)で獣医学部の新設が認定される前から、新設の準備に入っているに過ぎないと言っている。

 と言うことは、「平成30年4月開学」という基準は新設が認定される前から「オウンリスク」で新設の準備に入っていなければクリアできない基準と言うことになる。

 言い替えると、「オウンリスク」が「平成30年4月開学」の基準をクリアする要因となった。このように解釈しなければ、「オウンリスク」で何かするという必要は生じない。

 そのような基準であるなら、その性格から言って、山本幸三は「平成30年4月開学」を初めて出した2016年11月18日のパブリックコメント前には「事前に今治市に対しても京都府に対しても一切そういうこと(「平成30年4月開学」)は申し上げておりません」と言っているが、今治市に対しても京都府に対しても伝えていなければ、公平・平等とは言えないだけではなく、「平成30年4月開学」は一般的な基準であることから逸脱することになる。

 もし加計学園が認定されると前以って分かっていたなら、いわば“加計ありき”であったなら、「オウンリスク」の様相が異なってくる。

 「平成30年4月開学」という言葉が初めて出てきたのは文部省の調査でその存在が確認されたうちの、2016年の「10/21萩生田副長官ご発言概要」と題した一枚の文書である。文飾は当方。

 〈総理は「平成30年4月開学」とおしりを切っていた。工期は24ヶ月でやる。今年11月には方針を決めたいとのことだった。〉

 〈工期は24ヶ月でやる。〉と言っているが、2016年10月を基準とすると、1年と5カ月の工期ということになる。ネットで調べて見たのだが、地鎮祭はボウリング工事開始の2016年10月31日から約5カ月後の2017年3月28日で、建物着工は2017年4月1日となっている。

 この2017年4月1日を基準とすると、〈総理は「平成30年4月開学」とおしりを切っていた。〉としている「平成30年4月開学」の完成までは1年の突貫工事ということになる。

 但し建物、その他の工事着工の前段階として地質調査のボーリング工事、地質確認後の地質に応じた土木工事設計図と建設設計図の作成、作成後の土木工事と建物建築確認申請、建築許可を経て、初めて地鎮祭を行うことができ、資材の調達も順次可能となり、工事に着手することができることを計算に入れると、1年5カ月はかかるということなのだろう。

 加計学園の獣医学部新設が認定されたのは2017年1月20日開催の「第27回国家戦略特別区域諮問会議」だから、2017年1月20日以後にボーリング工事許可の申請という手順を踏んでいたなら、地鎮祭まで5カ月を要していたから、そうした場合の地鎮祭は2017年6月20日前後ということになって、それから1年の突貫工事となると、工事完成は「平成30年4月開学」から2カ月半は遅れることになる。

 と言うことは、2カ月半の工事完成の遅れを取り戻して、いわば遅れの〈おしりを切って〉「平成30年4月開学」に間に合わせるために2017年1月20日の獣医学部申請認定を待たずに計画を進めていなければならなかったということになる。

 もしそれが「オウンリスク」を負わなければならない計画推進だとしたら、「平成30年4月開学」が生み出した「オウンリスク」であって(そうでなければ、獣医学部新設認定の2017年1月20日以後にボーリング工事を開始していなければならなかったし、そうしていれば、「オウンリスク」を負うこともなかったろう)、「平成30年4月開学」の基準そのものが加計学園に対しても欠陥ある基準としなければならない。

 だが、加計学園は欠陥ある基準であるにも関わらず、「平成30年4月開学」に合わせて計画を進めることができた。加計学園にとってそうすることの利益は京都産業大学が「平成30年4月開学」の基準に適合できずに撤退し、加計学園が1校のみに残ったことにあるはずだ。

 この利益と獣医学部新設認定の2017年1月20日の遥か以前にボーリング工事に取り掛かることができて、「平成30年4月開学」に向けて段階的に計画を進めてきた現実を併せると、京都産業大学を排除するために設けた「平成30年4月開学」であって、その開学時期を前以って把握していたからこそできた計画的行動であって、「オウンリスク」と言っていることは計画的行動を隠蔽するための方便に過ぎないはずだ。

 そうでないと言うなら、開学の「平成30年4月」という期限がどのような基準を根拠とした決定事項なのか、「オウンリスク」を負わずにどの大学でもクリアできる一般的基準となっていたのか、その根拠を示さなければならない。

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防衛省、あるいは自衛隊の南スーダン日報情報流出は稲田朋美だけではなく、安倍晋三をもターゲットか

2017-07-29 12:29:12 | Weblog

 南スーダン派遣自衛隊PKO部隊日報の不適切な情報処理問題で防衛相の稲田朋美自身が2017年3月16日に実施を指示、3月17日から開始した特別防衛監察の、証言の食い違いが見受けられるものの稲田朋美が不適切な情報処理への関与も了承もなかったとする報告を7月27日に受けて、自身の指揮・監督下にある防衛省・自衛隊内の情報処理の混乱の責任を取って7月28日午前中に安倍晋三に辞表を提出、受理された。

 ご承知のようにそもそもの発端は南スーダンにPKO部隊として派遣されていた自衛隊施設部隊が作成した、2016年7月に南スーダンの首都ジュバでの大統領派と反大統領派が激しい戦闘行為を報告した日報(活動記録)をフリージャーナリストが報告を受けた陸上自衛隊中央即応集団司令部に対して情報公開制度に基づいて開示請求したことに始まった。

 以下情報開示請求から発見までも時系列で振り返って見る。

●2016年9月末 フリージャーナリストが情報公開法に基づいて南スーダンPKO派遣自衛隊部隊活動記録(日報)の開示請求
●2016年12月2日 陸自の中央即応集団司令部は「日報」は説明資料に使った後、廃棄したとして非開示扱い。
●2016年12月22日 自民党の河野太郎元公文書管理担当相が「電子データは残っているはずだ」と防衛省に再調査を要請。
●2016年12月24日 防衛省、「日報」の全てを廃棄したと明らかにする。
●2017年2月6日 防衛省、調査範囲を広げたところ、「日報」の存在を公表。
●2017年2月7日 確認を終えた「日報」の一部を公表。
●2017年2月9日 稲田朋美、衆院予算委で、防衛省が日報の電子データを確認したのは昨年12月26日で、稲田朋美自身に報告があったのは2017年1月27日であったことを
 明らかにする。

 防衛省は2016年12月22日に河野太郎の再調査要請に応じて2日後の2016年12月24日に「日報」の全てを廃棄したと明らかにしておきながら、なぜ1カ月以上も経過した2017年2月6日になってから、「日報」が存在していたと公表したのだろうか。

 しかも2017年2月6日に「日報」の存在を公表した際は実際は2016年12月26日に存在を確認していたことを明らかにせず、さらに防衛省と自衛隊を指揮・監督する稲田朋美への報告が実際の確認からなぜ1カ月近くもあとになってからだったのだろうか。

 もし南スーダンの現地で大統領派と副大統領派の間で実際に戦闘行為が行われていたら、PKO5原則の1、「紛争当事者間で停戦合意が成立していること」に反することになって、政府は自衛隊を派遣し続けていることの責任を問われないよう、隠蔽を謀ったのではないかとして、野党は防衛省と自衛隊を指揮・監督する立場にある稲田朋美を矢面に立てて厳しく追及した。

 一旦、すべての「日報」を廃棄したと公表したなら、例え何かのキッカケで「日報」の存在を確認できたとしても、廃棄したで押し通せば、いわば隠蔽して全てをウヤムヤにすれば、防衛省内の情報管理の混乱の批判も、自分たちの親玉である稲田朋美も防衛省と自衛隊を指揮・監督する立場にあることから、防衛省や自衛隊が扱う情報処理に対しての管理の資質や指示能力を問われることも、防衛大臣として防衛省と自衛隊を指揮・監督する資質そのものも問われることはなかったはずである。

 なぜ防衛省は全てをウヤムヤにはせずに自らの情報管理の失態まで曝すことになる文書存在の確認を公表したのだろうか。

 稲田朋美の防衛相としての資質を問題にしたのは野党だけではなく、自衛隊や防衛省自体が早くから問題にしていたのはないだろうか。2016年8月15日、稲田朋美はジブチの自衛隊派遣部隊の視察を行っているが、成田空港に現れた際、派手なサングラスと野球帽というリゾートルックで空港に現れたという。

 例えジブチの自衛隊部隊を視察する際には着替えていたとしても、防衛省の役人や自衛隊員は自分たちの上に立つ防衛大臣の服装には敏感であるはずである。

 2016年8月23日には、参考のために画像を載せておいたが、神奈川県横須賀市の海自横須賀基地を訪れ、海上自衛隊潜水艦「こくりゅう」に試乗、模様も派手な黒の野球帽、黒色のジャやケットを羽織っているが、その下は黄色のTシャツ、細身の黒のパンツルックと言うのか、そして黒色のハイヒールを履いて、その甲板に立っている。  

 一方で稲田朋美はかつて藤原正彦の思想に言及、「真のエリートの条件は二つあって、一つは芸術や文学など幅広い教養を身に付けて大局観で物事を判断することができる。もう一つは、いざと言うときに祖国のために命を捧げる覚悟があることと言っている。そういう真のエリートを育てる教育をしなければならない」とその思想を自らの思想として吹聴している。

 防衛大臣としてこの手の服装で潜水艦の甲板に立つことができる精神性と口にしている思想とのギャップにどれ程の人間的な信用を嗅ぎ取ることができるだろうか。防衛省の幹部や自衛隊員たちはその信用の度合いで防衛大臣として相応しい人間かどうかを計るはずだ。

 と言うことは、防衛省と自衛隊の幹部は稲田朋美をその資質が問われる形で防衛大臣の地位から追い落とす道具として防衛省や自衛隊の文書管理の責任も問われることを覚悟で「日報」を利用した可能性は捨て切れない。

 この可能性は2017年3月15日になって、廃棄が存在確認へと一転していた文書が実際には陸上自衛隊が一貫して日報のデータを保管していたこと、保管していながら、これまでの説明と矛盾するという理由で公表を差し控えていたこと、辻褄合わせのためなのだろう、データを消去するように指示が出されたといったことが複数の防衛省幹部への取材で判明したという形でマスコミによって報道され出した。

 この事実はマスコミが前以って知り得ていないことなのだから、防衛省側のリークということも考えられる。例えマスコミの取材に応じた防衛省側からの情報提出であったとしても、これもウヤムヤにしておけば、防衛省も自衛隊も防衛大臣の稲田朋美も安穏な状態でいることができたはずだが、さざ波一つ立っていない池の水面にわざわざ石を投げて波を立て、波紋を広げることになった。

 最終的には防衛大臣としての資質も含めて稲田朋美に全ての責任が降りかかってくる。野党は組織的隠蔽だとして稲田朋美の辞任を求めた。翌3月16日の衆議院安全保障委員会で稲田朋美は陸上幕僚長に事実関係の確認を指示、同時に特別防衛監察の実施を指示したことを明らかにした。

 官房長官の菅義偉は稲田朋美を擁護した。菅義偉の擁護は安倍晋三の擁護でもある。

 そのような最中、 2017年6月23日告示、2017年7月2日投票の都議選の6月27日、稲田朋美は東京都板橋区での自民党候補の応援演説で聴衆に「防衛省、自衛隊、防衛大臣、自民党としてもお願いしたい」と呼びかけたことが自衛隊の政治利用、選挙の私物化、自衛隊法違反、公職選挙法違反、憲法違反との批判を受けて、改めて防衛大臣としての資質を問われることになり、野党は即刻辞任を求めた。

 この騒ぎで安倍晋三が8月初めに予定している内閣改造まで稲田朋美の馘を維持して、そこで交代させる可能性が言われ出した。6月30日午前の閣議後記者会見で、このことを問われると、稲田朋美は「内閣改造はいつかも承知していない。人事権者は総理だ。私が言えることは、しっかりと緊張感を持って(職務を)邁進していきたい。国民生活を守るために全力を尽くしたい」と述べている。
 
 安倍晋三にしても自身の任命責任に触れさせないためにも内閣改造を限界として馘を繋げておく必要があったはずだ。

 防衛大臣交代の窮地に立った稲田朋美に日報を巡る止まらない情報の流出が更に追い打ちをかけた。2017年7月19日付けのマスコミが稲田朋美と防衛省の岡部俊哉陸上幕僚長、そして黒江哲郎防衛省事務次官が2017年2月15日に緊急幹部会議を開いてデータの非公表方針を決め、稲田朋美も隠蔽を了承していたと報じ出した。

 防衛省幹部か自衛隊幹部がリークしなければ出てこない情報であろう。

 稲田朋美の6月27日の都議選での応援演説が黙っていても8月3日の内閣改造で防衛相を交代させる直近のキッカケとなっていたにも関わらず、いわばこれで稲田朋美をお払い箱にすることができると気分を晴れやかにしていてもいいはずだが、なぜ防衛省内部の責任問題にもなる情報をリークしたのだろう。

 この追い打ちをかけるのと追い討ちをかけないの違いは、後者の場合は国会追及のターゲットは稲田朋美のみだったが、前者は安倍晋三自身がターゲットの巻き添えを食うことになったことである。

 野党は7月28日の稲田朋美辞任を受けて早速安倍晋三の任命責任を追及する構えを見せた。7月28日、自民、民進の国対委員長が会談を行い、防衛省の特別監察報告を議論する衆議院の安全保障委員会の閉会中審査の日程を、安倍晋三と稲田朋美の出席を求めて内閣改造後に行う方向で調整に入ったとマスコミは伝えている。

 と言うことは、防衛省、あるいは自衛隊は無傷で済む内閣改造による交代ではなく、最初からある程度の打撃を伴わせた稲田朋美の辞任を狙っていて、その辞任を道具にして併せて安倍晋三を野党による任命責任追及の矢面に立たせる狙いもあったのではないだろうか。

 その理由を考えるとしたら、安倍晋三その他が高度な教育訓練と実地訓練を施せば、海外派遣された自衛隊が駆けつけ警護で敵部隊と交戦することになったとしても、隊員が命を落とすようなリスクを負うことはないとする「自衛隊安全神話」とでも言うべき安易な考えでいることに対する反発というこかもしれない。

 あるいは森友学園疑惑や加計学園疑惑によって安倍晋三の政治的人間性に胡散臭さを感じた反発ということもあり得る。

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蓮舫の問題点がどこにあるのか、辞任記者会見から「攻めと受け」をキーワードにない頭で考察してみる

2017-07-28 12:18:44 | 政治

 離党者続出、党勢低迷、そこへきて2017年7月2日執行の都議選では国政では野党第一党ながら、全127議席中7議席から5議席を占めるのみとなった惨憺たる議席数を受けて民進党代表の蓮舫の進退が話題にのぼった。

 民進党幹事長で民主党政権崩壊の戦犯の一人野田佳彦は7月25日の執行役員会で都議選敗北や党勢低迷の責任を取り辞任の意向を示し、執行役員会はこれを了承した。野田氏はその後の両院議員懇談会でも同様の考えを示したという。
 
 一方の蓮舫は同両院議員懇談会で「しっかりと勝てる組織に皆さんの力を貰い、もう1回立ち上がっていきたい」と続投の考えを伝えたという。

 離党者続出も党勢低迷も都議選敗北も一番の責任は代表である蓮舫にあるはずなのだが、その責任を幹事長辞任で誤魔化す、誤魔化すと言って悪ければ、遣り過して、自身の責任はスルーする。

 どうかと思っていたら、7月27日になって周囲に辞意を漏らし、午後に記者会見を開いて辞任を表明した。マスコミは代わりの幹事長の引受け手がないといったことを伝えていた。事実そうなら、幹事長人事に行き詰まっての辞任と言うことになる。

