2017年11月28日の衆院予算委、共産党宮本岳志の安倍森友疑惑追及は他の質問者とほぼ同様、相変わらず言葉だけを費やすムダな質問が多く、ムダに時間の積み重ねとなっていた。
対森友学園国有地売却検証で「値引き根拠不十分」と指摘した会計検査院報告書の地下埋設物量の算定やその撤去・処分費用の算定等々の食い違いや不適切性をなぞって時間をかけて如何に「根拠不十分」であるかを縷々描き出して、時折り自分の描き出したことが間違っていないことの確認を会計検査院長の河戸光彦(かわと・てるひこ)に求めて「根拠不十分」の確かさを印象づけることに多くの時間を割き、宮本岳志の独演会さながらの様子を呈していたが、その分、追及が疎かになった感が否めない。
その追及にしても、質問に立った目的はあくまでも会計検査院の報告に基づいて政府側に国有地売却に関して自分が疑っているとおりの不正を認めさせる、少なくとも不正を否定できないところにまで追い詰める点にあるはずだが、その機能を満足に果たすこともできなかった。
森友学園問題に入った冒頭、「森友疑惑の核心、これは国民の財産である9億5600万円の国有地がなぜ8億1974万円も値引きされ、タダ同然で売却されたのか」と言いながら、その「なぜ」の追及の矛先は必ずしも鋭くなかった。
二度追い詰める機会があったが、二度とも逃した。
宮本岳志「この報告書には合規性という言葉を使っておりますけれども、合規性というのは耳慣れない言葉でありますけれども、予算、法律、政令等に従って適正に処理されているかという、こういう基準に照らしても適正でない事態という内容の事態が認められたと。
つまり会計検査、会計処理が予算、法律、政令に従って適正に処理されているとは認められない事態だったと、こう言っているわけですね。
総理に聞くんですけども、あなたは第一に適正であるかどうかの判断の拠り所にされた会計検査院の会計報告が予算や法律や政令に照らして決して適正であったと言えない事態があったと言うことになりました。
総理はこの会計検査院の報告を受け止め、なお適正だったという認識をお持ちですか」
「総理、総理」と安倍晋三の答弁を求めたが、麻生太郎が答弁に立った。
麻生太郎「これは、あのー、従来からお答えをしていると思いますが、森友学園の国有地の売却に関わる事実関係というものは、今大阪地検で捜査が行われていますんで、捜査に影響を与えかねないということで捜査そのものに関するコメントは慎重に対応させて頂きたいとこのように申し上げてきましたが、本件に関して会計検査院に於きましては地下埋設物の撤去費用については一定の仮定に置いた試算が複数示されているんです。
今回、報告書の中ではそしてその仮定の試算によりましては(地下埋設物の)処分量の推定値は大きく変動する状況にあるということなどを踏まえれば、撤去・処分費用を算定する際に必要とされる慎重な、いわゆる調査検討に変えていかなければならないということにつきましてはご指摘を受けておりますのでこれは重く受け止め、今後必要な見直すということを行っていかなければならないものだと思っています。
他方、本件の土地の処分につきましてはこれまでも度々これまでも国会で質問されましたので、ご説明させて頂いたとおり、校舎の建設工事が既に進んで、その中で新たに出た地下埋設物、相手方から出てきたんではないかと(よく聞き取れないが、「申し出があり」か)損害賠償ということの恐れがある、いわゆる切迫した状況の中で行われたもんでありますんで、いわゆるよく瑕疵担保という責任を免除するという特約条項を、理不尽の対応だったということも併せて考えておかなければならないものだと思います」
宮本岳志は何も捜査に関することを聞いたわけではない。国有地売却に絡んで一部行政が不正に関わり、その不正に一国の首相の名前が利用されたのではないかという疑惑が浮上し、それを明らかにする国会の機能を果たすそうとしているに過ぎない。
にも関わらず、麻生太郎は「捜査そのものに関するコメントは慎重に対応させて頂きたい」などとトンチンカンなことを言う。
トンチンカンなことは言わないで貰いたいとなぜガツンと一発喰らわしてやらなかったのだろう。喰らわさないから、そのあとの好き勝手な詭弁を許すことになる。
