菅義偉のオスプレイの機体の安全性が運航の安全性を兼ねているかのように事故率を「目安の一つ」とする認識

2017-10-31 11:10:54 | 政治

 2017年10月30日付の毎日新聞インターネット記事が米海兵隊運用垂直離着陸輸送機オスプレイの今年2017年8月末時点の重大事故率が5年前米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)配備前の日本政府公表事故率の約1.5倍となり、海兵隊機全体の事故率を上回ったことが海兵隊への取材で分かったと報じた。

 5年前は民主党野田政権時代である。

 記事は、〈政府はオスプレイの事故率が海兵隊機全体より低いことを示して国内配備への理解を求めてきた経緯があり、その根拠が覆る形に改めて対応が問われそうだ。〉と解説している。

 この記事の無料配信はここまでで、後は有料となっていて、貧乏人には覗くことができない。但しYahoo!ニュースが《<オスプレイ>事故率1.5倍 「安全」根拠覆る》と同じ題名で配信していた。Yahoo!ニュースは一定期間が過ぎると記事を削除してしまうが、一応リンクをつけておいた。  

 海兵隊の最大事故等級「クラスA」には被害総額200万ドル(約2億2700万円)以上の事故と死者発生飛行事故が適用されること、機体安全性指標は10万飛行時間ごとの事故発生率によって表されることを記事は紹介している。

 対海兵隊取材で、オスプレイが試験開発を終えた2003年10月から今年2017年8月末の総飛行時間は30万3207時間、重大事故「クラスA」9件。10万飛行時間当たりの事故率2.97と判明。

 このオスプレイ事故率2.97は防衛省が2012年10月普天間飛行場配備前公表事故率1.93(同年4月時点)の約1.5倍に上っているものと報じている。

 当時の政府は普天間配備前のオスプレイ事故率(1.93)が当時の海兵隊機全体の2.45を下回っていたことで安全性を強調していたが、米会計年度末(9月末)算出のオスプレイ事故率は上昇傾向で、昨年9月末時点は2.62、海兵隊機全体の2.63に迫っていたと解説、その後沖縄県名護市沖の不時着事故(昨年12月)や豪州沖の墜落事故(今年8月)等で8月末時点のオスプレイの事故率(2.97)が海兵隊機全体の同時期の2.59を上回ったとみられる上に9月29日にはシリアで墜落事故が起き、米会計の17年度末(9月末)はさらに上昇が予想されると事故の多さ、その危険性を指摘している。

 記事は最後に関係者・識者の発言を伝えている。

 海兵隊広報担当者「軍用機に潜在的なリスクはつきものだ。高い水準の安全性を確保するため、あらゆる段階で安全措置や予防策を整えている」

 「あらゆる段階で安全措置や予防策を整えている」にも関わらず、「高い水準の安全性を確保」できていない。つまり軍用機に付きものの「潜在的なリスク」を潜在状態で維持できす、現実のリスクとなって噴出している。と言うことは、「安全措置や予防策」が役に立っていないことを示すことになる。

 防衛省担当者「操縦ミスなど機体以外の要因でも事故は起こり、事故率はあくまで目安の一つだ。米側には平素から安全確保への配慮を求めている」

 防衛省担当者のこの発言と同じことを官房長官の菅義偉が口にしている。言っていることの妥当性を後で触れることにする。
 
 米国防総省国防分析研究所の元分析官でオスプレイの飛行能力の検証を担当したレックス・リボロ博士の話。

 レックス・リボロ博士「オスプレイは機体構造が複雑であり、小さな操縦ミスも許さない設計になっている。オスプレイが海兵隊内で普及するに従い、比較的経験の少ない操縦士も操縦するようになってきており、人為的なミスが起こりやすい状況を作り出していると考えられる」

 機体構造が複雑なオスプレイが人為的なミスが起こりやすいということは機体要因以外の事故の頻発性の指摘となって、防衛省担当者の発言とほぼ同じ趣旨となる。

 前田哲男軍事評論家「北朝鮮情勢の緊迫化に伴い、米軍の訓練がより過酷になっていることが背景に考えられる。中でもオスプレイは固定翼モードと垂直離着陸モードの切り替えの際に脆弱(ぜいじゃく)性が指摘されており、ハードな訓練でもろさが露呈した可能性がある。沖縄や岩国はオスプレイの活動拠点であり、今後も事故が起きかねない」
 
 オスプレイの事故回数の多さが「米軍の訓練がより過酷になっていることが背景にある」としたら、人為的なミスによる事故が主ということになって、機体の安全性には問題ないことになる。

 但し固定翼から垂直離着陸へのモード切り替えの際に脆弱性が指摘されるということなら、このような機体自体の安全性に関係したマイナスの要素は事故を起こした場合、操縦ミスと見分けがつかないという難点を抱えることになって、海兵隊当局としたら、事故原因究明時に操縦ミスという人為的ミスの範疇に入れたい衝動を抱えるに違いない。

 いわば人為的ミスとされた事故原因の中には実際には機体の安全性が原因の事故もあり得る疑いが出てくる。

 疑いは疑いとして他処に置くとしても、防衛省担当者の「操縦ミスなど機体以外の要因でも事故は起こり、事故率はあくまで目安の一つだ。米側には平素から安全確保への配慮を求めている」との発言は機体の安全性が要因の事故ではなく、人為的なミスが要因の事故であるなら、許されるという意味内容となる。

 人為的なミスが要因の事故であろうと、墜落場所や不時着場所によっては住民を巻き込む危険性は否定できないのだから、許される発言ではない。

 では菅義偉の防衛省担当者とほぼ同じ趣旨の10月30日午前、米海兵隊の輸送機オスプレイの重大事故率が海兵隊機全体の水準を上回ったことについての記者会見発言を「毎日新聞ネット記事」から見てみる。    

 菅義偉「整備ミス、操作ミスなど機体以外の要因で発生する事故もある。事故率のみをもって機体の安全性を評価することは適当でなく、あくまでも目安の一つだろう」

 防衛省担当者とほぼ同じ内容の発言となっているから、菅義偉は前以って防衛省担当者から説明を受けていて、説明通りに発言したのだろう。

 例えそうであったとしても、その説明を了解した上で発言しているはずだから、説明を何も問題はないとして差し障りなく自身の認識を通過させたことになる。

 その認識たるや、さすがに安倍政権の官房長官だけのことはある。整備ミス、操作ミスによる事故も存在することを根拠に事故率だけで「機体の安全性を評価することは適当ではない」、「目安の一つ」に過ぎないといとも簡単に重大事故率の高さを問題になることではないと切捨てている。

 だが、既に触れたように整備ミス、操作ミスの事故であろうと、重大事故率が高いことに変わらないのだから、危険性をゼロと保証することはできない墜落・不時着した場合の住民の巻き添えの可能性の点から許される発言とすることはできない。

 菅義偉が何よりも無視している問題点は、「整備ミス」と「操作ミス」の事故が「機体の安全性」自体とは無関係であっても、運行の安全性に深く関係していくということである。

 言ってみれば、オスプレイの重大事故率の高さは、それが整備ミス・操作ミス等の人為的ミスを要因としていようと、あるいは機体の安全性を要因としていようと、運行の安全性の低さをそのまま表していると言うことである。そして全ては運行の安全性にかかっている。例え機体の安全性が100%であっても、整備ミス、操作ミスを誘うような機体であるなら、運行の安全性は保証できないことになり、オスプレイの重大事故率をそのまま受け止めて、危険な運行が行われていると看做さなければならない。

 菅義偉の認識は、防衛省担当者の認識についても同じ指摘ができるが、オスプレイの重大事故率の高さがそのままオスプレイの運行の安全性の低さに直結していることを無視して、事故率は「あくまで目安」に過ぎないとする解釈で良しとしている。

 運行の安全性の低さは危険な運行が行われていることを示す。口では「国民の命の安全」を言っても、実際には日米関係を重視・優先させているためにオスプレイの重大事故率の高さを運行の安全性とイコールさせて把える認識を持ち合わせることができないのだろう。

 飛んだインチキ人間である。
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安倍晋三の殉職自衛隊員を一律的に「国の誇り」と価値づけ、エリート(選良)へと祭り上げる危険な国家主義

2017-10-30 10:43:24 | 政治
 
 安倍晋三が2017年10月28日、防衛省で開催の2017年度自衛隊殉職隊員追悼式に参列、スピーチしている。文飾は当方。

 「安倍晋三自衛隊殉職隊員追悼式スピーチ」(首相官邸/2017年10月28日)     

 安倍晋三「国の存立を担う崇高な職務に殉ぜられた自衛隊員の御霊(みたま)に対し、謹んで追悼の誠を捧げます。

 この度、新たに祀(まつ)られた御霊は、25柱であります。

 ただひたすら国民のため。それぞれの持ち場において、強い使命感と責任感を持って職務の遂行に全身全霊を捧げた皆様は、この国の誇りです。私たちは、その勇姿と名前を永遠に心に刻みつけてまいります。

 同時に、かけがえのない御家族を失われた御遺族の皆様の深い悲しみ、無念さを思うと悲痛の念に堪えません。

 ここに祀られた1934柱の御霊に対し、改めて深甚なる敬意と感謝の意を表します。

 その尊い犠牲を無にすることなく、御遺志を受け継ぎ国民の命と平和な暮らしを断固として守り抜いていく、そして、世界の平和と安定に貢献するため全力を尽くすことを、ここにお誓いいたします。

 いま一度、御霊の安らかならんことを、そして、御遺族の皆様の御平安と末永い御健勝をお祈り申し上げ、追悼の辞といたします」

 当たり前のことだが、安倍晋三が「職務の遂行に全身全霊を捧げた」と言っていることは職務の遂行に全身全霊を捧げながら人生の最終章を殉職という死を以って迎えた自衛隊員の生き様を指した言葉であっって、現在もなお生きながらに「全身全霊を捧げ」ている人生について言及している言葉ではない。

 確かに安倍晋三が厳かな口調で口にしているとおりに自衛隊員は日々、あるいは一秒一秒、「ただひたすら国民のため。それぞれの持ち場において、強い使命感と責任感を持って職務の遂行に全身全霊を捧げ」ているだろう。

 だとしても、一国の首相であると同時に自衛隊の最高指揮官が人生の最終章を殉職という死を以って迎えた生き様を一律的に「国の誇り」と価値づけるのは妥当だろうか。

 例えその殉職が戦争で敵と戦いを交えて犠牲になった死であっても、死に至ったその人生の全てを一国の首相であると同時に自衛隊の最高指揮官が「国の誇り」と最大限に価値づけていいものだろうか。

 自衛隊員の殉職を「国の誇り」と価値づけることは、それが国単位の「誇り」である以上、その殉職を“国家的価値”に位置づけていることを意味する。

 「国の誇り」“国家的価値”を有しないとしたら、矛盾そのものので、「国の誇り」から「国」という言葉を外して、国単位ではないタダの「誇り」としなければならなくなる。

 国家指導者が自衛隊員の職務上の全ての死をその生き様と共に「国の誇り」であると“国家的価値”に位置づけ、そのことが当たり前になった場合、自衛隊員そのものを特別な存在とする危険性を内部に孕むことにならないだろうか。