 蓮舫泥舟への乗組員のなり手を探したが、今更なり手になりたいと思う議員は誰もいなかったと言うことなのだろうが、大いに納得がいく。

 記者会見の発言は「産経ニュース」によった。

 蓮舫は党勢低迷について、「どうすれば遠心力を求心力に変えることができるのか。力強く、私たちがしっかりと皆さんに託していただける民進党であれ、と国民の皆様方に思っていただけるのか。そのとき、やっぱり考えたのは、人事ではなくて、私自身をもう一度見つめ直さなければいけないと思いました」と、辞任の理由に触れている。

 だが、代表が辞任して、執行部そのものを代えることも、広い意味での「人事」に当たる。代表はそのままで党執行部の他の役員を代える人事で遣り過すことができなかったことからの辞任が実態であって、それを党勢回復は(=国民の皆様方に思っていただけるのは)「人事ではなくて、私自身をもう一度見つめ直さなければいけないと思いました」と、女優か歌手が一時休業して、充電期間を設けるようなことを言う。

 綺麗事もいいとこで、相変わらず小賢しさしか浮かんでこない。

 その一方で、「えこひいきとか、不平等とか、行政が歪められたとか、途中経過が見えないような政治は絶対許してはいけない。この部分は、我々の仲間が衆参合わせて、しっかり提起してきた。

 それに対して、国民の皆様方にも『それはそうだ』という共鳴の思いが生まれたと思っています」と代表としての一部成果を請け合っている。

 国民のこの「共鳴の思い」が党勢回復という結果に反映されたとでも言うのだろうか。反映されていたなら、都議選に現有議席以上の議席を獲得できただろうし、そうすれば、幹事長の辞任騒ぎも代表の辞任騒ぎも起こることはない。

 どうも現実に則さない一連の発言となっている。

 蓮舫「ただ一方で、攻めと受け。この受けの部分に私は力を十分に出せませんでした。率直に認め、今回私が手を着けるのは人事ではない。いったん引いて、より強い『受け』になる民進党を新たな執行部に率いてもらう。これが最善の策だ。民進党のためでもない。私のためでもない。国家の民主主義のために、国民の選択肢の先である二大政党制の民進党として、それをつくり直すことが国民のためになるという判断だと、ぜひご理解をいただきたいと思います」

 ここで言っている「攻め」とは単に与党の政策の欠陥や不正行為を突く活動のことだけではなく、創造的な政策を積極的に纏め上げて、その政策をして広くより多くの国民に自分たちの利益になると受け入れさせる、そのような結果を伴わせることのできる積極的な活動を言うはずであり、より重視していなければならない。

 ところが蓮舫は「この受けの部分に私は力を十分に出せませんでした」と言って、さも「攻め」の部分では力を発揮していたかのように言っている。

 蓮舫は少し後で自身の「足らざる部分」を、「政党は多様な声を持った議員が、しっかりとその声を1つにまとめて、思いを1つに動いていく。その部分で統率する力が私に不足していたという判断です」と自身の統率力不足を挙げている。

 いわば統率力とは単に執行部や党を纏め上げる能力を言うのではなく、自らのリーダーシップによって執行部及び党と諮って国民の利益となる創造的な政策を構築し、国民に歓迎される経緯を持たせた、政党としての真っ当な結果に導くことで執行部と党を纏め上げていく能力を言うはずだ。

 当然、統率力不足と言うことなら、「攻め」の部分でも力を発揮しようがない。その結果としての党勢低迷であり、諸々の閉塞状況であるはずだ。

 にも関わらず、統率力を至って必要とする「攻め」の部分で力を発揮したかのように言う、この認識能力は代表としての能力不足をも現して余りある。
 
 また蓮舫は「より強い『受け』になる民進党を新たな執行部に率いてもらう」と言って、民進党という組織を指して「受け」と表現して、「執行部に率いてもらう」上下関係に置いている。

 要するに統率力がなくて、民進党を満足に率いることができなかったということを言っている。

 執行部に属していないと言えども、執行部に単に率いられる関係にあるのではなく、執行部のリードと相互反応し合って優れた政策を生み出す刺激剤の役目を果たしたり、国民に影響を与える共同作業を担う立場にある以上、統率力云々の問題である以上に蓮舫のこの上下関係視に問題があるはずだ。

 大体が「新たな執行部に率いてもらう」民進党とは何を意味するというのだろうか。支持者にしてもそんな民進党は要らないはずだ。執行部に対しても活動する、国民に対しても活動する、政府の政策に対しては戦いを挑む民進党であるはずである。執行部だけでできることではない。

 蓮舫の執行部の立場から民進党を下に見る上下関係視からすると、代表を辞任して新執行部に任せることを「民進党のためでもない。私のためでもない。国家の民主主義のために」と言っていることは代表として大したことを成し遂げることができなかった結末を誤魔化す綺麗事に過ぎないことになる。

 記者「次の執行部でどういう部分を打ち出していけば民進党が強い受け皿になるか」

 蓮舫「一言で短く答えられる質問ではないと思いますが、やっぱり野党というのは攻めには強い。だけど、受けをしっかり主張、発信して、広く浸透させるには手段が限られています。

 しかし、浸透させる部分の中身は十分、海江田(万里)元代表や岡田(克也)前代表が作ってきてくださった。それを私も1つの形としてまとめる、途中経過は作り上げてきたと思っています。その結実をしっかりと広く国民に伝え、浸透できる執行部でいてほしいと思います」

 どうも蓮舫は「攻め」ということを与党議員の不祥事や失言、何らかの隠蔽工作と言った相手のエラーに乗じて四方八方から追及することだと極く狭く解釈しているようだ。安倍与党に選挙で立て続けに大敗して、与党一強を許していることからすると、とても「野党というのは攻めには強い」とは口が裂けても言えないだろう。

 この合理的判断能力の狭さから見ても、代表失格だったことが分かる。

 ここで言っている「受け」とは民進党の存在感を意味させているはずだ。その存在感は主として国民に受け入れられる政策を構築する能力によって表現される。

 確かに政策を構築し、遂行していく力は政権が握っていて、頭数で勝っている与党が有利な状況にある。結果、存在感を「しっかり主張、発信して、広く浸透させるには手段が限られて」いるということになる。

 だとしても、「受け」を「浸透させる部分の中身は十分、海江田(万里)元代表や岡田(克也)前代表が作ってきてくださった。それを私も1つの形としてまとめる、途中経過は作り上げてきたと思っています」と、岡田代表時よりも政党支持率を下げて、存在感を示すことができなかったにも関わらず政党支持率と極めて相関関係にある民進党の存在感を示すことができたかのように平気で言っている。

 この現実離れはどう解釈したらいいのだろうか。

 蓮舫は「民進党として、今の行政を歪めたかのような安倍晋三内閣の受け皿になるための力が私には足りていなかった」と自らの力量の不足を素直に認めて反省する一方で、党勢低迷の結果を素直に見ずに「とにかく私は自分の持ち得る力、そして自分がなし得る力、全力は傾けてきました」と、部分部分で自己を正当化する合理性を欠いた発言を平気で口にしている。

 統率力不足で「全力は傾けて」、それを自己の成果とすることの非合理性、矛盾に気づかない。どうも辞任という一幕を綺麗事にして片付けたいようだ。

 記者「いつか党の代表に返り咲き、日本で初の女性首相を目指す考えはないか」

 蓮舫「あの、引く会見で、それに堂々と答える強さをまだ持ち合わせていません」

 頭の回転が早く、次から次へと速射砲のように気の利いた言葉を連発して、ときとして自分の発言に酔うように見える蓮舫だが、この質問には機転の利いた言葉は出てこなかったようだ。

 「攻めと受け」を真に頭で理解して口にしていたなら、もう少しました発言をすることができたはずだ。

 「もっともっと成長しなければダメですね。成長できたら、日本初の女性の首相になれる機会が回ってくるかもしれない。成長できなければ、当然、日本初の女性の首相になる機会は巡ってはこないでしょうが」

 蓮舫は二重国籍問題で「私は多様性の象徴」と小賢しいことを言っていたが、もし日本最初の女性首相になることができたなら、本人が言わなくても、周囲が「蓮舫は多様性の象徴」と褒めそやすだろう。

 要するに代表としての統率力は持ち合わせていなかった。民進党代表として執行部及び民進党の「攻め」の力、さらに「受け」の力を満足に引き出すべくリードする能力に欠いていた。

 それは「攻めと受け」のそもそもからの解釈不足――現状認識能力不足から発しているはずだ。

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安倍晋三加計学園疑惑:“家計ありき”で進めてきたことの一つが「加計学園への伝達事項」となって現れた

2017-07-27 12:29:55 | Weblog

 昨日のブログで7月24日(2017年)衆議院予算委員会加計学園安倍晋三政治関与疑惑閉会中審査で民進党の玉木雄一郎が、翌7月25日参議院予算委員会同閉会中審査で共産党の小池晃がそれぞれ取り上げた「加計学園への伝達事項」なる文科省共有の文書がその存在を文科省が確認した時点で法人の利益に関わるという理由付けで「現在のところ、存否を含めて明らかにできない」としていたが、閉会中審査では一般的な職務としての「大学設置認可の事前相談対応」を記した文書としたことに法人の利益に関わるという理由を見い出すことができなことから、後者は後付けの理由で、その文書の存在を認めるについて述べたことは文科省自作のシナリオではないかといった趣旨のことを書いた。

 今日は玉木雄一郎と小池晃が指摘したように「加計学園への伝達事項」なる文書が“加計ありき”を示す文書なのかどうかを足りない頭で考察してみたいと思う。

 再度その文書と文書に関連したメールを載せておかなければならない。昨日の順序と違って、日付が分けるように先にメール文を示す。

   

日付:2016/11/08 11:59

件名:【情報共有・追加あれば】本日加計学同に伝達する事項ベーパー

設置室、私学部 御中 ← 高等教育局専門教育課 ■ (■)

 先日に加計学園から構想の現状を聴取したことについて、
昨日、大臣及び局長より加計学園からに対して文科省としては
現時点の構造では不十分だと考えている旨早急に厳しく伝えるべき、
というご指示がありました。
 (局長からは先ほども、早く連絡して、絶対今日中、と言われたところです)

そこで、私から先方の事務局長に添付内容をお伝えしようと思っておりますところ、

追加で指摘すべき事項や修正があれば、本日13時半までに教えて下さい。
14時に先方から電話が来る予定です。

大臣レク3まいものの懸案事項を引く形で作成しております。

よろしくお願いいたします。

 

  「加計学園への伝達事項」(2016年11月9日)
  
○先日、ご説明いただいた構想につき、文部科学省として懸念している事項をお伝えする。

○まず、公務員獣医師養成や人獣共通感染症研究、医学部との連携などは既存の獣医学部でも取り組まれており、日本再興轍賂改訂2015との関係で、「既存の獣医師養成でない構想を具体化」や「既存の大学・学部では対応が困難な場合」という観点から、差別化できるよう、よく検討していただきたい。(表現ぷりの工夫が必要。その際、ハードルを上げすぎないように注意)

○「国際教育拠点」を形成する旨区域方針に書かれているが、先日のご説明では国際性の特色を出す具体的な取組が十分に示されていなかったので、再検討いただきたい。

○需要について、・先日の説明資料では、公務員獣医師の需要にしか言及がなかったが、毎年定員160名の学生の輩出に見合う応用ライフサイエンス研究者等、獣医高度臨床医の具体的需要も説明が必要であり、ご準備いただきたい。

○獣医学部のない四国へ設置することにより、公務員獣医師の確保や地域の防疫・危機管理拠点を形成するとのことであるが、既存16大学では自地域内入学率・就職率ともに低いことから、四国における「具体的な概要」と、地元定着・活用のための具体策も検討が必要である。

○設置申請に向けて、必要な教員確保や施設整備、資金計画など、万全な準備を行っていただきたい。特に資金については、確保できる額によって、構飽の内容も変わってくると考える。確保できる資金と「既存の獣医師養成でない構想」の実現との関係で、十分な検討を行っていただきたい。 

 文科相の松野博一は7月25日の参院予算委員会で小池晃に対して「文書で11月8日に文科省から加計に出したわけではない。11月8日は電話、口頭によって伝えたが、そのための取り纏めとしてのメモがその文書の性格」だと答弁しているから、文書そのものを郵送したわけではないことになる。

 但し7月24日の衆議院予算委の質疑では玉木雄一郎は11月8日に「電話、口頭によって伝えた」と言うことは知らされていなかったが、メールに、〈(局長からは先ほども、早く連絡して、絶対今日中、と言われたところです)〉と記していることからかなり急いでいるように見えることと、2016年11月9日の第25回国家戦略特別区域諮問会議で、〈広域的に獣医師系養成大学等の存在しない地域に限り、獣医学部の新設を可能とすることを認めるため、関係制度の改正を直ちに行う。〉と地域条件を変更して獣医学部新設が決定される前日に出した加計学園に対する様々な指示であることから、“加計ありき”だと断定していたが、「加計学園への伝達事項」なる文書に記されている様々な指示を具体化できる案に纏めるには1日や2日では不可能である。

 大体が第25回国家戦略特別区域諮問会議では地域条件をつけて獣医学部の新設を認めただけで、その獣医学部新設を担う事業主体まで決定されたわけではない。但し表向きは、である。

 2016年10月4日の第24回国家戦略特別区域諮問会議では2016年9月21日に開かれた国家戦略特区諮問会議今治市特区分科会で提案された今治市への獣医師養成系大学新設の提案を全員一致で承認している。

 山本幸三「先月21日に今治市の特区の分科会を開催し、『獣医師養成系大学・学部の新設』などについても議論いたしました。

 これまでの報告等について、有識者議員より御意見ございますでしょうか」
 
 (「異議なし」と声あり)

 山本幸三「ありがとうございました。それでは、速やかに認定の手続きを行います」

 「異議なし」の少しあとになって民間有識者議員の八田達夫の、「『動物のみを対象にするのではなくてヒトをゴールにした創薬』の先端研究が日本では非常に弱い、という状況下でこの新設学部は、この研究を日本でも本格的に行うということを目指しています。

 さらに、獣医系の学部が四国には全くないのです。このため、人畜共通感染症の水際対策にかかわる獣医系人材の四国における育成も必要です。したがって、獣医系学部の新設のために必要です」といった発言以外、議論と言える議論も見当たらないままに諮問会議が決定のプロセスを踏んでいく単なる承認機関の体裁は相変わらずである。

 国家戦略特区指定の今治市に獣医師養成系大学・学部の新設と言うことになれば、既に事業主体がどこなのか、頭に置いた議論をしているはずだし、今治市にしても、一般的な企業を誘致する程度の問題ではなく、獣医系大学ということになれば、事業主体を決めずに新設の提案もできないはずである。

 議長として出席していた安倍晋三にしても今治市=加計学園を頭に入れて議論を見守っていたはずだから、加計学園の獣医学部新設が認められた2017年1月20に初めて事業主体が加計学園であることを知ったというのは虚偽答弁そのものであろう。

 いずれにしても2016年11月8日に電話で伝えた「加計学園への伝達事項」が翌日に控えた2016年11月9日の第25回国家戦略特別区域諮問会議での獣医学部新設決定に向けて出した指示とすることは無理がある。

 大学設置認可権限を所管としている文科省が望んでいることは「加計学園への伝達事項」で要求した指示事項が加計学園が提出することになる大学設置認可申請時の申請内容に満足な形で反映されることであろう。

 でなければ、安倍晋三「総理のご意向」でいくら国家戦略特区諮問会議で今治市に獣医学部新設を認定し、公募によって事業主体を募集、募集に応じて加計学園が応募し、事業主体として認定されたとしても、大学設置認可申請で撥ねられたら、文科省は恥をかくことになる。

 そのために設置認可申請のリハーサルとして申請内容を提出させた可能性は否定できない。その内容があまりにも酷かったから、〈先日、ご説明いただいた構想につき、文部科学省として懸念している事項をお伝えする。〉という表現となって、様々な要望事項を伝達することになった。

