大連立は政策競い合いの競争原理を失い、馴れ合いが生じる

2011-03-31 09:14:49 | Weblog



 時限的大連立であっても、担うべき与党としての責任や主体性・自律性(自立性)の喪失につながる

 谷垣自民総裁が地震発生9日後の3月19日に菅首相から持ちかけられた入閣要請を、話が唐突過ぎる、「入閣は大連立と同じで、責任の所在が不明確になるだけだ」(YOMIURI ONLINE)とにべもなく断ったものの、3月26日の民放番組で、谷垣総裁は現時点では入閣を拒否しながら、「期間を区切ってとか、全くないわけではない」(asahi.comと期限限定つきの政権入りの可能性に言及したという大連立構想。

 昨3月30日になって森喜朗、安倍晋三両元首相がそれぞれ谷垣総裁と会談し、大連立のススメを説いたという。

 《大連立に前向き姿勢 自民・森、安倍両元首相》◇(MSN産経/2011.3.30 19:00)

 谷垣総裁に対する菅首相の入閣要請を「唐突だ」とする批判を枕詞として――

 森元首相「わが党には専門家がいる。谷垣総裁が出る形ではなく、しっかり話を聞いてそういう者を出す方がいい」

 安倍元首相「今は特別の事態であり(大連立が)全く考えられないわけではない。震災復興は首相が担うべき仕事で、谷垣氏がその役割を担う準備は当然できているだろう」

 震災対策で菅首相以下、民主党政権の閣僚ばかりがマスコミに露出、自民党の影が限りなく薄くなっている。自民党の姿を前に割り込ませてマスコミ映りを良くするためには大連立も一つの手ではないかといった魂胆が勘繰れないわけではない。

 森元首相は大連立の場合でも入閣は総裁以外の人物だとし、安倍元首相は谷垣総裁が菅首相に取って代わって首相の座に就くべきだと主張している。

 例え大連立が期限限定つきであっても、菅首相の指導力のなさとねじれ国会の力学を受けて政権担当の責務とすべき与党としての主体性を放棄することになるだろう。
 
 そこへきて安倍元首相の主張どおりに谷垣首相ということになったなら、民主党は与党としての意味を失う。

 主体性を放棄するということは自律性(自立性)を失うことを意味する。主体性と自律性(自立性)こそが責任感と指導力を生む原動力足り得る。

 政権は自らの党のマニフェストに掲げた各政策の優越性を国民に訴え、大多数の国民に受入れられることを要因として獲得し得る。

 当然、優越性あると宣言した各政策の実現に責任を持ち、指導力の最大限の発揮に務めなければならない。責任と指導力を欠いたなら、政策に持たせた優越性自体の輝きを自分たちから失わせることになり、それは国民に対する裏切りへと変換する。

 また、各党の各政策の優越性は他と比較し得る政策があって初めて成り立つ。そこに自ずと競争原理が働き、各党は政策立案に切磋琢磨することになる。

 政党間に政策立案の競争原理を働かせ、政策の優越性を競うこと自体が政党維持・拡大の、あるいは政党アピールの原動力、モチベーションとなるはずである。

 各党間に競争原理が働かなくなったとき、政策の優越性を競うこともなくなり、緊張感を失うこととなって大多数を占める議席に安住し、妥協と馴れ合いに侵され、政治は自ずと沈滞することになる。

 大連立によって巨大な大政党が生じたとき、このような危険性を抱えることになる。かつての自民党政権と同じ二の舞を演じることになるだろう。与党議員が与党閣僚に行う国会質疑にしても、これまで見てきたようにヨイショ質問、あるいはゴマをするような馴れ合いの質問に終始し、答弁に立つ首相以下の閣僚も自分達の成果を誇らしげに述べる田舎芝居、猿芝居もどきが当たり前の光景となるに違いない。

 尤も安倍元首相もこれらのことは指摘している。《安倍元首相「大連立なら期限付きで」》asahi.com/2011年3月30日19時20分)

 30日の谷垣自民総裁との会談後の大連立構想についての発言。

 安倍元首相「今は特別な事態なのでまったく考えられないことはない。そのときは期限を区切らなければならない。自民党と民主党が連立を組むと野党が存在しなくなる。国会で緊張感のある論議がなくなり、民主主義の機能を弱くしてしまう」――

 例え時限的連立であっても、既に述べたように与党としての主体性・責任の点で反対である。相談し合う形で十分なはずだ。

 菅政府は大震災対策、大震災復興に野党の意見を聞き、取り入れることはあっても、大連立に走らずに与党としての責任と主体性を維持すべきだろう。

 だが、指導力を持たない菅首相に与党としての責任と主体性を期待したくても期待できない。

 これまでも大連立に関してブログ記事を書いてきたから、参考までに――

 2007年11月6日――《『ニッポン情報解読』by手代木恕之 小沢辞意表明/二大政党か大連立か》


 2007年11月20日――《『ニッポン情報解読』by手代木恕之 小沢大連立構想を読む》


 2010年7月15日――《与謝野馨のどこか中途半端な民主党・自民党大連立志向 - 『ニッポン情報解読』by手代木恕之》



コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 菅内閣の無能/ヘリコプター... | トップ | 菅首相の弁解から入った日仏... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

Weblog」カテゴリの最新記事