 なぜなら、「国の誇り」という栄誉は国民の中のエリート(選良)という選別があって初めて与え得るからである。それが個別的であるなら、そのような選別は許されるが、殉職者全体に対する選別となると、組織全体に対する選別へと繋がる。

 このような選別がなければ、安倍晋三が言っている「その勇姿と名前を永遠に心に刻みつけてまいります」といった論理は成り立たなくなる。自衛隊員の殉死の生き様を「国の誇り」だと“国家的価値”づけを行い、「その勇姿と名前を永遠に心に刻みつけてまいります」と言うこと自体が特別な存在扱いであって、自衛隊員をエリート(選良)とする特別存在扱いの選別は自衛隊という実質的な軍隊そのものをエリート(選良)集団とする特別な存在扱いをしているからに他ならない。

 相互の関連付けのない、一方だけの特別な存在扱いは個々の場合は存在するが、全体対全体の判断は存在し得ない。

 実質的には軍隊である自衛隊という組織を一般扱いとしていたなら、組織の各一員である自衛隊員に対しても一般扱いとなって、彼らの殉職の生き様を「国の誇り」とする“国家的価値”づけは起こりようがない。

 そして自衛隊をエリート(選良)集団と価値づけ、自衛隊員を国民の中のエリート(選良)と見る特別な存在扱いは軍隊を国民の上に置く国家主義によって可能となる心的傾向であろう。

 自衛隊及び自衛隊員をエリート(選良)とする国家主義はいつ何時、自衛隊及び自衛隊員そのものを絶対的存在と高めない保証はない。いや、自衛隊、あるいは自衛隊員の側から国民の中のエリート(選良)として行動し始めた場合は自らが国家主義を纏い、自らを絶対的存在と思い込むに至ったときであろう。

 日本人はこのような現象を戦前、見てきたはずである。安倍晋三は意図的なのかそうでないのか、自衛隊を戦前の大日本帝国軍隊の地位、身に付けていたエリート性にまで高めたいようだ。

 自衛隊員の殉死の生き様を「国の誇り」と祭り上げ、“国家的価値”づけを行う安倍晋三の言葉に感じる国家主義の危険性がここにある。

 安倍晋三の自衛隊および自衛隊員を絶対的存在へと祭り上げる国家主義は既に2016年の観閲式の発言に現れている。

 「観閲式訓示」(首相官邸/2016年10月23日)

 国内外の自然災害で救命・救助に励む自衛隊員、カンボジアや南スーダンでPKO活動に励む自衛隊と自衛隊員等を例に挙げてから次のように発言している。、

安倍晋三「彼らの存在があったればこそ、日本は、平和と繁栄を享受することができる。国民の命と平和な暮らしは、間違いなく、彼らの献身的な努力によって守られています。この崇高なる任務を、高い使命感と責任感で全うする彼らは、日本国民の誇りであります」――

 確かに軍隊そのものである自衛隊と所属員である自衛隊員の存在が日本の大枠としての安全保障上の守りを負っている形を取っているが、中身の全体としての生活そのものの「平和と繁栄」、「国民の命と平和な暮らし」は実質的には日本国憲法に信頼を寄せている国民自身、その一人ひとりの努力が築いて成し得た状況であるはずである。
 
 しかし安倍晋三はこのことを無視して、「彼らの存在があったればこそ」と自衛隊と自衛隊員のみによって成し得ている「平和と繁栄」、その他であるかのように言うことで自衛隊と自衛隊員を国民の上に置く国家主義を露わに曝け出している。

 一国の首相が自国軍隊とその兵士を国民の中のエリート(選良)集団と見る。このような国家主義程危険なものはない。

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安倍晋三のウソつきでなければ不可能な詭弁満載の選挙戦中の意図的作為に基づいた憲法問題争点回避の説明

2017-10-29 11:28:41 | 政治

 安倍晋三が2017年10月22日投開票総選挙の圧勝を受けて、自民党総裁として翌10月23日自民党本部で記者会見を開いた。自身の冒頭発言では憲法改正について一言も触れなかったが、「質疑」で記者が触れた。

 「質疑」  

 記者「東京新聞ナカネと申します。憲法に関して質問です。総裁は衆議院選挙の選挙期間中の演説で、憲法改正に関する話題に殆ど触れることがありませんでした。自民党の公約では、最重点政策の1つとして憲法改正を盛り込んでいましたが、総裁の選挙中の説明は十分でなく、国民の理解も不十分だという印象があります。

 総裁が演説で憲法の話題に積極的に触れなかった理由をお聞かせください。それから今後、自民党として憲法に関する政策の説明をどのように行っていくお考えでしょうか」

 安倍晋三「それでは2つお話をいたします。まず憲法改正というのは、通常の法案と違って、衆議院で多数、そして参議院の多数を得れば、それで成立するものではありません。

 ですから、政権選択に際してはいわば重要な論点として街頭演説で述べるということは当然であろうと思いますが、憲法においては、まさに決めるのは国会ではなく、国会で発議をするわけでありまして、決めるのは国民投票であります。

 まさにこの国民投票の場において、具体的な条文について説明する責任があろうと思います。

 今回の選挙においては、冒頭で説明させていただいたように、立党以来の我々の党是である憲法改正について、今度は初めて主要項目として掲げさせていただき、そして4項目お示しをさせていただきました。

 それを我々がどう考えているかというものをお示しをしたところでございました。これは街頭でもみなさまにお配りをしているものであります。

 一方、街頭で述べることは、限られた時間の中で、まさにその地域地域の生活に密着したことに対する政策を述べるものであり。

 まさに街頭にお越しをいただいている若いみなさん、あるいはたくさんの小さいお子さんを連れたお母さんたち、お父さんたちにとっては、まず日本の将来について、少子化をどのように乗り越えていくのか。

 どのような政策を具体的なものを実行しようとしているのか。あるいはその財源はどうなっているのか。あるいは地方においては、地方をどのように活性化させていくのか。これは切実な行為なんだろうと思います」

 見事なまでに誤魔化し極まれり、詭弁満載の論理展開となっている。ウソつきでなければできない言葉の遣いようであろう。

 「政権選択に際してはいわば重要な論点として街頭演説で述べるということは当然であろうと思いますが」と言いつつ、憲法改正での国会の役目は発議だけで、採決は役目としていない、「決めるのは国民投票」だから、国民投票の際にのみ説明責任を負っているかのように誤魔化して、自民党の政策として憲法改正を掲げていながら、選挙戦での争点として掲げないことの正当性を言葉巧みに言い立てている。

 そして「街頭で述べることは、限られた時間の中で、まさにその地域地域の生活に密着したことに対する政策を述べるもの」だと都合のいい話を持ち出して憲法問題に触れなかったことの自身の“選挙戦術”は間違いはないとしている。

 憲法改正のプロセスは憲法改正意思を持つ各党が自党の憲法調査会で改正草案を決めて、衆参の憲法審査会に諮り、過半数で可決、本会議で3分の2以上の賛成で憲法改正は発議される。

 問題は憲法審査会の委員は衆参それぞれの各党の議席数に応じて配分されることである。今回の総選挙で自民党が単独で過半数を超える284議席を獲得、公明党29議席と合わせると、憲法改正の国会発議に必要な3分の2の310議席を3議席上回っている。

 これに自民党補完勢力、憲法改正に前向きな日本の維新の会の11議席を加えると、321議席。

 そして2016年参議院選挙での自公を主体としたいわゆる改憲勢力は165議席、国会発議に必要な参院3分の2の162議席を上回っている。

 当然、憲法審査会の自公を含めた改憲勢力の委員は各党の議席数に応じて配分されることから、自公だけに絞っても優に過半数以上が配分されることになって、憲法改正の自民党案が可決される公算が高い。と言うより、ほぼ決まりとなる。

 安倍晋三のことだから、国民投票を通しやすくするために自民党案に差し障りのない範囲で野党案を申し訳程度に取り入れると言ったことをするかもしれなが、自身の改正意思を反映させた条文はしっかりと押さえてくはずだ。でなければ、虎の子の衆参3分の2以上を獲得している意味を失う。

 と言うことは、このことが結果としての事態であったとしても、国民は今回の総選挙で憲法審査会の委員配分が自公だけで過半数を超えて自民党案を通りやすくする3分の2以上の議席を与えたことになる。

 対して自民党総裁としての、あるいは首相としての安倍晋三からは選挙中に「街頭で述べることは、限られた時間の中で、まさにその地域地域の生活に密着したことに対する政策を述べるもの」だとの口実で憲法問題について十分な説明が為されていなかった。

 ここに意図的な作為が働いていなかっただろうか。2014年12月14日投開票の総選挙では安倍晋三は「アベノミクス解散」と名付け、選挙中はそれを争点として前面に掲げて、憲法解釈による集団的自衛権の行使容認等の安倍晋三安保法制に関してはウラ争点として戦い、自公与党で3分の2以上を獲得した。

 なぜウラ争点にしたかというと、集団的自衛権の行使容認、あるいは安倍政権の安保政策自体が賛成よりも反対が上回って、国民の拒絶反応が強かったからである。

 ところが投開票翌日の記者会見の冒頭で次のように述べている。 

 安倍晋三「今回の総選挙は、アベノミクスを成功させるため、来年の消費税2%さらなる引き上げを1年半延期するという税制上の大きな変更について国民に信を問う解散でありました。いわば『アベノミクス解散』であったと思います」

 但し記者との質疑で次のように安保法制に触れている。

 安倍晋三「先ず安全保障法制についてですが、今回の選挙はアベノミクス解散でもありましたが、7月1日の閣議決定を踏まえた選挙でもありました。そのことも我々、しっかりと公約に明記しています。

 また街頭演説においても、あるいは数多くのテレビの討論会でもその必要性、日本の国土、そして領空、領海を守っていく、国民の命と安全な国民の幸せな暮らしを守っていくための法整備の必要性、閣議決定をもとにした法整備の必要性ですね、集団的自衛権の一部容認を含めた閣議決定に基づく法整備、これを来年の通常国会で行っていく、これを訴えて来たわけです。

 このことにおいてもご支持を頂いた。当然、約束したことを実行していく。これは当然、政党、政権としての使命だと思う。来年の通常国会のしかるべき時に法案を提出していきたい。そして成立を果たしていきたいと考えています」

 「7月1日の閣議決定」とは集団的自衛権行使容認の閣議決定を指す。

 街頭演説での実態は殆どアベノミクスの継続の是非、アベノミクスを以ってしてのデフレからの脱却を終始訴えて、7月1日閣議決定の安保法制に関しては刺身のツマ、申し訳程度にしか訴えなかった。にも関わらず、「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」と題した閣議決定を持ち出して、それを踏まえた選挙だから、国民の信を得たことになるとの文意で狡猾にも正当化を図る。

 この狡猾さはウソつきでなければ発揮できない。

 そして翌年の2015年9月17日、安倍晋三は衆議院に引き続いて参議院でも自公を含めて野党の元気、次世代、改革の3党を合わせた賛成多数の頭数で押し切って安保法制を可決させている。