 文科省共有の文書の一つとされている2016年10月21日の「10/21萩生田副長官ご発言概要」に、〈和泉補佐官からは、農水省は了解しているのに、文科省だけが怖じ気づいている、何が問題なのか整理してよく話を聞いてほしい、と言われた。官邸は絶対やると言っている。〉なる文言があるが、10月21日から11月8日までは2週間ちょっと間はあるが、文科省が大学設置認可に責任を有している以上は認可対象とする新設大学の教授の質や人数等を含めた教育体制に神経質にならざるを得なかったから、加計学園を事業主体とした獣医学部新設に慎重になっていたとも考えることができる。

 そして内閣府地方創生推進事務局が2017年1月4日、当日から2017年1月11日17時までの期限で、〈広島県・今治市 国家戦略特別区域会議の構成員(特定事業を実施すると見込まれる者)の公募〉を行っている。

 この公募に対して加計学園は国家戦略特区指定の今治市への獣医学部新設の事業主体として2017年1月10 日に応募している。このことは「広島県・今治市 国家戦略特別区域会議の構成員の応募について」(平成29 年1 月10 日)なる題名のPDF記事で公表されている。   

 そしてその応募用紙に「事業を実施する場所」に始まって、「事業の規模」、「事業の実施期間」等共に文科省が「加計学園への伝達事項」で要望した指示事項が、「獣医学部新設の目的」、「新設獣医学部の特徴」等々の小見出しつきで「事業内容」として列記されている。

 文科省が「加計学園への伝達事項」で示した、〈既存16大学では自地域内入学率・就職率ともに低いことから、四国における「具体的な概要」と、地元定着・活用のための具体策も検討が必要である。〉との要望に対しては、「地域入学枠の制定」を設けていて、〈四国地域の高校生の教育機会の均等を図るため、また卒業後の地元への就職を踏まえ、四国出身者を優先させる地域入学枠約30名程度を設定する予定です。〉と記している。

 四国出身者が四国の大学を出て、四国に留まる保証はどこにもないことはこれまでの東京圏一極集中等の都会集中が証明しているが、一応は文科省の要望に対応させた具体策とはなっている。

 加計学園の2017年1月10 日の獣医学部新設応募に対して2017年1月20日開催の第27回国家戦略特別区域諮問会議がなぜか加計学園という名前は出さずに今治市への獣医学部新設として承認している。   

 2017年5月25日の参議院文教科学委員会での文科相松野博一の答弁。
 
 松野博一「学校法人加計学園の獣医学部につきましては、平成29年3月に設置認可の申請があり、4月に文部科学大臣、私から大学設置・学校法人審議会に対して諮問を行いました。申請書の内容につきましては審査終了まで非公開ですが、学校法人加計学園が国家戦略特別区域会議の構成員として応募した事業計画には、新設する獣医学部の入学定員を百六十名とすることが記載をされております。

 現在、大学設置・学校法人審議会において、教育課程、教員組織、施設整備等の教育環境の面から、入学定員の人数に必要な整備がなされる計画となっているかという観点から審査を行っているところであります。

 通常のスケジュールであれば本年8月下旬に答申が出される予定ですが、文部科学省といたしましては、獣医学教育の充実が図られるよう、法令にのっとり適切に審査を進めてまいります」

 2017年3月に設置認可の申請、同年4月に文科大臣が大学設置・学校法人審議会にて諮問申請という手順を踏んだことになる。
 
 一方京都産業大学は2016年10月17日に永田町合同庁舎7階特別会議室で開かれた、「国家戦略特区ワーキンググループ ヒアリング」に出席、「京都産業大学 獣医学部設置構想について」を資料として持ち込んで、国家戦略特区指定の京都府の綾部市への獣医学部設置を提案している。     

 ところが、京都産業大学は撤退することになった。京都産業大学の2017年7月14日の記者会見。

 記者「獣医学部断念の理由は」

 黒坂光副学長「獣医学部は京都府が申請主体だったが、国家戦略特区の実施主体として私どもは申請した。構想はいい準備ができたが、今年(2017年)1月4日の告示で『平成30年4月の設置』になり、それに向けては準備期間が足りなかった。

 その後、(学校法人)加計学園が申請することとなり、(京都産業大獣医学部も含めて)も2校目、3校目となると、獣医学部を持っている大学は少なく、教員も限られているので、国際水準の獣医学教育に足る十分な経験、質の高い教員を必要な人数確保するのは困難と判断した」――

 要するに京都産業大学は2016年10月17日には京都府綾部市に獣医学部を新設することに意欲を見せ、2017年1月3日までは国家戦略特区諮問会議で認定されるスケジュールを立てていたことになる。

 確かに2016年11月9日の第25回国家戦略特別区域諮問会議で〈広域的に獣医師系養成大学等の存在しない地域に限り〉と地域が限定されたことによって近傍に大阪府立大学獣医学部を抱える地域性が京都産業大学にとってネックになったことも考えられるが、文科省が「加計学園への伝達事項」として加計学園側に伝えた2016年11月8日は地域限定を決める前日であり、伝達事項が、加計学園が大学設置認可申請に通過できるよう、文科省側から求めた申請内容のリハーサルに対する懸念事項に対する回答であったとしても、そうではなく、加計学園側から相談の形で試験的に提出された申請内容に対する回答だったとしても、「先日」という表現で11月8日以前の加計学園の対応に対する文科省の対応という関係を取っていて、尚且つ公にはその時点では加計学園1校と決まっていなかったのだから、京都産業大学が獣医学部設置の名乗りを挙げていた以上、京都産業大学の方から求めていなくても、平等という観点から京都産業大学にも提示していいはずの獣医学部設置認可申請にパスするための数々の指示であったはずだ。

 ところが京都産業大学には提示しなかった。しかも朝日新聞が報道したことで公に出回ることになった加計学園に関わる文科省作成とされる文書は文科省の最初の調査で存在しないとされ、国民が納得しなかったことから応じた再調査の結果報告の5月19日の記者会見では、民進党などが指摘した19の文書の内14の文書と同内容の文書を確認、2文書については確認できなかった、残り3文書については法人の利益に関わるという理由付けで「現在のところ、存否を含めて明らかにできない」とした、その3文書のうちの1文書が「加計学園への伝達事項」である。

 求められなくても、京都産業大学に対しても獣医学部設置認可申請にパスするために助言、あるいは指示を示して然るべき平等性に反して加計学園だけに限った不平等性と「加計学園への伝達事項」を法人の利益に関わるからと存否を含めて明らかにしなかった隠蔽性からすると、既に加計学園に決まっていて、その加計学園が獣医学部設置認可申請時に申請内容不備を理由に撥ねられたら、国家戦略特区指定を利用して加計学園の獣医学新設を進めてきた計画そのものが頓挫するばかりか、大学設置認可権限を所管としている文科省としても、文科省を束ねている文科大臣としても立場を失うことになり、そうなることを恐れたことからの申請文書の内容に万全を期すために懸念事項として指示を出した「加計学園への伝達事項」と見なければ、全ての辻褄が合わないことになる。

 いわば“加計ありき”で進めてきたことの一つが「加計学園への伝達事項」となって現れた。

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7月24日、25日追及文書は一般的な職務としての「大学設置認可の事前相談対応」は文科省自作のシナリオ 

2017-07-26 11:16:53 | Weblog

 7月24日衆議院の加計学園安倍晋三政治関与疑惑閉会中審査で民進党の玉木雄一郎が文科省内作成の新しい文書を示して、加計ありきの内容となっていると文科相の松野博一を追及した。対して文科相の松野博一は大学設置の事前審査相談への回答に過ぎないと文書内容を正当化した。

 文飾は当方。

  衆議院予算委閉会中審査

 玉木雄一郎「松野文科大臣、これ、文科省の再調査の中にも出てくるんですねえ。文科省の13番目という資料ですよ。『加計学園への伝達事項』という紙があるんです。ここに(上に上げて周囲にヒラヒラさせて示す)。

 これパネルでも配布資料でも配っているのに文科省はチェックした上で、『存否も含めて言えない』という極めて怪しい文書なんですね。何が書かれているか。これは日付で言うと、この国家戦略特区諮問会議、去年の11月9日に正式に特区に獣医学部新設が認められた日ですよ。

 その前の日に文科省の省内で遣り取りされた文書で、何かと言うと、『今のままでだ』とですね、『加計学園が現段階での構想では不十分だと考えている旨を早急に厳しく伝えるべき。大臣及び局長より』。

 つまり正式に獣医学部ができるかどうかまだ分からない段階で、今のままでいくと、あなたのところは条件を満たせないから、次々のことをきちんとやりなさいよということを前日に慌ててですね、文科省から加計学園に、『家計学園への伝達事項』ということで文書があるんですよ、これ。

 物凄い加計ありきなんですよ、これ。タイトルも、『加計学園』。タイトルが『加計学園』なんですから。山本大臣は加計学園が獣医学部を提案してきた、詳しい提案を出してね、京産大と平等に審査したと言うけれども、そもそも国家戦略特区諮問会議決定の前からですね、加計学園、あなたのところはこういう所がまだ満たされていないんで、早くやんないと大変ですよ。

 例えば人獣共通感染症研究とか、医学部との連携などは既存の獣医学部でも取り組まれているので、ちゃんとやろうと、条件が合いませんということを言っているんですよ、心配して。

 つまり文科省はですね、認める前提で条件だけをはちゃんと満たしてくださいと言っているんです。大臣、これメールの中に出てきます。大臣も今のままでは不十分だということで早急に伝えるべきだと指示を出されましたか」

 松野博一「お答えを致します。先ず予算委員会の中でも繰返し答弁をさせて頂いておりますが、国家戦略特区の案件であってもですね、大学設置の事前審査、相談は受け付けておりますし、要望があれば、それに対して文科省として対応させて頂いております。

 で、あの、その文書に関してでございますけれども、結論から言いますとですね、その文書の存在、6月15日の時点に於いては、これ、相手方が公開に関して望まないということでございましたので、存否に関する応答を控えると致しましたけれども、その後のですね、情報公開制度に則った調査によってですね、相手に意思確認をしたところ、期限内に相手からですね、これを拒否する、公開をしないでくれという趣旨の要望がなかったものですから、先生からご指摘のあった文書は存在するということを先ずお話をさせて頂きたいと思います。

 その上でですね、いやいや、存在すると今お答えしたわけですが、これ情報公開制度に則って全体の一つとしての(?)請求でございましたので、最終的な調整を、どうするのかということをしているところでございますが、しかし今先生の方からですね、この場に於いてご質問がありました。

 そして特にこれは重要な案件だということでございますので、この文書に関して6月15日の発表の時点に於いては存否応答を拒否しましたけれども、現状に於いてはですね、その文書は存在すると言うことをお話させて頂きました」

 玉木雄一郎「これはねえ、びっくりしましたよ。加計学園にですね、事前にこんなに詳細に伝達してですね、閣議決定決める前ですよ、えー、諮問会議決定。こんな加計ありきの文書の存在が今日明らかになりましたね。

 これはね、紛れもない加計ありきの文書だと思いますよ。総理、最後に伺いますが、今日、ずーっと聞いているとですね、秘書官も、そして補佐官も、『記憶にない』と言うけれど、明確に否定していないんですね。

 総理自身も秘書官、補佐官が関与したということは、これは総理、総理自身が働きかけて、一定のこの結果に導いたと言わざるを得ないんじゃないですか。総理は働きかけて決めているなら、責任を取るとおしゃいました。

 総理、責任を取られるべきじゃないですか。それと合わせて、今回加計学園の、この獣医学部、一旦白紙に戻しませんか。このままやったとしても非常に悪い印象がついたまま。

 ですから、総理、結論してください。白紙に戻して、もう一度手続きを遣り直す。これが信頼を回復する一番の方法だと思いますが、いかがですか、総理」
 
 松野博一「繰返し答弁させて頂いておりますが、国家戦略特区に於いても大学の設置の事前審査相談は、これは受け付けております。しかしその中に於いてですね、当然前提であるとこが国家戦略特区がクリアできるところでございますから、その国家戦略特区をクリアするということは、先程来ございますけれども、4条件についての文科省としての考え方をお伝えをし、かつ大学の設置に向けてですね、事前に相談を受けたことに関してアドバイスをしているということで適切なものであると考えております」

 安倍晋三「只今松野文科大臣から答弁させて頂いたようにですね、文科省としても法令に則って適切に対応していると、このように思います。そして私が働きかけたかどうか、あるいは指示をしたかどうかについては今日、参考人として出席をした前川参考人も含めて、また加戸(守行前愛媛県)知事もそうでありますし、政府の参考人も全てですね、私からの指示はなかったと、このよに述べているものと承知しておりますし、私は実際に指示をしていないわけでございます。

 ただプロセスに於いては、国家戦略特区、全体のプロセス、同じように民間議員の入った諮問会議、そして同時にですね、同時にまた専門家を招いたワーキンググループでしっかりと、オープンな議論をし、適切に判断をされていると承知をしておりますが、しかしただ省庁間のやりとりにつきましてはですね、第三者が入っていない中に於いて確かにこの、意見が食い違っているのは事実であります。

 えー、そういう問題は今後ですね、プロセスを進めていく上に於いて反省点であろうと、このように思いますし、今回のことについても、私の友人が関わっていることですありますから、疑念の目が向けられていることについてですね、十分これは考えながら何ができるかということを真剣に考えていきたいと思います」

 答えていないとう声で戻る。

 安倍晋三「今申し上げましたようにですね、まさに決定のプロセス、オープンなプロセスを積んで決定されたものであります。国家戦略特区諮問会議、あるいはワーキンググループの議事録もオープンに伝えておりますし、事業者が申請し、それに対して今治分科会議に於いてですね、まさに文部科学省が推薦する専門家も入って、議論した上に決定されたものと承知をしておりますので、白紙にすることは考えておりませんが、しかしこの国民のみなさまのですね、疑念を晴らす上に於いては、何ができるかということを真剣に考えていきたいと、このように考えております」

 玉木雄一郎「全くですね、オープンになっていません。肝心なとこで文書がない、記録がないということですね、疑惑が深まるだけですから、加計理事長にもご参加いただいて、再度閉会中審査をして戴くことを求めて、質問を終わりたいと思います」 

  玉木雄一郎は2度「加計ありきの文書」だと言い、1度「加計ありき」だと批判している。 

  翌7月25日の参院予算警戒中審査でも共産党の小池晃が取り上げて松野を追及している。

 2017年7月25日参院予算警戒中審査:「産経ニュース」  

 小池晃「加計ありきだったという問題だが、昨日、文科大臣は昨年11月8日に文科省が加計学園への伝達事項、この文書が存在することを認めた。国家戦略特区諮問会議の前日の8日に加計学園に伝えていた。獣医学部新設の対象は加計と考えていたということですね」

 松野博一「文書で11月8日に文科省から加計に出したわけではない。11月8日は電話、口頭によって伝えたが、そのための取りまとめとしてのメモがその文書の性格。あわせて答弁しているが、国家戦略特区に関する件でも大学の設置認可の事前相談は従来受け入れているものだ。それに関して通常の文科省の業務として行った事前相談に関して、加えてこれは文科省からというよりも加計学園側からの問い合わせに関して応えたものだ」

 小池晃「だいぶ違うのではないかと思うが、この伝達事項という文書は、メールと一緒に文科省内で回覧されている。メールの中には、昨日、大臣、局長および加計学園に対して文科省としては現時点での構想では不十分だと考えている旨、早急に厳しく伝えるべきだとご指示があった。メールには書いてある。大臣、そういう指示を出したのか」

