安倍晋三が掲げる“国難”その2「北朝鮮の脅威」:論理的説明もなく暴発の危険性を計算しない危機管理

2017-09-30 11:49:24 | 政治

次期衆議院議員選挙 争点とすべき


      2つのこと



  森友・加計政治関与疑惑にまみれた

     指導者を続投させるべきか否か

  成長実感ゼロのアベノミクスを

     効果があると見せかける幻想に

      今後も付き合うべきか否か

 安倍晋三はトランプと手を携えて北朝鮮に対して圧力一辺倒の政策を進めている。それが唯一の解決策だとばかりに。

 文飾当方。 

 「安倍晋三衆院解散発表記者会見」首相官邸/2017年9月25日)  

 安倍晋三「国民の皆様は、北朝鮮の度重なる挑発に対して、大きな不安を持っておられることと思います。政府として、いついかなるときであろうとも危機管理に全力を尽くし、国民の生命と財産を守り抜く。もとより当然のことであります。

 他方、民主主義の原点である選挙が、北朝鮮の脅かしによって左右されるようなことがあってはなりません。むしろ私は、こういう時期にこそ選挙を行うことによって、この北朝鮮問題への対応について国民の皆さんに問いたいと思います。

 我が国を飛び越える弾道ミサイルの相次ぐ発射、核実験の強行、北朝鮮による挑発はどんどんエスカレートし、その脅威は正に現実のものとなっています。こうした中で、私は、国際社会の連帯をより強固なものとするため、米国、韓国はもちろんのこと、中国、ロシア、インド、欧州、中東、アジアの首脳たちと対話や協議を重ねてきました。そして先般、国連安保理が原油や石油製品の輸出制限を含む厳格な制裁措置を全会一致で決定しました。まず、これを完全に履行する。さらに、北朝鮮がその政策を変更しないのであれば、国際社会と共に一層圧力を強化してまいります。

 北朝鮮には勤勉な労働力があり、資源も豊富です。北朝鮮が正しい道を歩めば、経済を飛躍的に伸ばすこともできる。しかし、拉致、核・ミサイル問題の解決なくして、北朝鮮に明るい未来などあり得ません。北朝鮮にその政策を変えさせなければならない。そのための圧力であります。

 圧力の強化は北朝鮮を暴発させる危険があり、方針転換して対話をすべきではないかという意見もあります。世界中の誰も紛争などを望んではいません。しかし、ただ対話のための対話には、意味はありません。
 この20年間、我が国を始め国際社会は六者協議など対話による平和的解決の努力を重ねてきました。その中で北朝鮮は2度にわたり、核・ミサイルの放棄を約束しましたが、結果としてそれらはことごとく裏切られ、核・ミサイル開発が継続されていた。

 対話の努力は時間稼ぎに利用されました。北朝鮮に全ての核、弾道ミサイル計画を完全な、検証可能な、かつ不可逆的な方法で放棄させなければならない。そのことを北朝鮮が受け入れない限り、今後ともあらゆる手段による圧力を最大限まで高めていく他に道はない。私はそう確信しています。

 そして、拉致問題の解決に向けて、国際社会でリーダーシップを発揮し、全力を尽くしてまいります。

 北朝鮮が意図的に緊張をあおっている今だからこそ、私たちはぶれてはならない。北朝鮮の脅かしに屈するようなことがあってはなりません。私はこの選挙で国民の皆さんから信任を得て、力強い外交を進めていく。北朝鮮に対して、国際社会と共に毅然(きぜん)とした対応を取る考えであります。

    ・・・・・・・・・・

 この解散は、国難突破解散であります。急速に進む少子高齢化を克服し、我が国の未来を開く。北朝鮮の脅威に対して、国民の命と平和な暮らしを守り抜く。この国難とも呼ぶべき問題を、私は全身全霊を傾け、国民の皆様と共に突破していく決意であります」

 北朝鮮の「脅威は正に現実のものとなった」ことを理由に制裁の圧力を加えることを最大の最善策とする。圧力政策に対する暴発の危険性の指摘に関しては「世界中の誰も紛争などを望んではいない」が、「対話のための対話には、意味はありません」と対話を完全に排除している。

 対話完全排除の理由として過去の「対話」が北朝鮮側の裏切りによって全て失敗に帰したこと、「対話の努力は時間稼ぎに利用された」ことを挙げている。

 いわば安倍晋三は北朝鮮に対して対話不信に陥り、その不信で凝り固まっている。

 そして北朝鮮がミサイル開発・核開発を検証可能な方法で完全に放棄しない限り「今後ともあらゆる手段による圧力を最大限まで高めていく他に道はない」と圧力オンリーの強い姿勢を示すに至った。

 結果としてこのような断固・毅然とした圧力政策が「国民の生命と財産を守り抜く」唯一の方法だとしていることになる。

 と言うことは、安倍晋三は「北朝鮮の脅威」の中に暴発の危険性を完全に入れていない危機管理状態となっていることを意味することになる。

 但しこのような一連の論理には「ただ対話のための対話には、意味はありません」との表現の対話完全排除の反動として掲げている「今後ともあらゆる手段による圧力を最大限まで高めていく」圧力オンリーが「暴発」を引き起こす引き金とは決してならないことの論理的な説明を完全に欠落させている。

 欠落させたまま、「北朝鮮の脅威」の中に暴発の危険性を入れていない、そのような危機管理となっている。

 論理性の代わりに「世界中の誰も紛争などを望んではいません」との論理性のカケラもない単なる期待の言葉に置き換えている。世界の多くの場所で軍事的衝突による望んでいない殺戮が起きていると言うのに。

 いくら圧力オンリーでいったとしても、北朝鮮はこれこれの理由、これこれの事情で暴発することは決してありません、いわば暴発の絶対的不可能性を論理立てて説明してこそ、圧力が北朝鮮のミサイル開発・核開発を「完全な、検証可能な、かつ不可逆的な方法で放棄」させる最大・最善の方法であることを国民に理解させることが可能となり、安倍晋三の「国民の生命と財産を守り抜く」なる決意が生きてきて、真正な言葉としての価値を持つことになるのだが、そういった論理的な体裁を一切取らずに、「圧力、圧力」とバカの一つ覚えのように言い立てている。

 圧力が暴発を決して招くことはないすることができる論理的な説明を完全に欠落させている以上、安倍晋三が北朝鮮の脅威を「国難」と位置づけたその「国難」は圧力こそが回避可能の唯一の方法と限定することは不可能で、逆に圧力が暴発誘発の引き金となり得る危険性を残すことになる。

 引き金となった場合、北朝鮮のミサイル開発・核開発を「国難」としてきた位置づけに暴発がプラスされることになって、その「国難」はより過酷な様相を呈することになり、「国民の生命と財産を守り抜く」危機管理は言葉に過ぎなかったという苦々しさを国民に与える可能性も出てくる。

 「政府として、いついかなるときであろうとも危機管理に全力を尽くし、国民の生命と財産を守り抜く」と断言しながら、その「危機管理」の中に暴発の可能性を入れずに圧力こそ全てとばかりに無条件に推し進めることのできる“危機管理”とはどのようなものだろうか。

 その程度の“危機管理”であるなら、安倍晋三に国家の安全と「国民の生命と財産」を託し得る一国のリーダーとすることができるだろうか。

 危機管理はありとあらゆる場合を想定しなければならない。

 プーチンが訪問先中国福建省アモイでの9月5日(2017年)記者会見で、〈「北朝鮮は雑草を食べることになったとしても、自国の安全が保障されない限り(核開発の)計画をやめない」と述べ、北朝鮮の核問題の解決には、関係各国の対話が必要との従来の主張を繰り返した。〉と「産経ニュース」記事が伝えていた。  

 この発言は暴発の危険性を考えに入れた危機管理をベースとしている。

 「米朝の衝突に現実味 あらゆるシナリオ想定を 英シンクタンク」NHK NEWS WEB//2017年9月29日 8時04分)記事にしても、記事題名が示すとおりに危機管理の基本に基づいた体裁を取っている。
  
 イギリスのシンクタンク王立防衛安全保障研究所9月28日、ロンドンで記者会見して発表した朝鮮半島情勢を分析した報告書。

 〈北朝鮮が7月に行ったICBM=大陸間弾道ミサイル、「火星14型」の発射がきっかけとなって「ここ数か月で朝鮮半島におけるアメリカと北朝鮮の衝突は現実味をおびてきている」〉と分析。

 「衝突が起きるシナリオ」として3点を挙げていると伝えている。

 その1 北朝鮮がアメリカによる奇襲攻撃があると考えて攻撃に踏み切る
 その2 北朝鮮のミサイルがグアム島やアメリカ西海岸の沖合まで到達する事態となってアメリカが攻撃する
 その3 トランプが軍事力の行使を選択するとは今なお想像しにくいが、北朝鮮が核兵器で攻撃する力を持つ前に問題の解決に乗り出す可能性 

 「衝突が起きるシナリオ」の1は、北朝鮮の暴発を意味する。

 衝突が起きた場合、死者の数は数十万人に上る恐れがあると警告。

 チャーマース王立防衛安全保障研究所教授「この問題はイギリス政府でも重要な位置を占め始めている。アメリカ、日本、それに韓国と連携しあらゆるシナリオを想定し、対応できるようにすべきだ」

 これが一定の国家間で軍事的対立が生じた場合の近隣の関係国が考慮しなければならない基本的な危機管理であろう。教授は連携すべき国の中に日本を入れているが、肝心の日本の安倍晋三は北朝鮮の暴発を国家危機管理のうちにさらさら入れていない。北朝鮮が暴発しなかったとしても、単なる結果オーライに過ぎない。

 お目出度いと言うべきだろうか。この程度の一国のリーダーに国家と国民の危機管理を託している。

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安倍晋三が掲げる“国難”その1「少子高齢化」は自民党政治の無策が招き、解決を言うのはマッチポンプ

2017-09-29 10:19:53 | 政治

次期衆議院議員選挙 争点とすべき


      2つのこと



  森友・加計政治関与疑惑にまみれた

     指導者を続投させるべきか否か

  成長実感ゼロのアベノミクスを

     効果があると見せかける幻想に

      今後も付き合うべきか否か

 9月25日(2017年)の解散を告げ、公約を掲げた「記者会見   

 安倍晋三「急速に少子高齢化が進むこの国が、これからも本当に成長していけるのか。この漠然とした不安にしっかりと答えを出してまいります。それは、生産性革命、そして人づくり革命であります。この2つの大改革はアベノミクス最大の勝負です。国民の皆様の支持を頂き、新しい経済政策パッケージを年内に取りまとめる考えであります」

     ・・・・・・・・・・

 少子高齢化、緊迫する北朝鮮情勢、正に国難とも呼ぶべき事態に強いリーダーシップを発揮する。自らが先頭に立って国難に立ち向かっていく。これがトップである私の責任であり、総理大臣としての私の使命であります。苦しい選挙戦になろうとも、国民の皆様と共にこの国難を乗り越えるため、どうしても今、国民の声を聞かなければならない。そう判断いたしました。

 この解散は、国難突破解散であります。急速に進む少子高齢化を克服し、我が国の未来を開く。北朝鮮の脅威に対して、国民の命と平和な暮らしを守り抜く。この国難とも呼ぶべき問題を、私は全身全霊を傾け、国民の皆様と共に突破していく決意であります」

