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吉川さおりの他力本願な、タダ飯くらいの対世耕弘成2025年4月参院証人喚問つまみ食い程度の追及

2025-05-26 07:43:00 | 政治
 立憲民主党の吉川さおりが2025年4月21日の参議院予算委員会で世耕弘成参考人招致追及の2番手に立った。と言っても、世耕本人に対する追及を直ちに開始するのではなく、それとは無関係に政府参考人として呼んだ小林史武参議院事務総長に当日の議題や政治倫理審査会の目的、趣旨、その他審査会を行うに当たっての費やした努力、参院政倫審証人喚問出席議員数等々を9分余も掛けて質問し、その答弁を得てから、世耕本人に本格的な追及を開始している。

 これだけの時間や手間が掛かって正常な政治活動への負担やムダが生じていると知らしめたかったのだろうが、これらは前以って参議院側に問い合わせた資料としてパネルで示し、説明すれば、時間の節約となって、その分を追及に回すことができると思うのだが、当方の考えとしたらムダでしかないことに相当程度のウエイトを置いた吉川さおりの質疑となっている。

 では、その遣り取りの箇所を最初に取り上げてみる。

 吉川さおり「立憲民主党の吉川さおりでございます。本日はどうぞよろしくお願い致します。最初に本日の議題について参議院に伺います。

 小林史武参議院事務総長「予算の執行状況に関する調査のうち、政治資金問題等に関する件でございます」

 吉川さおり「本日の予算委員会には事実関係の確認のため、参議院事務総長に出席頂いておりますが、基本的に答弁は世耕参考人のみでございます。本日の議題は今答弁ありましたとおり、政治資金問題等に関する件であり、いわゆる自民党の一部派閥における政治資金規制法の趣旨に反する組織的・集団的・継続的な還付金の不記載等について質疑を行うために開会されています。

 よって、各会派の質疑者を見ても、政治倫理審査会に委員を有する会派からは、私を含めて全員が政治倫理審査会の幹事及び委員となっています。今回の質疑に際し、改めて政治倫理審査会における審査の趣旨や還付金の不記載問題に関して、昨年来開催された本院政倫審の経過を振り返っておきたいと思います。そこで、政治倫理審査会の目的規定である規定の第1条について参議院に伺います」

 小林史武参議院事務総長「政治倫理審査会規定第1条は政治倫理審査会は政治倫理の確立のため、審査会の委員の申し立て、または議員の申し出に基づき、委員が行為規範、その他政治倫理の確立に資するものとして、議長が定める法令の規定に著しく違反し、政治的・道義的に責任があると認められるかどうかについて、これを審査するものとすると定められております」

 吉川さおり「即ち政治倫理審査会は政治的道義的に責任があると認められるかどうかを審査する場でございます。立法府、国会で行うことは刑事責任ではございません。政治的・道義的責任を問うことです。

 本院政治倫理審査会は自民党一部派閥による政治資金収支報告書の不記載等の事案に際し、昨年3月8日、全会一致で審査を行うことを決定しました。審査を伴う政倫審の開会は本院の歴史の中で残念なことですが、初めてのことでした。

 では、最初の弁明者が出席した開会日、直近の弁明者が出席をした政倫審の開会日についてお伺いします」

 小林史武参議院事務総長「ご指摘の最初の弁明が行われた審査会は令和6年3月14日、そして直近の弁明が行われた審査会は令和7年4月18日でございます」

 吉川さおり「ここで世耕参考人にお伺い致します。世耕参考人が出席をされた日付はいつでしょうか」

 世耕弘成「今、小林事務総長がおっしゃった一番最初の会合、3月14日でしょうか?あの、その日一番最初に弁明に立たせて頂いたと認識しております」

 吉川さおり「今、世耕参考人にご自身も仰ってくださいましたが、奇しくも世耕参考人、今回の一連の事案にかかる最初の出席者でございました。では、世耕参考人を含めて、その後本院政倫審に出席した議員の人数について参議院事務総長にお伺いいたします」

 小林史武参議院事務総長「現在、政治倫理審査会で審査中の事案に関し、審査会に出席し、弁明を行った議員は30名でございます」

 吉川さおり「30人の議員が本院政治倫理審査会に出席をして、弁明を行われたということでございますが、では、その30人の弁明質疑を行うために開かれた開会の回数について教えください」

 小林史武参議院事務総長「ご指摘の開会回数は13回でございます」

 吉川さおり「それではま世耕参考人は最初の出席者でございましたが、令和6年3月14日の次の出席及び説明で来られた日はいつか教えてください」

 小林史武参議院事務総長「令和6年12月18日でございます」

 吉川さおり「初会の3月14日から12月18日まで実に約9ヶ月間の空白期間がございました。総選挙後の昨年11月下旬出席する意向が一斉に示されたことを受け、11月29日の日に非公開や公開といった傍聴に関する意向確認の方法など、政倫審の幹事懇談会で協議を致しましたが、その後意向は二転三転し、確定したのは12月20日でした。そこで、11月29日から12月20日までの間に開会された本政治倫理審査会の幹事懇談会の日付と回数についてお伺いします」

 小林史武参議院事務総長「ご指摘の幹事懇談会は令和6年11月29日、12月4日、12月12日、12月16日及び12月20日の5回でございます」

 吉川さおり「実はこれ11月28日に27名の議員が一斉に出席の意向を示されました。よって翌11月29日幹事懇談会を開会して非公開を希望するか、公開を希望するか意向確認文書を配布し、その結果を12月4日の幹事懇談会で共有しました。そのときは公開4名、非公会23名でこのとき公開の意向を示された方に関しては、先行して12月18日に弁明・質疑を行いました。

 しかし、それ以外の23名の方については一人を除き意向変更を繰り返されたため、その度に幹事懇談会を開く必要がありました。しかも22名もの議員が一斉に非公開から(傍聴は)議員のみ、議員のみから公開へと変わっていきましたので、回数を重ねたということでございます。

 ま、結果として世耕参考人を含め、参議院にお出まして頂いたわけですが、それでは世耕参考人が出席をされた後の当院審査会の弁明及び質疑についてはご覧になられているかどうか、世耕参考人、ご覧になったか、なってないかだけて結構です。お願いします」

 世耕弘成「全部完璧に見てるとは限りませんが、あの、時間の許す限りインライン中継等でですね、見させて頂いてますし、その後の報道については全てつぶさに読ませて頂いてるところであります」

 吉川さおり「私も審査の中でこんなことを先輩議員にはお尋ねしたくなかったんですけれども、ご覧になりましたかと2人程お伺いをして、確かにあまりにも人数が多いので分量で相当なものでということで、全てご覧になっていたかどうかと言われれば必ずしもそうではありません。

 しかしながら、私は職責上政治倫理審査会の幹事でございますので、全ての議員の苦しい思い、それから色んなご発言、受けたまってきました。ですので、私は全て拝聴してまいりました。そこで重ねてお伺いいたします。

政治倫理審査会の会議録については閲覧をされましたでしょう。 されたか、されていないかのみをお答えください」

 世耕弘成「閲覧はしておりません」

 吉川さおり「ここでまた参議院事務総長に伺います。本日はこれは予算委員会でございます。予算委員会は政治倫理審査会とは全く異なります。これは何が異なるかというと会議録と公開の扱いについてでございます。そこで政治倫理審査会にかかる会議録の規定の概要についてお尋ねします」

 小林史武参議院事務総長「政治倫理審査会規定第25条第1項において、審査会の会議録はこれを閲覧することができない。ただし、議員その他のものの傍聴を許すものとされた審査会の会議録を除くについては、この限りではないと定められた同上第4項において、会議録の一覧は会長が指定する場所に於いて行わなければならないと定められております」

 吉川さおり「今、参議院事務総長から答弁がございましたとおり、これまで行われてきた政治倫理審査会の弁明、質疑と本日の予算委員会では会議録の公開の点で大きく異なります。会議録を公表する規定とはなっていない政治倫理審査会では行いようのない誰もが閲覧できる状態で記録を残すということに拘って、少しでも構造的な問題や問題の素材が明らかになるような質疑にしたいと思います。

 そこで世耕参考人に伺ってまいります。還付金の仕組みについては知っていたか、ご存知だったか、そうでなかったかのみお伺い致します」

 吉川さおりは「自民党一部派閥による政治資金収支報告書の不記載等」に基づいた政倫審開催の依って来たる様々な重大性を政府参考人の説明を借りて突きつけた上で、今回の参院予算委参考人招致の質疑は記録に残り、誰もが閲覧できるから、記録と閲覧に耐えうる質疑、具体的には「構造的な問題や問題の素材」に、いわば少しでも迫る追及をしたいと約束した。

 この約束は、当然、その履行を自らの責任行為としたことになる。約束の責任を果たさなかった場合はただ単に大見得を切っただけのことで終わる。

 ところが、最初から期待外れな追及でスタートさせている。「そこで世耕参考人に伺ってまいります。還付金の仕組みについては知っていたか、ご存知だったか、そうでなかったかのみお伺い致します」を最初の追及としているが、「ご存知だった」などと答えるはずもない分かりきったことを聞いているのだから、閲覧に耐えうるの大見得は単なる見せかけの腰砕けであることを早くも露呈させている。時間をムダに費やしている点からしたら、当然なことなのかもしれない。