 2014年総選挙のときの安保法制はウラ争点としてアベノミクスをオモテの争点として圧勝した選挙の構図が、再び言うことになるが、「街頭で述べることは、限られた時間の中で、まさにその地域地域の生活に密着したことに対する政策を述べるもの」だとの口実のもと、憲法問題をウラに隠す戦術で今回の選挙にも引き継がれ、前回同様に圧勝するに至った。

 明らかに意図的な作為に基づいて行われた総選挙遊説中の憲法に関わる話題の回避であり、選挙で自公合わせて3分の2以上の議席を獲得できさえすれば、憲法審査会の賛成可決も可能、本会議に送って賛成成立で発議が可能となると計算した憲法に対する争点隠しであるはずだ。

 争点隠しのために選挙戦中に憲法問題を意図的に取り上げなかったにも関わらず、「街頭で述べることは、限られた時間の中で、まさにその地域地域の生活に密着したことに対する政策を述べるもの」だと平気でウソをつく。

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麻生太郎の自民党圧勝「北朝鮮のお陰」は北の脅威・危険性に対して「左翼」を同類の脅威・危険性扱いし冒涜

2017-10-28 10:45:49 | 政治

 副総理兼財務大臣、天下の麻生太郎が10月26日(2017年)、東京都内での自民党議員のパーティーで「自民党圧勝は北朝鮮のお陰」と発言したと同日付マスコミが一斉に報じた。

 麻生太郎の誹謗中傷失言には慣れっこになっていたから、またかと思った。失言に対して釈明する、このパターンも例の如くで、慣れっこになっている。

 麻生太郎の失言はその意味どおりの「言ってはいけないことをうっかり言う」ということではなく、不適当、あるいは不穏当な間違えた見解が多い。要するに解釈能力が人並みに追いつかない場面を多々見せる。

 先ず10月26日付「NHK NEWS WEB」記事から、その発言を取り上げてみる。    
 
 麻生太郎「(自民党圧勝によって)いわゆる『左翼』という勢力が2割を切ったのは、始まって以来のことが起きたというふうな感じがしている。明らかに北朝鮮のお陰もあるだろうし、色んな方々が色んな意識を持ったんだと思う。特に、日本海側の遊説をしているとつくづくそう思った。

 安全保障の面でも極めて難しい状態になってきた状況にあって誰をリーダーにするのかを有権者に真剣に考えていただいたことが、この結果を招いたんだと思う。その負託に応えるためにも、私たちはしっかり対応していかなければならない」

 もし「北朝鮮のお陰」で左翼勢力が「2割を切った」と言うことなら、自民党圧勝は相対的選択ということになって、安全保障の面から「誰をリーダーにするのか」は主体的選択、あるいは絶対的選択ではないことになって、リーダーの選択を「有権者に真剣に考えていただいた」と言っていることは間違った解釈ということになる。

 より事実に近づけるなら、左翼勢力に1票を投ずるよりも、よりマシな選択として安倍自民党に1票を投じた結果、偶然にも自民党圧勝という現象を招いたと解釈すべきだろう。

 このことは朝日新聞社の10月23、24日両日に実施された、定数3分の2を超える与党の議席数の是非について尋ねた世論調査の結果に現れている。

 「ちょうどよい」32%
 「多すぎる」51%
 「少なすぎる」3%
 「その他・答えない」14%

 安倍晋三は少子高齢化と並べて北朝鮮の脅威・危険性を「国難」と位置づけて衆議院を解散、総選挙に打って出て、選挙に圧勝した。現時点で北朝鮮と言うとき、国家安全保障上の脅威・危険性を属性とした国家と看做す慣例となっている。

 安倍晋三はこの属性(脅威・危険性)によってそのまま「国難」と位置づけることができた。

 麻生太郎は北朝鮮の脅威・危険性を「左翼」と位置づけた野党にも当てはめて同じ脅威・危険性を抱えていると見做す同類扱いをしたのである。だから「北朝鮮のお陰」で「『左翼』という勢力が2割を切った」という解釈を成り立たせることができる。

 麻生太郎が北朝鮮を脅威・危険性を属性とした国家と看做していなければ、あるいは看做していたとしても、日本の左翼勢力が北朝鮮の脅威・危険性とは無縁と見ていたなら、「北朝鮮のお陰」で「『左翼』という勢力が2割を切った」という解釈に繋がることは決してない。

 野党の中で「左翼」と位置づけられる政党であっても、非合法政党ではなく、全て合法政党である。立候補者を立てることができ、投票で必要票数を獲得すれば、国会に議席を得ることができ、5議席以上か、直近の総選挙、直近とその前の参院選挙のいずれかに於いて全国で2パーセント以上の得票を獲得すれば、政党と看做される。

 にも関わらず、麻生太郎は左翼勢力を北朝鮮と同類扱いし、北朝鮮と同じ脅威・危険性を抱えていて、そのことが悪影響して議席を「2割を切った」と発言した。

 では例の如くと言うか、恒例となっている失言の後の釈明発言を10月27日付「NHK NEWS WEB」記事から見てみる。  

 麻生太郎(10月27日に記者団に対して)「国民は北朝鮮からの一連の危機に、どうやったら対応できるのか、いちばん対応できる政権はどの政党の組み合わせかということで選んだということだ」

 10月26日発言の前段部分を省略して後段部分のみを繰返した釈明となっている。但し前段部分を省略することによって、10月27日釈明は有権者が主体的選択、あるいは絶対的選択を経て安倍自民党を圧勝に導いた文意となり、10月26日発言の後段部分の文意とは著しく異なることになる。

 いわば巧みに誤魔化した。

 新聞・テレビのマスコミが伝えている麻生太郎の10月26日発言は一部分を切り取ったたもので、悪意や面白おかしさを狙ってバイアスを掛けている場合が無きにしも非ずだが、挨拶後の全発言を載せているネット記事があったから、参考のために引用してみる。

  【文字起こし】麻生太郎副総理の「北朝鮮のおかげ」発言、前後を含めた書き起こしTBSラジオ「荻上チキ・Session-22」/2017.10.28 土曜日02:24 )  
麻生太郎副総理兼財務相が10月26日、東京都内での自民党議員のパーティーで、衆院選での自民党の圧勝について「明らかに北朝鮮のおかげもある」などと発言したことについて、前後の文脈も含めて書き起こしました。

==

(あいさつの後)

22日におこなわれました衆議院の選挙で、自由民主党は284議席というのを頂戴しましたが、われわれ衆議院の方は10議席、465議席に議席が減っていおりまして、その減った分はほとんど自由民主党だけが10議席減ったみたいなところだったもんですから、そういった意味では274で普通なところが、引き続き284という議席をいただきましたんで、いわゆる議場の占有率から言ったら前より遥かに良くなったことを意味しておると思って、大変私ども喜んでおります。

また、昭和30年に自由民主党が、時の民主党と自由党と一緒になって自由民主党が、社会党左派と右派が一緒になって日本社会党というのができたんですが、あれ以来、今日まで60数年経ちますが、少なくとも社会党・共産党等々のいわゆる左翼という勢力が3割を切ったなどという歴史はこれまで一回もありません。

今回はいわゆるまあ共産党と、まあ立憲だが護憲だか知りませんけれども、あの政党が左翼だという前提に立って計算しても66、社会党が2議席で69ですか。465分の69ということはパーセントでいけば、17%くらいということになりましょうか。したがって、2割を切ったなどというのは、これはもう始まって以来のことが起きたんだというように、私はあの数字を見てるとそんな感じがしております。

明らかに北朝鮮のおかげもありましょうし、いろいろな方々がいろんな意識をお持ちになられたんだと思って、特に日本海側の遊説をしていると、つくづくそう思って、声をかけられる話が、そういう声をかけられるのが凄い多かったのが、遊説をしていた私どもの正直な実感です。

いずれにしても、大きく私どもの時代というものが、独立この方、かなりの時間が経ちますけども、最もなんとなく、前の安全保障の面でも極めて難しい状態になってきたという状況にあって、誰をリーダーにするかというのを有権者の方々で真剣に考えていただいた結果が、今日の結果を招いたと思っていますが、その負託に応えるためにも、私どもきっちり、その対応をやっていかねばならんと思っています。

いずれにしても、これまで自由民主党、衆参で過半数、衆参で2/3、そういったことをきちんと持てるようになって、はじめて政権が安定する。政権の安定が結果として、政治というか、経済の安定、経済政策の安定、経済政策の持続的な安定というのが確保でき、結果としてその期待があって、自由民主党がどうやら勝ちそうだとなった途端に、株価は14日間連続で、20日まででしたかね。14日間連続で株価が上がってったんだと思っております。是非とも、いろんな意味で時代に応えるべく、そういった数字に、期待されている数字に応えねばならないのが我々の責任だと思っていますので、衆参で手を合わせて頑張って参りたいと思っていますので、今後とも、よろしくお願い申し上げてご挨拶にかえさせてもらいます。ありがとうございました。

 上記文言から左翼を北朝鮮と関連付けた発言のみを取り出してみる。

 今回はいわゆるまあ共産党と、まあ立憲だが護憲だか知りませんけれども、あの政党が左翼だという前提に立って計算しても66、社会党が2議席で69ですか。465分の69ということはパーセントでいけば、17%くらいということになりましょうか。したがって、2割を切ったなどというのは、これはもう始まって以来のことが起きたんだというように、私はあの数字を見てるとそんな感じがしております。

明らかに北朝鮮のおかげもありましょうし、いろいろな方々がいろんな意識をお持ちになられたんだと思って、特に日本海側の遊説をしていると、つくづくそう思って、声をかけられる話が、そういう声をかけられるのが凄い多かったのが、遊説をしていた私どもの正直な実感です。

 最初の「NHK NEWS WEB」記事が取り上げた麻生発言は一部分を切り取り、ある程度要約しているが、何らバイアスがかかっていないことが分かる。

 麻生太郎は共産党と立憲民主党、そして社民に対してそれらが合法政党であるにも関わらず北朝鮮と同じ脅威と危険性を抱えた「左翼」に貶める同類扱いの冒涜を働いたのである。

 合法政党に対するこのような冒涜が一国会議員の発言であったとしても許されるはずはなく、ましてや副総理兼財務大臣の重職を任され、国家運営の一翼を担っている国会議員が働いた冒涜であるならば、たちまちその資格を失うはずである。

 単に副総理兼財務大臣の辞任ではなく、議員辞職に相当する重大な罪を犯したと指弾できる。

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安倍晋三加計疑惑:加戸守行「12年間加計ありき」発言とWG議事要旨から加計学園関係者発言抹消の関係

2017-10-27 13:10:10 | Weblog

 加計学園獣医学部新設認可に学園理事長の加計孝太郎と30年来の腹心の友である安倍晋三の政治的関与があったのではないかとの疑惑が持ち上がっているが、加戸守行前愛媛県知事が参考人招致の国会答弁で「12年間加計ありきだった」と答弁していながら、国家戦略特区諮問会議の議事録にも国家戦略特区ワーキンググループ議事録にも「加計」の名前が、加計学園が新設獣医学部の事業主体に決まるまで一言も出てこなかった奇妙な事実を改めて考えてみることにした。