 少子高齢化を北朝鮮情勢と共に「国難」と位置づけ、少子高齢化による労働力人口の減少がもたらす国民負担率の上昇等の様々なマイナス要因に対する国民の「漠然とした不安にしっかりと答えを出してまいります」と言い切っている。

 「急速に進む少子高齢化を克服し、我が国の未来を開く」と受け合っている。

 安倍晋三は記者会見の“国難論”と同趣旨の「政府声明」を9月28日(2017年)に出している。 
  
 安倍晋三「少子高齢化、緊迫する北朝鮮情勢。『国難』とも呼ぶべき事態に、自らが先頭に立って立ち向かっていく。国民の皆様の信任を得て、この国を守り抜く決意であります。そのために、ここに衆議院の解散を断行し、国民の信を問うことといたしました」

 少子高齢化と北朝鮮情勢が喫緊・急迫の「国難」であることを国民に強く印象づけて、安倍晋三の手によるその解決の絶対必要性を深く認識させることで投票先を安倍自民党に向けようという魂胆なのだろう。

 但し少子高齢化は自民党政治の無策が傷口を広げて現在の“国難”に至らしめたことを忘れてはならない。自分たちが傷口を広げて、「国難だ、国難だ」と騒いで、それを克服しますと自分たちの政策の保証を取り付けようとすることも自慢することも、自分でマッチで火を付けて自分でポンプで消して何らかの利益を得る自作自演自己利益のマッチポンプに当たる。

 5年かそこら前にブログに書いたことだが、12年前の少子高齢化について書いた2005年の記事をここに引用してみる。少子高齢化に関わるキーワードには文飾を施した。

 「人口減 産めぬ現実」朝日新聞/2005年12月23日 朝刊)

 「明治以来人口が増え続けてきて日本社会が、大きな転換点を迎えた。厚生労働省の推計で05年に生まれた子供の数が死亡者を1万人下回り、政府の推計より1年早く人口の自然減が始まった。子供が生まれにくくなったのは、将来への不安や経済的な負担などが理由だ。だが、30年前から、日本がいずれ少子化によって人口維持ができなくなることは分かっていた。それなのになぜ効果的な対応が打ち出せなかったのだろう。

 「お金がかかりすぎる」 「2人目はとても」

 川崎市の会社員、中野広行さん(41)と洋子さん(39)は、一人息子の広海ちゃん(2)を認可外の保育室に預けて働く。公立保育園には2年続けて入所希望を出したが、希望者が多くてかなわなかった。「子供1人だって安心して預けて働けない。2人目なんてとても考えられない」と嘆く。

 「仕事は続けたいし、子供は産みたい。妥協点が1人。少子化は問題だと思うけど、たくさん産める人が産んでね、という感じ」と都内の共働きの公務員の女性(33)は話す。

 04年の合計特殊州出生率は1・29で過去最低を更新中。「晩婚・晩産化に加え、結婚したカップルが持つ子供の数が減っている」と国立社会保障・人口問題研究所の高橋重郷副所長は分析する。

 年金などの制度設計の基礎になる同研究所の人口推計(中位)が置いた前提は、85年生まれの女性の6人に1人は結婚せず、結婚しても産むのは1・72人。3割の女性は一生子供を持たない。これでも「甘い」と批判されがちだ。

 同研究所の02年の調査では、50歳未満の妻にとって理想の子供数は2・56人だったが、結婚期間が15~19年の妻が実際に生んだ子の平均は2・23人と格差があった。理由は「子育てや教育にお金がかかりすぎる」「育児の心理的・肉体的負担に耐えられない」など。

 お金の問題は大きい。内閣府の試算では、大卒の女性が退職せずに60歳まで勤務した場合、出産により一旦退職してパートで再就職した場合に比べて、生涯年収が2億円以上多くなる(国民生活白書)。

 少子化を招く背景には、経済力の低いニートやフリーターの増加もある。UFJ総研の試算では、フリーターが正社員になれないことにより経済力が伴わず、婚姻数が最大で年間11・6万組減少する。この結果、13万~26万人の子供が生まれなくなるという。

 少子高齢化が急速に進行すると、社会や経済にさまざまな影響を及ぼす。人口問題研究所の推計によると、2030年には、ほぼ3人に1人が65歳以上のお年寄りだ。高齢化で、社会保障の給付は増える。厚生労働省の試算では年金・福祉・医療の社会保障給付は04年度の86兆円から25年度は152兆円になる。支え手が減れば、1人あたりの負担はさらにおもくなる。

 人口減でゆとりが生まれる部分もある。内閣府がまとめた『21世紀ビジョン』では、中古住宅市場の整備を進めて、4人家族の借家1戸当たりの平均延べ面積(98年で59平方メートル)を、30年には100平方メートル以上にできるとしている。

 ゆったり通勤も夢ではない。東京大などの研究は、都心の8区に通勤するサラリーマンは00年の310万人から、50年には247万人と2割減ると予測している。

  若い世代への支援探る 『30年間政治は無策』

 「日本が人口減少社会になっていくのは実は30年前に分かっていた。残念ながら30年間、我々の社会は有効な手段を準備できなかった

 (2005年12月)22日の閣議後の記者会見で竹中総務相はこう語った。合計特殊出生率は1970年半ば以降、人口を維持するのに必要とされる2・1を割り続けている。これが続けば自然減を迎えることは百も承知だったわけだ。
 
 それなのになぜ有効な手を打てなかったのか。竹中氏は『要因は多岐に渡る。経済、住居、所得の環境、教育のあり方、男女参画のあり方の問題』と指摘した。

 35年と半生を縛る多額の住宅ローン、仕事と子育てを両立しにくい社会、それに年金や医療などの将来不安がのしかかる・・・・。とても安心して子供を産める環境にはない。

 実際の各政党の政策にも手詰まり感がある。19日の官邸での政府・与党連絡会議。公明党の冬芝幹事長は『児童手当の対象者は『(公明党が連立を組んだ)99年は約240万人だったが、今回の制度改正で約1310人まで増えた』と胸を張った。しかしその間の合計特殊出生率の低下傾向は変わらなかった。安倍官房長官は22日の記者会見で、「この政策をやれば確実に少子化に歯止めがかかるという政策はなかなかない」。総合的な対策の必要性は政治家の共通認識だ。

 今後重点を置くべき方向が見えていないわけではない。猪口少子化担当相は22日の記者会見で『子育てと仕事の両立支援』『若い子育ての世代への経済支援』を挙げた。雇用や社会保障など広範な社会の下支えをつくった上で、若い世代をどう支援するか――。

 ただ、所得格差が広がる社会への不安も広がる。野党は『小さな政府』を目指す小泉改革が少子化を助長しかねないと指摘する。民主党の前原代表は22日、党本部で朝日新聞記者に「格差が生じて、子育て世代がアップアップしている。まさに小泉流が、勝ち組と負け組みを生み出しているしわ寄せが来ているのではないか」と指摘した。(君島浩)

 竹中平蔵は言っている。「日本が人口減少社会になっていくのは実は30年前に分かっていた。残念ながら30年間、我々の社会は有効な手段を準備できなかった

 我々の社会はではなく、「自民党政治がその殆どを占めた日本の政治は」と言うべきだろう。

 この記事から15年経過しているが、2017年9月の少子高齢化に関わる全体的状況は2005年当時の全体的状況の悪化進行形とも言うべき様相を呈している。

 2005年合計特殊出生率1.26に対して2015年合計特殊出生率1.45と僅かに改善しているが、人口を維持するのに必要とされる2.1には及ばない。2017年9月17日発表の「総務省」の統計によると、2017年9月15日現在の65歳以上の高齢者の総人口に占める割合は27.7%で、「過去最高」となっている。それだけ少子高齢化が進んでいる。    

 「生涯未婚率(生涯独身率)のデータの推移と結婚しない人生」良い家計)によると、2005年の生涯未婚率は男性16.0%、女性7.3%に対して2015年男性23.4%、女性14.1% となっていて、共に未婚率が上昇している。

 この上昇は少子高齢化にもマイナスの影響を与えていくことになるが、経済格差を受けた若者の貧困化の拡大の影響が相当部分占めている。そして一度貧困に陥ると、その貧困を生涯引きずる高い確率にある。

 要するに小泉自民党政権以来、格差は拡大の一途を辿っているが、そのことの証明の一つとなっている生涯未婚率の男女双方の上昇ということになる。

 そして格差は未婚化と同時に出産数にも影響することになる。

 人口減少社会=少子高齢化社会は「30年前に分かっていた」

 2005年から30年前は1975年。「はてなキーワード」によると、この年の合計特殊出生率は1.91と2を下回っている。この下降は第2次ベビーブームの2.16となった1971年(昭和46年)を境として始まった長期的な現象だと解説している。

 1975年は田中角栄を継いた三木武夫内閣の時代で、現在の第2次安倍自民党内閣まで約3年間の民主党政権を除いて約39年間は自民党政権だった。

 2005年に「30年前に分かっていた」少子高齢化問題を歴代自民党政権は約39年間も手をこまねき、何ら打つ手を見い出すことができなかった。

 2005年当時に官房長官だった安倍晋三は「この政策をやれば確実に少子化に歯止めがかかるという政策はなかなかない」とサジを半ば投げかけている。

 その結果の現在の少子高齢化であり、「国難」だと騒いでいる。自分たちの無策が招くことになった「国難」であるにも関わらず、その無策を棚に上げて、「急速に進む少子高齢化を克服し、我が国の未来を開く」と請け合う。

 マッチポンプもいいとこで、マッチポンプは、その意味から言って、真の解決を見い出す方法とは決してなり得ない。無策の継続性は次の無策に繋がるだけで、そのこと自体がこのことを証明する。

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安倍晋三の「リーマンショック級の事態がない限り消費税増税」はアベノミクス機能不全隠蔽のオオカミ少年

2017-09-28 12:28:12 | 政治

次期衆議院議員選挙 争点とすべき


      2つのこと



  森友・加計政治関与疑惑にまみれた

     指導者を続投させるべきか否か

  成長実感ゼロのアベノミクスを

     効果があると見せかける幻想に

      今後も付き合うべきか否か

 「オオカミ少年」――ある少年がオオカミが来もしないのに「オオカミが来た、オオカミが来た」と叫んで、襲ってきたオオカミから逃げる振りをして村人がいる方向に走り出す。村人はオオカミが襲ってきたと信じ込んで我先に逃げ惑う。少年は自分のイタズラが成功し、見込み通りにつくり出すことができた村人の慌てぶりを面白がる。

 その成功に味をしめて、何度も「オオカミが来た、オオカミが来た」と叫んで、村人の方向に走り出す。暫くは成功続きで少年を喜ばせていたが、本当にオオカミが襲ってきて村人の方向に「オオカミが来た、オオカミが来た」と叫んで必死になって逃げるが、村人は少年にとって肝心なときに「どうせまたイタズラなのだろう」と信用せず、農作業を続けた結果、少年はオオカミに食べられてしまったとさ・・・・・・。