 世耕弘成にしても前回参院政倫審で何回か繰り返し、他の3人の幹部、西村康稔、塩谷立、下村博文も何回か繰り返してきたほぼ同じ答弁を手もなくまた繰り返させているに過ぎない。

 世耕弘成「残念ながらですね、自分の事務所のチェック等も甘かった点もあってですね、還付というものが行われていて、それが収支報告に載らない形で行われた、派閥の収支報告にも、各議員の資金管理団体の収支報告にも載せない形で行われてるというのは本当にこれは恥ずかしながらと申し上げますが、この事態が発覚する前はですね、私自身、承知をしておりませんでした。このことは本当に申し訳ない。幹部の1人として責任を感じてるところであります」

 この答弁から2024年3月14日参院政倫審での世耕の答弁との間に既視感を持たないとしたら、タダ飯食らいのなまくらそのものとなる。

 この証拠となるのが吉川さおりの引き続いての追及である。

 吉川さおり「それでは還付金の存在はご存知でしたでしょうか?ご存知だったか、ご存知でないかお答え頂けますと幸いです」

 世耕弘成「ま、あのたくさん売った人には還付の仕組みはあるらしいというのはですね、これは随分まだ若手議員の頃にですね、聞いたことがあると、そういうレベルでありました。で、私自身はですね、兎も角ノルマ通りに売れるかどうかもヒヤヒヤという状況でした。特に若手の頃は本当に大変でありましたし、私は一つこれ政倫審でも申し上げましたが、拘りとして和歌山の人には売りたくない。地元の選挙区の人には売りたくない。なぜならば東京で開く派閥のパーティーを和歌山の人に押し付けるというのはですね、これは私は良くないと思っていたので、その分まだまだ経済会と人脈の少ない若手議員としては、ともかくノルマを今年も行けたようだという形で事務所の方から報告を受けて、ま良かったねっていうのが最初の頃のことでありました」

 吉川さおり「今は和歌山の方には売りならないということは、これ去年3月14日の政倫審の場で世耕参考人ご自身も発言されておられましたが、この還付金の存在については、実は去年の政倫審の場でも、『私は随分前から、10年以上前だと思いますけれども認識をしておりました。還付金という仕組みがあること、それは知っていました』と繰り返し答弁をされていますが、一方で、『深く考えることがなかった、深く考えることがありませんでした。還付金制度というものを殆ど意識しないで』ということはどこかに意識はあったということではないかと思います。

 で、そこで先程のやり取りありましたが、令和4年4月には安倍元総理のご指示ということでしょうが、ノルマ通りの販売にしようと元総理が提案された際は、先程の遣り取りの中でもご発言ありましたが、清和会のメンバー全員に連絡をされたということでよろしいございますでしょうか」

 2024年3月14日参院政倫審での世耕の答弁を繰り返させるだけの無限ループを自ら招き寄せている。何のために「会議録を公表する規定とはなっていない政治倫理審査会では行いようのない誰もが閲覧できる状態で記録を残すということに拘って、少しでも構造的な問題や問題の素材が明らかになるような質疑にしたいと思います」と見栄を切ったのか、その面目をその場限りに捨て去ってしまったようだ。

 特に気づかなければならない問題点は安倍晋三の現金還付中止及びノルマ通りの販売指示行為と幹部たちの清和会のメンバー全員に対する連絡行為の間にどのような動静も意思表示も現れていないことである。

 前以っての説明もなしに「現金還付は中止し、ノルマ通りの販売にする」といきなり指示したのか、指示を受けて直ちに電話連絡を行うことになったのか、もしそうだとしたら、派閥という組織運営上必然とするそれなりの意見交換を経ることもなく事が決定したことになり、常識的にはあり得ない展開となる。

 常識的にあり得る展開とするためには当然のこととしてそこに原因や理由を問う"なぜ"や"どうして"等々の問いかけを介在させていて然るべきだが、そういったことを一切省き、考慮外に置いて、吉川さおりは無邪気に「清和会のメンバー全員に連絡をされたということでよろしいございますでしょうか」と尋ねている。

 もし考慮内に置いていたなら、西村康稔が2024年3月1日の衆院政倫審で証言した、安倍晋三が2022年4月の会合で「現金は不透明で疑念を生じかねないから、こうした現金の還付はやめる」と指示したとしている発言に対して安倍派4人の幹部は、「なぜ現金還付は不透明で疑念を生じかねないのだろう」と何らかの疑念が生じなかったのか、その疑念に対して「なぜと問い返すようなことはしなかったのか」、あるいは中止指示を受けて、その指示を派閥所属議員に直ちに電話連絡したとしているが、「現金還付中止の理由を安倍晋三が指示した同じ文言で、『現金は不透明で疑念を生じかねないから』と伝えたのか。あるいは他の理由を用いたのか」、さらには、「電話連絡ではなく、なぜ手間のかからないメールの一斉送信で処理しなかったのか」等々の"なぜ"、"どうして"の追及を通して2022年4月会合での遣り取りの実態を炙り出すよう努め、真相解明の手掛りとすべきだが、できたことは2024年3月14日の参院政倫審での答弁と同じ内容を引き出す追及のみだった。

 以後の両者の遣り取りを見てみる。

 世耕弘成「これは安倍会長からのご指示でありますから、伝達漏れがあってはいけないということで、私は常にそういう政治家同士の連絡っていうのは、あのこれ事務所を介さないで極力ご本人の携帯電話に電話をさせていただいて、直接伝えるということを当時モットーとしておりましたので、私は4月7日の安倍会長からの指示を受けて、速やかにメンバー全員に電話をしたというふうに記憶をしております」

 吉川さおり「今答弁なさった通り、昨年3月14日の遣り取りの際もこれはノルマ通りでいいんじゃないかということで、もうそのときは直ちに参議院議員に全員に連絡をさせていただきましたと仰っておられますので、おそらくそうなんだと思います。

 ところが私、さっきも申し上げましたとおり、世耕参考人を筆頭に29名、全員分本当に苦しい時間でしたし、悲しい時間でもありましたけれども、それぞれの弁明・質疑、拝聴をする立場にございました。

 令和4年の4月のノルマどおりの連絡に関する各議員について、これ遣り取りを行われています。この各議員の記憶については今から申し上げるとおりでございました。世耕議員から連絡があったとした議員9名、これ時期不明を含むが、直接世耕議員から連絡があった。誰からもなかった10名で、政治倫理審査会で令和4年のノルマどおりという連絡があったかなかったかというやりとりがなかったのが9名、その他、ある意味メディアから聞いたとおっしゃった方が1人いらして計29名です。審査会で遣りとりがなかった10名を考慮しても誰からもなかったとする議員が9名いらしたんです。

 ですので、世耕参考人としては全員に連絡をしたけれども、受けた側はもしかしたら記憶がどっか行ったのかもしれませんけれど、そこで先ずは齟齬が生じているということがございます。

 そこでもうこの遣り取りをしても仕方ありませんので、世耕参考人にご自身のことについてお伺いしたいと思います。世耕参考人自身に課せられていたノルマの金額ということについてはお分かりでしたら。

 ここがね、自民党の調査対象を平成30年以降5年ですけれども、不記載とか還付金の額を議論するときにこれまた必要な情報だと思うんですけれども、課せられていたノルマの金額のみお答えください」

 世耕弘成の証言「私は4月7日の安倍会長からの指示を受けて、速やかにメンバー全員に電話をしたというふうに記憶をしております」に対して安倍派参議院議員に対して開催された各参院政倫審での各証言から吉川さおりが纏めた連絡の有無は――

世耕議員から連絡があったとした議員9名
誰からもなかった10名
ノルマどおりという連絡があったかなかったかという遣り取りがなかったのが9名
メディアから聞いたが1人――計29名

 計29名中、世耕議員から連絡があったが約3分に1の9名に過ぎないと言うこと、連絡の有無に関わる遣り取りがなかったの9名を合わせると、半分強が連絡の交渉がなかったことになるのだが、世耕自身が「速やかにメンバー全員に電話をしたというふうに記憶をしております」と証言していることとの矛盾を突くことはせず、「もうこの遣り取りをしても仕方ありませんので」と早々に相手を無罪放免してしまう、この手ぬるさは、「会議録を公表する規定とはなっていない政治倫理審査会では行いようのない誰もが閲覧できる状態で記録を残すということに拘って、少しでも構造的な問題や問題の素材が明らかになるような質疑にしたいと思います」と自ら宣言した約束を自ら裏切る態度となるが、最悪なのは裏切っていることを自覚できないままに手ぬるい追及を続けている点である。

 要するに色々と調べてはいるが、調査で浮かび上がった事実と答弁と間の矛盾にそれなりの嗅覚を働かせて食いつくべきところを食いつくことができずに遣り過してしまっている手ぬるさはタダ飯食らいそのものとなる。