報告書は書いている。〈大阪航空局が算定した本件土地における処分量19,520t及び地下埋設物撤去・処分概算額8億1974万余円は、算定に用いている深度、混入率について十分な根拠が確認できないものとなっていたり、本件処分費の単価の詳細な内容等を確認することができなかったりなどしており、既存資料だけでは地下埋設物の範囲について十分に精緻に見積もることができず、また、仮定の仕方によっては処分量の推計値は大きく変動する状況にあることなどを踏まえると、大阪航空局において、地下埋設物撤去・処分概算額を算定する際に必要とされる慎重な調査検討を欠いていたと認められる。〉
国土交通省大阪航空局が地下埋設物の見積り量算定に〈深度、混入率について十分な根拠が確認できない〉、尚且つ〈仮定の仕方によっては処分量の推計値は大きく変動する〉数値を用いているばかりか、〈既存資料だけでは地下埋設物の範囲について十分に精緻に見積もることができ〉ないにも関わらず地下埋設物量を見積った。
地下埋設物の見積り量に十分な根拠を見い出すことができなければ、当然、撤去・処分費用の見積もり額も正確性の根拠を失うことになる。
と言うことは、根拠を示すことができる正確なデータを用いて万全な見積もり額を弾き出すことが求められているということであって、麻生太郎が言っているような「一定の仮定に置いた試算」によって「処分量の推定値は大きく変動する」といったことが問題ではない。
麻生太郎は単に仮定に対する推定値の変動の関係を持ち出して、それを見直していくとすることで見積もりに不正があったのではないかという疑惑をそらそうとしたに過ぎない。
宮本岳志はこの点を突くべきだった。「会計検査院が一発で納得のできるデータに基づいた見積もりを大阪航空局が行っていなかったことが現在問題となっているのであって、そうしていれば、複数の仮定を用いた試算などする必要はなかった。逆の状況であったことが問題になっているのではないのか。今後必要な見直しをするとかしないということは先の話だ」と。
麻生太郎の詭弁の答弁に対する宮本岳志の反応。
宮本岳志「何も答弁になっていないんじゃないですか。適正だったと言えないんですよ。今回の会計検査院の指摘はね」
これだけである。後は再び会計検査院の「根拠不十分説」を持ち出して、どう報告しているかを述べてから、「杭打ち以外の深度3.8メートル、杭打ち部分深度の9.9メートル、ゴミ混入率47.1%のうち一つでも十分な根拠の裏付けが確認されたのか」と報告書に既に書いてあることを会計検査院長に尋ねて、尋ねたとおり「確認されていない」との返事を貰うと、「確認できないことは一つや2つではない」と、肝心の如何に追及するかを置き去りにして再び報告書の説明に入ると言った具合である。
もう一つの追い詰める機会は音声データに関わる質問である。
「8億2000万円値引きに至る経緯」なる題名のパネルを出す。
宮本岳志「このパネルを見て頂きたい。昨年3月11日、森友学園側から従来から分かっていた地下3メートルのもっと深い所から、ゴミが出てきたという連絡を受けるや、3月14日、近畿財務局は大阪航空局とともに現地で確認を行いました。
そこで地中深くから出てきたというゴミの山は工事中の写真を見せられました。3月15日、籠池夫妻は上京し、財務省本省で田村嘉啓(よしひろ)国有財産審理室長と面談します。
1時間半に亘って行われた面談についてはそれを録音した音声データが存在し、田村嘉啓前室長自身が自らの声であることは、この面談を記録したものであることを認めております。
財務省、間違いないですね」
太田充財務省理財局長「ご指摘の平成28年3月15日の音声データにつきましては本年4月の衆議院財務委員会に於ける議論を踏まえまして御法川委員から音声データが同一の遣り取りを記録したものかどうか確認するようにご指示があり、当時の国有財産審理室長に確認し、ご説明をさせて頂いたところでございます。
音声データは音声が発する音が不明瞭な点が多いものの、当日の遣り取りを記録したものと思われるが、二人が同時に話されることも多かったことから、全体については記憶にないということでございました。
本委員会でも9月8日だと思いますが、宮本委員のご質問にお答え申し上げているところでございます」
一筋縄でいかない役人言葉と役人らしい逃げ口上となっている。
宮本岳志「内容に鮮明な記憶がなくても、録音当日の面談のものであることは認めておられるわけですから、そこに記憶されていることは紛れもない事実だと言わなければなりません。