 少々脚色はあるが、「ウソばかりついていると、本当のことを言ったとしても、同じウソと受け取られて誰からも信用されなくなる」という教訓なのだろう。

 安倍晋三が9月26日夜、〈民放の番組で、再来年10月に予定されている消費税率の10%への引き上げについて、平成20年の世界的な金融危機、リーマンショックのような事態が起きないかぎり、実行する考えを示しました。〉と2017年9月27日付NHK NEWS WEB    

 安倍晋三「ことし4月から6月までの四半期も、名目GDP=国内総生産が3%成長した。消費も穏やかに回復している。現在の状況からすると、引き上げを行う経済状況を生み出すことができるのではないかと考えている。

 当然、引き上げなければ、私たちが進めていく政策を実現する予算は確保できない。リーマンショック級の事態が起こらないかぎり、基本的には引き上げていきたい」

 要するに現在の経済情勢から言うと、2019年10月の消費税8%から10%への増税は可能な状況にあるが、その間、「リーマンショック級の事態」が出来した場合は増税は延期することになるとの趣旨となる。

 同じニュースを伝えている同日付「時事ドットコム」記事は趣旨は同じだが、発言自体が微妙に異なる。

 この記事では「民放」は「テレビ東京」と明かしている。 

 安倍晋三「経済状況如何に関わらず引き上げるということではない。リーマン・ショック級の緊縮状況が起きれば判断しなければならない」

 2019年10月は絶対的増税ではなく、経済情勢に対応させることになる相対的増税だと増税条件に幅を持たせている。

 安倍晋三が「リーマンショック級の事態が発生しない限り増税する」と約束したのは今回が初めてではない。「リーマンショック級の事態」に時に「大震災級」を挙げて、大自然災害をプラスして増税延期の条件としていた。

 但し2014年4月1日に5%から8%へと消費税増税を決定通りに実施、次の2017年4月1日に予定されていた8%から10%への増税の最初の延期は「リーマンショック級の事態が発生しない限り増税」と口にしていたわけではないから、その約束を破ったということには当たらない。


 「安倍晋三解散記者会見」首相官邸/2014年11月21日)   

 安倍晋三「本日、衆議院を解散いたしました。この解散は、『アベノミクス解散』であります。アベノミクスを前に進めるのか、それとも止めてしまうのか。それを問う選挙であります。連日、野党は、アベノミクスは失敗した、批判ばかりを繰り返しています。私は、今回の選挙戦を通じて、私たちの経済政策が間違っているのか、正しいのか、本当に他に選択肢はあるのか、国民の皆様に伺いたいと思います。

 2年前を思い出していただきたいと思います。リーマン・ショックから4年もたち、世界経済は立ち直ろうとしていたにもかかわらず、日本だけはデフレに苦しみ、3四半期連続のマイナス成長となっていました。
  ・・・・・・・・・・・・

 (行き過ぎた円高や産業空洞化等の)日本全体を覆っていた強い危機感が、私たちの政権交代へとつながりました。強い経済を取り戻せ。これこそが総選挙で示された国民の皆様の声であると信じ、三本の矢の政策を打ち続け、経済最優先で政権運営に当たってまいりました。

 その結果、雇用は100万人以上増え、高校生の就職内定率は10%アップしました。9月末の時点で既に半分以上の学生が内定をもらっている。15年ぶりの出来事です。今年の春は、過去15年間で最高の賃上げが実現しました。企業がしっかりと収益を上げれば、雇用を増やし、賃金を上げることができる。その好循環を回していく。これがアベノミクスなのです。

 アベノミクスの成功を確かなものとするために、私は、消費税10%への引上げを18カ月延期する決断をいたしました。

 消費税引上げを延期する以上、社会保障を充実させるスケジュールも見直しが必要です。しかし、子育て世代の皆さんを応援する、その決意は揺らぎません。子ども・子育て支援新制度は来年4月から予定どおり実施します。

 2年間で20万人、5年間で40万人分の保育の受け皿を整備し、待機児童を無くしてまいります。更に『小1の壁』を突き破り、学童保育についても待機児童ゼロを実現していく。そのスケジュールは全く変わりません。女性の輝く社会を実現する。この安倍内閣が掲げた旗はこれからも高く掲げてまいります」

 2014年4月1日の5%から8%消費税増税以降、駆け込み需要の反動で景気は落ち込んだ。だが、この落ち込みは織り込み済みで、そのための景気対策は打っていたはずだし、打ったことを安倍晋三自身も2014年6月5日午後(日本時間同日夜)のベルギーで開催G7(先進7カ国)首脳会議の閉幕後の記者会見で述べている。

 その成果でもあるのだろう、2012年12月26日第2次安部政権発足から2年足らずのうちに「雇用は100万人以上増え、高校生の就職内定率は10%アップ」、「過去15年間で最高の賃上げが実現」と景気の順調な回復を誇らかに謳っていて、そうであるならアベノミクス3本の矢の効能あらたかということであって、しかも2017年4月1日10%への増税予定まで余すところ2年4カ月という時間がありながら、「消費税10%への引上げを18カ月延期する」というのはアベノミクス経済の実態が誇らかに謳っている程の中身を備えていないからであろう。

 要するに円安・株高で大企業や高額所得者は利益を上げていたが、その利益が一般国民にまで回っていかないために、2年先という時間があるにも関わらず、その改善の見通しがつかない、あるいは改善の自信がないために先んじて増税延期を打ち出した。

 安倍晋三自身、既にアベノミクスの欠陥に気づいていたことになる。格差ミクスであるということの欠陥、カネ持ちミクスであるということの欠陥に。

 ベルギー・ブリュッセルでの「記者会見」発言を取り上げてみる。文飾は当方。 

 安倍晋三「消費増税は、国の信認を維持し、世界に冠たる社会保障制度を次の世代に引き渡していくため、17年ぶりの政治の決断でありました。

  同時に、(消費税増税駆け込み需要の)反動減を乗り越えるため、万全の手を打ってきた訳であり まして、5.5兆円規模の経済対策を発動中であります。成長戦略も しっかりと打 ち出していきます。

 IMFからも、日本経済に関し、消 費税率の影響をうまく乗り越えつつある、反動減により4~6月期に経済は縮小しますが、本年の後半には、雇用増加や賃金上昇に支えられて、経 済は回復する見込み、との分析がなされていることも承知しています。

 7月から年度後半にかけて、すみやかに成長軌道に戻していきたいと思います。安倍内閣は日本経済の再生を必ず成し遂げていきます」

 「万全の手を打ってきた」にも関わらず、増税を延期する。自身の景気対策の失敗を告げているに過ぎない。

 景気対策がアベノミクス政策に基づいている以上、アベノミクス失敗宣言となる。 

 知る限りでは衆院解散記者会見から2カ月半後の2015年2月4日の衆院予算委で「再来年に消費税を引き上げ、これはリーマン・ショックのような事情の変更があったら別でございますが」と、「リーマン・ショック」を増税延期の条件として持ち出している。

 そしてこの衆院予算委から7カ月と20日後の記者会見でも同じことを述べている。文飾は当方。

 2015年9月24日自民党両院議員総会後の自民党総裁としての「記者会見」  

 記者「経済最優先で引き続き取り組まれるということだが、平成29年(2017年)4月に消費税の増税を実施することに変わりないか。増税時の負担軽減策をめぐる与党協議が進んでいるが、党総裁としてこの調整にリーダーシップを発揮されるおつもりはあるか。来年の参院選で憲法改正を訴えるつもりはあるか」

 安倍晋三「まず先ほど申し上げた1億総活躍社会をつくっていく。そのために新3本の矢を新たに放っていく、その決意についてお話をさせていただいたところだ。1本目の矢、まさにこの経済成長、非常に重要だ。そして戦後最大規模の経済を、豊かな社会をつくっていかなくてはならない。600兆円、GDP600兆円という大きな目標を掲げた。それに向けて、しっかりとした具体的な成長戦略を進めていく考えだ。

 その上で、今お話があった消費税の引き上げについてだが、再来年の4月の10%への引き上げについては、世界に冠たる社会保障制度を次の世代に引き渡していくという責任を果たしていかなければならない。そして、市場や国際社会の信認を確保するため、リーマン・ショックのようなことが起こらない限り、予定通り実施していくことは、すでに今まで申し上げてきている通りで、その考え方に変わりはない。その段階で10%に引き上げていくことができる、そういう経済状況をつくっていく考えだ

 「世界に冠たる社会保障制度を次の世代に引き渡していくという責任を果たす」ためにも、そして「市場や国際社会の信認を確保する」ためにもと2つの責任を挙げて、「リーマン・ショックのようなことが起こらない限り、予定通り実施していく」と2017年4月の増税を確約している。

 そして「リーマンショック級の事態」が出来しなかったにも関わらず、2019年10月1日予定の消費税10%への増税を延期している。

 「安倍晋三消費税増税再延期記者会見」首相官邸/2016年6月1日)      

 安倍晋三 1年半前、衆議院を解散するに当たって、正にこの場所で、私は消費税率の10%への引上げについて、再び延期することはないとはっきりと断言いたしました。リーマンショック級や大震災級の事態が発生しない限り、予定どおり来年4月から10%に引き上げると、繰り返しお約束してまいりました。

世界経済は今、大きなリスクに直面しています。しかし、率直に申し上げて、現時点でリーマンショック級の事態は発生していない。それが事実であります。

熊本地震を『大震災級』だとして、再延期の理由にするつもりも、もちろんありません。そうした政治利用は、ひたすら復興に向かって頑張っておられる被災者の皆さんに大変失礼なことであります。

ですから今回、『再延期する』という私の判断は、これまでのお約束とは異なる『新しい判断』であります。「公約違反ではないか」との御批判があることも真摯に受け止めています。

国民生活に大きな影響を与える税制において、これまでお約束してきたことと異なる判断を行うのであれば、正に税こそ民主主義であります、であるからこそ、まず国民の皆様の審判を仰いでから実行すべきであります」

 その「新しい判断」とは中国や新興国、その他の国の経済の「陰り」を受けてリーマンショッククラスと自身では見ている「大きなリスクに直面」している世界経済の不透明感を挙げている。

 例えそうであったとしても、「現時点でリーマンショック級の事態は発生していない。それが事実」と言うことなら、消費税10%増税2019年10月1日直前に「リーマンショック級の事態」が発生して日本経済が壊滅的な打撃を受けたとしても、あるいは増税後の2019年10月1日以降に発生して日本経済が壊滅的な打撃を受けたとしても、立法府に緊急要請して増税停止を求める法律の審議を求めて、その法律を即時に採決、反対する野党はいないだろうから(反対したら、次の選挙で落とされる)、即日公布・即日施行に持っていくといった対応は可能なはずだが、3年4カ月も前に再度の増税延期を決めている。

 勿論、スーパー等のレジ自体は即座な対応は困難かもしれないが、現金で払い戻すことで対応不可能ということはない。

 この記者会見は「通常国会閉会」の体裁を取っているが、参議院議員の任期が約1カ月20日後の2016年7月25日に満了、7月中に選挙が行われると見られていた。最初の増税延期を決めたのは衆院解散当日2014年11月21日で、10%増税を最初に予定されていた2017年4月1日からは約2年4カ月前となることは既に書いた。