 但し議員によって連絡があった、なかったの矛盾は口裏合わせが効く相手かどうかの可能性によって生じたと疑うこともできる。安倍派参議院の親睦団体約40人の「清風会」会長は世耕弘成。安倍晋三に対しては各議員共に忠実度100%であっても、世耕弘成に対しては忠実度にバラツキがあり、世耕弘成の方もそのことを感じ取っていて、自身の依頼に対しては口が硬いと信用できる相手にだけ、「2022年4月7日の日に現金還付中止の電話があったことにしてくれ」と頼んだ結果、上記のような連絡があった、なかったのバラツキが出たと疑うこともできる。

 あるいは還付現金の不記載問題からの政治不信と参考人招致という方法で国会での真相究明の追及がこのようの大事となるとは予想できずに口裏合わせを10人程度で大丈夫だろうと済ませたということもありうる。

 口裏合わせだったかどうかの解明次第で、4月、8月の会合がデッチ上げだったどうかが判明する。しかし吉川さおりの頭にはデッチ上げではの疑いが1ミリもないのだろう、電話連絡があった、なかった程度の分析だけで幕を引いている。

 以下、吉川さおりは相変わらず2024年3月14日の参院政倫審での世耕の証言をほぼ繰り返させる程度の追及に終始する。

世耕弘成「すいませんが、今、数字をパッと用意できてないんですが、恐らく最後の年は500万円がノルマであったというふうに記憶をしております。段々、段々、これ立場が上がっていくと、金額が大きくなるという仕組みでありました。ですから500万円が私の、ま、1つの最後のノルマだったというふうに思っております」

 吉川さおり「実際、昨年3月14日、世耕参考人ご自身が、『2019年、私は多分この年はノルマが500万円ぐらいだったんじゃないかと思います』と発言なさっておられますし、これも本当に心苦しかったんですけれども、1期目で閣僚をおやりになった、もう今回出席頂いた中のお一人が、もう1期目で閣僚になってしまって、ノルマが一気に上がってとっても辛かったというこういう心情を吐露してくださった方もいらっしゃいましたので、大体500万ぐらいでないかと思いますが、それでは世耕参考人、ご自身のノルマの達成状況、この年は達成したとか、この年は達成しなかったとか、そういうのを把握できたら是非ご教示頂ければと思います」

 世耕は最後の年のノルマは500万円くらいだと記憶していると答え、対して吉川さおりは昨年3月14日の参院政倫審で世耕自身が「500万円ぐらいだったんじゃないかと思います」と発言しているから、それくらいではないかと思いますと応じているが、違う金額を言うかもしれないと期待していて、言った場合はその矛盾を突こうとしていたのだとしたら、甘過ぎる。言ったとしても、記憶違いでしたと訂正できる。

 要するに相手が用意していた答弁で遣り過すことができる、追及という形から程遠い、無難な質問をぶつけたに過ぎない。

 「少しでも構造的な問題や問題の素材が明らかになるような質疑にしたいと思います」との物言いで派閥という構造上の問題だ、問題の要素を、いわば摘出するような質疑にしたいだと大上段に振りかぶったものの、言葉で言うだけで、その言葉を見せかけのものにしている。

 上記質問の最後に、「それでは世耕参考人、ご自身のノルマの達成状況、この年は達成したとか、この年は達成しなかったとか、そういうのを把握できたら是非ご教示頂ければと思います」と求めているが、世耕は2024年3月14日と共通する答弁を繰り返したのみだから、吉川さおりの質問の意味を失う。

 「2012年ぐらいまではノルマ達成はカツカツであった、大分ノルマ上がってるけど大丈夫かという確認を事務所にして、『いや、大丈夫です。何とかなってます』と言って、そこで私はパーティー券のノルマの達成状況のチェックってのは終わってしまっています」

 世耕弘成が一度証言した事実関係を再度提示させたに過ぎない。

 吉川さおり「この間29名の議員の弁明・質疑に臨むに当たってノルマは把握されてる方いらっしゃるんです。ノルマも知らないっていう方いらっしゃったんですけど、ノルマは把握してる、達成しなかった場合は自腹をたくさん切ったと仰るんですが、ノルマを達成したかどうかっていうのは皆さん記憶はないというか、ご存知ないんです。これが不思議な共通点でございまして、なかなかノルマは知っていても達成したかどうかは達成してるもんだと思ってる。

 (ノルマが達成しているかどうか)気にも止めなかった。ここはやっぱり還付金と絡むからではないかと思われますが、どういうことなのか引き続いて伺ってまいりたいと思います。それでは次に世耕議員自身で明らかになっている還付金の額、自民党の去年の調査ですと平成30年から令和4年分までだと思いますが、還付金の額、世耕参考人ご自身の還付金の額についてお伺い致します」

 誰もがノルマを把握していながら、達成してるもんだと思っていた。「不思議な共通点」だと指摘していながら、「ここはやっぱり還付金と絡むからではないかと思われますが」とここでも自分で答を出してしまっている。

 ノルマを達成し、超えた分の現金還付を承知していたとした場合、次にそのカネの会計処理について考えたことがあるのかと問われたとき、考えたことはないと答えて露出される不自然さを避ける意味から、ノルマの把握止まりとし、あとは秘書が何も言ってこないから、多分、ノルマを達成しているだろうと任せきりにしていたとする手を打ったと疑うことができる。

 要するにこのような手続きの裏を返すと、収支報告書不記載を承知していながら現金還付を受けていたと見ることもできる。当然、吉川さおりはこの線から追及しなければならないのだが、何も追及せずに平成30年から令和4年分までの既に明らかになっている還付金の総額1542万円の各年それぞれの金額を、どのような意味からなのか尋ねている。

 世耕弘成は既に明らかにしている5年分の合計金額1542万円のみを伝えると、吉川さおりはなお各年ごとの個別の金額を知らせるよう求め、世耕弘成はそのデータは今日は持ってきていないと一旦は断わるが、机の上の資料をめくりながら、「ありました」と言い、「平成30年102万円。そして令和元年604万円。令和2年360万円。令和3年476万円。令和4年0円」だと答える。

 吉川さおりはこの答弁に対して「世耕参考人自身は不記載を派閥から指示があったとかなかったのか」と尋ねているが、既に2024年3月24日の参院政倫審で世耕自身が証言している総額1542万円に基づくのみでできる追及であり、各年それぞれの還付金額を聞かずとも済むはずだが、自分で回りくどいことをして時間のロスを自分から招いているだけではなく、既にほかの安倍派幹部同様に世耕にしても自身に対する還付現金の不記載を知ったのは2022年11月に入ってからの報道によってだと証言しているのだから、答えるはずもないことを承知せずに問い質すムダな時間を費やしている。

 世耕弘成「私自身にですね、派閥の方から例えば会長とか事務総長とか事務局長から不記載にしなさい、してくれというような指示はありません。ありませんでした」

 吉川さおり「なぜお尋ねしたかと申し上げます。昨年3月14日、世耕参考人には弁明の中でこうおっしゃっています。『多くの後輩議員たちについては、政策集団事務局から昔からこうなっているからと指示されて、その通り処理してきた結果、大きな批判を受けることになっています』

 ご自身についての言及がなかったためですが、例えば衆議院は昨年3月1日及び3月18日に主要な、それこそ4月7日の会合、8月5日の会合に出席をされた方々が全て派閥からの事務的な伝達、誤った伝達、記載不要との協議、記載しなくていいという指導があったことから、その分の記載をしていなかったとそれぞれがおっしゃっていますので、お尋ねをした次第です。

 もうこのことについてもやりとりを重ねるより、事実関係について引き続きお伺いします」

 4月と8月の会合に出席していた世耕を含めた西村、塩谷、下村の派閥4幹部共に不記載は承知していなかった、報道で知ったと証言している以上、「派閥から記載しなくていいという指示を受けた議員が少なくない数で存在する一方で幹部4人が不記載の指示を受けていなかった、その違いはどういうことなのか」と、その矛盾点を突くべきだったろう。

 問わなかったばかりか、「もうこのことについてもやりとりを重ねるより、事実関係について引き続きお伺いします」と言って、早々に引き上げてしまったのでは何のために取り上げたのか意味を失う。

 次いで質問した「事実関係」とは安倍派参議院議員は改選の年のパーティー券売上は全額還付制度となっていたことのいついてである。遣り取りを見てみる。

 吉川さおり「改選期参議院議員の改選期だけノルマなしという話は既に政治倫理審査会の場でも相当やり取りをされ、明らかになっていることでございますが、世耕参考人の改選期は平成10年の初当選の後は平成13年、19年、平成25年、令和元年だったという認識でよろしいでしょうか」

 世耕弘成「そういう認識で結構だと思います」

 吉川さおり「世耕参考人も改選期は結果としてノルマなしということでよろしいございますか」

 世耕弘成「今の改選期、全部ノルマなしだったかどうかは申し訳ありませんが、今のいくら記録をたどっても明言することはできませんが、少なくとも令和元年2019年の私の改選期の際はですね、全額が還付になっていたという結果であります。これもですね。恥ずかしながら私自身分からなかった。事務所もよく認識をしていなくて、最初ノルマオーバー分5年分ということで、チェックをしたら1042万円とうちの事務所からは出てきました。