 安倍晋三が国家戦略特区を利用した加計学園獣医学部新設認可に対する安倍晋三自身の政治的関与疑惑の否定に用いる理屈はほぼ次のとおりと決まっている。

 「2017年10月8日8党党首討論会」日本記者クラブ)   

 志位和夫共産党委員長「冒頭解散を強行した理由はただ一つ、森友・加計疑惑隠し、これ以外にないではないですか。そうでないと言うんだったら、冒頭解散の理由をはっきり説明していただきたい」

 安倍晋三「まず、いわゆる森友問題、そして獣医学部の新設の問題についてでありますが、私もこれまで予算委員会や閉会中審査において丁寧に説明を重ねてまいりました。一部説明の足りない点、あるいは姿勢については反省すべき点はあると思いますが、ただ、委員会の中で明らかになったことは、前川さんも含めて、私から言われた、あるいは私が関与したと言った方は一人もいないということは、明らかになっています。

 また、民間議員の八田(達夫)委員も初め、原(英史)さんもそうなんですが、民間議員の皆さんは口をそろえて、一点の曇りもないということは明確にされています。

 また、愛媛県の加戸知事は、ずうっとこの問題に取り組んでこられた。門をあけようと頑張ってきた方でありますが、行政が歪められたのではなく、歪められた行政が正された、こう言っておられます。

 あの予算委員会を全部ご覧になった方、全部ご覧になった方は、かなり納得をしていただいたのではないか。この報道されなかった部分も含めて、ご覧になった方々はかなり納得されたのではないかと思います」(文職は当方)

 

 《第48回衆議院総選挙の結果をうけて 安倍総裁記者会見質疑》logmi/2017年10月23日)   

 記者「幹事社、西日本新聞のイトウと申します。森友学園問題や加計学園問題についておうかがいします。
 野党は先の臨時国会冒頭での開催について、『森友・加計隠し』と批判してきました。今回の衆議院選挙の結果は、森友・加計学園問題についてすでに十分に説明し、国民から理解を得られたからだと受け止められているんでしょうか。

 また各種世論調査では、内閣支持率はなお下回っています。この状況にどう向き合っていくお考えでしょうか。

 安倍晋三「この問題については、私の予算委員会、あるいは閉会中審査において、相当時間をかけて、また丁寧に質問にお答えをさせていただきました。そのなかにおいて、前川(喜平)前次官も含めて、私から依頼された、また支持を受けたという方は1人もいなかったということが明確に明らかになりました。

 そしてまた、特区のプロセスを進めてこられた民間議員のみなさまは、「プロセスには一点の曇りもない」と述べておられました。

 また、ずっとこの獣医学部の新設に信念を持って努力をされてきた、ドアを叩き続けてこられた加戸(守行)前愛媛県知事は、行政が歪められたのではなく、歪められた行政を正したのであると明確に述べておられました。

 こうした、あまり報道されなかった部分も含め、公開審議をすべてご覧になった方には、かなりご理解をいただけたものと思っております」(文飾当方)

 安倍晋三が「委員会の中で明らかになったことは、前川さんも含めて、私から言われた、あるいは私が関与したと言った方は一人もいないということは、明らかになっています」と言っていることは2017年10月9日の当「ブログ」に書いたが、親分が表に出ないで、いわば陰に隠れていて、表の仕事は子分にやらせると言った悪事の構図、あるいは役割の構図はこの世の中にいくらでも存在する。 

 2017年7月24日午前衆院予算委員会閉会中審査

 前川喜平前文部科学事務次官「この今治市における加計学園の獣医学部の新設の問題につきましては、文部科学省は基本的には内閣府からさまざまな指示を受けていたということでございますので、その結果はペーパーに残っておりまして、その中に、官邸の最高レベルの言っていること、あるいは、総理の御意向と聞いている、こういう文言があることは御承知のとおりでございます。

 私は、これは事実であるというふうに思っておりますし、そのように恐らくは内閣府の藤原当時の審議官がおっしゃったのであろう。その先のことは、これはわかりません。藤原さんが誰からそれを聞いたのか、それはわかりません。

 私自身は、総理から直接伺ってはおりませんが、しかし、9月9日と記憶しておりますけれども、和泉総理補佐官から、国家戦略特区における獣医学部の新設について文部科学省の対応を早く進めろ、こういう指示をいただきまして、その際に、総理は自分の口からは言えないから代わって私が言うんだ、こういうお話がございました。これにつきましては、私は、総理は御自身では言えないのだというふうに思いましたので、そのことについて総理にお伺いするということは考えてもみなかったわけであります」(文飾は当方)

 勿論、総理補佐官の和泉洋人はそんなことは言っていないと否定している。だが、前川喜平前事務次官が紹介した和泉洋人の「総理は自分の口からは言えないから代わって私が言うんだ」という言葉からは、安倍晋三を親分に譬えると、親分が表に出ないで、いわば陰に隠れていて、表の仕事は和泉洋人や萩生田光一といった子分にやらせる悪事の構図、あるいは役割の構図の究極の姿と見て取ることができる。

 もしこのような悪事の構図、あるいは役割の構図のもとに安倍晋三の政治的関与が密かに進められたとしら、安倍晋三が「委員会の中で明らかになったことは、前川さんも含めて、私から言われた、あるいは私が関与したと言った方は一人もいないということは、明らかになっています」とどのくらい声をからして何度言おうと、政治関与ゼロの証明にはならないということである。

 大体が安倍晋三が行政を歪める不正行為を表に出て正々堂々とやらかすはずはない。息のかかった忠実な子分に命じて実行させるというのは相場が決まっている。

 また安倍晋三は加戸守行前愛媛県知事の閉会中審査の発言を利用して、「愛媛県の加戸知事は、ずうっとこの問題に取り組んでこられた。門をあけようと頑張ってきた方でありますが、行政が歪められたのではなく、歪められた行政が正された、こう言っておられます」と、このことを以って自身の無罪の証明に何度となく使っているが、加戸守行も安倍晋三を親分とした悪党集団の一味と見ると、少なくとも安倍晋三側に立つ人物となっている以上、この発言を額面通りに受け止めることはできない。

 加戸守行の2017年7月10日の参議院閉会中審査での発言。

 加戸守行「加計ありき、加計ありきと言われますけど、12年前から声を掛けてくれたのは加計学園だけであります。私の方からも東京の有力な私学に声を掛けました、来ていただけませんかと。けんもほろろでした。

 結局、愛媛県にとっては、12年間、加計ありきで参りました。今更、1年、2年の間の加計ありきじゃないんです。それは、愛媛県の思いがこの加計学園の獣医学部に積もっているからでもあります」

 加戸守行は現在今治商工会議所特別顧問をしていて、2016年9月21日の「第1回今治市特区分科会」に民間事業者として出席、《獣医師養成系大学・学部の新設について》なる「資料4」を提出している。  

 「資料4」には、「1、獣医師養成系大学・学部の新設についての背景」、「世界に冠たる先端ライフサイエンス研究を行う国際教育拠点」云々等々の「2、新設する大学・学部の目指す基本コンセプトの趣旨」、「3、既存の大学・学部との関係」、そして最後に「4、近年の獣医師に関する需給バランス (試算)」が取り上げられている。

 問題になるのは3の「既存の大学・学部との関係」の項目にあるから、その説明を記載してみる。

 〈・既存の大学・学部では、一律の教育(コアカリキュラム)が主であり、上記1にあるような新たな分野への対応(アドバンス教育)は、専門教員の不足もあり、十分な取組がなされているとは言えない。

 ・ 具体的には、大学基準協会の獣医学教育に関する基準(改定案)によれば、学生入学定員数を30~120人とした場合、アドバンス教育まで含めた場合の必要な専任教員数は、68~77人以上とされているが、ほとんどの大学では十分でない。〉

 この「3、既存の大学・学部との関係」についての分科会での加戸守行の説明を見てみる。内閣府特命担当相の山本幸三が分科会の議長、内閣府地方創生推進事務局審議官の藤原豊が進行役として出席している。

 加戸守行「次に、3でありますが、『既存の大学・学部との関係』についてであります。

 既存の獣医師大学・学部では、コアカリキュラムが主でありまして、人獣共通感染症や越境国際感染症、あるいは食の安全などの新たな分野への対応は、専門教員の不足ということもありまして、十分な取り組みがなされているとは言えない状況にあります。

 今回構想しております新設の獣医大学・学部では、新たな分野に応えるアドバンス教育を実施するため、必要な教員数を確保することが必要であると考えております」

 これだけの説明である。

 終わに次のように発言している。

 加戸守行「最後に、今治市あるいは愛媛県におきましては、経済界を挙げて獣医学部新設の実現を強く期待しております。

 以上であります」

 山本幸三も藤原豊も、加戸守行の説明に対して何も質問はしていない。民間有識者として出席している アジア成長研究所所長の安倍晋三ベッタリの八田達夫の「資料4」に関する発言を取り上げてみる。

 八田達夫「ご提案のもともとの趣旨は、加戸特別顧問が御説明になりました。そのときに用いられた資料4のお話というのは、実に説得的だったと思います。物事を提案するときにはこうしなければいけないというモデルのようなものでした。

 まず、現在ではライフサイエンス研究において、獣医学部というものが人間の医学に関しても非常に役に立つという新しい状況になった。しかし、それにもかかわらず日本の獣医学部は国際水準に到達していないので、その研究水準を高める必要がある。

 もう一つは、地元の感染症に関する危機管理の人材を育てる必要もある。西日本ではこの人材の要請が極端に不足しているのだから、西日本でこういうことをやらなければいけない。これは非の打ちどころのない御説明だったと思います。私はこれはぜひ推進していくべきだと思っております」

 加戸守行の「資料4」の説明を「実に説得的だった」とヨイショしている。

 「既存の大学・学部との関係」で、「新たな分野への対応(アドバンス教育)は、専門教員の不足もあり、十分な取組がなされているとは言えない」、「学生入学定員数を30~120人とした場合、アドバンス教育まで含めた場合の必要な専任教員数は、68~77人以上とされているが、ほとんどの大学では十分でない」と資料で既存の大学・学部の不足を指摘している以上、新設を目指している獣医学部はアドバンス教育に関してはどのようなカリキュラムを設ける方針でいるのか、何人ぐらいの専任教員数の確保を目指し、その目途を立たせることができるのか等々、不足を補って既存の大学・学部よりも教員や施設の規模・教育内容共に優れているとすることのできる比較を後に持ってこなければ、獣医学部新設要請の説得力ある説明とはならないはずだ。

 にも関わらず、この程度の説明を安倍ベッタリの八田達夫は「実に説得的だった」とヨイショし、 加戸守行は「12年間、加計ありきで参りました」と発言している以上、「既存の大学・学部との関係」、いわば既存の大学・学部との比較は頭の中に加計学園を置いているはずだし、置いていなければ、既存の大学・学部の不足に言及する比較はできないはずだが、加計学園の一言も発していない。

 対して山本幸三にしても内閣府審議官の藤原豊にしても、加戸守行が既存の大学・学部の不足を指摘している以上、頭に想定していなければならない新設の獣医学部がどのような獣医学部なのか、事業主体は何者なのか、一言も聞かずに既存の大学・学部との比較だけの説明で終わらせている。