 衆議院選挙、参議院選挙共に自公与党が大勝しているから、国民が暮らしを最大の利害としていることを利用した選挙目当ての消費税増税延期と言うことになるが、何年も前から増税延期を決めたということはアベノミクスが満足に機能していないことを消費税増税延期で隠蔽して勝利するためのリーマンショックを口実とした、あるいはリーマンショッククラスと自身では見ている世界経済の不透明感を口実とした選挙目当てが実態ということであるはずだ。

 つまりアベノミクスが満足に機能していないことが前提となっている。

 安倍晋三は9月25日(2017年)の衆議院解散を告げる記者会見では2019年10月の8%から10%への消費増税を予定通り行うことを述べ、2%の税収約5兆円分のうちの借金返済に回す4兆円の半分を子育て世代への投資拡充に使途変更することを申し渡したのみで、リーマンショックを増税延期の条件とはしなかった。

 そして舌の根も乾かないうちにとも言うべきか、たった1日経っただけの9月26日夜、テレビに出て、リーマンショックを増税延期の条件とした。

 なぜなのだろう。考えられることは東京都知事小池百合子代表の新党希望の党に小池百合子の人気にあやかる意味合いもあるのだろう、民進党やその他の党、自民党からも1人、入党する流れが出始めて、それが徐々に強まり、勢力を拡大していく気配を見せ始めた。希望の党は2019年10月の消費税増税に反対している。

 安倍晋三はこれまでの消費税増税延期を利用して選挙の勝利に味をしめた手前、勢力拡大の勢いを見せ、選挙の手強い敵となりかねない希望の党の増税反対が選挙に有利に働く要因となる可能性が心配となって、再度リーマンショックを理由に増税延期の条件として提示することで急遽、希望の党と同様の立場に立ち、相手の有利性を相対化しようとしたのではないだろうか。

 だとしても、やはりこういった姑息な手を使わなければならない要因はアベノミクスが満足に機能していないこと、アベノミクス機能不全が前提となる。満足に機能していたなら、いわば国民に景気の実感を満足に与えていたなら、増税時には軽減税率も予定されていることを考えると、多くの国民は2019年10月の消費税増税を比較的安心して迎えることができるはずだ。

 選挙のたびにリーマンショック、あるいはそれに類似した経済リスクを増税延期の条件として持ち出す。アベノミクスが満足に機能していないことに対しての選挙に勝利するための隠蔽であって、もはやオオカミ少年の「オオカミが来た」に等しい。

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安倍晋三の消費税借金返済分内の「教育無償化」使途変更はスーパーの安売り目玉商品、国民負担の全世代型化

2017-09-27 11:58:18 | 政治

次期衆議院議員選挙 争点とすべき


      2つのこと



  森友・加計政治関与疑惑にまみれた

     指導者を続投させるべきか否か

  成長実感ゼロのアベノミクスを

     効果があると見せかける幻想に

      今後も付き合うべきか否か

 安倍晋三が9月25日に記者会見を開き、9月28日に衆院を解散すること、そして選挙公約の柱とする「生産性革命」と「人づくり革命」の2大革命を掲げ、人づくり革命として次のように述べた。

 「首相官邸記者会見」 

 安倍晋三「子供たちには無限の可能性が眠っています。どんなに貧しい家庭に育っても、意欲さえあれば専修学校、大学に進学できる社会へと改革する。所得が低い家庭の子供たち、真に必要な子供たちに限って高等教育の無償化を必ず実現する決意です。

     ・・・・・・・・・・・・・

 幼児教育の無償化も一気に進めます。2020年度までに3~5歳まで、全ての子供たちの幼稚園や保育園の費用を無償化します。0~2歳児も、所得の低い世帯では全面的に無償化します。待機児童解消を目指す安倍内閣の決意は揺らぎません。本年6月に策定した子育て安心プランを前倒しし、2020年度までに32万人分の受皿整備を進めます」

 次に財源。

 安倍晋三「子育て、介護。現役世代が直面するこの2つの大きな不安の解消に大胆に政策資源を投入することで、我が国の社会保障制度を全世代型へと大きく転換します。急速に少子高齢化が進む中、国民の皆様の支持を得て、今、実行しなければならない、そう決意しました。2兆円規模の新たな政策を実施することで、この大改革を成し遂げてまいります。

 しかし、そのつけを未来の世代に回すようなことがあってはならない。人づくり革命を力強く進めていくためには、その安定財源として、再来年10月に予定される消費税率10%への引上げによる財源を活用しなければならないと、私は判断いたしました。2%の引上げにより5兆円強の税収となります。現在の予定では、この税収の5分の1だけを社会保障の充実に使い、残りの5分の4である4兆円余りは借金の返済に使うこととなっています。この考え方は、消費税を5%から10%へと引き上げる際の前提であり、国民の皆様にお約束していたことであります。

 この消費税の使い道を私は思い切って変えたい。子育て世代への投資と社会保障の安定化とにバランスよく充当し、あわせて財政再建も確実に実現する。そうした道を追求してまいります。増税分を借金の返済ばかりでなく、少子化対策などの歳出により多く回すことで、3年前の8%に引き上げたときのような景気への悪影響も軽減できます」

 予定していた借金返済額4兆円のうち2兆円を他用途にむけて、返済額を半分にしながら、「財政再建も確実に実現する」は都合がよ過ぎる。

 《【NHK NEWS WEB Business特集】揺らぐ? 財政健全化の「旗印」》(2017年6月9日 19時11分)記事を参考に「財政再建」について纏めてみる。  

 政府は社会保障や公共事業等、国民生活に欠かせない政策・事業を実施するために必要な財源を借金(国債など)に頼らずに税収などでどれだけ賄えているかを示す指標である、現在赤字状態の基礎的財政収支(プライマリーバランス)を2020年度に黒字化する財政健全化目標を立てている。

 ところが、内閣府が今年2017年1月に示した最新の予測でのプライマリーバランスは今後、日本経済が名目成長率で3%という高い成長を達成し、政府が予定どおり2019年10月に消費税率を10%に引き上げても、2020年度には8.3兆円の赤字となっていて、目標の黒字化は極めて難しく、その結果、2015年度990兆円の借金残高は2020年度には1104兆円に膨らんでしまうと解説している。

 5年で114兆円の増加。1年平均すると、22.8兆円。

 当然、借金返済に充てる4兆円の内2兆円を「教育無償化」に回すと、2020年度以降も金利等の条件にもよるが、20兆円以上ずつ加算されていくことになる。

 また借金が増える分、そのツケは各政策や各事業の予算編成や予算配分を窮屈にするという形で現れる。例え窮屈解消に新たな国債発行で充当させるにしても、それが新たな借金となるだけではなく、借金額との兼ね合いで発行額に一定の抑制を効かせなければならないから、窮屈という点は変わらないし、こういったことは現役世代・引退世代に関係なく影響を与えることになるが、現役世代が引退世代に移っても変わりなく影響していく可能性は否定できないし、将来世代の負担となって跳ね返ってこない保証もない。

 にも関わらず、安倍晋三は「そのつけを未来の世代に回すようなことがあってはならない」と、一見全て良しのバラ色の確約を披露しているが、社会保障制度の全世代型化の実現と同時に国民負担(ツケ)の全世代型化となって降り掛かってこないとも限らない。

 要するに借金返済分で賄った子どもたちや若者たちの「教育無償化」の利益は借金が減らない分、国家予算上の様々な窮屈の影響を受けるばかりか、残った借金が将来的なツケ(負担)となって循環していき、最終的には全世代が順番に負担する形を取ることになって差引きマイナスとなる可能性も出てくる。

 言ってみれば、安倍晋三の人づくり革命「教育無償化」は国民を惹き付ける政策に見えるが、その実態はスーパーの客寄せのための安売りの目玉商品が一見安くて得に見えるが、いっときの節約で終わって、収入が増えなければ生活の根本的解決とならないのとさして変わらない。

 安倍晋三は「教育の無償化」を票寄せのための安売りの目玉商品に利用しようとしているのだろう。

 「教育の無償化」は何よりもアベノミクスが現在以上に機能することが前提となる。安倍晋三は記者会見で「増税分を借金の返済ばかりでなく、少子化対策などの歳出により多く回すことで、3年前の8%に引き上げたときのような景気への悪影響も軽減できます」と確約してはいるが、2019年10月に予定の通りに消費税率8%を10%に増税できたとしても、現状のアベノミクスでは確かな確約とはならない。

 「教育無償化」によってその分の可処分所得は増える。「日本経済は11年ぶりとなる6四半期連続のプラス成長。内需主導の力強い経済成長が実現」、「雇用は200万人近く増加」、「この春、大学を卒業した皆さんの就職率は過去最高」、「2年間で正規雇用は79万人増」とアベノミクスの効能を並べ立てて謳っている経済活況が個人生活に実感を与えているなら、可処分所得が増える分、個人消費が勢いづくように見えるが、個人消費が低迷したままでは自画自賛に過ぎない。

 当然、このままの消費状況では消費税率10%となったとき、安倍晋三が言っていることと裏腹に消費が却って冷え込んだ場合、予定していた消費税増税による税収は期待通りにはいかないことになる。

 安倍晋三はアベノミクスの効能を謳うに都合の良い経済指標だけを取り上げるが、なぜ個人消費が活発とならないのかについては満足に触れない。

 経済再生担当相の茂木敏充が8月28日(2017年)の記者会見で昭和40年代前半に4年9カ月に亘って回復が続き、戦後2番目の長さとなった「いざなぎ景気」に並んだ可能性が高いと発表したが、日銀の大規模な金融緩和が味方した株高と円安で企業の経常利益と内部留保を過去最高に導いたのみで、個人消費は目立って増えていない。

 この傾向は2002年1月から2007年10月までの69カ月に亘った戦後最長景気とそっくりに似た状況を呈している。大企業だけが儲けて、その利益は個人には満足に再配分されることはなく、個人消費は冷え込んだままだった。

 経済には疎いから、マスコミが伝える内閣府や総務省統計局公表の各経済指標で個人消費の趨勢を知るのみで、個人消費を基準に景気の程度を判断していたが、「日本経済見通し:個人消費はなぜ低迷を続けているのか?」大和総研/2017年1月20日)のPDF記事が低迷の本質的な原因を教えてくれる。    

 〈2012 年度から2014 年度までの間に雇用者報酬が計7兆円弱増加していた。一方で、所得の増加を受けて所得税が計3.9 兆円程度増加したことに加え、社会負担(雇用者の社会負担)については計3.3 兆円増加し、可処分所得の伸びを抑制していたことが確認できる。

 このように、第2次安倍政権発足後に雇用者報酬が増加したものの、社会保障費の負担増などを背景に、可処分所得の増勢ペースが緩やかなものにとどまり、現役世代の消費拡大の勢いを削ぐことになってしまった。また、2015 年度については、所得税の最高税率が引き上げられたことも可処分所得の下押し要因となっており、「給料の額面が上がっても手取りは増えない」状況が継続したとみられる。〉――

 その他にも2つ程理由を挙げているが、このことが主とした理由となっているはずだ。少子高齢化の進行で現役世代の社会保障費の負担(雇用者の主たる社会負担)は増加する傾向にある。年金世代にしても、中低所得者にとっては年々値上げしている介護保険料の負担や介護に支払う料金も生活を圧迫する要因となっているはずだ。

