すべての原発が停まることはすべての電気が停まることではない/枝野と仙谷の発言を検証

2012-04-17 11:19:38 | Weblog

 先ず仙谷恫喝政治家の発言。《【原発再稼働】仙谷氏「原発止めれば集団自殺」》

 4月16日(2012年)、名古屋市内講演。

 仙谷由人民主党政調会長代行「(原発を)止めた場合、経済と生活がどうなるかを考えておかなければ、日本がある意味で集団自殺をするようなことになってしまうのではないか。

 専門家への信頼が回復するまで稼働を止める、あるいは止めた原発を一切動かさないことをせよ、という話ならば、その結論に向けてどうするのか。

 日本は電力なしに生活できなくなっているのは明らかだ。一瞬でも切れると電信電話回線が切れる。電気によってデータ管理がされる高度化した社会で、安定した質の良い電力が供給されることが当たり前の社会を作ってしまった現実の中でどう考えるのか」

 関西電力管内の原発に依存しない場合の予想電力不足を次の記事が伝えている。《関電 猛暑で18%余不足に》NHK NEWS WEB/2012年4月13日 18時29分)

●一昨年並みの猛暑の場合――電力不足最大で18.4%(中電からの融通あり)
●電力需要が去年を除く過去5年間の平均的な状況の場合――電力不足16%。
●家庭での節電や企業の土日操業が行われて需要が去年の夏と同程度まで下がった場合――電力不
 足5.5%。

 さらに現在稼働中の北電泊原発3号機が5月5日に稼働停止して定期検査に入る予定であり、泊1号機・2号機の再稼働の目処不明の中で北電の全原発が停止した場合の電力需給を見てみる。

 《全原発停止下における今夏の道内電力需給予測》北海道議会民主党道民連合議員会/2012 年3 月23 日)によると、北海道知事は〈仮にすべての原発が停止した場合、今夏には32万KWの電力不足も考えられるとの見解を示している。〉ということだが、北海道議会民主党道民連合議員会はその事実を否定している。結論だけを引用すると、次のようになる。

 2010 年並みの猛暑を前提とした場合

 政府公表資料によれば、猛暑を予想した場合、最大電力需要は、21 万KW 増えることとなる。この場合でも予備力は、「5万KW + X 万KW」となり、電力不足は生じない。

 課題

 二つの前提が必要となる。

 一つは、3%の道民節電の実現である。
 二つ目は、北電による火力水力発電設備の補修計画公表である。(以上)
 
 「X 万KW」とは、火力水力発電設備の補修調整による電力供給増加量を指し、「検査日程が非公開のため、不明」との記述となっているが、いずれにしても設備の補修調整によって5万KWを上回る電力供給余力が見込まれるということなのだろう。

 〈環境エネルギー政策研究所(ISEP)は、持続可能なエネルギー政策の実現を目的とする、政府や産業界から独立した第三者機関です。地球温暖化対策やエネルギー問題に取り組む環境活動家や専門家によって設立されました。

 自然エネルギーや省エネルギーの推進のための国政への政策提言、地方自治体へのアドバイス、そして国際会議やシンポジウムの主催など、幅広い分野で活動を行っています。また、欧米、アジアの各国とのネットワーキングを活用した、海外情報の紹介、人的交流など、日本の窓口としての役割も果たしています。

 市民ファンドを活用した市民風車、太陽光発電事業なども発案し、関係事業体であるエナジーグリーン株式会社等によって実現しています。〉とプロフィールを語っている「環境エネルギー政策研究所」もPDF記事で「2012年の電力は足りる」と言っている。

 《原発を再稼動しなくても今冬と来夏の電力は足りる》環境エネルギー政策研究所/2011年10月25日)
 
 〈2011年9月末現在、国内54基の原子炉4,896万kWのうち、様々な理由で約8割にあたる約3,350万kWが停止している。3.11以降、定期点検に入った全ての原子力発電所について安全性の確認が困難なことから再稼動が出来ない状況が続いており、このままいけば図1の様にほとんど全ての原子力発電所が来年の春には停止することになる。北海道電力の泊3号は、定期点検後の調整運転が長期間に渡った末、8月に商業運転に移行したが、これは本来、安全性の確認が困難なことから停止をすべきであった。〉と、泊3号機は2011年8月時点の停止でも問題はなかったとしている。