 もう一つ、2017年8月6日付「朝日デジタル」が2015年6月5日開催の政府の国家戦略特区ワーキンググループ(WG・座長八田達夫)で獣医学部の新設提案について愛媛県と同県今治市からヒアリングした際、加計学園幹部が出席していたにも関わらず、名前も発言も議事録に記載されていないと報道、その報道に対して八田達夫が敏感に反応、同じ2017年8月6日付で、「国家戦略特区WG」(平成27年6月5日)の議事要旨について」と題して、〈今治市が独自の判断で、説明補助のために加計学園関係者(3名)を同席させたが、特区WGの提案ヒアリングでは、通常こうした説明補助者は参加者と扱っておらず、説明補助者名を議事要旨に記載したり、公式な発言を認めることはない〉と、議事要旨に加計学園関係者の発言を記載しなかったことの正当性を謀っているが、付け加えられている次の一文がその正当性を怪しくする。         

 〈その後、今治市が国家戦略特区に指定され、提案が実現したことから、議論経過をできる限りオープンにすべきと私が考え、提案主体とも再度協議し、本年3月6日に議事要旨を公開しました。その際、当初は非公開を前提としていた経緯も踏まえ、公開する内容を調整しました。〉

 2015年6月5日の「国家戦略特区ワーキンググループ」の議事要旨を2017年3月6日に公開した。この1年9カ月後というのは何を意味するのだろうか。

 考えられることは加計学園の関係者の出席と発言をそのまま議事要旨に載せることは不都合と考えて、議事要旨自体を非公表とする予定でいたが、非公表に対する批判を恐れて加計学園関係者を議事要旨に記載したり、公式な発言を認めることはないと決めることにした「説明補助者」に仕立てて公開することにしたということであろう。

 なぜなら、獣医学部新設の認可を巡る国家戦略特区諮問会議と付随するワーキンググループの議論である。国家戦略特区は自治体指定であったとしても、自治体が新設獣医学部の事業主体として名乗り出ていない以上、民間という立場であっても、獣医学部の事業主体そのものを「説明補助者」と位置づけること自体が矛盾する。

 愛媛県や今治市自体を説明補助者と位置づけるなら、十分に納得ができる。愛媛県や今治市は補助金や学校建設用地等を提供するだけで、主体はあくまでも加計学園である。

 加戸守行が「12年間加計ありき」でありながら、新設の獣医学部がどのような獣医学部なのか、事業主体は何者なのか、一言も加計学園の名前を言わずに既存の大学・学部との比較だけの説明で終わらせていることと加計学園関係者を説明補助者と位置づけること自体に無理がありながら、説明補助者と位置づけて、出席したワーキンググループの議事要旨からその名前と発言を記載していなかったことと考え併せると、加計学園の名前を隠す必要からの確信犯行為でなければならない。

 安倍晋三を親分とした悪党集団が親分自身は陰に隠れて、忠実な子分に表の仕事をさせて加計学園獣医学部新設認可を実現させた政治的関与の悪事の構図、あるいは役割の構図だったからこそ、加計学園の名前を出すことができなかった。

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安倍晋三の「民主党政権3年間で揺らぎ、自政権でかつてない程強固にした」日米同盟は国民無視・米国支配下

2017-10-26 11:13:45 | 政治

 2017年10月11日午後5時15分半頃、米軍の大型輸送ヘリコプターCH53が沖縄県東村(ひがしそん)高江の基地外牧草地に不時着し、炎上、大破した。

 CH53は垂直離着陸輸送機オスプレイなどと共に米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)に配備されていて、2004年8月には米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)近くの沖縄国際大学に墜落する事故を起こしている。

 全長約30メートル、高さ約9メートルだそうだが、ビル1階の高さが2.5mから3メートル。3メートルとして、高さ10階のビルを横にして高さ3階のビルを縦にした相当な大きさの金属物体が地上に不時着して炎上したことになる。
  
 防衛相の小野寺五典は「米海兵隊所属のCH53が着陸した際に火を噴いた」と説明したとマスコミは伝えている。

 米軍は翌10月12日朝から規制線を二重に張り、調査に入った。但し日米地位協定の関連規定では米軍の同意なく米軍の「財産」の捜索や押収はできないということだから、日本側の調査は米軍の同意次第と言うことになる。

 同意のない米側の一方的な調査・説明のみでは、それが果たして事実その通りなのか、いつまでも疑惑を付き纏わせることになる。

 同10月12日、在沖縄米軍トップのニコルソン沖縄地域調整官が沖縄県内にある同型機の運用を96時間(4日間)停止するよう指示した。

 同じ10月12日、小野寺五典はシュローティ在日米軍副司令官と会談している。会談後の小野寺五典の説明。

 小野寺五典「(停止期間は)安全確認できるまでの間ということでいいか」

 シュローティ在日米軍副司令官「その通りだ」(共同通信47NEWS

 小野寺五典は米側に対してニコルソン沖縄地域調整官の同型機運用96時間(4日間)停止指示を撤回させ、原因究明と安全性確認を優先させたことになる。

 10月13日午前、防衛省で対記者団に。

 小野寺五典「期間をあらかじめ設定することなく、事故の原因と安全が確認されるまで運用が停止されることが必要だ。期限が来たから自動的に運用停止が解除されたり、おざなりの調査をするということがないようにしっかり対応していきたい。

 沖縄国際大学の事故のときにも、放射性のストロンチウムが機体のローターの部分に使われているということがあった」(NHK NEWS WEB
 
 期限を設けない事故原因調査と放射性物質を含めた環境調査の徹底をアメリカ側に求めていく考えを示したものだと記事は解説している。要するにどれ程に期間がかかろうと、原因究明と究明に応じた安全性の確認が先で、運行停止の解除はその後になるとシュローティ在日米軍副司令官との会談で取り決めたとおりに対応することを約束した。

 10月17日の「記者会見」防衛省) 

 記者「沖縄のヘリの事故に関しては、何か新しい報告とかはありましたか」

 小野寺五典「昨日も、初歩的な調査をしっかりとしているという報告を受けておりますし、その内容については、現地に派遣した専門的知見を持つ自衛官が情報共有をして、そしてその内容を把握しております。現在のところ、調査が終わって、また、CH-53が飛行を再開するというような情報は入っておりません」

 小野寺五典の「現在のところ、調査が終わって、また、CH-53が飛行を再開するというような情報は入っておりません」の発言は手順を一つ省いている。調査という手順のあとに原因究明と安全性確認を併せた報告の手順が入っていなければならない。その手順を抜いたまま、飛行再開の手順となっているかのような発言となっている。

 意図的に中間手順を省いたのか、あるいは気づかないままに発言したのか。前者だとしたら、米軍側から中間手順を省いた飛行再開を前以って知らされていた疑いが出てくる。

 ところが在日米海兵隊(司令部・沖縄)は小野寺五典の記者会見と同じ10月17日に「専門家が整備記録を調査した結果、問題点は確認されず、運用上の懸念はない」との声明を発表。(産経ニュース/2017.10.18 23:39)      

 但し具体的な原因などには触れずに10月18日に飛行を再開するとしたと言う。記事は、〈小野寺五典防衛相は同日、防衛省で記者団に「十分な説明がなされていない」として遺憾の意を表明し、引き続き情報提供を求める考えを示した。〉と解説している。

 最初の同型機運用96時間(4日間)停止指示よりも3日間長い事故から7日目の10月18日に在日米海兵隊は声明通りに飛行を再開した。

 小野寺五典が10月12日の会談でシュローティ在日米軍副司令官に期限を設けない原因究明と安全性確認優先を認めさせたが、それがいとも簡単に無効にさせられたと言うことは、あるいは相手側が認めると見せ掛けて形式的に応じただけであったとしても、小野寺五典自身か日本側に自分たちの希望を米側に認めさせるだけの力がなかったことことを意味する。

 自分たちの希望とは日本政府の希望だけではなく、日本国民、特に沖縄県民の希望でもあるはずだ。

 小野寺五典は米側の飛行再開が「十分な説明がなされていない」ものだとしているが、10月17日の防衛省での記者会見で米側の原因調査と飛行再開の中間に相手側からの原因究明と安全性確認を併せた報告提出の手順を省いた発言をしていることと関連付けると、小野寺五典は米側から報告書なしの飛行再開を前以って知らされていた疑いが出てくる。

 飛行再開翌日10月19日の防衛省での記者会見       

 記者「米軍ヘリの飛行再開についてですが、その後、日本政府として求めた説明について何らかの回答はあったのでしょうか」

 小野寺五典「:昨日、現地に派遣しています専門的知見を有する自衛隊員から、今回の事故に関しての情報提供について、特にこちらから知りたい内容について米側には伝えてあります。現在、米側で準備をされていると聞いておりますが、まだ明確なそのことに対しての情報を共有しているという状況ではありませんが、引き続き、情報提供を求めているというふうに報告を受けております」

 知りたい情報の提供を申し出ているが、米側は情報提供の準備をしている段階で、提供にまで至っていないから、引き続いて提供を求めているという報告を受けていると回答している。

 10月20日防衛省での記者会見    

 記者「米軍のヘリの飛行再開した件でありますけれど、米側に対して情報提供を求めて行くということでしたけれど、その後、米側からの回答はいかがでしょうか」

 小野寺五典「一昨日、米側にこちらからの追加的な情報提供についての要請を行いました。昨日までの間で情報提供の米側の報告はありませんが、引き続き米側からの報告を求めて行きたいと思っております」

 情報提供についての米側の報告がないままにヘリの飛行が行われ、既成事実化されている。小野寺は「引き続き米側からの報告を求めて行きたいと思っております」と言っているが、ヘリ飛行が既成事実化している以上、一般的には原因究明と安全性確認の報告提供が後付けで飛行が先というあり得ない話を有り得る話にしようとする無理がある。

 同10月20日、アメリカ軍に捜査への協力を求めていた沖縄県警察本部が航空危険行為処罰法違反の疑いで米軍が機体の残骸を殆ど撤去した後の現場検証を行ったと10月20日付「NHK NEWS WEB」記事が伝えている。 

 死体が何者かに持ち去られて凶器も見つからない殺人現場で刃物で刺されたのか、首を絞められたのか、鈍器で頭を殴られたのか、殺害方法を特定しようとするような現場検証に過ぎない。

 10月21日と10月22日は防衛省での記者会見はなかったのか、記載はなく、10月23日午後4時過ぎの記者会見  

 記者「話題としては、米軍ヘリCH-53の飛行再開の話もあったのでしょうか」

 小野寺五典「沖縄におけるCH-53Eの事故に関しては、マティス長官の方から、飛行の安全についてしっかり対応するという発言がありました。私からは地元に不安を与えていることを踏まえ、在日米軍の安定的な駐留を確保する観点から、安全性に関する地元への説明について米側の協力を求め、さらに安全な運用を心掛けるようお伝えをさせていただきました」

 原因究明と安全性確認の報告提供が後付けで飛行が先という一般的には考えられない状況は何も変わっていない。と言うよりも、小野寺五典は一般的には考えられない状況をそのまま受容している。