 で、派閥と合わないで、その合わない分がまさにノルマそのものが返ってきていたという部分でありました。これはもうチェックをしてなかった自分のことをですね、恥じるしかないというふうに思っております」

 吉川さおり「本日の遣り取りの中でも昨年3月14日の政倫審の中でもありましたが、世耕参考人ご自身改選期はノルマなしということを知った時期は今回の事態が報道されるまでご存知なかったということでよろしくございますか。それかどうかのみをお答えください」

 世耕弘成「今回の事態が明らかになるまでは、あの恥ずかしながら、私自身、参議院改選期ノルマなしということは知っておりませんでした」

 吉川さおり「この改選期のノルマなしにつきましては、(2025年)2月27日衆議院予算委員会参考人聴取に於いて当該参考人2月27日(自民党旧安倍派の元会計責任者松本淳一郎のこと)は次のように発言されています。

 『要するにノルマはありません。ノルマはありませんよと言っただけで、それは先生方も知っていたと思います。その代わり売るのは自由ですから、売った分はその先生方に帰属するのだから、私たちの方はどのくらい売ったのかとか、そういうのはちょっと分かりません』。こう発言をされています。

 即ち改選期はパーティー券販売収入について派閥事務局が把握できず、そのまま各議員、もしくは事務所の収入となり、結果的に実際の収入額を知っているのは各議員なり、各議員事務所ということになりやしないかと思うんですが、如何でしょうか」

 世耕弘成「ほかの事務所の対応は分かりませんけれども、あの、私の事務所はですね、きちっとパーティー券を派閥の方から受領をして、そしてその振込みをして、振込んで頂いて、そしてその金額をしっかり派閥に収めてるという形でありますから、派閥が何も知らないで、うちの事務所だけでですね、こう何かお金を扱うというようなことはやっておりません。派閥のパーティ券に関しては」

 吉川さおり「去年の3月14日、世耕参考人はこう仰ってます。『全額キックバックと仰いますけれども、要するにこれはノルマなしということなんですね』

 実はノルマなしという表現の方が不自然さは浮き彫りになると思います。ノルマがなく、売った分は議員に帰属し、派閥事務局は少なくとも知ることができないと事務局長がおっしゃっているんです。即ち今回の事案が発覚しなければ、この件はもしかしたら明るみにならなかったかもしれませんし、政治資金規制法の趣旨に著しく悖る行為であり、政治的同義的責任は免れないのではないでしょうか。

 で、令和4年4月には一旦ノルマ通り売ってねっていうことがあって、還付やめる連絡を申されたということでしたが、8月に再びこの取り扱いについて協議をしています。これが何を決めたというのは私は聞きたいわけではなくて、8月に会合があった。これはどの立場に立とうとも一緒だと思います。

 で、ほかの3人の衆議院議員は当時こう発言しています。『ノルマ以上に売った議員から返して欲しい、8月に売った分を是非お願いしたい。ノルマ以上の売り上げがあるこれは何らかの形で戻してもらえないか、これについて議論をした』ということでよろしいでしょうか。

 あの、戻し方というか、その還付の方法、どうやって担保してあげるか、これについてのみをお伺いします」

 世耕弘成「どうやって戻すかではなくてですね、議論の始まりはそもそも安倍会長のご指示があって、還付はやめろとおっしゃってるんだから、まずやめる。これ、私は冒頭その主張をしました。

 で、しかしそれに対して、とは言っても、もう売ってしまっている人がいる。これに対しては政治活動資金としてですね、もう織り込んでる人がいるので、これに対しては何らかの対応が必要じゃないか。その対応方法として各自のパーティ券のパーティーを派閥が買うという方法があるんじゃないかっていうのが、このときの議論だったというふうに記憶しています」――

 ノルマナシでも、売った分は全額還付されて、使い勝手のいい自らの政治資金となるのだから一般的には知名度の低い議員程、枚数を多く売るべく努力したはずである。しかしこれも秘書が自分の胸一つに収めてしたことなのか、議員も承知をしていて、秘書に売上から還付現金の取扱いまでのまで全ての事務処理を任せていたのか、追及側が証明しないことには真相究明は埒が明かないことになる。

 しかし吉川さおりはこのことを証明する努力はせずに「政治資金規制法の趣旨に著しく悖る行為であり、政治的同義的責任は免れないのではないでしょうか」と批判するのみで幕を閉じてしまっている。どうもこれはと決めたいくつかの重要な点を集中的に追及するのではなく、問題点をつまみ食い程度に取り上げて、尻切れトンボな追及をしては次の問題点に移って、再びつまみ食い程度の追及を開始する、その繰り返しとなっている。

 吉川さおりはこの質疑の最後の場面で令和4年4月の会合でノルマどおりの販売と決め、8月の会合で戻して欲しいという議員の声にどう担保するのかについて行なった議論の内容を聞き質しているが、8月の会合については証言がほぼ出尽くしている。それを覆す材料がなければ、同じ繰り返しを誘うだけである。

 事実、世耕から2024年3月14日参院政倫審での8月の証言と同じ内容の発言を引き出したに過ぎない。

 4月の会合の証言の中からこそ、追及を欠いたままにしているピースがあることに気づかなければならない。2024年3月1日の衆院政倫審で安倍派幹部西村康稔が証言した、安倍晋三が口にしたとしている、「現金は不透明で疑念を生じかねないから、こうして現金の還付はやめる」と指示した言葉は明らかに適法性を示唆した意図を含まず、逆に違法性を臭わせる性格付けとなっている。

 だが、4月と8月の会合に共に出席した安部派幹部の4人共に違法性を臭わせた安倍晋三の言葉を無視し、4月の会合も8月の会合も、違法性に関する議論はなかったとして、現金還付制度の違法性に気づいていなかった理由としている。

 また追及側の野党議員の誰もが安倍晋三の現金還付の性格付けの言葉から幹部4人がどのような感触を持ったのか、どのような印象を受けたのかを問い質すこともなく、安倍晋三の性格付けを何事でもないこととのみ扱って、結果的に幹部4人を違法性とは距離を置いた安全地帯に住まわせている。

 逆に問い質して、幹部4人それぞれの判断から現金還付の違法性を感じ取ることになったのか、感じ取るまでもなく知り得ていたことなのかどうかの追及材料とすべきだが、その方法を誰も思いつくことなく、吉川さおりもその一人となっている。

 結果、ノルマ超えの現金分を議員個人の政治資金パーティーのパーティ券を派閥が購入することで、いわば消化するといった案が議論された等、2024年3月14日参院政倫審と変わり映えのしない答弁を引き出した程度で終えている。

 変わり映えのしない質疑応答を続けても仕方がないから、以下、遣り取りのあらましをピックアップすることにする。吉川さおりは安倍派会計責任者松本淳一郎の「還付再開決定は現職議員ではない」の証言に基づいて残る2人のうち、どちらと思うかと尋ねる。世耕は推理や憶測を披露するわけにはいかないからと、答を控える。

 松本淳一郎が大叔父(祖父の弟)の佐藤栄作の連続在職日数を超えて歴代1位となった安倍晋三に仕え、政治の裏表を知り、企業も政治も奇麗事ばかりではやってはいけないを学んで毒を喰らわば皿までと安倍晋三と、あるいは清和研という一大派閥と運命を共にする一蓮托生を覚悟していたとしたら、安倍晋三の名誉と信頼を守るために派閥幹部とグルになって4月と8月の会合をデッチ上げて、安倍晋三自身は現金還付・収支報告書不記載を派閥の制度として引き継いできたものの、やはりよくないことだと考えを改めて制度を断ち切る、派閥としては一大断行を決したものの、その意志に反して幹部の誰かが現金還付を再開、世間に知れることになって、一大政治スキャンダルとなったというストーリーを作れば、自民党最大派閥の会長としての、あるいは連続在職日数歴代1位の安倍晋三の名誉と信用を少なからず守ることができる。

 現金還付再開の決定者を差し出さなければならない状況に立ち至った場合、当然、用意したストーリーに添う必要性と個々の議員の犠牲の程度を考慮するなら、現役の国会議員としたら、辞職、あるいは罷免という事態も否定できない可能性から犠牲は大きく、解散したとは言え、安倍派という名前に傷がつく恐れもあり、除外対象とせざるを得ず、現職議員ではないということになったのだろう。

 となると、残るは収支報告書不記載が原因となって離党勧告を受けて昨年の衆院選前に政界を引退することになった塩谷立か、不記載で党員資格停止処分を受けて非公認となり無所属で立候補、落選した下村博文のいずれかとなるが、下村博文は現役でない分、犠牲はより少ないものの、議員復活の目が断たれたわけではなく、その点、政界を引退した塩谷立はもはや議員活動そのものに影響はなく、因果を含めて生贄の犠牲を引き受けさせる計画を立てた可能性は否定できないが、あくまでも人身御供として誰かに白羽の矢を立てなければならなくなった最悪の場合であって、両者共に否定し、藪の中に誘い込むことを最終的着地点と狙っている可能性も考えられる。

 吉川さおりは現金還付を誰が再開したか不明な点が「構造的な問題が明らかにならない理由」の大きな一つだと指摘、世耕の令和4年(2022年)の還付金の額を再度聞いて、答えた0円の理由を尋ねる。