 松野博一「今回公表した文書およびメールはあくまで事前相談であるということは答弁させてもらったとおりだが、加計からこの時期に国家戦略特区を活用した設置についての問い合わせがあった。担当者にヒアリングをしたところ、そういった状況の中で、どうして今、指摘があったような表現になったか、確たることは記憶にないが、11月8日の状況を勘案すると11月9日に追加規制改革事項が決定されることが見込まれるところ、たとえ追加改革事項が決定されても獣医学部の新設に関しては別途、設置認可のプロセスが必要であると。そのためにさまざまな課題をクリアする必要があることをこの時点で伝えることが必要あるということが事務方から、こういった意識が私に伝えられたので、そういう判断ならばそのようにしたらといったと思う」

 小池晃「ということは、諮問会議で広域的に獣医学部が存在しない地域に限りという文言が加わって、加計学園しか事実上通れない穴をつくったけれども、しかし今のままでは加計学園は、この穴すら通ることができないと。

 だから文科省はこれだけの厳しい指摘をしたわけではないか。このままでは国家戦略特区の要件だって満たしませんよ、という警告に近いもの。こういうことを文科省は加計学園に前の日に伝えた。大臣、私が聞いているのは、どうやったら穴が通れるかまで、手取り足取り情報提供したわけでしょ。そのことの是非を言っているわけではない。

 文科省としては設置認可に通りませんよと、そのための助言をしたんでしょ。要するに文科省としては加計学園が翌日に決定される国家戦略特区諮問会議の獣医学部新設の対象が加計学園になるという認識を持っていたということですよね」

 松野博一「設置認可申請を受け入れることになったとしても、当然ながら大学設置というプロセスがあるから、それに向けて取り組んでほしいという趣旨のことだし、加計学園側から大学の事前設置に関する相談があった。

 ですから加計学園に関して国家戦略特区に絡む事案なので、まず設置認可を取るためにはそのプロセスとして国家戦略特区に対する対応をしっかり、これは今治であったということがなければ駄目ですよと、それに関しては4条件に関してのことがしっかりなされないと開かれないというアドバイスをしたということ」
 小池晃「メールはそんな中身ではない。非常に厳しく伝えないと駄目だと、大変だと。翌日、諮問会議通らないと。私の事務所に送られてきた文書には、告発してきたと思われる方のメッセージも添付されている。

 こう書いてある。『国家戦略特区諮問会議における決定前に加計学園側とすりあわせが行われていたことからも総理のご意向をかなえるべく、文科省が出来レースに加担していたことは明らかだ。設置申請に向けて国家戦略特区における事業者として加計学園を総理が決定した後、文科省に対して行う設置申請を見越してのすりあわせであると。加計学園による新設ありきで検討が進められたことに対して厳しく糾弾してほしい』と。こういう手紙が来ている。

 またそうすると誰が誰が誰が誰がとさわぐ。われわれがこういう文書を示すと、全く反省していない、怪文書だという。自民党、まったく反省していない。出所が不明確だとかそういったことしかいえない。これが今の自民党ですよ。だから、これだけ国民から見放されているんじゃないですか。そのことを知るべきだと思う。

 総理ね、一点の曇りもないといっているけど、例えば昨日の毎日新聞世論調査では政府の説明が信用できない76%。それでも一点の曇りもないというのか。これは一点の曇りもないなんて発言は撤回するべきだ」

 安倍晋三「一点の曇りもないということは、まさに特区諮問会議に民間議員が入っていただき、ワーキンググループがあるが、民間の八田達夫座長が『プロセスには一点の曇りもない』と申し上げているところだ」

 小池晃「一点の曇りもないなんていう発言に国民は不信を深めている」

 野党側は「加計ありき」と言い、松野博一は一般的な「大学設置認可の事前相談対応」だと言い、安倍晋三は「一点の曇りもない」と言う。印象的にはどちらに正当性の軍配を上げるかと言うと、前者だと思うが、実際に「加計ありき」だったのか、論理的な実態究明とまではいっていない。

 「加計学園への伝達事項」なる文書は文科省の再調査を受けた2017年6月15日の松野文科相の記者会見で存在は明らかになったものの、法人の利益に関わるという理由付けで「現在のところ、存否を含めて明らかにできない」とした3文書のうちの一つなのだろう。

 玉木雄一郎は情報源秘匿の理由からか、いつどこから手に入れたとは言わなかったが、民進党が2017年6月2日に国会内で開いた「加計学園疑惑調査チーム」が民進党サイトで既に公開している。  
 文部省の職員の誰かがリークした可能性があるが、松野博一に「大学設置認可の事前相談対応」だとかわされたのでは、国民に「加計ありき」の印象を与えることができたとしても、追及という点では不発に終わったことになる。

 玉木雄一郎が資料として「加計学園への伝達事項」なる文書をPDF記事で画像にして公表しているから、テキスト文に直してみた。なお、この文書は件名「【情報共有・追加あれば】本日加計学同に伝達する事項ベーパー」なるメールと一対を成しているから、メールの画像とそのテキスト文を載せておく。

  「加計学園への伝達事項」(2016年11月9日)  

○先日、ご説明いただいた構想につき、文部科学省として懸念している事項をお伝えする。

○まず、公務員獣医師養成や人獣共通感染症研究、医学部との連携などは既存の獣医学部でも取り組まれており、日本再興轍賂改訂2015との関係で、「既存の獣医師養成でない構想を具体化」や「既存の大学・学部では対応が困難な場合」という観点から、差別化できるよう、よく検討していただきたい。(表現ぷりの工夫が必要。その際、ハードルを上げすぎないように注意)

○「国際教育拠点」を形成する旨区域方針に書かれているが、先日のご説明では国際性の特色を出す具体的な取組が十分に示されていなかったので、再検討いただきたい。

○需要について、・先日の説明資料では、公務員獣医師の需要にしか言及がなかったが、毎年定員160名の学生の輩出に見合う応用ライフサイエンス研究者等、獣医高度臨床医の具体的需要も説明が必要であり、ご準備いただきたい。

○獣医学部のない四国へ設置することにより、公務員獣医師の確保や地域の防疫・危機管理拠点を形成するとのことであるが、既存16大学では自地域内入学率・就職率ともに低いことから、四国における「具体的な概要」と、地元定着・活用のための具体策も検討が必要である。

○設置申請に向けて、必要な教員確保や施設整備、資金計画など、万全な準備を行っていただきたい。特に資金については、確保できる額によって、構飽の内容も変わってくると考える。確保できる資金と「既存の獣医師養成でない構想」の実現との関係で、十分な検討を行っていただきたい。 

 次にメールの画像とそのテキスト文。

 
日付:2016/11/O8 11:59

件名:【情報共有・追加あれば】本日加計学同に伝達する事項ベーパー

設置室、私学部 御中 ← 高等教育局専門教育課 ■ (■)

 先日に加計学園から構想の現状を聴取したことについて、
昨日、大臣及び局長より加計学園からに対して文科省としては
現時点の構造では不十分だと考えている旨早急に厳しく伝えるべき、
というご指示がありました。
 (局長からは先ほども、早く連絡して、絶対今日中、と言われたところです)

そこで、私から先方の事務局長に添付内容をお伝えしようと思っておりますところ、

追加で指摘すべき事項や修正があれば、本日13時半までに教えて下さい。
14時に先方から電話が来る予定です。

大臣レク3まいものの懸案事項を引く形で作成しております。

よろしくお願いいたします。

 先ず松野博一は玉木雄一郎に対して「その文書の存在、6月15日の時点に於いては、これ、相手方が公開に関して望まないということでございましたので、存否に関する応答を控えると致しましたけれども、その後のですね、情報公開制度に則った調査によってですね、相手に意思確認をしたところ、期限内に相手からですね、これを拒否する、公開をしないでくれという趣旨の要望がなかった」として文科省の文書であることを認めている。

 いわば怪文書でも何でもない、実在の文書だと。

 「情報公開制度に則った調査によって」と言っている意味がよく分からないが、情報公開制度に則って公開請求された場合は公開してもいいのかの意思確認を問い合わせたということなのだろうか。

 いずれにしても、文書に書かれている内容が文科省による一般的な「大学設置認可の事前相談対応」に過ぎないとしたら、なぜ加計学園は公開を望まないという態度を取ったのだろうか。

 安倍晋三が友人だからと便宜を図った政治関与もなく、獣医学部新設認定のプロセスに一点の曇りもなければ、公開に応じても良かったはずだ。

 あるいは痛くもない腹を探られたら困るという意識があったのだろうか。

 次に最初は公開を望まない態度を取っていながら、何らかの情報公開制度に関わる公開諾否の意思確認の問い合わせに対して何の連絡もなかったと言うのはどういうことなのだろう。

 「期限内に相手からですね、これを拒否する、公開をしないでくれという趣旨の要望がなかった」と言うことは、何の連絡もなかったということであろう。

 また、7月24日と7月25日の両日共に松野博一が国会答弁で文書は一般的な職務としての「大学設置認可の事前相談対応」を記した内容のものに過ぎないとしているのに対して6月15日の記者会見では法人の利益に関わるという理由付けで「現在のところ、存否を含めて明らかにできない」としたのは明らかに矛盾することになるが、どのような理由があってのことなのだろうか。

 文書の内容のどこに法人の利益に関わる個所があるのか、明らかにして貰わなければならない。

 こちらから明らかにするとしたら、6月15日の記者会見では法人の利益に関わるという理由付けで「現在のところ、存否を含めて明らかにできない」とした文書を7月24日と7月25日の両日には一般的な職務としての「大学設置認可の事前相談対応」を記した、何の問題もない文書だと変えたのはのは、6月15日の記者会見の時点ではその手の文書だとは取り扱ってはいなかったからだろう。

 事実、その手の文書だと最初から取り扱っていたなら、今回と同様に文書の存在を認め、その内容も公表していたはずだ。

 要するに一般的な職務としての「大学設置認可の事前相談対応」を記した内容の文書だというのは後付けの理由に過ぎないということである。

 文科省内の職員の誰かのリークによっていずれかは紛れもなく実在する文書だと明らかになる危険性に備えて存否を明らかにできないとした文書の内容を、その文面から読み取ることのできる「加計ありき」を抹消して問題のない文書だと正当化するための理由付けとして一般的な職務としての「大学の設置認可の事前相談対応」を持ち出したということなのだろう。

 但しそのような正当化の理由付けを行った場合、一旦は存否を明らかにしなかったことと矛盾するために、「その文書の存在、6月15日の時点に於いては、これ、相手方が公開に関して望まないということでございましたので、存否に関する応答を控えると致しましたけれども、その後のですね、情報公開制度に則った調査によってですね、相手に意思確認をしたところ、期限内に相手からですね、これを拒否する、公開をしないでくれという趣旨の要望がなかった」として文科省の文書であることを認めるという文科省自作のシナリオを作った。

 文科省自作のシナリオとすることで、加計学園が最初は公開を望まない態度を取っていながら、何らかの情報公開制度に関わる公開諾否の意思確認の問い合わせに対して何の連絡もなかったという疑問も解ける。

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安倍晋三の加計学園獣医学部新設申請「今年の1月20日に知った」はウソを事実に見せかける過剰否定の典型

2017-07-25 13:03:09 | 政治

 安倍晋三が7月24日(2017年)の加計学園安倍晋三政治関与疑惑の衆議院閉会中審査で午前中、民進党の大串博志の質問に加計学園理事長加計孝太郎の獣医学部新設申請を知ったのは「広島県・今治市 国家戦略特別区域会議の構成員の応募」に事業主体として加計学園が獣医学部新設を応募申請し、その申請が正式に決定した2017年1月20日だと答弁した。    

 それまでは30年来の腹心の友でありながら、一度も宜しくと頼まれたこともないし、安倍晋三自身も知らないでいたと答弁している。文飾は当方。
 
 民進党の大串博志は安倍晋三と加計孝太郎が2013年11月18日から2016年12月24日までにゴルフをしたり、食事をしたりして分かっているだけで14回も会っている。表に出ない回数を含めたら、もっと会っているかもしれないと、両者を極くごく親しい間柄であることを見せておいてから、次のように質問している。

 大串博志「改めてお伺いいたしますけども、これらの話の中で一度も、一度もですね、加計理事長との間で、先程は頼まれていないとおっしゃいましたが、加計理事長がこの獣医学部新設を願い出るということは話題にものぼらなかったのでしょうか」

 安倍晋三「先程ご答弁致しました通り、加計さんとは政治家になるずっと前からの友人関係です。しかし、彼が私の地位や立場を利用して、何かを成し遂げようとすることは一度もなかったわけであります。

 そこで彼はチャレンジ精神を持った人物であり、時代のニーズに合わせて新しい学部や学科の新設に挑戦していきたいという趣旨のお話は聞いたことはございますが、しかし今まで彼も様々な学部・学科を作ってきたわけでありますが、そういうことも含めて具体的にですね、何かを今、作ろうとしている。ですから、今回で言えば獣医学部をつくりたい。さらには今治市にといった話は、一切ございませんでした」

 場内から「えー」の声。

 大串博志「加計理事長は一度も獣医学部を作りたいということを、申請しているということを安倍総理に言わなかったということを今言われましたが、総理は加計理事長ですね、構造改革特区にも十数回、ずっと獣医学部新設の申請をされています。あるいは2年前から国家戦略特区に移行して申請をされていまる。

 総理は加計理事長がその獣医学部新設に対して特区に於いて申請をされているというふうに知られたのはいつですか」

 安倍晋三「構造改革特区について加計理事長は申請していたわけでござます。安倍政権に於いてもですね、4回申請をされ、民主党政権の最後に申請をされ、その判断をしたのは安倍政権であったのも入れるとですね、5回でございますが、5回ともですね、我々は事実上認めていないわけございます。

 そこでですね、この構造改革特区については説明がございますが、いわば事実上認めない・・・、十数種のですね、申請がございますが、ございますが、認めていないものでございますので、私はそのときにですね、説明は受けていないものでございます。

 ですから、その加計学園の申請が正式に、この認められた、あー、国家戦略特区諮問会議に於いて、私が知るところに至ったわけでございます」

 大串博志「あのー、正確にお答えください。いつですか」

 安倍晋三「ま、これはですね、1月の20日に加計学園の申請が正式に決定したわけでございます」

 大串博志「もう一度お尋ねします。加計学園が申請しているということを今年の1月に認められたときに初めて知ったということですか」

 安倍晋三「先程申し上げましたようにですね、私は知り得る立場にはあったわけでございますが、しかしそのことについてのですね、具体的な説明は私にはなかったわけでございます。今、知った時期については今申し上げた通りでございます」

 大串博志「総理ね、本当に加計理事長が申請をした、獣医学部新設を申請したこと自体を知ったのが1月の末だとおっしゃるのですか。俄にはね、信じられないですよ。と言いますのは、去年の秋以降、国家戦略特区諮問会議、23回から24回、25回、総理がね、総理が出席している会議ですよ。

 総理が出席している。その間にワーキンググループも開かれて、各関係人からヒアリングをするんですね。その結果も含めて、諮問会議で、総理のいるところで議論をされているんです。

 俄に信じ難い。そこでもう一度お答えください。いつ、いつ、いつですね、総理が加計学園の理事長が申請されたということを総理の頭の中で認識されたのはいつですか」

 安倍晋三今回の議論は今治市ということで議論されていました。事業者はその段階で決まっていないわけです。その観点から、先ほど申し上げました通りです」

 大串博志はもうここでいつ知ったのかという質問をやめるべきだった。だが、延々と続けて、延々とかわされることになった。

 要するに安倍晋三が言っていることは、構造改革特区や国家戦略特区に事業新設の申請をしても、政府側が認めなかった場合は安倍晋三のところにまでその新設に関わる具体的な内容は上がってこないから、加計学園が過去15回獣医学部新設を申請したとしても、それがどのようなものか知りようがないし、しかも「今治市ということで議論されていた」ために今治市が規制改革のどのような事業を想定していたか把握することができなかった、だから、2017年1月20日の国家戦略特区諮問会議で「広島県・今治市 国家戦略特別区域会議の構成員の応募」に加計学園が事業主体として獣医学部新設の応募申請を行い、その申請が正式に決定した時点で知ることになった。