 この受容は米側の遣り方に対する無条件の従属に当たる。

 同10月23日午後7時半過ぎからの防衛省の記者会見ではヘリの話題は無し。翌10月24日の記者会見でもヘリの話題は無い。記者会見の記載は以上となっている。

 今日は10月26日、10月11日のヘリ事故から15日、半月経過している。米軍側から原因究明と安全性確認の報告の提供を受けたというマスコミ報道はない。どうもこのまま放置される雰囲気となっている。

 放置された場合、日本側は米側に無視される存在、無力の存在に貶められていることになる。米側から言うと、日本は無視する存在、無力の存在として扱っていることになる。

 2012年9月26日の自民党総裁選に先立つ9月14日の所見発表演説会で安倍晋三は次のように述べている。 

 安倍晋三「民主党政権の3年間で揺らいだ日米同盟関係を、再び強固にしなければなりません。日本は信頼を取り戻し確固たる日米同盟を築くため、集団的自衛権の行使を認める憲法解釈に変更する必要があります」

 2013年2月28日の安倍晋三施政方針演説

 安倍晋三「私の外交は、『戦略的な外交』、『普遍的価値を重視する外交』、そして国益を守る『主張する外交』が基本です。傷ついた日本外交を立て直し、世界における確固とした立ち位置を明確にしていきます。

 その基軸となるのは、やはり日米同盟です。

 開かれた海の下、世界最大の海洋国家である米国と、アジア最大の海洋民主主義国家である日本とが、パートナーを成すのは理の当然であり、不断の強化が必要です。

 先日のオバマ大統領との会談により、緊密な日米同盟は完全に復活いたしました。政治、経済、安全保障だけではなく、アジア・太平洋地域、更には国際社会共通の課題に至るまで、同じ戦略意識を持ち、同じ目的を共有していることを確認したのであります。緊密な日米同盟の復活を内外に示し、世界の平和と安定のために、日米が手を携えて協力していくことを鮮明にすることができました」

 「民主党政権の3年間で揺らいだ日米同盟関係」は2月22日のホワイトハウスでのオバマとの首脳会談によって「完全に復活いたしました」と高らかに宣言。

 首相官邸サイト記載の2014年年7月19日の長州「正論」懇話会講演での発言。   

 安倍晋三「さて私はこれまでに22回、月1回以上のペースで海外に出かけました。既に42カ国を訪問しました。これは、結構くたびれることもあるんですが、大切な仕事だと思っています。後、半月後にはこれが47になります。まさに地球儀を俯瞰する外交を展開してきました。

 今年4月にはオバマ大統領が来日しました。民主党政権で崩れかけた日米関係は復活するどころか、かつてない程強固になったと確信しています」――

 さらにさらに、「民主党政権で崩れかけた日米関係は復活するどころか、かつてない程強固になったと確信」――

 だが、今回の2017年10月11日の米軍の大型輸送ヘリコプターCH53の沖縄県東村での不時着、炎上、大破に対して日本側が置かれている何も物申すことができない状況は、既に触れたが、日本側が米側に無視される存在、無力の存在に貶められているに等しく、米国支配下の日米関係、あるいは米国支配下の日米同盟を強固にしたとしか見えない。

 米軍が10月18日に飛行を再開させたことについての翁長沖縄県知事の発言。

 翁長沖縄県知事「もう言葉がないくらい私たちは数十回、数百回、抗議してきたが、日米地位協定の中で日本には当事者能力がない。

 沖縄県はこうした状況をずっと強いられており、抗議を繰り返しても受け止めてくれる人がおらず、むなしい結果だ」(NHK NEWS WEB/2017年 14時23分)

 「当事者能力がない」から、無視される存在、無力の存在に貶められことになる。この当事者能力ゼロは米側の日本政府無視だけのことではなく、日本政府の日本国民無視、沖縄県民無視を骨組みとしていることを忘れてはならない。
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安倍晋三の今回総選挙の狙い:森友・加計疑惑等で剥げ落ちた「国民の信任」を一旦リセットする必要があった

2017-10-25 10:22:28 | 政治

 2017年10月22日投開票総選挙の圧勝を受けて、安倍晋三が自民党総裁として翌10月23日自民党本部で記者会見を開いた。自民党サイトからs冒頭発言の全文を挙げてみる。

 記者との質疑が記載されていないのは一種の情報隠蔽に当たる。質疑の模様は「logumi」が載せている。
    
 文飾は当方。

 《第48回衆議院総選挙の結果をうけて 安倍総裁記者会見》(自民党/2017年10月23日)
    
冒頭発言

 まず冒頭、台風21号により被害を受けた皆様に、お見舞いを申し上げます。いまだ北上を続けており、政府としては、引き続き、災害応急対策に万全を期してまいります。
 我が党が政権を奪還してから5年が経ち、国民の皆様から大変厳しい視線が注がれる中、このたび、解散総選挙に臨みました。

 厳しい戦いとなることは、もとより覚悟の上でありましたが、困難な課題に挑戦するためには、国民の皆様からしっかりと信任を得なければならない。その決意のもとに、「自民党・公明党の連立与党で過半数」を目指し、全国各地で私たちの政策を訴えてまいりました。

 結果として、目標を大きく上回る、力強い御支持を、国民の皆様から頂くことができました。

 連立与党の議席は3分の2を超え、自民党単独でも、絶対安定多数を大きく上回り、今回、衆議院定数が10削減された中にあって、前回同様、280を超える議席を頂きました。

 「安定した政治基盤のもとで、これからも政治を前に進めよ!」と、国民の皆様から力強く背中を押して頂いたことに、本当に感謝申し上げます。

そして、悪天候のもと、足元の大変悪い中で、私たちを応援してくださり、投票所に足を運んでくださった皆様に、厚く御礼を申し上げます。

 5年前、3年前に続き、三度(みたび)、私たちは、国民の皆さんから政権を託して頂きました。

 総選挙において、我が党が、3回連続で、過半数の議席を頂いたのは、ほぼ半世紀ぶり。同じ総裁のもとで、3回続けて勝利を得たのは、立党以来60年余りの歴史の中で、初めてのことであります。

 であるからこそ、謙虚に、政策を進めていかなければならない。本当に身の引き締まる思いであります。私自身、その責任の重さを、深く噛みしめております。

 先ほど、公明党の山口代表と、連立合意に署名いたしました。

 今後とも、自民党と公明党の強固な連立の下で、安定した経済政策、外交・安全保障政策を進めていく。この選挙戦でお約束した政策を、一つひとつ実行し、結果を出してまいります。

 我が国の持続的な成長のカギは、少子高齢化への対応です。アベノミクス最大の挑戦であります。

 「生産性革命」によって、全国津々浦々に至るまで、賃上げの勢いを更に力強いものとすることで、デフレ脱却を目指す。

 そして、「人づくり革命」を進めていく。幼児教育の無償化を一気に進め、真に必要とする子どもたちには、高等教育を無償化していきます。

 消費税の使い道を見直し、子育て世代、子どもたちに大胆に投資することで、社会保障制度を、お年寄りも若者も安心できる「全世代型」の制度へと、大きく改革してまいります。

 少子高齢化が急速に進む今、私たちに立ち止まっている余裕などありません。年内に政策パッケージを策定し、可能なものから、速やかに実行に移してまいります。

 緊迫する北朝鮮情勢に対しても、国民の皆様から頂いた信任を背景に、力強い外交を展開します。

 来月5日に、トランプ大統領が来日します。本日もさっそく、お電話をいただきましたが、日本にお越しになった時には、北朝鮮情勢についても、たっぷりと時間をかけて協議を行い、緊密な連携を確認したいと思います。

 その後は、APEC、東アジアサミット。世界のリーダー達が集う、この場を利用して、ロシアのプーチン大統領や、中国の習近平国家主席とも、この問題について議論をしたいと考えています。

 毅然とした強い外交力によって、北朝鮮の核・ミサイルの問題、そして拉致問題を解決する。北朝鮮にその政策を変更させるため、国際社会との連帯を一層強めてまいります。

 そして、いかなる事態にあっても、国民の命と平和な暮らしを守り抜いていく。その決意を新たにしております。

 少子高齢化、緊迫する北朝鮮情勢。まさに「国難」とも呼ぶべき事態に対し、総理大臣として、この国の舵取りを担う重責を、全うしてまいります。

 今回の選挙で国民の皆様から頂いた、力強いご支持を背に、私は、国民の皆様とともに、ぶれることなく、まっすぐに、政治を前に進め、しっかりと結果を出す覚悟であります。

 改めて、私たち自民党・公明党の連立与党に、3度目となる、安定した政治基盤を与えて下さった国民の皆様に感謝申し上げます。

 同時に、今後、国民の皆様から、私たちに対して、より一層厳しい眼差しが注がれる。そのことを、すべての与党議員が、強く意識しなければなりません。

 今まで以上に、謙虚な姿勢で、そして真摯な政権運営に、全力を尽くさなければならない。そう考えております。

 2009年、私たちは野党に転落しました。

 あの時は、本当に厳しい時代でありました。ここにいる同僚議員も含めて、あの時代を共にした、すべての自民党議員の胸に深く刻まれていると思います。

 私たちは、有権者の皆さんの声に耳を傾けるところから、スタートしました。「国民が何を望んでいるか」に真摯に向き合い、党内で大いに議論し、政策を磨き上げてきました。

 その政策を、ひたむきに、誠実に訴えることで、国民の皆様からお力を頂き、再び政権を取り戻すことができました。そして、その政策を、この5年間、ひたすらに実行することによって、一つひとつ結果を出してまいりました。

 我が国の未来を拓くことができるのは、人々の耳目をひくようなパフォーマンスではありません。耳触りがいいスローガンでもありません。政策です。政策の実行です。

 あの5年前の政権奪還の時の、初心を決して忘れることなく、自民党が一丸となって、そして、友党・公明党とスクラムを組んで、これからも、すべては国民の負託に応えるため、ひたすらに、政策の実行に邁進していく。その決意であります。

 私からは、以上です。

 お分かりのように「信任」という言葉は直接的には2回しか使っていないが、2回目の「信任」という言葉とその他の文飾を施した箇所は全て“信任を得た”という意味を持たせている。

 要するに「信任を得た」「信任を得た」と7回も繰返していることになる。

 このことは7回も繰返して「国民の信任」を得たことを宣言して、その「国民の信任」を以ってこれからの政治を推し進める力にしようとしていることを意味する。

 但し一度手に入れた安倍晋三に対する「国民の信任」が剥げ落ちることなく継続性を持ち得ていたなら、今回の選挙でも圧勝イコール絶大な「国民の信任」と当然視することができることになって、7回も繰返して「信任を得た」といった趣旨のことを発信しなくても済んだだろう。

 と言うことは、「信任を得た」と7回も発信せざるを得なかった裏を返すと、既に「国民の信任」が剥げ落ちた状況になっていて、その剥げ落ちた「国民の信任」を一旦リセットする必要があり、衆院解散・総選挙に打って出て、「国民の信任」を新装開店に持っていかざるを得なかったということであるはずだ。

 「国民の信任」が剥げ落ちることになった原因は殊更改めて断るまでもなく、森友学園安倍晋三忖度国有地超格安売却疑惑と加計獣医学部新設安倍政治関与疑惑であり、平均的な国民に景気回復の実感を与えることができていないアベノミクス経済政策に対する評価であるはずだ。