 ここは重要だから、世耕の答弁の全文を載せる。

 世耕弘成「これは先程申し上げた事務局長とのメールにも出てきます。『世耕弘成対応不要』と書いています。私は4月7日に尊敬する安倍会長から還付金はなしにすると言われた以上ですね、私もこの年はオーバーあったようですけれども、これは受け取るべきではないと考えたので、事務局長に対して私に関してはパーティー券で買って戻すことも含めて対応は不要だというメッセージを送らして頂いてます。

 そしてその結果令和4年0円となってるわけであります。私は4月7日の安倍会長の指示は絶対守んなきゃいけないという立場でありました」――

 この日の世耕の参考人招致質疑開始前に参議院予算委員長の自民党鶴保庸介が「質疑の重複を避けるため」としていくつかの質問を世耕弘成に対して行った中で、安倍派会計責任者松本淳一郎が自身に対する2025年2月27日の衆院予算委での参考人招致で現金還付再開は8月の会合で決まったと証言していることと世耕が2024年3月14日の参院政倫審で同会合で還流の復活が決まったということは断じてないと答弁していることとの食い違いの説明を求めた際、初めて飛び出した証言で、松本淳一郎と遣り取りしたというメールを示して、いわばノルマを超えた分の現金を返して欲しいという議員のその金額分を議員個人が開く政治資金パーティーのパーティー券を派閥で買い取り、差引きゼロとする方法での処理を、このような直接的な文言ではないが、お願いしたという内容で説明している。

 そしてなぜこのようメールを送ったのかの説明として、「パーティー券をそれぞれの議員のパーティー券を買って返すというコンセンサスができているというふうに思っていたので」と説明している。

 だが、西村も下村も、世耕自身も、8月の会合ではこの方式での還付代替策は議論したが、結論は出なかったとしている証言と、この方式で「コンセンサスができているというふうに思っていた」との証言は明らかに矛盾するし、この代替策が全員のコンセンサスとして実際に実施されていたとすると、現実には現金還付が行われていて、収支報告書不記載も続けられていたのだから、メールを示して困るのは世耕自身であるはずだが、吉川さおりはこの答弁に何ら反応を示していない。

 しかもメールはいくらでも任意の日付けで送信できる。物的証拠とはなり得ないし、マスコミが現金還付と還付現金の政治資金収支報告書不記載を取り上げたのは2022年11月に入ってからであるのに対して令和4年(2022年)分の国会議員関係政治団体の政治資金収支報告書は2022年12月31日現在の日付で作成されて、提出期限は令和5年(2023年)5月31日迄だから、マスコミ報道以後から収支報告提出期限の2023年5月31日迄にいくらでも訂正できるのだから、還付金が令和4年0円も確たる証拠とすることはできない。

 吉川さおりはここで自民党参議員なのだろう、「某議員」という名前で次のような指摘を行なっている。

 吉川さおり「先程、(鶴保参議院議長と世耕との)冒頭の遣り取りの中で8月9日13時3分、15人がノルマをオーバーしてるということで、8月20日某議員、10月19日某議員、私この年の政治金パーティ一覧にしました。8月20日に開かれるという方も、10月19日に開かれている方もいらっしゃいます。お名前はこの場では申し上げませんけれども、1人は訂正しておりませんが、1人はやはり訂正して、そのパーティー券のどうやって、収入の一部を清和会に移す訂正をしてるんです。ですから、これは間違ってない記載であれば訂正の必要なんかないんです。

 ですから、さっきおっしゃった日付でパーティーを開催してる議員、お名前は言いませんが、訂正をされていますので、実は申し上げた次第でございます。結果として議員本人のパーティー収入から収入の一部を清和研に移して訂正している議員は確認できた限りで5人いらっしゃいます。

 不実記載であるからこそ訂正を行っているわけですし、この点についても私は解明が必要だと思っています」――

 果たして不実記載だから、訂正を行なったと断言できるのだろうか。ノルマを超えた金額で派閥が議員個人の政治資金パーティーのパーティ券を購入したなら、議員側事務所はパーティ券売上名目で収入とすれば、何ら問題はない。派閥の政治資金パーティーのパーティー券売上がノルマに達しなかったから、その不足分の金額を自身の政治資金パーティーの売上金額の中から送金、但しノルマ制や収支報告書不記載といった実態を隠蔽するために訂正という形式を取ったと疑うことができる。

 吉川さおりは持ち時間がきて次のように結んでいる。

 吉川さおり「昨年9月30日の東京地裁の判決文にはこうもあります。収支報告書の虚偽記入の前例となるノルマ超過分の処理については会長や幹部の指示に従わざるを得ない立場にありとされています。

 誰かがこの仕組みを作り、それに乗っかった幹部がいて、それを中止しようとしても、結果として再開された。それを決めた人はどこかにいらっしゃるわけです。立場上、幹部に従わざるを得なかった会計責任者1人が責任を負い、決定や継続を行っている誰かは分からないまでも、議員は誰も責任を取らない。また人が思い悩んだとはしながらもこの間29名それぞれの表現ぶりで私、拝聴しても苦しかったんですけれども、『秘書が、秘書に任せていた』、そういう言葉をこの間、回を重ねる政治倫理審査会の場で聞き続けてまいりました。

 私はそういう政治は嫌だと思って、この世界に飛び込みました。今回の件で、現時点に於いて非議員の会計責任者のみが罪に問われるような状況で、構造的な問題は明らかにはなっていません。これから政倫審の幹事会において審査を進めていくことになると思いますが、誰か一人で構いません。本当のことをそれこそ詳らかに語って欲しいと思いますし、それこそが二度と同じ問題を起こさないことに繋がると申し上げて、私の参考人に対する質問を終わらせていただきます」 ――

 「私はそういう政治は嫌だと思って、この世界に飛び込みました」、「誰か一人で構いません。本当のことをそれこそ詳らかに語ってほしいと思いますし、それこそが2度と同じ問題を起こさないことに繋がる」

 吉川さおりの本質がこの言葉に現れている。秘書に罪を着せて議員本人は保身を図る政治家は決してゼロにはならない。そのような罪逃れの構造を疑いうる事案が発生するたびにその構造を暴くことができれば、その事案に限って政治家本人を罰することができるが、この一事を以って、政治家の犯罪そのものを根絶やしにできるわけではない。

 そういった構図を取らざるを得ない道理を冷静に理解し、受け止めて、「嫌だ」とする政治を自ら阻止する気概を持つならまだしも、疑惑を持つ政治家自らに「詳らかに語ってほしい」と願うのは他力本願そのもので、この他力本願は政治家の犯罪を自らの才覚で暴く力を欠いていることの裏返しであろう。

 大体が政府参考人小林史武参議院事務総長を委員会に呼び出して、吉川さおりの質疑の冒頭部分で、「(委員会)議長が定める法令の規定に著しく違反し、政治的・道義的に責任があると認められるかどうかについて、これを審査するものとすると定められております」と言わしめていることからしても、審査する側が明らかにすべき政治的・道義的に責任であることを自覚しなければならないのだが、その自覚を持てない一連の追及で終わっている。

 この点に気づかない以上、タダ飯食らいは終わりを告げることはない。
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高市早苗は愚かだ 夫婦別姓法制化が少子化対策ともなりうる可能性に気づいていない

2025-05-19 04:18:49 | 政治

 ――高市早苗は戦前大日本帝国を偉大なる国家と信じ込み、男尊女卑の時代に培い、今も引き継ぐ家族制度を日本の伝統と崇め奉っているから、真の男女平等を阻害する抵抗勢力と化している――

 国立社会保障・人口問題研究所の「第7回全国家庭動向調査結果の概要」(令和5(2023) 年8月22日公表)から

妻の従業上の地位別にみた平日における1日の平均家事時間は――
「正規」186分
「非正規」237分
「自営」246分
「仕事なし」344分(大部分が専業主婦)

妻の従業上の地位別にみた平日における夫の1日の平均家事時間は――
妻が「正規」65分
妻が「自営」44分
妻が「非正規」39分
妻が「仕事なし」38分

 特に妻が「非正規」、「仕事なし」は妊娠・出産、育児のために「正規」の地位を捨て、「非正規」、あるいは「仕事なし」を止む得ず選択したケースも多々あるに違いない。

 妻、夫の育児時間を見てみる。

妻の従業上の地位別にみた平日における1日の平均育児時間は――
「正規」400分
「非正規」494分
「自営」474分
「仕事なし」701分

妻の従業上の地位別にみた休日における1日の平均育児時間は――
「正規」683分
「非正規」494分
「自営」790分
「仕事なし」701分

妻の従業上の地位別に平日における夫の1日の平均育児時間は――
妻が「正規」136分
妻が「自営」122分
妻が「非正規」119分
妻が「仕事なし」89分

妻の従業上の地位別に休日における夫の1日の平均育児時間は――
妻が「正規」457分
妻が「自営」431分
妻が「非正規」418分
妻が「仕事なし」366分

 夫の1日の平均育児時間は平日であっても、休日であっても、妻に時間の余裕が持てる従業上の地位に応じて短くなり、妻任せの姿勢が露わとなる。このことを可能としている要因は夫が妻に対して支配的地位に位置しているからだろう。