 安倍晋三の加計孝太郎の会話は第三者には記録という証拠が存在していない以上、窺い不可能である。存在している証拠は安倍晋三が出席している諮問会議の議事録と言うことになる。

 だとしたら、安倍晋三の論理を崩すためには議事録を駆使するしかない。

 駆使せずに同じ質問を続けるから、ほぼ同じ答弁を獲物とすることになる。

 大串博志「申請を知ったのはいつですか。ぜひ答えてください」

 安倍晋三「あの、先程答弁をさせて頂いたところでございますが、いわば今回の申請は、あー、今治市ということで、の議論になって、国家戦略特区ははその議論でございます。

 そこでいわば事業者を議論される段階でいわば決まっていないけでございます。この観点からいわば、先程申し上げましとおりでございます」

 安倍晋三は次のようにも答弁している。

 安倍晋三「ま、この国家戦略特区諮問会議に於いてはまさに、その国家戦略特区制度についてはですね、これは自治体、自治体がこれは申請するわけであります」

 自治体が申請する制度で事業者が申請する制度ではないから、今治市が申請しているのは知っていたが、まさか加計学園が獣医学部新設を申請しているとは知らなかったと言う論理となっている。

 午後になって民進党の玉木雄一郎が「いつ知ったのか」を午前中の大串博志を引き継ぐ形で追及している。

 玉木雄一郎は東大法学部卒の48歳。安倍晋三がどうとでも体裁の良い自己都合の答弁で応えると考えもせずに「内閣支持率が低下をしている。なぜ低下していると考えるか」などと時間のムダとなる愚にもつかない質問から始めた。

 安倍晋三の体のいい答弁に対して玉木雄一郎は、「依怙贔屓と全省庁を挙げた隠蔽体質。この2つではないか。これまでと説明の丁寧さが変わらないなというのが正直な印象です」などと言って、自身の印象をテレビ中継を通して広く広めようと試みたようだが、広めることに成功したとしても、安倍晋三の政治関与を暴くことに成功しなければ、安倍晋三のクビを繋ぐことになって、前者の成功は殆ど意味をなさないことになる。

 当然、加計学園獣医学部新設認定に於ける安倍晋三の容疑を殺人事件の法廷に立った検事のように容疑から犯罪そのものに昇格させる追及一点に絞るべきだが、そのことに気づかずに容疑の周りをウロウロするだけの追及になっている。

 玉木雄一郎「午前中の質問に関していくつかよく分からないところがありましたので先ず一点確認したいと思います、一番私が驚いたというか、納得できないのなと思ったのは、総理がですね、加計学園の加計理事長と何度も何度も食事やゴルフをしているという話の中で、1月20日、今年の1月20日になるまで、まあ、申請していたことを知らなかったという話がありました。

 本当かなあーと思いますが、これ獣医学部を作りたいという意思はですね、加計学園が持っていたことは、もうずっと総理もご存知だったと思いますが、本当に今年の1月20日になるまで加計学園が、加計理事長が特区で獣医学部を作りたいという意図を持っていたとも知らなかったということでよろしいでしょうか」

 安倍晋三「それはその通りでございます」

 「えー」という声ががる。

 玉木雄一郎「いや、総理、午前中にですね、小野寺議員からですね、構造改革特区でありますけれども、15回、ずうっと、構造改革特区に獣医学部新設を加計学園は求めてきた。

 全部跳ねられたわけですね。構造改革特区では民主党政権も含めて。で、第2次安倍政権になってからも、数え方にもよりますけでも、5回、15回の内5回はですね、第2次安倍政権ができてから、構造改革特区で獣医学部の新設を申請してきているんですよ。

 それでも総理、今年の1月20日になるまでですね。獣医学部を作りたいという思いがあること自体、全く知らなかったということで宜しいでしょうか。もう一度」

 安倍晋三「これはもう午前中答弁させて頂いたところでございますが、構造改革特区につきましてはですね、安倍政権になりまして、5回、そのうち1回は野田政権で申請されて、安倍政権で結論を出しているわけですが、その5回とも認めていないわけでございます。
 
 いわば、数十のこれは構造改革特区があるわけでございます。5、6の構造改革特区がこれ認められていないわけです。その内の1つでございますので、その点については説明を受けていないのでございます」

 質問も午前中の質問の引継ぎで、答弁も午前中の引き継ぎとなっていて、本質的には何も変わらない。

 玉木雄一郎「うん?説明を受けていない。腹心の友と言われるお友達ですよね。それはご自身がお認めになっていて、で、構造改革特区で獣医学部の申請をですね、15回やっている方と10何回ゴルフ、食事をしててですね、全くその話が出ないというのはですね、テレビをご覧の皆さんも、『本当かねー』と思っていると思いますよ。

 真摯な説明を本当に答弁されているのかと思います。因みに、実はですね、昨年9月9日に国家戦略特区諮問会議が開かれています。議長は総理です。総理ご自身がご出席をされております。麻生大臣はそのときは欠席で、副大臣が出席をしています。

 そのときに何が議題になったかというとですね、これ色々とですね、まあ、議案になっているんですが、残された岩盤規制改革の断行、重点6分野の推進ということがですね、議論になってまして、国家戦略特区の今後の進め方と言うことで、まあ、八田座長初めとしてですね、そこが文書出しているわけですね。

 その中にこれからこういうことをやっていかなければいけないという中の6番目に獣医学部の新設が明記をされ、資料だけかと思ったが、議事録を読んでみまましたらですね、明確に9月9日、総理出席の上で、えー、八田さんからですね、例えば『獣医学部の新設は人畜共通の病気が問題になっていることから見て極めて重要だ』と、発言まであるんですね。

 で、15回も構造改革特区での申請をされておられるということ、そして9月9日にですね、総理が出席した会議で獣医学の話がきちんとプレゼンテーションされている中でですね、今年の20日になるまで、1月20日になるまで、全くそういう意図が加計さんになかったなんて俄に信じられませんよ、これは。

 総理、じゃあ、お約束頂きたいのですが、もしですね、総理が何らかの形で、前から加計理事長が獣医学部を作りたいと、特区で作りたいという意図がですね、もしあったということ、もし総理が知っていたことが何らかの形で分かったら、総理、責任を取って辞任をされますか」

 安倍晋三「あのー、この問題については、私と加計氏がですね、友人であったから何らかの指示、あるいは働きかけがあったのだろうという議論でございました。ま、しかし、第1次政権ができたときにもですね、先ほど加戸守行前愛媛県知事がお話をされたように今治市が働きかけをしていたわけですが、全く対応していないわけでございます。

 そのときも私は加計氏とは友人でござます。そして第2次政権ができて、今玉木委員がおっしゃったように5回申請しているわけでありますが、事実上5回とも却下しているのが事実でございます。

 いずれにせよ、知っていようが知っていまいがですね、私がですね、私が便宜を図るということはないわけでありますし、そしてこの件につきましてはですね、私は加計さんからは新しいこの時代のニーズに応えて新しい学部やですね、この学科の新設にチャレンジしていきたいという気持ちはいつも持っているというお話は聞いた、大体そうした趣旨の話は聞いたことがあります。

 しかし同時にですね、彼はこれまで友人関係である間にですね、様々な学部を新設をしてきたわけでございますが、その際に私に具体的にこういうことを作っていきたいという話をしたことは1回もないでわけでありますし、勿論依頼をしたことは全くないわけであります。私はこれを正直に申し上げており、その上に於いて総理大臣としての職責を今後も果たしていきたいと、こう考えているところでございます」

 「知っていようが知っていまいがですね」という発言は微妙である。「1月20日まで知らなかった」を軌道修正に転ずるのかと思ったが、そうではなかった。

 玉木雄一郎「今の答弁が偽りであれば責任は取られますか」

 安倍晋三「いつも私はですね、ここでご発言させていただくことについては常に総理大臣として責任を持って答弁させていただいております」

 玉木雄一郎「責任を持って答弁されているのはその通りだと思います。今の答弁がですね。虚偽答弁であったと後に分かった場合には責任を取られますか。そのことを聞いております」

 安倍晋三「これおは森友学園の問題について、私がそういう趣旨の答弁をしたところでございますが、それによって本来政策の問題が議論される場が変化してしまったという批判を随分浴びたわけでございます。

 いずれにせよ、いずれにせよ、私がですね、この場に於いては正直に事実に基づいて正直にお話させて頂いているところでございます」

 答弁のし直し

 安倍晋三「私はですね、常にこの国会に於いてですね、総理大臣としての責任を以って、答弁をさせて頂いているところでございます」

 キリがないから、以下省略。玉木雄一郎は「今の答弁が偽りであれば責任は取られますか」と言っているが、「偽りであれば」は仮定に過ぎない。「偽り」であっても偽りであることを証明できなければ、単なる疑惑で終わって、責任にまで波及することは先ずない。

 証明できないままに仮定で責任を迫っても、大串博志の安倍晋三の支持率低下について尋ねたときと同じように体のいい答弁しか返ってこないと前以って考えることもできないようだ。

 2015年12月15日の安倍晋三が出席している第18回国家戦略特別区域諮問会議で愛媛県今治市は国家戦略特区に3次指定されている。この時も加計孝太郎から安倍晋三に何の挨拶もなかったことになる。

 2015年12月15日の「第18回国家戦略特別区域諮問会議」を見てみる。     

 石破茂進行役「法第30条第1号及び第3号の規定により、国家戦略特区の指定及び区域方針について御審議をいただきますが、前回の諮問会議やワーキンググループの議論を踏まえた案をお示しいたしております。国家戦略特区の第3次指定の対象となる区域といたしまして、広島県及び愛媛県今治市、千葉県千葉市、福岡県北九州市の3地域を考えております。

    ・・・・・・・

 (今治市は)ライフサイエンスなどの新たに対応すべき分野における獣医師系の国際教育拠点の整備については、6月の改訂成長戦略に即して行います」

 要するに今治市は国家戦略特区を利用した事業の一つに「獣医師系の国際教育拠点の整備」を考えていた。だが、安倍晋三は今治市が考えている「獣医師系の国際教育拠点」の事業主体がどのような大学なのか、あるいはそのような研究を掲げたどのような企業なのか、あるいはどのような研究機関そのものなのか、誰にも聞かなかったし、安倍晋三自身も気にも留めなかったことになる。

 玉木雄一郎は2016年9月9日の第23回国家戦略特区諮問会議での有識者議員の八田達夫の発言を取り上げているが、実際は「重点6分野ごとに、高い優先事項で実現する『センターピン・プロジェクト』の候補を次ページにつけました」という表現で岩盤規制を打ち破る優先事項として挙げた6分野の一つとして「獣医学部の新設」に言及しているが、今治市の名前は誰も出していない。
 
 だとしても、「第18回国家戦略特別区域諮問会議」の続きで、「獣医学部の新設」は今治市の国家戦略特区指定に基づく事業だと関連付けなければならない。当然、この段階に至っても、「獣医学部の新設」の事業主体が如何なる組織なのかを考えも気に留めもしなかった。

 安倍晋三は「今回の議論は今治市ということで議論されていました。事業者はその段階で決まっていない」と答弁しているが、今治市の背後には既に事業実施主体が存在していたのである。

 今治市の背後に既に事業実施主体が存在していなければ、「獣医学部の新設」の提案も、「獣医師系の国際教育拠点の整備」の提案もできない。

 だが、安倍晋三はそこまでは考えず、気に留めもせずに議長席に座って、耳を傾けていたことになる。

 2016年10月4日の第24回国家戦略特区諮問会議では「今治市」と併行して「獣医師養成系大学・学部の新設」の文言が出てくる。     

 山本幸三「先月21日に今治市の特区の分科会を開催し、『獣医師養成系大学・学部の新設』などについても議論いたしました。

 これまでの報告等について、有識者議員より御意見ございますでしょうか」

  (「異議なし」と声あり)

 山本幸三「ありがとうございました。

 それでは、速やかに認定の手続きを行います。また、共同事務局についても、有効に活動させていただきたいと思います」

 相変わらず満足な議論も行わずに単なる承認機関に成り下がっている。

 そして安倍晋三ヨイショ男八田達夫民間有識者議員。

 八田達夫「最後に、先ほど今治市の分科会での話が出ましたので、ちょっとそれについて、この民間人ペーパーから離れますが、私の意見を申し述べさせていただきたいと思います。

 今治市は、獣医系の学部の新設を要望しています。『動物のみを対象にするのではなくてヒトをゴールにした創薬』の先端研究が日本では非常に弱い、という状況下でこの新設学部は、この研究を日本でも本格的に行うということを目指しています。さらに、獣医系の学部が四国には全くないのです。このため、人畜共通感染症の水際対策にかかわる獣医系人材の四国における育成も必要です。

 したがって、獣医系学部の新設のために必要な関係告示の改正を直ちに行うべきではないかと考えております」

 ここに至っても安倍晋三は国家戦略特区諮問会議の議長でありながら、今治市が計画している獣医師系養成大学の事業主体がどこなのか頭に浮かべも考えもしなかった。

 そして「現在、広域的に獣医師系養成大学等の存在しない地域に限り獣医学部の新設を可能とするための関係制度の改正を、直ちに行う」と地域条件の変更を「資料3」の案で示して、同じく議論を殆んどせずにまるで既定方針であったかのように「異議なし」で決めた2016年11月9日の「第25回国家戦略特別区域諮問会議(議事要旨)」      

 ここでは「今治市」という言葉は出てこないが、「広域的に獣医師系養成大学等の存在しない地域に限り」と地域条件を変更している以上、どのうような地域に限定した変更なのか出席者の誰もが認識していなければ、いくら承認機関に成り下がっていたとしても「異議なし」とはすることができない。

 認識していないままに「異議なし」としたなら、これ程の無責任はない。子どもの会議になってしまう。諮問会議議長の安倍晋三に対しても同じ指摘がされることになる。

 今治市と加計学園は2007年から2014年まで計15回、連携して獣医師の定員増の規制の地域解除を提案してきた。そして2015年6月4日、両者は第2次安倍政権が進めたアベノミクスの成長戦略の柱「国家戦略特区」に「国際水準の獣医学教育特区」を提案した。そして2015年12月15日の「第18回国家戦略特別区域諮問会議」で愛媛県今治市は国家戦略特区に指定された。

 つまり今治市の背後に獣医学部新設の事業実施主体を加計学園に置いていなければ、国家戦略特区に関わるワーキンググループも諮問会議も獣医学部設置の議論を進めることはできなかったはずだというのが結論となる。

 だが、その議論の中に安倍晋三は今治市の背後に加計学園を獣医学部新設の事業実施主体として考えることも、気に留めることもなく諮問会議の議長の役目を果たしていた。

 この疑問を解くには、事実とすることはできなウソを無理して事実と見せかけるためについつい言葉に過剰な否定を装わせてしまう過剰否定の典型と見る他はない。

 安倍晋三は今年の1月20日まで加計学園が獣医学部新設の申請を知らなかったとすることで、加計孝太郎から安倍晋三の「総理のご意向」で獣医学部新設を認定して欲しいと頼まれはしなかったとしたかったのだろうが、安倍晋三と加計孝太郎の実際の会話は記録に残っていないだろうから、そのように見せかけることはできたとしても、ワーキンググループのヒアリングや諮問会議の議論は記録が残っていて、議論の記録を見れば一目瞭然、「何も知りませんでした」は、土台無理な話となる。

 策士、策に溺れるといったところか。

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九州北部豪雨災害流木20万トン以上:自衛隊その他の途轍もなく非効率・ご苦労な手作業処理

2017-07-24 12:24:04 | 政治
 2017年7月5日から6日にかけて福岡県と大分県を中心として九州北部を襲った豪雨災害は7月18日時点で死者34人・行方不明7人の人的災害のみならず、家屋倒壊や家屋流出、インフラ損壊の大きな被害をもたらし、気象庁によって「平成29年7月九州北部豪雨」と名付けれらた。