 森友・加計疑惑にしてもアベノミクス経済政策に対する不信感にしても選挙にマイナスの影響を与えるはずだが、選挙結果はマイナス影響を物ともせずに自民党単独で絶対安定多数の261議席を超える284議席獲得の圧勝であった。

 もしこれが額面通りの圧勝であったなら、「国民の信任」のリセットが大成功したことになって、下手に7回も「信任を得た」といった趣旨のことを発信する必要はなく、ただ単に「国民の信任」に有難うの一言を言って感謝すれば済むことだが、額面通りの圧勝でなかったから、「信任を得た」と7回も宣言し、自らも確認しなければならなかったはずだ。

 額面通りの圧勝でなかったことは、民進党分裂前は野党で統一候補を立てて巨大与党に対抗する選挙戦術を模索していたが、民進党が分裂、立憲民主党と希望の党と無所属に3勢力化し、この野党分裂と混乱が自民党に有利に働いた結果の自民党圧勝と多くのマスコミ、多くの識者が見ているばかりか、安倍内閣の中でも圧勝であるにも関わらず、野党の分散・混乱によって自然と自民党に目を向かせることになった相対的勝利であって、絶対的勝利ではないと見ている閣僚の存在が証明する。

 安倍自民党総選挙圧勝によって森友・加計疑惑、あるいはアベノミクスの機能不全で剥げ落ちた「国民の信任」を一応はリセットできた。リセットのエサが北朝鮮の脅威と少子高齢化の「国難」であったはずだ。

 しかし自民党の価値を相対的に高めることになった野党の分裂と混乱が圧勝を導き出す要因となった「国民の信任」が実態だから、選挙勝利翌日の自民党総裁としての記者会見で安倍晋三は7度も「信任を得た」「信任を得た」といった趣旨のことを繰返し発信せざるを得なかった。

 但し安倍晋三のことだから、野党の分裂と混乱で獲得できた総選挙圧勝であることなど頭の中からたちまち消去して、首相としての自身に対する国民の厚い信頼に基づいた総選挙圧勝であり、絶大な「国民の信任」だとすり替えて、今まで通りに強引な国家運営に乗り出すに違いない。

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安倍晋三は「国民の命を守る」なる言葉の本質に無知ゆえに災害からの生活復興の遅れや格差社会を放置できる

2017-10-24 10:49:53 | 政治

 2017年10月22日付「産経ニュース」 記事が小此木八郎防災担当相に対して安倍晋三が首相官邸で台風21号への対応を指示した後にだろう、記者団に話した発言の全文を載せている。     

 安倍晋三「超大型の台風21号が日本に接近しています。被害を最小限に食い止めるために、私から防災大臣に対し、国民にタイムリーに具体的な情報提供を行い、避難指示など早め早めに対策を講じ、そして自衛隊をはじめ実働部隊の対応準備に万全を期すと、以上の3点を指示いたしました。

 国民の命を守るため、安倍内閣一丸となって、災害応急対応に全力を尽くして参ります」

 指示の内容については首相官邸サイトに記載されている。

 《台風第21号に関する総理指示》首相官邸/2017年10月22日)  

 総理指示(10:45)

 ・国民に対し、タイムリーに、大雨・河川の状況等に関し、具体的な情報提供を行うこと

 ・住民の安全を最優先に考え、避難指示等、早め早めの対策を講じ、災害応急対策に万全を期すこと

 ・自衛隊を始め、実働部隊の対応準備に万全を期すなど、国民の命を守るための対策に全力を尽くすこと

 指示にしても指示についての発言にしても、3点の指示の後に「国民の命を守る」を持ってきているから、自然災害からの“身の安全の確保”についての言及であることが分かる。

 だが、災害から「国民の命を守る」は災害に対して“身の安全の確保”だけを言うわけではない。それだけだったら、自衛隊や消防、警察、各自治体に任せておけばいい。

 身の安全が確保できたとしても、被災によって打撃を受けた生活をそのままの状態に置いたのでは「国民の命を守る」ことにはならないからだ。

 なぜなら、「国民の命を守る」とは心臓が動いている状態を守る“身の安全の確保”のことだけを言うのではなく、日常普段の生活の様々な局面をつくり出しているのも国民それぞれの命であって、命が織りなすそのような様々な局面に於ける日常普段の人間らしい生活を保障することも「国民の命を守る」ことを意味するからなのは断るまでもない。

 要するに「国民の命を守る」は自然災害、あるいはや戦争の危機などに対して身の安全を確保することの保障のみではないということになる。

 「国民の命を守る」ことの中に日常普段の生活を守ることが含まれていることと自然災害や戦争の危機に関してのみの保障ではないことは「日本国憲法」「第3章 国民の権利及び義務 第25条」の規定が示している。

 〈すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。

 2 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない〉

 国はこのような生活を保障しなければ、「国民の命を守る」ことにはならないということの示唆である。そして現在の日本が世界第3位の経済大国である以上、国の経済規模(=GDP規模)に応じた「健康で文化的な最低限度の生活」を保障することが憲法に即して「国民の命を守る」ということの意味を初めて成すことになり、そうすることが国家運営の政権担当者の義務と責任となる。

 国の経済規模(=GDP規模)以下の「健康で文化的な最低限度の生活」の保障であったなら、「国民の命を守る」ということにはならない。 

 安倍晋三の9月25日(2017年)の「解散記者会見」での発言は心臓が動いている状態を守る“身の安全の確保”だけではなく、生活を守る意味も含めていたはずだ。   

 安倍晋三「「国民の皆様は、北朝鮮の度重なる挑発に対して、大きな不安を持っておられることと思います。政府として、いついかなるときであろうとも危機管理に全力を尽くし、国民の生命と財産を守り抜く。もとより当然のことであります」

 「国民の生命と財産を守り抜く」は“身の安全の確保”だけではなく、生活そのものを守ることによって可能となる。

 勿論、災害を受けて死者が出る場合もあるし、戦争に巻き込まれたら、犠牲者が出ることは避けることができない危険性として想定しておかなければならないが、遺された者の生活を守ることが「国民の命を守る」国の責任と義務となる。

 例え水害で家を失うことがあっても、人間として当たり前の生活ができる状態に持っていくことができるように国は支援しなければならない。

 でなければ、自然災害に際しての「国民の命を守る」の指示が“身の安全の確保”だけとなって、言葉の意味に於いても、憲法との関わりに於いても指示を出す理由は半減する。

 にも関わらず、東日本大震災から6年7カ月経つが、2017年2月27日付の「河北新報」記事が記事時点で、〈東北の被災3県では東京電力福島第1原発事故の自主避難者を含めて3万3748世帯、7万1113人がいまだに仮設住宅での生活を余儀なくされている。岩手、宮城両県は住宅再建で仮設からの退去が進んでいるが、福島県は原発事故の影響で先行きを見通せずにいる。〉と当たり前以下の生活を強いられている状況を伝えている。   

 この点、安倍晋三は今以って人並みの生活から取り残されている被災者に関して「国民の命を守る」ことにはなっていないことになる。しかも解散記者会見では、「日本経済は11年ぶりとなる6四半期連続のプラス成長」とGDPの改善を誇っている。

 GDPはプラス改善していながら、被災者の生活復興はなかなか進まず、取り残されている被災者が多く存在する。とてものこと、「国民の命を守る」ことにはなっていない。

 2016年4月14日21時26分以降に熊本県と大分県で相次いで発生した熊本地震でも、提供された熊本県内の仮設住宅4318戸のうち、7月末までに退去したのは1割弱だと、2017年8月27日付「産経ニュース」記事が伝えている。      

 被災前の日常普段の生活とは異なる不自由な生活を強いているということは“身の安全の確保”だけの保障止まりで、「国民の命を守る」ことからは程遠い。

 大体が安倍晋三のアベノミクス経済政策で格差拡大をつくり出し、多くの国民が国の経済規模に反した人間らしさを発揮できない窮屈な生活を余儀なくされていること自体が人間らしい生活を保障するという意味での「国民の命を守る」ことになっているだろうか。

 国民の日常が人間らしい命を表現できる生活状況になっていなければ、「国民の命を守る」ことの約束から程遠い場所に多くの国民を置き去りにしていることになる。

 国の経済規模に相応しくなく被災者の生活の復興が遅れている「国民の命を守る」ことにはなっていない状況、同じく国の経済規模に相応しくなく多くの国民が経済格差によって人間らしい生活から取り残されている「国民の命を守る」ことにはなっていない状況を一方に置きながら、何か自然災害が近づいたり、起きたりしたら、防災担当の閣僚に指示を出し、「国民の命を守る」ことを誓う。

 安倍晋三は「国民の命を守る」ということが心臓が動いている状態を守る“身の安全の確保”のことだけを言うのではなく、国民それぞれの命が人間らしくあろうと織りなして日常をつくり出していく生活の保障も含まれているという、その本質的な点について気づいていないから、「国民の命を守る」ことにはなっていない状況をつくり出しておきながら、何かにつけて「国民の命を守る」を口にすることができるのは、通り一遍の言葉として使っているからだろう。

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自民党総選挙大勝は安倍晋三への見せ掛けの信任 野党への不信感が相対的に高めた自民党への信頼感 

2017-10-23 11:16:26 | 政治
 

 2017年10月22日投開票の政権選択総選挙は安倍自民党の大勝で終わった。公明党と合わせて憲法改正の国会発議に必要な3分の2の310議席を上回ったという。

 残り4議席の時点で自民党だけで過半数233議席を50議席上回る283議席を獲得している。この自民党だけで現時点の283議席は2017年10月10日選挙公示前、9月末から10月初めにかけのて各マスコミの世論調査での安倍晋三に対する内閣支持率では不支持が支持を上回る逆転現象が起きていることからすると、奇妙な結果に見える。

 NHKの10月7日~9日の世論調査

 「安倍内閣を支持する」37%
 「安倍内閣を指示しない」43%

 毎日新聞の9月26、27日世論調査

 「安倍内閣を支持する」36%
 「安倍内閣を指示しない」42%

 時事通信の2017年10月6~9日世論調査

 「安倍内閣支持率」37.1%
 「安倍内閣不支持率」41.8%

 朝日新聞の10月3、4日の世論調査だけが僅かに支持が上回っている。

 「安倍内閣を支持する」40%
 「安倍内閣を支持しない」38%

 アベノミクスへの期待度の世論調査を見てみる。

 東京新聞加盟の日本世論調査会9月23、24日実施の全国面接世論調査

 「アベノミクスに期待する」41%
 「アベノミクスに期待しない」56%

 共同通信が9月25日~10月4日に全国の有権者100人に実施したアンケート 

 「アベノミクスで暮らしはどう変化したか」

 「変わらない」+「苦しいまま」91人

 上出と同じNHK世論調査

 「投票で最も重視する6つの政策」

 「経済政策」18%
 「財政再建」11%
 「社会保障」29%
 「外交・安全保障」15%
 「憲法改正」11%
 「原子力政策」7%

 生活が豊かであればある程、社会保障は自身の資金に頼ることになって、国の社会保障政策に左程関心は持たなくなる。毎年何千万と稼ぐカネ持ちは国からの社会保障に関わる給付は余禄程度にしか見ないだろう。投票で最も重視する政策で「社会保障」が29%占め、「経済政策」18%、合計47%と半数近いということは生活が豊かになることへの願望を半数近い国民が示していて、裏を返すと、半数近い国民が現在の生活に満足できていない――アベノミクス経済政策から安倍晋三が言う程の恩恵は受けていないと言うことの証左でしかないと言うことであろう。