 日本国憲法が1947年5月3日に施行され、憲法上は日本が男女平等の世界となって78年、80年近くにもなるのに男女平等は掛け声が先行、実質が追いつかない状況は依然として続き、男性が女性に対して支配的地位を維持し、被支配的地位にある妻の家事・育児を難儀な営みにさせている。

 そのことへの思いが「産むのは一人で十分だ」といった境地に誘い込み、このような女性を身近にした周りの女性に、「結婚しない手もアリかな」とか、「結婚しても、産まない手もアリかな」と思わせるケースも無きにもあらずで、こういった傾向への到達は男性の女性に対する支配的地位が大きな要因をなしているはずで、タテマエは男女平等の日本社会に於けるこの男性の女性に対する支配的地位は日本の封建時代からの男尊女卑の思想が戦後も遺物として引き継いでいる男性上位・女性下位の関係力学であって、当然、日本の伝統的家族制度も大きく関与して形作ってきた男女差別構造ということになる。

 高市早苗のように現在の日本の家族形態を、中身の実質性を問題とせずに伝統的家族制度の産物だと価値づけ、有難っている場合ではない。

 事実婚の夫婦が婚姻届の不受理に対して不服申立てを最高裁判所に行った特別抗告に対して最高裁判所が夫婦同姓を強制する民法750条と戸籍法74条1号は憲法24条に違反しないと判断した、「夫婦同姓合憲2021年6月23日最高裁大法廷判決」には、裁判官宮崎裕子と宇賀克也の反対意見が紹介されている。


イ 夫婦同氏を婚姻成立の要件とすることは、婚姻後、夫婦が同等の権利を享有できず、一方のみが負担を負い続ける状況を作出させること

本件では、抗告人らは、夫婦同氏制の下では、一方の当事者が生来の氏名に関する人格権の侵害を受け入れ、アイデンティティの喪失を受け入れなければ婚姻をすることができないのに対して、他方の当事者は生来の氏名に関する人格権を全く制約されることなく享受できるという点を捉えて、夫と妻とがそれぞれの人格権を同等に享有できないことも夫婦同氏制の問題として指摘している。

平成27年第法定判決にはこの問題について言及する判示は見当たらないが、確かに、婚姻届への単一の氏の記載という要件を婚姻の成立要件として課すことは、婚姻により当事者の一方のみが生来の氏名に関する人格的利益を享受し続けるのに対し、他方は自分自身についてのかかる人格的利益を享受できず、かつ、かかる人格的利益の喪失による負担を負い続ける状況になることを意味し、婚姻が継続する限りその一方的な不平等状態は変わらないし変えられないことは自明である。言い換えると、夫婦同氏を婚姻成立の要件とすることによって、婚姻により氏を変更することとなる当事者は、婚姻が継続する限り、かかる人格的利益を他方当事者と同等に享有することを期待することすらできないという状況、すなわち、夫婦同氏制のゆえに、婚姻によって夫となり妻となったがゆえにかかる人格的利益を同等に共有することができない状況が必ず作出されることになる。.....

 要するに一方の姓に統一することは、生来の氏名に基づいて表される人格権(人であることによって当然に享有する権利の総称で、生命、身体、名誉、プライバシーなどを保護する権利)とアイデンティティ(姓名をバックボーンとして自分は自分であるとする個性面・人格面での独自性、生き方の独自性)の点で姓を放棄した側が社会的、あるいは精神的な差別を受けることになるから、夫婦同氏を強制するのは憲法違反であると反対意見を述べたことになる。

 と言うことは、抗告人男女は相互の人格権とアイデンティティの維持・尊重を目的に結婚後も生まれたときからの氏と名前を名乗る夫婦別姓を個人としての当然の権利であるとして求めた。

 もし夫婦別姓が法制化できたなら、別姓家族では男女相互の人格権とアイデンティティの維持・尊重の姿勢が家事労働や育児時間の相互負担に自ずと向かわせるだろうから、そのことによって手にする女性側の負担軽減が2子、3子を望む時間的・精神的余裕を生む可能性は否定できず、その可能性は少子化防止の一助ともなりうることが予想される。

 勿論、事実婚であっても、その家庭内では同じような状況に向かうだろうが、法律婚が受けることのできる国の保障のないことが妊娠・出産・育児に与えるマナスの影響は少なくないだろうし、何よりも社会的認知を受けるのと受けないとでは社会全般に与える影響の度合いに大きな違いが生じて、家事労働や育児時間の男女格差の是正への同調性は期待しにくくなる。

 もし夫婦別姓法制化が認められない状況が続いた場合、認められたなら改善に向かわせる契機となりうるかもしれない戦前型の男尊女卑の敗戦後も引き継ぐ戦後型男性上位・女性下位の差別観の蔓延り、その成果でもある家事労働時間と育児時間の女性側の負担偏重の傾向はさして変わらないままに推移することになって、このことが人口を維持可能とする合計特殊出生率2.07を遥かに下回る2023年合計特殊出生率1.20といった状況も変わらずに続いて、少子化現象の歯止めのない様相が放置される可能性は否定できない。

 戦前の日本の家族制度は封建時代以来の男尊女卑の血を受け継いで、その血を凝り固めるのに役立ち、さらに戦後の男性上位・女性下位の上下・差別関係に引き継がれていることを考えると、高市早苗がその家族制度を明治以来の日本伝統と価値づけるのは真の男女平等を阻害する抵抗勢力と看做されても仕方がないだろう。

 この男性上位・女性下位の上下・差別関係が少子化の原因ともなっている家事・育児の女性負担の偏重を作り出す大きな要因となっていることに対してその要因を夫婦別姓法制化が取り除くキッカケとなる可能性が考えられる以上、高市早苗が夫婦別姓法制化を旧氏の通称使用の広範囲化で阻止すべく画策している手段は姑息に過ぎ、愚かしい限りということになる。

 要するに高市早苗は夫婦別姓法制化の価値がどこにあるか気づいていないその程度の政治家に過ぎない。
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日本の政治の希望の星国民民主党玉木雄一郎の「働きがい改革」発言と対する連合会長苦言共に抜けている点

2025-05-16 06:20:37 | 政治

 ――玉木雄一郎は少子化主要原因の長時間労働のススメを問いている――

 日本の政治の希望の星、日本の多くの女性を惹きつけやまない国民民主党玉木雄一郎が2025年4月29日のネット配信番組で給料を上げる方法を問われて答えた発言内容を2025年5月15日付「毎日新聞」が、《連合・芳野氏 国民・玉木氏の「徹夜してもいい」発言に苦言》なる題名で伝えていた。

 記事題名からして連合会長の苦言に焦点を置いていることになるが、苦言よりも玉木雄一郎の発言自体にさすがに東京大学法学部卒業、ハーバード大学ケネディスクール修了の肩書を有しているだけのことはあるなと感心した。

 先ず記事が伝えている玉木雄一郎本人の発言と発言に対する記事解説を本人の発言の体裁を持たせて紹介してみる。

 玉木雄一郎「残業時間を減らしましょうみたいな話ばかりだけど、満足感を持って働く人を増やした方がいい。もっと働きたいという人もいる。『働きがい改革』が必要だ。

 残業規制と言うけど、自分自身そうだったけど20代のころ、徹夜しろとは言わないけど、徹夜してもいいと思っているんですよね。20代の人と50代の人の残業規制は、健康度合いも違うから違ってもいいかなと思っている。

 つまり働きたい人は働けるようにしていくことで、生産性も上がるし会社ももうかる。働き方改革で働く時間の規制ばかりやってきたことから、働きがい改革ということに少し局面を変えた方がいい」

 連合会長芳野友子「労働環境整備や生産性向上など総合的な取り組みが求められるという意図ではないか。

 (使用者側から時間外規制の上限緩和を求める声が出ていることに言及)思いを共有している政党の代表として、誤解を招かないような丁寧な発言をお願いしたい。長時間労働に依存した企業文化を見直し、過労死ゼロの社会作りを、労使が不退転の決意として掲げて取り組んできた(働き方改革に)逆行してはいけない」

 先ず玉木雄一郎は「働きたい人は働けるようにしていくことで、生産性も上がるし会社ももうかる」と言っているが、残業規制の緩和が会社により多い利益をもたらすことはあっても、必ずしも生産性向上の要因となるわけではないことに気づいていない。さっすが東大出である。

 「労働生産性の国際比較2024 概要」(日本生産性本部)によると、2023年の日本の「時間当たり労働生産性」は1位のアイルランド154.9購買力平価換算USドルに対して約3分の1近くの世界29位、56.8購買力平価換算USドルである。

 2023年の名目GDPで日本の4兆2309億ドルを抜いて4兆4298億ドルに達したドイツは96.5購買力平価換算USドルであり、その差、397億購買力平価換算USドルとなっている。