 豪雨で流された流木の量は20万トン以上に上ると言う。標準的な50メートルプールで144杯分に相当すると見られると「NHK NEWS WEB」記事が伝えていた。

 10トンダンプで計算すると、2万台。ダンプの荷台に収まりきらない長さの流木もニュースの画面で見かけた。流木は道路に溢れ、川を堰き止め、倒壊した家の周囲に押し寄せ、あちこちで手のつけられない状態で網目状に錯綜し、山を成していた。

 自衛隊員や消防隊員が足場がしっかりとしない流木の山の上に乗って一定の長さにチエンソーで裁断しながら、チエンソー以外は道具を使わずに手で1本1本取り除くと同時に流木の山を全て取り除くために二人一組で丸太状の水を含んで相当に重くなっている流木を1本ずつ胸に抱えるように運び出して行方不明者の捜索を行っていた。

 チエンソーで一人の力で持てる程に流木を短く切ればいいのではないかと考えるかもしれないが、その分切る回数が多くなって、却って時間がかかることになり、切り終わるまでの間、他の隊員が手を遊ばせることになって、余計に非効率になることになるから、画像を載せておいたが、大変でも二人一組で重たい流木を抱えて取り除くことになっていたはずだ。

 テレビのニュースを見ていただけで、満足に捗らないことは目に見えていた。この遣り方だと体力の消耗はひどく、その分、気力を奪う。当然、捜索・救助の効率は悪かったはずだ。効率の悪さは行方不明者捜索の妨げや被害のあった家々の様々な片付けの障害に繋がったに違いない。

 流木の推計量は航空写真に基づいているため土砂に埋まったり、海に流れ出たりした木は含まれていないと言うから、1本残らず処理するには気の遠くなるような時間が必要になるのかもしれない。

 安倍晋三が7月11日午後、関係閣僚会議を首相官邸で開いて、対策と指示行っている。  

 犠牲者に御冥福、御遺族に哀悼の意、被災者・負傷者にお見舞い、そして安否不明者に対する捜索活動に全力を尽くよう要望。避難所の暑さ対策等、被災者のニーズのきめ細かな把握、被災者に寄り添った支援の早急な実施等の約束、更に関係者に対してはそれぞれがリーダーシップを発揮し、時々刻々と変化する情勢に対し先手先手で対策を講じて欲しいと要望。

 そして12日の現地訪問の予定を告げている。

 「私も現地の情勢が許せば明日、福岡県、大分県を訪れ、現場の状況や被災者の方々の生の声に直接触れたいと考えています。この困難な状態を一日でも早く解消するため、被災地の方々に心を寄せて、安倍内閣一丸となって全力を挙げて対策を進めてまいりましょう」

 流木については次のように約束している。

  安倍晋三「捜索活動やライフラインの復旧の支障となっている流木処理や道路等のインフラの復旧を行い、住まいの確保など被災者の皆さんの一日も早い生活再建に向け全力で取り組んでまいります」

 安倍晋三の発言後、主として流木処理対策を議論し、福岡県に政府の流木対策チームを設置したとマスコミが伝えていた。

 重機が入るようになれば、流木は順次片付いていく。一度に何本もの丸太を掴む重機もあれば、丸太を掴むと同時に掴んだ丸太を必要の長さで切り取るチエンソーを備え付けた重機もあるが、台数が少ないのが難点かもしれない。

 問題は自衛隊員や消防隊員による行方不明者捜索時にの流木処理である。錯綜した流木の間や下に行方不明者が閉じ込められている可能性は否定できない。重機で強引に取り除こうとすれば、身体をキズつける危険性は常にある。
                          

 結果的に流木の山から行方不明者の捜索とその処理を同時に行うためには上からチエンソーである程度長めに切った流木を自衛隊員や消防隊員が手で1本1本取り除いていくしか方法がないということになる。

 しかも錯綜した流木の山は非常に足場が悪いから、流木を抱えて慎重に動かなければならないから、時間が余分にかかることにもなる。

 なぜ画像を載せておいた丸太や原木などの移動・運搬・積み上げに使用する鳶口を利用しなったのだろうか。長さ1.5~2メートルの柄は一般的には樫でできていて、金具がついていない反対側の先端は梃子として使い、柄全体は天秤棒の役目を果たす。2人がそれぞれの鳶口で先端の鉄でできた切っ先を流木のどちらか一方の先端に打ち込んで手前に引けば、流木を滑らせる方法で縦に移動させることができるし、同じく2人が横になった流木の左右先端から3分の1ずつの位置に切っ先を打ち込めば、少しぐらい長くて太い丸太でも、上に持ち上げたり、手前方向に移動させることもできる。
     
 流木自体の重量を鳶口の2本の柄の手元のそれぞれの1点に集中させることができるからである。

 鳶口を逆に持って、柄を梃子として利用する場合、2人かそこらで流木を横に転がす方法で移動させることもできるし、縦になった状態でも、1人が尻を梃子にして持ち上げながら押し、頭は切っ先を突き立てた鳶口で引っ張る共同作業によって、簡単に移動できる。

 こういった作業は山となった流木の一番上から山を滑らせる要領で1本1本片付けていく形を取るために流木の間に行方不明者が閉じ込められていたとしても、滅多に押しつぶしてしまうといったことは先ず起こり得ない。

 流木の山から平場に降ろした流木を後処理のために広い場所に纏めておく場合はそこまでの移動に手で抱えて持っていく体力消耗の難儀な仕事とするのではなく、2メートル程度のロープを作業班ごとに10本程度持ち、それぞれを輪にして先端を本結びにし、流木のそれぞれの先端を鳶口を梃子にして持ち上げて輪の中に通し、その輪に鳶口を天秤棒代わりに通せば、4人で担いで体力をそれ程使わずに簡単に短時間で移動させることができる。

 ロープは使わないときは腰にベルト状に巻きつけておけば、他の作業に何も支障は起きない。

 現在でも製材所では鳶口を使っているはずである。例えば丸太が大きな山になっている中からそのとき欲しいと思っている1本を掘り出すためには、フォークリストでその1本のために邪魔になる全ての丸太を移動させると時間がかかるためにホークリストの2本の爪を丸太の山に突き当てて、2人が爪の片方ずつに乗って鳶口で邪魔になる丸太を順番に引き寄せ、フォークリストの爪に乗せていって、乗せきれなくなったら、一旦近くの場所に仮置きして、再び欲しい丸太を掘り起こすことができるまで鳶口で引き寄せるといった作業をすることがある。

 いずれにしても製材所ではフォークリストのない時代は丸太を山にするのも山の中から欲しい丸太を引き出すにも鳶口を利用した。昔、丸太を筏に組んで川を船で引っ張っていくときは柄は長い丸竹でできた鳶口で丸太を集めてロープで結んで筏にし、反対側は筏が川の中央に位置するように保つために川の底に突き立てて竿として利用した。

 鳶口は丸太の長さと太さ全てにかかっている重量に対して力を1点か2点に集中させて、少ない力で転がしたり、縦方向や横方向に滑らせたり、あるいは持ち上げたりする道具である。

 しかも流木の山といった足場の悪いところでも、常識的な運動神経さえ持っていれば、操作できる。行方不明者の捜索といった初期的な流木処理に使わない手はないはずだ。

 政府内や自衛隊内の災害関係者、あるいは地方自治体の災害関係者の誰一人、鳶口の利用に気づかなかったのだろうか。

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安倍晋三加計学園疑惑:「総理のご意向」を証明する正式な議論の場を経ない地域条件変更と平成30年開学

2017-07-23 12:12:11 | 政治

 今治市の国家戦略特区を使った加計学園獣医学部新設が安倍晋三の政治的関与なる恣意性――「総理のご意向」が入り込んだ認定である疑惑が益々深まっている。ところが、政府側はその恣意性を否定して、特区担当相として山本幸三が獣医学部の新設に関わる地域条件の変更と獣医学部平成30年4月開学時期を主導した形を取っている。

 実態は恣意性をカモフラージュするために山本幸三が身代わりの役目を務めているのか、山本主導が事実なのか、改めて探るためにこれまで書いてきたブログと同じ文章、あるいは周知の事実を改めて提示することになるが、ご容赦願いたい。

 従来の獣医学部新設の地域条件に「広域的」、「存在し」、「限り」という文言を付け加えて、「広域的に獣医師系養成大学等の存在しない地域に限り獣医学部の新設を可能とする」と地域限定した条件をワーキンググループ(WG)という正式な議論の場で議論することもなく決めたのが特区担当相の山本幸三だと既に明らかになっている。

 2017年6月16日午後の参院内閣委員会。

 山本幸三「『広域的に』、『限り』と言うことは私の指示で内閣府にて入れました」

 藤原内閣府審議官「『広域的に』、『限り』を追記するようにというご指示を受けまして、私が手書きでこの文案に修正を加えました」

 手書きでの文案修正は2016年11月1日の文科省と内閣府の折衝が行われたワーキンググループ会合。山本幸三は各関係者の意見を聞いて纏めたとしているが、最低限、最終的には国家戦略特区諮問会議等の正式な議論の場に諮った上で決定しなければ地域条件の正式な変更とはならないはずだが、そうはしていないのだから、各関係者の意見を聞いて纏めたは「総理のご意向」を誤魔化す口実に過ぎない。

 そうでないと言うなら、旧条件から新条件に変更したことについての合理的な根拠を示すべきだ。例えば、「広域的に獣医師系養成大学等の存在しない地域に限り獣医学部の新設を可能」とした場合、獣医師の地域偏在や診療分野別偏在の解消にどの程度役立つか、統計的に説明すべきだろう。

 この地域条件の変更は2016年11月9日の「第25回国家戦略特別区域諮問会議」「資料3」の案として示され、会議では進行役の山本幸三から旧条件から新条件に変更したことについて何らの説明もなく、「資料3」の地域条件の変更に対して誰からも疑義や納得等のどのような意見も述べられずに「異議なし」で決定されていることも異常としか言いようがない。     

 いわば「案」として示されていながら、既に既定方針となっていたということであろう。

 諮問会議で獣医学部新設について議論されているのは以下のみである。適宜抜粋した。

 松野博一 文部科学省におきましては、(獣医学部)設置認可申請については、大学設置認可にかかわる基準に基づき、適切に審査を行ってまいる考えであります。以上です」

 山本幸三「次に、山本農林水産大臣、お願いします」

 山本有二「産業動物獣医師は、家畜の診療や飼養衛生管理などで中心的な役割を果たすとともに、口蹄疫や鳥インフルエンザといった家畜伝染病に対する防疫対策を担っており、その確保は大変重要でございます。

 近年、家畜やペットの数は減少しておりますけれども、産業動物獣医師の確保が困難な地域が現実にございます。農林水産省といたしましては、こうした地域的課題の解決につながる仕組みとなることを大いに期待しておるところでございます。

 麻生太郎「松野大臣に1つだけお願いがある。法科大学院を鳴り物入りでつくったが、結果的に法科大学院を出ても弁護士になれない場合もあるのが実態ではないか。だから、いろいろと評価は分かれるところ。似たような話が、柔道整復師でもあった。あれはたしか厚生労働省の所管だが、規制緩和の結果として、技術が十分に身につかないケースが出てきた例。他にも同じような例があるのではないか。規制緩和はとてもよいことであり、大いにやるべきことだと思う。しかし、上手くいかなかった時の結果責任を誰がとるのかという問題がある。

 この種の学校についても、方向としては間違っていないと思うが、結果、うまくいかなかったときにどうするかをきちんと決めておかないと、そこに携わった学生や、それに関わった関係者はいい迷惑をしてしまう。そういったところまで考えておかねばならぬというところだけはよろしくお願いします。以上です」

 八田達夫有識者議員「今度は、獣医学部です。

 獣医学部の新設は、創薬プロセス等の先端ライフサイエンス研究では、実験動物として今まで大体ネズミが使われてきたのですけれども、本当は猿とか豚とかのほうが実際は有効なのです。これを扱うのはやはり獣医学部でなければできない。そういう必要性が非常に高まっています。そういう研究のために獣医学部が必要だと。

 もう一つ、先ほど農水大臣がお話しになりましたように、口蹄疫とか、そういったものの水際作戦が必要なのですが、獣医学部が全くない地方もある。これは必要なのですが、その一方、過去50年間、獣医学部は新設されなかった。その理由は、先ほど文科大臣のお話にもありましたように、大学設置指針というものがあるのですが、獣医学部は大学設置指針の審査対象から外すと今まで告示でなっていた。それを先ほど文科大臣がおっしゃったように、この件については、今度はちゃんと告示で対象にしようということになったので、改正ができるようになった。

 麻生大臣のおっしゃったことも一番重要なことだと思うのですが、質の悪いものが出てきたらどうするか。これは、実は新規参入ではなくて、おそらく従来あるものにまずい獣医学部があるのだと思います。そこがきちんと退出していけるようなメカニズムが必要で、新しいところが入ってきて、そこが競争して、古い、あまり競争力がないところが出ていく。そういうシステムを、この特区とはまた別にシステムとして考えていくべきではないかと思っております。

 山本幸三「御意見をいただき、ありがとうございました。

 それでは、資料3につきまして、本諮問会議のとりまとめとしたいと思いますが、よろしゅうございますか」

 (「異議なし」と声あり)

 山本幸三「御異議がないことを確認させていただきます。ありがとうございます。

 それでは、本とりまとめに基づき、速やかに制度改正を行いたいと思いますので、関係各大臣におかれましても、引き続き御協力をお願い申し上げます。

 以上で、本日予定された議事は全て終了しました」

 獣医学部新設によって山本幸三が言っている「産業動物獣医師の確保が困難な地域」に開学した獣医学部を卒業した獣医師が果たして活動の場とすることになるのかならないのかの議論もない。要するに会議の構図自体が獣医学部新設を既成事実としていて、それに対する事後承諾の形式となっている。

 麻生太郎の懸念も元々は獣医学部新設に反対だったから、一言言っておかなければならいから言った程度の発言でしかない。獣医学部新設が獣医師の地域偏在や診療分野別偏在の解消に繋がるのかどうかの議論もない。

 獣医学部の「平成30年4月開学」も、山本幸三の主導が絡んでいる。文科省調査・発見の文書の一つに、「平成30年4月開学」は「総理のご意向」とする副官房長官の萩生田光一の発言として記載されているが、それらをカモフラージュするための山本幸三主導の疑いが濃い。 

 「平成30年4月開学」は以下の文書によって出てきた。 

 大臣ご指示事項

以下2点につき、内閣府に感触を確認してほしい。

平成30年4月に開学するためには、平成29年3月に設置認可申請する必要があるが、大学として教員確保や施設設備等の設置認可に必要な準備が整わないのではないか。平成31年4月開学を目指した対応とすべきではないか。

 この「大臣」とは文科相の松野博一を指す。「平成30年4月開学」は「教員確保や施設設備等の設置認可に必要な準備が整わない」から、無理ではないのかと懸念を示している。

 対して内閣府から回答が届いている。

 大臣ご確認事項に対する内閣府の回答

【プロセス・開学時期】
○ 設置の時期については、今治市の区域指定時より「最短距離で規 制改革」を前提としたプロセスを踏んでいる状況であり、これは総理の ご意向だと聞いている。

〇 規制緩和措置と大学設置審査は、独立の手続であり、内閣府は規制緩和部分は担当しているが、大学設置審査は文部科学省。大学設置審査のところで不測の事態(平成30年開学が間に合わない)ことはあり得る話。関係者が納得するであれば内閣府は困らない。

【政府内の取扱い】
O「国家戦略特区諮問会議決定」という形にすれば、総理が議長なので、総理からの指示に見えるのではないか。平成30年4月開学に向け、11月上中旬には本件を諮問会議にかける必要あり。