この音声データは籠池氏が『僕はもう紹介者に対して申し訳ないから』とか、『あの方自身が苦慮されていると思ったから、僕来たんです』とか繰返し背後にいる大きな力をちらつかせたために最後には『首相夫人が棟上げ式に来られて、餅を撒くことになっている』からなどと名誉校長である安倍昭恵氏の名前を出して交渉しております。
会計検査院に聞きますけれども、今回の報告書にもこの森友学園の購入希望に至る経緯について書かれておりますか」
会計検査院長は分かっている経緯は述べるが、詳細な日付のないもの、具体的な資料がないために内容が確認できない場合はその旨述べる。
宮本岳志は会計検査院長の答弁に引き継いで、音声データが録音された3月15日以降、「神風が吹いたわけであります」と言い、それ以後の大阪航空局と近畿財務局との森友学園の協議の経緯を「何がどうした」といった形式の、本人が言っているだけと受け取られかねない、それゆえに決定的証拠とならないことを述べ始める。
暫くこのような宮本岳志の独演もどきが続いた後、音声データの発言の一部分を書いたパネルを出し、書いてある通りに言葉で説明を始める。「8億2000万円値引きに至る経緯」は今まで散々遣り取りしてきたことだから、なぜ最初に音声データのパネルを出さなかったのだろう。
以下、パネルから写した発言を記してみる。
国側とミリとも学園側が口裏合わせ? 関西テレビ報道番組の音声データより (国側の職員とみられる人物) 「3mまで掘っていきますと、土壌改良をやってその下からゴミが出てきたと理解している」 「その下にあるゴミは国は知らなかった事実なので、そこはきちっとやる必要があるでしょうというストーリはイメージしているんです」 (工事関係者とみられる人物) 「3mより下からは語弊があります。3mより下からは出できたかどうかは分からないと伝えている。 そういうふうに認識を統一した方がいいなら、我々は合わせるが、下から出てきたかどうかは私の方からは、あるいは工事をした側から確定した情報として伝えていない」 (池田靖国有財産統括官・当時) 「資料を調整する中で、どういう整理をするのがいいのか、ご協議させて頂けるなら、そういう方向でお話をさせてもらえたらありがたい」 (工事関係者とみられる人物) 「3mより上のほうがたくさん出てきている。 3mの下からっていうのはそんなにたくさん出てきていない」 (国側の職員とみられる人物) 「言い方としては“混在と、9mの範囲まで”」 (工事関係者とみられる人物) 「9mというのは分からないです」 「3メートルより下はそんなにゴミは出てきていない」 |
宮本岳志は発言を読み上げる形で説明してから、森友学園の代理人の弁護士が割って入ったことを伝えてから続きのパネルを出して、同じように自身の言葉で読み上げて説明を加えていく。
国側とミリとも学園側が口裏合わせ? 関西テレビ報道番組の音声データより (学園の代理人弁護士) 「そこはね、もう言葉遊びかもしれないけれども、9mのところまでガラ(廃棄物)が入っている可能性は否定できますかって言われたら否定できないでしょ。できないんです。そういう話です」 (工事関係者とみられる人物) 「その辺をうまくコントロールしてくれたら我々は資料を提供しますので」 (国側の職員とみられる人物) 「虚偽のないようにしてあれが大事なので、“混在していると。ある程度3mの所にもあると。ゼロじゃないと”」 (工事関係者とみられる人物) 「あると思います」 (国側の職員とみられる人物) 「そんなところで作りたい」 (学園の代理人弁護士) 「責任問題に発展しないように頑張っていただけると信頼している。半分は我々のためにやってもらえると思って、半分はご自身のためにがんばってください」 |
宮本岳志「酷いじゃないですか。これじゃあ、冗談じゃないですよ。こんな口裏合わせで根拠も定かでない8億2千万円大幅値引きをやって、国民の財産である国有地をタダ同然で売却している。総理、これは明確な背任ですよ」
宮本岳志は安倍晋三の答弁を求めたが、佐川宣寿後任の財務省理財局長の太田充が答弁に立つ。太田充はパネルにある国側の職員とみられる人物が「その下((3mよりも下)にあるゴミは国は知らなかった事実なので、そこはきちっとやる必要があるでしょうというストーリはイメージしているんです」と発した「ストーリ」という言葉についてはこれ以前に説明している。