 全世代型のこのような負担と国の借金の返済を先に伸ばすことで生じる負担を循環的に負うことになる国民負担の全世代型化が現在も個人消費低迷の理由の一つとなっている将来不安をなお一層高めて、却って個人消費を抑える逆効果を生み出さないとも限らない。

 国の借金の返済先送りが「教育無償化」による生活の安心・可処分所得の増加を以てしても個人消費活性化の根本的な動機づけとならなければ、そうなる可能性は高いと見ているが、まさしくいっときの節約で終わって、生活の根本的解決とならないスーパーの客寄せのための安売りの目玉商品そのものとなる。

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安倍晋三の「国難突破解散」の“国難”は歴代自民党政権がつくったものだから、“突破”はマッチポンプ

2017-09-26 11:54:22 | 政治

次期衆議院議員選挙 争点とすべき


      2つのこと



  森友・加計政治関与疑惑にまみれた

     指導者を続投させるべきか否か

  成長実感ゼロのアベノミクスを

     効果があると見せかける幻想に

      今後も付き合うべきか否か

 ご存知のように「マッチポンプ」とは「自分でマッチで火を付けて自分でポンプで消すこと」を言う。「自分で火を付ける」とは他人に関係する揉め事を自分で起こすことの比喩であって、「自分でポンプで消す」とは自分で起こした揉め事をその他人のために解決してやって他人から利益を得ることの比喩となっている。

 言ってみれば、自作自演自己利益行為の揉め事のデッチ上げと言うことになる。

 安倍晋三は昨日2017年9月25日の衆議院の解散を告げる記者会見で「この解散は『国難突破解散』であります」と命名した。

 現在日本が置かれている「国難」は勿論、安倍晋三が一人でつくったわけではない。歴代自民党政権がつくり出し、それを歴代自民党政権の末席に現在位置している安部政権がその国難の突破を図る。と言うことは、自民党政権という文脈で考えた場合、まさに“マッチポンプ”に相当する。

 当然、自民党という立場からしたら、自作自演自己利益の「国難突破」と名付けることができ、そのための解散に過ぎない。

 国難の殆どは1990年代初頭のバブル崩壊後、20年以上に亘って続いた経済の停滞を言う“失われた20年”によってもたらされた。経済が拡大し、拡大によって税収が年々増加していく高度経済成長時代はその弊害は目につかなかったが、高度経済成長時代が終わって以降、“失われた20年”が進行する経済停滞の中にあっても、自民党政治が長年染み付かせて主たる属性となっていた各議員の地元や業界団体と結びついた利益誘導政治を改めること無く続けて特定の自民党議員を潤す目的の各選挙区地元のムダな公共事業や特定の業界を潤して国会議員にその利益の一部を還元するすムダな政策にムダな予算を費やした結果の先進国最悪水準の国の借金が2016年9月末時点で過去最大更新の1062兆5745億円(日経電子版)が国難の端緒となっているはずだ。  

 「借入金償還財源の繰入額」等が記されている財務省のページを見ると、2017年度の国債と地方債を合わせた公債の予定償還額は34兆7,298億円、一般会計からの繰入額13兆8,619億円、特別会計からの繰入額18兆2,418億円、株式売払収入からの繰入額1兆5,460億円その他となっている。  

 一般会計からと特別会計からの繰入額を合計した32兆1037億円分、各政策に回す予算を窮屈にしていることになる。しかもこの金額は2017年度の予定額で、2016年度から遡って年度毎にほぼ変わらない金額を償還に充てて、年々予算を窮屈にしている。

 殆どが自民党政権が借金をつくって、自民党政権が返済するという一人相撲はまさに自作自演自己利益の“マッチポンプ”のそのものである。

 安倍晋三は上記記者会見で2019年10月予定の消費税率8%から10%増税時の2%分5兆円強の税収5分の1社会保障の充実、残り5分の4の4兆円程度を借金返済の予定となっているが、借金返済の約4兆円を財政再建は後回しにして、そのうちの幾らかを子育て世代への投資拡充への用途変更を申し出ている。

 投資の主たる内容は幼児教育の無償化や高等教育の無償化に回すと言っている。

 大いに結構だが、2015年11月24日付「日経電子版」記事は、経済協力開発機構(OECD)の9月24日公表の情報として、〈2012年の加盟各国の国内総生産(GDP)に占める学校など教育機関への公的支出の割合〉は、〈日本は3.5%で比較可能な32カ国中、スロバキアと並び最下位だった。OECD平均は4.7%。〉と伝えている。

 歴代自民党政権が営々と積み上げてきた2016年9月末時点国の借金1062兆5745億円の返済のために年度ごとに30兆円前後を支払い続けなければならないためにその金額分窮屈にせざるを得ない予算配分が教育予算にも及んでいることからの教育機関への公的支出割合のOECD最下位ということでもあるはずだ。

 いわば借金をつくって教育予算を減らしていながら、消費税増税分のうちの借金返済額の何パーセントかを幼児教育や高等教育の無償化の教育予算に回す。

 しかも選挙の目玉の一つにして票を取り入れ、自己利益にしようとする思惑(=打算)がないことはないはずだから、自作自演自己利益型の“マッチポンプ”そのものであろう。

 幼児教育や高等教育の無償化に反対はしないが、借金の返済額から工面した場合の年々の返済額の減少は、その金額は消費税増税分から回されることになるから少しは減ることになったとしても、減少分と見合う金額に応じて各政策への予算配分を窮屈にしていかなければならないことになって、これまでと左程変わらない堂々巡りの悪循環を繰返していくことになる。

 当然のこと、歴代自民党政権が自分たちでつくった国の借金を自分たちで返していく自作自演自己利益の“マッチポンプ”は続いていくことになる。

 これが安倍晋三が言っている「国難突破解散」の中身であり、安倍晋三自身が自ずと“マッチポンプ”の性格を付き纏わせていることになる。

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東海地震予知:どれだけ予算をムダに費やしたか、似たような過ちを繰返さないためにその額を明らかにすべき

2017-09-25 11:11:48 | 政治

次期衆議院議員選挙 争点とすべき


      2つのこと



  森友・加計政治関与疑惑にまみれた

     指導者を続投させるべきか否か

  成長実感ゼロのアベノミクスを

     効果があると見せかける幻想に

      今後も付き合うべきか否か

 国が東海地震の予知前提の情報発表を中止する方針を固めたと2017年9月23日付「NHK NEWS WEB」記事が伝えている。不可能だと予知を見限ったことになる。 

 〈「東海地震」は、南海トラフで起きるマグニチュード8クラスの巨大地震の一つで、国は、直前に予知できる可能性があるとして、39年前の昭和53年に「大規模地震対策特別措置法」、いわゆる「大震法」を制定し、予知を前提に防災対策を進めてきました。〉

 つまり39年間、“予知可能”としてきた。但しこの“予知可能”は東海地震に限ってのこととしてきたらしい。〈東海地震は、国が唯一、地震の直前予知ができる可能性があるとしてきた地震で、地震の前兆とされる現象に応じて3つの段階の情報を発表する体制をとってきました〉と記事は書いている。

 東海地震が“予知可能”ということなら、百歩譲って、“予知可能性”ということであってもいいが、他の地震も“予知可能性”の範疇に含めなければならないはずだが、東海地震に限る合理性はどこにあるのだろうか。

 縄文・弥生の時代から巨大地震が発生していたことが考古学によって明らかにされているし、記録が残されるようになってから、歴史学その他にによって飛鳥・奈良・平安とM6以上7、8クラスの巨大地震に日本列島は見舞われていることが知られていて、この繰返し巨大地震が発生する傾向は時代が下っても変わらず、それゆえに地震列島と呼称されているはずだ。

 にも関わらず、〈東海地震は、国が唯一、地震の直前予知ができる可能性があるとしてきた地震〉とされてきた。気象庁サイトの「東海地震の予知について」のページにも、〈東海地震は、現在日本で唯一、直前予知の可能性がある地震と考えられています(ただし、東海地震でも日時を特定した予知は不可能です)。〉との記述が載せられている。  

 つまり日時は特定できないけれども、間近に発生することを伝えることは可能としてきた。と言うことは、避難に十分に時間をかけることができる可能性を保証してきたことになる。

 但しこのことの裏を返すと、阪神・淡路大震災や新潟県中越地震、東日本大震災等々の巨大地震についてはその発生に対する“直前予知不可能性”を許してきたことになる。東海地震とは違って、“予知可能性”唯一外だからだと。

 東日本大震災の場合は地震調査研究推進本部が2008年に震源地を宮城県沖とした最大予測M8の巨大地震が30年以内に99%の確率で発生の予測をしていたと言うが、“直前予知可能性”のどのような情報も一切出されていない。

 予知に関して「30年以内」という長いスパンでの予測は日々生活をしている国民にとっては無意味であって、間近に発生することを伝える“直前予知可能性”こそが意味を持つことになる。

 「南海トラフの巨大地震モデル検討会第1回会合」(平成23年8月28日)の資料ページに〈東海地震は30年以内の発生確率は87%〉(2011年1月1日時点)と記して、東日本大震災に関して「99%」としていたように1の位まで明確に予知していることが意味を持つのは“直前予知可能性”を前提としていたからだろう。      

 “直前予知可能性”を前提とした東海地震のこの明確な発生確率予知とこれまで発生した巨大地震を“直前予知可能性”に入れていなかったこととの矛盾は否応もなしに露呈することになる。

 だが、この矛盾は東海地震の“直前予知可能性”の取り下げによって解消することになる。他の地震の発生を直前予知できなかったことと整合性を取り合うことができる。

 “直前予知可能性”の取り下げはこの地域で過去に100年間隔とかで何回か繰返して巨大地震が起きた、最後の地震から80年経過する、だから、2~30年内に再び起こる可能性があるという長期スパンの予測はできるが、直前予測は不可能で、いつ発生するかは分からないという意味解釈を取る。

 だからこそ、国も地方自治体も起きた場合に備えることに予算をかけた方が利口で、より現実的だと今更ながらに気づいたということなのだろう。勿論、住民たる個人にしても気づかなければならない。

 地震予知の不可能性を長年主張してきて、現在も唱えている東京大学名誉教授のロバート・ゲラ-氏著作の《日本人は知らない「地震予知」の正体》(2011年発売)に東海地震予知のために毎年100億円規模の予算が投じられているとの記述があることをネットに紹介されているが、上記「NHK NEWS WEB」に書いてある東海地震予知が「39年前の昭和53年」から進められてきたとの記述から計算すると、3900億円もの予算が費やされてきたことになる。

 政府は予知を実際に中止する場合は、似たような過ちを繰返さないためにその額を明らかにすべきだし、もっと早い時期に中止の機会がなかったかについて、あるいは中止の決心のつけどころの有無についても調べるべきだろう。

 中止へと転換する決心のつけどころが何回かあったにも関わらず、メンツや周囲の取り沙汰を気にしてズルズルと続けてしまうということは日本が制空権・制海権を共に米軍に握られた上に戦争継続能力を失いながら、振り上げた拳に拘って本土決戦に執着、ズルズルと戦争を続けて却って犠牲者を増やすことになった戦前の戦争の例からも容易に推測できる。

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麻生太郎の原因を安倍晋三の圧力強化一辺倒政策と関連付けない朝鮮半島有事日本大量殺到難民射殺論