○ 農水省、厚労省への会議案内等は内閣府で事務的にやるが、前面に立つのは不可能。二省を土俵に上げるのは文部科学省がやるベき。副長官のところに、文部科学省、厚生労働省、農林水産省を呼んで、指示を出してもらえばよいのではないか。

【党関係】

○ 獣医は告示なので党の手続は不要。党の手続については、文科省と党の関係なので、政調とよ<相談していただきたい。以前、宵邸から、「内閣」としてやろうとしていることを党の部会で議論するな、と怒られた。党の会議では、内閣府は質疑対応はあり得るがメインでの対応は行わない。

【官邸関係】

○ 官房長官、官房長官の補佐官、両副長官、古谷副長官補、和泉総理大臣補佐官等の用心には、「1、2ケ月単位で議論せざるを得ない状況」と説明してある。

 ところが2016年10月21日の次の萩生田光一の発言を大まかに纏めた文書には「総理のご意向」が全面に出てくる。

 「10/21萩生田副長官ご発言概要」

○(11月にも国家戦略特区諮問会議で獣医学部新設を含む規制改革事項の決定がなされる可能性をお伝えし、)そう聞いている。

○内閣府や和泉総理補佐官と話した。(和泉補佐官が)農水省とも話し、以下3点で、畜産やペットの獣医師養成とは差別化できると判断した。

1.ライフサイエンスの観点で、ハイレベルな伝染病実験ができる研究施設を備えること。また、国際機関(国際獣疫事務局(OIE)?)が四国に設置することを評価している、と聞いたので、その評価していることを示すものを出してもらおうと思っている。

2.既存大学を上回る教授数(72名)とカリキュラムの中身を増やすこと。また、愛媛大学の応用生物化学と連携するとのこと。

3.四国は水産業が盛んであるので、魚病に特化した研究を行うとのこと。

○一方で、愛媛県は、ハイレベルな獣医師を養成されてもうれしくない、既存の獣医師も育成してほしい、と言っているので、2層構造にする。

○和泉補佐官からは、農水省は了解しているのに、文科省だけが怖じ気づいている、何が問題なのか整理してよく話を聞いてほしい、と言われた。官邸は絶対やると言っている。

総理は「平成30年4月開学」とおしりを切っていた。工期は24ヶ月でやる。今年11月には方針を決めたいとのことだった。

○そうなると平成29年3月に設置申請をする必要がある。「ハイレベルな教授陣」とはどういう人がいるのか、普通の獣医師しか育成できませんでした、となると問題。特区でやるべきと納得されるような光るものでないと。できなかったではすまない。ただ、そこは自信ありそうだった。

○何が問題なのか、書き出して欲しい。その上で、渡邊加計学園事務局長を浅野課長のところにいかせる。

○農水省が獣医師会押さえないとね。

 〈総理は「平成30年4月開学」とおしりを切っていた。〉が事実なら、安倍晋三「総理のご意向」による極くごく恣意的な単独主導と言うことになる。

 対して政府側は内閣府と文科省の協議で決まったこととしている。

 民進党参議院議員古賀之士(ゆきひと・58歳)が2017年6月15日に2017年1月4日の内閣府・文部科学省告示に〈「平成30年度に開設する獣医師の養成に係る大学の設置」とあり〉、そのように〈開設年度を特定した理由とその検討経緯を示されたい〉とする「質問主意書」を安倍内閣に提出した。

 「答弁書」  

 お尋ねについては、平成29年5月23日の参議院農林水産委員会において、松本内閣府副大臣が「共同告示に平成30年度に開設と規定した理由でありますけれども、いち早く具体的な事業を実現させ、効果を検証することが重要であるとの観点から、効果が発現することとなる開設の時期を共同告示に規定し、早期開設を制度上担保しようとしたものであります。

 昨年11月9日の諮問会議取りまとめ後、パブリックコメントを開始するまでに、パブリックコメントの概要案に平成30年度開設を盛り込むことにつきまして山本幸三大臣が御判断になったものであります。

 また、共同告示を共管する文科省とは、平成30年度に開設との記載を含む概要案につきまして、パブリックコメント開始前に調整を行いまして合意をしているところでございます。農水省にも11月21日にこの旨を通知をいたしました。最終的には、パブリックコメントの受付期間が終了いたしました後、12月末の段階で、共同告示に平成30年度に開設と規定することにつきまして、文科省、農水省を含め最終確認をいたしまして、本年1月4日に告示を公布をいたした経緯でございます。」と答弁しているとおりである。

 先ず順を追って纏めてみる。

 ○平成29年5月23日の参議院農林水産委員会に於いて松本内閣府副大臣が「平成30年度開学」の理由を述べる。
 ○パブリックコメントの概要案に平成30年度開設を山本幸三大臣の判断で盛り込んだ。
 ○文科省と内閣府が「平成30年度開学」を含む概要案をパブリックコメント開始前に調整し、合意していた。
 ○この合意を農水省に11月21日に通知。
 ○パブリックコメントの受付期間終了後(12月末の段階)で共同告示に平成30年度に開設の規定を内閣府・文科省・農水省が最終確認、1月4日の告示に「平成30年度開学」を公布。

 パブリックコメントの意見公募時の案の公示日は2016年11月18日で、 意見・情報受付締切日は2016年12月17日 である。

 平成29年5月23日の参議院農林水産委員会の質疑を見てみる。

 森ゆうこ自由党議員「今日お配りした資料は、この意思決定(獣医学部新設認定)の過程は、議事録にないものが、ないところで全て決まっていて、どこを議事録読んでも決まったところが分からない。だから詳細を、私は、これで第12弾ですかね、シリーズで、質問をさせていただいているんですよ。皆さんが答えなきゃいけない、文書の流出とかじゃなくて、私がずっと求めてきた資料がそれですよ。皆さんが出さなきゃいけないんですよ、説明のために。

 それで、11月9日の国家戦略特区諮問会議では、ここの、私が内閣府から提出いただいたこの資料の赤線の部分、平成30年度に開設するということは入っておりません。この平成30年度開学についての規定は、いつ、どこで、誰が決めたんでしょうか」
 
 松本洋平農水省副大臣「共同告示に平成30年度に開設と規定した理由でありますけれども、いち早く具体的な事業を実現させ、効果を検証することが重要であるとの観点から、効果が発現することとなる開設の時期を共同告示に規定し、早期開設を制度上担保しようとしたものであります。

 昨年11月9日の諮問会議取りまとめ後、パブリックコメントを開始するまでに、パブリックコメントの概要案に平成30年度開設を盛り込むことにつきまして山本幸三大臣が御判断になったものであります。

 また、共同告示を共管する文科省とは、平成30年度に開設との記載を含む概要案につきまして、パブリックコメント開始前に調整を行いまして合意をしているところでございます。

 農水省にも11月21日にこの旨を通知をいたしました。最終的には、パブリックコメントの受付期間が終了いたしました後、12月末の段階で、共同告示に平成30年度に開設と規定することにつきまして、文科省、農水省を含め最終確認をいたしまして、本年1月4日に告示を公布をいたした経緯でございます。

 森ゆうこ自由党議員「この国はいつから人治国家になったんですか。

 そういう国家戦略特区における具体的な様々な決め事については、それぞれの会議で議論して決めなきゃいけないんじゃないんですか。

 平成30年に開設する、つまり来年の4月1日に開校する、これが極めて重要な要件ですよ。こういう、すぐ1年もたたないうちに、学生を(十分に)募集するだけの学校もなきゃいけない、教授もいなきゃいけない、そういう準備ができるという(できるかどうかも分からない)このむちゃぶりな条件を、きちんとした会議、議事録の載っている会議に何も残さずに大臣が決めるんですか。大臣が決めていいんですか。勝手に国家戦略担当大臣がそんな重要な事項を会議に諮らずに決めていいんですか」

 要するに正式な議論の場で正式な議論を行って決めた「平成30年開学」ではなかった。

 この参議院での農水省副大臣の松本洋平の発言がそのまま上記政府答弁書の内容となっている。

 「平成30年度開設」の理由を「いち早く具体的な事業を実現させ、効果を検証することが重要であるとの観点から、効果が発現することとなる開設の時期を共同告示に規定し、早期開設を制度上担保しようとしたものであります」としているが、諮問会議で獣医学部の新設を決めて、その事業の早期着手、事業の早期完成(=早期開学)の成果を検証するための制度上の担保として「平成30年度開設」を決めたと、役人が作った原稿を単に読み上げただけなのだろう、明らかに役人言葉でしかないこじつけを披露しているに過ぎない。

 と言うことは、獣医学教育の充実ある成果を勘案して決めた「平成30年度開設」では決してない。このことは京都市が戦略特区に指定されて、そこでの獣医学部の新設を目指した京都産業大学の2017年7月14日の記者会見での撤退の理由を見れば一目瞭然である。

 記者「獣医学部断念の理由は」

 黒坂光副学長「獣医学部は京都府が申請主体だったが、国家戦略特区の実施主体として私どもは申請した。構想はいい準備ができたが、今年(2017年)1月4日の告示で「平成30年4月の設置」になり、それに向けては準備期間が足りなかった。

 その後、(学校法人)加計学園が申請することとなり、(京都産業大獣医学部も含めて)も2校目、3校目となると、獣医学部を持っている大学は少なく、教員も限られているので、国際水準の獣医学教育に足る十分な経験、質の高い教員を必要な人数確保するのは困難と判断した」

 要するに「平成30年4月開学」と期限を切ることは事業の早期着手・事業の早期完成(=早期開学)の成果を上げるためには効果はあるが、「国際水準の獣医学教育に足る十分な経験、質の高い教員を必要な人数確保」には逆行する措置だと言っていることになる。

 この逆行だけではない。前者にどのような合理的な理由が存在するだろうか。ハコモノの完成を優先させた期限にしか見えない。

 大体が「効果を検証」と言っているが、大学の教育効果は開学時期で検証できるわけではない。検証できるのは建物や設備に幾らカネをかけたかぐらいのものである。

 京都産業大学を締め出すために期限を切ったという疑惑が持ち上がっているが、合理的な理由を見出すことができない開学時期から見ると、疑惑は限りなく事実に近づく。

 平成29年1月4日に内閣府地方創生推進事務局と文部科学省高等教育局がパブリックコメントで募集した意見をPDF記事で公表している。2016年11月18日の意見公募時から締切の2016年12月17日までに「広域的に獣医師系養成大学の存在しない地域に限定する要件や平成30年度開設に限定する要件は不要ではないか」とする意見が47件寄せられている。

 対して〈「国家戦略特区における追加の規制改革事項について」(平成28年11月9日国家戦略特別区域諮問会議決定)の趣旨を踏まえ、新たに取り組むべき分野に対応する獣医師の育成は重要かつ喫緊の課題であり、実際の獣医学部の立ち上げを急ぐ必要があるとされていることから、本告示は平成30年度としたもの。〉と回答を寄せたのみで、どのような正式な議論の場に諮って、開学時期を決めたとおりにすることにしたとはせずに平成29年1月4日の日付を以って公布日としている。

 優秀な獣医師の育成=優秀な獣医学教育をベースに据えた場合、〈新たに取り組むべき分野に対応する獣医師の育成は重要かつ喫緊の課題〉であることと、〈実際の獣医学部の立ち上げを急ぐ必要〉との間にどのような合理的な関連性があるというのだろうか。

 政府はこのような合理的な関連性のみならず、疑惑を持たれている全てに亘って、なぜ正式な議論場を経ずに様々な決定が為されたのかの誰もが納得のできる合理的な説明責任を国民に対して負う。

 合理的な説明ができたとき、安倍晋三はそのときこそ、政治的関与の疑惑から解き放たれる。萩生田光一が安倍晋三の「総理のご意向」を汲んで先頭に立って動いていたとされている疑惑も解消させることができる。 

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加計疑惑:安倍晋三政治的関与「総理のご意向」・萩生田光一実行部隊長解明の攻め所は山本幸三

2017-07-22 12:04:25 | 政治

 特区担当相の山本幸三が安倍晋三が加計学園の獣医学部新設正式認定の2カ月前に日本獣医師会を訪問、加計学園に決定したと告げたとする獣医師会の記録が報道されて山本幸三は記者団に全面否定したが、その発言自体が当たり前の否定ではなく、不必要な過剰な否定となっていたことから、昨日の当「ブログ」で、その過剰な否定を実際は加計学園の名前を出して既に決定したことを告げた論拠とした。

 昨日2017年7月21日のTBS「ひるおび!」が7月20日の民進党「加計学園疑惑調査チーム」の会合に呼ばれていた内閣府担当者が獣医師会を訪問した際の山本幸三の発言について説明している映像を流していた。

 宮崎岳志民進党議員「今治、四国に決まったとは言っていないとか。それを裏付ける何か、紙なり、報告なり、そういうものはあるんですかね?」

 内閣府担当者「当時大臣が『京都もあり得る』ということははっきりと言ったということを記憶しているということでございますし、それから加計学園と言わないように特に気をつけて発言したということを誤解のないようにね、誤解を受けないように気をつけて・・・・・」

 これだけの映像である。内閣府担当者のこの発言は山本幸三が記者に話したことの代弁の役目を果たしている。山本幸三が記者に「京都もあり得る」と発言した個所を、昨日のブログでは触れなかったから、振返ってみる。

 もし山本幸三が獣医師会の記録どおりに加計学園に決まったと話していたなら、「京都もあり得る」という発言はなかったことになる。山本幸三の対記者発言を虚偽と見做していたから、昨日のブログでは取り上げなかった。

 「京都もあり得る」という発言は、当たり前のことだが、今治に決まっていないことを前提としなければならない。国家戦略特区を方法とした獣医学部新設の手を上げていたのは京都市(京都産業大学)と今治市(加計学園)の二個所である。山本幸三の立場上、「京都もあり得る」なら、「今治もあり得る」と同等の可能性のもとに置かなければ、今治に決まっていないことの前提とはならない。
 
 以下の発言は「産経ニュース」から。  

 山本幸三「11月17日の獣医師会との会合ですけれども、私から『広域的に獣医学部が存在しない地域に限り新設を認めることになり、パブリックコメントを始めることになった。申し訳ないがご理解いただきたい』と発言いたしました。

 これに対して獣医師会側はそれは当然、四国の今治と決めつけた言いぶりで対応しておりました。私は獣医師会の言い分をずっと、前半は聞いていたところであります。したがって、記事で会合の概要というのが出ていますが、この獣医師会側の思い込みと、私の発言を混同したものでありまして、正確ではありません。

 また、私からは京都もあり得るという旨述べたところ、獣医師会側は『進めるのであれば今治市のみであることを明記してほしい』との発言もございました。なお、今治市の財政状況については従来、北村直人(日本獣医師会)顧問から調べるよう要請がありまして、今治市に聞いたところを概略説明いたしました。その際、あくまでも公募が大前提であるため、事業実施主体といった表現をしており、加計学園と特定して言ったことはまったくありません。京都の財政状況については話題にもなりませんでした」

 山本幸三が地域的条件を上げて理解を求めたところ、「獣医師会側はそれは当然、四国の今治と決めつけた言いぶりで対応しておりました。私は獣医師会の言い分をずっと、前半は聞いていたところであります」

 この発言には明らかに立場上の矛盾が存在する。今治に決まっていなければ、「京都もあり得る」と「今治もあり得る」の両方を同等の可能性扱いとしなければならない立場にあるにも関わらず、「四国の今治と決めつけた言いぶり」、「獣医師会の言い分」を「前半は聞いていた」

