野田政府のどうも分かりにくい除染効果考慮外の将来的な住民帰還困難地域予測

2012-04-23 10:42:37 | Weblog

 政府が4月22日(2012年)、福島県双葉郡との協議会で福島県内等の今後10年間の空間放射線量(=大気中の放射線量)の残留予測値推移とその推移との関係から判断した住民帰還可能性を公表したという。

 但しこの空間放射線量残留予測値は除染効果を考慮外に置いたものだという。

 いくつかの記事を見てみる。

 《“10年後も帰還困難な地域残る”》NHK NEWS WEB/2012年4月22日 21時29分)

 枝野経産相が双葉町や大熊町などでは10年後も空間の放射線量が年間20ミリシーベルトを超え、住民が帰還することは困難な地域が残るという予測を示したという。

 この予測は昨年11月に行った航空機によるモニタリングの結果を基に除染の効果は考慮せず、空間の放射線量が5年後や10年後に年間どの程度になるのかを計算したものだそうだ。

 いわば自然減衰に基づいた放射線量の残留予測値推移ということになる。

●5年後の2017年3月時点――福島第1原発所在の双葉町と大熊町では年間100ミリシーベルト
               を超える地域が一部残る。
              ――双葉町と大熊町、浪江町等で年間50ミリシーベルトを超える地域
               が一部残る。
●10年後の2022年3月時点――双葉町と大熊町、浪江町等で年間50ミリシーベルトを超えてい
                る地域は減るものの、一部残る。
               ――双葉町、大熊町、浪江町と富岡町の一部地域で年間20ミリシー
                 ベルトを超え、住民帰還困難地域が残る。

 協議会の終了後の記者会見。

 細野原発事故担当相「住民の皆さんに、すべて帰還ありきではないという選択をしてもらう準備もしなければならない。ただ、帰還したいという住民もいるので、除染のモデル事業の結果をもとに、除染の計画について地元と相談したい」

 発言の前段は、帰還できない住民も出てくるとの趣旨となる。後段は、帰還できない住民であっても、帰還を希望する住民に対しては除染を行なって、帰還希望に添いたいという趣旨になるはずである。

 でなければ、「除染の計画について地元と相談」する意味を失う。

 発言の全体を通すと、除染次第では帰還困難地域であっても、帰還可能になる地域も出てくるということの情報伝達となるはずである。

 ではなぜ最初から除染効果を考慮した放射線量の残留予測値推移としなかったのだろうか。1年後、10年後がそれぞれ1年、あるいは半年であっても、前倒し可能となって、希望を与える発表となったはずである。

 だが、放射線量を人工的に減量せしめる除染効果を考慮外に置いて、自然減衰という名の自然任せとし、「すべて帰還ありきではないという選択をしてもらう準備もしなければならない」と希望を失わせる発表を行なっている。

 しかも発言の後段で除染次第の帰還可能性を言う矛盾まで犯している。

 政府の役目が国民に希望を失わせることだと言うなら、理解できる。

 それとも除染モデル事業を実施中だが、除染効果が見込み可能な最適効果的な除染方法を現段階では未だ確立できていないということなのだろうか。

 だとしたら、最適効果的な除染方法を確立してから、自然減衰と併せた残留放射線量の地域ごと・年数ごとの予測推移を行った上で帰還可能性を公表すべきで、そうすることによって住民に少しでも希望を与えることが可能となるはずである。

 それともいくら地表や住宅の屋根といった地上物体の表面を除染しても大気中の空間放射線が残留している以上、雨風で地表や地上物体の表面に降り注ぐために空間放射線量の自然減衰を待たなければ放射線そのものが残留することになって帰還困難だと言うなら、地元と除染についてどう話し合ってもムダということになり、細野発言の後段はまるきりデタラメを言っていることになる。

 地上に降り注いでくる空間放射線と闘って、除染の上に除染を重ねて、帰還可能年を少しでも前倒ししていくしか道は残されていないのではないだろうか。

 どうも分かりにくい政府の将来予測となっているが、次の記事を見てみる。

 《【放射能漏れ】福島の空間放射線量予測 10年後も「帰還困難」 3町に50ミリシーベルト以上地域》MSN産経/2012.4.23 00:45)

 除染効果を前提としていないのは当然、この記事も同じだが、政府の予測について次のように解説している。〈昨年11月に実施された航空機モニタリングの結果をもとに予測。1年、2年、5年、10年、20年後の福島の放射性物質の減衰と、風や雨などの自然現象の影響を考慮した理論値で、住民帰還のめどや復興計画をつくるための判断材料となる。〉――