2017-09-24 11:47:22 | 政治

次期衆議院議員選挙 争点とすべき


      2つのこと



  森友・加計政治関与疑惑にまみれた

     指導者を続投させるべきか否か

  成長実感ゼロのアベノミクスを

     効果があると見せかける幻想に

      今後も付き合うべきか否か

 副総理でございます、財務大臣でございますの麻生太郎(77歳)の朝鮮半島有事の際に日本に大量に殺到する可能性のある難民対策についての発言を各マスコミが伝えている。

 それぞれ短い記事だから、全文を紹介してみる。難民に関わる発言個所は文飾を施した。

 《麻生副総理「警察か防衛出動か射殺か」 武装難民対策》朝日デジタル/2017年9月24日01時20分)   

 麻生太郎副総理は9月23日、宇都宮市内での講演で、朝鮮半島から大量の難民が日本に押し寄せる可能性に触れたうえで、「武装難民かもしれない。警察で対応するのか。自衛隊、防衛出動か。射殺ですか。真剣に考えなければならない」と語った。
 麻生氏はシリアやイラクの難民の事例を挙げ、「向こうから日本に難民が押し寄せてくる。動力のないボートだって潮流に乗って間違いなく漂着する。10万人単位をどこに収容するのか」と指摘。さらに「向こうは武装しているかもしれない」としたうえで「防衛出動」に言及した。

 防衛出動は、日本が直接攻撃を受けるか、その明白な危険が切迫している「武力攻撃事態」などの際に認められており、難民対応は想定していない。

 麻生氏は先月、「少なくとも(政治家になる)動機は問わない。結果が大事だ。何百万人も殺しちゃったヒトラーは、いくら動機が正しくてもダメなんだ」と発言し、撤回していた。

 

 《麻生氏「武装難民の射殺」に言及…朝鮮半島有事》YOMIURI ONLINE/2017年09月23日 22時01分)  

 麻生副総理兼財務相は23日、宇都宮市内のホテルで講演し、朝鮮半島有事で難民が日本に押し寄せた場合の対応について、「武装難民かもしれない。警察で対応できるか、自衛隊の防衛出動か、射殺ですか。真剣に考えた方がいい」と述べた。

 難民が武装していた場合に国民の安全を確保する重要性を強調した発言だが、防衛出動や「難民の射殺」に言及したことは不適切だと指摘を受ける可能性もある。防衛出動は、自衛隊法により、日本が外国から武力攻撃を受けるか、武力攻撃の明白な危険が切迫している「武力攻撃事態」などの場合に認められており、難民に対する発動は想定していない。

 

 《麻生副総理、過激に問題提起 北有事での武装難民対策に「射殺か」》サンスポ/2017.9.24 05:01)  

 麻生太郎副総理兼財務相(77)は23日、宇都宮市で講演し、北朝鮮で有事が発生すれば日本に武装難民が押し寄せる可能性に言及し「警察で対応できるか。自衛隊、防衛出動か。じゃあ射殺か。真剣に考えた方がいい」と問題提起した。

 北朝鮮有事について「今の時代、結構やばくなったときのことを考えておかないと」と指摘。「難民が船に乗って新潟、山形、青森の方には間違いなく漂着する。不法入国で10万人単位。どこに収容するのか」と強調した。その上で「対応を考えるのは政治の仕事だ。遠い話ではない」と述べた。

 

 《麻生氏「武装難民来たら射殺か」=半島有事対応で》時事ドットコム/2017/09/23-22:22)    

 麻生太郎副総理兼財務相は23日、宇都宮市内で講演し、朝鮮半島有事で想定される難民の発生に関し、「(日本に来たら)どう対応するか。武装難民かもしれない。警察で対応できるか。自衛隊の防衛出動か。じゃあ射殺か。真剣に考えた方がいい」と語った。北朝鮮情勢の緊迫化を受け、難民対応についての議論を喚起した発言だ。

 麻生氏は難民について「どう対応するか。不法入国で逮捕といっても10万単位をどこに収容するのか」とも語った。

 発言を纏めてみる。

 麻生太郎「武装難民かもしれない。警察で対応するのか。自衛隊、防衛出動か。射殺ですか。真剣に考えなければならない。

 今の時代、結構やばくなったときのことを考えておかないと。向こうから日本に難民が押し寄せてくる。動力のないボートだって潮流に乗って難民が船に乗って新潟、山形、青森の方には間違いなく漂着する。不法入国で逮捕といっても、10万人単位をどこに収容するのか。

 向こうは武装しているかもしれない。対応を考えるのは政治の仕事だ。遠い話ではない」


 纏めると、大体こういった趣旨の発言となる。

 北朝鮮国民の大量難民発生は朝鮮半島有事が原因となる。朝鮮半島有事の考え得る原因は北朝鮮の軍事的暴発かアメリカの北朝鮮に対する軍事攻撃とそれに対する北朝鮮の反撃という形を取ったアメリカの同盟国日韓も巻き込むことになる戦争以外は考えることができない。

 前者は北朝鮮のミサイル開発・核開発阻止に対話政策ではなく、開発資金遮断を目的とした経済的に追い詰める圧力政策を掲げた日米その他の国が主導権を握って採択に漕ぎつけた国連安全保障理事会加盟国の対北朝鮮制裁決議の厳格な履行によって経済的にギリギリまで追い詰められた末に金正恩が独裁者のよくある傾向として屈服を屈辱と取ってそれしかないと考えた場合の残された選択肢としての軍事的反攻――戦前の日本と同様、軍事力の大差から終局的には勝てるはずのない自滅をそれ相応とする暴発に過ぎないのだが――に出て、逆に日米韓の軍事的猛攻に遭い、その騒動・混乱から逃れる形で生み出されることになる大量難民の発生であろう。

 後者は国連安全保障理事会の対北朝鮮制裁決議の厳格な履行にも関わらず、金正恩がミサイル開発と発射実験、核開発と核実験を中止せずに米本土に優に届くミサイル開発とミサイルに核搭載の技術を十二分に獲得していく過程のいずれかの時点で、あるいは獲得した時点でトランプが米国の安全保障上の最大の危機とするレッドライン(越えてはならない一線)を超えたと判断して、北朝鮮に対する軍事攻撃を行った場合の大量難民の発生ということになる。

 そして前者・後者いずれのケースでの大量難民の発生であっても、元を正すと、国連安全保障理事会で対北朝鮮制裁決議を全会一致で採択することになった日米その他の国が主導した対話政策を排除した圧力政策が出発点ということになる。

 さらにいずれのケースでの大量難民の発生であっても、難民大量発生の前提として北朝鮮の対日本軍事攻撃も考えなければならない。日本軍事攻撃の進行と共に難民は増えていくことになる。

 麻生太郎は単細胞にも原因も触れずに大量難民の発生に言及しているが、原因もなく大量難民は発生しない。そして出発点となるそもそもの原因が対北圧力政策であるなら、アメリカのトランプと共に日本の安倍晋三がその主導に熱心に加わっているいる事実から判断して、大量難民発生を安倍晋三の圧力一辺倒の政策と、少なくとも可能性として関連付けなければならなかったはずだ。

 安倍晋三の2017年9月20日の「国連総会一般討論演説」外務省)   

 安倍晋三「対話とは,北朝鮮にとって,我々を欺き,時間を稼ぐため,むしろ最良の手段だった。

        ・・・・・・・・

 対話による問題解決の試みは,一再ならず,無に帰した。

        ・・・・・・・・

 北朝鮮に,すべての核・弾道ミサイル計画を,完全な,検証可能な,かつ,不可逆的な方法で,放棄させなくてはなりません。

 そのため必要なのは,対話ではない。圧力なのです」――

 安倍晋三のそれだけで突き進むことを頭から決め込んだ「圧力」が北朝鮮ミサイル開発・核開発阻止の唯一の答と見做すのみで、想定しなければならない北朝鮮の対日本攻撃もあり得る軍事的暴発も、トランプの対北朝鮮軍事攻撃の可能性もいずれも答としない“圧力性善説”張りの圧力一辺倒の訴えの単純思考・思考回路不足にも感心するが、朝鮮有事の際に日本に殺到する可能性のある大量難民を恐れるなら、難民発生回避の対話政策を訴えるか、その政策が安倍晋三と同様に金正恩のミサイル開発・核開発を逆に有利にすると考えるなら、こういった事情を前置きした上で難民発生に対処しなければならないはずだが、そこまでは頭を回転させることができない麻生太郎の単純思考・思考回路不足にも感心しないわけにはいかない。

 原因と結果を突き合わせることができず、そのために原因と切り離して大量難民発生の結果だけを取り上げることになっているから、安倍晋三の圧力強化一辺倒政策と関連付けることも、その影響が難民発生の原因だけではなく、日本攻撃の原因となり得ることもを考えることもできずに対処方法だけをあれこれ言うことになるハンパな問題意識しか提示することができない副総理・財務大臣というのは一体何を意味するのだろうか。

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トランプの“北朝鮮完全破壊”国連総会演説は金正恩独裁体制のみを対象とし、反撃封鎖可能の策はあるのか

2017-09-23 11:24:00 | 政治

次期衆議院議員選挙 争点とすべき


      2つのこと



  森友・加計政治関与疑惑にまみれた

     指導者を続投させるべきか否か

  成長実感ゼロのアベノミクスを

     効果があると見せかける幻想に

      今後も付き合うべきか否か

 米大統領トランプは2017年9月19日、国連総会で初演説、「私は、あなたたちが自分の国を第一に考えるのと同じように常にアメリカを第一に考える」と述べたとマスコミが伝えていた。

 如何にも対等に聞こえるが、カネ持ちの大国が自国第一で考えるのと貧しい国が自国第一で考えるのとは自ずと違いがあり、違いが出てくる。前者は益々カネ持ちになり、後者は何らかの地下資源、その他の資源に恵まれていなければ、あるいは最低限、民主的な政治指導者という人的資源に恵まれなければ、国民の貧しさはジリ貧状態に陥って、両者の格差は常に拡大傾向を取ることになる。

 トランプからしたら、このようなことは自国第一主義の前に思考の形さえ取ることはないのだろう。

 トランプの北朝鮮に関する国連演説要旨を以下の記事から引用してみる。文飾と当方。

 「日経電子版」(2017/9/20 12:38)
    
 【北朝鮮】

 一、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)体制は向こう見ずで下劣だ。核・ミサイル開発を無謀に追求し、全世界に脅威を与えている。

 一、北朝鮮は自国民を飢えさせ、弾圧している。罪のない米国民を拘束、スパイ教育のために海岸から13歳の日本人の少女(横田めぐみさん)を拉致した。

 一、北朝鮮が敵対的な姿勢をやめるまで、孤立させるために全ての国が連携する時だ。

 一、北朝鮮の脅威により米国が自国や同盟国の防衛を迫られれば、北朝鮮を完全に破壊するしか選択肢がなくなる。

 一、ロケットマンの金正恩氏は自殺行為を行っている。

 一、北朝鮮は核放棄以外に未来がないと理解する時だ。

 トランプは北朝鮮に拉致された横田めぐみさんのことを取り上げている。

 もし北朝鮮がミサイル開発も核開発も放棄せずに米本土に到達する核搭載のICBMを手に入れ、その実験を繰返し、数を増やしていって近隣諸国のみならず米国の安全保障が危険に曝された場合は、「北朝鮮を完全に破壊する」以外に選択肢はない。