 なぜ、「四国の今治と決めつけた言いぶり」を始めたところで遮って、「今治と決まったわけではありません、京都もあり得る」と話さなかったのだろうか。

 だが、そのようなことを言わずに「獣医師会の言い分」を「前半は聞いていた」。それから「京都もあり得る」と言うことを述べた。

 この説明を聞いて、誰がその発言を事実だとすることができるだろうか。

 内閣府担当者が山本幸三が「誤解を受けないように」、「加計学園と言わないように特に気をつけて発言した」と説明していることにしても、決まっていなければ、何も気を使わずに「加計学園に決まったわけではありません」の一言で済むはずだが、事実は逆だから、昨日のブログに書いたように事実発言したことを無理に否定しようとすると、往々にして過剰な否定を装いとする言葉となってしまう関係から、決まったと言わなかったことの証明のために「加計学園と言わないように特に気をつけて発言した」とついつい言葉が過剰になったということなのだろう。

 山本幸三の発言の中から立場上の矛盾を覗かせた個所をうまく捉えて攻めれば、どう言葉を尽くそうと、矛盾は傷口を広げるだろうから、攻め所となるはずである。

 以下、攻め所となる可能性ある問題点を挙げてみる。
 
 内閣府から文科省に宛てた2016年11月1日火曜日のメール。〈指示は藤原審議官曰く、官邸の萩生田副長官からあったようです。〉

 この〈指示〉とは、「新たなニーズに対応する獣医学部の設置」に関する従来の地域条件を、そこに「広域的」という言葉と「存在し」という言葉と「限り」という言葉を付け加えて、削除した個所もあるが、最終的に、〈現在、広域的に獣医師系養成大学等の存在しない地域に限り獣医学部の新設を可能とするため、関係制度の改正を直ちに行う。〉と変更したことを指す。

 もし萩生田の指示で行った地域条件の変更なら、安倍晋三の「総理のご意向」ということになる。勿論、萩生田光一は国会答弁でこの指示を一貫して否定し、藤原内閣府審議官も内閣府特区担当の山本幸三もこの否定に同調して萩生田の指示ではないとしている。

 6月16日(2017年)午前の参院予算委。

 藤原内閣府審議官「これは昨年(2016年)の10月28日に獣医師養成系大学のない地域に於いてという原案を文科省に提示したのが10月28日でございます。31日に文科省から意見の提出があり、11月1日にはワーキンググループと文科省との折衝を行いました。

 その際山本大臣が文科省意見で指摘された日本獣医師会等の理解を得る観点から対象地域をより限定するご判断をされまして、広域的に限るとという区域にするようにとのご指摘を受けまして、私が文案に手書きで修正を加えた次第であります」――

 同じ6月16日午後の参院内閣委員会。

 山本幸三「『広域的に』、『限り』と言うことは私の指示で内閣府にて入れました」

 藤原審議官「『広域的に』、『限り』を追記するようにというご指示を受けまして、私が手書きでこの文案に修正を加えました」

 2017年7月10日午後に参議院で行われた閉会中審査。

 桜井充民進党議員「山本大臣がこれ(文科省案に『広域的に』という文言を入れたこと)の指示を出したとおっしゃっていますが、これ、本当でしょうか。あの、答弁、午前中メチャクチャ長かったので、簡潔にお答え頂けますか」

 山本幸三「全くそのとおりでありまして、私が判断して、そのように指示を致しました」

 桜井充「じゃあ、大臣はどなたと相談して判断して、そのように指示を致しました?」

 山本幸三「藤原審議官に指示をしたわけでありますけども、相談はそれ以前からも民間議員の方々、あー、等の、等、それから、あー、文科省・・・・、等々の遣り取りの中で、えー、獣医師会について、えー、しっかりと、また対応する必要があると言うことを踏まえてですね、えー、最終的には私が判断したわけでありますが、あー、そん中では民間議員との、コミュニケーションもありました」

 この件に関してブログで何度か、国家戦略特区諮問会議等の正式の会合で正式なメンバーの元、正式な議論を経て決定しなければならない地域条件の変更であって、経ずに決めたなら、「総理のご意向」の関与の元、萩生田光一の指示で決めた地域条件の変更となり、内閣府から文科省に宛てた2016年11月1日火曜日のメールの〈指示は藤原審議官曰く、官邸の萩生田副長官からあったようです。〉との文言が極めて信憑性を持つことになると言ったことを書いてきた。

 山本幸三の桜井充に対する答弁は歯切れが悪く、明快に正式な会合の名前を上げることもできず、どのような正式な議論を経て決定した地域条件の変更なのかを答えることができなかった。

 以下も2017年7月11日の「ブログ」に書いた文章である。  

 〈正式な会合の場での正式な議論による地域条件の変更であるなら、同じ内閣府の藤原審議官が11月1日のワーキンググループと文科省との折衝のときに山本大臣の指示を受けて地域条件の変更を手書きで加筆したということは、裏を返すと、藤原審議官が国家戦略特区問題を扱う地方創生推進事務局審議官という立場にありながら、そのような重要な地域条件の変更をそれまで承知していなかったから加筆したということになって、立場上、大きな矛盾が生じる。

 この矛盾を解くとしたら、文科省が存在していたことを公表した2016年11月1日のメールには、「指示は藤原審議官曰く、官邸の萩生田副長官からあったようです」と書いてあるように萩生田光一が安倍晋三の指示を仲介する形で「広域的に」、「限り」との地域条件の変更を加筆させて、その加筆を山本幸三の指示だと偽っているとしなければならない。〉――

 実際にも正式な議論の場で決定した地域条件の変更ではないことは7月10日の閉会中審査から2日後の民進党調査チームの会合に出席した内閣府の塩見英之参事官の発言によって明らかになる。

 「東京新聞朝刊」  

 〈政府の国家戦略特区制度を活用した学校法人「加計(かけ)学園」(岡山市)の獣医学部新設計画を巡り、特区を担当する内閣府の塩見英之参事官は12日の民進党調査チームの会合で、昨年11月9日の特区諮問会議で示された「広域的に存在しない地域に限る」との新設条件について、特区ワーキンググループ(WG)の場で正式に議論したことがないと明らかにした。〉

 民進党側が地域変更の条件や2015年6月の「日本再興戦略」に獣医学部新設の前提として示された4条件の策定過程でWGがどう関わったか質問。

 塩見英之「WGの場ではないが、委員に意見を聞いて了解を得た上で話を進めた」

 ちゃんと逃げ道は用意している。山本幸三が閉会中審査で正式な議論の場を挙げることができなかったから、早速その手当に入ったのだろう。

 いくら手当しようとも、正式な会合の場ではなく、各委員に意見を聞く形で纏めた決定なら、メモも残していないだろうから、透明でなければならない意思決定のプロセスが国民の目に不透明となる。

 このことは許されるはずもないし、不透明な意思決定のプロセスを取ることになったのはなぜなのかという疑問だけではなく(その責任は重い)、11月1日のワーキンググループと文科省との折衝の際に内閣府の代表として出席していた藤原審議官が「広域的に~限り」の地域条件の変更を知らずに出席して山本幸三の指示で手書きで変更した急激な決定に対する疑問は依然として残ることになる。

 この急激な変更の決定は11月1日当日、それも藤原審議官がワーキンググループに出席してから山本幸三の指示を受けて手書きで変更するまでの間に正式な議論の場を経ずに行われたことになる。

 山本幸三は誰の意見を聞いて決めたのか、自身で決めたのか明らかにしなければならない。いずれであっても、その決定は正式な権限に基づいて行われたのかどうかも明らかにしなければならない。

 尤も明らかにできるなら、既に明らかにしていたはずだ。明らかにできないから、安倍晋三政治的関与疑惑が解き明かされないままに長引いている。

 解明の一番の妥当な線は萩生田光一を「総理のご意向」を笠に着てゴリ押しした実行部隊長と見るべきで、このように非公式の権限が介在した地域条件の変更、最終的な加計学園獣医学部新設認定と見ることによって、2016年11月1日火曜日のメールの〈指示は藤原審議官曰く、官邸の萩生田副長官からあったようです。〉の文言、その他の文書やメールの文言と何ら矛盾なく整合させることができる。

 「総理のご意向」こそが非公式な権限の大本だということである。

 7月24、25日の2度目の閉会中審査は山本幸三を攻め所と見て、追及の焦点を当てるべきだろう。萩生田光一辺りでは煮ても焼いても食えない反応しか得ることはできないはずだ。

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安倍晋三の加計学園獣医学部新設認定政治的関与を証明する7月27日号「週刊文春」報道山本幸三発言

2017-07-21 10:34:23 | 政治

 2017年7月19日付「文春オンライン」が、内閣府規制担当大臣の山本幸三が獣医学部新設を巡る問題で安倍晋三が2017年1月20日に今治市の国家戦略特区への獣医学部新設の事業主体に加計学園岡山理科大学を正式に認定する2カ月前の2016年11月17日に日本獣医師会本部を訪問して、加計学園に決まったことを告げたと2017年7月27日号「週刊文春」をソースに報じている。  

 記事には会合日時、場所、山本幸三の発言が画像で記載されている。文飾は当方。

 山家幸Ξ内閣府特命担当大臣(地方創生、行政改革)との意見交換の概要(抜粋)

 日時:平成28年11月17日(木)9時22分~10時08分
 場所:(公社)日本獣医師会役員室
 出席者:山本幸三大臣.近藤貴幸大臣秘書室
 当方:・蔵内勇夫会長、北村直人政治連盟委員長、酒井健夫副会長、堺専務
 酒弁健夫I会長.壇寡麹

(山本)誠に申し訳ないが、獣医師が不足している地域に限って獣医学部を新設することになった。財政的に大丈夫か、待ったをかけていたが、今治市が土地で36億円のほか積立金から50億円、愛媛県が25億円を負担し、残りは加計学園の負担となった。 

 先端のライフサイエンスに重点を置いて、創薬に役立てる。実験動物学分野の獣医師は不足しているのでごれに重点を置く。四国は、感染症に係る水際対策かできていなかったので、新設することになった。申し訳ない。

 今治市と加計学園は連携していたのだから、「今治市」の名前を出すだけで加計学園と言ったも同然だが、加計学園の名前まで出して、安倍晋三が正式に決定する2カ月前に山本幸三は内々で決まっていたことを示したことになる。

 勿論、山本幸三はこのような発言を否定するだろう。「週刊文春」の報道に対して山本幸三は7月20日、内閣府で記者団の質問に答えているが、その発言全文を2017年7月20日付「産経ニュース」が伝えている。  

 その中から、二、三取り上げてみる。

 山本幸三「11月17日の獣医師会との会合ですけれども、私から『広域的に獣医学部が存在しない地域に限り新設を認めることになり、パブリックコメントを始めることになった。申し訳ないがご理解いただきたい』と発言いたしました。これに対して獣医師会側はそれは当然、四国の今治と決めつけた言いぶりで対応しておりました。私は獣医師会の言い分をずっと、前半は聞いていたところであります。したがって、記事で会合の概要というのが出ていますが、この獣医師会側の思い込みと、私の発言を混同したものでありまして、正確ではありません」

 山本幸三「四国に決まったという発言は全くしていません。向こう側が当然そうだろうという風に思い込んで、いろいろ発言していましたが、私はじっと聞いていて、それで最後に京都産業大からも提案があるのでその可能性もありますよといったところ、そりゃ困るということで、進めるなら今治市だけと明記してほしいという発言が向こうからありました」

 自分は四国に決まったという発言は全然していないが、獣医師会側が「四国の今治と決めつけた言いぶりで対応」しただけだと相手側の思い込みからに過ぎないとしている。

 記者「山本大臣から加計や今治ということは発言したのか」

 山本幸三「加計というのは一切ありません。私はその点は十分注意していて、用意した文書でも事業実施主体という言い方で徹底しています。それを先方がそういう風に思い込んだということでしょう」

 これが「問うに落ちず語るに落ちる」というヤツである。加計学園の「か」の字も決まっていなかったなら、名前を出す出さないといった「点は十分注意」する必要はない。注意しなくても、「加計学園」などという名前は出てきようがないはずだからだ。山本幸三が今の年齢でできるかどうか分からないが、逆立ちしたって出てこない。

 「用意した文書」で、「事業実施主体という言い方で徹底」させる用心も必要としない。その時点では何しろ白紙と言うことになっていて、「事業実施主体」という言い方しかないはずだからだ。

 頭の中はまっさらの白紙が占めていたわけではなく、既に“加計学園ありき”の事実が占めていたから、加計学園という名前を出さないように「その点は十分注意」しなければならなかったのであり、「用意した文書」で、「事業実施主体という言い方で徹底」させる用心が必要であったということでなければならない。

 もし山本幸三が獣医師会との会合で実際に加計の名前も今治市の名前も口に出していなければ、「私は名前は言ってません。悪意ある中傷です。まだ決まっていなかったのに名前の出しようがない」と言えば片付く。

 ところが、名前を出したとされていることを否定するために名前を出さないように徹底して注意したといった趣旨のことを言わなければならない。この矛盾は否定出来ないことを否定しようとする心理が過剰に働いたときに起きる。

 以前ブログで、〈ウソつきが自分がついたウソ(=事実ではない話)をウソではない(=事実)と思わせるようとするとき、元々は事実へと変えようがないウソ(=事実ではない話)だから、ウソではない(=事実)と思わせるためについつい余計なことまで言って多くの言葉を費やし、ウソではないと見せかけた事実をつくり上げる。〉と書いて、このような原理から安倍晋三が時として長々とした答弁行うといったことを書いたが、山本幸三の場合は言葉自体は短くても、短い言葉の中に事実を話しているなら、そのような体裁を取ることはないはずの否定のための過剰な反応がそれ程意識しないままに自ずと言葉に出てしまったからだろう。
 
 いくら言葉で名前を出していませんと否定しても、ウソつきがウソではないことついつい過剰に否定してしまうように過剰な否定を装いとする言葉となってしまったことが実際は名前を出していたことの証明となる。

 山本幸三は記者に「大臣側にメモはあるのか」と問われて、近藤貴幸秘書官がメモを取っていたと答えたものの、記者に「メモを出すことはあり得るのか」と重ねて問われると、「メモっていうものではないからね」と早くも出さねいことに決めている意思表示の言葉を吐いていた。

 その意思表示は7月20日の民進党の会合での内閣府担当官の発言が決定づけることになった。「メモを取っていたものの、保存していない」ことを明らかにしたと7月20日付「NHK NEWS WEB」記事が伝えている。     

 もし山本幸三が獣医師会の会合で今治の名前も加計学園の名前を出していなければ、「メモが残っているか秘書官に聞いてみる」ぐらいのことは言うはずである。名前を出さなかったことの有力な物的証拠となるだけではなく、安倍晋三政治的関与容疑の無実を証明する一助にもなるからである。

 だが、そういった利益を選択せずに逆に出さないことで、7月24日月曜日に2回目の開催が決まった加計学園疑惑に関わるが閉会中審査で山本幸三は追及の矢面に立たされる不利益が待ち構えることになる。

 勿論、「名前は一切出していない」の否定一点張りで押し通すのは目に見えているが、メモを残していなかったことが安倍晋三政治関与疑惑を一層深めかねない不利益と合わせても相当な不利益となるのにそれでも利益を取らずに不利益の方を選択するというのは、実際は名前を出していたことの間接証拠となる。

 山本幸三の過剰な否定を装いとする言葉と言い、疑惑を深めることになる不利益の選択と言い、この2点を合わせただけで安倍晋三が総理大臣として2017年1月20日に今治市の国家戦略特区への獣医学部新設の事業主体に加計学園岡山理科大学を正式に認定する2カ月前に既に加計学園の名前が出ていたことを証明して余りある。

 安倍晋三の政治的関与という力学が介在していなければ2カ月前に名前が出ることはない正式外の決定であろう。

 この一事だけではない。安倍晋三の政治的関与を窺わせるその他の発言、文書、メール等が存在する。閉会中審査で予想される敵側の言葉を駆使した否定、否定の弾幕を如何に突き破って、安倍晋三の政治的関与の正体を掴むことができるかは否定の言葉をどう見破るかの野党の能力にかかっている。

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