太田充「応々聞いておりますと『ストーリ』という言葉を使っておりますが、大変適切ではなかったと本人は申し上げております。それに致しましても先方とは様々な遣り取りがありましたが、新たな地下埋設物の撤去費用を見積もるためには資料が必要であるから、様々な資料の提供をお願い頂いたということでございます」
対して宮本岳志は音声データが録音されている面談に大阪航空局の職員が同席していたかどうかを尋ね、太田充から同席していた旨の発言を受けると、「重大だ何だ」と反応しただけである。
この場合の「ストーリ」という言葉は表には出すことができない何らかの利益を図るための良からぬ謀り事を創作する場合に使う。一般的には「話をつくる」、あるいは「絵を描く」と言う。ネットの「日本語俗語辞書」には「絵を描く」を「ヤクザ用語で敵をハメたり、自分や所属する組に都合の良い状況になるよう、陰謀や策略を練ることをいう」とあるが、一般人でも何か良からぬ謀り事を用いて人を騙して利益を得ようとするとき、どういった謀り事にするか、その種類と手順の考えを巡らすときに使う。
要するに良からぬ利益を図ることを暗黙の了解として話し合う場合、自ずとそれぞれが「ストーリ」を作ることになったり、その作成に加担することになったりする。
事実に即して物事を進めていたなら、「ストーリ」という言葉も「話をつくる」という言葉も「絵を描く」という言葉も使う必要はない。単に物事の性格に応じた計画を立てて、実行に移すという段階を踏むに過ぎない。「ストーリはイメージしているんです」という言葉が残されている以上、謀り事を暗黙の了解とすべく策していると見なければならない。
当然、「大変適切ではなかった」と適切・不適切では片付けて済む言葉ではない。しかし宮本岳志は済ませてしまった。
宮本岳志の「これは明確な背任ですよ」の問いに太田充は次のように応じている
太田充「今程御答弁申し上げてきたとおり、先方と様々な遣り取りがありましたけども、あくまでも新たな撤去費用を見積もるために資料が必要であることから、様々な資料の提出をお願いしたということでございまして、委員ご指摘の口裏合わせをして地下埋設物の撤去費用を見積もろうとしたということは当たっていうふうに考えてございます」
宮本岳志「口裏合わせじゃないと。そんな話は通りませんよ。総理、明確な口裏合わせじゃないですか。総理」
安倍晋三は立とうとしない。ほんの少しの間質疑が中断し、再び太田充が答弁に立つ。堂々巡りのやり取りになるのは既に見えている。
良からぬ謀り事を行うときに用いる「ストーリ」という言葉を足がかりに面談発言全体の、如何にゴミの量を増やして撤去・処分費用を嵩上げして差引き国有地売却額を少なくしようと謀っているか、そのことと「ストーリ」という言葉との整合性、これらと会計検査院の報告書の地下埋設物量の見積もり算定の「根拠不十分」、このことに応じた撤去・処分費用見積額算定の「根拠不十分」との整合性を追及することで、堂々巡りとならない展開が望めたはずである。
それでも国側が「口裏合わせではない」と主張するなら、パネルに書いてある発言自体は否定できないはずだから、それをどう解釈するか、安倍晋三、石井国交相、麻生太郎、太田充それぞれにその認識を問うべきだろう。「発言全体のどこを押したら、新たな撤去費用を見積もるために資料が必要であることから、様々な資料の提出をお願いしたという認識しか出てこないのか」と問えばいい。
「ストーリ」という言葉を「大変適切ではなかった」だけで片付けさせてはいけない。
安倍晋三は「私はその音声データは聞いておりませんから」と逃げるかもしれないが、音声データであることから離れて、このような発言自体を読んでどう解釈するか聞かせてもらいたいと言えばいい。
単に「酷いじゃないですか」、「そんな話は通りませんよ」ではいつまで経っても追い込むことはできない。
また音声データ野中の登場人物の一人、工事関係者とみられる人物こそがゴミの実際の量を実際に目にし、最も知っている最需要の人物なのだから、工事関係者を国会の証人喚問に呼んで追及、実際には見積もっただけのゴミの量が存在しなかったことが追及できれば、近畿財務局、大阪航空局側がそれだけの配慮を示さなければならなかった理由は安倍昭恵が握っていることになり、安倍晋三が如何に反対しようと、証人喚問に応じざるを得ないように持っていくべきではないだろうか。
宮本岳志は証人喚問を求めた中に安倍昭恵を入れていたが、工事関係者は含めていなかった。