 いわば“北朝鮮完全破壊”宣言となっている。

 アメリカの軍事力を以ってすれば、「北朝鮮を完全に破壊する」ことなど簡単なことだろう。但し一方的にそうすることが可能なのかどうかが先ず第一に問題となる。

 一方的に“完全破壊”が可能だとしても、米国その他の国の安全保障を名目とした金正恩に対する敵意・憎悪の“完全破壊”の代償が北朝鮮国民にも同時併行の形で降りかかることになる。

 いわば“完全破壊”は金正恩独裁体制のみの対象で終わらずに国民をも対象とすることになる。

 それが“完全破壊”である以上、実行された場合は国民を対象とした犠牲も徹底的な惨状を極めることになる。

 そうなっても構わない計算の上で北朝鮮国民を巻き込む“完全破壊”の警告を行ったのだろうか。

 それとも可能な限り国民を“完全破壊”の対象から外すことができる金正恩独裁体制のみを“完全破壊”の対象とした軍事攻撃が可能だと計算しているのだろうか。

 問題はもう一つ。北朝鮮側の軍事的反撃を一切封じ込めることのできる“完全破壊”を目指したアメリカ及び日本などの同盟国の軍事攻撃は可能かである。

 トランプはこの点に触れていない。反撃封鎖可能の策を頭に置かずに“北朝鮮完全破壊”説を国連総会で勇ましく唱えたのか、それ相応の痛手を被る覚悟で唱えたのか。

 後者だとすると、アメリカや日本などの同盟国及びそれぞれの国民も北朝鮮国民と同様、北朝鮮国民よりもひどくないかもしれないが、“完全破壊”の代償を受けることになる。

 要するに「北朝鮮の脅威により米国が自国や同盟国の防衛を迫られ」た場合は「北朝鮮を完全に破壊する」と警告を発し、実際に迫られて“完全破壊”を実行するという問題だけで済むわけではない。

 トランプは国連総会という世界的な公の場で“北朝鮮完全破壊”宣言を唱えた以上、その“完全破壊”の対象が金正恩独裁体制だけで完了させ得るのか、北朝鮮国民をも巻き込む“完全破壊”となるなのか、はたまた“完全破壊”の代償が北朝鮮の反撃という形を取ってアメリカや同盟国及びそれぞれの国民にも及ぶのか、全世界に向けた説明責任を負うはずだ。

 トランプはまた、「スパイ教育のために海岸から13歳の日本人の少女を拉致した」と横田めぐみさんについて触れている。触れているだけで、救出方法についての言及はない。

 米国が北朝鮮に対して“完全破壊”の軍事行動に出た場合、もしそれが金正恩独裁体制のみを対象とせずに北朝鮮国民をも巻き込む“完全破壊”であったなら、日本人拉致被害者だけではなく、拘束されている米国民の生命の安全との兼ね合いはどうなるのだろう。

 助かる、助からないは“完全破壊”の偶然に任せるのか、軍事行動前に成功確率100%の何らかの救出作戦を講じるのか、どちらかを頭に置かないままに拉致された日本人、あるいは拘束された米国民に一方で触れながら、他方で北朝鮮の“完全破壊”を唱えること自体が矛盾することになる。

 事はそう簡単ではない。北朝鮮に対してミサイル開発・核開発を放棄させることも、最終手段として軍事攻撃に出たとしても、事は簡単に済むわけではない。

 当然、国連総会演説で言葉強硬に警告を発すれば、それで片付くというわけでもない。このことはトランプの演説に金正恩が早速反応した「史上最高の超強硬な対応措置の断行を慎重に検討する」とした言葉に現れている。

 この「史上最高の超強硬な対応措置」とは北朝鮮外相が「太平洋上での水爆実験」ではないかと自らの憶測を述べている。

 「慎重に検討」だから、トランプの“完全破壊”と同様、実行されるかどうかは不明だが、言葉を用いただけの実行されない警告、あるいは挑発の応酬が常態化した場合は双方共に犬の遠吠え視されることになって、そのように解釈されないために言葉に出したとおりの行動に無理やり出ると言うこともある。

 アメリカが“完全破壊”の軍事攻撃に出る前に北朝鮮側からの軍事挑発という危険性も可能性としては十分に考えられる。双方共に軍事色を全面に出せば出す程に衝突の危険性は高まる。

 少なくともトランプの国連総会演説は北朝鮮を軍事的に刺激するには十分過ぎる言葉となっている。そして今のところ、それは逆効果となって現れている。

 逆効果はまた、双方に対して軍事色を高めるキッカケとなり得て、世界最強の軍事大国アメリカ大統領としてのトランプの“北朝鮮完全破壊”が実行に移される現実味を少しずつ増していくことになる。

 実行に移された場合、どういった破壊の形を取るのか、全世界に向けた説明責任を負うと既に書いたが、説明のために残された時間は衝突の危険性が高まるのとは逆に少なくなっていく。あるいは早急に必要となり得る場合もある。

 逆効果は拉致被害者に対しても敵国人としての色合いを増していくことでもあるから、何らかの良からぬ影響を与えるはずだ。

 河野太郎はトランプが演説で横田めぐみさんのことに触れたことを「高く評価する」と述べ、安倍晋三は「めぐみさんの両親、拉致被害者、家族にとって非常に勇気づけられるメッセージだった」と謝意を示したとマスコミは伝えているが、トランプの“北朝鮮完全破壊”演説の逆効果を考えることができない無責任な発言となっている。

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安倍晋三は北朝鮮暴発皆無の圧力強化方法のシミュレーションを国民に示すべき

2017-09-22 11:40:17 | 政治

次期衆議院議員選挙 争点とすべき


      2つのこと



  森友・加計政治関与疑惑にまみれた

     指導者を続投させるべきか否か

  成長実感ゼロのアベノミクスを

     効果があると見せかける幻想に

      今後も付き合うべきか否か

 安倍晋三が2017年9月21日、ニューヨークは国連総会で一般討論演説を行った。例の如く一人舞台のような高揚感を味わったに違いない。但し大勢の各国関係者相手に専属のスピーチライターが書いた原稿の一連の言葉に舞台の役者のように自身の思いを乗り移らせて説得力を持たせて読み上げることで生み出すことができる高揚感に過ぎないはずだ。

 「安倍晋三国連総会一般討論演説」首相官邸/2017年9月20日)      
 
 人間、地球及び繁栄のための行動計画である「持続可能な開発目標」の実施や女性起業家を資金で支える「女性起業家資金イニシアティブ」、全ての人が適切な予防、治療、リハビリ等の保健医療サービスを必要な時に支払い可能な費用で受けられる状況構築の「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ」等、「語るべきことの,リストは長い」が、それらを省いて「私の討論をただ一点,北朝鮮に関して集中せざるを得ません」と限定、北朝鮮に対するミサイル開発放棄と核開発放棄に向けたこれまでの対話の努力が全て無に帰したこと、それらを放棄させるためにはもはや圧力しか残されていないと強く非難、一般演説はそのことに多くが費やされた。

 安倍晋三「我々が営々続けてきた軍縮の努力を,北朝鮮は,一笑に付そうとしている。不拡散体制は,その,史上最も確信的な破壊者によって,深刻な,打撃を受けようとしている」・・・・・・・・

 安倍晋三「冷戦が終わって二十有余年,我々は,この間,どこの,どの独裁者に,ここまで放恣にさせたでしょう。北朝鮮にだけは,我々は,結果として,許してしまった。
 それは我々の,目の前の現実です。

 かつ,これをもたらしたのは,『対話』の不足では,断じてありません」・・・・・・・・

 だが、安倍晋三はかつて金正日から金正恩への独裁権力の父子継承に拉致解決のために一度は期待をかけた。

 2012年8月30日、フジテレビ「知りたがり」

 安倍晋三「ご両親が自身の手でめぐみさんを抱きしめるまで、私達の使命は終わらない。だが、10年経ってしまった。その使命を果たしていないというのは、申し訳ないと思う。

 (拉致解決対策として)金正恩氏にリーダーが代わりましたね。ですから、一つの可能性は生まれてきたと思います」

 伊藤利尋メインキャスター「体制が変わった。やはり圧力というのがキーワードになるでしょうか」

 安倍晋三「金正恩氏はですね、金正日と何が違うか。それは5人生存、8人死亡と、こういう判断ですね、こういう判断をしたのは金正日ですが、金正恩氏の判断ではないですね。

 あれは間違いです、ウソをついていましたと言っても、その判断をしたのは本人ではない。あるいは拉致作戦には金正恩氏は関わっていませんでした。

 しかしそうは言っても、お父さんがやっていたことを否定しなければいけない。普通であればですね、(日朝が)普通に対話していたって、これは(父親金正日がやってきたことを)否定しない。

 ですから、今の現状を守ることはできません。こうやって日本が要求している拉致の問題について答を出さなければ、あなたの政権、あなたの国は崩壊しますよ。

 そこで思い切って大きな決断をしようという方向に促していく必要がありますね。そのためにはやっぱり圧力しかないんですね」――

 要するに拉致は父親の金正日の犯罪であって、息子の金正恩の犯罪ではない。だが、父親の拉致犯罪を息子として「間違っていました」とは否定できない。そこで「拉致の問題について答を出さなければ、あなたの政権、あなたの国は崩壊しますよ」と圧力をかけて「大きな決断をしようという方向に促してい」けば、拉致は息子の金正恩の犯罪ではないから、「一つの可能性は生まれてきたと思います」と言って、独裁権力の父子継承に期待を掛けた。

 2014年5月26日から5月28日までスウェーデン・ストックホルムで開催の日朝政府間協議で北朝鮮は「特別調査委員会」を立ち上げて、拉致被害者を始めとするすべての日本人に関する包括的かつ全面的な調査を約束した。

 この約束に応じて安部政権は北朝鮮側の調査開始時点での制裁一部解除の方針を北朝鮮側に伝えた。

 その後調査がなかなか開始されないために約束の履行を求める目的で2014年7月1日に中国・北京で日朝政府間協議を開催する予定を組んだ。

 ところが北朝鮮は中国・北京で日朝政府間協議7月1日開催予定の2日前の6月29日に6月26日に引き続いて短距離弾道ミサイルを日本海に向けて発射した。政府は拉致問題とミサイル発射を別問題とし、制裁解除方針は維持、政府間協議をそのまま開催することにした。

 開催の結果、北朝鮮は調査を開始し、最初の調査結果の通報時期を「夏の終わりから秋の初めごろ」との見通しを示した。日本側は2014年7月4日、北朝鮮側から調査開始の報を受け、調査の実効性が確認できたとして、アメリカが懸念を示したものの日本独自に科してきた人的往来や送金などの経済制裁の一部を解除した。

 2014年7月3日。

 ローズ大統領副補佐官「オバマ大統領も日本政府が拉致問題の解決に重点を置いていることはよく理解しているが、北朝鮮の核問題に関して多国間で科している制裁を犠牲にすべきではない。われわれは結束して圧力をかけ続ける必要がある」