 ドイツを例に出したのは労働時間にも差があるからである。

 「データブック国際労働比較2024」(労働政策研究研修機構)から、「一人当たり平均年間総実労働時間(就業者)」を見ると、2022年の日本は1,607時間に対してドイツは1,341時間、その差は266時間。1日8時間労働とすると、約33日の差。しかも2022年の日本の年間休日数137.6日に対してドイツは142日。

 要するに労働時間が長いからと言って、生産性の向上に貢献するわけではない。いたずらに労働時間だけを増やして、生産性は上がらないこともある。逆に今の時代に求められていることはIT化やDX化(=デジタルトランスフォーメーションとは、企業がデータやデジタル技術を活用して、業務プロセス、ビジネスモデル、組織文化などを変革し、競争優位性を確立する取り組みを指す。単なるIT化やデジタル化とは異なり、組織全体の変革を目標とする)〈知らない言葉だから、調べてみた。〉を用いて、労働時間を如何に減らして、労働生産性を上げるかであろう。

 それを日本の政治の希望の星、日本の多くの女性を惹きつけやまない国民民主党玉木雄一郎は「働きがい改革」と言って、労働時間の長期化を求めるのは相当にズレている。

 特に「20代の人と50代の人の残業規制は、健康度合いも違うから違ってもいいかなと思っている」と20代の労働時間の延長化を望んでいるが、日本の男性の世界に比較した長時間労働が少子化の原因と指摘を受けていることを我が玉木雄一郎は失念している。

 恋愛・結婚・出産という機会に臨む、あるいは進む可能性ある若い世代にこそ、短い労働時間で人生に余裕を持たせ、なおかつ生産性を上げる、少子化阻止の役にも立つ「働きがい改革」が必要であるという視点を欠かして、「国政政党の代表でございます」のツラを下げて、長時間労働化のみに目を奪われて政策を語る。

 一つのことを考えたとしても、密接に絡み合うほかの問題点をも視野に入れて、総合的に捉え、全体的な解決策を模索していくという創造性がないから、一つの考えだけに囚われることになる。さすが東大出である。

 連合会長芳野友子にしても、玉木雄一郎の発言から長時間労働と少子化の因果関係に問題点を絡めていくべきだが、長時間労働是非云々のみに目を奪われるのは総合的思考力の点で玉木雄一郎同様にどこか抜けているからだろう。
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佐藤正久のタダ飯食らいのなまくら追及が映す4月・8月会合のデッチ上げ 対参院参考人招致世耕弘成

2025-05-11 08:26:36 | 政治

 自民党佐藤正久の自民党安倍派裏ガネ疑惑の渦中の人、元参議院議員、現衆議院議員無所属の世耕弘成に対する2025年4月21日の参議院予算委員会参考人招致の質疑の中から、今回は次の追及と答弁のみを取り上げる。

 佐藤正久「政治不信の一番の根幹がここなんですよ。なぜ安倍元会長がやめろと言ったのに、それが再開したのかっていう部分が、もう3人の方で政倫審こうやってきましたけど、そこが解明されてない。

 で、そこが解明されないという部分が国民の政治不信にやっぱ繋がってると、非常にこの8月5日の会合の実態っていうのが極めて大きくて、松本事務局長はここで大きな方向性が、継続っていう方向性が決まって、その参加した4人からも概ねそういう方向であったというふうに松本事務局長はそういう認識をしてるというふうなとこなんで、ここはやっぱ非常に今回の参考人招致のやっぱ肝が8月5日だと思います。

 加えてあの違法性の認識について伺います。あの松本元事務局長はこの還付金問題について違法行為をやっている認識はあったと明言されています。還付継続が決まったとされる8月の会合のこの還付金の以外の方法が検討されたと最近メディアで発言ありましたけども、その中でも、世耕議員も政倫審の方でもノルマ超過している方の合法的方法も議論されたと発言してます。

 合法的方法も議論されたと発言しておりますけれども、世耕議員は違法性を認識していたから、この安倍元総理は中止を決定されたというふうに認識されたのか、加えて、やはり松本事務局長も違法行為をやっていたと認識をされていたというふうに言ってますけども、その8月の会合でもノルマ超過してる方の合法的方法も議論というふうに発言されたことは違法性を認識して言ったのか、別な意味で言ったのか、これについてご答弁願いたいとおもいます」

 世耕弘成「これはですね、当然、政治資金の処理っていうのは合法的にやるのは当たり前だと思ってました。だからその確認ということで私は申し上げました。4月7日の安倍会長がいらっしゃった幹部の会合でも、あるいは8月5日の安倍会長が亡くなった後の会合でもですね、少なくとも私は違法性の認識は持っていなかった。そこはチェックは甘かったと思ってます。

 4月7日、安倍総理がオーバー分はもう還付しないと言ったときに、現金による還付はやめるんだとおっしゃったときに、私はああオーバーしてる人もいるんだ。で、そのオーバーした分、現金で受け取ってるんだ。で、その後、もう当然、収支報告に載ってるんだろうと私は思ってしまった。

 そこの詰めが甘かったというふうに。あのときですね、いや、その還付、どうやってるんですかと、そのあと収支報告の扱いどうなってるんですかっていうようなことを私がもっと前向きに関心を持ってやってればですね、こういう事態を起こすことは防げたんではないかというふうに思っております。

 で、先程、その松本さんが4月7日に今議員じゃない方が(還付再開を)求めてる議員がいるよということ言った。4月7日と限定されてないんじゃないでしょうか? じゃちょっと私そこはすいません、今あれですけど。

 ですから、私は4月7日にそういう発言があったかどうかも含めて、ちょっと今私の立場で確認はできないということは、ちょっと念のため申し上げておきたいなと」


 世耕がここで「先程、その松本さんが4月7日に今議員じゃない方が(還付再開を)求めてる議員がいるよということ言った。4月7日と限定されてないんじゃないでしょうか?」と発言していることは、安倍派事務局長松本淳一郎が2025年2月27日の衆議院予算委員会参考人招致で「今議員でない方が現金還付再開を決めた」との趣旨の証言を行なったことを指していて、その会合とは8月の会合のことで、佐藤正久は少し前の質問で8月と4月を混同して質問していることに対しての答弁である。

 但し世耕のこの答弁に重大なカギが潜んでいるのだが、勿論、タダ飯食らいの佐藤正久は気づかない。

 世耕弘成が4月7日の会合の経緯について答弁したことを再度順番を追って振り返ってみる。4月7日、安倍晋三がオーバー分はもう還付しないと言った。世耕弘成はオーバーしてる人もいて、そのオーバーした分は現金で受け取っていると気づくことになった。当然、収支報告に載ってるんだろうと当然視した。

 何の矛盾もない、ごくごく当たり前の妥当性を備えた心理経過に見える。但し西村康稔が2024年3月1日の衆院政倫審で安倍晋三は現金還付の中止の理由を「現金還付は不透明で疑念を生じかねない」と述べたと証言している以上、世耕弘成も耳にしていたはずで、この必ずしも合法性を示唆しているとは限らない現金還付方式の性格付けを前にした場合、収支報告記載を即当然視するのは奇妙な対応となる。

「政治資金の処理っていうのは合法的にやるのは当たり前だと思って」いたなら、当然視するのではなく、「現金還付は不透明で疑念を生じかねない」の性格付けに対して逆に「どういうことですか」と聞き返すのが自然な心理であろう。

 いわば幹部4人は常に「不透明で疑念を生じかねない」を前提とした現金還付と見ていなければならない。

 だが、聞き返しもせず、前提ともせず、収支報告記載を即当然視した。4月の会合が実際に存在した会合なら、あり得ない展開となる。そのあり得なさを証拠立てるために安倍晋三の発言とその発言を受けた世耕弘成の感情の変化を寸劇風に纏めてみる。

 安倍晋三「ノルマを超えた分の現金還付は不透明で疑念を生じかねないから、今後中止することにする」
 世耕弘成「(ああオーバーしてる人もいるんだ。オーバーした分、現金で受け取ってるんだ。当然、収支報告に載ってるんだろうな)」

 安倍晋三の現金還付制度に関わる"不透明"、"疑念"のキーワードに繋がりが何もない意思反応ということだけではなく、前者のそれとない違法性の臭わせに対して後者の頭から信じ込んだ合法性への確信というになり、その正反対の見解は成り立たせ不可能であるが、世耕弘成は成り立たせ可能としている点、4月の会合の実在性の根拠を失う。

 4月の会合の実在を疑わせる現象はほかにもある。安倍晋三の「現金還付は不透明で疑念を生じかねない」の言葉を紹介したのは西村康稔と下村博文のみで、同じ場所に居合わせたにも関わらず、他の2人の幹部は誰も安倍晋三の言葉には触れていない。当然、"不透明"と"疑念"のキーワードを前提としない還付の説明となっているばかりか、安倍晋三の現金還付方式の性格付けを紹介した西村康稔と下村博文も、紹介とは離れた場面での還付についての説明はその性格を関連付けない表現となっていることは特定の意図を感じさせる。