 この記事では20年後も含んでいる。

 その上でどの時点、どの地点でどの程度の残留放射性物質となっているか、次のように伝えている。〈年間の空間放射線量は、その場所で1日8時間、屋外で過ごした場合、1年間に浴びる積算の放射線量。3月末時点では、積算が150ミリシーベルト以上の地域が原発周辺や北西部に点在。50ミリシーベルト以上や20ミリシーベルト以上の地域も北西部を中心に帯状に広がっているという。〉・・・・

 残留空間放射線量との関係からの帰還可能性について。

 平野復興相「これだけの期間は最大限帰れないということを明示した」

 除染効果を排除してこのように失望を与えるようなことを言うのは、除染効果に期待を抱いていないことの意思表示でなければならないはずだ。

 逆に除染効果を予定表に入れていたなら、前倒しの可能性が生じるから、「これだけの期間は最大限帰れないということを明示した」などと断定的なことは言えなくなる。

 記事がこのようなニュアンスの発言にしてしまったのかどうか判断しようがないが、記事自体は除染効果に期待を寄せる解説も加えている。

 〈現在、除染の効果を調べるモデル事業を実施しており、各市町村が策定した除染計画も加味した上で、放射線量の減衰期間は短縮する可能性がある。〉・・・・・

 要するに最適効果的な除染方法は現段階では未確立だが、各市町村の除染計画と併せると、自然減衰期間が短縮可能となるとの解説である。

 だとすると、やはり平野復興相の、住民に失望を与えるだけの「これだけの期間は最大限帰れない」とする「明示」は明らかに時期尚早となる。

 同じ「MSN産経」記事でも、次の記事は悲観的な情報も伝えている。《【放射能漏れ】「希望抱かせる」「あくまで理論上」 予測地図 帰還遅れ示唆》MSN産経/2012.4.23 00:47)

 新設定の「帰還困難区域」に関して政府はこれまで最低5年は帰還困難としてきたが、〈帰還の前提となる除染の効果は未知数な中、今回の予測は帰還がさらに遅れる可能性を示唆しており、現在政府が検討している“帰還不可能区域”の設定が現実味を帯びたといえそうだ。〉と。

 最低5年は帰還困難としてきたが、それが2倍の10年後の時点でも一部地域で年間20ミリシーベルトを超える空間放射線量が残留し、住民帰還困難地域が残るとする悲観性の解説である。

 この解説からすると、除染効果を除外した予測推移であると言うよりも、除染効果を殆どゼロと看做した、そうとしか受け取ることができない予測に見えてくる。10年後の先まで見通しながら、除染効果を計算に入れずに自然減衰のみに根拠を置くことができるのはこのためではないだろうか。

 但し続いて逆のことを言っている。〈ただ、放射線量が時間の経過で減っていくことが初めて目に見えるように示されたことは、先の見えない避難生活を送ってきた住民にとって希望につながる。〉云々。

 すべての避難住民が該当するわけでないが、果して5年が10年になって、希望につながると言えるのだろうか。住民全体に亘って――いわば地域全体に亘って一人の住民も残さずに希望につながることによってのみ、力強さに満ちた復興への意欲を地域全体に約束するはずだ。

 帰還から残された住人が存在する限り、いくら止むを得ないことであっても、残した住民に対する自分たちだけがの済まなさ、心残りが復興に向けて最大限に発揮しなければならない全幅のモチベーションを殺がない保証はない。

 「除染をしなかった場合は20年後も原発周辺の一部地域に年間被曝線量が50ミリシーベルト超の地域が残る」とした今後20年間の空間放射線量の予測地図と帰還年限に関する地元首長の評価。

 井戸川双葉町町長「(放射線量の減少が示されたことは)住民に希望を抱かせる。長いスパンの予測を公表するのは難しかったと思う。国はよくやった。

 ただ、自然減衰よりももっと早く下がることを願う」

 記事は最後の発言を早期の除染実施を求めたものだとしている。だが、10年後の先まで除染効果を計算に入れていない予測である。除染効果が期待可能であったなら、自然減衰のみに基づいた予測はたちまち的確性を失うことになるが、どのような理由があってのことか、除染効果を考慮外として予測を立てている。

 遠藤富岡町長「予測地図が示されたといっても理論上のことで、本当にこの通りになるのかという疑問もある」

 記事。〈安易な期待感に警鐘を鳴らした。〉――

 やはり先ずは最適効果的な除染方法の確立とその効果を見極めてから、自然減衰を併せた今後10年間の空間放射線量の残留予測値推移とその推移との関係から判断した住民帰還可能性を公表すべきが政府の役目ではないだろうか。

 分かりにくいばかりの今回の政府公表に見えたが、私一人だけのことで、誰も問題にしないのだろうか。

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