 北朝鮮は制裁解除決定の5日後の7月9日早朝に複数の弾道ミサイルを日本海に向けて発射、安倍政権は抗議したものの、一方で慎重に状況を見極めるという態度を取り、7月13日に安倍晋三は「先般の合意に従って北朝鮮に調査を進めていくよう求めていきたい。問題解決に向けた我々の取り組みにミサイル発射が影響を及ぼすことはない」(時事ドットコム)と言明、ミサイル発射、いわば大目に見た。

 北朝鮮は一度は約束した「夏の終わりから秋の初めごろ」とした最初の報告は夏の終わりになっても、秋の初めになってもなく、確認のための日朝政府間協議を開くが、結局のところ、梨の礫で終わることになった。

 10月22日の首相官邸でのぶら下がり記者会見。

 安倍晋三「この問題を解決しなければ北朝鮮の将来はないと、そう考えるようにしなければならないと、ずっと主張し、それを主導してきました。その上において対話を行っていく。まさにその上において今対話がスタートしたわけです。北朝鮮が『拉致問題は解決済み』と、こう言ってきた主張を変えさせ、その重い扉をやっと開けることができました」(産経ニュース

 金正日から金正恩への独裁権力の父子継承に一つの可能性が生まれたとして拉致解決の期待をかけ、「こうやって日本が要求している拉致の問題について答を出さなければ、あなたの政権、あなたの国は崩壊しますよ」、あるいは「解決しなければ北朝鮮の将来はないと、そう考えるように」と思わせて大きな決断を仕向けようとした自身の思惑で金正恩をコントロールしようとしたものの、北朝鮮が「拉致問題は解決済み」という態度を再び取るようになったために夢のまた夢と終わった恨みつらみが、外国を何回訪問した、外国首脳と何回会談を開いたと自らの外交手腕を誇っている手前、なおさらに今回の国連総会一般演説での対北朝鮮批判にも色濃く反映されることになったに違いない。

 安倍晋三「議長,同僚の皆様,国際社会は北朝鮮に対し,1994年からの十有余年,最初は『枠組合意』,次には『六者会合』によりながら,辛抱強く,対話の努力を続けたのであります。

 しかし我々が思い知ったのは,対話が続いた間,北朝鮮は,核,ミサイルの開発を,あきらめるつもりなど,まるで,持ち合わせていなかったということであります。

 対話とは,北朝鮮にとって,我々を欺き,時間を稼ぐため,むしろ最良の手段だった」・・・・・・・・。

 安倍晋三「対話による問題解決の試みは,一再ならず,無に帰した」・・・・・・・・

 安倍晋三「北朝鮮に,すべての核・弾道ミサイル計画を,完全な,検証可能な,かつ,不可逆的な方法で,放棄させなくてはなりません。

 そのため必要なのは,対話ではない。圧力なのです」・・・・・・・・

 圧力の最善・的確な方法として加盟国全てに安保理決議の完全な履行を求めた。

 安倍晋三「北朝鮮に,累次の決議を,完全に,履行させる。

 全ての加盟国による,一連の安保理決議の,厳格かつ全面的な履行を確保する。

 必要なのは,行動です。北朝鮮による挑発を止めることができるかどうかは,国際社会の連帯にかかっている」・・・・・・・・

 安倍晋三は力強く宣言している。「全ての加盟国による,一連の安保理決議の,厳格かつ全面的な履行を確保する」ことによって「北朝鮮に,すべての核・弾道ミサイル計画を,完全な,検証可能な,かつ,不可逆的な方法で,放棄させなくてはなりません」

 しかし安倍晋三はこの先のことには一言も触れていない。「安保理決議の,厳格かつ全面的な履行」を原因として「核・弾道ミサイル計画」の「放棄」という結果を認識するのみで、可能性としてあるかもしれない原因と結果の食い違いについての認識はどこを探しても見当たらない。

 前者の原因と結果に調和を持たせるとしたら、金正恩は圧力によって追いつめられたとしても、何もせずに大人しく放棄に応じることが絶対条件となる。

 後者の思惑とした原因と結果の食い違いとして誰もが考えるケースは独裁者が陥りやすい自己完璧性・理想自己に拘って大人しく放棄に応じることを考えずに軍事的反撃に出る、いわゆる決してないとは言えない暴走の突発であろう。

 拉致を解決しなければ北朝鮮の未来はない、金正恩の政権、北朝鮮という国は崩壊すると原因と結果を見込んだ自身の思惑で一度は金正恩をコントロールしようと願ったが、その思惑が物の見事に外れた失敗例を教訓とすると、自身が思惑としている圧力に対して大人しく「核・弾道ミサイル計画」を「放棄」するとしている原因と結果の調和にしても、必ずしも成功を約束してはいないことになる。

 と言うことなら、安倍晋三は北朝鮮に対していくら圧力を強化したとしても金正恩が大人しく「核・弾道ミサイル計画」を「放棄」することになる、いわば軍事的に暴発を誘発させることのないシミュレーションを国民に示さなければ、スピーチで言っていることの正当性を与えることも、責任を果たしたことにもならない。

 示すことができたとき、発言の責任を果たすことになるだけではなく、日本国民のみならず、他の国の国民も、安倍晋三の圧力一辺倒の対北朝鮮政策を安心して見守ることができるし、国民の生命と安全にも繋がることになる。

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安倍晋三任命自民幹事長二階俊博「加計・森友小さな問題、隠したりは考えていない」の発言自体、疑惑隠し

2017-09-21 11:24:46 | 政治

次期衆議院議員選挙 争点とすべき


      2つのこと



  森友・加計政治関与疑惑にまみれた

     指導者を続投させるべきか否か

  成長実感ゼロのアベノミクスを

     効果があると見せかける幻想に

      今後も付き合うべきか否か

 かつて地元利益誘導政治、利権誘導政治で名を馳せた自民党幹事長二階俊博の9月19日の記者会見での発言。

 安倍晋三が衆院解散の意向を固めたことに対して民進党など主要野党が「森友・加計の疑惑隠しだ」と批判、このことについての見解を問われた際の発言。

 「時事ドットコム」(/2017/09/19-19:43)   

 二階俊博「野党がおっしゃるのは自由だ。我々はそんな小さなというか、そういう問題を隠したりすることは考えていない」
 
 森友学園の国有地取得に関して、そして国家戦略特区を介した加計学園獣医学部新設認可に関して一国の首相の政治関与があったのではないかと疑惑を持たれ、国会で追及され、その両疑惑共に安倍晋三を筆頭に政府側答弁は明快な疑惑払拭とはいかなかった。

 今以ってこの疑惑追及が長引いているのはこのことが原因となっているからだろう。

 そしてこういった疑惑を持たれること自体、一国の首相としての人格、あるいは人間性に疑義が生じることになる。仕事さえできれば、人格、あるいは人間性が少しぐらいの不正に関与する余地があっても構わないと言うことにはならない。

 内閣総理大臣は国を守り、社会を守る。守るということは、その国・社会が自身にとってあるべき状態でなければ、あるべき状態に持っていき、そのような状態を高めて、維持していくことを言う。

 当然、その国・社会は自身が考える国家的・社会的公正を原理としていなければならない。独裁者でない限り、守るべき国家・社会が国家的・社会的公正をルールとしていなくてもいいという指導者は存在しないはずだ。

 政治的関与を用いて一部の国民に特別に利益を供与する政治の私物化は国家的・社会的公正に真っ向から反しすることになり、国家的・社会的公正の侵害への挑戦であって、国家的・社会的公正をルールとすべき自らの役目に対する冒涜に当たる。

 それを「小さな問題」だと言う神経は一国の首相の役目の重大さを考えるだけの頭がないからだろう。

 かくかように決して「小さな問題」とすことができないことを「小さな問題」だと問題外とすること自体が疑惑などどこにも存在しないと思わせる疑惑隠しに相当する。二階俊博は「そういう問題を隠したりすることは考えていない」と言っているが、単細胞だから、自分では気づかないままに疑惑隠しの意識を働かせながら、その意識とは逆のことを言った過ぎない。

 記事には記者会見発言と書いてあったから、自民党サイトにアクセスして、その発言を採録してみた。「役員連絡会後 二階俊博幹事長記者会見」自民党/2017年9月19日)  

 記者「テレビ東京です。野党は今回の解散について、森友・加計問題隠しだと批判をしておりますが、幹事長はいかがお考えでしょうか」

 二階俊博「そういうことを仰るのは野党の自由でございますから結構ですけれども、我々はそういう問題を隠したりということは考えておりません」

 上記「時事ドットコム」記事が伝えていた「我々はそんな小さなというか」の発言が抜けていて、“小さな問題”とすることによる疑惑隠し意識がこの発言には存在していない。

 もし「時事ドットコム」記事が実際には口にしていない疑惑隠しの意識が篭った発言を書き入れたとしたら、それが故意のことなら、問題発言として取り扱っていたのだから、この上ない悪意の仕業となる。

 故意ではなく、間違えてしたことであったとしても、意図しない悪意がそこに込められることになる。

 実際に言ったのかどうか、他の記事を見て確かめてみた。他の記事も同様に「我々はそんな小さなというか」と書き入れている。

 朝日デジタル記事を引用した「The Huffington Post」記事はより詳しくなのか、「野党がおっしゃるのは野党の自由。我々はそんな小さな、小さなというか、そういうものを、問題を隠したりなどは考えていない」と書いている。         

 要するに「小さな」と言ってから、小さな問題扱いとすることがマズイと気づいて、「小さなというか」と言い直したことになるが、単に表現を和らげただけという表現上の問題であって、二階俊博の森友・加計疑惑に対する問題意識は最初の「そんな小さな」と言う表現に集約されていることになるから、言い直したからと言って、一国の首相の政治関与疑惑が決して「小さな問題」ではないにも関わらず「小さな問題」だとする問題外扱いと、「小さな問題」だとすることを通した疑惑隠しの意識を働かせた発言であることに変わりはない。

 問題はこれだけで終わらせることはできない。記者会見だから、当然各新聞社や各テレビ局の記者、あるいはフリーランサーの記者等が詰めかけて、記事に揃って書き込んだ問題発言が自民党のサイトの記者会見の記事からは抜けている。

 常識的に見て、二階俊博が森友・加計疑惑を「小さな問題」扱いしたような口にしなかった発言をマスコミ側が悪意から故意に付け加えたのではなく、二階俊博側が問題発言と気づいて記者会見の記事からその言葉を外したと見るべきだろう。

 実際には口にした都合の悪い発言をマスコミが記事にしていながら、自分たちの記事からは外す。これは情報操作そのものを意味する。情報操作は都合の悪い情報を隠し、都合の良い情報を公にすることだから、片方に情報隠蔽を機能させている。

 二階俊博は一国の首相が国家的・社会的公正を守る役目を担っている関係から、その人格、あるいは人間性が重要であるにも関わらず、政治関与が疑われている疑惑問題を「小さな問題」だとその人格、あるいは人間性を問題外としただけではなく、問題外とすることで疑惑隠しまで働き、さらに都合の悪い発言を隠す情報操作・情報隠蔽まで立派に遣り遂げた。

 自民党総裁安倍晋三にして二階俊博の自民党幹事長任命ありの双方向の立派さによって成り立っている両者の関係であろう。

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