 このことは、北海道議会民主党道民連合議員会の北電管内の全原発が停止しても電力不足は生じないとする結論の傍証足り得る。

 以上、関西電力管内での、家庭での節電や企業の土日操業が行われて需要が去年の夏と同程度まで下がった場合の電力不足5.5%の予測と、北電管内前原発停止の場合の「5万KW + X 万KW」と電力供給余力を併せて取り上げると、電力不足や計画停電が経済を縮小させ、そのことによる生活への影響が生じるとしても、仙谷が言っているように「日本がある意味で集団自殺をするようなことになってしまうのではないか」は大袈裟に過ぎ、何が何でも再稼働に持って行きたいためにする恫喝と言ってもいい表現としか言いようがない。

 また、「専門家への信頼が回復するまで稼働を止める、あるいは止めた原発を一切動かさないことをせよ、という話ならば、その結論に向けてどうするのか」と言っているが、その「結論」を導き出すのは政府の仕事であろう。
 
 《経産相 “原発依存の脱却を”》”(NHK NEWS WEB/2012年4月13日 15時2分)

 4月13日の衆議院経済産業委員会。

 枝野詭弁家「原発依存からの脱却を最大限進めていくことは政府としての明確な方針だ。私自身も、できるだけ早く原発依存から脱却して原発への依存をゼロにしたい」

 原発依存脱却が明確な政府方針であるなら、家庭節電と企業土日操業を組み合わせた、日本経済や国民生活への最小限の悪影響抑制可能な原発依存ゼロに向けたしっかりとした工程表を作成して公表、その工程表に則って安全性確認の上、原発の稼働を原発依存ゼロに向けて行なっていくべきだが、工程表も示さず、稼働しなければ、「集団自殺」だといったような恫喝を行う。最低の政治家ではないか。

 枝野経産相も親分仙谷に劣らない程度の低い政治家像をキャラクターとしている。《経産相 原発運転恐らく一瞬ゼロに》NHK NEWS WEB/2012年4月15日 18時12分)

 4月15日の徳島市での講演。

 枝野詭弁家「経済産業省で原発がないと何が起こるのか検証している。検証すれば、少なくともこの夏原発がなければ、相当いろいろなところに無理がくることはご理解いただける。

 (泊原発5月5日定期検査稼働停止によって)全国で運転する原発が、恐らく一瞬、来月6日からゼロになる」

 前段の発言を記事は関電大飯原発3・4号機再稼働ゴーサインへの政府判断に理解を求めたものだとしているが、同時に安全性を基準とした再稼働判断ではなく、あくまでも電力供給を基準とした判断だったと暴露してもいる。

 であるなら、何度も開催した関係閣僚会議にしても、そこで行われた安全性確認の審査にしても、再稼働を正当化するための形式に過ぎなかったことになる。

 いわば再稼働ありきで安全性を審査していた。あるいは安全性を再稼働に合わせて論じていた。

 「(泊原発5月5日定期検査稼働停止によって)全国で運転する原発が、恐らく一瞬、来月6日からゼロになる」という発言にしても、安全性を基準とするのではなく、電力供給を基準とした再稼働への理解要請発言と言える。

 しかも大飯原発早期再稼働が見込めない困難な状況にあることを示唆して、原発稼働ゼロを電力供給ゼロとまでいかなくても、相当量の電力供給不足が生じると錯覚させようとする一種の恫喝を用いて再稼働を獲得しようとしている。

 「大変なことになるんですよ」とばかりに思わせて、地元の理解、国民の理解に替えようとしたというわけである。

 安全性が基準ではなく、電力供給を基準とした再稼働判断なら、全原発停止によって日本全体でどのくらい電力不足が生じるのか、生じないのか、具体的な数値を用いて再稼働への理解を求めるのが当たり前の姿だが、そうした場合、露骨なまでに再稼働ありきの姿勢、安全性よりも電力供給を基準とした判断であることが露見してしまうために、原発ゼロを以てして婉曲的に電力供給不足を訴え、再稼働への理解としようとしたのだろう。

 野田首相の関係閣僚会議開催時の恒例化した冒頭発言。

 野田首相「安全性についての確認を行うとともに、需給計画やコストの問題を含め、(再稼働の)必要性の検討を行いたい」

 野田首相の「安全性」に触れた言葉が口先だけの形式なのは仙谷や枝野の発言から安全性への意識が影を潜めていることによって明白である。

 原発の安全性よりも電力不足解消を基準にして原発再稼働を目指しているからこそ、電力不足を恫喝の種に用いて、大飯原発再稼働への国民の理解を求めることができる。

コメント (1)
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