 今年初めであるが、2017年1月21、22両日の毎日新聞の全国世論調査

 「アベノミクス評価する」43%
 「アベノミクス評価しない」46%

 世論調査ではないが、多くのマスコミが「実感なき景気回復」、「実感乏しいアベノミクス」といった言葉を踊らせている。アベノミクスを歓迎しているのは円安・株高で大儲けしている高額所得者と大企業ぐらいで、このことは周知の事実となっている。

 安倍内閣支持率の低迷、そして安倍晋三の経済政策に対する低い評価、多くの国民が生活の豊かさを実感できないでいる現状。このような安倍不人気は10月13~15日の毎日新聞世論調査にも現れている。

 「首相を続けたほうがよいか」

 「よいと思う」37%
 「よいと思わない」47%
 
 10月17、18日朝日新聞世論調査

 「今後も首相を続けてほしいか」

 「続けてほしい」34%
 「そうは思わない」51%

 退陣を望む国民が半数近く、あるいは半数を超えて存在する安倍不人気の一方で政党支持率では自民党が常に野党を遥かに抜いて、常にトップを維持している。

 10月17、18両日の朝日新聞世論調査

 自民党32
 希望の党6%
 公明党4%
 共産党3%
 立憲民主党7%

 他は見る影もない。

 2017年10月13日~15日NHK世論調査政党支持率

 自民党32.8%
 希望の党5.4%
 公明党4.3%
 共産党3.4%
 立憲民主党6.6%
 日本維新の会1.7%
 社民党0.6%
 日本のこころ0.1%
 「特に支持している政党はない」34%

 支持政党なしを除いて自民党以外の野党は惨憺たる有様である。

 安倍不人気と不人気に連動することはない自民党1強、自民党1強に対する野党の安倍不人気を遥かに超えるお粗末な不人気。この不人気は国民の野党に対する不信感に宿す。

 このような状況下での2017年10月22日投開票衆議院議員選挙での自民党の圧勝。その実態は決して安倍晋三に対する強い信任からの勝利ではなく、国民の野党への不信感が相対的に高めることになった自民党への信頼感が貢献した勝利であって、安倍晋三は単に自民党の総裁、与党の首相という地位にいることから、この勝利に乗っただけで、安倍晋三自身は決して認めようとはしないだろうが、見せ掛けの信任に過ぎないということであろう。

 日本人はその行動様式としている権威主義から、変化を嫌い、現状維持を好むと言われている。変化を求めた政権交代に一度懲りて、自民党政治を政治支配の一つの権威に祭り上げてしまったらしく、新たな政権交代に用心深くなり、現状維持志向の殻に安住するようになったようだ。

 その現状維持を破るためには安倍内閣の驕りからの自滅、あるいは自民党の驕りからの自滅を待って、国民の野党に対する不信感を払拭する以外に方法はないのだろうか。

 民主党への政権交代も多分に自民党の自滅が助けた政変劇であった。だが、自滅型の政権交代は競争原理型の政権交代とは異なって、政策の向上や前進、進歩への動機づけとして十分に働くとは言えない。あるいは自らの行動を律する確固たる戒めへの動機づけとはならない。

 だから、政権復帰後の自民党に緩みが出て、国民を小馬鹿にした驕った発言が閣僚や自民党議員の中から次々と出てくる。

 森友・加計安倍晋三政治関与疑惑も緩みから出ているはずだ。
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安倍自民党驕りの土壌発出の丸山和也「相手候補に投票する人は脳がおかしい」の人格否定、差別と排除の論理

2017-10-22 09:44:18 | 政治
 「河北新報」2017年10月20日金曜日)記事を纏めてみる。文飾は当方。  

 10月19日(2017年)夜の衆院選岩手3区自民候補者個人演説会。

 丸山和也「認知症と言ったら怒られるけど、相手候補に投票する人は判断力、脳がおかしいとしか言えない」

 記事は、〈演説会後「言い過ぎたかもしれない」と釈明した。〉と解説している。

 「言い過ぎたかもしれない」が事実だとしても、思いはあったことを意味する。その思いをつい強くしてしてしまったために「言い過ぎ」という状況をつくり出してしまう。

 「言い過ぎ」が事実ではなく、後でマズイことを言ったことに気づいて、「言い過ぎたかもしれない」を弁解の言葉に使う場合もある。

 どちらであったとしても、“相手候補に投票する人は認知症程度で判断力、脳がおかしい”という思いはあった。その思い自体が丸山和也の人格の表れと言うことができる。

 だが、思いだけで留めておくことができずに例え「言い過ぎ」という形であったとしても、口から出したことで丸山和也の人格まで表に曝すことになった。

 岩手3区からの立候補者は自民党藤原崇(34歳)、自由党代表ではあるが、無所属立候補の小沢一郎(75歳)の二人のみである。要するに小沢一郎に“投票する人は認知症程度で判断力、脳がおかしい”と言ったことになる。

 この発言は先ず相手候補者投票の有権者、いわば小沢一郎に投票する有権者に対する人格否定を存在させている。このことは説明を要しない。

 と同時に小沢一郎の人格否定にもなっている。“認知症程度で判断力、脳がおかしい”有権者だけが小沢一郎に投票すると言っているのと変わりはないからである。

 丸山和也のこの発言は有権者や小沢一郎に対する人格否定ばかりではない。見事なまでに差別と排除の論理を巣食わせている。「認知症と言ったら怒られるけど、相手候補に投票する人は判断力、脳がおかしいとしか言えない」の文言は暗黙裡の相手候補に対する投票禁止の要求に等しく、選挙に於ける公正・公平の原則に反しているばかりか、その判断力を「認知症」程度と疑っていることは差別そのもので、差別は排除の論理なくして成り立たない。

 丸山和也の人格否定、差別と排除の論理は2016年2月17日の参院憲法審査会の発言にも現れている。問題発言となったから、記憶されている方も多くいるはずである。

 丸山和也「これは憲法上の問題もありますし、ややユートピア的かもしれませんですけれど。たとえば、日本がアメリカの51番目の州になるということについて、憲法上どのような問題があるのか、ないのか。

 そうすると集団的自衛権、安保条約ってまったく問題ありませんね。たとえば、今拉致問題ってありますけど、おそらく起こっていないでしょう。

 それから、いわゆる国の借金問題についても、こういう国の行政監視が効かないようなズタズタの状態には絶対になっていないと思うんですね。

 これは日本がなくなるということではなくて、アメリカの制度であれば人口比において、下院議員の数が決まるんですね。するとおそらく日本州というのは、最大の下院議員の数を持つと思うんです

 上院も州1個とすれば2人ですけれど、日本もいくつかの州にわけるとすると、十数人の上院議員もできるとなると、これは世界の中の日本というけれども、ようするに日本州の出身がアメリカの大統領になる可能性が出てくるということなんですよ。

 ということは、世界の中心で行動できる日本という、日本とはそのとき言わないですけれども、それもあり得るということなんですね。馬鹿みたいな話だと思われるかもしれないですけれど。

 たとえば、いまアメリカは黒人が大統領になっているんですよ。黒人の血を引く、ね。これは奴隷ですよ、はっきり言って。

 で、リンカーンが奴隷解放をやったと。でも公民権もない、なにもないと。ルーサー・キングが出てですね、公民権運動のなかで公民権が与えられた。

 でもですね、まさかアメリカの建国あるいは当初の時代にですね、黒人、奴隷がですね、アメリカの大統領になるようなことは考えもしない。

 これだけのですね、ダイナミックな変革をしていく国なんですよね。

 そういう観点からですね、たとえば、日本がそういうことについて憲法上の問題があるのかないのか。どういうことかということについて、お聞きしたい。

 それから、政党所属を忌避するということについての憲法上の問題があるのかないのか。これについて、まず荒井議員からお聞きしたい。

 これはですね、十数年前から日米問題研究会ということがありまして、それで本まで発表されてるんですね。

 だからそういうことについてですね、日本の憲法的な観点から、どのように思われますか? お聞きしたいと思います」

 日本がアメリカの51番目の州となる仮定上の「ダイナミックな変革」を「黒人がアメリカの大統領になる」「ダイナミックな変革」に譬えるのは、その時代的な妥当性の点について疑義を挟まざるを得ないが、構わない。

 だが、その黒人大統領オバマを「黒人の血を引く、ね。これは奴隷ですよ、はっきり言って」の発言は(この箇所は参議院会議録からは削除されている)「ダイナミックな変革」の強調とは離れてオバマに対して黒人と言う理由で人格否定、さらに差別と排除の論理を微かに滲ませている。オバマを丸のままの一個の人格と見た発言とはなっていない。

 他者に対する人格否定、差別と排除の論理は自己を絶対としていることによって生み出される。有権者に対して自民党候補に投票するのが絶対だとした。丸山和也自身が自民党を絶対的存在とする意識がなければ、相手候補者に投票する有権者を認知症視することはなかったはずだ。認知症程度の判断力、脳と見ることはなかったろう。

 丸山和也のこの自民党を絶対的存在とする意識が丸山一人だけの意識であったなら、正常な分子の中の異分子として浮き立ち、自然淘汰を受けて、居場所を失うことになるだろう。

 だが、居場所を失わずに自民党参議院政策審議会副会長と自民党法務部会長の地位に鎮座している。と言うことは、異分子としての存在ではなく、正常分子として自民党内で存在していることを意味する。

 このような存在状況は異分子が全体的な正常分子となっていること、他者に対する人格否定、さらには差別と排除の論理に根ざした自民党絶対視は自民党の土壌そのもののなっていることを映し出していることになる。

 いわば世間の常識から見ると異分子であるはずの存在が正常分子としての扱いを受けていることになる。と言うことは自民党では異分子こそが正常分子として生きづいていることを証明することになる。

 そしてそれを可能としている要因は自民党絶対視の土壌だと言うことになる。

 自民党絶対視は驕りという形で表出される。驕りを背景としていなければ、「認知症と言ったら怒られるけど、相手候補に投票する人は判断力、脳がおかしいとしか言えない」などという言葉は口を突いて出てこないだろう。

 様々な発言や様々な国会運営から自民党の驕り、安倍政権の驕りが言われている。森友学園疑惑は安倍晋三の驕り、あるいは安倍昭恵の驕りがなければ飛び出すことはなかったろう。

 常に謙虚な姿勢でいたなら、官僚たちに対して忖度といった不要な配慮を招くことはないからだ。

 安倍晋三の加計学園政治関与疑惑にしても、安倍晋三自身の驕りが原因となっているはずだ。謙虚で真摯な態度で獣医学部新設認可に向き合っていたなら、様々な疑惑が持ち上がる余地は現れようがない。

 このような自民党絶対視の驕りを土壌とした安倍自民党を再度与党に選択、その政権延命に手を貸す。
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