 「還付はやめるという意向を示された」、「還付金はやめるというご指示が出た」、「還付金をやめるということを言われた」等々、安倍晋三の現金還付方式の性格付けを纏わせない形で中止を取り扱っているが、世耕にしても他の3人の幹部にしても、4月の会合でも、8月の会合でも、「違法性についての議論は一切行われなかった」と同一歩調を取っている以上、当然のことだとしても、やはり安倍晋三の「現金還付は不透明で疑念を生じかねない」の意味合いの範囲内で取り扱わない状況は両会合の現実性を失わせる。

 もし幹部4人共に還付現金の収支報告書不記載の事実を知らなかった、不記載に関与していなかったが彼らの証言どおりに事実と仮定すると、安倍晋三の「現金還付は不透明で疑念を生じかねない」の中止の理由の紹介は諸刃の剣となる危険性を抱える。既に触れたように必ずしも合法性を示唆しているとは言えない言葉であって、何らかの違法性を嗅ぎ取らなかったのかと追及される恐れが生じるからだ。

 但し安倍晋三の現金還付方式のこの性格付けを真正面から取り上げて、追及する議員は一人としていなかった。

 ここで問題となるのは既に触れたように安倍晋三の中止理由に触れたのは4人の幹部のうち、西村康稔ただ一人だけという事実である。諸刃の剣となる危険性を最小限に押さえるために西村康稔のみが触れたと推測すると納得がいくが、あくまでも推測であって、追及する側の与野党の議員が西村を除く3人の幹部に対して追及しなければならなかったのだが、現金還付の再開を指示したのは誰か、そのことを解き明かそうとして8月の会合に質問を集中したために、結果、誰一人問うことをしていない。

 では、西村康稔は諸刃の剣となる危険性が高いにも関わらず、安倍晋三が現金還付を中止する理由とした、「現金還付は不透明で疑念を生じかねない」をなぜ敢えて持ち出したのだろうか。

 安倍晋三が現金還付中止を指示し、一旦は中止したものの、8月の会合以後、幹部たちが関与しないところで現金還付が再開されていたという経緯を取らせている以上、安倍晋三自身が現金還付を中止したという事実を打ち立てる必要性から、一定程度不法性を臭わせなければ、中止の理由とすることができなかなかったからと推測できる。

 例えば、「還付した現金は収支報告書に適切に記載し、処理しているが、中止することにする」と理由付けた場合は法的に問題がないにも関わらず、派閥の資金集めと、資金集めに関わる各議員の派閥に対する貢献と現金還付による各議員に対する政治活動費支援等のメリットを奪うことになって、奇妙な理屈を抱えた中止となる。

 そこで敢えて諸刃の剣となる危険性を冒してまでして不法性を臭わせる中止理由を持ち出さざるを得ず、持ち出したが、その事実を伝える役目は西村康稔一人のみとした。他の3人の幹部が共に同じ中止理由を口にした場合、違法性が際立つことにならないとも限らないからだろう。

 際立った場合、それが違法かどうかを安倍晋三や派閥事務局長の松本淳一郎に確認しない法意識の感度の低さが逆に非難されることになる。 

 違法性を極力目立たなくさせるために西村康稔は安倍晋三の現金還付方式の性格付けの言葉を最小限に抑えて、自身も含めて幹部4人共に安倍晋三の現金還付中止の指示を、「還付はやめるという意向を示された」、「還付金はやめるというご指示が出た」、「還付金をやめるということを言われた」等々、いわば中立的な性格に色づけて説明することにしたのだろう。

 また、安倍晋三の指示による中止の事実を敢えて持ち出しながら、幹部4人共に還付現金の収支報告書不記載は承知していなかった、関与していなかったという、いわば自分たちを"無罪"としている経緯からすると、"無罪"とするためには敢えて危険まで冒して中止の事実が必要だったことになる。中止したが、自分たちには関係ない知らないところで再開されたとすることで、不記載から距離を置くことができる。

 でなければ、「現金還付は不透明で疑念を生じかねない」などと現金還付方式の違法性を問題視させかねない諸刃の剣となる危険性を冒すことはできない。

 いずれにしても、4月の会合で安倍晋三が現金還付の中止を指示したとする証言は事実と認められ、大手を振って罷り通ることになり、不記載に関与していなかった、承知していなかったは限りなく疑わしいと見られているが、関与していた、承知していたとする明白な根拠を与えずに済んでいる。

 結果、今以って「真相解明に一歩でも近づけたい」とか、「真相解明は国会の使命」などと言わざるを得ない状況にとどまっている。

 そこで4月と8月の会合が実在した会合なのかどうか、占うことのできるより確かな材料がここで取り上げた世耕の最後の発言である。先ずキッカケとなった佐藤正久の発言を取り上げる。

 佐藤正久「安倍元会長から還付金中止指示が出された2022年の4月の会合について伺います。松本事務局長は安倍元会長からの指示で一旦中止になったことが事実としながらも、この会合でノルマ超過分を返還して欲しいという意見も出席者から出されている。その発言者は現在議員ではない方との趣旨の証言もしております。もう4月のこの会合で、このノルマ超過分の返還の意見があったのか、それに対してどのような意見交換が行われたのか、これもう一度、この4月の会合を振り返って誰が出席し、どういう話があったのか、誰からというところも思い出せれば、それを含めて話をして頂きたいと思います。簡潔にお願いします」

 安倍派事務局長松本淳一郎が2025年2月27日の衆議院予算委員会参考人招致で行なった「今議員でない方が現金還付再開を決めた」といった趣旨の証言を行なった対象は8月の会合で、4月の会合ではない。

 世耕は佐藤正久が4月の会合と8月の会合を混同していることに気づかず、4月の会合の出席者を伝え、西村康稔が伝えた安倍晋三の現金還付方式の性格付けは付け加えずに、「現金による還付はやめろという指示が出て、結論が出たというふうに思い、受け止めるしかないと思った」と答えて、松本淳一郎の8月の会合についての証言については何も触れていない。

 そして2回の遣り取りのあとに世耕は佐藤正久の混同に気づいたものの、訂正するのではなく、記憶が曖昧なこととして片付けている。改めて取り上げてみる。

 世耕弘成「で、先程、その松本さんが4月7日に今議員じゃない方が(還付再開を)求めてる議員がいるよということ言った。4月7日と限定されてないんじゃないでしょうか? じゃちょっと私そこはすいません、今あれですけど。

 ですから、私は4月7日にそういう発言があったかどうかも含めて、ちょっと今私の立場で確認はできないということは、ちょっと念のため申し上げておきたいなと」

 収支報告書不記載という政治資金規制法違反を受けて、国会議員の政治的・道義的責任の審査と追及を受ける政治倫理審査会という場に立たされた以上、1年やそこら前のことを思い出す限り思い出して、審査・追及に備えたはずである。

 そして4月7日の会合は安倍晋三の指示で現金還付の中止が決定した場であって、8月5日の会合はノルマ超過分の現金を返して欲しいと要望する議員がいて、どうするか議論したが、結論は出なかった会合であると塩谷立以外の幹部3人共にほぼ同じ証言を行なっている。

 もし4月の会合、8月の会合共に現実に存在した会合なら、自分が行う各証言に従った各場面の自分自身を含めた各登場人物のそれぞれの発言、挙動等の記憶の相当程度は思い返しながら、証言に応じたはずで、より確かな記憶の呼び戻しという心理作用がなければ、過去の出来事の証言はできない。

 何度も記憶を呼び戻して、4月と8月の各場面が、勿論、あとで少しは手を加えるということもあるだろうが、それが現実に存在した会合であるなら、相当程度の完成した記憶の呼び戻しとしていなければならない。

 ところが、世耕は佐藤正久が安倍派事務局長松本淳一郎の8月の会合について証言した内容を4月の出来事と混同すると、4月の会合、8月の会合についての記憶を証言という形であれ程饒舌に提示していながら、その混同に限って訂正できず、混同を保留する形でしか答弁することができなかった

 満足のいく完成した記憶の呼び戻しという形にして証言することはできなかった。

 つまり証言するために用意していた一連の記憶に予定外の一石を投じられた結果、その記憶に変調を来してしまった。

 実在した会合なら、作った記憶ではなく、実際に経験した記憶となるから、記憶にない予定外の一石を投じられたとしても、変調を来すことはなく、柔軟に対応できたろう。

 以上を改めて纏めてみる。

 安倍晋三が指示したとする現金還付中止の、必ずしも合法性を示唆しているとは限らない「現金還付は不透明で疑念を生じかねない」の性格付けを証言したのは西村康稔一人であること、他の3幹部は誰も耳にしなかったかのように振る舞っていること、その性格付けを前提としないままに安倍晋三から還付中止を伝えられたかのように証言していること、そして極めつけは世耕自身が記憶として相当程度完成させていてもいいはずの4月と8月の会合を混同した佐藤正久の質問に対してそのような記憶の完成を裏切り、混同していることを指摘できなかったこと、こういったことを総合しただけでも、両会合が実在したという実態を失わせる何よりの根拠となるはずである。

 大臣を経験している程の実力を有した政治家が政治資金規正法上の収支報告書不記載という重大事態を背負ったのである。実在した両会合であるなら、記憶の呼び戻しはより完成させていたはずだが、混同という予期しない成り行きに出食わして、記憶のもととなる経験や出来事に関わる実体のなさを露呈させてしまった。
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